JP2008139192A - 排気ガスセンサの故障診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排気ガスセンサの故障内容を正確に診断する。
【解決手段】故障診断装置10は、O2センサ100において排気側電極120に接する第1空間15を規定する第1評価室12と、大気側電極130に接する内部空間150と連通し、第1空間15から隔絶された第2空間16を規定する第2評価室13を備える。故障診断装置10において故障診断処理が実行される際、第1空間15には酸素ガスが、また第2空間16には窒素ガスが導入され、ファンによって攪拌される。更に、ヒータ17への通電制御を介してセンサ素子部100Aが加熱される。一方、各空間からは、採取口を介してガスが採取され、酸素濃度及び水分濃度が解析される。制御装置11は、この酸素濃度及び水分濃度に基づいて、センサ素子部100Aにおける物理的損傷の有無及び内部空間150への水分の混入の有無等を判別し、故障状態を診断する。
【選択図】図1
【解決手段】故障診断装置10は、O2センサ100において排気側電極120に接する第1空間15を規定する第1評価室12と、大気側電極130に接する内部空間150と連通し、第1空間15から隔絶された第2空間16を規定する第2評価室13を備える。故障診断装置10において故障診断処理が実行される際、第1空間15には酸素ガスが、また第2空間16には窒素ガスが導入され、ファンによって攪拌される。更に、ヒータ17への通電制御を介してセンサ素子部100Aが加熱される。一方、各空間からは、採取口を介してガスが採取され、酸素濃度及び水分濃度が解析される。制御装置11は、この酸素濃度及び水分濃度に基づいて、センサ素子部100Aにおける物理的損傷の有無及び内部空間150への水分の混入の有無等を判別し、故障状態を診断する。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えばO2センサや空燃比センサ等の各種排気ガスセンサの故障を診断するための排気ガスセンサの故障診断装置の技術分野に関する。
この種の装置に係る従来の技術として、リニアO2センサの故障を検出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたエンジンの空燃比制御装置によれば、空燃比を所定の変動周期で変動させた際にリニアO2センサの出力が変化し始めるまでの時間を検出し、当該時間が所定値以上であるか否かによってリニアO2センサが故障しているか否かを判断することが可能であるとされている。
尚、検出素子部のインピーダンス値の変化に基づいて検出素子部の異常の有無を判断する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、排気側電極と大気側電極を有し、大気層に元々存在した酸素をポンピングするのに要した時間に基づいて故障を検出する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
更には、空燃比センサのオフセットされた出力信号により故障を判定し、入力信号レベルにより故障内容を特定する技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
更には、被検ガス雰囲気と直接触れる第2の酸素検知電極と基準電極との間に生ずる起電力と、第1の酸素検知電極と基準電極との間の起電力とを比較してセンサ異常を検知する技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
上述した各種の従来技術では、排気ガスセンサが故障しているか否かは判断し得るが、その故障内容については、特定し得ないか、或いは例えば、時間、インピーダンス或いは電圧等、故障と相関のある指標値の検出結果に基づいて間接的に推定しているに過ぎず、実質的にみて故障内容を正確に特定し得ているとは言い難い。即ち、従来の技術には、排気ガスセンサの故障内容を正確に診断することが困難であるという技術的な問題点がある。
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、排気ガスセンサの故障内容を正確に診断することが可能な排気ガスセンサの故障診断装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するために、本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置は、内燃機関の排気系に装着された状態において(i)大気及び排気ガスに夫々接する大気側電極及び排気側電極を備え、(ii)前記大気側電極と前記排気側電極との間に前記大気と前記排気ガスとの間の酸素濃度の差に応じた起電力を生成可能な排気ガスセンサの故障状態を、前記内燃機関から取り外された状態において診断する排気ガスセンサの故障診断装置であって、
前記排気側電極に接する第1の空間を規定する第1のガス室と、前記大気側電極に接し且つ前記第1の空間から隔絶された第2の空間を規定する第2のガス室と、前記第1及び第2のガス室のうち一方のガス室に設けられ、該一方のガス室に対応する前記第1及び第2の空間のうち一方の空間に第1のガスを導入するための第1の導入手段と、前記第1及び第2のガス室のうち他方のガス室に設けられ、該他方のガス室に対応する前記第1及び第2の空間のうち他方の空間から該他方の空間に存在するガスを採取するための第1の採取手段とを具備することを特徴とする。
前記排気側電極に接する第1の空間を規定する第1のガス室と、前記大気側電極に接し且つ前記第1の空間から隔絶された第2の空間を規定する第2のガス室と、前記第1及び第2のガス室のうち一方のガス室に設けられ、該一方のガス室に対応する前記第1及び第2の空間のうち一方の空間に第1のガスを導入するための第1の導入手段と、前記第1及び第2のガス室のうち他方のガス室に設けられ、該他方のガス室に対応する前記第1及び第2の空間のうち他方の空間から該他方の空間に存在するガスを採取するための第1の採取手段とを具備することを特徴とする。
