上記の説明で明らかなように、スピンバルブ構造のGMRヘッドのごとく、同一基板上に、間に非磁性層をはさんで磁化容易軸が直交した2つの薄膜をスパッタ成膜するには、基板の成膜面に対して、直交する2つの磁化容易軸の各々を決めるための磁界を印加することのできる特別な磁界発生装置が必要である。
上記磁界発生装置としてまず考えられるのが、ヘルムホルツ型のコイルを使用することである。ヘルムホルツ型のコイルでは、一対の円形コイルが、円形コイルの半径と等しい距離をおいて配置してあり、両コイルの中心に均一な磁界が発生する。直交磁界を発生させるためには、さらにもう一対のコイルを90°ずらして配置する必要がある。このような装置でまず問題になるのは、コイルの大きさである。3インチ基板内で磁界の方向を±1°以内に揃えるためには、コイルの直径を19cm程度にする必要がある。将来、6インチ基板を同様に扱おうとすると、コイルの直径は38cm程度となってしまう。しかも、100ガウス程度の磁界強度を得るにはコイル電流は1500アンペア・ターン程度必要になるため、コイル冷却も必要になる。このような巨大なコイルをスパッタリング装置の真空室内に配置することは容易ではない。
次に永久磁石を用いる方法が考えられる。この方式には種々の方式が考えられるが、前述の特許文献1に記載されている方法について述べる。この方法では、図17に示すように、基板401を含む平面内に、基板401をはさんで一対の永久磁石402,403を配置している。磁界の方向を90°ずらす場合は、基板401を設置しているステージ404を、コントローラ405で制御されるモータ406によって機械的に90°回転させる。しかし、永久磁石を用いる方法では、直径6インチ程度の基板面内の磁界の傾き角を±1°以内にすることは非常に困難である。仮に可能であるとしても、前述のヘルムホルツコイルの場合と同様に、永久磁石のサイズは巨大なものとなるであろう。
さらに磁気ヨークとコイルを組み合わせる方法が、前述の特許文献2に記載されている。この方法では、図18の(A),(B)に示すように、矩形平板型の磁気ヨーク501の周囲に、非磁性・非伝導性の枠502を設け、その回りにコイルを巻いている。ここでは磁界方向を90°変えるため、2つのコイル503,504が設けられている。もし、このような磁界発生装置をスピンバルブ膜作製用のスパッタリング装置に応用する場合、基板はコイルの上に載せて設置することになる。しかし、スパッタ成膜では膜質を良好にするために、成膜中に基板を300℃程度に加熱するのが一般的である。従って、このようなコイルをスパッタリング装置で利用することは困難である。
以上のように、直径が6インチ程度の基板内で磁界の傾き角を±1°以内にでき、かつ磁化容易軸の制御に用られる実用的な磁界発生装置は、従来、存在しなかった。
なお以上では、スピンバルブ構造のGMRヘッドの製作を前提として直交する2つの磁化容易軸の各々を決める高い精度で直交する磁界を作ることのできる磁界発生装置の必要性を説明したが、一般的な課題として、直交する磁界だけではなく、これを含め任意の角度で交差する高い精度の2つの磁界を発生することのできる構成の提案が望まれている。
本発明の目的は、上記問題を解決することにあり、主にスパッタリング装置で磁化容易軸の制御を行いながら軟磁性薄膜を成膜する場合に、大面積基板内に高い精度で方向が揃えられた磁界を印加できる実用的なスパッタリング装置の磁界発生装置を提供することにある。
本発明に係るスパッタリング装置の磁界発生装置は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
第1の磁界発生装置:比較的大きな面積を有する基板表面に、スパッタ法を用いて、磁化容易軸が直交する少なくとも2つの磁性膜を積層成膜するとき、基板表面の近傍に当該表面に平行な方向の磁界を生成する磁界発生装置であって、基板表面を囲むように配置される環状の磁気ヨークと、この磁気ヨークの周囲に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第1のコイルグループと、磁気ヨークの周囲に巻かれ、第2の磁化容易軸の方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第2のコイルグループから構成される。第1の磁化容易軸と第2の磁化容易軸は、直交している。
上記の構成では、直交する2つの磁化容易軸の各々に対応する方向の磁界を発生させる2つのコイルグループを、環状磁気ヨークに設け、各コイルグループのコイルの配置と通電流を望ましいものとして所望の磁界を基板成膜面に印加するようにした。これにより、スパッタ法を利用して磁化容易軸が直交する少なくとも2つの磁性膜を積層成膜するとき、各磁性膜の磁化容易軸の方向を6インチ基板に対応する広い面積にわたって高い精度(±1°以内)で揃えることが可能となる。
第2の磁界発生装置:上記第1の構成において、さらに電源と、この電源から供給される直流電流を、第1のコイルグループと第2のコイルグループのうちのいずれか一方に送給する切替え器を備える。この構成によれば、例えば第1のコイルグループで各コイルの通電量を設定すると、同じ電流を第2のコイルグループに用いることができるので、電流制御が容易となる。
