JP2008133694A - せん断降伏型h形断面部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】主にH形断面の部材として、材端部に加わる逆対称曲げモーメントに対してフランジの曲げ降伏に先行してウェブがせん断降伏するようにし、せん断降伏荷重を確保し且つせん断降伏後も耐力の安定的な維持を図ったせん断降伏先行型梁・柱部材を意図する。
【解決手段】本発明のウェブのせん断降伏先行型部材は、ウェブの全領域乃至ウェブの一部領域にせん断力により早期に降伏し且つ降伏以降せん断降伏耐力を安定的に維持する部位を設けるものであり、(a)図は両側材端近傍にせん断降伏型パネルダンパー1を設けた全景を示し、(b)図はせん断補強部位1の構造詳細で周辺部枠を構成する額縁状帯板2とそれに囲まれた領域に帯板と同厚の平板状の任意充填材4を配しそれらを挟んで表裏両面から金属平板2を添接した詳細で、せん断降伏後の塑性変形能力を高めた鋼構造梁乃至柱部材としている。
【選択図】図3

Description

本発明は制振乃至耐震構造骨組みを構成する主にH形断面の部材に関するもので、主に逆対称曲げモーメントを受けてウェブ平板に生じるせん断力に対し早期のせん断座屈を回避して降伏荷重を確保し、降伏後の耐力低下を防いで鋼部材の塑性変形能力を高めることを意図するものである。
材長の短い間柱や境界梁に対して、ウェブに加わるせん断力によりその部位のせん断降伏が先行して生じるようにし且つ降伏後の塑性変形能力を高めた構造部材とする特許文献1の例があるが、これに関連するものでは塑性化領域のウェブ平板に降伏点応力度の極めて低い極軟鋼が使用されている場合が多い。
材端部から逆対称曲げモーメントを受けるH形断面梁に対し、フランジの降伏が先行する場合に塑性変形能力を高めるよう意図されたものとして特許文献2,3があるが、これは骨組みの接合部位からフランジ塑性化領域を少し離すようにして梁フランジの降伏後の塑性変形性能を安定化しようとするものである。
特許文献4〜6は、H形断面梁の材端と柱との接合部位を工夫して地震に対処しようとするもので、様々な接合金物や接合方法により振動エネルギーを吸収して制振機能を持たせるものであるが、前提として接合部強度は梁部材の強度を下回ることが必要になる。
特開平10−82201 公開特許公報 特開平10−220061 公開特許公報 特開平10−266340 公開特許公報 特開2002−173977 公開特許公報 特開2003−64901 公開特許公報 特開2004−316254 公開特許公報
材端部から逆対称曲げモーメントが加わるH形断面部材の塑性変形能力を高めるため、せん断力が加わるウェブの全領域乃至一部領域が先行して塑性化するようにし、前記部位に於いて予定するせん断降伏荷重を確保し且つ降伏以降部材耐力が下ることなく安定して変形が推移するようにして塑性変形能力を高めることである。
本発明のウェブのせん断降伏先行型鋼部材は、塑性化を予定するウェブの全領域乃至一部領域でフランジに接し平行する部位に額縁状の枠を残してウェブに開口を設け、その内部略全域に帯板と同厚の紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体を配して更にその表裏両面に必要せん断強度となる板厚の金属平板を添接して一体とするもので、ウェブに加わるせん断力によりその部位のせん断降伏が先行して生じるようにしてせん断降伏後の塑性変形能力を高める補強構造とする。
本発明のウェブのせん断降伏先行型鋼部材は、塑性化を予定する部位の降伏せん断荷重並びに降伏後のせん断耐力が部材長さや部材せいに関わらず予め設定できるため、前記部位を除くウェブはせん断降伏耐力を前記部位のそれを上回るようにする範囲で幅厚比の大きなウェブ板を選択でき、構造部材の設計においてウェブ板厚を薄くするなど経済設計が可能となる。
