JP2008156191A - ガラス板およびガラス板の強化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス板の2mm角程度以下の微小領域を強化するための手法として、風冷強化では強化部が大きすぎて困難であり、超短波長レーザによる異質相形成では、逆に微小すぎて適切なガラス板の強化が行なえなかった。
【解決手段】厚さが0.1mm以上5mm以下のガラス板であって、レーザ照射により生じた、上面視にて観測される波長546nmの入射光で測定したレターデーションが25nm以上の境界であって、その内接円の直径が20μm以上1mm以下であり、その境界の外側から、内接円の半径の2.5倍までの領域が強化されていることを特徴とするガラス板を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス板全般、特に薄いガラス板、フラットパネルディスプレイ用ガラス板、磁気ディスク基板、自動車ガラスや建築ガラスの部分強化(部分強化や穴周りなど)に関する。
ガラス材料は脆性材料であるために、その使用において破壊が常に問題となっている。そのために、ガラス板の強化が検討されてきた。その代表的なものとして、風冷強化と化学強化が挙げられる。風冷強化は、ガラスを軟化温度付近まで加熱後、送風により冷却することで板厚方向に温度差をもたせて冷却することで、表面に圧縮応力、内部に引っ張り応力を残留させる。風冷強化は自動車用ガラスの強化に広く用いられてはいるが、風冷強化の場合は、2mm以下の薄板ガラスには板厚方向の温度分布がつきにくくなるため、原理上適用が困難であった。前記課題を解決すべく、風冷強化において平面応力に分布をもたせて薄板ガラスの風冷強化を行なうことが提案されている(特許文献1)。しかしながら本方法では風冷ノズルのパターンで表面の風冷効果に分布を持たせるので、平面応力パターンは数mm以上の周期で構成されている。そのために2mm角程度の微小領域を強化するには応力パターンの周期が大きすぎて不向きである。また、この手法は本質的には板厚方向の温度分布をつけることには変わりないので、厚さ2mmを下回るようなガラス板への適用はやはり困難である。また、ガラスを軟化温度にまで加熱しなければならず、ガラス板の変形のコントロールが不可欠であった。
一方で、化学強化はイオン交換などによりガラス表面の化学組成を変化させて表面に圧縮応力が入るようにする(特許文献2、3)。典型的には、イオン半径の小さなアルカリイオンから、イオン径の大きなアルカリイオンに交換する方法がよく用いられてきた。一方で化学強化の場合は、イオン交換は通常、固体の塩をガラス表面に接触させた状態で温度を上げてイオンを交換させる。イオンの移動がおきやすい元素としてナトリウムを代表と擦るアルカリイオンがよく用いられているが、アルカリイオンは電子デバイス作製において、ガラス上に形成する素子にまで移動して機能を妨げるため、これらの用途にアルカリを含有したガラス板を使うことができず、そのため化学強化が適用できなかった。さらに、交換できるイオンが限定されるため、ガラス組成が制限を受けていた。
上記の方法に対し、近年は超短パルスレーザによるガラス強化が提案されてきた(特許文献4〜7)。これらの方法では、パルス幅が数100フェムト秒以下の超短パルスレーザの集光照射によりガラス内部に異質な相(以下応力局在部と呼ぶ)を形成することでクラックの進行を妨害し、強度を向上するとしている。しかしながら、超短パルスレーザで応力局在部を形成する場合、レーザ光線の平均パワーを大きくするとガラス内部にクラックが生じやすくなりガラスの強化には不向きであるため、レーザパワーの低い条件でレーザ照射を行ないガラスの強化を行なってきた。そのため、その方法では異質層が及ぼす効果は限定的で、応力局在部で発生した応力は表面にまで及んでおらず、表面に圧縮応力層が形成されていないものと考えられる。特許文献ではキズのつきやすさやクラックの伸びやすさの向上に関する報告も無い。そのため、実用上それほど高強度化の恩恵を受けることができないと考えられる。さらに、超短パルスレーザは高価で、しかも発振が不安定で産業上利用するには不適当である。さらに、単位面積あたりにかかる照射時間が非常に大きく、実用には程遠いものであった。
また、ナノ秒パルスレーザを用いてガラス内部にマーキングする方法が知られているが(特許文献8〜10)、この技術はガラス内部にクラックや光学的性質が変化する部位を形成して可視化することを目的としており、ガラスを強化する方法は何ら開示されていない。
特許文献7には、クラックを抑えて変質部の屈折率を変化させマーキングを行なう方法が開示されているが、フェムト秒レーザ照射の場合と同様、1パルスエネルギーを小さくしてクラックの発生を抑えたことで、レーザ照射部が及ぼす効果は限定的で、レーザ照射部で発生した応力は表面にまで及んでおらず、表面に圧縮応力層が形成されていないものと考えられる。特許文献8には、レーザビームの集光によりエネルギー密度が高くなると光学的損傷または光学的絶縁破壊が生じ光学的に視認されるとしているが、それらの存在が引き起こす可能性のある内部応力の利用については全く触れられていない。特許文献10にはフェムト秒レーザなどで形成した屈折率変化部を回折を利用して読み取る方法を開示しているが、寸法が小さく前述と同様の理由で表面への圧縮応力層形成への可能性は触れられていない。
特開2002−326830号公報 特開平11−60283号公報 特開平11−232627号公報 特開2003−286048号公報 特開2005−289682号公報 特開2005−289683号公報 特開2005−289685号公報 特開平11−267861号公報 特開2000−133859号公報 特開2001−276985号公報