第3の磁界発生装置:上記第2の構成において、第1のコイルグループに含まれるコイルまたは第2のコイルグループに含まれるコイルには、コイルごと(またはコイルの組ごと)に独立に通電量を制御する電流制御部が設けられる。コイルごとに独立に通電量を制御できるようにしたため、磁界の方向を、必要とされる高い精度で一定方向に揃えることが可能となる。
第4の磁界発生装置:上記第3の構成において、好ましくは、第1のコイルグループに含まれる各コイルの通電量または第2のコイルグループに含まれる各コイルの通電量を、各々の上記電流制御部によって制御し、これにより、成膜が必要とされる表面にて、生成される磁界の方向が±1°以内に揃えられることを特徴とする。
第5の磁界発生装置:上記第1の構成において、第1のコイルグループと第2のコイルグループは、それぞれ、磁気容易軸の方向に磁界を作る主コイルと、成膜が必要とされる表面にて磁界の方向を磁気容易軸の方向に揃える副コイルを含むことを特徴とする。
第6の磁界発生装置:上記第5の構成において、好ましくは、第1のコイルグループの主コイルと、第2のコイルグループの主コイルは、実質的に直交する位置関係で配置される。
第7の磁界発生装置:上記第5の構成において、好ましくは、第1のコイルグループの副コイルと、第2のコイルグループの副コイルは、実質的に同じ箇所に重ね合わせて配置される。
第8の磁界発生装置:上記第5の構成において、好ましくは、第1のコイルグループの副コイルと、第2のコイルグループの副コイルは、共用されることを特徴とする。この構成によれば、部品点数を少なくすることができ、さらに構成全体を簡素化できる。
第9の磁界発生装置:基板表面にスパッタ法を用いて磁化容易軸が任意の角度で交差する少なくとも2つの磁性膜を積層成膜するとき、前記基板表面近傍に当該表面に平行な方向の磁界を生成する磁界発生装置であって、基板表面を囲むように配置される環状の磁気ヨークと、この磁気ヨークの周囲に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第1のコイルグループと、磁気ヨークの周囲に巻かれ、第1の磁化容易軸の方向に対して直交する方向に磁界を生成する複数のコイルからなる第2のコイルグループと、直交方向の磁界の方向を変化させる合成用磁界を生成する複数のコイルからなる第3のコイルグループを備える。
上記の構成では、磁界の合成作用を利用して2つの磁界の交差角度を任意角度に設定することを可能にする第3のコイルグループを設けることにより、直交を含め任意角度で交差する2つの磁化容易軸の各々に対応する方向の磁界を発生させることが可能である。
第10の磁界発生装置:上記第9の構成において、第1のコイルグループと第2のコイルグループは同じコイルグループであり、電流源に対する結線関係を変更することにより第1のコイルグループと第2のコイルグループを作るように構成される。同じコイルグループで結線関係を変更することで2種類のコイルグループを実現でき、構成が簡易となる。
第11の磁界発生装置:上記の各構成において、スパッタリング装置がマグネトロンカソードを備える場合においては、磁気ヨークと複数のコイルからなる装置本体を収容するケースのカソード側部分を軟磁性体で形成したことを特徴とする。この構成によれば、マグネトロンカソードによってターゲット上に形成された磁界に悪い影響を与える磁界発生装置からの磁界漏洩を防止できる。
本発明によれば、次の効果を奏する。
本発明による磁界発生装置を用いることにより、広い面積の平面領域内に、互いに直交する2つの磁界であって±1°以内の非常に方向性の揃った磁界を発生させることができる。これにより2つの軟磁性層の磁化容易軸の間の角度を直交関係に高精度で設定することができる。またコイルのレイアウトを所定のものにすることにより構成を簡素にすることができる。さらに電流制御を各コイルにつき独立に行えるようにしたため、磁界方向の調整を容易に行うことができ、高い精度に磁界方向を揃えることができる。さらに、第1および第2のコイルグループについて、切替え器を利用することにより、対応するコイル部分には同じ電流を流すようにしたため、電流制御を1回行うだけで、2方向の各磁界に関してそれぞれ高い精度で広い面積にわたり方向を揃えることができる。
また合成用の磁界を作るコイルグループを付設することにより、前述のごとく±1°以内の非常に方向性の揃った2つの磁界を任意の角度で交差するように発生させることができ、2つの軟磁性層の磁化容易軸の間の角度を直交から任意角度だけずれた関係に高精度で設定することができる。
またスパッタリング装置がマグネトロンカソードを備えるときには、磁界発生装置のケースの一部を軟磁性材料で形成するようにしたため、ターゲットの表面に形成される磁界に対して悪い影響を与える漏洩磁界の発生を防止することができる。
さらに本発明による磁界発生装置をスパッタリング装置を用いると、優れた特性のスピンバルブ構造の積層膜を作製でき、バルクハウゼンノイズが小さく再生感度が良好なGMRヘッドに作製できる。
