JP2008152996A - 電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極表面に析出した金属リチウムによる電解質の不足を補い、充放電サイクル特性に優れた電池を提供する。
【解決手段】この電池は、負極22の容量が、軽金属の吸蔵および離脱による容量と軽金属の析出および溶解による容量とを含み、かつその和により表されるものである。負極22の負極活物質層22Bにはケッチェンブラックなどのカーボンブラックが含まれており、その含有率が0.1質量%以上1.0質量%以下となっている。カーボンブラックが電解質を貯蔵するので、負極表面に析出した金属リチウムが電解質を吸収しても負極22の内部における電解質の不足を十分に補うことができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、正極および負極と共に電解質を備え、負極の容量が、軽金属の吸蔵および離脱による容量と、軽金属の析出および溶解による容量とを含み、かつその和により表される電池に関する。
近年、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant;個人用携帯型情報端末機器)、カムコーダー、あるいはノート型コンピュータに代表される携帯型電子機器の発達は目覚しく、それらの小型化および軽量化と共に、それらの駆動電源である電池、特に二次電池の高容量化、高エネルギー密度化が強く望まれている。
高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、例えば、負極に炭素材料などのリチウム(Li)を吸蔵および離脱することが可能な材料を用いたリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池では、負極材料中に吸蔵されたリチウムが必ずイオン状態であるように設計されるため、エネルギー密度は負極材料中に吸蔵することが可能なリチウムイオン数に大きく依存する。よって、リチウムイオン二次電池では、リチウムイオンの吸蔵量を高めることによりエネルギー密度を更に向上させることができるものと考えられる。しかし、現在リチウムイオンを最も効率的に吸蔵および離脱することが可能な材料とされている黒鉛の吸蔵量は、1g当たりの容量換算で372mAhが理論的に限界であり、最近では、ほぼその限界値まで達しつつある。
高エネルギー密度を得ることができる二次電池としては、また、負極にリチウム金属を用い、負極反応にリチウム金属の析出および溶解反応を利用したリチウム金属二次電池がある。リチウム金属は、理論容量が2054mAh/cm3 と大きく、リチウムイオン二次電池で用いられる黒鉛の2.5倍にも相当するエネルギー密度を有することから、リチウム金属二次電池はリチウムイオン二次電池を上回る高いエネルギー密度を実現させる潜在能力を秘めている。
これまでにも、多くの研究者等によりリチウム金属二次電池の実用化に関する研究開発がなされてきた(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、リチウム金属二次電池は、充放電を繰り返した際の放電容量の劣化が大きく、その実用化は現状では非常に困難である。この容量劣化は、リチウム金属二次電池が負極においてリチウム金属の析出・溶解反応を利用していることに基づいており、充放電に伴い、析出したリチウム金属が電極から脱落したり電解質と反応したりすることにより失活してしまうことが原因と考えられる。
そこで本出願人は、負極の容量がリチウムの吸蔵および離脱による容量成分と、リチウム金属の析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表される二次電池を新たに開発した(例えば、特許文献1参照。)。これは、負極にリチウムイオンを吸蔵および離脱することが可能な炭素材料を用い、充電の途中において炭素材料の表面にリチウム金属を析出させるようにしたものである。この二次電池によれば、高エネルギー密度を達成しつつ、充放電サイクル特性を向上させることが期待できる。
さらに、本出願人は、正極合剤層と負極合剤層との厚さの比を調整したり(特許文献2参照)、製造段階において負極へ金属状態やイオン状態のリチウムを添加したり(特許文献3参照)するなどして、電池特性の向上を図っている。
ジャンポール・ガバノ(Jean-Paul Gabano)編,「リチウム・バッテリーズ(Lithium Batteries )」,ロンドン,ニューヨーク,アカデミック・プレス(Academic Press),1983年 国際公開第01/22519号パンフレット 特開2002−93464号公報 特開2004−363076号公報
上記特許文献1〜3の電池では、充電の際、負極の表面を覆うように金属リチウムが被膜状に析出する。この金属リチウムは比表面積の大きな(嵩密度の小さな)微粒子であることから、負極内部に存在する電解質を比較的多量に吸収することとなる。このため、場合によっては負極内部において電解質の不足が生じ、結果としてサイクル特性の劣化を招くおそれがあった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、負極表面に析出した金属リチウムによる電解質の不足を補い、充放電サイクル特性に優れた電池を提供することにある。
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備え、負極の容量が、軽金属の吸蔵および離脱による容量と、軽金属の析出および溶解による容量とを含み、かつその和により表されるものである。この負極は、カーボンブラックを含んでいる。
本発明の電池では、負極に存在するカーボンブラックが電解質を十分に保持するので、負極表面に析出した金属リチウムによる電解質の吸収が生じても、負極内部における電解質の不足を補うことができる。
本発明の電池によれば、負極にカーボンブラックを含有させるようにしたので、充放電サイクル特性の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における一実施の形態としての二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型といわれるものであり、正極リード11および負極リード12が取り付けられた巻回電極体20をフィルム状の外装部材30の内部に収容したものである。
