JP2008156312A - サブスタンスpに対するペプチド由来のアンタゴニストの開発 - Google Patents

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Abstract

【課題】サブスタンスPに対する新規ペプチド由来アンタゴニストを提供することを目的とする。
【解決手段】以下の(a)又は(b)に示されるペプチドから成るサブスタンスPに対するアンタゴニスト。
(a)配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列から成るペプチド
(b)上記(a)のペプチドのアミノ酸配列において、C末端のロイシン以外の位置で1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つサブスタンスPに対する拮抗活性を有するペプチド
【選択図】なし

Description

本発明は、例えばサブスタンスPに対するペプチド由来アンタゴニストに関する。
サブスタンスP(以下、「SP」という)は、11個のアミノ酸から成るペプチド(アミノ酸配列:配列番号3)である。SPはタキキニンペプチドに属する。ここで、タキキニンペプチド(又はタキキニンファミリー)とは、C末端にFXGLM-NH2(配列番号4)(ここで、Xは疎水性アミノ酸である)を有するペプチドを意味する。SPは脊椎動物だけでなく、無脊椎動物においても見つけられており、発痛物質又は痛覚に関与する神経伝達物質としての作用があることはよく知られている。従って、SPに対する新規のアンタゴニストを見出すことは、SPが関与する多くの症状(例えば、痛みや炎症等)を抑制するための医薬の開発に寄与すると考えられる。
これまで、SPに対するアンタゴニストは、非ペプチド由来とペプチド由来の2つの方向から開発されてきた。非ペプチド由来のアンタゴニストは大量に合成できるが、現在までに開発されているアンタゴニストは有機溶媒中でしか溶解せず、生体に投与する場合は副作用が問題となる。一方、ペプチド由来のアンタゴニストは現在までのところほとんど報告がない。しかしながら、これらペプチド由来のアンタゴニストは水溶性であるという利点があり、生体に対する副作用は非ペプチド由来のものに比べて少ない。従って、ペプチド由来のアンタゴニストを新たに開発することは、生体に投与するという観点からすれば、非ペプチド由来のアンタゴニストよりも利用価値が高い。
一方、エンドキニン(以下、「EK」という)類は、2003年に発見された新規のペプチドで、エンドキニンA(以下、「EKA」という、アミノ酸配列:配列番号5)、エンドキニンB(以下、「EKB」という、アミノ酸配列:配列番号6)、エンドキニンC(以下、「EKC」という、アミノ酸配列:配列番号7)、エンドキニンD(以下、「EKD」という、アミノ酸配列:配列番号8)の4種類が知られている(非特許文献1)。EK類のうち、EKA及びEKBは、上述のタキキニンペプチドの共通配列(配列番号4、EKA及びEKBでは、Xはフェニルアラニン(Phe)である)を有し、タキキニンファミリーに属するペプチドと考えられている。一方、EKC及びEKDは、上述のタキキニンペプチドの共通配列(配列番号4)においてXがグルタミン(Gln)であり、親水性のアミノ酸を有することから、タキキニン関連ペプチドと言われる(非特許文献2)。
EKAとEKBの共通アミノ酸配列から成るペプチド(以下では、「EKA/B」という、アミノ酸配列:配列番号9)をラットの髄腔内に単独投与したところ、SPと同様の疼痛行動と熱痛覚過敏を引き起こすことを本発明者等は見出した(非特許文献3)。一方、EKCとEKDは、14個のアミノ酸から成るペプチドであり、N末端の2個のアミノ酸以外は両者で共通のアミノ酸配列を有する。この両者のペプチドの共通アミノ酸配列から成るペプチド(以下では、「EKC/D」という、アミノ酸配列:配列番号10)をラットの髄腔内に単独投与したところ、疼痛関連行動は誘発しないが、当該ペプチドを前投与するとSPやEKA/Bの投与により誘発される引っ掻き行動と熱痛覚過敏が抑制されることを本発明者等は見出した(非特許文献4)。このことはEKC/DがSPに対するアンタゴニストとして作用することを示している。
Pageら, 「Proc. Natl. Acad. Sci. USA」, 2003年, 第100巻, p.6245-6250 Nigel M. Page, 「Peptides」, 2005年, 第26巻, p.1356-1368 Yoshiokaら, 「Neuroscience Letters」, 2006年, 第410巻, p.193-197 直野 留美ら, 「PAIN RESEARCH」, 2006年7月14日, 第21巻, 第2号, p.72, 2-4-11
本発明は、上述した実情に鑑み、SPに対する新規ペプチド由来アンタゴニストを提供することを目的とする。