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る磁界発生装置の第1の実施形態を示す縦断面図で、図2は磁気ヨークとコイルの部分のみの外観を示した斜視図である。
図2において、磁気ヨーク21は、外周が例えば直径300mmの円環形状を有している。磁気ヨーク21は例えば磁性ステンレス(SUS430)で作製されている。磁気ヨーク21には、その全周囲にわたって、複数(本実施形態では24個)のコイルが所定の位置に巻かれている。これらのコイルに選択的に適宜に所要の電流値の電流を流すことによって、磁気ヨーク21に囲まれかつ磁気ヨーク21の軸21aの方向に垂直な平面(XY平面)内に含まれる磁界を生成することができる。
上記複数のコイルは、第1のグループに属するコイル(以下「第1のコイルグループ」という)と、第2のグループに属するコイル(以下「第2のコイルグループ」という)とに分けられる。第1のコイルグループは、通電されることによって図中Y方向(第1の方向)に向く磁界を作り、これに対して第2のコイルグループは、通電されることにより図中X方向(第2の方向)に向く磁界を作る。X方向とY方向は直交している。第1のコイルグループで作られる磁界の方向は、後述する図4と図5に示すように、環状の磁気ヨーク21によって囲まれるXY平面の大部分において±1°以内でY軸方向を向くように揃えられる。また、第2のコイルグループで作られる磁界の方向も、同様に、環状の磁気ヨーク21によって囲まれるXY平面の大部分において±1°以内でX軸方向を向くように揃えられる。
図1を参照し、上記の第1のコイルグループと第2のコイルグループについて詳述する。図1は、磁気ヨーク21における軸21aの方向のほぼ中心位置(原点Oの位置)で、当該軸に垂直に切った断面を示している。第1実施形態の構成によれば、磁気ヨーク21の全周囲に合計24個のコイルが設置されている。これらのコイルは、その役割の上で、前述の通り、第1および第2の2つのコイルグループに分けられる。
上記第1のコイルグループは12個のコイル2a,2b,3a,3b,4a,4bで構成される。コイル2a,2b,3a,3b,4a,4bはそれぞれ2つずつ設けられている。図1で、第1のコイルグループの各コイル2a〜4bは、磁気ヨーク21の円周方向に対して縦の線で表した断面で示されている。第1のコイルグループのコイルの配置は、図1の中心(原点)Oを通る垂直線(Y軸10)および水平線(X軸11)に関して線対称になるように設定されている。前述のコイル2a,2b,3a,3b,4a,4bの各2つのコイルは、X軸に関して線対称になるように配置されている。
第1のコイルグループで、2つのコイル2aおよび2つのコイル2bの計4つのコイルは同一形状である。コイル2a,2bによって磁気ヨーク21中に黒い矢印15a,15bで示されるごとき磁束が形成されるように、各コイル2a,2bは電気的に直列に接続されている。コイル2a,2bで、電流の流れる向きは反対となる。この場合に、コイル2aによって生じる磁束15aと、コイル2bによって発生する磁束15bは、互いに反対の向きになっている。
また2つのコイル3aおよび2つのコイル3bの計4つのコイルは同一形状である。コイル3a,3bは、同様に、磁気ヨーク21中の磁束が図中の黒い矢印15a,15bで示された方向になるように、それぞれ直列に結線されている。コイル3a,3bで、電流の流れる向きは反対となる。さらに2つのコイル4aおよび2つのコイル4bの計4つのコイルも同一形状である。コイル4a,4bについても、同様に、磁気ヨーク21中の磁束が図中の黒い矢印15a,15bで示された方向になるように、それぞれ直列に結線されている。コイル4a,4bでも電流の流れる向きは反対となる。
コイル2a,2bの組、コイル3a,3bの組、コイル4a,4bの組には、それぞれ、独立に制御された電流が供給される。さらに、各コイルの組に供給される電流の値は独立に制御される。
次に、上記第2のコイルグループは12個のコイル12a,12b,13a,13b,14a,14bで構成される。コイル12a,12b,13a,13b,14a,14bはそれぞれ2つずつ設けられる。図1で、第2のコイルグループは、磁気ヨーク21の円周方向に対して横の線で表した断面で示されている。第2のコイルグループのコイルは、中心Oを通る垂直線(Y軸10)および水平線(X軸11)に関して線対称に配置されている。前述のコイル12a,12b,13a,13b,14a,14bの各2つのコイルは、Y軸に関して線対称になるように配置されている。第2のコイルグループは、第1のコイルグループの各コイルを反時計回りに90°回転させたものに相当する配置となっている。
第2のコイルグループで、2つのコイル12aおよび2つのコイル12bの計4つのコイルは同一形状である。コイル12a,12bによって磁気ヨーク21中に白抜き矢印16a,16bで示されるごとき磁束が形成されるように、各コイル12a,12bは電気的に直列に接続されている。この場合に、コイル12aによって生じる磁束16aと、コイル12bによって発生する磁束16bは、互いに反対の向きになっている。従って、コイル12a,12bで、電流の流れる向きは反対となる。なおコイル12a,12bはコイル2a,2bと同一形状である。
