一般に、電磁波を遮蔽する電磁波シールド構造体は、構造体の表面に導電性材料が設けられた構成になっている。
例えば、図23に示すように、電磁波シールドルームの出入口に設けられた電磁波シールド扉200には、構造体としての木製の箱体202の表面にアルミニウム製の導電性材料204が貼り付けられている。
電磁波シールドルームの内部206で発生した電磁波Qの大部分は、電磁波シールドルームの内部206に面する導電性材料204Aに当たって反射する。この反射によって電磁波シールド扉200は電磁波Qを遮蔽することができる。
しかし、電磁波シールド扉200の枠体208と電磁波シールド扉200の間には、開閉のために隙間210が形成されており、この隙間210を通って電磁波Qが電磁波シールドルームの外部212へ漏れる。
また、電磁波シールド扉200の導電性材料204Aに当って反射しなかった電磁波Qは、導電性材料204Aを伝搬して電磁波シールドルームの外部212に面する導電性材料204Bに達するか、又は導電性材料204Aを透過する。
導電性材料204Bへ達した電磁波Qは、電磁波シールドルームの外部212へ放射される。
また、導電性材料204Aを透過した電磁波Qは、導電性材料204Bを透過した後に電磁波シールドルームの外部212へ放射される。
そして、これらの電磁波Qの漏れや放射が、電磁波シールド扉200の電磁波に対する遮蔽性を低減させてしまう。
図24の横断面図に示すように、特許文献1の電磁波シールド扉214では、電磁波シールド扉214の枠体216に2つの扉本体218、220がヒンジを介して開閉自在に取り付けられている(扉本体220側の枠体216は不図示)。2つの扉本体218、220は、矢印222、224の方向に開く観音開き扉である。
枠体216及び扉本体218、220は、周囲がステンレス等の導電性を有する金属材料226、227、229でそれぞれ覆われており、内部には断熱遮音材228、231、233がそれぞれ収納されている。
枠体216内側の周囲には電磁波シールド用ガスケット230と遮音シールド用ガスケット232が取り付けられている。また、扉本体220の召し合せ部材234にも、電磁波シールド用ガスケット230と遮音シールド用ガスケット232が設けられている。電磁波シールド用ガスケット230は、長方形の基材236に中空の接触材238を接着し、これら両部材を金属製のメッシュ材240で覆ったものである。
これらの構成により、扉本体218、220が閉じられると、枠体216の電磁波シールド用ガスケット230と扉本体218、及び扉本体220の電磁波シールド用ガスケット230と扉本体218とは隙間なく密着して、電気的に接続される。
よって、枠体216と扉本体218の間、及び扉本体220と扉本体218の間に形成された隙間を電磁波シールド用ガスケット230で塞ぐことによって、この隙間から漏れる電磁波を阻止する。
また、電磁波シールド扉214の正面の空間242側から電磁波が照射された場合、この電磁波は扉本体218に設けられた金属材料227を伝搬して電磁波シールド扉214の背面の空間244側に回り込もうとする。しかし、この電磁波は電磁波シールド用ガスケット230を介して枠体216の表面に設けられた金属材料226の方に伝搬して行く。よって、電磁波シールド扉214の背面の空間244に面する金属材料227へ達して空間244へ放射されることはない。
しかし、特許文献1の電磁波シールド扉214は、電磁波シールド用ガスケット230を必要とするために高コストであり、また、定期的に電磁波シールド用ガスケット230の交換等のメンテナンスが必要なので使い勝手が悪い。
また、枠体216の電磁波シールド用ガスケット230と扉本体218、及び扉本体220の電磁波シールド用ガスケット230と扉本体218を密着させるために、ある程度の力で押し付けるように扉本体218を閉じなければならず、扉本体218に設けられるハンドルもこの押し付けた状態でしっかりとロックできるものを用いなければならない。すなわち、一般の扉に使用されているハンドルを用いることができない。
図25に示すように、特許文献2の電磁波シールド構造体246では、矩形平板状の一対の芯材248、250が隙間252を形成するように並べて配置されている。各芯材248、250の片側の表面には、アルミニウム等の導電性材料254、256が貼り付けられている。
導電性材料254、256の隙間252側の端部は屈曲されており、この屈曲された端部面S1、S2同士が対向している。
よって、電磁波Uが電磁波シールド構造体246に到達すると、導電性材料254、256によって電磁波Uが反射され、この反射によって電磁波シールド構造体246は電磁波Uを遮蔽することができる。
また、導電性材料254、256の屈曲された端部面S1、S2同士が対向しているので、導電性材料254、256により隙間252に構成されるコンデンサのインピーダンスが小さくなる。これによって、隙間252から侵入する電磁波Uの強度を小さくすることができ、電磁波シールド構造体246から漏洩する電磁波を低減することができる。
よって、特許文献2の電磁波シールド構造体246を適用すれば、例えば、電磁波シールド扉と電磁波シールド扉の枠体との間に形成される隙間から漏洩する電磁波を低減することができる。
しかし、導電性材料254、256に当たって反射されなかった電磁波Uは導電性材料254、256を伝搬し、屈曲された導電性材料254、256の端部先端258、260から放射される。また、導電性材料の端部先端から放射される電磁波は、導電性材料の面から放射される電磁波よりも大きい。よって、この電磁波の放射により電磁波シールド構造体246の電磁波に対する遮蔽性が低下してしまう。
図26の横断面図に示すように、特許文献3の電磁波シールド扉262は、絶縁体からなる扉本体264と、この扉本体264の一方の面と他方の面にそれぞれ貼り付けられた電磁波シールド面材266、268によって構成されている。
扉本体264の端面には段部270、272が設けられており、この段部270、272で電磁波シールド面材266と268を離間させて電気的に非導通状態にしている。
また、電磁波シールド面材266は、扉本体264の電磁波シールド面材266側の角部付近からシールドロープ274、280を介して、枠体282、284の表面に設けられた電磁波シールド面材286、292にそれぞれ電気的に導通されている。
