JP2008138679A - 最新式ブースタシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】最新式ブースタシステムを提供する。
【解決手段】圧縮段(8)は、縦方向中心軸線(15)と同軸に配置された複数のステータベーン(40)及びロータブレード(14)を有し、各ステータベーンは、出口スワール角が中間半径位置において最大値を有するような出口スワール角分布を有し、また各ロータブレードは、出口スワール角分布プロファイルを有するステータ段ベーンから流れを受けるようになったブレード前縁を有する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、総括的にはガスタービンエンジンに関し、より具体的には、ガスタービンエンジン内のブースタ及び圧縮機のような圧縮モジュールに関する。
ターボファン航空機ガスタービンエンジンでは、空気は、運転時にファンモジュール及び圧縮モジュール内で加圧される。ファンモジュールを通って流れる空気は、飛行中の航空機を推進させるのに必要な推力の大部分を発生するために使用される。圧縮モジュールを通して送られる空気は、燃焼器内で燃料と混合されかつ点火されて高温燃焼ガスを発生し、これらの高温燃焼ガスはタービン段を通って流れ、タービン段は、高温燃焼ガスからエネルギーを抽出してファン及び圧縮機ロータに動力を供給する。
ターボファンエンジン内の典型的な圧縮モジュールは、複数段ブースタを含み、この複数段ブースタは、空気を中間圧力まで加圧して複数段軸流圧縮機に送り、この複数段軸流圧縮機は、空気をさらに順次加圧して、燃焼のための高圧空気を生成する。ブースタ及び圧縮機は両方とも、ロータ段及びステータ段を有する。一般的に、ブースタロータは、低圧タービンによって駆動され、また圧縮機ロータは、高圧タービンによって駆動される。
ブースタ及び圧縮機設計における基本的事項は、離陸から巡航及び着陸までの全飛行運転エンベロープにわたって十分な失速マージンを有する状態で空気を加圧する際の効率である。しかしながら、圧縮機効率及び失速マージンは、通常逆の関係にあり、効率を増大させることは一般的に、それに応じて失速マージンの減少を伴う。失速マージン及び効率の相反する要件は、大きな動力抽出を必要とすると同時に依然として高い圧縮機効率と共に高い失速マージンレベルを必要とする高性能ジェットエンジンにおいて特に求められる。従来の設計では、通常は効率を犠牲にして、動作性の向上と失速マージンの増大とを達成している。
ガスタービンエンジンにおける圧縮システムの動作性はこれまで一般的に、例えばブースタについて図1に示すような、X軸に沿った吸気補正流量とY軸上の圧力比とで示した動作マップで表される。図1には、幾つかの定速度線104〜108と共に、動作線102及び失速線101が示されている。設計速度線103と比較して、線104は、より低い速度線を表しており、また線105は、より高い速度線を表している。ブースタが、定速度線103によって表した設計速度のような定速度で動作線102から流れを絞られると、吸気補正流量は減少するが、圧力比は増大し、またブースタの動作は、失速線101により近づく方向に移動する。失速を回避するために、ガスタービンエンジン内のファン、ブースタ及び圧縮機は、図1に示す線101のような失速線に対して十分な失速マージンを有するように設計される。
ブースタ及び圧縮機翼形部の効率の最大化は、主として翼形部の正圧及び負圧側面上の速度分布を最適化することによって行われる。しかしながら、従来のブースタ及び圧縮機設計においては、効率は一般的に、適当な失速マージンに対する要件によって制限されている。効率のあらゆる更なる増大は、失速マージンの減少を招き、反対に失速マージンの更なる増大は、効率の低下を招く。
高い効率は一般的に、所定の段の翼形部の濡れ表面積を最小にしてそれに対応して翼形部抗力を減少させることによって得られる。高い効率は一般的に、ロータディスクの周辺部の周りにおける翼形部弦節比又は翼形部密集度を減少させることによって、又は翼長(スパン)長さ対翼弦長さの比率である翼形部アスペクト比を増大させることによって達成される。
所定のロータ速度において、この効率の増大は、失速マージンを減少させる。高レベルの失速マージンを達成するために、翼形部を最適な迎え角(incidence angle)以下に設計すると共に、最適レベルよりも高い弦節比を使用することができる。これは、軸流圧縮機効率を低下させる。
