本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態のエネルギー回収装置が適用された車両のエンジンシステムの概念を図1に示す。本実施形態におけるエンジン(内燃機関)10は、燃料である軽油を燃料噴射弁12から圧縮状態にある燃焼室内に直接噴射することにより自然着火させる型式のエンジン、すなわちディーゼルエンジンである。
気筒14の燃焼室に臨むと共に吸気通路16の一部を区画形成する吸気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、吸気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、吸気通路16の一部を区画形成する吸気マニフォルド18が接続され、更にその上流側には同じく吸気通路16の一部を区画形成する吸気管20が接続されている。吸気管20の上流端側には、吸気通路16に導かれる空気中の塵埃などを除去するべくエアクリーナ22が設けられている。また、スロットルアクチュエータ24によって開度が調整されるスロットルバルブ26が、吸気管20の途中に設けられている。
他方、気筒14の燃焼室に臨むと共に排気通路28の一部を区画形成する排気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、排気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、排気通路28の一部を区画形成する排気マニフォルド30が接続され、更にその下流側には同じく排気通路28の一部を区画形成する排気管32が接続されている。なお、排気ガス浄化触媒が充填された触媒コンバータ34が排気管32の途中に設けられている。
さらに、排気ガスにより回転駆動されるタービンホイールを含むタービン36が排気管32の途中に設けられている。ただし、タービン36は、触媒コンバータ34よりも上流側に配置されている。これに対応して、タービンホイールに同軸で連結され、タービンホイールの回転力で回転するようにしたコンプレッサホイールを含むコンプレッサ38が吸気管20の途中に設けられている。すなわち、エンジン10には、排気エネルギーを取り出すタービン36と、タービン36により取り出された排気エネルギーによってエンジン10に過給するコンプレッサ38とを有する過給器40が設けられている。そして、コンプレッサ38により圧縮された空気を冷却すべく、インタークーラ42がコンプレッサ38よりも下流側の吸気管20の部分に設けられている。
エンジン10には、排気通路28を流れる排気ガスの一部を吸気通路16に導く排気ガス還流(EGR)システム44が設けられている。EGRシステム44は、排気通路28と吸気通路16とをつなぐEGR通路46を区画形成するEGR管48と、EGR通路46の開度調節用のEGR弁50と、還流される排気ガス冷却用のEGRクーラ52とを有している。ここでは、EGR管48の上流側の一端は排気マニフォルド30に接続され、その下流側の他端が吸気マニフォルド18に接続されている。EGR通路46の径は、排気通路28の径に比べて小さい。EGR弁50はEGRクーラ52よりも下流側に設けられていて、その開度はアクチュエータ54により調節される。なお、ここではEGR弁50はポペット式バルブである。
さらに、排気通路28の途中には、排気絞り弁56が設けられている。本実施形態では排気絞り弁56はバタフライ式バルブである。排気絞り弁56は、その閉弁時には排気通路28を流れる排気ガスや空気である流体を効果的にせき止め、そのような流体の排気絞り弁56よりも下流側への流れを概ね遮断する遮断弁として機能する。排気絞り弁56は、アクチュエータ58により開閉作動される。