また2つのコイル13aおよび2つのコイル13bの計4つのコイルは同一形状である。コイル13a,13bは、同様に、磁気ヨーク21中の磁束が図中の白抜き矢印16a,16bで示された方向になるように、それぞれ直列に結線されている。コイル13a,13bで、電流の流れる向きは反対である。コイル13a,13bは、磁気ヨーク21上で上記コイル4a,4bと同一の位置に配置され、かつコイル4a,4bの外側に重ねられ、隣接させて配置されている。さらに2つのコイル14aおよび2つのコイル14bの計4つのコイルも同一形状である。コイル14a,14bも、同様に、磁気ヨーク21中の磁束が図中の白抜き矢印16a,16bで示された方向になるように、それぞれ直列に結線されている。コイル14a,14bで、電流の流れる向きは反対である。コイル14a,14bは、磁気ヨーク21上で上記コイル3a,3bと同一の位置に配置され、コイル3a,3bの外側に重ねられ、隣接させて配置されている。
上記のように構成される磁気ヨークおよびコイルの全体は、筒形であって、環形状を有する密閉されたケース17の中に収容される。このケース17の内部には、水入口18からコイル冷却用の水が導入される。冷却用の水は水出口19から外へ排出される。これにより、各コイルに流す電流の値を大きくすることができ、発生させる磁界の強度を好ましくは100〜200ガウスにすることができる。
次に図6を参照して前述の各コイルへの電流供給機構について説明する。31はコイルに直流電流を供給する電源である。電源31から出力される電流は、電流制御器32を介してコイル2a,2bまたはコイル12a,12b、電流制御器33を介してコイル3a,3bまたはコイル13a,13b、さらに電流制御器34を介してコイル4a,4bまたはコイル14a,14bに、それぞれ供給される。コイル2a,2bとコイル12a,12bの間の切替えは切替え器42によって行われ、コイル3a,3bとコイル13a,13bの間の切替えは切替え器43によって行われ、さらにコイル4a,4bとコイル14a,14bの間の切替えは切替え器44によって行われる。切替え器42,43,44の切替え動作は、第1のコイルグループに通電するか、または第2のコイルグループに通電するかを選択するものであるから、同時に行われる。
上記の電流供給機構の構成によれば、第1のコイルグループのコイル2a,2bと第2のコイルグループのコイル12a,12bには同じ電流が流れ、第1のコイルグループのコイル3a,3bと第2のコイルグループのコイル13a,13bには同じ電流が流れ、第1のコイルグループのコイル4a,4bと第2のコイルグループのコイル14a,14bには同じ電流が流れることになる。さらに切替え器42,43,44によって、第1のコイルグループと第2のコイルグループに同時に電流が流れることはなく、必ず、いずれか一方のグループに電流が流される。
またコイルの各組には、各々に対応する電流制御器32〜34によって励磁電流が適切に制御され、それによって、磁界の方向を広い範囲にわたって同じ方向に高い精度(±1°以内)で揃えることが可能となる。
次に、上記構成を有する磁界発生装置の動作原理を説明する。基本的に第2のコイルグループによって発生する磁界は、第1のコイルグループにより発生する磁界を反時計方向に90°回転させたものとほとんど一致する。従って、第1グループのコイルにより発生する磁界について説明する。
前述の通り、第1のコイルグループでは、磁気ヨーク21の中心Oを通る垂直線10(Y軸)に対して左と右のコイルで、磁気ヨーク21内に発生する磁束15a,15bの方向が反対向きになるように電流を流している。そのため、この2つの磁束15a,15bの流れは、図1において、磁気ヨーク21の上側の部分でぶつかり、磁気ヨーク21の外部に漏れ出す。このうち、磁気ヨーク21の内側空間に漏れ出した磁束は、図1で磁気ヨーク21の下側、すなわち磁気ヨーク21によって囲まれる内部の領域に向かって流れ込む。以上の磁束の流れの様子を図3に示す。この際に、磁気ヨーク21の中心Oの周囲の空間(XY軸で定められるXY平面)に非常に方向性の揃った磁界を発生させることができる。図示例では、Y軸に平行な方向に揃った磁界が示されている。また、前述の電流制御器32,33,34の各々によってコイル2a,2b、コイル3a,3b、コイル4a,4bに流す電流の比率が適切になるように個別に調整することにより、極めて高い精度(±1°以内)で方向性が揃えられた磁界の発生領域をさらに拡大することが可能となる。
図4は外径300mm程度の大きさの磁気ヨーク21を用い、コイル2a,2b、コイル3a,3b、コイル4a,4bに流す電流の比率を適当に調整した場合に発生する磁界の分布を示したもので、磁気ヨーク21の中心Oを原点とした1/4の領域における分布を示している。図4から磁界の方向性が非常に均一であることがわかる。また図5は、上記磁界の傾き角の分布を示したものであり、図4と同様に、磁気ヨーク21の中心Oを原点とした1/4の領域の分布を示している。図5によれば、φ6インチ基板(破線35で示している)が含まれる領域内(半径76mm以内)において、傾き角度が1°以内になっていることがわかる。