正極リード11および負極リード12は、それぞれ、外装部材30の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状となっている。
外装部材30は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材30と正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材30は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図2は、図1に示した巻回電極体20のII−II線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体20は、正極21と負極22とをセパレータ23および電解質層24を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面または片面に正極活物質層21Bを設けたものである。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質と、導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含んで構成されている。導電剤としては、黒鉛や各種のカーボンブラック(例えばケッチェンブラック)などの炭素材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。
正極活物質は、軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することの可能な正極材料の1種または2種以上を含むものである。そのような正極材料としては、例えば、一般式がLip Mn(1-p-q-r)q MIr 2-s t 2で表される層状岩塩型のリチウム複合酸化物が挙げられる。式中のJは、例えばニッケル(Ni),コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のうちの1種以上の金属元素を表す。また、式中のMIは、例えばコバルト(Co),マグネシウム(Mg),アルミニウム,ホウ素(B),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr),鉄,銅(Cu),亜鉛(Zn),ジルコニウム(Zr),モリブデン(Mo),スズ(Sn),カルシウム(Ca),ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの1種以上の金属元素を表す。p,q,r,s,tは、それぞれ、例えば0<p≦0. 2,0. 1≦q≦1.0,0≦r≦0. 5,−0. 1≦s≦0. 2,0≦t≦0.1の範囲内の値である。あるいは、一般式がLia Mn(2-b) MIIで表されるスピネル型のリチウム複合酸化物を正極材料として用いるようにしてもよい。式中、MIIは、コバルト,ニッケル,マグネシウム,アルミニウム,ホウ素,チタン,バナジウム,クロム,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,スズ,カルシウム,ストロンチウムおよびタングステンのうちの1種以上の金属元素を表す。a,b,c,dは、それぞれ、例えばa≧0.9,0≦b≦0.6,3.7≦c≦4.1,0≦d≦0.1の範囲内の値である。さらには、一般式がLiX MIIIPO4で表されるオリビン型のリチウム複合酸化物を正極材料として用いることも可能である。xは、例えばx≧0.9を満たす値である。
なお、このような正極材料は、例えば、リチウムの炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物と、遷移金属の炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物とを所望の組成になるように混合し、600℃〜1000℃の範囲内の温度で焼成したのち粉砕することにより調製される。
負極22は、負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、例えば正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んでいてもよい。
なお、軽金属の吸蔵および離脱とは、軽金属イオンがそのイオン性を失うことなく電気化学的に吸蔵および離脱されることを意味する。これは、吸蔵された軽金属が完全なイオン状態で存在する場合のみならず、完全なイオン状態とは言えない状態で存在する場合も含む。これらに該当する場合としては、例えば、黒鉛に対する軽金属イオンの電気化学的なインタカレーション反応による吸蔵が挙げられる。また、金属間化合物を含む合金への軽金属の吸蔵、あるいは合金の形成による軽金属の吸蔵もそれに該当する。
負極活物質層22Bにはカーボンブラックが含まれている。カーボンブラックとしては、10nm以上50nm以下の一次粒子径を有すると共に50m2 /g以上1500m2 /g以下の比表面積を有するもの(例えば、ケッチェンブラック)が望ましい。このようなカーボンブラックは比表面積が大きいので、比較的多量の電解質を吸収する機能を発揮する。また、負極活物質層22Bにおけるカーボンブラックの含有率は、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが望ましい。このような範囲において、より良好な充放電サイクル特性が得られるからである。
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、例えば黒鉛や易黒鉛化性炭素あるいは難黒鉛化性炭素などが挙げられる。
難黒鉛化性炭素は、例えば、有機材料を1200℃程度で熱処理し、粉砕・分級することにより得られる。熱処理は、例えば、必要に応じて300℃〜700℃で炭化した(固相炭素化過程)のち、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1300℃まで昇温し、この温度を0〜30時間程度保持することにより行う。粉砕は、炭化の前後、あるいは昇温過程の間で行ってもよい。