本発明は、上記のような課題を解決するべく提案されたものであり、ガラス板全般、特に薄いガラス板、フラットパネルディスプレイ用ガラス板、磁気ディスク基板、自動車ガラスや建築ガラスの全面強化または部分強化(外縁部近辺や穴周りなど)の方法および強化されたガラス板を提供する。
本発明は、厚さが0.1mm以上5mm以下のガラス板であって、レーザ照射により生じた、上面視にて観測される波長546nmの入射光で測定したレターデーションが25nm以上の境界であって、その内接円が20μm以上1mm以下である領域(A)を有することを特徴とするガラス板を提供する。
また、本発明は、前記ガラス板の外縁から0.1mm以上離れた領域において、領域(A)の外縁から、前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍にある点で囲まれる領域(B)がガラス板の少なくとも一部を覆うガラス板を提供する。
また、本発明は、上記領域(B)がガラス板のほぼ全面を覆う請求項1に記載のガラス板を提供する。
また、本発明は、前記領域(A)が、島状構造、帯状構造、または島状構造と帯状構造の組み合わせにより構成されるガラス板を提供する。
また、本発明は、前記ガラス板において、領域(B)における20Nの荷重でのビッカース圧子の押し込みにより発生するクラックの長さが、領域(B)を有しないガラス板での前記クラックの長さに比べて90%以下に抑制されたガラス板を提供する。
また、本発明は、前記レーザ光線を、前記ガラス板の内部のみ加熱し、応力局在部を形成することを特徴とするガラス板の強化方法を提供する。
また、本発明は、前記レーザ光線の波長が350〜1630nmのnsecパルスレーザで、パルス幅が1〜500ナノ秒、1パルスあたりエネルギーが10μJ以上(0.33/1000×{(厚さ(mm)/0.3)+10}J以下、繰り返し周波数1〜1000kHz、ガラス入射時のレーザの平均パワーが0.1〜(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)Wであるガラス板の強化方法を提供する。
また、本発明は、レーザ光線をNAが0.3〜1.2の集光レンズで集光させるガラス板の強化方法を提供する。
また、本発明は、レーザ光線の照射時間が20m秒以上1秒以下で、レーザ光線照射中にレーザ光線の焦点をガラスに対して移動させずに、ガラス内部に形成する応力局在部を島状に形成するガラス板の強化方法を提供する。
また、本発明は、レーザ光線を照射中に、レーザ光線の焦点をガラスに対して、相対移動させて、ガラス内部に形成する前記応力局在部を帯状に形成するガラス板の強化方法を提供する。
また、本発明は、レーザ光線の照射後に、前記ガラス板の少なくとも強化部の表面を研磨する工程を含むガラス板の強化方法を提供する。
本発明によれば、従来技術では強化できなかったアルカリ成分を殆ど含有しないガラスや2mm以下の薄いガラス板でも、ガラスの一部または全体の曲げ強度および耐擦傷性を向上させたガラス板を提供できる。本発明のガラス板は、風冷強化や化学処理などの、ガラス板の厚さやガラス組成に依存しない方法で製造することができる。また、強化に必要なレーザ装置も安価で技術的にも実現が容易である。
以下、図面を参照して本発明の方法についてさらに説明する。
本発明の方法は、ガラス板全般、特に薄いガラス板、フラットパネルディスプレイ用ガラス板、磁気ディスク基板、自動車ガラスや建築ガラスの部分強化(部分強化や穴周りなど)の方法および部分強化されたガラス板を提供することを目的とする。
本発明で用いられるガラス板の厚さは0.1mm以上5mm以下である。ガラスの厚さが0.1mmよりも薄いと、レーザ照射時に容易に熱がガラスの表裏に達し溶融されてしまうためガラスが損傷してしまう可能性がある。また、5mmよりも厚いとガラスを加熱すべき領域が増大し、巨大な出力のレーザが必要となるため、風冷強化法や化学強化法に比べてコスト的なメリットが出ないおそれがあるためである。ガラス板の厚さは、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上であるとさらに好ましい。また、ガラス板の厚さは、3mm以下が好ましく、さらに好ましくは2mm以下である。
本発明は、レーザ照射により、上面視にて観測される波長546nmの、ガラス板の厚さ方向に平行な方向の入射光で測定した、レターデーションが25nm以上の境界であって、その内接円の直径が20μm以上1mm以下である領域(A)を有することを特徴としている。レターデーションが25nm以上の境界の内接円の直径が小さいほど、厚みの薄いガラス基板で狭い領域を強化することができるが、小さすぎると多数の領域(A)を形成しなければならず製造の手間がかかるおそれがある。領域(A)の内接円の直径は、20μm以上が好ましく、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。内接円の直径は、0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましい。これは内接円が大きすぎると多大なレーザー出力が必要となるためである。領域(A)の内接円の直径が、20μm以上であると量産性に優れるので好ましい。
風冷強化では、風冷ノズルのパターンで表面の風冷効果に分布を持たせるので、平面応力パターンは数mm以上の周期で構成されている。そのため、風冷強化を用いた場合には、2mm角程度の微小領域を強化するには応力パターンの周期が大きすぎて不向きである。しかし、本発明では、レーザ照射により、レターデーションが25nm以上の境界であって、その内接円の直径が1mm以下である領域を強化することが可能となる。