本発明の補強金属平板を構成する中間層は、表裏面に添接される薄い金属平板を面的に座屈拘束するためのものであり、材料としては強度,剛性の極めて低い一般的に多用されている紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体で十分に機能し、製品の製造は容易であり且つその製作コストは低くその利用分野は広い。
本発明のウェブのせん断降伏先行型鋼部材は、図1に示す比較的短い部材ではウェブの略全領域の周辺部に帯板3を額縁状に配し且つその囲まれた内部に帯板と同厚の紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体4を挿入し、更に前記部位を挟んで表裏両面より薄い金属平板2を添接して一体とし、この複層金属平板1をウェブとしてフランジ5を設けてH形断面部材を構成するもので、部材両端部から受ける逆対称曲げモーメントに対して前記ウェブがせん断降伏し更に降伏以降の耐力維持を図ったものである。
本発明のウェブのせん断降伏先行型鋼部材の他の一つは、図3に示すように部材を構成するウェブにせん断補強部1を一箇所乃至複数箇所を設けてその部位のせん断降伏が先行し且つ降伏以降耐力を落とすことなく変形が安定して推移するようにしたもので、その部位1は周辺部に帯板3を額縁状に配してその囲まれた領域の全面に帯板と同厚の紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体4を挿入し更にそれらを挟んで表裏両面より薄い金属平板2を添接して一体とするものであり、前記額縁状の枠組み3はそれと連続するウェブ平板6の一部であってもよい。
図1で示したH形断面部材はウェブの略全域が複層金属平板とした場合で、(a)図は3,600x900x19のウェブの構造詳細でありフランジと平行に幅90mmの額縁状の枠組みと内部四等分点位置に同じ幅の縦方向補強材を置き、更にその囲まれた領域に平板状充填材を挿み更に表裏両面に板厚1.6mmの薄い鋼板を添接しており、(b)図は前記複層金属平板をウェブとする逆対称曲げモーメントが作用するH形断面部材全体を示したものである。以下に記述する数字に単位を付してないものはmmを表している。
本実施例並びに以下の例題は、材料に関しウェブはSS400の軟鋼で降伏点応力度σy=27kN/cm2,フランジはSM490の降伏点応力度σy=33kN/cm2とし、両者のヤング係数はE=20500kN/cm2としている。又、せん断降伏を意図する部位の表裏両面に添接する薄い金属平板はSS400の軟鋼とし、内部充填材のヤング係数はE=5kN/cm2とした。図の縦軸のせん断耐力Qは逆対称曲げモーメントMと部材長さLとでQ=2M/Lの関係にある。
図2は、H形断面部材の材端から逆対称曲げモーメントを受ける場合の解析結果で、ウェブがせん断降伏する時点で部材両端の最大曲げモーメントとなる部位で降伏しないことが必要であるが、点線で示すウェブの純せん断場での挙動と比べフランジのない○印の例は材端部が曲げモーメントにより影響を受け降伏せん断荷重を大幅に下回るが、●印で示したフランジがある場合の結果ではフランジ断面が100x25でも未だ弾性であるためせん断降伏荷重が確保され、更にフランジ断面を300x25としてもそれによるせん断降伏荷重への影響はないことがわかる。
図3は、逆対称曲げモーメントを受けるH形断面部材の両材端近傍にせん断降伏後の塑性変形能力を高めたパネルダンパー1を設けた全景を(a)図に、パネルダンパーの詳細を(b)図に示したが、周辺部枠を構成する額縁状帯板3,それに囲まれた部位に前記板と同厚の紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体4を配し更にそれら表裏面に薄い金属平板2を添接したものであり、前記周辺枠はH形断面部材のウェブとは別であっても連続するウェブの一部であってもよい。