本発明における排気ガスセンサは、内燃機関に装着された状態において夫々大気及び排気ガスに接する、例えば多孔質白金電極等として構成された大気側電極及び排気側電極を備え、当該大気側電極と排気側電極との間に、大気と排気ガスとの間の酸素濃度の差に応じた起電力を生成可能なセンサを包括する概念であり、例えば、大気側電極と排気側電極との間にジルコニア素子等で形成された固体電解質を介在させてなるジルコニアO2センサや、空燃比センサ等の形態を採る。
本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置には、例えば筐体部分が、例えば、ガラス、樹脂材料或いは金属材料等により形成されてなる、例えばチャンバ等の第1のガス室が備わり、当該第1のガス室により、その内部に排気側電極に接する第1の空間が規定されている。この第1の空間とは、当該排気ガスセンサが内燃機関に装着された状態では排気ガスが支配的に存在する空間である。尚、「排気側電極に接する」とは、物理的に(即ち、直接)接した状態のみを表すものではなく、例えば、オーバーコート層等の各種機能膜或いは機能層等を介して間接的に接した状態を含み、排気ガスセンサと、排気ガスセンサが正常である場合に排気側電極に対し酸素の影響を及ぼし得る位置関係にあることを包括する概念である。
一方、本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置には、例えば筐体部分が、例えば、ガラス、樹脂材料或いは金属材料等により形成されてなる、例えばチャンバ等の第2のガス室が備わり、当該第2のガス室により、その内部に大気側電極に接する第2の空間が規定されている。この第2の空間とは、当該排気ガスセンサが内燃機関に装着された状態では大気が支配的に存在する空間である。尚、「大気側電極に接する」とは、物理的に(即ち、直接)接した状態のみを表すものではなく、例えば、オーバーコート層等の各種機能膜或いは機能層等を介して間接的に接した状態を含み、排気ガスセンサと、排気ガスセンサが正常である場合に大気側電極に対し酸素の影響を及ぼし得る位置関係にあることを包括する概念である。この第2の空間は、例えば第1のガス室と第2のガス室とが相互にフランジ等の連結部材を介して連結されること等によって、第1の空間から隔絶されている。
これら第1及び第2のガス室のうち一方のガス室には、当該一方のガス室により規定される第1及び第2の空間のうち一方の空間に第1のガスを導入するための、例えば、導入口(或いは注入口)等の第1の導入手段が設けられている。ここで、第1の導入手段とは、当該一方の空間に対する第1のガスの導入に寄与し得る物理的な、機械的な、機構的な或いは電気的な手段を包括する概念であり、係る概念が担保される限りにおいて、必ずしも第1の導入手段のみによって当該一方の空間に対する第1のガスの導入が可能とならずともよい趣旨である。別言すれば、第1の導入手段に、更に例えば第1のガスが貯留されたガス源、ポンプ等の圧送手段、及びデリバリパイプ等の配管部材等を連結することにより係るガス源から第1のガスが導入されてもよい。反対に、第1の導入手段とは、それ自体で当該一方の空間に第1のガスを導入可能な手段であってもよい。尚、第1のガスの種類は何ら限定されず、例えば、酸素ガスや窒素ガス等であってもよい。
一方、第1の導入手段が設けられる一方のガス室とは異なる他方のガス室には、当該他方のガス室に対応する他方の空間からガスを採取するための、例えば採取口等の第1の採取手段が設けられている。ここで、第1の採取手段とは、当該他方の空間からのガスの採取に寄与し得る物理的な、機械的な、機構的な或いは電気的な手段を包括する概念であり、係る概念が担保される限りにおいて、必ずしも第1の採取手段のみによって当該他方の空間からのガスの採取が可能とならずともよい趣旨である。別言すれば、第1の採取手段に、更に例えば採取すべきガスを貯留する貯留手段、ポンプ等の圧送手段、及びデリバリパイプ等の配管部材等を連結することにより当該他方の空間からガスが採取されてもよい。反対に、第1の採取手段とは、それ自体で当該他方の空間からガスを採取可能な手段であってもよい。或いは、第1の採取手段とは、例えば当該他方の空間に露出する検出用の端子や、係る端子を介して当該他方の空間に存在するガスにおける、例えば酸素濃度や水分濃度等を検出するためのコネクタ等であってもよい。即ち、採取とは、当該他方の空間からガスを取り出すことのみに限定されない趣旨である。
ここで特に、第1の空間と第2の空間は先に述べた通り隔絶されているから、排気ガスセンサの素子部(即ち、大気側電極と排気側電極とが対向している部分)に、割れ、クラック、或いは穴等の物理的損傷が発生していなければ、一方の空間に導入された第1のガスは、他方の空間に到達しない。一方で、排気ガスセンサに、大気側電極から排気側電極に到達する割れ、クラック或いは穴等の物理的損傷が発生している場合、一方の空間に導入された第1のガスは、第1のガスがいずれの空間に導入されるにしろ、大気側電極或いは排気側電極から、例えば固体電解質を通って排気側電極或いは大気側電極へ流入することになる。従って、この場合、他方の空間、即ち、ガスが採取される空間におけるガスの状態は、一方の空間に第1のガスを導入する以前と較べて、或いはリアルタイムに又は連続的に変化することになる。
従って、本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置によれば、採取手段を介して採取された他方の空間に存在するガスにおける、例えば酸素濃度や水分濃度等、各種組成や重量比率等を、例えば外部の、又は採取手段を介して直接接続される、或いは装置内に備わる各種分析装置等の特定手段により特定すること等によって、排気ガスセンサの故障状態を、実現象として正確に診断することが可能となる。従って、排気ガスセンサの故障状態と対応付けられた各種の物理的又は電気的な指標値(例えば、電圧、電流又はインピーダンス等)に基づいて間接的に故障状態を特定する場合と較べ、測定システムの故障、誤動作、或いは測定誤差等の影響が軽減される分、診断に係る精度がより担保される。即ち、排気ガスセンサの故障内容を正確に診断することが可能となるのである。