排気絞り弁56よりも上流側の排気通路28の部分に連通管60により区画形成された連通路62が接続され、その連通路62により排気通路28と蓄圧容器である蓄圧タンク64内とは連通している。蓄圧タンク64は、排気通路28の内、排気絞り弁56よりも上流側であればいずれの場所に接続されても良いが、本実施形態の蓄圧タンク64は、排気通路28の内、排気絞り弁56よりも上流側であって、タービン36よりも上流側の部分に接続されている。連通路62の径は排気通路28の径に比べて小さい。蓄圧タンク64内と排気通路28との連通状態の調節用に、連通路62に開閉弁66が設けられている。なお、開閉弁66が開弁されることで蓄圧タンク64内と排気通路28とは連通し、他方、開閉弁66が閉弁されることで蓄圧タンク64内と排気通路28との連通は遮断され、蓄圧タンク64は密閉状態になる。ただし、開閉弁66はアクチュエータ68により開閉作動される。なお、ここでは開閉弁66はポペット式バルブである。
連通路62には、連通路62の他の部分よりも流路断面積の大きな拡大部70が設けられている。拡大部70周囲の拡大模式図を図2に示す。拡大部70は、本実施形態では連通路62の端部、より詳しくは排気通路28側の端部に設けられている。本実施形態の拡大部70は略円筒形状を有し、その径は連通路62のその他の部分の径よりも大きくなっている。それ故、本実施形態の拡大部70を拡径部と称することもできる。
拡大部70にはフィルタ72が設けられている。このフィルタ72を連通路62を流れる流体が必ず通過するように、フィルタ72は拡大部70に配置されている。ここではフィルタ72は拡大部70の端部、より詳しくは排気通路28に接するように拡大部70に設けられている。それ故、フィルタ72は排気通路28を流れる排気ガスにより十分に加熱される。更に、同拡大部70において、フィルタ72よりも下流側である蓄圧タンク64側に分散部材74が設けられている。なお、本実施形態の拡大部70は、図2に示すように、全周に亘って径方向内側に張り出した段部76を有していて、この段部76に分散部材74およびフィルタ72が順に重なるように配置されている。
フィルタ72は、後述するエネルギー回収により排気通路28から蓄圧タンク64内に流れる流体から燃焼生成物を取り除くために設けられている。すなわち、フィルタ72により、フィルタ72より蓄圧タンク64側への燃焼生成物の移動は妨げられる。ここでいう燃焼生成物には、排気ガス中のすすなど炭素微粒子からなる粒子状物質(PM)、未燃HCといった炭化水素微粒子、窒素酸化物(NOx)、水蒸気(水)が含まれる。本実施形態において、フィルタ72で積極的に除かれるのが望まれる燃焼生成物は主にPMである。フィルタ72はそれらPMを取り除く、すなわち捕集する機能を有するような大きさおよび形状の孔72aを複数有するセラミック多孔質体から構成されている。したがって、排気通路28の流体中にPMが含まれていても、その流体が開閉弁66や蓄圧タンク64に至る前に、その流体中のPMはフィルタ72により捕集されて除かれる。ただし、フィルタ72には、捕集したPMの除去を促すために触媒が担持されている。なお、フィルタ72に担持される触媒として、本実施形態では白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの酸化触媒が用いられている。この酸化触媒は、排気ガスから受ける熱で、有効に機能する温度にまで加熱される。
他方、上述の如く、分散部材74がフィルタ72の下流側に配置されている。分散部材74は複数の孔74aを有している。分散部材74は、蓄圧タンク64からの流体をフィルタ72に向けて分散させるべく設けられている。それ故、分散部材74の複数の孔74aは、蓄圧タンク64から解放されてフィルタ72に向けて連通路62を流れる流体をフィルタ72の中央ばかりでなくその周辺部にも及ぼすように分散させるべく、換言するとフィルタ72の全範囲に向けて満遍なく適切に方向付けるべく、形作られている。
なお、後述するように排気通路28の圧力エネルギーは、流体の移動を伴いつつ、連通路62を介して排気通路28から蓄圧タンク64内に回収される。他方、蓄圧タンク64内に蓄えられた圧力エネルギーを有する流体は、連通路62を介して、蓄圧タンク64内から排気通路28に放出されて利用に供される。すなわち、本実施形態では、蓄圧タンク64内へのエネルギー回収およびそこからの圧力エネルギーの放出利用は、同じ連通路62を介して行われる。なお、本実施形態では、蓄圧タンク64内に回収された流体、すなわちその流体の有する高い圧力エネルギーは、加速要求が求められたときに、特にその初期に連通路62を介して排気通路28へ解放される。解放された流体すなわち圧力エネルギーは過給器40のタービン36の駆動に用いられる。これにより、過給器40の応答性向上が図られる。