レーザ照射により生じる応力局在部は、上面視においてはその強い応力のために、レターデーションが観測される。レターデーションの大きさが25nmより小さいと、十分なガラス強度が得られていないおそれがあり、また、200nmより大きいと、内部の応力の大きさが強くなりすぎて、ガラス板が破壊するおそれがある。そのため、より好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは35nm以下である。また、レターデーションの大きさは、180nm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましい。島状の領域(A)の内部にはレターデーションが25nm以下の部分が生じることがあるが、この部分は応力が発生しているが、応力が方向性を有しないためレターデーションが25nm以下となっているので、この部分にも応力は発生している。
前記ガラス板の外縁から0.1mm以上離れた領域において、領域(A)の外縁から、前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍にある点で囲まれる領域(B)がガラス板の少なくとも一部を覆うことによりガラス板が強化される。さらに、この領域(B)がガラス板のほぼ全面を覆うことによって、ガラス板のほぼ全面が強化されていてもよい。
前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍よりも離れた領域では、ビッカース圧子の押し込みにより発生するクラックの長さの抑制効果が十分に得られないため好ましくない。より好ましくは前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2倍、さらに好ましくは1.5倍である。
上記領域(A)は、通常、円形、楕円およびドーナツ形状(これらを島状構造と呼ぶ)、直線または曲帯状(以下帯状構造と呼ぶ)、または島状構造と帯状構造の組み合わせにより構成される。さらに、両者の中間的な状態である楕円形構造も可能である。
楕円形状の場合は島状構造の1つとみなし、長軸を線の伸展方向とし短軸を外縁の幅とする。島状構造や帯状構造が重なり合っている場合は、個々の島状構造若しくは帯状構造の外縁をもって、前期形状の外縁の幅とする。図1は島状構造、帯状構造の形状と領域(A)の内接円を模式的に示したものであり、図1(a)は島状構造、図1(b)は帯状構造、図1(c)は楕円形状の場合における、応力局在部の外縁2と領域(A)の内接円3を示したものである。図1(b)および(c)における一点鎖線9はレーザ照射中心部を示したもので、帯状構造の伸展方向とほぼ一致するものである。特に、ドーナツ型や中抜き形状の場合は中心部からより離隔した外縁と、中心部に近い外縁の双方に接する内接円の直径を内接円の直径と定義する。
応力局在部のガラス板の厚さ方向に平行な方向の長さは、特に限定されないが、50μm以上800μm以下、かつガラス板の厚さの2%以上75%以下であり、さらに応力局在部のガラス板の表面に垂直な方向の上端とガラス上面との距離、および下端とガラス上面との距離が、前記応力局在部の長さの0.1倍以上2倍以下であることが好ましい。ガラス板厚の0.1倍より小さいと、ガラス表面に微小な変形が生じるおそれがあり好ましくない。また、2倍より大きいと十分なガラス強度が得られにくいため好ましくないからである。この場合、応力局在部のガラス板の厚さ方向の長さは、ガラス上面と平行でかつレーザ照射中心部と直交する方向から観測した、1つの応力局在部でレターデーションが25nm以上の境界の、ガラス板の表面に垂直な方向の長さをもって定義する。
本発明においては、レーザ照射により複数の引張応力局在部を面内に分布させ、しかも個々の引張応力局在部は大きなレターデーションを持つため、側面視において非破壊でレターデーションを測定することは非常に困難である。
領域(B)は、領域(A)の外縁から、レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍にある点で囲まれる領域として定義される。領域(B)にはガラス板内部に引っ張り応力が強く存在することが好ましい。そのような場合、ガラス板表面近傍にはその反力で圧縮応力が発生する。これがクラックの伸びの抑制と曲げ応力向上に寄与する。ガラス板の領域(B)表面は応力分布を伴うことがあるが、少なくとも無応力もしくは圧縮応力が発生する。強化部表面に引張応力であるとクラックが伸びやすく、しかも曲げ荷重に対してもガラス板が破壊されやすくなる。圧縮応力は、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上である。
本発明のガラス板では、前記ガラス板の外縁から0.1mm以上離れた場所に少なくとも1箇所以上の領域(B)を有し、この領域(A)の上面視に占める割合は領域(B)の面積の3%以上が好ましい。これは、領域(B)が、前記ガラス板の外縁から0.1mmよりも、近い距離にあると、ガラスの外縁が割れてしまうおそれがあるからである。領域(B)はガラス板の外縁から、0.12mm以上離れていることがより好ましく、0.15mm以上離れているとさらに好ましい。
上面視に占める領域(A)の割合が領域(B)の面積の3%より小さいと表面に発生する応力分布が不均一になり部分的に強化が不十分な領域が出来てしまい、しかも十分な圧縮応力が表面に得られないため、十分なガラス強度を得ることが出来ない恐れがあるため好ましくない。一方で、上面視に占める領域(A)の割合は、領域(B)の面積のほぼ100%まで取りうるが、上面視に占める領域(A)の割合が領域(B)の面積の95%より大きいと、応力付与部に発生する応力が強くなりすぎて基板が割れてしまうおそれがある。より好ましくは6%以上90%以下で、さらに好ましくは8%以上85%以下である。