本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置の一の態様では、前記他方の空間から採取されたガスの状態を特定する第1の特定手段を更に具備する。
この態様によれば、例えば、ガスクロマトグラフィ装置等の各種分析装置、或いは更に各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等を適宜含んでなる第1特定手段の作用により、第1の採取手段を介して採取されたガスの状態が特定される。ここで、本発明に係る「ガスの状態」とは、排気ガスセンサの故障状態の診断に供し得る状態を包括する概念であり、例えば、ガスの組成、重量比率や濃度比率等の成分比率、又は特定の成分の濃度等定量的な状態、或いは特定の成分(例えば、排気ガスセンサが正常であれば検出されるはずのない成分)の有無、又はガスの物理的若しくは化学的な性質等定性的な状態を含んでなる広い概念である。
従って、この態様によれば、係る特定されたガスの状態に基づいて、例えば、外部の診断装置により、又は第1の特定手段と物理的、機械的、機構的或いは電気的に接続された診断手段により、更には予めガスの状態に対応付けられた診断指標等に従って人為的に、排気ガスセンサにおける割れ、クラック又は穴等の物理的損傷の有無、発生部位及び規模等、排気ガスセンサの定量的又は定性的な故障状態を診断することが容易にして可能となる。
尚、この態様では、前記特定された前記他方の空間から採取されたガスの状態に基づいて前記故障状態を診断する第1の診断手段を更に具備してもよい。
この場合、排気ガスセンサの故障診断装置に、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る診断装置が備わり、特定されたガスの状態に基づいて、排気ガスセンサの故障状態を診断することが可能となるため、より効率的且つ効果的である。
尚、本発明における「故障状態を診断する」とは、故障の内容或いは規模を、定性的又は定量的な観点から幾らかなりとも特定或いは判別することを表す概念である。従って、係る第1診断手段によれば、例えば排気ガスセンサの割れ、クラック或いは穴等の有無、発生箇所、又は規模等が詳細に特定され得る。或いは排気ガスセンサの故障が比較的軽微であるか重大であるか等といった定性的な規模が、連続的に、又は段階的に特定され得る。
本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置の他の態様では、前記他方のガス室に設けられ、前記他方の空間に前記第1のガスとは異なる第2のガスを導入するための第2の導入手段を更に具備する。
この態様によれば、他方のガス室に設けられた、前述した第1の導入手段と同様の概念を有する第2の導入手段により、他方の空間に第1のガスと異なる第2のガスが導入され得る。一方の空間に導入された第1のガスが、排気ガスセンサにおける、例えばセンサ素子部の物理的損傷等により他方の空間に流入するとして、他方の空間に第1のガスと同種のガスが予め存在していれば、一方の空間から流入したガスであるのか、他方の空間に予め存在していたガスであるのかの判断が困難となる可能性がある。この場合、他方の空間に第2のガスが導入され得るため、他方の空間における、一方の空間から流入した第1のガスの存在をより高精度に検出することが可能となり、排気ガスセンサの故障診断に係る診断精度がより向上し得る。
尚、この態様では、前記第1のガスは酸素ガスであり、前記一方の空間として前記第1の空間に導入され、前記第2のガスは窒素ガスであり、前記他方の空間として前記第2の空間に導入されてもよい。
この場合、排気側電極に接する第1の空間に第1のガスとして酸素ガスが導入され得、大気側電極に接する第2の空間には窒素ガスが導入され得るため、排気ガスセンサの故障診断に係る精度が向上し得る。
本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置の他の態様では、前記一方のガス室に設けられ、前記一方の空間から前記一方の空間に存在するガスを採取するための第2の採取手段を更に具備する。
この態様によれば、他方の空間に備わる第1の採取手段と同様の概念を有する第2の採取手段により、当該一方の空間から当該一方の空間に存在するガスが採取され得る。排気ガスセンサに何ら損傷が生じていないならば、第2の採取手段により採取され得るガスは、即ち第1のガスであるが、排気ガスセンサに何らかの損傷が生じている場合には、他方の空間に存在するガスが流入し得る、或いは他方の空間へガスが流出し得るため、第2の採取手段により採取され得るガスの成分比率等が変化する。従って、この態様によれば、各々採取された第1の空間及び第2の空間におけるガスの状態を特定するプロセス等を経ることにより、排気ガスセンサの故障状態を一層高精度に診断することが可能となる。
尚、前述したように、一方の空間として第1の空間に第1のガスとして酸素ガスが導入され、他方の空間として第2の空間に第2のガスとして窒素ガスが導入された場合、第1及び第2の空間の各々において採取されたガスにおける酸素濃度の変化等を特定することにより、故障診断が実行されてもよい。
尚、この態様では、前記一方の空間から採取されたガスの状態を特定する第2の特定手段を更に具備してもよい。
この場合、上述した第1の特定手段と同様の概念を有する第2の特定手段によって、一方の空間から採取されたガスの状態が特定されるため、係る特定されたガスの状態に基づいて、例えば、外部の診断装置により、又は第2の特定手段と物理的、機械的、機構的或いは電気的に接続された診断手段により、更には或いは予めガスの状態に対応付けられた診断指標等に従って人為的に、排気ガスセンサにおける割れ、クラック又は穴等の物理的損傷の有無、発生部位及び規模等、排気ガスセンサの定量的又は定性的な故障状態を診断することが容易にして可能となる。