大きな失速マージンはまた、ロータ速度を増大させることによって得られるが、これは、その結果として翼形部マッハ数を増大させ、それによって翼形抗力を増大させることによって効率を低下させる。十分な失速マージンを得ることは、ブースタの場合に特に問題である。ブースタは一般的に、比較的低いホイール速度で運転されるが、同時に空気の通過速度は高い。ブースタの後方段を通って流れる空気は、縦方向中心軸線に向けて半径方向内向きに流れ方向の大きな変更を受けるので、ブースタは、その幾何学的形状が特有である。その結果として、ブースタが流れを絞られて、翼形部のハブ領域における大きな流入方向変動(incidence swing)により失速した時に、半径方向流入方向変動の不均衡が生じる。ブースタにおいては、ブースタ抽気弁が閉鎖されるような巡航及び高出力運転範囲にわたり、一般的にハブ領域において最初に失速が開始し、従ってハブ領域における流入方向変動が、動作性にとって特に有害である。ハブ領域における流入方向変動及びその結果生じる失速マージン低下は、エンジン内の高圧スプールによる補助電力に対する要求が増大した時のようなエンジン運転時には、さらに一層厳しいものとなる。従来の設計では、一般的に効率を犠牲にして、動作性要件を満たすようにしている。
米国特許第5,167,489号公報 米国特許第6,071,077号公報 米国再発行特許第RE38040号公報 米国特許第6,299,412号公報 米国特許第6,428,281号公報 米国特許第6,508,630号公報 米国特許第6,331,100号公報 米国特許第7,121,792号公報 米国特許第6,312,219号公報 米国特許第6,328,533号公報 Leroy H.Smith,Jr.及びHsuan Yehの論文「軸流ターボ機械における後退角及び上反角の効果」(Journal of Basic Engineering, Transactions of ASME,62-WA-102,1962)
従って、その効率を大きく犠牲にしないで、ガスタービンエンジンのブースタ及び圧縮機性能を向上させるようにブースタ及びその他の高通過流/ホイール速度圧縮機の失速マージンをさらに高めることが望まれる。
圧縮段は、縦方向中心軸線と同軸に配置された複数のステータベーン及びロータブレードを有し、各ステータベーンは、出口スワール角が中間半径位置において最大値を有するような出口スワール角分布を有し、また各ロータブレードは、出口スワール角分布プロファイルを有するステータ段ベーンから流れを受けるようになったブレード前縁を有する。
好ましくかつ例示的な実施形態により、本発明をその更なる目的及び利点と共に、添付図面に関連して行った以下の詳細な記述において一層具体的に説明する。
本発明は、様々な特定の実施形態に関して説明しているが、本発明が特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲の変更で実施することができることは、当業者には分かるであろう。
図2に示すのは、それぞれバイパス空気流2及びコア空気流3を送りかつ加圧するように構成されたガスタービンエンジンファン5及びブースタ7の一部分である。コアを通って流れる空気を加圧するブースタ7は、縦方向中心軸線15の周りで軸対称であり、縦方向中心軸線15の周りで円周方向に間隔を置いて配置された複数の入口案内ベーン12を有する入口案内ベーン(IGV)段11と、複数のステータベーン段17とを含む。ブースタ7はさらに、ロータハブ19から半径方向外向きに延びる対応するロータブレード50を有する複数ロータ段18或いはあらゆる従来の方式での個別ディスク、一体形ブリスク又は環状ドラムの形態の対応するロータを含む。
例えば、ロータ段18のような各ロータ段と協働するのは、対応するステータ段17である。ブースタ7内の各ステータ段17は、円周方向に間隔を置いて配置された複数のステータベーン40を含む。ステータベーン及びロータブレードの配置は、図4に示している。ロータブレード50及びステータベーン40は、軸方向の段においてコア空気流3を連続的に加圧するための対応する空気力学的輪郭又は外形を有する翼形部を形成する。作動中に、空気の圧力は、空気がステータ及びロータ翼形部を通過して減速しかつ拡散するにつれて増大する。