本発明で提供されるガラス板では、応力局在部の存在によりガラス表面に発生する圧縮応力のために、曲げ強度試験における平均の破壊荷重が、応力局在部を有しないガラス板での平均の破壊荷重に比べて1.2倍以上に向上する。曲げ試験の方法としては、3点曲げ試験、4点曲げ試験を用いることも可能であるが、ガラス外縁部の影響を排除しての試験が必要である。そのため、上の荷重点と下の支点とを円形にしたリングオンリング試験が好ましく用いられる。曲げ強度試験における平均の破壊荷重は、応力局在部を有しないガラス板での平均の破壊荷重に比べて、1.2倍より小さいと強化の効果が十分でなく好ましくない。より好ましくは1.5倍以上であり、さらに好ましくは2.0倍以上である。
領域(B)の外縁の幅は、領域(B)の外縁の接線に垂直な直線が、互いに対向する他の外縁の接線と交わる距離で定義できる。上記の距離の上限は、領域(B)がガラス板の外縁から0.1mm以上離れた領域に納まれば特に制限されない。前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍で囲まれる領域(B)の幅は70μm以上であることが好ましい。前記形状の外縁の幅が70μmより狭いと十分なガラス強度が得られにくいためである。領域(B)の幅は、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上である。
本発明で提供されるガラス板では、ガラス板において、領域(B)における20Nの荷重でのビッカース圧子の押し込みにより発生するクラックの長さが、領域(B)を有しないガラス板での該クラックの長さに比べて90%以下に抑制される。クラックの長さとは、図7の2cを指す。該ビッカース圧子の押し込みにより発生するクラックの長さが、領域(B)を有しないガラス板でのクラックの長さに比べて90%より大きいと、ガラス板の強化部表面への擦傷により発生した傷から、表面からのガラス板の表面に垂直な深いクラックが容易に伸展してしまう。そのため、ガラス板でのクラックの長さは、領域(B)を有しないガラス板でのクラックの長さに比べて85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。
本発明で提供されるガラス板では、ガラス板の領域(B)において、ビッカース圧子の押し込みによりクラックの発生する荷重が、領域(B)を有しないガラス板でのクラックの発生する荷重に比べて1.2倍以上に向上する。クラックの発生する荷重とは、ビッカース圧子の押し込みにより、逆ピラミッド形状の圧痕からクラックの発生しない最大の荷重のことを指す。クラックの発生する荷重が、領域(B)において、領域(B)を有しないガラス板でのクラックの発生する荷重に比べて1.2倍より小さいと、ガラス板表面への擦傷により微小クラックが発生しやすくなり、微小クラックを起点としてガラス板の破壊が起こりやすくなる。そのため、クラックの発生する荷重が、領域(B)において、領域(B)を有しないガラス板でのクラックの発生する荷重に比べて1.5倍以上がより好ましく、さらに好ましくは2倍以上である。
本発明で提供するガラス板を製造する方法として、以下に示す方法が例示される。
ガラスに対し高い透明性を有するレーザ光線をガラス内部に集光することで、レーザ光線の焦点近傍のガラスを歪点以上に加熱し、その後直ちにレーザ照射を終了させる、または集光点を移動させることで加熱部を急速に冷却させる。加熱されて歪点以上に達したガラスは、高温での構造を保ったまま固化することになり、その結果、室温まで冷却後、引っ張り応力が強く残留する。本領域が応力局在部となる。応力局在部の反力としてガラスの表裏面に圧縮応力が発生しガラスの擦傷性や曲げ強度の向上に寄与するものと推測している。
このように、本発明は、先行例に見られる超短パルスレーザ照射で形成されるような応力局在部によって強化するということではなく、ガラスを内部加熱しその内部に応力を付与するという概念でガラス板強化を行なうものである。効果的にガラス表面に圧縮応力を付与するためには、レーザ照射条件を適切に制御して、ガラス内部のみを高温に加熱し、ガラス表面は溶融温度まで達しないようにして、ガラス内部の高温部とガラス表面との温度差を大きくすることが必要である。
ガラスに対し高い透明性を有するレーザ光線でガラス内部を加熱するためには、集光点におけるレーザ光線のパワー密度を十分に高める必要がある。そのためにはパルス幅がナノ秒以下のレーザを用いることが好ましい。または、パルス幅がフェムト秒レーザで光吸収をおこさせる欠陥やプラズマを生成し、それらが存在するうちに別のレーザ光線を照射して光吸収をおこさせて局所的に加熱する方法を用いても良い。この場合、別のレーザ光線は連続発振レーザであってもよいが、プラズマの生成時間は一般にマイクロ秒以下の場合が多いので、ナノ秒パルスのレーザがより好ましい。ガラス内部のみを高温にして、表面は溶融させないためには、レーザ光線のパワーを制限して、応力発生に必要かつ表面まで溶融しない条件でレーザ照射することが好ましい。
本発明では、レーザ光線が波長350〜1630nmのナノ秒パルスレーザで、パルス幅が1〜500n秒、1パルスあたりのエネルギーが10μJ以上(0.33/1000×{(厚さ(mm)/0.3)+10}J以下繰り返し周波数1〜1000kHz、ガラス入射時のレーザの平均パワーが0.1W以上(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)W以下であることが好ましい。