尚、第1の特定手段と第2の特定手段とは、少なくとも一部が相互に同一のハードウェア構成を有していてもよいし、相互に全く独立して構成されていてもよい。
また、この態様では更に、前記特定された前記一方の空間から採取されたガスの状態に基づいて前記故障状態を診断する第2の診断手段を更に具備してもよい。
この場合、上述した第1の診断手段と同様の概念を有する第2の診断手段により、一方の空間から採取されたガスの状態に基づいて排気ガスセンサの故障状態が診断されるため、排気ガスセンサの故障診断に係る精度が向上し得る。
本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置の他の態様では、前記第1の空間における前記排気ガスセンサを加熱可能な加熱手段を更に具備する。
この態様によれば、例えば第1のガス室に、第1の空間における排気ガスセンサを直接的に、或いは第1の空間に存在するガスを介して間接的に加熱することが可能な、例えばヒータ等の加熱手段が備わるため、第1の空間におけるガスをより活性化させ、損傷部位を介したガスの移動或いは拡散を促進させることが可能となる。また、故障状態の一として、第2の空間の一部に水分が混入している場合、係る加熱手段の作用によって、当該水分の気化及び拡散が促進されるから、第2の空間に存在するガスの状態を特定し得る場合には、排気ガスセンサにおける、割れ、クラック又は穴等の他に、更に第2の空間に水分が混入したことによる故障をも検出することが可能となる。即ち、より高精度に排気ガスセンサの故障状態を診断することが可能となる。
尚、この態様では、前記排気ガスセンサが所定の温度となるように前記加熱手段を制御する加熱制御手段を更に具備してもよい。
この場合、排気ガスセンサの温度を調節することが可能となるため、より効率的且つ効果的に排気ガスセンサの故障状態を診断することが可能となる。尚、所定の温度とは、排気ガスセンサを有意に昇温せしめ得る限りにおいて如何なる温度であってもよく、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、第1の空間に存在するガスを効率的且つ効果的に活性化し得るように、或いは第2の空間に存在する水分を効率的且つ効果的に気化せしめ得るように決定されていてもよい。
本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置の他の態様では、前記第1及び第2の空間のうち少なくとも一方に存在するガスを撹拌可能な撹拌手段を更に具備する。
この態様によれば、例えばファン等の撹拌手段により、第1の空間に存在するガス又は第2の空間に存在するガス或いはその両方が撹拌され、好適には各空間内におけるガスの状態が均一化される。従って、第1或いは第2の採取手段によって採取されるガスの成分を安定させることが可能となって、例えば第1或いは第2の特定手段による特定精度が、又は第1或いは第2の診断手段による診断精度が向上する。即ち、より高精度に排気ガスセンサの故障状態が診断され得る。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る故障診断装置10の構成について、その動作の一部を交えて説明する。ここに、図1は、故障診断装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る故障診断装置10の構成について、その動作の一部を交えて説明する。ここに、図1は、故障診断装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、故障診断装置10は、例えば車両のエンジン等に好適に使用されるO2センサ100(即ち、本発明に係る「排気ガスセンサ」の一例)の故障状態を診断することが可能に構成された、本発明に係る「排気ガスセンサの故障診断装置」の一例である。尚、O2センサ100の詳細な構成については、後に図2を参照する形で詳述する。
故障診断装置10は、制御装置11を備える。制御装置11は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、故障診断装置10の動作全体を制御することが可能に構成されたコンピュータシステムであり、本発明に係る「第1の診断手段」、「第2の診断手段」及び「加熱制御手段」の一例である。制御装置11は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する故障診断処理を実行することが可能に構成されている。
故障診断装置10は、第1評価室12及び第2評価室13を備える。
第1評価室12は、O2センサ100のセンサ素子部100A(図示破線枠参照)を覆う、例えばガラス製のチャンバであり、本発明に係る「第1のガス室」の一例である。第1評価室12は、その内壁部と後述するフランジ14とによって、内部に第1空間15(即ち、本発明に係る「第1の空間」の一例)を規定している。尚、第1評価室12は、センサ素子部100Aを覆うセンサカバー110を更に外側から覆う構成を有している。
第2評価室13は、O2センサ100の大気開放部100B(図示鎖線枠参照)を覆う、例えばガラス製のチャンバであり、本発明に係る「第2のガス室」の一例である。第2評価室13は、その内壁部と後述するフランジ14とによって、内部に第2空間16(即ち、本発明に係る「第2の空間」の一例)を規定している。尚、第2評価室13は、大気開放部100Bを覆うセンサカバー160を更に外側から覆う構成を有している。
フランジ14は、O2センサ100が、例えば車両のエンジンにおける排気管に装着される際に、当該排気管内の気密状態を維持しつつ当該排気管にO2センサを接続するための結合部材である。図1においてフランジ14の下方に広がる空間は、測定対象空間の酸素濃度を検出するためのセンサ素子部100Aを取り巻く空間となっており、前述した第1空間15の一部を構成している。一方、図1においてフランジ14の上方に広がる空間は、O2センサ100の大気開放部100Bを取り巻く空間となっており、前述した第2空間16の一例を構成している。このように、第1評価室12及び第2評価室13は、夫々フランジ14の相異なる側に接続されており、従って、第1評価室12及び第2評価室13により夫々規定される第1空間15及び第2空間16は、相互に隔絶されている。