上述したように、SP及びEKA/Bは疼痛行動と熱痛覚過敏を引き起こすのに対して、EKC/DはSPやEKA/Bの投与により誘発される引っ掻き行動と熱痛覚過敏を抑制する。これらペプチドの構造上の違いとしては、C-末端にM(メチオニン)(SP又はEKA/B)かL(ロイシン)(EKC/D)のいずれかであることが挙げられる。
そこで、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、SP又はEKA/Bにおいて、C-末端にM(メチオニン)があればそのペプチドは疼痛関連行動を誘発し、一方、L(ロイシン)があればSPに対するアンタゴニストになると仮定し、SP又はEKA/BのC-末端をそれぞれMからLに置換したペプチド(それぞれ、以下では、「[L11]-SP」(アミノ酸配列:配列番号1)、「[L10]-EKA/B」(アミノ酸配列:配列番号2)という)を合成し、これら合成ペプチドをラットの髄腔内に前投与したところ、SP投与により誘発される疼痛関連行動と熱痛覚過敏を抑制し、これら合成ペプチドがSPに対してアンタゴニストとして作用することを見出した。一方、EKC/DのC-末端をLからMに置換したペプチド(以下では、「[M12]-EKC/D」という、アミノ酸配列:配列番号11)を合成し、ラットに髄腔内投与したところ、このペプチドはSP投与により誘発される疼痛関連行動と熱痛覚過敏を抑制せず、逆に、単独投与により熱痛覚過敏を誘発した。これらの結果は、SPに対するアンタゴニストはタキキニンペプチドのC-末端にLが存在することが必要条件であることを示している。
以上の知見より、[L11]-SP及び[L10]-EKA/BがSPに対するアンタゴニストであることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)以下の(a)又は(b)に示されるペプチドから成るSPに対するアンタゴニスト。
(a)配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列から成るペプチド
(b)上記(a)のペプチドのアミノ酸配列において、C末端のロイシン以外の位置で1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つSPに対する拮抗活性を有するペプチド
(2)(1)記載のアンタゴニストを有効成分として含有する疼痛治療薬。
(3)(1)記載のアンタゴニストを有効成分として含有する炎症治療薬。
本発明によれば、発痛物質又は痛覚に関与する神経伝達物質であるSPに対して有効なペプチド由来アンタゴニストが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るアンタゴニストは、[L11]-SP(アミノ酸配列:配列番号1)又は[L10]-EKA/B(アミノ酸配列:配列番号2)から成るSPに対するアンタゴニストである。本発明に係るアンタゴニストをヒト等の動物に投与することにより、SPに起因する疼痛関連行動や熱痛覚過敏を抑制することができる。また、本発明に係るアンタゴニストは、上述した[L11]-SP又は[L10]-EKA/Bのアミノ酸配列において、C末端のロイシン以外の位置で1又は数個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、特に好ましくは1又は2個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つSPに対する拮抗活性を有するペプチドであってもよい。あるいは、上述した[L11]-SP又は[L10]-EKA/Bのアミノ酸配列に対して、C末端のロイシンを維持し、80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つSPに対する拮抗活性を有するペプチドも本発明に係るアンタゴニストに含まれる。
なお、アミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸のいずれをも含む。特に、L-アミノ酸のみから成るペプチドは生体内において酵素分解までの時間が短い。そこで、上述の本発明に係るアンタゴニストのペプチドでは、D-アミノ酸を1又は数個(例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個、特に好ましくは1又は2個)含むことが好ましい。このように、D-アミノ酸を本発明に係るアンタゴニストのペプチドに含めることで、生体内における当該ペプチドの酵素分解までの時間を遅らせ、効力の持続時間を長くすることができる。
ここで、SPに対する拮抗活性とは、SPに起因する疼痛関連行動や熱痛覚過敏を抑制する活性を意味する。
本発明に係るアンタゴニストは、公知のペプチド合成方法により化学的に合成することができる。あるいは、本発明に係るアンタゴニストをコードするDNAを宿主において導入し、発現した本発明に係るアンタゴニストを回収することで、本発明に係るアンタゴニストを得ることができる。