エンジン10は、電子制御装置(ECU)78に、各種値を検出(導出あるいは推定)するための信号を電気的に出力する各種センサ類を備えている。ここで、その内のいくつかを具体的に述べる。吸入空気量を検出するためのエアフローメーター80が吸気管20に備えられている。また、エアフローメーター80近傍に吸入空気の温度を検出するための吸気温度センサ82が、そしてインタークーラ42下流側にも温度を検出するための吸気温度センサ84が備えられている。また、過給圧を検出するための圧力センサ86が吸気管20の途中に設けられている。また運転者によって操作されるアクセルペダル88の踏み込み量に対応する位置、すなわちアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ90が備えられている。また、スロットルバルブ26の開度を検出するためのスロットルポジションセンサ92も備えられている。更に、EGR弁50の開度を検出するための、ここではそのリフト量を検出するためのバルブリフトセンサ94も備えられている。また、ピストンが往復動する、シリンダブロックには、連接棒を介してピストンが連結されているクランクシャフトのクランク回転信号を検出するためのクランクポジションセンサ96が取り付けられている。ここでは、このクランクポジションセンサ96はエンジン回転数(エンジン回転速度)を検出するためのエンジン回転数センサとしても利用される。更に、排気絞り弁56よりも上流側の排気ガスあるいは空気である流体の圧力を検出するための圧力センサ98が備えられている。また、蓄圧タンク64内の圧力を検出するための圧力センサ100も備えられている。更に、エンジン10の冷却水温を検出するための温度センサ102が備えられている。
ECU78は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、前記各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって円滑なエンジン10の運転がなされるように、ECU78は出力インタフェースから電気的に作動信号(駆動信号)を出力して、燃料噴射弁12、スロットルバルブ26、EGR弁50、排気絞り弁56、開閉弁66などの作動を制御する。ただし、ECU78は、スロットルバルブ26、EGR弁50、排気絞り弁56、開閉弁66の作動を制御するため、各アクチュエータ24、54、58、68に作動信号を出力する。なお、本実施形態のECU78は、時間を計測し、その計測した時間を累積的に記憶保存するためのタイマ手段を内蔵する。
エンジン10では、アクセル開度センサ90からの出力信号に基づいて求められるアクセル開度や、クランクポジションセンサ96からの出力信号に基づいて求められるエンジン回転数など、すなわちエンジン負荷およびエンジン回転数で表される運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料量)、燃料噴射時期が設定される。そして、それら燃料噴射量、燃料噴射時期に基づいて、燃料噴射弁12からの燃料の噴射が行われる。
なお、エンジン10では、クランクポジションセンサ96による出力信号に基づいて導かれるエンジン回転数が所定回転数(燃料カット回転数)以上であり、且つアクセル開度センサ90による出力信号に基づいて導かれるアクセル開度が0%、すなわちアクセルペダル88が踏まれていないときに、燃料噴射弁12からの燃料噴射が停止(燃料カット)されるように設定されている。ただし、このような燃料カットの状態が続いて、エンジン回転数が低下して別の所定回転数(燃料カット復帰回転数)に達すると、燃料噴射は再開される。また、燃料カットが行われているときに、アクセルペダル88が踏まれてアクセル開度が0%を超えるようになった場合にも、燃料噴射は再開される。なお、燃料カットが行われているときは、概ね減速時に対応する。