レーザ光線の波長が350nmより短いと、ガラスに対して不透明になり、ガラス内部に集光させる前にガラス表面がダメージを受けて好ましくない。さらに、このような波長を発生させることが技術的に難しいため、レーザ装置は高価なレーザ装置が必要となり好ましくない。波長1630nmより長いと集光点近傍でのガラスの光吸収が起こりにくく、ガラス内部を適切に加熱できないおそれがある。また、1630nmより長い波長のレーザ光を発振させることは技術的に困難であり好ましくない。そのため、レーザ光の波長は、より好ましくは352nm以上であり、さらに好ましくは400nm以上である。また、上記の理由により、レーザ光の波長は、より好ましくは1100nm以下、さらに好ましくは900nm以下である。
レーザ光線のパルス幅が1n秒よりも短いと、そのようなパルスを発振させることは、技術的に困難となりレーザ装置のコストが上昇し好ましくない。また、500n秒よりも長いと、パワー密度が低いために集光点近傍でのガラスの光吸収が起こりにくく、ガラス内部を適切に加熱できないおそれがある。そのため、レーザ光のパルス幅は、より好ましくは2ナノ秒以上であり、さらに好ましくは3ナノ秒以上である。また、上記の理由により、レーザ光のパルス幅は、より好ましくは300ナノ秒以下、さらに好ましくは200ナノ秒以下である。
レーザ光線の繰り返し周波数が1kHzよりも低いとガラス内部への加熱が均一にならず適切な応力を形成できないおそれがある。そのため、レーザ光の繰り返し周波数は、より好ましくは5kHz以上であり、さらに好ましくは10kHz以上である。また、繰り返し周波数が1000kHzよりも大きいと、1パルスあたりのエネルギーが小さくなりすぎてガラス内部を適切に加熱できないおそれがある。そのため、レーザ光の繰り返し周波数は、より好ましくは500kHz以下、さらに好ましくは150kHz以下である。
1パルスあたりのエネルギーは10μJ以上(0.33/1000×{厚さ(mm)/0.3}+10)J以下が好ましい。10μJより小さいと、ガラスを十分に加熱させることができないおそれがある。また、(0.33/1000×{厚さ(mm)/0.3}+10)Jより大きいとエネルギー過剰に与えすぎるため、ガラスの表面や裏面にまで溶融部が達してガラスに損傷を与えるおそれがある。そのため、1パルスあたりのエネルギーは、より好ましくは15μJ以上、さらに好ましくは20μJ以上である。また、上記の理由により、より好ましくは(0.15/1000×{厚さ(mm)/0.3}+10)J以下、さらに好ましくは(0.06/1000×{厚さ(mm)/0.3}+10)J以下である。本発明で適用されるナノ秒パルスレーザの典型的な平均出力や入手容易な集光レンズのNAを鑑みると、前記範囲かつ25μJ〜20mJを使用すると実用的である。
レーザ光線の平均出力は0.1W以上が好ましい。0.1W以下であると、ガラスを十分に加熱することができないからである。より好ましくは0.3W以上、さらに好ましくは0.5W以上である。また、レーザ光線の平均出力が(0.33×(厚さ(mm)/0.3)+10)W以上であると、エネルギーが過剰となりすぎてガラス表面や裏面にまで溶融部が達してガラスに損傷を与えるおそれがある。そのため、レーザ光線の平均出力は(0.24×(厚さ(mm)/0.3)+10)W以下がより好ましく、(0.21×(板厚(mm)/0.3)+10)W以下がさらに好ましい。 本発明で適用されるナノ秒パルスレーザの典型的な平均出力や入手容易な集光レンズのNAを鑑みると、前記範囲かつ0.8〜15Wの範囲で使用することが実用的である。
本発明では、レーザ光線を開口数NAが0.3〜1.2の集光レンズで集光させる。集光レンズのNAが0.3より小さいと、集光点近傍で光吸収が起きにくくなり、ガラスを十分に加熱することができないおそれがある。さらに、加熱領域がレーザ光線の光軸方向に縦長になりやすく、ガラスの表裏面にまで溶融エリアが達してしまいガラス表面が損傷しやすくなる。また、NAが1.2より大きいと、複雑な設計の高価なレンズを使わなければならないので実用上問題が生じる可能性がある。また、レンズ前面から集光点までの作動距離を長くすることが技術的に困難なため用途が制限されるため好ましくない。そのため、NAは、0.35以上がより好ましく、さらに好ましくは0.4以上である。また、上記理由により、NAは0.8以下がより好ましくは、さらに好ましくは0.75以下である。
本発明の1つの方法では、レーザ光線を照射中に、その焦点をガラスに対して移動させずに、ガラス内部に形成する応力局在部を島状に配置することができる。図2(a)は上視図を模式的に示したもので、図2(b)は断面図を模式的に示したものである。点線2は応力局在部の外縁を表面に投影したもので、点線4は引張応力局在部の断面を示したものである。図2(b)に示すように、応力局在部には強い引っ張り応力5が、応力局在部より外側に向かって放射状に発生しているため、その反力として、表面には放射状に圧縮応力が入る領域1が存在すると推測される。一方で、表面の圧縮応力は異方性が強いためキズの入る方向によっては強化の効果が得られないおそれがある。そのため、ガラス板の強化部、即ち領域(B)に、より広範囲にしかも等方に圧縮応力を付与するためには、島状の引張応力局在部をガラス板の表面に垂直な方向も制御しつつ2次元的に配列する必要がある。その1つの方法として、図3(a)に示すように、外縁が点線2で表される領域(A)を正方格子として配列する方法が例示される。このようにすることで、島状の応力局在部の多体効果として、実線10の内側として図示した領域(B)に、より等方的な表面圧縮応力発生領域を得ることが出来る。さらに好ましい配列として、図3(b)に示すような、領域(A)を三角格子として配列する方法が例示される。本配置では、正方格子での配列よりさらに等方的な表面圧縮応力発生領域を、領域(B)に得ることが出来る。