一方、SPは、多くの症状(例えば、疼痛、炎症)に関与することが知られている(Pharmacological Reviews 54(2002)285-322)。従って、本発明に係るアンタゴニストを有効成分として含有することで、疼痛治療薬又は炎症治療薬とすることができる。
本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬の剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、錠剤、粉剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、スプレー剤、軟膏剤等の非経口剤が挙げられる。
また、本発明に係るアンタゴニストと組み合わせることができる医薬用成分としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤及び香料が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖及びマクロゴールが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム及びトラガントが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウロマクロゴールが挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油及びポリエチレングリコールが挙げられる。
流動性促進剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。
また、本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬の剤形が、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤又はエリキシル剤である場合には、矯味矯臭剤、着色剤等を含有してもよい。
さらに、本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬は、更なる成分を含んでいてもよい。本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬が含むことができる成分としては、例えば、プロピオン酸誘導体系非ステロイド性抗炎症薬として、プロピオン酸誘導体であるイブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビロフェン、フルルビロフェンアキセチル、オキサプロジン、フェノプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、プラノプロフェン、ロキソプロフェン、アミノプロフェン、ザルトプロフェン又はこれらの塩、非ピリン系解熱鎮痛薬として、アセトアミノフェン、メシル酸ジメトチアジン又はこれらの塩、抗プラスミン薬として、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸又はこれらの塩、消炎酵素薬として、塩化リゾチーム、セミアルカリプロテイナーゼ、セラペプターゼ、プロメライン又はこれらの塩等が挙げられる。
一方、本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬における本発明に係るアンタゴニストの含有量は、投与目的、投与経路、剤形等によって適宜変更し得るが、例えば、0.001〜1mg、好ましくは0.001〜0.01mgである。
本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬の投与回数、投与量及び投与期間は、特に限定されるものではなく、例えば、病気の種類、患者の年齢、性別、体重又は症状の程度、あるいは投与方法などに応じて適宜決定することができる。投与回数は、例えば、外用投与で、1日1回〜3回、好ましくは1日1回である。本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬に含まれる本発明に係るアンタゴニストの投与量は、インドメタシンでの投与量が外用で50mg、静注で1mgから換算して、例えば静注で1日当たり0.01mg〜1mg/kg体重、好ましくは0.01mg〜0.1mg/kg体重であり、外用ではその50倍である。また、投与期間は、例えば1〜7日間、好ましくは1〜2日間である。
本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬の投与経路は、剤形や使用目的に応じて、適宜決定することができるが、例えば、経口投与、非経口投与(髄腔内投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸内投与、鼻内投与、舌下投与等)及び局所投与(経皮用パッチ、ローション剤、液剤、エアゾール剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ハップ剤)が挙げられる。