そして、このように燃料カットをする運転状態のとき、上記スロットルバルブ26が閉弁状態に制御されるように、予め上記プラグラムは設定されている。ただし、後述するエネルギー回収のときには、強制的にスロットルバルブ26は開弁状態になるように開弁制御される。本明細書において、運転状態に基づいて制御されるスロットルバルブ26の開度を以下「通常開度」と、これに対してエネルギー回収に際してその通常開度に優先して強制的に開弁制御されるスロットルバルブ26の開度を以下「回収開度」と称する。なお、スロットルバルブ26はエンジン10の始動時は全開に制御され、他方エンジン10の停止時は全閉に制御される。そして、通常走行時には、エンジン状態および冷却水温などに応じて、スロットルバルブ26の開度は適切な開度に制御される。
また、上記各種センサ類からの出力信号に基づくエンジン10の運転状態に基づいてEGR弁50の開閉作動は制御される。ここでは、高負荷領域(全負荷領域を含む。)がEGR弁50が全閉状態に閉弁される領域(EGR外領域)として定められ、それ以外の低・中負荷領域がEGR弁50が開かれる領域(EGR領域)として定められている。なお、後述するエネルギー回収に際しては、EGR弁50も、運転状態にかかわらず、強制的に所定の開度に制御される。
ところで、通常走行時、排気絞り弁56は全開状態に維持制御されるので、排気通路28を流れる排気ガスなどは触媒コンバータ34を通過して外気に放出される。これに対して、エネルギー回収の所定条件が満たされたとき、排気絞り弁56が閉弁状態に制御され、排気通路28を流れる流体はせき止められる。そして、このようにしてせき止めた流体を有効に活用してエネルギー回収が行われる。以下にそのエネルギー回収について詳細に説明する。なお、ここでいう「エネルギー回収(回収)」とは、所定条件が満たされているときに、排気絞り弁56を閉弁して、排気通路28に至った流体をせき止めて、せき止めた流体の圧力エネルギーを高めて、圧力エネルギーの高まった流体(圧縮流体)の回収を通じて圧力エネルギーを回収することである。
以下にエネルギー回収について、図3のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図3のフローチャートは、およそ20ms毎に繰り返されるものである。
エンジン10が起動されると、まずECU78は、ステップS201において、再生フラグが「0」、すなわちOFFであるか否かを判定する。なお、再生フラグについては後述する。初期状態では同再生フラグはリセットされているためここでは肯定される。
ステップS201で肯定されると、次ぐステップS203で、回収フラグが「1」、すなわちONであるか否かが判定される。ここで、回収フラグが「1」ということは、上記エネルギー回収が行われる所定条件が満たされていることを表す。これに対してそれが「0」ということは、エネルギー回収が行われる所定条件が満たされていないことを表す。初期状態では同回収フラグはリセットされているためここでは否定される。なお、本実施形態において、エネルギー回収のための所定条件が満たされるとは、以下の記載から明らかなように、燃料カット中であること、および、蓄圧タンク64内に余裕があること(蓄圧タンク64内の圧力が所定圧以下であること)の両者が満たされることである。
ステップS203で否定されると、次ぐステップS205で、燃料カット中か否かが判定される。具体的には、燃料カット中か否かは、燃料噴射量が「0」とされているか否かで判定される。なお、通常走行時には、概して、エンジン10により所定出力を生み出すべく、「0」より大きな燃料噴射量が上述の如く導かれて燃料噴射が行われている。それ故、そのようなときには、ステップS205において否定される。
ステップS205で否定されると、次ぐステップS207で、蓄圧タンク64内の圧力(図2中の「タンク内圧」)が所定圧を超えているか否かが判定される。そして、蓄圧タンク64内の圧力がこの所定圧以下である場合には否定されて、当該ルーチンは終了する。