第1評価室12には、ヒータ17が設置されている。ヒータ17は、第1空間15を加熱することが可能に構成された、本発明に係る「加熱手段」の一例である。また、ヒータ17は、発熱部が第1空間15に露出すると共に、その制御用の配線部材が、第1空間15の気密が保たれるように第1評価室12の外部に露出した構成を有しており、当該配線部材は、温調器18と電気的に接続されている。
温調器18は、第1空間15の温度を調整することが可能に構成された温度調整用のコントローラであり、制御装置11と共に本発明に係る「加熱制御手段」の一例をなす。温調器18は、例えば交流100V電源等の電源装置19と接続されており、当該電源装置19からの電力の供給を受け、ヒータ17への通電量を制御することが可能に構成されている。また、温調器18は、制御装置11と電気的に接続されており、その動作が制御装置11により上位に制御される構成となっている。
第1評価室12及び第2評価室13には、夫々ファン20及びファン21が設置されている。ファン20及び21は、相互に同一のハードウェア構成を有する、本発明に係る「撹拌手段」の一例である。ファン20及び21は、夫々制御装置11と電気的に接続されており、制御装置11による制御を受けて、夫々第1空間15及び第2空間16において回転駆動される構成となっている。この回転駆動がなされた状態において、各ファンは、各空間内のガスを撹拌せしめ得る構成となっている。
一方、第1評価室12には、ガス導入口22が設けられている。ガス導入口22は、第1空間15に外部からガスを導入するための管状部材であり、本発明に係る「第1の導入手段」の一例である。ガス導入口22は、第1評価室12の外部まで伸長しており、当該伸長部分に図示せぬバルブが設けられている。係るバルブは、制御装置11によってその開閉状態が制御される構成となっている。
尚、本実施形態において、ガス導入口22には、酸素タンク200が接続されており、制御装置11により上述した不図示のバルブが開弁せしめられた際に、第1空間15に酸素ガス(即ち、本発明に係る「第1のガス」の一例)が供給される構成となっている。
他方、第2評価室13には、ガス導入口23が設けられている。ガス導入口23は、第2空間16に外部からガスを導入するための管状部材であり、本発明に係る「第2の導入手段」の一例である。ガス導入口23は、第2評価室13の外部まで伸長しており、当該伸長部分に図示せぬバルブが設けられている。係るバルブは、制御装置11によってその開閉状態が制御される構成となっている。
尚、本実施形態において、ガス導入口23には、窒素タンク300が接続されており、制御装置11により上述した不図示のバルブが開弁せしめられた際に、第2空間16に窒素ガス(即ち、本発明に係る「第2のガス」の一例)が供給される構成となっている。
第1評価室12には、採取口24が設けられている。採取口24は、第1空間15に一部が露出しており、その露出部位においてガスを採取することが可能に構成された、本発明に係る「第2の採取手段」の一例である。尚、採取口24は、積極的にガスを採取する構成は有しておらず、あくまで第1空間15を滞留する過程で採取口24に到達したガスを比較的緩やかにトラップする構成となっている。
第2評価室13には、採取口26が設けられている。採取口26は、第2空間16に一部が露出しており、その露出部位におけるガスを採取することが可能に構成された、本発明に係る「第1の採取手段」の一例である。尚、採取口26は、積極的にガスを採取する構成は有しておらず、あくまで第2空間16を滞留する過程で採取口26に到達したガスを比較的緩やかにトラップする構成となっている。
採取口24及び26には、夫々相互に独立したデリバリ25及び27が接続されている。デリバリ25及び27は、採取されたガスに対し化学的に安定な金属製の管状部材であり、夫々他方の端部が解析装置28に接続されている。
解析装置28は、デリバリ25及び27を介して送り込まれたガスにおける、酸素濃度Do及び水分濃度Dwを解析することが可能に構成された装置であり、本発明に係る「第1の特定手段」及び「第2の特定手段」の一例である。解析装置28は、第1空間15及び第2空間16から夫々独立して取り込まれるガスを夫々独立に解析することが可能に構成されている。また、解析装置28は、制御装置11と電気的に接続されており、その動作は制御装置11によって上位に制御される構成となっている。更に、解析装置28により解析された各種濃度のデータは、制御装置11に一定の周期で出力される構成となっている。
次に、図2を参照し、O2センサ100の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、O2センサ100における主としてセンサ素子部100Aの断面構成を表してなる模式断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、O2センサ100におけるセンサ素子部100Aは概略筒状をなしており、下方の一端部において閉じられている。センサ素子部100Aの内部には、内部空間150が形成されており、この内部空間150は、大気開放部100B(図2では不図示)に連通している。大気開放部100Bは、エンジン等に装着された状態において大気に開放される部位であり、前述したセンサカバー160を介して第2空間16と相互に連通している。従って、内部空間150は、大気開放部100Bを介して第2空間16と連通する構成となっている。即ち、この内部空間150は、第2空間16の一部とみなしてよく、第2空間16と共に本発明に係る「第2の空間」の一例となっている。このため、内部空間150の雰囲気は、理想的には第2空間16の雰囲気と略等しく保たれる。