出発原料となる有機材料としては、例えば、フルフリルアルコールあるいはフルフラールの重合体,共重合体、またはこれらの高分子と他の樹脂との共重合体であるフラン樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂,アクリル樹脂,ハロゲン化ビニル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアセチレンあるいはポリパラフェニレンなどの共役系樹脂、セルロースあるいはその誘導体、コーヒー豆類、竹類、キトサンを含む甲殻類、バクテリアを利用したバイオセルロース類を用いることもできる。さらに、水素原子(H)と炭素原子(C)との原子数比H/Cが例えば0.6〜0.8である石油ピッチに酸素(O)を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)させた化合物を用いることもできる。この化合物における酸素の含有率は3%以上であることが好ましく、5%以上であればより好ましい(特開平3−252053号公報参照)。酸素の含有率は炭素材料の結晶構造に影響を与え、これ以上の含有率において難黒鉛化性炭素の物性を高めることができ、負極22の容量を向上させることができるからである。ちなみに、石油ピッチは、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、またはアスファルトなどを、蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出あるいは化学重縮合することにより得られる。また、酸化架橋形成方法としては、例えば、硝酸,硫酸,次亜塩素酸あるいはこれらの混酸などの水溶液と石油ピッチとを反応させる湿式法、空気あるいは酸素などの酸化性ガスと石油ピッチとを反応させる乾式法、または硫黄,硝酸アンモニウム,過硫酸アンモニア,塩化第二鉄などの固体試薬と石油ピッチとを反応させる方法を用いることができる。
なお、出発原料となる有機材料はこれらに限定されず、酸素架橋処理などにより固相炭化過程を経て難黒鉛化性炭素となり得る有機材料であれば、他の有機材料でもよい。
黒鉛としては、例えば、真密度が2.10g/cm3 以上のものが好ましく、2.18g/cm3 以上のものであればより好ましい。なお、このような真密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。また、(002)面の面間隔は0.340nm未満であることが好ましく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内であればより好ましい。
黒鉛は、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。人造黒鉛であれば、例えば、有機材料を炭化して高温熱処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。高温熱処理は、例えば、必要に応じて窒素(N2 )などの不活性ガス気流中において300℃〜700℃で炭化し、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1500℃まで昇温して、この温度を0時間〜30時間程度保持し仮焼すると共に、2000℃以上、好ましくは2500℃以上に加熱し、この温度を適宜の時間保持することにより行う。
出発原料となる有機材料としては、石炭あるいはピッチを用いることができる。ピッチには、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、アスファルトなどを蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出,化学重縮合することにより得られるもの、木材還流時に生成されるもの、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラートまたは3,5−ジメチルフェノール樹脂がある。これらの石炭あるいはピッチは、炭化の途中最高400℃程度において液体として存在し、その温度で保持されることで芳香環同士が縮合・多環化し、積層配向した状態となり、そののち約500℃以上で固体の炭素前駆体、すなわちセミコークスとなる(液相炭素化過程)。
有機材料としては、また、ナフタレン,フェナントレン,アントラセン,トリフェニレン,ピレン,ペリレン,ペンタフェン,ペンタセンなどの縮合多環炭化水素化合物あるいはその誘導体(例えば、上述した化合物のカルボン酸,カルボン酸無水物,カルボン酸イミド)、またはそれらの混合物を用いることができる。更に、アセナフチレン,インドール,イソインドール,キノリン,イソキノリン,キノキサリン,フタラジン,カルバゾール,アクリジン,フェナジン,フェナントリジンなどの縮合複素環化合物あるいはその誘導体、またはそれらの混合物を用いることもできる。
なお、粉砕は、炭化,仮焼の前後、あるいは黒鉛化前の昇温過程の間のいずれで行ってもよい。これらの場合には、最終的に粉末状態で黒鉛化のための熱処理が行われる。但し、嵩密度および破壊強度の高い黒鉛粉末を得るには、原料を成型したのち熱処理を行い、得られた黒鉛化成型体を粉砕・分級することが好ましい。
例えば、黒鉛化成型体を作製する場合には、フィラーとなるコークスと、成型剤あるいは焼結剤となるバインダーピッチとを混合して成型したのち、この成型体を1000℃以下の低温で熱処理する焼成工程と、焼成体に溶融させたバインダーピッチを含浸させるピッチ含浸工程とを数回繰り返してから、高温で熱処理する。含浸させたバインダーピッチは、以上の熱処理過程で炭化し、黒鉛化される。ちなみに、この場合には、フィラー(コークス)とバインダーピッチとを原料にしているので多結晶体として黒鉛化し、また原料に含まれる硫黄や窒素が熱処理時にガスとなって発生することから、その通り路に微小な空孔が形成される。よって、この空孔により、リチウムの吸蔵・離脱反応が進行し易くなると共に、工業的に処理効率が高いという利点もある。なお、成型体の原料としては、それ自身に成型性、焼結性を有するフィラーを用いてもよい。この場合には、バインダーピッチの使用は不要である。