図5は、ステータベーン翼形部の例示的な半径方向セクションを二次元軸方向平面図で示している。図5に示すように、各ステータベーン40は、ほぼ凹面形の正圧側面44及び円周方向に対向するほぼ凸面形の負圧側面45を含む翼形部を形成している。これら2つの側面44、45は、上流の前縁42と軸方向に対向する下流の後縁43との間で翼弦方向に延びる。ブースタは、高「通過流速度/ホイール速度」型の設計であって、このブースタは、低圧タービンによって比較的低速度で駆動されるが、ブースタ内を流れる軸方向の空気流速度は、比較的高い。さらに、ブースタを通るハブ流路は、エンジン中心線に向って半径方向内向きに方向転換している。このことにより、ブースタが空気流に対する要求を変えながら様々な飛行状態で作動する時に、翼形部に対する半径方向流入角が、特にハブ領域において大きく変化することになる。ブースタにおける失速は一般的に、翼形部のハブ領域付近で始まる可能性があるので、これは望ましくない。従来の設計では、高い半径方向流入角変動の不均衡が存在した状態で動作性目標を達成するために、一般的に効率を犠牲にしている。効率を犠牲にせずに、補助電力抽出を含む失速マージンに対する要件を達成することができるようなブースタ設計を得ることが、望ましい。
これを達成する1つの方法は、作動時にブースタシステムのハブ領域内での流入角変動を減少させるように設計したステータベーン40及びロータブレード50を利用することによるものである。ロータブレードにおける流入角は、子午線方向(β1、図10参照)から測定した相対入口空気角度306と子午線方向(β1*、図10参照)から測定した前縁におけるキャンバ線(そり曲線)角度によって決まる入口金属角度305との間の差として定義される。「Δ流入角」(ΔINCIDENCE)は、失速線101における流入角と動作線102上での流入角との間の差である。ステータベーンの場合には、絶対基準枠における子午線方向から空気角度を測定することを除けば、流入角及び「Δ流入角」に対する同じ定義を使用する。例示的なステータベーン40は、特定の出口スワール角プロファイルを有する後縁43を使用することによって、ブースタハブ領域における流入流変動を減少させる。図6には、例示的なステータベーン40についての例示的な出口スワール角分布144を示している。図6は、出口スワール角対パーセント(%)スパンをプロットした図である。ブースタのロータブレード及びステータベーンのハブ領域における流入角変動は、根元46から先端48まで出口スワール角140の特定の分布を有する後縁43を採用することによって減少され、この場合、出口スワール角は、あらゆる二次流れの影響を省いて子午線方向から測定したステータ後縁を離れる空気角度(図5の2D軸方向平面図に示す)として定義される。従来設計のステータベーンは一般的に、図6の分布142のようなほぼ線形にかつ単調に増大するスワール角分布を生じる。図4に示すステータベーン40の例示的な設計では、ベーンは、その根元46から先端48まで、図6に示す例えば曲線144のような調整された出口スワール角分布プロファイルを有しており、出口スワール角140は、第1の半径位置146と先端48との間の中間半径位置148において最大値を有するようになる。
例示的なステータベーン40の好ましい実施形態では、後縁43における出口スワール角の最大値(約22°)は、根元から約70%スパン高さのスパン位置において生じ、出口スワール角の最低値(約7°)は、後縁43の根元46において生じ、また先端48は、その最低(ルート)値とその最高(ピーク)値との間の出口スワール角(約18°)を有する。ブースタのハブ領域付近の流入角変動は、従来のベーンと比べて大きく減少し、その結果、そのブースタの失速マージンが増大し、また効率が高められる。
異なるロータ/ステータ段における失速マージンは、図6の曲線144で示したのと同様な後縁出口スワール角分布を有するようにステータベーン翼形部を適切に設計することによって改善することができる。後縁出口スワール角140のピーク値の位置は、50%スパン又はそれよりも高く、好ましくは60%〜80%スパン範囲内になるように選択することができ、また最低値は、ステータベーン40の根元46付近で生じる。ブースタシステムの好ましい実施形態の様々なステータ段についての後縁出口スワール角分布は、無次元ベースで図7に示しており、この場合、先端48における出口スワール角は、スパンに沿った最大値と根元46における最小値との間の出口スワール角差の65%〜85%の範囲内であるレベルにまで減少されている。