第2のコイルグループに属するコイル12a,12b、コイル13a,13b、コイル14a,14bについても、各コイルに同じ条件で電流が流されるので、第1のコイルグループの場合と同様な作用で、X軸に平行な方向に揃えられた磁界が広い面積にわたって生成される。
前述の実施形態において、第1または第2のコイルグループの各コイルに関して、生成しようとする磁界の方向との関係で主コイルと副コイルとして把握することもできる。例えば第1のコイルグループの各コイルに関しては、Y軸方向に生成される磁界との関連で、コイル2a,2bを主コイル、コイル3a,3b,4a,4bを副コイルとして把握できる。同様に、第2のコイルグループの各コイルに関しては、X軸方向に生成される磁界との関連で、コイル12a,12bを主コイル、コイル13a,13b,14a,14bを副コイルとして把握できる。
上記の実施形態では、第1と第2のコイルグループの各々に別個にコイル3a,3b,4a,4bとコイル13a,13b,14a,14bを設け、隣接して重ねるようにしたが、これらの副コイルについては、これらをいずれか一方のみとし、2つのコイルグループで共用するように構成することもできる。この場合には、切替え器43,44を省略できるという利点を有している。ただし、切替え器42を切り替えるのと同時に、電流制御器33,34の通電量を適当に変える必要がある。
図7は、本発明による磁界発生装置の第2の実施形態を示し、図1と同様な図である。図7において、図1で示した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、磁気ヨーク21の周りに複数のコイルが設置されているが、コイルの個数が第1の実施形態の場合よりも少なくなっている。第1のコイルグループは、コイル2a,53a,2b,53bの合計8個のコイルから構成される。前述の実施形態と同様に、第1のコイルグループのコイルには、磁気ヨーク21中の磁束の方向が図1の黒い矢印15a,15bで示された方向になるように電流が供給される。また第2のコイルグループは、コイル12a,63a,12b,63bの合計8個のコイルから構成される。第2のコイルグループのコイルには、磁気ヨーク21中の磁束の方向が図1の白抜きの矢印16a,16bで示された方向になるように電流が供給される。コイル全体はケース17で覆われ、冷却水用の水入口18と水出口19が設けられている。
本実施形態による磁界発生装置の特徴は、第1実施形態の構成に比べて、コイルの構造が簡略化されている点である。これに伴って、均一な磁界が得られる空間の面積が多少減少するが、小さい基板の場合には十分に実用的である。また第2の実施形態の電流供給機構では、第1の実施形態に比較すると、電流制御器34と切替え器44を省略でき、構成が簡素になると共に、電流制御による磁界方向の調整を容易に行うことができる利点を有する。
また本実施形態においても、第1または第2のコイルグループの各コイルに関して、生成しようとする磁界の方向との関係で主コイルと副コイルとして把握できる。第1のコイルグループに関しては、コイル2a,2bを主コイル、コイル53a,53bを副コイルとして把握できる。同様に第2のコイルグループに関しては、コイル12a,12bを主コイル、コイル63a,63bを副コイルとして把握できる。
上記実施形態では、第1と第2のコイルグループの各々に別個にコイル53a,53bとコイル63a,63bを設け、隣接して重ねるようにしたが、これらの副コイルについては、これらをいずれか一方のみとし、2つのコイルグループで共用するように構成することもできる。この場合にも副コイルの切替え器を省略できるという利点を有している。
図8は、本発明による磁界発生装置の第3の実施形態を示し、図1または図7と同様な図である。図8において、図1または図7で示した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。本実施形態の構成は、ほとんど第2の実施形態と同じである。相違する点は、コイル2a,2b,12a,12bに相当するコイルが、前述の各実施形態では各々2個を用いているのに対し、本実施形態ではそれぞれ1個ずつ72a,72b,82a,82bとなっている点である。これに伴って、本実施形態のコイル72a,72b,82a,82bはサイズがより大きくなっている。その他の構成は、第2実施形態の構成と同じである。本実施形態による磁界発生装置の特徴は、第2実施形態と同じであるが、第2実施形態に比べて、さらにコイルの構造が簡略化されている点である。
また本実施形態においても、第1または第2のコイルグループの各コイルに関して、生成しようとする磁界の方向との関係で主コイルと副コイルとして把握できる。第1のコイルグループに関しては、コイル72a,72bを主コイル、コイル53a,53bを副コイルとして把握できる。同様に第2のコイルグループに関しては、コイル82a,82bを主コイル、コイル63a,63bを副コイルとして把握できる。上記実施形態では、第1と第2のコイルグループの各々に別個にコイル53a,53bとコイル63a,63bを設け、隣接して重ねるようにしたが、これらの副コイルについては、これらをいずれか一方のみとし、2つのコイルグループで共用するように構成することもできる。この場合にも副コイルの切替え器を省略できるという利点を有している。