図2において、センサ素子部100Aは、排気側電極120、大気側電極130及び固体電解質140を備える。
固体電解質140は、ジルコニアで構成されており、例えば300度以上の高温条件下で酸素イオン導電体として機能するように構成されている。排気側電極120及び大気側電極130は、この固体電解質140の内外表面にメッキなどの方法で形成された、多孔質白金電極である。固体電解質140の内部は酸素イオンが自由に動ける状態にあり、その両側に酸素濃度差(酸素分圧の差)があると、その濃度差を減らすように酸素イオンが一方側から他方側に移動する。その際、高濃度側の酸素は、多孔質白金電極として構成された排気側電極120又は大気側電極130の表面で受け取られて酸素イオンとなり、固体電解質140中を低濃度側に移動して反対側の電極に到達する。この酸素イオンの移動現象は、電子の移動となり、排気側電極120及び大気側電極130からなる一対の電極間に起電力を発生させる。この起電力は、O2センサ100の出力電圧となる。
尚、図示は省略するが、排気側電極120には、多孔質セラミックで形成された保護膜としてのオーバーコート層が形成されており、排気側電極120は、当該オーバーコート層を介して第1空間15と接している。
センサ素子部100Aの外側には、耐熱ステンレス製のセンサカバー110が配設されている。センサカバー110には、多数の通気孔110Aが形成されており、センサ素子部100Aに向かうガスの流速を減衰せしめ得る構成となっている。また、センサカバー110は、センサ素子部100Aをゴミや水滴等から保護する機能も有している。尚、図示は省略するが、大気開放部100Bもセンサカバー110と同様の物理構成を有するセンサカバー160で覆われている。
<実施形態の動作>
故障診断装置10では、制御装置11により故障診断処理が実行されることによって、O2センサ100の故障状態が診断される。ここで、図3を参照し、故障診断処理の詳細について説明する。ここに、図3は、故障診断処理のフローチャートである。
故障診断装置10では、制御装置11により故障診断処理が実行されることによって、O2センサ100の故障状態が診断される。ここで、図3を参照し、故障診断処理の詳細について説明する。ここに、図3は、故障診断処理のフローチャートである。
図3において、制御装置11は始めに、ファン20及び21を稼動させる(ステップA10)。ファン20及び21を稼動させると、制御装置11は、第2評価室13内の第2空間16に窒素ガスを導入する(ステップA11)。ここで、制御装置11は、ガス導入口23に配設されたバルブを開弁せしめ、窒素タンク300からガス導入口23を介して窒素ガスを導入する。尚、本実施形態では、予め図示せぬ真空排気系の作用により、第2評価室13は所定の真空状態とされており、窒素ガスの導入により、第2評価室13内は、窒素雰囲気で満たされる。但し、第2評価室13の内部は、必ずしも真空排気される必要は無く、また窒素ガスの導入量も比較的自由に、好適には実践上の不都合が生じない程度に酸素濃度を低下させ得る限りにおいて自由に決定されてよい。
第2評価室13に窒素ガスが導入されると、制御装置11は、第1評価室12に酸素ガスを導入する(ステップA12)。ここで、制御装置11は、ガス導入口22に配設されたバルブを開弁せしめ、酸素タンク200からガス導入口22を介して酸素ガスを導入する。尚、本実施形態では、予め図示せぬ真空排気系の作用により、第1評価室12は所定の真空状態とされており、酸素ガスの導入により、第1評価室12内は、酸素雰囲気で満たされる。但し、第1評価室12の内部は、必ずしも真空排気される必要は無く、また酸素ガスの導入量も比較的自由に、好適には実践上の不都合が生じない程度に十分な酸素が導入される限りにおいて自由に決定されてよい。
ステップA11及びステップA12に係る処理が終了すると、第1空間15及び第2空間16に夫々導入された酸素ガス及び窒素ガスが均一に拡散するまで、以降の処理が待機状態に制御されるが、実際には、ファン20及び21の作用により、極めて短時間で両空間に夫々のガスが均一に拡散する。
制御装置11は、次に、ヒータ17を稼動させる(ステップA13)。ここで、制御装置11は、温調器18を制御し、第1空間15が所定温度となるようにヒータ17への通電量を制御する。尚、制御装置11は、図1においては不図示の温度センサにより検出される第1空間15の温度が設定値に維持されるように、ヒータ17への通電量をフィードバック制御している。従って、第1空間15の温度は、所定温度で略一定に保たれる。尚、係る所定温度は、センサ素子部100Aを十分に温め得る温度として決定されている。
ヒータ17を稼動させると、制御装置11は、解析装置28を制御し、第1空間15及び第2空間16における酸素濃度Do及び水分濃度Dwの解析を開始する(ステップA14)。解析装置28による各濃度の解析結果は、制御装置11に一定の周期で出力される。制御装置11は、解析装置28から送られてくる検出結果に相当するデータを、時系列に従って順次RAMに記憶する。
一方、制御装置11は、酸素濃度Do及び水分濃度Dwの解析を開始してからの経過時間Tを記憶しており、次なるステップとして、経過時間Tが閾値Tthに到達したか否かを判別する(ステップA15)。ここで、閾値Tthは、センサ素子部100Aに生じた極微小な損傷をも検出可能な程度に長い時間に設定されている。
経過時間Tが閾値Tthに満たない場合(ステップA15:NO)、制御装置11はステップA15に係る処理を繰り返すと共に、経過時間Tが閾値Tthに到達した場合(ステップA15:YES)、制御装置11は、記憶された解析結果に基づいてO2センサ100の故障診断を実行する(ステップA16)。故障診断が実行されると、故障診断処理は終了する。