上述した新規なステータベーン40の別の実施形態では、ステータベーン40の前縁42は、スイープ角((後退角)sweep angle)プロファイルを有するように設計される。空気力学的スイープ角は、流入空気の方向と軸方向及び円周方向又は接線方向の両方における翼形部表面の配向との関数である局所的スイープ角によって表された従来からのパラメータである。スイープ角は、米国特許第5,167,489号に詳しく記載されており、参考文献として本明細書に組み入れている。本明細書で使用する符号規約では、空気力学的スイープ角は、前方スイープ角については負の値(−)として、また後方スイープ角については正の値(+)として表している。前述したような調整した出口スワール角分布を有するステータベーンの別の実施形態では、ステータベーン前縁42は、ブースタのハブ領域における翼形部の根元46付近に前方スイープ角を有するように設計される。このブースタのハブ領域において翼形部の根元付近に前方スイープ角を有するステータベーン前縁42と特定の後縁出口スワール角分布を有する後縁43との組合せによりさらに、ブースタの空気力学的性能及び動作性が高められる。
図8は、例示的な複数段ブースタの様々なステータ段におけるスパンに沿った例示的なステータベーン前縁スイープ角分布を示している。この複数段ブースタの好ましい実施形態では、スイープ角は、根元46と図4の第1のスパン位置147との間では負であり、また第1のスパン位置147から先端48までは正である。ステータベーン40においてスイープ角が負から正に変化する位置における根元46からのスパン高さ(図8において「H」で示す)は、特定のステータベーン段の軸方向位置の関数である。空気がブースタ内を入口から出口まで軸方向に移動する時、空気は、下流に設置された圧縮機内に流入する前に、ブースタの縦方向中心軸線15に向けて鋭い方向転換を行わなくてはならない。ブースタシステム7のこの例示的な実施形態では、図8に示すようなステータベーン前縁スイープ角分布は、スイープ角が負から正に変化する位置における根元46からのスパン高さが、ブースタシステム内のさらに後方に設置されたステータ段においてより高くなるようになる。ブースタの後方端部におけるステータ段の1つ又はそれ以上は、スパン全体に沿って前方スイープ角のみを有する前縁を備えたステータベーンを有することができる。例えば、図8において、「S5」で示したステータ段が、そのような段である。
このブースタシステム7の好ましい実施形態では、前縁スイープ角が負から正に変化する位置における根元46からのスパン位置は、前方段(図8において「S2」で示す)の場合には約25%、中間段(図8において「S3」で示す)の場合には50%、また後方段(図8において「S4」で示す)の場合には70%であるが、最後方段(図8において「S5」で示す)は、前縁後方スイープ角を全く有してない。このブースタシステム7の好ましい実施形態では、全てのステータ段は、ステータベーン40の根元46における前縁前方スイープ角が、ブースタシステム内のさらに後方に設置されたステータ段においてより大きくなるような、またステータベーン40が、根元46におけるよりも小さい前縁前方スイープ角又はより大きな後方スイープ角を有するようなステータベーン40を有する。このブースタシステム7の好ましい実施形態では、根元46におけるステータベーン前縁スイープ角は、最前方段の場合には約−3°、後方に次の段の場合には約−5°、後方段の場合には約−15°、また最後方段の場合には約−20°である。ステータベーン40の前縁42の先端48におけるスイープ角は、最前方段の場合には約13°、後方に次の段の場合には約7°、後方段の場合には約5°、また最後方段の場合には約−2°である。
図2に示すように、ガスタービンエンジン内のブースタシステム7は、複数ロータ段18を含み、各ロータ段は、複数ロータブレードを有する。図3には、様々なロータ段におけるこれらのロータブレードを示しており、例えばロータ段2の場合にはブレード10、ロータ段3の場合にはブレード30、ロータ段4の場合にはブレード50、またロータ段5の場合にはブレード70として示している。図3に示すように、第1のブースタロータ段(「R2」として符号を付している)は、入口案内ベーン段(「IGV」として符号を付している)の直後に設置されている。その他のロータ段R3〜R5の各々は、その軸方向前方及び後方のステータ段と組合され、各ステータ段は、複数ステータベーンを有する。図3には、様々なステータ段におけるこれらのステータベーンを示しており、例えばステータ段2の場合にはステータベーン20、ステータ段3の場合にはステータベーン40、ステータ段4の場合にはステータベーン60、またステータ段5の場合にはステータベーン80として示している。ステータ段から流出した空気は、下流の隣接するロータ段に流入し、そのロータ段のロータブレードによってさらに加圧される。前に詳しく述べたように、ステータ段におけるステータベーンは、ブースタの動作性及び効率を高めるような特有の後縁及び前縁特徴形状を有するように設計されている。動作性及び効率はまた、ブースタのロータブレードの機械的及び空気力学的設計によっても影響を受ける。圧縮段及びブースタシステムの失速マージン及び効率は、本明細書に開示しかつ記述したようなロータブレードの特有の設計特徴形状を採用することによって高めることができる。