他方、上記ステップS205で燃料カット中として肯定されると、次ぐステップS209で、蓄圧タンク64内の圧力が、蓄圧タンク64に許容される圧力であって、所定圧である予め決められてROMに記憶されている上限値以下か否かが判定される。蓄圧タンク64内に十分な量の圧力エネルギーすなわち流体が蓄えられているときに、更にエネルギー回収が行われることを防ぐためである。なお、このステップS209で否定されると、該ルーチンは終了する。
そして、蓄圧タンク64内の圧力が上限値以下であるとして肯定されると、次ぐステップS211で、エネルギー回収を行うべく、上記回収フラグが「1」にされる。これにより、エンジン10の通常の上記制御よりも、エネルギー回収用の制御が優先して行われることになる。そして、ステップS213に至ると、EGR弁50および開閉弁66が閉弁されるように、作動手段である各アクチュエータ54、68に作動信号が出力される。EGR弁50は通常、上記の如く運転状態に基づいて制御されるが、ステップS211に至って以降のエネルギー回収に際しては排気絞り弁56よりも上流側の排気通路28の部分にある流体の圧力をより確実に高めるべく、運転状態にかかわらずEGR弁50は閉弁状態に保持制御される。なお、開閉弁66は基本的には閉弁されているので、開閉弁66は閉弁状態に保たれることになる。
次ぐステップS215では、排気絞り弁56が閉弁されるように、アクチュエータ58に作動信号が出力される。また、排気絞り弁56の閉弁制御と並行して、スロットルバルブ26の開度が回収開度になるようにスロットルアクチュエータ24に作動信号が出力される。本実施形態における回収開度は全開の開度である。こうして当該ルーチンは終了する。
次のルーチンでは、未だ再生フラグは「0」であるのでステップS201で肯定されて、ステップS203での判定がなされる。ステップS203では回収フラグが「1」であるので肯定される。
ステップS203で肯定されると、次ぐステップS217で、上記ステップS205と同様に燃料カット中か否かが判定される。ここで肯定されると次ぐステップS219で、上記ステップS209と同様に蓄圧タンク64内の圧力が上記上限値以下か否かが判定される。なお、ステップS217およびステップS219での判定が行われるのは、ステップS211で回収フラグが「1」にされた後、エネルギー回収の所定条件が満たされなくなったときに、エネルギー回収を終了する制御をするためである。
さてステップS219で肯定されると次ぐステップS221で、蓄圧タンク64内の圧力が、排気絞り弁56よりも上流側の排気通路28の部分の圧力(図2中の「排気通路圧力」)以下か否かが判定される。このとき既に、EGR弁50、排気絞り弁56、開閉弁66が閉弁されているので、時間の経過につれて、排気絞り弁56によってせき止められた流体の圧力エネルギーは高くなる。そして、その圧力エネルギーが回収可能なほど高まっているかを調べるために、ステップS221での判定が行われる。ステップS221で否定される場合には次ぐステップS223で、開閉弁66が閉弁されるようにアクチュエータ68に作動信号が出力される。これは、既に開閉弁66が閉じられている場合には、開閉弁66が閉じたままにされることを意味している。他方、ステップS221で肯定される場合には次ぐステップS225で、開閉弁66が開弁されるようにアクチュエータ68に作動信号が出力される。これにより、排気絞り弁56よりも上流側の排気通路28の部分の高められた圧力エネルギーが連通路62を介して、蓄圧タンク64内に回収される。上記の如く、連通路62にフィルタ72が設けられているので、連通路62に導かれる流体にPMなどの燃焼生成物が含まれていても、それら燃焼生成物はフィルタ72によって捕集されて、流体から除去される。したがって、燃焼生成物の除かれた流体が、開閉弁66や蓄圧タンク64に至ることになる。
高い圧力エネルギー、換言すると高い圧力エネルギーを有する流体(ここでは主に空気)が回収されることで、蓄圧タンク64内の圧力は増す。こうしたエネルギー回収は、上記ステップS217あるいはステップS219で否定されない限りは概ね続けて行われる。