レーザ光線の照射時間は20ミリ秒以上1秒以下の範囲で、ガラスの厚さとレーザ光線の焦点ガラス板の表面に垂直にあわせて調整することが好ましい。20ミリ秒以下であると、ガラス内部の応力の大きさを大きくすることができず、その結果表面に発生する圧縮応力も大きくなりにくいため十分な効果が得られないおそれがある。また、1秒以上であるとガラスの温度が高くなりすぎて、ガラス表面も溶融温度に達してしまい表面を損傷するおそれがある。そのため、レーザ光線の照射時間は、30ミリ秒以上がより好ましく、さらに好ましくは50ミリ秒以上である。上記理由から、レーザ光線の照射時間は、800ミリ秒以下がより好ましく、さらに好ましくは600ミリ秒以下である。
本発明の1つの方法では、レーザ光線の焦点をガラスに対して相対移動させて、ガラス内部に形成する応力局在部を帯状に配置してもよい。帯状の応力局在部の場合の表面圧縮応力発生の様子は、前述の島状の応力局在部を帯状に足し合わせたときの効果とおよそ同じになるが、レーザ照射を連続的に行なうことが可能なため、レーザを照射する時間は島状に照射する場合よりも短くて済むため特に好ましい。
レーザ光線の相対速度は0.1mm/秒以上が好ましく、より好ましくは0.5mm/秒以上さらに好ましくは1mm/秒以上である。レーザ光線の相対速度が0.1mm/秒より小さいとガラスの温度が高くなりすぎて、ガラス表面も溶融温度に達してしまい表面を損傷するおそれがある。レーザ光線の相対速度は、13×(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)mm/秒以下の範囲で、ガラスの厚さとレーザ光線の焦点ガラス板の表面に垂直な方向に合わせて調整することが好ましい。13×(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)mm/秒超であると、ガラス内部の応力の大きさを大きくすることができず、その結果表面に発生する圧縮応力も大きくならないため十分な効果が得られない可能性がある。したがって、レーザ光線の相対速度は、12×(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)mm/秒以下がより好ましく、さらに好ましくは、10×(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)mm/秒以下である。
図4〜図7は応力局在部の帯状構造6の配置を模式的に示したものである。応力局在部の帯状構造6は、図4(a)に示す格子状に配置してもよいし図4(b)のように三角格子状に配置してもよい。ディスク状のガラス板7に対しては図5(c)に示すように同心円状であってもよい。帯状の応力局在部の交差部直上では、複数回にわたりレーザ照射が行なわれるために該交差部でガラスが損傷してしまうおそれがある。そのため、帯状の応力局在部は交差しないように配置することが好ましい。例えば、図5(d)のようにガラス板8内部にノコギリ歯状の線構造を整列させてもよいし、図5(e)のように整列時に位相をずらしてもよい。図6(f)、図6(g)のように正弦波状構造で前記配列と類似に行なっても良い。また、6回対称性に近づけるために、直線とノコギリ歯状の線構造を組み合わせ図6(h)のような構造としても良い。また、島状配列の変化部と帯状配列の変化部を組み合わせて用いても良い。
引張応力局在部の構造体は厚さ方向に1層でもよいし、2層以上としてもよいが、そのガラス板の表面に垂直な引張応力局在部の構造体は、基板の反り防止の観点から、その重心がガラス板の厚さの中心近傍にあることが好ましいが、引張応力局在部の構造体の形状に合わせて、反りが問題とならないガラス板の表面から垂直な位置に配置することが重要である。
本発明では、複数のレーザ光線を用いて、引張応力局在部の形成を並列して行なうことが好ましい。レーザ光線を並列化する方法としては、ビームスプリッターを用いてレーザ光線を複数に分岐して、1つ以上の集光レンズによってガラス内部に照射してもよいし、回折型光学素子でビームを複数に分けて集光レンズで集光してもよい。レンズで集光中に回折光学素子を配置してもよい。数10分割のビーム分岐が実用的に可能であり、レーザ照射時間の短縮に寄与することができる。使用するレーザ光線の本数は、好ましくは1本〜100本、より好ましくは2本〜50本、さらに好ましくは4本〜16本である。
本発明では、レーザ光線の照射後にガラス板表面を研磨して平坦化するとより好ましい。引張応力局在部をレーザ照射で形成する場合、引張応力局在部の直上は、内部のガラスが加熱されるため、その膨張力で隆起することがある。通常、その量は1μmよりも小さいことが多いが、用途によっては問題となる。そのため、レーザ照射後に研磨を行なうことで平坦度を確保すると一層好ましい。研磨の方法は特には限定されないが、酸化セリウムなどにより構成される研磨スラリーを、樹脂製の研磨パッドもしくは研磨布とガラス板との間に入れた状態で両者を相対的に擦り合わせることで行なってもよいし、セラミックス製砥石を摺動させて行なってもよい。
本発明では、ガラス板の平均線膨張係数が10×10−7/K以上150×10−7/K以下である。平均線膨張係数が10×10−7/Kよりも小さいと、レーザ照射によりガラス内部に必要な応力が発生せず、表面にも圧縮応力を発生させることができないため好ましくない。また、150×10−7/Kよりも大きいと内部に強い応力が発生した場合にガラスが内部から割れやすくなるため好ましくない。本発明の方法において、上記条件を満たし、かつガラス内部に集光照射することでガラス内部のみを加熱することができれば、ガラス板を構成するガラス材料は特に限定されない。したがって、本発明の方法はほとんど全てのガラス材料に適用可能である。より好ましくはガラス板の平均線膨張係数は25×10−7/K以上100×10−7/K以下、さらに好ましくは30×10−7/K以上90×10−7/K以下である。