負極材料は、さらに、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物を含んでいてもよい。これらを、難黒鉛化性炭素を含む炭素材料と共に負極材料として用いることで、高いエネルギー密度と、優れた充放電サイクル特性とを得ることができる。なお、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、スズ,鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛,アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム,ホウ素,ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式MIVu MVv Liw,あるいは化学式MIVk MVIl MVIIm で表されるものが挙げられる。これら化学式において、MIVはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MVはリチウムおよびMIV以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MVIは非金属元素の少なくとも1種を表し、MVIIはMIV以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、u,v,w,k,l,mの値はそれぞれu>0,v≧0,w≧0,k>0,l>0,m≧0である。
中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl,AlSb,CuMgSb,SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,Ni2 Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,NiSi2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeSi2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VSi2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,Si2 2 O,SiOy (0<y≦2),SnOz (0<z≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料は、さらに、他の金属化合物あるいは高分子材料を含んでいてもよい。他の金属化合物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどの酸化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。これらの負極活物質の中でも、特に、リチウムイオンの吸蔵反応が活性なものを用いることが望ましく、中でも、充放電電位が比較的リチウム金属に近いものを用いることが望ましい。
また、この二次電池では、充電の過程において、開回路電圧が過充電電圧よりも低い時点で負極22にリチウム金属が析出し始めるようになっている。つまり、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において負極22にリチウム金属が析出しており、負極22の容量は、リチウムの吸蔵および離脱による容量と、リチウム金属の析出および溶解による容量とを含み、かつその和により表される。従って、この二次電池では、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料とリチウム金属との両方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっている。この二次電池では、負極22におけるリチウムの吸蔵および離脱による容量に対する正極21の容量(正極21の容量/負極22におけるリチウムの吸蔵および離脱による容量)が、1.0 よりも大きく1.3 以下であることが望ましい。このような容量比において、良好な容量維持率が得られるからである。
なお、過充電電圧というのは、電池が過充電状態になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G1101)に記載され定義される「完全充電」された電池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後の開回路電圧よりも高い電圧を指す。具体的には、この二次電池では、例えば開回路電圧が4.2Vの時に完全充電となり、開回路電圧が0V以上4.2V以下の範囲内の一部においてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出している。
これにより、この二次電池では、高いエネルギー密度を得ることができると共に、充放電サイクル特性および急速充電特性を向上させることができるようになっている。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多硬質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化したりすることで用いることができる。
セパレータ23の上に設けられた電解質層24は、電解質塩であるリチウム塩を非水溶媒に溶解させた電解液を含有している。非水溶媒としては、比較的誘電率の高い高誘電率溶媒のいずれか1種または2種以上を主溶媒として用い、さらに低粘度溶媒のいずれか1種または2種以上を混合したものを用いることが望ましい。
高誘電率溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンあるいはバレロラクトン類が挙げられる。低粘度溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネートあるいはジメチルカーボネートなどの対称構造を有する鎖状炭酸エステル、メチルエチルカーボネートあるいはメチルプロピルカーボネートなどの非対称構造を有する鎖状炭酸エステル、プロピオン酸メチルあるいはプロピオン酸エチルなどのカルボン酸エステルが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)や四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)などの無機リチウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CFSOLi),リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド((CFSONLi),リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド((CSONLi),リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド((CFSOCLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウムリチウム塩が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上混合して用いる場合、LiPF6 を主成分とすることが望ましい。LiPF6 は、イオン導電率が高く、酸化安定性にも優れているからである。