翼形部のハブにおける流入方向変動を減少させることにより、より急勾配の速度線が生じる。図1には、そのような急勾配の速度線を示している(曲線106、107及び108)。
ブレードスイープ角は、ノイズ低減及び性能向上のような様々な理由のために、ファン及び圧縮機ブレード設計において使用されてきた。新規なロータブレード50の本発明の1つの実施形態では、ブレード前縁52は、スパン高さに対する前縁スイープ角の変化率が前縁スパンの大部分に沿って実質的に一定の値を有するような新規なスイープ角プロファイルを有する。別の実施形態では、前縁スイープ角は、ブレード内側スパン領域155におけるブレード根元54付近で実質的に一定であるスパン高さに対する第1の変化率を有し、かつブレード外側スパン領域156におけるブレード先端55までのスパンに沿って実質的に一定であるスパン高さに対する第2の変化率を有する。このブレードの好ましい実施形態では、ブレード内側スパン領域155は、ブレード根元46から測定した約10%スパン高さのスパンの範囲を含む。本発明の別の実施形態では、スパン高さに対する前縁スイープ角の変化率は、ブレード前縁52全体に沿って実質的に一定である。
図9は、本発明によって考えられているスパン高さに沿った前縁スイープ角の例示的な変化を示している。図9に示すように、ブレード前縁52は、ブレードの根元付近で前方スイープ角(負のスイープ角)を有し、また根元領域から離れた位置で後方スイープ角(正のスイープ角)を有する。スパン高さに対する前縁スイープ角の変化率と前方スイープ角から後方スイープ角への移行が起こるブレード前縁52上でのブレードの第1の高さ位置とは、図4の例えばステータベーン40のようなステータベーンから流出する流れが、図4の例えばブレード50のようなロータブレードに高い効率で流入し、かつロータの動作性及び効率を増大させる状態でロータのハブ領域に向かって導かれるように選択される。前述したように、ブースタにおける失速は一般的に、ブースタ抽気弁が閉鎖された状態で作動するより高出力の範囲にわたってハブ領域付近で始まる。本明細書に記載したブレード前縁52の固有の特徴形状を有することにより、ブースタの失速マージンが増大する。このブースタの好ましい実施形態では、全てのロータ段は、図9に示すのと実質的に同じスパン高さに対する前縁スイープ角の特有の線形変化を有するロータブレードを備えている。
図10は、例示的なロータブレードの翼形部の半径方向断面図を示している。本発明の別の態様では、ロータブレード翼形部断面300の最大厚さ302(Tmaxとして示す、図10を参照。)の位置は、それらの位置が、ブレード根元54からより高いスパン位置において前縁52により近接して位置し、かつTmax位置の前縁からの相対距離が、ブレード根元54からブレード先端55までのスパン高さに対して実質的に線形状態で変化するように選択される。これに関連して、「相対距離」というのは、特定のスパン高さにおける翼形部断面300の軸方向翼弦長さ「C」301(図10参照)に対する軸方向線に沿ったブレード前縁52からのTmax位置の軸方向距離「d」303(図10参照)の比として定義される。
ブレード根元54から一層高いスパン高さ位置においてブレード前縁52付近にTmax302を配置することにより、ブレード翼形部の半径方向外側セクションにおいてブレード前縁52のより大きなウエッジ角が生じる。より大きいウエッジ角により、機械的に堅牢であることに加えて、ブースタの迎え角範囲及び動作性を向上させる前縁形状が外側翼形セクション内に形成される。外側スパン領域においてTmaxをブレード前縁に次第に接近させて配置するという特徴形状、及び例えば図11に示すように後方段よりも前方段においてTmaxが前縁に対して相対的により近接して配置されるように複数ブースタロータ段を設計するという特徴は、圧縮システム翼形部の設計における従来の慣行とは逆であること注目されたい。従来の設計では、様々な翼形部セクションのTmax位置は、ブレード振動数のような機械的な設計検討事項に基づいて選択される。
図11には、ブースタシステムの様々なロータ段におけるこのTmax位置の特性の好ましい実施形態を示している。このロータブレードの好ましい実施形態では、相対距離は、根元において約0.4であり、また先端において約0.2である。スパン高さに対する相対距離の変化は、図11に示すように実質的に線形である。このブースタシステムの好ましい実施形態では、スパン高さに対する相対距離の特有の変化は、R2、R3、R4及びR5ロータ段について図11に示すように、複数ロータ段内のロータブレード翼形部において実質的に同じである。