本発明で強化したガラス板は、ガラス板全般、特に薄いガラス板、フラットパネルディスプレイ用ガラス板、磁気ディスク基板、自動車ガラスや建築ガラスの部分強化(部分強化や穴周りなど)に好適に使用される。特に、液晶用ガラス板の非表示部の部分強化に好適に使用される。本方法では、化学強化や風冷強化が困難な液晶用無アルカリガラスの強化も可能であるが、レーザ照射部近傍に複屈折性が発現するために、現行の液晶表示素子の表示部への適用に場合は注意が必要である。非表示部への適用は十分に可能であり好適に使用される。さらに、本発明で強化したガラス板は、磁気ディスク用ガラス板にも好適に使用される。磁気ディスク用ガラス板では表面の凹凸が問題となりにくい基板のクランプ部への利用や、レーザ照射後に平坦度確保のための研磨を行なうことで、基板全面の強化にも好適に使用される。
以下、実施例により本発明をさらに説明する。例1および例2は実施例、例3および例4は比較例である。
(例1)
表1に示す組成のガラスの基板を用意した。50〜350℃での平均線膨張係数を示差膨張計(マックサイエンス社製、TDS5000S)で測定したところ83×10−7−1であった。5cm×5cm、厚さは0.5mmのガラス板を用いた。このガラス板の内部にNd:YVOレーザ(スペクトラフィジックス社製、HIPPO−532Q)の2倍波(波長532nm)のレーザ光線を倍率60倍、NA0.7の顕微鏡用対物レンズで集光して照射した。焦点のガラス板の表面に垂直なガラス表面にレーザ光線の焦点を結ばせた状態から、240μmだけガラスを移動させてガラス内部に焦点を結ぶようにした。レーザ光線のパワーは対物レンズ透過後で約1.5W、パルス幅13ナノ秒、50kHzを用いた。走査速度4mm/秒でレーザ照射して、帯状の応力局在部(領域(A))を形成した。長さ20mmの帯状の領域(A)をピッチ400μm、48本×48本の格子にして約20mm×20mmの領域(B)を得た。領域(B)は、直行するガラス板の外縁の二辺からの距離がそれぞれ10mmとなるように配置した。形成された応力局在部の幅と引張応力局在部の上面視によるガラス板に占める割合は、波長546nmの光をガラス板の厚さ方向に垂直に入射させ、この入射光に対するレターデーションの測定で決定した。以上の測定結果とガラスの厚さを表2に記載した。レーザを照射している時間を表4の所要時間の欄に記載した。
Figure 2008156191
(例2)
例1と同じガラス板に同条件の集光光学系を用いて、島状の応力局在部(領域(A))を形成した。レーザ焦点を固定した状態で0.25秒間レーザを照射後レーザを停止し、ガラスを移動させて新たな島状の応力局在部を形成しそれを繰り返し行なった。領域(A)を、ピッチ200μm、90個×90個の正方格子として約18mm×18mmの強化部(領域(B))を得た。領域(B)は、直行するガラス板の外縁の二辺からの距離がそれぞれ10mmとなるように配置した。形成された領域(B)の距離とガラスの厚さを表2に記載した。レーザを照射している時間を表4の所要時間の欄に記載した。
(例3)
例1で使用したガラス板をそのまま用いて、例1と同様な測定を行なった。
(例4)
実施例1と同じガラス板に特許文献6に記載の方法で超短パルスレーザを照射した。チタンサファイアレーザ(スペクトラフィジックス社製、Hurricane)をフェムト秒レーザ光源として用い、レーザ光線は波長800nm、パルス幅約120フェムト秒、繰り返し周波数1kHz、平均出力約10mWとした。集光には倍率40倍、NA0.6の対物レンズ、ガラス板の表面に垂直な方向に深さ約200μmの位置に集光した。30mm×30mmの領域に走査速度25mm/秒で、25μm間隔で直線状に繰り返し走査して、レーザ照射部を直線状に配置した。レーザ照射部は、直行するガラス板の外縁の二辺からの距離がそれぞれ10mmとなるように配置した。形成された応力局在部(領域(A))の内接円の直径を表3に記載した。また、照射領域が20mm×20mm相当のレーザ照射時間を、表4の所要時間の欄に記載した。
例1〜例4で作製した試料にサンドブラスト装置(不二製作所製、SGF−3)を用いて、#1000のアルミナ砥粒でサンドブラストを行なって加傷した後、上リング径10mm、下リング径35mm、クロスヘッドスピード1mm/分のリングオンリング試験で破壊荷重を測定した。破壊試験機として、オリエンテック社製UTA−5kNを用いた。
結果を表4に示した。各例で使用した試料数を個数の欄に、破壊荷重の平均と標準偏差をそれぞれ破壊荷重、標準偏差の欄に示した。
Figure 2008156191
Figure 2008156191
Figure 2008156191
表2と表3とを比較すると、本発明での応力局在部(領域(A))の内接円の直径、即ち、応力局在部の大きさは、特許文献4〜7に記述される応力局在部の大きさの範囲外であることがわかる。また、表4に見られるように、例1および2では、平均の破壊荷重が、前記応力局在部を有しないガラス板(例3)での平均の破壊荷重に比べて1.3倍に向上した。
各例のガラス表面に、20Nの荷重でビッカース圧子を打ち込んだ。試験力に到達するまでの時間は2秒、試験力を保持する時間を15秒とした。図7のように発生したクラックにおいて、圧子の除荷後すみやかに長さ2cを測定した。ビッカース圧子を打ち込んだ場所は、例1のガラス板では、強化部(領域(B))の中で帯状の応力局在部(領域(A))で囲まれる正方形の中心とした。また、例2のガラス板では、強化部(領域(B))の中で、島状の応力局在部(領域(A))4点で形成される最小の正方形の中心に打ち込んだ。さらに、例4では、直線状に配列したレーザ照射部の列と列との中間点にビッカース圧子を打ち込んだ。結果を表5に示す。各例で行なった打ち込みの回数を回数の欄に、2cの平均と標準偏差をクラック長さと標準偏差の欄に示した。その結果、クラックの伸びが例1と2とでは、前記応力局在部を有しないガラス板での該クラックの長さに比べて90%以下に抑制されていた。