これらリチウム塩の含有量(濃度)は溶媒に対して0.5mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られなくなる恐れがあるからである。
また、電解質層24としては、高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の電解質によって構成するようにしてもよい。高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体である。具体的には、ポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンを成分とする共重合体が挙げられる。共重合体の具体例としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体,フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、あるいはこれらにさらに他のエチレン性不飽和モノマーを共重合したものなどが挙げられる。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を用いる場合、この共重合体に対する電解液の質量比は、5以上12以下とすることが望ましい。このほか、高分子化合物としては、ポリアクリロニトリル,ポリエチレンオキシド,ポリメチルメタクリレート,ポリ塩化ビニルあるいはこれらの誘導体も用いることができる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極活物質と結着剤と導電剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aの両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。続いて、正極集電体21Aに正極リード11を、超音波溶接やスポット溶接などにより接合する。
一方で、カーボンブラックと負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることにより負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aの両面または片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極集電体22Aに負極リード12を、超音波溶接やスポット溶接などにより接合する。
こののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して、巻回電極体20の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材30に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材30の内部に収納する。さらに電解液を外装部材30の内部に注入したのち、外装部材30の開口部を熱融着して密封する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材30との間には密着フィルム31を挿入する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
また、電解液を高分子化合物に保持させる場合には、以下のように製造するとよい。
まず、上述した方法により形成した巻回電極体20の前駆体を外装部材30に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材30の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤と、重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材30の内部に注入したのち、外装部材30の開口部を熱融着して密封する。そののち、必要に応じて熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層24を形成し、図1および図2に示した二次電池を組み立てる。
なお、巻回体を作製してから電解質用組成物を注入するのではなく、例えば、正極21および負極22の上に電解質用組成物を塗布することで電解質層24を形成するようにしてもよい。
この二次電池では、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解質層24を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。さらに充電を続けると、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において、充電容量がリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料の充電容量能力を超え、負極22の表面に金属リチウムが析出し始める。そののち、充電を終了するまで負極22には金属リチウムが析出し続ける。
次いで、放電を行うと、まず、負極22に析出した金属リチウムがイオンとなって溶出し、電解質層24を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。さらに放電を続けると、負極活物質層22Bに吸蔵されたリチウムイオンが離脱し、電解質層24を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。その結果、高いエネルギー密度および良好な充放電サイクル特性が得られる。特に、負極22におけるカーボンブラックが電解質を十分に貯蔵可能であることから、負極22の表面に析出した金属リチウムによる電解質の吸収が生じても、負極22の内部における電解質の不足を補い、負極22の容量向上を図ることができる。この結果、より優れた充放電サイクル特性を有する電池を実現することができる。なお、正極21に含まれるカーボンブラックも電解質の保持機能を有するが、その電解質が金属リチウムを通過して負極22内部へ到達することは困難である。したがって、正極21中のカーボンブラックによっては、負極22の容量低下を改善するための十分な効果は得られない。