本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬の薬理評価は、例えば、以下のように行うことができる。
疼痛治療薬の薬理評価は、例えばSPをラットに髄腔内投与し、SPに起因する疼痛関連行動(例えば、引っ掻き行動)や熱痛覚過敏を生じたラットを使用して行うことができる。次いで、本発明に係る疼痛治療薬を髄腔内投与し、本発明に係る疼痛治療薬を投与していないラット(陰性対照)と比較して、疼痛関連行動や熱痛覚過敏が有意に低減した場合には、本発明に係る疼痛治療薬が有効であると判断することができる。
また、炎症治療薬としての薬理評価は、例えばラットの足底に炎症誘発剤(carrageenan等)を皮下注射すると炎症が誘発され、足の体積増加や痛覚過敏が引き起こされたラットを使用して行うことができる。次いで、本発明に係る炎症治療薬を髄腔内又は炎症部位に投与し、本発明に係る炎症治療薬を投与していないラット(陰性対照)と比較して、足の体積や痛覚過敏が有意に軽減した場合には、本発明に係る炎症治療薬が炎症に対して有効であると判断することができる。
以上に説明した本発明に係るアンタゴニストによれば、有意にSPに起因する疼痛関連行動や熱痛覚過敏を抑制することができる。さらに、本発明に係る疼痛治療薬又は炎症治療薬では、有効成分として本発明に係るアンタゴニストを含有し、その有効量を、年齢や性別を問わずヒト等の動物に投与することにより、生体内において疼痛、炎症を抑制することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、投与とは、ラットにおける髄腔内投与である。
〔実施例1〕SP誘発の引っ掻き行動におけるSP受容体(NK-1)アンタゴニストの効果
10-3M(10nmol)のSP(アミノ酸配列:配列番号3)をカテーテルを通じてラットに髄腔内投与すると、引っ掻き行動を誘発する。そこで、以下の実験を行った。また結果を図1に示す。
図1において、引っ掻き行動の指標は、縦軸のNumber of Scratching/5分で表す。10-3MのSP単独投与による引っ掻き回数を100%で表し、「saline」の欄に示した。このSPによる引っ掻き行動の回数は、10-3MのEKC/D(アミノ酸配列:配列番号10)をSP投与の5分前に投与することで有意に減少した(「EKC/D」の欄)。
また、SP投与の30分前に、市販のSPアンタゴニストであるL-703,606(10-3M)を投与すると、SPにより誘発される引っ掻き行動の回数が有意に減少した(「L-703,606」の欄)。
次に、10-3MのL-703,606を投与した後、25分後に10-3MのEKC/Dを投与し、その5分後に10-3MのSPを投与したところ、両者(L-703,606とEKC/D)の効果に相加又は相乗効果は認められなかった(「L-703,606+EKC/D」の欄)。このことは、EKC/Dの効果はSP受容体(NK-1)を介してその効果を発揮しているといえる。
〔実施例2〕SP誘発の引っ掻き行動におけるペプチド([L11]-SP及び[L10]-EKA/B)の効果
本実施例では、SP誘発の引っ掻き行動におけるペプチド([L11]-SP(アミノ酸配列:配列番号1)及び[L10]-EKA/B(アミノ酸配列:配列番号2))の効果を検討するために、以下の実験を行った。結果を図2に示す。なお、実施例1と同様に、SP誘発の引っ掻き行動の指標をNumber of Scratching/5分とし、10-3MのSP単独投与による引っ掻き回数を100%で表す(「SP」の欄)。
SPのC-末端はM(メチオニン)である。そこで、このMをL(ロイシン)に置換した[L11]-SPを合成し、その効果について検討した。この[L11]-SP(10-3M)を単独投与すると、SPの単独投与に比べて引っ掻き行動の回数は有意に減少した(「SP(L)」の欄)。このことは、SPのC-末端にあるMが引っ掻き行動を誘発するのに重要であることを示している。
次に、10-3Mの[L11]-SP投与の5分後にSPを投与すると、SP単独投与による引っ掻き回数と比較してその回数は有意に減少した(「SP(L)+SP」の欄)。本結果は、SPのC-末端のMをLに置換した合成ペプチドはSPに対するアンタゴニストになることを示している。
一方、同様な実験をEKA/B(アミノ酸配列:配列番号9)についても実施した。EKA/BのC-末端はM(メチオニン)である。そこで、このMをL(ロイシン)に置換した[L10]-EKA/Bを合成し、その効果について検討した。この[L10]-EKA/B(10-3M)を単独投与すると、EKA/Bの単独投与(「EKA/B」の欄)に比べて引っ掻き行動の回数は有意に減少した(「EKA/B(L)」の欄)。このことは、EKA/BのC-末端にあるMが引っ掻き行動を誘発するのに重要であることを示している。
次に、10-3Mの[L10]-EKA/B投与の5分後にSPを投与すると、SP単独投与による引っ掻き回数と比較してその回数は有意に減少した(「EKA/B(L)+SP」の欄)。このことは、EKA/BのC-末端のMをLに置換した合成ペプチドはSPに対するアンタゴニストになることを示している。