ここで、故障診断の詳細について説明する。センサ素子部100Aにおいて、例えば排気側電極120(或いは大気側電極130)から大気側電極130(或いは排気側電極120)へ達する素子割れ、クラック又は穴等の物理的損傷が生じている場合、排気側電極120と接する空間から内部空間150へガスが流出する。或いは内部空間150から排気側電極120が接する空間へガスが流出する。センサ素子部100Aが正常な状態であれば、これら両空間は相互に隔絶されているから、このようなガスの流出は発生しない。従って、両空間のガスの状態に基づいて、故障状態の診断を行うことができる。
故障診断装置10においてO2センサ100の故障状態が診断される際、制御装置11は、O2センサ100が下記(1)〜(3)の各状態に該当するか否かを判別することによって診断を行う。
(1)物理的損傷の発生
(2)内部空間における水分の混入
(3)上記(1)及び(2)に該当しない他の故障
上述したステップA16に係る処理において、制御装置11は、RAMに記憶された、第1空間15及び第2空間16各々における酸素濃度Do及び水分濃度Dwを参照する。第1空間15には予め酸素ガスが導入されており、また第2空間16には予め窒素ガスが導入されている。従って、センサ素子割れ等の物理的損傷が発生していないならば、第2空間16における酸素濃度Doは限りなくゼロに近いはずであり、また、第1空間15における酸素濃度Doは、経時的に変化しないはずである。制御装置11には、予めこの点に鑑みたアルゴリズムが与えられており、第2空間16における酸素濃度Doが基準値を超え、且つ第1空間15における酸素濃度Doが経時的に変化(好適には、低下)している場合に、少なくともO2センサが上記(1)の状態に該当する旨の判別を行う。この際、係る基準値は、ROMに予め記憶されていてもよい。
(2)内部空間における水分の混入
(3)上記(1)及び(2)に該当しない他の故障
上述したステップA16に係る処理において、制御装置11は、RAMに記憶された、第1空間15及び第2空間16各々における酸素濃度Do及び水分濃度Dwを参照する。第1空間15には予め酸素ガスが導入されており、また第2空間16には予め窒素ガスが導入されている。従って、センサ素子割れ等の物理的損傷が発生していないならば、第2空間16における酸素濃度Doは限りなくゼロに近いはずであり、また、第1空間15における酸素濃度Doは、経時的に変化しないはずである。制御装置11には、予めこの点に鑑みたアルゴリズムが与えられており、第2空間16における酸素濃度Doが基準値を超え、且つ第1空間15における酸素濃度Doが経時的に変化(好適には、低下)している場合に、少なくともO2センサが上記(1)の状態に該当する旨の判別を行う。この際、係る基準値は、ROMに予め記憶されていてもよい。
尚、物理的損傷の発生に係る判別の態様は、これに限定されず、例えば、第2空間16において酸素濃度Doが基準値を超えるか、又は第1空間15における酸素濃度Doが経時的に低下している場合に、物理的損傷が発生している旨の判別がなされてもよい。
また、第2空間16における酸素濃度Doの上昇速度及び第1空間15における酸素濃度Doの低下速度は、夫々理想的には物理的損傷の規模或いは発生部位に相関するから、制御装置11は、当該上昇速度或いは低下速度に基づいて、物理的損傷の規模を連続的に或いは段階的に判別し、或いは発生部位を特定し、O2センサ100の故障状態をより精細に診断してもよい。この際、例えばROMに、当該上昇速度及び低下速度と、物理的損傷の規模或いは発生部位との相関を表してなるマップ等が記憶されている場合には、係るマップを参照して当該判別を行ってもよい。更には、故障診断処理が実行された環境に係る各種環境条件等を加味して当該判別がなされてもよい。
一方、第1空間15における水分濃度Dwが変化しないにもかかわらず、第2空間16における水分濃度Dwが変化している場合、ヒータ17による加熱によって内部空間150に付着した水滴が気化し、第2空間16に拡散したと考えることができる。従って、制御装置11は、第1空間15における水分濃度Dwが変化せず、且つ第2空間16における水分濃度Dwが変化している場合には、O2センサ100が少なくとも(2)の状態に該当する旨の判別を行う。無論、(2)の状態と上記(1)の状態とは相反するものでなく、同時に生じ得る事象である。尚、水分には酸素も含まれるから、この場合、第2空間16においては、水分濃度Dwのみならず酸素濃度Doも変化し得る。従って、制御装置11は、水分濃度Dw及び酸素濃度Doの変化に基づいて多角的に(2)の状態に係る判別をおこなってもよい。
他方、上記したような、第1空間15における酸素濃度Do及び水分濃度Dwの変化や、第2空間16における酸素濃度Do及び水分濃度Dwの変化が顕在化しない場合、少なくとも(1)及び(2)に該当する故障は発生していないものと判別することができる。但し、故障診断装置10による故障診断に供されるO2センサは、顕著には車両のエンジン等に搭載され、OBD(On Board Diagnosis)等を経て少なくとも故障している旨の判別がなされたものであるから、この場合、制御装置11は、O2センサ100が、上記(1)にも(2)にも該当しない、(3)の状態である旨の判別を行う。
以上、説明したように、本実施形態に係る故障診断装置10によれば、故障診断処理により、例えばセンサ素子部100Aにおける物理的損傷の有無(或いは更に規模や発生部位)及び内部空間への水分の混入等を、ガスの拡散といった物理的な実現象に基づいて正確に検出することが可能となるため、O2センサ100の故障状態を正確に診断することが可能となるのである。