さらに、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−24)
本実施例では、上記実施の形態に対応した二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1のモル比で混合し、空気中において900℃で5時間焼成してリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。得られたLiCoO2 についてX線回折を行ったところ、JCPDS(Joint Committee of Powder Diffraction Standard)ファイルに登録されたLiCoO2 のピークとよく一致していた。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物を粉砕して、レーザ回折法で得られる累積50%粒径が15μmの粉末状とし、正極活物質とした。
続いて、このリチウム・コバルト複合酸化物粉末96.5質量%と、導電材としてのケッチェンブラック0.5質量%と、結着材としてのポリフッ化ビニリデン3質量%とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。次いで、この正極合剤スラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成したのち、幅50mm,長さ350mmの形状に切断して正極21を作製した。
一方で、人造黒鉛(メソカーボンマイクロビーズ;MCMB)の粉末と、結着材であるポリフッ化ビニリデンとを質量比で95:5の割合で混合したのち、さらに所定量のケッチェンブラック(一次粒子径が35nmであり、比表面積が1250m2 /gである)を添加し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーを得た。ここで、負極活物質におけるケッチェンブラックの含有率については後出の表1のように変化させた。
次いで、得られた負極合剤スラリーを、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し乾燥させて負極活物質層22Bを形成した。そののち、負極活物質層22Bが形成された負極集電体22Aを幅52mm,長さ370mmの形状に切断して負極22を作製した。
次に、炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)とを6:4の割合(質量比)で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を0.7mol/kgの割合で溶解させ、電解液を作製した。さらに、この電解液の保持体となる高分子化合物として、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを93.1:6.9の割合(質量比)で混合させた共重合体を用意した。これら共重合体に電解液を保持させゲル状の電解質を得た。この際、共重合体と電解液との混合割合(質量比)は1:9とした。
正極21、負極22および電解質を作製したのち、アルミニウムよりなる正極リード11を正極21に取り付けると共に、ニッケルよりなる負極リード12を負極22に取り付けた。さらに、正極活物質層21Bおよび負極活物質層22Bの上にそれぞれ電解質層24を形成した。こののち、厚さ12μmの微多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを介して正極21と負極22とを積層し、巻回して保護テープ25を接着することで巻回電極体20を作製した。さらに巻回電極体20を外装部材30の間に挟み込み、外装部材30の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入するなど、所定の工程を経ることで実施例1−1〜1−24の二次電池を作製した。本実施例では、負極22におけるリチウムの吸蔵および離脱による容量に対する正極21の容量の比である容量比(正極21の容量/負極22におけるリチウムの吸蔵および離脱による容量)を、それぞれ表1に示したように変化させた。
また、実施例1−1〜1−24に対する比較例1−1〜1−4として、負極活物質にケッチェンブラックを添加しなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−24と同様にして二次電池を作製した。さらに、比較例1−5〜1−11として、容量比を0.95とすると共にケッチェンブラックの含有率を0〜1.20質量%の範囲で変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−24と同様にして二次電池を作製した。
このように作製した実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−11の二次電池について、充放電を行い、サイクル特性(容量維持率)を調べた。結果を表1,表2および図3に示す。充電については、1Cの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行なったのち、4.2Vの定電圧で充電の総時間が3時間になるまで行った。一方、放電については、1Cの定電流で電池電圧が3.0Vとなるまで行った。1Cというのは理論容量を1時間で放電しきる電流値である。また、表1および表2には、初期容量についても示した。初期容量は、初回放電容量(1サイクル目の放電容量)であり、比較例1−5の値を100%とした相対値で表している。容量維持率(サイクル特性)は、初回放電容量(1サイクル目の放電容量)に対する300サイクル目の放電容量の比率、すなわち、(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)とした。図3では、横軸がケッチェンブラックの含有率(質量%)を示し、縦軸が容量維持率(%)を示す。
Figure 2008152996
Figure 2008152996