〔実施例3〕SP誘発熱痛覚過敏に対するペプチド([L11]-SP)の効果
ラットの後足底に一定の強さの赤外線を照射すると足を引っ込める反射行動を起こす。この反射行動を利用し、以下の実験を行った。結果を図3に示す。照射開始から足引っ込め反射が生じるまでの時間を潜時とし、図3の横軸では、Paw withdrawal latencies(秒)と表現する。生理食塩水(「Saline」の欄)投与の場合と比べて、この時間が短くなると熱痛覚過敏を誘発していることになる。生理食塩水を髄腔内に投与するとその潜時は18秒前後であった(「Saline」の欄)。
一方、10-6MのSPを髄腔内投与し、20分後にその潜時を計測すると13秒くらいとなり、潜時は有意に短くなっていた(「SP 10-6M」の欄)。このことはSPの髄腔内投与により熱痛覚過敏が誘発されることを示している。
さらに、[L11]-SPの熱痛覚過敏に対する効果について検討した。この[L11]-SP(10-6M)を単独投与しても、潜時は生理食塩水投与の潜時とほぼ同じであった(「SP(L) 10-6M」の欄)。このことは、SP投与による熱痛覚過敏の誘発にはC-末端のMが必要であることを示している。
次に、10-6M(「SP(L) 10-6M+SP 10-6M」の欄)又は10-5M(「SP(L) 10-5M+SP 10-6M」の欄)の[L11]-SPの投与5分後に10-6MのSPを投与したところ、その潜時は生理食塩水処理群のレベルまで回復した。この結果は、SPのC-末端のMをLに置換した合成ペプチドはSPに対するアンタゴニストになることを示している。
〔実施例4〕SP誘発熱痛覚過敏に対するペプチド([L10]-EKA/B)の効果
本実施例では、実施例3と同様にしてSP誘発熱痛覚過敏に対するペプチド([L10]-EKA/B)の効果を検討した。そこで、以下の実験を行った。結果を図4に示す。なお、実施例3と同様に、照射開始から足引っ込め反射が生じるまでの時間を潜時とし、図4の横軸では、Paw withdrawal latencies (秒)と表現する。生理食塩水(「Saline」の欄)投与の場合と比べて、この時間が短くなると熱痛覚過敏を誘発していることになる。生理食塩水を髄腔内に投与するとその潜時は18秒前後であった(「Saline」の欄)。
一方、10-6MのEKA/B又は10-6MのSPを髄腔内投与し、20分後にその潜時を計測すると13秒前後となり、潜時は有意に短くなっていた(それぞれ「EKA/B 10-6M」の欄、「SP 10-6M」の欄)。このことはEKA/B又はSPの髄腔内投与により熱痛覚過敏が誘発されることを示している。
さらに、[L10]-EKA/Bの熱痛覚過敏に対する効果について検討した。この[L10]-EKA/B(10-6M)を単独投与しても、潜時は生理食塩水投与の潜時とほぼ同じであった(「EKA/B(L) 10-6M」の欄)。このことは、EKA/B投与による熱痛覚過敏の誘発にはC-末端のMが必要であることを示している。
次に、10-7M(「EKA/B(L) 10-7M+SP 10-6M」の欄)、10-6M(「EKA/B(L) 10-6M+SP 10-6M」の欄)又は10-5M(「EKA/B(L) 10-5M+SP 10-6M」の欄)の[L10]-EKA/Bの投与5分後に10-6MのSPを投与したところ、その潜時はsaline処理群のレベルまで回復した。この結果は、EKA/BのC-末端のMをLに置換した合成ペプチドはSPに対するアンタゴニストになることを示している。
〔実施例5〕SP誘発の引っ掻き行動におけるペプチド(EKC/D及び[M12]-EKC/D)の効果
本実施例では、SP誘発の引っ掻き行動におけるペプチド(EKC/D及び[M12]-EKC/D(アミノ酸配列:配列番号11))の効果を検討した。そこで、以下の実験を行った。結果を図5に示す。なお、実施例1と同様に、SP誘発の引っ掻き行動の指標をNumber of Scratching/5分とし、10-3MのSP単独投与による引っ掻き回数を100%で表し、図5の「SP」の欄に示す。
10-3MのEKC/Dの単独投与では引っ掻き行動を誘発しなかった(「EKC/D」の欄)。
一方、10-3MのEKC/Dの投与5分後に10-3MのSPを投与すると、SPにより誘発される引っ掻き行動回数は有意に減少した(「EKC/D+SP」の欄)。
EKC/DのC-末端はL(ロイシン)である。そこで、このLをM(メチオニン)に置換した[M12]-EKC/Dを合成し、その効果について検討した。10-3Mの[M12]-EKC/Dの単独投与では引っ掻き回数にほとんど変化はなかった(「EKC/D(M)」の欄)。しかしながら、10-3Mの[M12]-EKC/Dの投与5分後に10-3MのSPを投与した場合、10-3MのSP投与による引っ掻き回数とほぼ同じ回数を示した(「EKC/D(M)+SP」の欄)。このことはEKC/DのC-末端にあるLをMに置換することにより、EKC/DのSPに対するアンタゴニストの効果は、ほぼ消滅することを示している。