エネルギー回収中に、ステップS217あるいはステップS219で否定されるに至ると、エネルギー回収を終了するための制御が行われるようになる。それらのいずれかで否定されると次ぐステップS227で、EGR弁50の開弁および開閉弁66の閉弁が行われるように、それらの作動用アクチュエータ54、68へ作動信号が出力される。次ぐステップS229では、排気絞り弁56が開弁されるようにアクチュエータ58へ作動信号が出力され、またスロットルバルブ26が通常開度にされるようにアクチュエータ24へ作動信号が出力される。そして、次ぐステップS231で回収フラグが「0」にされる。この結果、エンジン10はエネルギー回収を行わない通常の制御状態に復帰される。
なお、エネルギー回収の終了に際して、ステップS229で排気絞り弁56が開弁される前に、ステップS227でEGR弁50が強制的に開弁されるので、排気絞り弁56よりも上流側の圧力の低減が図られ、これにより排気絞り弁56の開弁がより確実に行われることになる。ステップS227でのEGR弁50の強制的な開弁は、ステップS231で回収フラグが「0」にされるまで継続され、回収フラグが「0」にされることで解除される。
上記したように、エネルギー回収に伴って、開閉弁66を介して蓄圧タンク64内に流れる流体は、開閉弁66に至る前に、フィルタ72を必ず通過する。したがって、開閉弁66へPMなど燃焼生成物が至ることは防止されるので、開閉弁66へのPMなどの付着は防止される。ひいては開閉弁66におけるデポジット生成が防止される。なお、フィルタ72に捕集されたPMは、フィルタ72に担持された上記触媒によって概ね酸化除去(燃焼除去)される。
このようにフィルタ72に捕集されたPMの除去は触媒反応によって行われる。さらに、本実施形態では、フィルタ72に付着したPMの除去をより確実なものにするために、所定の時期に、蓄圧タンク64に蓄えられた流体を解放して、フィルタ72に向けて逆流させる。これを、ここではフィルタ72の再生と称する。
フィルタ72の再生を図る所定条件が満たされているとき、すなわちフィルタの再生時期には、上記再生フラグが「1」にされる。つまり、上記再生フラグとはフィルタ72の再生を図る所定条件が満たされているか否かを示すフラグのことである。それ故、再生フラグが「1」ということはフィルタ72の再生を図る所定条件が満たされていることを表し、これに対して再生フラグが「0」ということはフィルタ72の再生を図る所定条件が満たされていないことを表す。
エネルギー回収が行われておらず(回収フラグが「0」)、エンジン10が通常の制御状態にあるときであって、再生フラグが「0」であるときには、ステップS201で肯定され、ステップ203で否定される。そして、燃料カット中でないとして上記ステップS205で否定される場合には、次ぐ上記ステップS207で、蓄圧タンク64内の圧力が所定圧を越えているか否かが判定される。例えば、この所定圧は、ゲージ圧で200kPaである。
ステップS207で肯定されると、次ぐステップS233で、第1経過時間が第1所定時間を越えているか否かが判定される。ここで第1経過時間とはエンジン10の累積作動時間のことである。ここでは第1経過時間として、ECU78に内蔵されているタイマ手段で累積的に計測されている時間が用いられる。なお、初めの第1経過時間は、車両の総走行距離が「0」のときからの時間である。また第1所定時間とはフィルタ72へのPMの付着量がエネルギー回収に悪影響を及ぼすことが危惧される量に達する時間あるいはそれより少ない時間であり、予め実験により求められて設定されている。それは本実施形態では50時間に設定されている。ステップS233で否定されると、当該ルーチンは終了する。他方、ステップS233で肯定されると、次ぐステップS235で、再生フラグが「1」にされる。そして、次ぐステップS237で開閉弁66が開弁するようにアクチュエータ68へ作動信号が出力される。なお、ステップS233で第1経過時間が第1所定時間を超えているとして肯定されると、タイマ手段はそれまで累積的に計測していた第1経過時間に対応する時間をリセットして「0」にする。