次に図9〜図13に基づいて本発明による磁界発生装置の第4の実施形態を説明する。前述の第1から第3の実施形態では、スピンバルブ構造を有するGMRヘッドの膜構造において間に非磁性層を挟んだ2つの軟磁性層の磁化容易軸が直交することを前提としていた。しかし最近になって、ヘッドの種類・構造また使用される薄膜の材質によってはこの2つの軟磁性層の磁化容易軸が正確に直交している場合よりも或る程度ずれていた方が、GMRヘッド膜としてのノイズ特性が良好であることがわかってきた。そこで本実施形態によれば、2つの軟磁性層の磁化容易軸の間の角度を高精度に制御することを可能とし、直交で交差する場合を含め、適切な任意の角度で交差することを可能にする。
図9は、本実施形態による磁界発生装置の要部構造を示し、磁気ヨークとコイルの部分のみを示す正面図である。図9では、円環形状の磁気ヨーク21とこれの円周方向に沿って配置された例えば24個のコイル101a〜106a,101b〜106b,111a〜116a,111b〜116bの位置関係が示されている。24個のコイルの各々は単体のコイルであり、磁気ヨーク21における1つの箇所には1種類のコイルが巻かれている。24個のコイルはそれぞれ大きさと巻数が等しく、磁気ヨーク21上で等角度おきに配置されている。
ここで、各コイルに順方向の電流を流した場合に、図9で反時計回りの方向に磁界が発生するようなコイルの巻き方を順方向巻と定義し、その反対を逆方向巻と定義する。図9に示した構成において、逆方向巻のコイルは104a,104b,105a,105b,106a,106bの6個であり、他の残りの18個のコイルは順方向巻のコイルとなっている。
図10と図11は本実施形態における電流供給機構を示し、図10はコイル101a〜106a,101b〜106bからなるコイルグループに対応する電流供給機構であり、図11はコイル111a〜116a,111b〜116bからなるコイルグループに対応する電流供給機構である。図10において各コイルに紙面上左から右へ電流が流れるとき順方向の電流であるとする。コイルを示すブロック内に記した番号の上線は当該コイルが逆方向巻であることを示している。図10に示すごとくコイル101a〜106a,101b〜106bからなるコイルグループに対しては3つの電流源121A,121B,121Cが設置され、各電流源は電流値を適当に設定・可変できる構成を有している。コイル101b,106a、コイル102b,105a、コイル103b,104aは連動スイッチ122,123,124によってその電流方向を同時に反転することができる構成となっている。また図11に示すごとくコイル111a〜116a,111b〜116bからなるコイルグループに対しても、3つの電流源121D,121E,121Fが設置され、各電流源は同様にその電流値を適当に設定・可変できる構成を有している。
本実施形態においても24個のコイルはグループに分けられる。しかし本実施形態では、前述の各実施形態に比較してグループの分け方が異なる。まず大きく分けると、上記24個のコイルは、斜線で示したコイル101a〜106a,101b〜106bからなるコイルグループ(以下「コイルグループA」という)と、白抜きで示したコイル111a〜116a,111b〜116bからなるコイルグループ(以下「コイルグループB」という)に分けられる。さらにコイルグループAに関して、後述するごとく、さらに2つのコイルグループA1,A2に分けられる。
コイルグループAとコイルグループBからなる24個のコイルは各電流供給機構に関して上記のような結線構造を有しているので、各コイルグループはそれ自体で前述した実施形態の場合と同様に方向性の揃った互いに直交する磁界を発生する。すなわち図10に示した連動スイッチ122,123,124を上側に接続することにより、図12に示すごとく、コイルグループAのうちコイル101a,101b,106a,106bを主コイル、その他のコイルを副コイルとして動作させることにより(コイルグループAの第1接続状態)、磁気ヨーク21の中央部空間に左から右へ向かう方向(水平方向)に方向性の揃った磁界(矢印125で示す)を生成する。この時、コイルグループBの各コイルには電流を供給しないようにする。この磁界125はGMRヘッド膜の第1の軟磁性層を作る際に用いられる。
次にGMRヘッド膜の第2の軟磁性層を成膜する際には、図10に示した連動スイッチ122,123,124を下側に接続し、コイルグループAのうちコイル103a,103b,104a,104bを主コイル、その他のコイルを副コイルとして動作させることにより(コイルグループAの第2接続状態)、図13に示すごとく、上から下に向かう方向(垂直方向)に方向性の揃った磁界(図13で矢印126で示す)を発生する。コイルグループAの第2接続状態で作られる磁界126は、コイルグループAの第1接続状態で作られる上記磁界125に対して直交した位置関係にある。