〔実施例6〕ペプチド([M12]-EKC/D)による熱痛覚過敏の誘発
本実施例では、実施例3と同様にしてペプチド([M12]-EKC/D)による熱痛覚過敏の誘発を検討した。そこで、以下の実験を行った。結果を図6に示す。なお、実施例3と同様に、照射開始から足引っ込め反射が生じるまでの時間を潜時とし、図6の横軸では、Paw withdrawal latencies (秒)と表現する。生理食塩水(「Saline」の欄)投与の場合と比べて、この時間が短くなると熱痛覚過敏を誘発していることになる。生理食塩水を髄腔内に投与するとその潜時は18秒前後であった(「Saline」の欄)。
一方、10-6MのSPを髄腔内投与し、20分後にその潜時を計測すると13秒前後となり、潜時は有意に短くなっていた(「SP 10-6M」の欄)。このことはSPの髄腔内投与により熱痛覚過敏が誘発されることを示している。
さらに、10-5MのEKC/Dの投与5分後に10-6MのSPを投与するとSP投与による熱痛覚過敏は誘発されなくなった(「EKC/D 10-5M+SP 10-6M」の欄)。この結果はEKC/DがSPに対してアンタゴニストとして作用していることを示している。また、10-5MのEKC/Dの単独投与では熱痛覚過敏を誘発しなかった(「EKC/D 10-5M」の欄)。
次に、[M12]-EKC/Dの熱痛覚過敏に対する効果について検討した。10-5Mの[M12]-EKC/Dの投与5分後に10-6MのSPを投与すると熱痛覚過敏を誘発した(「EKC/D(M) 10-5M+SP 10-6M」の欄)。このことは、EKC/DがSP誘発熱痛覚過敏に対してアンタゴニストとして作用するためにはEKC/DのC-末端のLが必要であることを示している。
続いて、10-7M(「EKC/D(M) 10-7M」の欄)、10-6M(「EKC/D(M) 10-6M」の欄)又は10-5M(「EKC/D(M) 10-5M」の欄)の[M12]-EKC/Dの単独投与について検討したところ、10-6Mの[M12]-EKC/Dと10-5Mの[M12]-EKC/Dでは、痛覚過敏を誘発することが明らかとなった(それぞれ、「EKC/D(M) 10-6M」の欄、「EKC/D(M) 10-5M」の欄)。
〔実施例7〕ペプチド(SPと[M12]-EKC/D)による熱痛覚過敏の誘発
本実施例では、実施例3と同様にしてペプチド(SPと[M12]-EKC/D)による熱痛覚過敏の誘発を検討した。そこで、以下の実験を行った。結果を図7に示す。なお、実施例3と同様に、照射開始から足引っ込め反射が生じるまでの時間を潜時とし、図7の縦軸では、Paw withdrawal latencies (秒)と表現する。生理食塩水(「Control」の欄)投与の場合と比べて、この時間が短くなると熱痛覚過敏を誘発していることになる。生理食塩水投与群ではその潜時は20秒前後であった(「Control」の欄)。
10-6MのSPを髄腔内に投与すると、10分後、20分後、30分後、40分後で潜時は有意に短くなり(「SP 10-6M」の折れ線グラフ)、SPにより熱痛覚過敏が誘発されることを示している。一方、10-6Mの[M12]-EKC/Dを髄腔内投与すると、投与後10分、20分で熱痛覚過敏が誘発された(「EKC/D(M) 10-6M」の折れ線グラフ)。このことは、SPと[M12]-EKC/Dとでは熱痛覚過敏を誘発する能力が異なることを示し、C-末端のM以外のアミノ酸も熱痛覚過敏に関与していることを示している。
図1は、SP誘発の引っ掻き行動におけるNK-1アンタゴニストの効果を示す。 図2は、SP誘発の引っ掻き行動におけるペプチド([L11]-SP及び[L10]-EKA/B)の効果を示す。 図3は、SP誘発熱痛覚過敏に対するペプチド([L11]-SP)の効果を示す。 図4は、SP誘発熱痛覚過敏に対するペプチド([L10]-EKA/B)の効果を示す。 図5は、SP誘発の引っ掻き行動におけるペプチド(EKC/D及び[M12]-EKC/D)の効果を示す。 図6は、ペプチド([M12]-EKC/D)による熱痛覚過敏の誘発を示す。 図7は、ペプチド(SPと[M12]-EKC/D)による熱痛覚過敏の誘発を示す。

Claims (3)

  1. 以下の(a)又は(b)に示されるペプチドから成るサブスタンスPに対するアンタゴニスト。
    (a)配列番号1又は2に示されるアミノ酸配列から成るペプチド
    (b)上記(a)のペプチドのアミノ酸配列において、C末端のロイシン以外の位置で1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つサブスタンスPに対する拮抗活性を有するペプチド
  2. 請求項1記載のアンタゴニストを有効成分として含有する疼痛治療薬。
  3. 請求項1記載のアンタゴニストを有効成分として含有する炎症治療薬。
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