開閉弁66が開弁されると、蓄圧タンク64内の高い圧力エネルギーを有する流体が連通路62を介して排気通路28へ至るようになる。この過程で、連通路62に設けられたフィルタ72にその流体は勢い良く当たり、フィルタ72を通過する。特に、分散部材74が連通路62の内、フィルタ72と蓄圧タンク64との間に設けられていて、上記の如くそれには複数の孔74aが設けられているので、解放された流体はフィルタ72の広範囲に向けて満遍なく適切に及ぼされることになる。したがって、第1経過時間が経過する過程でフィルタ72に捕集され付着したPMが仮にあっても、それらは解放された流体により排気通路28に吹き飛ばされて除去される。
このように流体の解放が行われてフィルタ72の再生が図られているとき、上記再生フラグは「1」であるので、次回以降のルーチンのステップS201で否定されることになる。ステップS201で否定されると、次ぐステップS239で、第2経過時間が第2所定時間を超えるか否かが判定される。このステップS239での判定のため、第2経過時間に対応する時間の計測が、ステップS235で再生フラグが「1」にされるときタイマ手段により開始される。また第2所定時間とはフィルタ72に付着したPMを適切に除去するのに必要な時間であり、それは予め実験により求められて設定されている。なお、本実施形態では第2所定時間は2秒に設定されている。そして、ステップS239で否定されると、当該ルーチンは終了され、流体の解放が継続される。
ステップS239で第2経過時間が第2所定時間を超えたとして肯定されるようになると、次ぐステップS241およびステップS243で流体の解放を終了させるための制御が行われることになる。なお、ステップS239で肯定されると、タイマ手段はそれまで累積的に計測していた第2経過時間に対応する時間をリセットして「0」にする。
ステップS241では開閉弁66が閉弁されるようにアクチュエータ68へ作動信号が出力される。次ぐステップS243では再生フラグが「0」にされる。これにより蓄圧タンク64内に蓄えられた流体を用いてのフィルタ72の再生は終了する。なお、第1経過時間に対応する時間の計測が、ステップS243で再生フラグが「0」にされるときタイマ手段により開始される。
このように定期的にフィルタ72の再生が図られるので、フィルタ72にPMが付着し続け、デポジットが生成するのは防止される。すなわち、フィルタ72の孔72aに目詰まりなどは生じず、フィルタ72は十分にきれいな状態に保たれる。したがって、フィルタ72を流体が通過するときのフィルタ抵抗を十分に低い状態に維持することが可能になる。このようにフィルタ72によりPMなどの燃焼生成物は適切に除去可能になるので、本実施形態のように、エネルギー回収が燃料カット中に行われる場合であって、きれいな空気のみにより蓄圧タンク64内に圧力エネルギーを形成させたいときにも、燃料カット開始直後からエネルギー回収を行うことが可能になる。これは、燃料カット開始後、排気絞り弁56よりも上流側から完全に排気ガスが排除される前にエネルギー回収を回収することが出来ることを意味している。それ故、エネルギー回収に要する全時間の短縮が図られることになる。これにより、例えば、燃料カットをしている時間が短い場合でも、エネルギー回収を行うことが出来るようになるので、エネルギー回収の機会の増加がもたらされる。したがって、エネルギー回収装置の信頼性を向上させることが可能になる。
以上、本発明に係るエネルギー回収装置を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。エネルギー回収を上記実施形態では燃料カット中に行うことにしたが、これ以外のときに、例えば燃料噴射が行われる運転状態のときにエネルギー回収が行われても良い。燃料噴射が行われる運転状態のときにエネルギー回収が行われても、排気通路28の排気ガスは連通路62に設けられたフィルタ72を通過して蓄圧タンク64に至ることになるので、それらに含まれるPMなどが開閉弁66や蓄圧タンク64に至ることは防止される。したがって、開閉弁66にPMなどが付着し、そこにデポジットが生成することは防止される。