コイルグループAは、上記連動スイッチにおける第1接続状態に対応して決まるコイルグループA1と、上記連動スイッチにおける第2接続状態に対応して決まるコイルグループA2に分けることができる。コイルグループA1とコイルグループA2は、グループを構成するコイル要素という観点からは同じコイルグループである。しかし、電流源121A,121B,121Cに対する結線関係が異なるという観点で異なるコイルグループとして認識する。
GMRヘッド膜の第2の軟磁性層を成膜する場合には、さらにコイルグループBの各コイルも同時に動作させる。コイルグループBについては、コイル113a,113b,114a,114bを主コイルとして、他のコイルを副コイルとして動作させることにより、上記コイルグループAの第2接続状態の作る磁界126の方向から15゜だけ時計回りに傾いた方向に方向性の揃った磁界(図13で矢印127で示す)を発生する。この場合、コイルグループBのコイル配置は、コイルグループAのコイル配置を丁度15゜回転させた位置になっている。実際の磁界は、コイルグループAとコイルグループBの各々の作る磁界のベクトル和の方向になる(図13で点線矢印128の方向)。ここで、コイルグループAとコイルグループBの各々に流す電流は最終的な合成磁界(図13の矢印128)の大きさが、第1の軟磁性層を作る際に用いられた横方向磁界125の大きさと等しくなるように、適当に調整される。このような調整を行いつつ、コイルグループAとコイルグループBの各コイルに流す電流の割合を適当に設定すると、最終的な合成磁界の方向を角度0゜から15゜の間で自由に設定することが可能となる。
以上の第4実施形態において、上記構成では第2の軟磁性層を成膜する際にコイルグループAは発生磁界の方向が丁度垂直に上から下になるように配置されていたが、磁界の方向が元々傾いた方向になるようにコイルを配置することも可能である。例えばコイルグループAのうちコイル104a,105a,102b,103bを主コイルとし、他の残りのコイルを副コイルとすることにより、垂直方向から30゜傾いた磁界を発生することができる。この場合も、コイルグループBのコイル配置をコイルグループAのコイル配置から15゜回転させるように設定すれば、最終的な合成磁界の方向を、垂直方向からの角度30゜から45゜の間で自由に設定することができる。
さらに上記の第4実施形態では第2の軟磁性層を成膜する際のコイルグループBのコイル配置はコイルグループAのコイル配置を15゜だけ回転したものであったが、例えば45゜等の他の異なる角度に設定することもできる。仮にこれを45゜にした場合、合成磁界の方向は0゜から45゜の角度範囲で設定できることになる。しかしこの回転角を大きくしてしまうと、磁気ヨーク21の中央部空間に生成される磁場の方向の均一性が失われてしまうため、やはり回転角度としては15゜以下にすることが好ましい。さらに上記実施形態ではコイルの数を24個としたが、36個のコイルを10゜間隔で配置してもよく、配置方法にはいろいろ変形が考えられる。以上のようにしてGMRヘッドの膜構造において、2つの軟磁性層の磁化容易軸の間の角度を、直交から任意の角度だけずれた関係にて高精度で設定することができる。
上記第4の実施形態ではコイルグループAの結線関係を変更することによりコイルグループA1,A2を作って直交する磁界125,126を生成するようにしたが、前述の第1から第3の実施形態による第1および第2のコイルグループの構成を利用して直交する2つの磁界を生成しかつ第4実施形態のコイルグループBを組み合わせることにより同様な磁界128を作ることも可能である。
以上、各種の実施形態を挙げて本発明による磁界発生装置について説明したが、本発明では種々の変形が考え得る。例えば磁気ヨークを円環ではなく、多角形状の環にしても良い。またコイルの配置位置や個数も任意に変形可能である。また少なくとも2つのコイルグループを使用して例えば90°の差異のごとく2つの方向の磁界を発生させるような形式のものはすべて本発明に含まれる。さらに上記の第1から第3の実施形態では、第1のコイルグループのコイルと第2のコイルグループのコイルには、同時に電流を流すことがないようにしていたが、もし必要であれば2つのコイルグループのコイルに同時に電流を流し、それらを時間的に適当に変化させることにより、非常に方向性の揃った回転磁界を発生させることも可能である。またコイルに流す電流を正弦的、矩形的に変化させることにより磁界の方向を時間的に変化させ反転させることもできる。さらに、磁界強度をあまり必要としないのであれば、水冷の機構などは省略することも可能である。
次に、図14と図15を参照して、前述した本発明による磁界発生装置を利用したスパッタリング装置の実施形態について説明する。図14は、前述の磁界発生装置を装備したスパッタリング装置の構成を模式的に示した縦断面図である。また図15はターゲットと基板と磁界発生装置の関係を示した平面図である。図14と図15では、一部を省略化し、各要素の形状、配置を分かりやすくしている。