ブースタシステムの動作性を向上させる方法の1つは、空気がブースタを通る大きな曲率を有する軸方向通路を通過する時に、より多くの流れをハブ領域に導くことである。流れの方向に影響を与えるために使用することのできるブレード設計のパラメータの1つは、特定の位置における上反角(dihedral angle)である。上反角は、例えばブレード表面がハブに対して垂直でない時に存在する。本明細書で使用する場合、「二面角」又は「上反角」の定義は、Leroy H.Smith,Jr.及びHsuan Yehの論文「軸流ターボ機械における後退角及び上反角の効果」(Journal of Basic Engineering, Transactions of ASME,62-WA-102,1962)に概説されているものと同じである。
新規なロータブレードの本発明の別の態様では、ブースタシステムの性能及び動作性は、新規なブレード前縁52のスパン高さに対するスイープ角変化率と前述した最大翼形部厚さ302の位置303の変化とに特に整合した新規な上反角プロファイルを後縁53において採用することのよって高められる。図12は、スパン高さに対するロータブレード後縁53における上反角の例示的な分布を示している。ブレード上の或る箇所における負の上反角は、その箇所におけるブレードの正圧側面に対する法線が、ブースタシステムの縦方向中心軸線15に向かっていることを意味している。図12に示すように、後縁上反角は、ブースタハブに隣接するブレード根元54において最も低く、またブレード根元54と後縁53上の第2の高さ位置「H2」152(図4参照)との間で負である。上反角は、スパン高さが増大するにつれて負の値が小さくなり、中間スパン高さ位置において正になり、その後最大値に達し、その後先端に向って減少する。
このロータブレードの好ましい実施形態では、上反角は、ブレード根元54においては約−15°〜−20°であり、ブレード根元54から約20%スパン高さまでは負の状態のままである。この複数ロータ段を備えたブースタシステムの好ましい実施形態では、複数ロータ段におけるブレードの後縁53は、ハブ領域付近つまりブレード根元から約20%〜30%スパン高さまでは負の上反角を有する。
本明細書では、本発明の好ましくかつ例示的な実施形態であると考えられるものについて説明してきたが、当業者には本明細書の教示から本発明のその他の変更が明らかになる筈であり、従って、全てのそのような変更は、本発明の技術思想及び技術的範囲の範囲内に含まれるものとして、特許請求の範囲で保護されることを切望する。
動作線、失速線及び速度線を示す、ブースタの動作マップの実施例を示す図。 ガスタービンエンジンファン及びブースタの一部分の軸方向断面図。 本発明の例示的な実施形態による、対応するステータ段の軸方向間に配置されたロータ段を含むブースタの軸方向断面図。 ステータベーン及び対応するロータブレードを示す、ブースタロータ及びステータ段の一部分の軸方向図。 ブースタにおけるステータベーンの1つの翼形部の半径方向断面図。 本発明の例示的な実施形態によるステータベーンの例示的な出口スワール角分布と従来の出口スワール角分布との比較を示す図。 例示的なブースタシステムの様々な段についての正規化形態での例示的な出口スワール角分布の組をプロットした図。 ブースタの複数ステータ段についてのスパン高さに対するステータ前縁スイープ角変化の例示的な実施形態を示す図。 ブースタの複数ステータ段についてのスパン高さに対するロータ前縁スイープ角変化の例示的な実施形態を示す図。 最大翼形部厚さの位置を示す、ブースタにおけるロータブレードの1つの翼形部の半径方向断面図。 様々なスパン高さにおける翼形部セクションの最大翼形部厚さの位置の例示的な分布を示す図。 ブースタの複数ロータ段についてのスパン高さに対するロータ後縁上反角変化の例示的な実施形態を示す図。
符号の説明
5 ガスタービンエンジン
8 圧縮段
11 入口案内ベーン段
14 複数のロータブレード
15 縦方向中心軸線
17 ステータ段
18 ロータ段
18 複数のロータ段
19 ロータハブ
40 ステータベーン
42 ベーン前縁
43 ベーン後縁
44 ベーン正圧側面
45 ベーン負圧側面
46 根元
48 先端
50 ロータブレード翼形部
52 ブレード前縁
53 ブレード後縁
54 ブレード根元
55 ブレード先端
56 ブレード正圧側面
57 ブレード負圧側面