図4は、せん断降伏後の塑性変形能力を高めたパネルダンパーがせん断力を受けた場合の力学特性を示したもので、大きさ720x720の正方形穴で表裏面の1.6mm厚さの鋼板に対して内部を構成する充填材のヤング係数を変えて力学性状を調べ、適切な組み合わせとすることでせん断降伏荷重の確保と降伏以降の荷重の安定的な維持が出来ることを確認している。なお、周辺枠の幅は降伏直後の耐力維持に重要で、フランジの有無と関係なくウェブ幅の略10%程度は必要と考えられる。
せん断降伏を意図するパネルダンパー内に充填する材料としては両面の薄い金属板の変形を互いに拘束しあうもので強度,剛性は極めて小さいものでよく、弾性ヤング係数として各種発泡体で0.3〜5kN/cm2,ペーパーコアで1〜10kN/cm2,金属ハニカムコアで30kN/cm2乃至それ以上であるが、あまり大きくなり過ぎると耐力の急な上昇と引き換えに早期に耐力低下が起こる。
図5は、ウェブのせん断降伏型パネルダンパー1を部材両端に設けたH形断面梁であるが、その部位のせん断降伏が先行するよう設計されているため、梁中間領域は前記せん断降伏荷重を上回るせん断耐力となるように(a)図の9mm厚ウェブ6の例と(b)図の16mm厚ウェブ6に部材せいの1/2の開口部を連続して設けている例である。この場合注意すべきは材端のパネルダンパーのせん断降伏耐力とその後の上昇分を見込んでフランジ断面5が弾性であるように設計しておく必要がある。
図6は前記実施例の解析結果であるが、部材長さL=7,200mmのH−900x300x16x32で、せん断降伏部位は720x720の正方形穴にE=5kN/cm2の充填材を挿入し、その表裏両面に1.6mm平板を添接してこの部位のせん断降伏が先行するようにしている。(a)図の9mm厚ウェブのせん断耐力を●印で(b)図の16mm厚ウェブで開口部を設けた場合を○印で示しているが、点線で示す部材中間部のせん断耐力に対しパネルダンパーのせん断耐力を低くしたため、実線で示した曲げせん断挙動は前記部位の力学挙動に支配されるため両者とも略同じになっている。
図7は、柱型H形断面部材H−900x300x19x25で材長L=2,700mmの略3分割の中間位置にせん断力に対するパネルダンパー1を設けた場合で、ウェブ2に900x720の矩形穴を開けヤング係数E=5kN/cm2の充填材4を挿入して表裏両面に1.6mmの金属平板2を添接している。なお、せん断変形角γは部材中央のせん断降伏部位の90cm長さに対するものである。
図8は、前記柱部材の上下両端部から逆対称曲げモーメントが作用する場合のパネルダンパー部位の力学的性状を解析的に示した図であるが、これに柱軸力が作用している影響についてはフランジ断面積Af二枚と降伏点応力度σyの積との比で15〜30%の解析結果を●印で示したが、軸力のない場合の結果○印に対し降伏以降の耐力の上昇傾向が下がるものの両側の柱フランジに軸力が逃げてウェブのせん断降伏荷重は確保出来、その後の耐力も維持されてせん断降伏型パネルダンパーの機能を発揮することが出来る。
図9は、せん断補強ウェブが2,700x900で構成されるH形断面部材を並列させ一体化させた壁板で、ウェブの略全域は周辺枠3は厚さ25mm,幅90mmであり、内部充填材4は弾性ヤング係数をE=5kN/cm2として表裏両面に1.6mm金属平板2を添接したものである。(a)図はH形断面柱の構成を示したもので(b)図は二本を並列とし接するフランジ部位でボルトにより両者を接合した壁タイプの例であるが、曲げせん断荷重により記号Aで指示した四隅でウェブのせん断降伏時点で未だ弾性であることを条件にフランジを設計する必要がある。
図10は、圧縮軸力の影響を見るべくフランジの断面が200x30の場合で軸力P=0の結果を上側○印で、同一フランジ断面でフランジ降伏軸力の30%のP=1,200kNを下側●印で示し、更にフランジ断面を300x30として前記軸力で降伏軸力の20%とする解析結果を上側●印で示しているが、材端部曲げモーメント及び柱軸力が両側のフランジにより負担されれば、ウェブのせん断降伏荷重を確保し且つその後の大変形領域に於いても耐力を落とすことなく安定した力学挙動となる。