各図において、200は、真空成膜チャンバが内部に形成される真空容器である。スパッタリング装置のチャンバの内部には、必須要素であるカソード本体201aとその上に設置されたターゲット202aが配置されている。本実施形態では、同様なターゲットとカソード本体が、他にも2組設置されており、図中では201b,202bおよび201c,202cで示され、それぞれ成膜チャンバを形成している。これら3組のカソード本体およびターゲットの各々は、他の部分から電気的に絶縁されている。外部の電源からこれらに電力を供給することにより、ターゲットの上の空間にプラズマが生成され、成膜が行われる。この3組のカソード本体およびターゲットには、別々の電源から別々に電力を供給することができる。
真空容器200の上壁には円盤状の基板ホルダ203が設置されている。基板ホルダ203にはスペーサ204を介して基板205が設置されている。またスペーサ204内にはヒータが設けられており、基板205を約300℃〜400℃に加熱することが可能である。基板ホルダ203は、基板ホルダ軸206に結合されていて、この基板ホルダ軸206を中心に回転運動であり、かつ上下運動可能となっている。図14でこれらの運動を可能にする駆動機構の図示は省略されている。
真空容器200の側壁には、前述した磁界発生装置207が支持部208を介して取り付けられている。基板ホルダ203を上下に動かすことにより、磁界発生装置207の中心部空間に基板205を位置させることができる。支持部208は、コイル冷却用水の出入口(前述の18および19)も兼ねている。また、基板205に対してターゲット202aの必要部分以外とカソード本体201aを覆うように、ターゲットシールド209が設置されている。各ターゲットの間には、隔壁210が設置されており、或る1つのターゲットによるスパッタリングで、他の2つのターゲットが汚染されるのを防いでいる。基板ホルダ203が下側に移動し、基板205が磁界発生装置207の中心部空間に位置する状態で、隔壁210と基板ホルダ203の間の間隔は約3mmとなるように調整されている。
次に、上記スパッタリング装置を用いてスピンバルブ構造の積層膜を作製する手順を説明する。
この場合、ターゲット202aの材質として、典型的な軟磁性体であるパーマロイ(Fe−Ni)を使用する。ターゲット202bの材質は反強磁性体であるFe−Mnである。また、ターゲット202cの材質は伝導性の非磁性体であるCuとする。基板205をスペーサ204上に設置した後、真空容器200内を圧力1×10-8Torr程度になるまで排気する。この状態では基板ホルダ203の位置は上側にあり、基板ホルダ203を回転させても、基板205が磁界発生装置207と衝突しない。Arガスを導入しながら1×10-3Torr程度の一定の圧力に保持する。
まず始めに、基板205がFe−Mnターゲット202bと対向するように基板ホルダ203を回転させ固定する。この状態で基板上に膜厚約5nmのFe−Mn膜を成膜する。次に、基板205がパーマロイターゲット202aに対向するように、基板ホルダ203を回転させ、基板ホルダ203を下側に移動させて磁界発生装置207の中心部空間に基板205が位置するように調節する。この状態で基板上に膜厚約5nmのパーマロイ膜を積層させる。次に基板ホルダ203を上側に移動させ、基板205がCuターゲット202cと対向するように基板ホルダ203を回転させ固定する。この状態で基板205上に膜厚約2nmのCu膜を積層する。最後に、再び基板205がパーマロイターゲット202aに対向するように基板ホルダ203を回転させ、基板ホルダ203を上下運動させて磁界発生装置207の中心部空間に基板205が位置するように調節し、基板上に膜厚約5nmのパーマロイ膜を積層させる。以上の手順に基づいてスピンバルブ構造の積層膜が作製される。
次に、図16を参照して本発明のスパッタリング装置の変形例を説明する。図16はスパッタリング装置内に配置された磁界発生装置301とスパッタ成膜を行うためのカソード本体302との配置関係のみを示している。このスパッタリング装置ではカソード本体302としてマグネトロン型カソードが使用されている。当該マグネトロン型カソード302では、その本体303の内部に、ターゲット304の表面にトンネル状の磁界305を発生させるための磁石306が設置されている。磁石306は中心磁石とこれを囲む周囲磁石とからなる。磁界306の作用により高密度のプラズマが形成され、当該プラズマでターゲット304がスパッタされる。一方、マグネトロン型カソード302の上方に配置された磁界発生装置301からは、矢印307で示された磁界が漏れ出す。この磁界は、元々バランスを保って適切に設定されていた磁石306による磁界305を乱す。磁界305が乱れると、放電電力が小さい場合には、発生するプラズマをしばしば不安定にする。
そこで本実施形態による磁界発生装置では、磁界306に対して磁界307ができるだけ干渉しないように、磁界307の発生を抑制すべく、コイルのケース17のうちターゲット304側に面する部分および外側に面する部分17aを軟磁性材料で形成している。本実施形態ではコイルのケース17のうち内側部分およびターゲット304の反対側に面する部分17bは非磁性材料で形成されている。このような構成を採用することにより、ターゲット304の前面に発生するプラズマを安定化させ、GMRヘッド膜の作製を安定して行うことができる。