Figure 2008156191
例1〜3のガラス表面に、前記試験と同じ条件で荷重を変えながらビッカース圧子を打ち込んで、クラックの発生する最低の荷重を調べた。ビッカース圧子を打ち込んだ場所は、実施例1のガラス板では、強化部の中で帯状の応力局在部で囲まれる正方形の中心とした。また、実施例2のガラス板では、強化部の中で島状の応力局在部4点で形成される最小の正方形の中心とした。クラックの発生する最低の荷重をクラック発生荷重として表7に記載した。表7に見られるように、実施例1、2についてはクラック発生荷重の増加が見られ、ビッカース圧子の押し込みによりクラックの発生する荷重が、前記引張応力局在部を有しないガラス板での該クラックの発生する荷重に比べて1.5倍以上に向上していた。
さらに、実施例2のガラスにおいて、領域(A)の最外殻のレーザ照射の中心点からの距離を変えたときのクラック長さの変化を調べた。20Nの荷重でビッカース圧子を打ち込んだ。試験力に到達するまでの時間は2秒、試験力を保持する時間を15秒とした。図6のように発生したクラックにおいて、圧子の除荷後すみやかに長さ2cを測定した。その結果を表6に示す。前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍で囲まれる領域(B)において、クラックの伸びが表5記載の例2および3のガラスのクラックの伸びの90%以下に抑制されていた。
Figure 2008156191
Figure 2008156191
(例5)
例1と同じガラスで、寸法が5mm×50mm、厚さ0.5mmのガラス板を用意した。実施例1と同じレーザ照射条件で、長手方向に4mmの帯状の応力局在部を1本形成した。板の厚さ断面(側面)からレーザ照射部の上方(板の表面方向)を偏光板と鋭敏色板で観察したところ、応力局在部に引張応力、板の表裏面に圧縮応力の存在を確認した。
また、例2と同じ方法で1個の島状の応力局在部を形成し、前記方法と同様にして板の厚さ断面(側面)からレーザ照射部の上方(板の表面方向)を偏光板と鋭敏色板で観察したところ、応力局在部に引張応力、板の表裏面に圧縮応力の存在を確認した。
本発明のガラス板およびガラス板の強化方法は、特に薄いガラス板、フラットパネルディスプレイ用ガラス板、磁気ディスク基板、自動車ガラスや建築ガラスの部分強化(部分強化や穴周りなど)に用いることができる。
島状構造および帯状構造の形状と領域(A)の内接円を模式的に示した図 ガラス内部に形成する応力局在部の上面図、断面図 応力局在部を正方格子および三角格子として配列した模式図 帯状の応力局在部を正方格子および三角格子としてとして配列した模式図 種々の帯状の応力局在部を示した図 種々の帯状の応力局在部を示した図 ビッカース圧子の押し込みにより発生するクラックの長さを示した図
符号の説明
1:圧縮応力発生部
2:領域(A)の外縁
2C:クラックの長さ
3:領域(A)の内接円
4:応力局在部の断面
5:引張応力
6:帯状構造の応力局在部(領域(A))
7:ガラス円盤
8:ガラス基板
9:レーザ照射中心部
10:領域(B)の外縁
11:ガラス板裏面
12:ガラス板表面

Claims (11)

  1. 厚さが0.1mm以上5mm以下のガラス板であって、レーザ照射により生じた、上面視にて観測される波長546nmの入射光で測定したレターデーションが25nm以上の境界であって、その内接円の直径が20μm以上1mm以下である領域(A)を有することを特徴とするガラス板。
  2. 前記ガラス板の外縁から0.1mm以上離れた領域において、領域(A)の外縁から、前記レーザ照射の中心点から領域(A)の外縁までの距離の2.5倍にある点で囲まれる領域(B)がガラス板の少なくとも一部を覆う請求項1に記載のガラス板。
  3. 請求項2に記載された領域(B)がガラス板のほぼ全面を覆う請求項1に記載のガラス板。
  4. 請求項1に記載の領域(A)が、島状構造、帯状構造、または島状構造と帯状構造の組み合わせにより構成される請求項1〜3のいずれかに記載のガラス板。
  5. 前記ガラス板において、領域(B)における20Nの荷重でのビッカース圧子の押し込みにより発生するクラックの長さが、領域(B)を有しないガラス板での前記クラックの長さに比べて90%以下に抑制された請求項1〜4のいずれかに記載のガラス板。
  6. 前記レーザ光線を、前記ガラス板の内部に集光し、前記ガラス板の内部のみ加熱し、応力局在部を形成することを特徴とするガラス板の強化方法。
  7. 前記レーザ光線の波長が350〜1630nmのナノ秒パルスレーザで、パルス幅が1〜500ナノ秒、1パルスあたりエネルギーが10μJ以上(0.33/1000×{(厚さ(mm)/0.3)+10}J以下、繰り返し周波数1〜1000kHz、ガラス入射時のレーザの平均パワーが0.1〜(1/3×(厚さ(mm)/0.3)+10)Wである請求項6に記載のガラス板の強化方法。
  8. レーザ光線をNAが0.3〜1.2の集光レンズで集光させる請求項6または7記載のガラス板の強化方法。
  9. レーザ光線の照射時間が20m秒以上1秒以下で、レーザ光線照射中にレーザ光線の焦点をガラスに対して移動させずに、前記応力局在部を島状に形成する請求項6〜8のいずれかに記載のガラス板の強化方法。
  10. レーザ光線を照射中に、レーザ光線の焦点をガラスに対して、相対移動させて、前記応力局在部を帯状に形成する請求項6〜9のいずれかに記載のガラス板の強化方法。
  11. レーザ光線の照射後に、前記ガラス板の少なくとも強化部の表面を研磨する工程を含む請求項6〜10のいずれかに記載のガラス板の強化方法。
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