図11は、H形断面部材にパネルダンパーを組み込む製作方法を示したものであるが、H形断面部材のウェブ6で平板のフランジに接続する部位に額縁状の枠3を残し矩形穴を設け、その内部略全域にウェブと同厚の各種充填材4を配して中間層を構成し、周辺枠3を含んでその表裏両面に接着剤を塗布し金属平板2を添接する際に表裏面の金属平板1をボルト等で止めて圧着し、接着剤が固まるまでの保護とその後の接着層の強度を付与するように考えた補強H形断面部材の製造方法を示している。
本発明のせん断補強型H形断面部材は、前記部材を構成するウェブ平板の略全領域乃至一部領域にせん断力に対し力学的に安定した複層金属平板とするもので、それを構成する中間層に充填する材料は一般的に多用されているものでよく、又表裏金属平板も必要とするせん断強度に応じて板厚,材質を適宜選択できるなど最適設計が可能となり、又本発明のH形断面部材は製作も容易であり更に建物工事等に於ける取り扱いも簡便であることから産業上の利用可能性は大きい。
本発明のせん断降伏型ウェブとH形断面部材の斜視図である。(実施例1) 逆対称曲げモーメントを受けるH形断面部材の解析結果の説明図である。 本発明のせん断降伏先行部位が部材両端にある全景図である。(実施例2) 本せん断型パネルダンパーの力学性能に関する解析結果の説明図である。 本発明のせん断降伏先行部位付きH形断面梁の説明図である。(実施例3) せん断型パネルダンパー付きH形断面梁に関する解析結果の説明図である。 本せん断降伏先行部位が中央部にある柱部材の説明図である。(実施例4) せん断補強部位をウェブに持つH形断面柱部材の解析結果の説明図である。 本H形断面部材を並列配置して壁板を構成する説明図である。(実施例5) 本H形断面部材を並列配置し一体とする壁板の解析結果の説明図である。 本せん断補強部位を組み込む部材製作方法の説明図である。(実施例6)
符号の説明
1 せん断型パネルダンパー
2 表裏両面の金属薄板平板
3 ウェブ平板内の周辺部枠組み
4 周辺部枠内略全域の充填材等
5 H形断面部材のフランジ
6 H形断面部材のウェブ

Claims (3)

  1. 部材両端部から略逆対称曲げモーメントを受ける主にH形断面の部材に対し、ウェブに加わるせん断力によりせん断降伏が先行して生じるように設定し、部材略全長に亘りウェブの周囲四辺に帯板が幅を与える面で構成する額縁状の枠組みを設け更に必要に応じて内部補強材を配し、前記部材に囲まれた略全域に帯板と同厚の紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体を充填して中間層を構成し、その表裏両面に必要せん断強度となる板厚の金属平板を添接して複層としてせん断降伏後の塑性変形能力を高めた鋼部材の補強構造。
  2. 部材両端部から略逆対称曲げモーメントを受ける主にH形断面の部材に対し、ウェブに加わるせん断力によりせん断降伏が先行して生じる部位を鋼部材の一箇所乃至二箇所に設け、その部位にフランジと平行して額縁状の枠を残してウェブに矩形穴を開け且つその内部略全域に枠と同厚の紙質体,木質体,ゴム体,各種発泡体を配し、更にその表裏両面に必要せん断強度となる板厚の金属平板を添接して一体となし、せん断降伏後の塑性変形能力を高めた鋼部材の補強構造。
  3. 部材断面を構成するウェブの両端に位置するフランジはウェブ面を挟み両側に対称に突出する他,片側に偏り乃至は片側にのみ突出するものであってよく、略逆対称曲げモーメントにより部材に生じる最大曲げモーメントに対し或いは軸力を受ける場合に於いては軸力と曲げモーメントに対して、前記フランジ断面がウェブのせん断降伏時点で未だ弾性である請求項1乃至請求項2の何れかに記載の鋼部材の補強構造。
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