144 出口スワール分布プロファイル
146 第1の半径位置
147 第1のスパン位置
148 中間半径位置
151 ブレード第1の高さ位置
155 ブレード内側スパン領域
156 ブレード外側スパン領域
252 上反角分布
300 横方向ブレード翼形部セクション
302 最大ブレード翼形部断面厚さ
303 相対距離

Claims (10)

  1. ガスタービンエンジン用の圧縮段(8)であって、
    縦方向中心軸線(15)を有するロータハブ(19)の周りで円周方向に間隔を置いて配置された複数のロータブレード(14)を有するロータ段(18)と、
    前記縦方向中心軸線(15)と同軸に円周方向に間隔を置いて配置された複数のステータベーン(40)を有するステータ段(17)と、を含み、
    各ステータベーン(40)が、前縁及び後縁(42、43)間でかつ長手方向に根元(46)及び先端(48)間で延びる正圧及び負圧側面(44、45)を有し、
    前記後縁(43)が、出口スワール角が第1の半径位置(146)と前記先端(48)との間の中間半径位置(148)において最大値を有するような前記根元(46)から前記先端(48)までの出口スワール角分布プロファイル(144)を有し、
    各ロータブレード(50)が、前記出口スワール角分布プロファイル(144)を有する前記ステータ段(17)から流れを受けるようになったブレード前縁(52)形状を有する、
    圧縮段(8)。
  2. 前記出口スワール角が、前記中間半径位置(148)と前記先端(48)との間で減少する、請求項1記載の圧縮段(8)。
  3. 前記出口スワール角が、前記中間半径位置(148)と前記先端(48)との間で実質的に一定のままである、請求項1記載の圧縮段(8)。
  4. 前記第1の半径位置(146)が、前記根元(46)の位置にある、請求項1記載の圧縮段(8)。
  5. 前記先端(48)における出口スワール角が、前記根元(46)における出口スワール角よりも大きい、請求項1記載の圧縮段(8)。
  6. 前記中間半径位置(148)が、前記根元(46)から50%よりも大きいスパン高さの位置にある、請求項1記載の圧縮段(8)。
  7. ガスタービンエンジン用のブースタ(7)であって、
    縦方向中心軸線(15)の周りで円周方向に間隔を置いて配置された複数の入口案内ベーン(12)を有する入口案内ベーン段(11)と、
    前記縦方向中心軸線(15)の周りで円周方向に間隔を置いて各々が配置された複数のステータベーン(40)を有する複数のステータ段(17)と、
    各々が前記ステータ段(17)の上流方向にかつ該ステータ段(17)と同軸に設置されまた前記縦方向中心軸線(15)の周りに同軸に設置されたロータハブ(19)の周りで円周方向に間隔を置いて配置された複数のロータブレード(14)を有する複数のロータ段(18)と、を含み、
    各ステータベーン(40)が、前縁及び後縁(42、43)間でかつ長手方向に根元(46)及び先端(48)間で延びる正圧及び負圧側面(44、45)を有し、
    少なくとも1つのステータ段(17)内の各ベーンの前記前縁(42)が、前記根元(46)から第1のスパン位置(147)までの前方スイープ角を有しまた少なくとも1つのステータ段(17)が、前記第1のスパン位置(147)と前記先端(48)と間に前縁後方スイープ角を有し、
    前記前縁後方スイープ角を有する各ステータベーン(40)の先端(48)における該前縁後方スイープ角が、該各ステータベーンの軸方向前方に設置されたあらゆるベーンの先端(48)における前縁後方スイープ角よりも小さく、
    各ロータブレード(50)が、該各ロータブレードの軸方向前方に設置された前記ステータ段(17)から流れを受けるようになったブレード前縁(52)形状を有する、
    ブースタ(7)。
  8. 前記少なくとも1つのステータ段(17)が、前記根元(46)における前縁前方スイープ角と前記先端(48)における前縁後方スイープ角とを備えたステータベーンを有する、請求項7記載のブースタ(7)。
  9. 或るベーンの前記根元(46)における前縁前方スイープ角が、該ベーンの軸方向前方に設置された全てのベーンの該前縁前方スイープ角よりも大きい、請求項7記載のブースタ(7)。
  10. 少なくとも1つのステータ段(17)内の前記ベーンの前縁後方スイープ角が、第1の半径と前記先端(48)との間で増大する、請求項7記載のブースタ(7)。
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