また、上記実施形態では、フィルタ72は連通路62の排気通路28側の端部に設けられたが、それは連通路62の他の箇所に設けられても良い。ただし、フィルタ72は、開閉弁66へのPMなど燃焼生成物の付着を防止するため、開閉弁66よりも排気通路28側の連通路62の部分に設けられるのが良い。また、フィルタ72は、連通路62に設けられるのであれば上記拡大部70以外に設けられても良い。なお、フィルタ72は金属製多孔質体から構成されても良い。
また、フィルタ72に捕集されたり付着したりしたPMなどを除去するため、上記実施形態では、フィルタ72に触媒を担持させ、且つ、蓄圧タンク64内の流体を解放させることにした。しかしながら、それら触媒の使用や流体の解放の両者を用いて燃焼生成物の除去が行われる必要は必ずしもなく、それらの一方のみによりそれらの除去が行われても良い。それ故、フィルタ72に、上記実施形態の如く触媒が担持される必要は必ずしもない。なお、フィルタ72に担持される触媒は、上記触媒に限定されず、種々の他の触媒が適用され得る。また、上記実施形態では、蓄圧タンク64から放出された流体をフィルタ72に適切に及ぼすように分散部材74が配置されたが、分散部材74は配置されなくても良い。なお、分散部材74はフィルタ72に接して設けられる必要はなく、所定距離をおいて離して設けられても良い。
また、上記実施形態では、エンジン10の累積作動時間である第1所定時間が第1経過時間を越えたときに、フィルタ72の再生を図るべく蓄圧タンク64内の流体を解放させたが、このようにフィルタ72再生用の流体の解放がなされるフィルタの再生時期は異なる時期であっても良い。例えば、エネルギー回収の総累積時間が所定時間経過する毎に、フィルタ72再生用の流体の解放がなされても良い。あるいは、エネルギー回収が行われる直前あるいはその直後毎に、フィルタ72再生用の流体の解放がなされても良い。また、上記実施形態では、フィルタ72再生用の流体の解放を連続的に第2所定時間行うことにしたが、第2所定時間の間に断続的に複数回流体の解放が行われても良い。この場合、解放された流体がパルス的にフィルタ72に及ぼされることになり、優れたPM除去作用が奏される。
また、上記実施形態では、排気絞り弁56はバタフライ式バルブであったが、それ以外の形式のバルブであっても良い。排気絞り弁56は、例えば、ポペット式バルブ、シャッター式バルブであり得る。なお、排気絞り弁56として、排気ブレーキ用に設けられたバルブが用いられても良い。また、EGR弁50や開閉弁66は、ポペット式バルブ以外の形式のバルブであっても良く、バタフライ式バルブ、シャッター式バルブであり得る。
また、上記実施形態では、蓄圧タンク64を1つ設けることにしたが、それは複数個設けられても良い。そして蓄圧タンク64を2つ以上複数個設ける場合には、それら蓄圧タンク64は車両に分散して配置され得る。
なお、上記実施形態では、蓄圧タンク64内に回収された圧力エネルギーを、過給器40の作動アシストに用いることとした。しかしながら、これは回収された圧力エネルギーの用途を制限するものではなく、回収された圧力エネルギーは、種々の機能部品の作動アシストなどに用いられ得る。なお、排気通路28と蓄圧タンク64とをつなぐエネルギー回収用の通路と、種々の機能部品と蓄圧タンク64とをつなぐエネルギー放出用の通路とは、分けられても良い。
なお、上記実施形態では、本発明をディーゼルエンジンに適用して説明したが、これに限定されず、本発明は、ポート噴射型式のガソリンエンジン、筒内噴射形式のガソリンエンジン等の各種のエンジンに適用可能である。また、用いられる燃料は、軽油やガソリンに限らず、アルコール燃料、LPG(液化天然ガス)等でも良い。また、本発明が適用されるエンジンの気筒数などはいくつであっても良い。
なお、上記実施形態では、本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。