尚、本実施形態における故障診断装置10には、解析装置28が備わっており、また制御装置11により実行される故障診断処理によって故障状態の診断がなされるが、本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置の態様としては、これに限定されず、例えばより簡素な構成を採ることも可能である。例えば、本発明に係る排気ガスセンサの故障診断装置は、故障診断装置10から解析装置28及び制御装置11を取り外した構成を有していてもよい。この場合、例えば採取口24及び26から採取されたガスが、外部の解析装置によって解析されてもよい。更には、当該解析の結果に基づいて、外部の診断装置により、或いは人為的な判断により故障状態の診断がなされてもよい。即ち、本発明に係る故障診断装置とは、O2センサ100等の各種排気ガスセンサにおける、物理的損傷の発生或いは水分の混入等といった各種故障状態を、ガスの拡散或いは移動といった物理的な実現象として具現化し且つ抽出し得る物理的、機械的、機構的、電気的或いは化学的な構成を有する装置を包括する概念である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う排気ガスセンサの故障診断装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…故障診断装置、11…制御装置、12…第1評価室、13…第2評価室、14…フランジ、15…第1空間、16…第2空間、17…ヒータ、18…温調器、22、23…導入口、24、26…採取口、28…解析装置、100…O2センサ、100A…センサ素子部、110…カバー、120…排気側電極、130…大気側電極、140…固体電解質。
Claims (11)
- 内燃機関の排気系に装着された状態において(i)大気及び排気ガスに夫々接する大気側電極及び排気側電極を備え、(ii)前記大気側電極と前記排気側電極との間に前記大気と前記排気ガスとの間の酸素濃度の差に応じた起電力を生成可能な排気ガスセンサの故障状態を、前記内燃機関から取り外された状態において診断する排気ガスセンサの故障診断装置であって、
前記排気側電極に接する第1の空間を規定する第1のガス室と、
前記大気側電極に接し且つ前記第1の空間から隔絶された第2の空間を規定する第2のガス室と、
前記第1及び第2のガス室のうち一方のガス室に設けられ、該一方のガス室に対応する前記第1及び第2の空間のうち一方の空間に第1のガスを導入するための第1の導入手段と、
前記第1及び第2のガス室のうち他方のガス室に設けられ、該他方のガス室に対応する前記第1及び第2の空間のうち他方の空間から該他方の空間に存在するガスを採取するための第1の採取手段と
を具備することを特徴とする排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記他方の空間から採取されたガスの状態を特定する第1の特定手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記特定された前記他方の空間から採取されたガスの状態に基づいて前記故障状態を診断する第1の診断手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項2に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記他方のガス室に設けられ、前記他方の空間に前記第1のガスとは異なる第2のガスを導入するための第2の導入手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記第1のガスは酸素ガスであり、前記一方の空間として前記第1の空間に導入され、
前記第2のガスは窒素ガスであり、前記他方の空間として前記第2の空間に導入される
ことを特徴とする請求項4に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記一方のガス室に設けられ、前記一方の空間から前記一方の空間に存在するガスを採取するための第2の採取手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記一方の空間から採取されたガスの状態を特定する第2の特定手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項6に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記特定された前記一方の空間から採取されたガスの状態に基づいて前記故障状態を診断する第2の診断手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項7に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記第1の空間における前記排気ガスセンサを加熱可能な加熱手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記排気ガスセンサが所定の温度となるように前記加熱手段を制御する加熱制御手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項9に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。 - 前記第1及び第2の空間のうち少なくとも一方に存在するガスを撹拌可能な撹拌手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の排気ガスセンサの故障診断装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006326820A JP2008139192A (ja) | 2006-12-04 | 2006-12-04 | 排気ガスセンサの故障診断装置 |
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ID=39600814
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN109488431A (zh) * | 2018-12-06 | 2019-03-19 | 芜湖市努尔航空信息科技有限公司 | 一种航空发动机尾气收集分析装置 |
-
2006
- 2006-12-04 JP JP2006326820A patent/JP2008139192A/ja active Pending
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