表1,表2および図3に示したように、実施例1−1〜1−24によれば、容量比が等しい場合において、負極活物質にケッチェンブラックを含まない比較例1−1〜1−4に比べて容量維持率を向上させることができた。特に、負極活物質におけるケッチェンブラックの含有率が0.10質量%以上1.0質量%以下の範囲において、容量維持率の大幅な向上を図ることができた。その場合、容量比が1.0よりも大きく1.3以下であると、より優れた容量維持率が得られることがわかった。
なお、実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−4は、全て1.0を上回る容量比を有する電池である。すなわち、負極の容量が、リチウムの吸蔵および離脱による容量とリチウム金属の析出および溶解による容量とを含み、かつ、その和によって表される電池である。これに対し、比較例1−5〜1−11は、負極の容量がリチウムの吸蔵および離脱による容量のみによって表される従来のリチウムイオン電池である。このため、実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−4では、比較例1−5〜1−11と比べて高い初期容量を示している。さらに、比較例1−5〜1−11では、ほぼ一定の容量維持率を示し、ケッチェンブラックの添加による容量維持率の向上は見られなかった(表2)。
(実施例2−1〜2−25)
次に、ケッチェンブラックの一次粒子径および比表面積を下記の表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−24と同様にして二次電池を作製した。具体的には、ケッチェンブラックについて、一次粒子径を8nm以上55nm以下の範囲内で変化させると共に比表面積を40m2 /g以上1600m2 /g以下の範囲内で変化させた。このような実施例2−1〜2−25についても、実施例1−1〜1−24と同様にして充放電を行い、サイクル特性(容量維持率)を調べた。その結果を表3および図4に示す。ここでは、容量比を1.16に、ケッチェンブラックの含有率を0.3質量%にそれぞれ固定した。図4では、横軸がケッチェンブラックの一次粒子径(nm)を示し、縦軸が容量維持率(%)を示す。
Figure 2008152996
表3および図4に示したように、ケッチェンブラックが、10nm以上50nm以下の一次粒子径を有すると共に50m2 /g以上1500m2 /g以下の比表面積を有する場合に、特に優れた容量維持率を得られることがわかった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。その際、負極には、上記実施の形態で説明した負極活物質を同様にして用いることができる。
さらに、上記実施の形態または実施例では、ラミネートフィルム型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は円筒型、コイン型、ボタン型、あるいは角型などの他の形状を有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
また、上記実施の形態および実施例では、負極活物質におけるカーボンブラックの含有率、一次粒子径および比表面積、ならびに負極放電容量に対する正極充電容量の比などの各パラメータについて、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明したが、その説明は、各パラメータが上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、各パラメータが上記した範囲から多少外れてもよい。
本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す分解斜視図である。 図1に示した巻回電極体のII−II線に沿った構成を表す断面図である。 負極活物質層におけるケッチェンブラックの含有率と、容量維持率との関係を表す特性図である。 負極活物質層に含まれるケッチェンブラックの一次粒子径および比表面積と、容量維持率との関係を表す特性図である。
符号の説明
11…正極リード、12…負極リード、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…電解質層、25…保護テープ、30…外装部材、31…密着フィルム。

Claims (10)

  1. 正極および負極と共に電解質を備え、前記負極の容量が、軽金属の吸蔵および離脱による容量と、軽金属の析出および溶解による容量とを含み、かつその和により表される電池であって、
    前記負極は、カーボンブラックを含んでいる
    ことを特徴とする電池。
  2. 前記カーボンブラックは、10nm以上50nm以下の一次粒子径を有すると共に、50m2 /g以上1500m2 /g以下の比表面積を有することを特徴とする請求項1記載の電池。
  3. 前記負極は、負極集電体の上に負極活物質層が設けられたものであり、
    前記負極活物質層におけるカーボンブラックの含有率は、0.10質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の電池。
  4. 前記カーボンブラックは、ケッチェンブラックであることを特徴とする請求項1記載の電池。
  5. 前記電解質は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびγ−ブチロラクトンのうちの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1記載の電池。
  6. 前記電解質は、さらに、高分子化合物を有することを特徴とする請求項5記載の電池。
  7. 前記高分子化合物は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体を有することを特徴とする請求項6記載の電池。
  8. 前記正極の容量が、前記負極における軽金属の吸蔵および離脱による容量より大きい
    ことを特徴とする請求項1記載の電池。
  9. 前記負極における軽金属の吸蔵および離脱による容量に対する前記正極の容量(正極の容量/負極における軽金属の吸蔵および離脱による容量)が、1.0よりも大きく1.3以下である
    ことを特徴とする請求項8記載の電池。
  10. 前記負極は、黒鉛を有することを特徴とする請求項1記載の電池。
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