さらに、電磁波シールド面材268は、扉本体264の電磁波シールド面材268側の角部付近からシールドロープ276、278を介して、枠体282、284の表面に設けられた電磁波シールド面材288、290にそれぞれ電気的に導通されている。
よって、電磁波シールド面材266と268を離間させて電気的に非導通状態にすることにより、電磁波シールド扉262が二重シールド化される。
また、例えば、電磁波シールド扉262の電磁波シールド面材268に面する空間から電磁波が照射された場合、電磁波シールド面材268で反射されなかった電磁波は電磁波シールド面材268を伝搬し、シールドロープ276、278を介して枠体282、284の表面に設けられた電磁波シールド面材288、290に伝搬する。よって、電磁波シールド面材268の端部先端294、296や電磁波シールド面材266から電磁波が放射されることがない。
しかし、特許文献3の電磁波シールド扉262は、シールドロープ274、276、278、280を必要とするために、高コストであり、また、定期的にシールドロープ274、276、278、280の交換等のメンテナンスが必要なので、使い勝手が悪い。
特開2003−69274号公報
特許第3773928号公報
特開2005−282113号公報
図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電磁波シールド構造体を説明する。
なお、本実施形態では、電磁波シールドルームの出入口に設けられた電磁波シールド扉に本発明の電磁波シールド構造体を適用した例を示すが、これに限らずに、電磁波遮蔽性を必要とする部屋の壁、床、天井に設けられるボード等のさまざまな構造体に本実施形態を適用することができる。
まず、本発明の第1の実施形態に係る電磁波シールド扉10について説明する。
図1に示すように、電磁波シールド構造体としての電磁波シールド扉10が、枠体12に設けられたヒンジ14を介して矢印26の方向に開閉可能に取り付けられている。
枠体12は、導電性を有する鋼製の板材16で周囲が覆われており、内部に断熱遮音材18が収納されている。
また、電磁波シールド扉10は、周囲が第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22とによって覆われており、内部は空洞になっている。
第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22とは、共に導電性を有する平板状の鋼材であり対向している。
第2の電磁波シールド面材22は、第1の電磁波シールド面材20よりも電磁波Pが存在する側に設けられており、第2の電磁波シールド面材22の左右両側が第1の電磁波シールド面材20側に略直角に折り曲げられて電磁波シールド扉10の側面を形成している。
また、第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22との間に形成された空間M1の内部に向かうように、第2の電磁波シールド面材22の端部が折り曲げられている。
さらに、第1の電磁波シールド面材20の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部は、木製の絶縁部材24を介して接合されている。すなわち、第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22とは電気的に非導通となっている。
ここで、空間M1とは、第1の電磁波シールド面材20、絶縁部材24、第2の電磁波シールド面材22によって囲まれた電磁波シールド扉10の内部空間のことである。第2の電磁波シールド面材22の端部が空間M1の内部に向うように折り曲げられることによって、第2の電磁波シールド面材22の端部先端22Aの端面は、この空間M1の内部に向いている。
次に、本発明の第1の実施形態に係る電磁波シールド扉10の作用及び効果について説明する。
第1の実施形態の電磁波シールド扉10では、図1に示すように、第2の電磁波シールド面材22に面する電磁波シールド扉10の正面の空間M2に電磁波Pが発生したときに、第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22からなる二重のシールド層で電磁波Pを反射させることによって、電磁波を効果的に遮蔽することができる。
また、第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22とは電気的に非導通なので、第2の電磁波シールド面材22に吸収された電磁波Pが、第2の電磁波シールド面材22を伝って第1の電磁波シールド面材20へ到達することはない。よって、第1の電磁波シールド面材20からの電磁波Pの放射を低減することができる。
また、第2の電磁波シールド面材22に吸収された電磁波Pが、第2の電磁波シールド面材22を伝って第2の電磁波シールド面材22の端部先端22Aから放射される。しかし、第2の電磁波シールド面材22の端部は、第1の電磁波シールド面材20と第2の電磁波シールド面材22との間に形成された空間M1の内部に向かうように折り曲げられているので、放射された電磁波Pを電磁波シールド扉10の内部に閉じ込めることができる。
これらにより、面材を折り曲げただけの簡単な構造で、第1の電磁波シールド面材20及び第2の電磁波シールド面材22から電磁波シールド扉10の外部へ放射される電磁波Pを低減することができ、これにより電磁波に対する電磁波シールド扉10の遮蔽性が向上する。
なお、第1の実施形態の第1の電磁波シールド面材20、第2の電磁波シールド面材22だけでは、構造体としての十分な強度が得られない場合には、剛性の高い材料を基材として、この基材の表面に第1の電磁波シールド面材20、第2の電磁波シールド面材22を貼り付けて電磁波シールド扉10を構築してもよい。
例えば、電磁波シールド扉10の変形例である図2の電磁波シールド扉28に示すように、電磁波シールド扉28の内部に電気絶縁性を有する木製の補強部材30を設けてもよい。この場合、第1の電磁波シールド面材20の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部の間に設けられた絶縁部材24はなくてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態に係る電磁波シールド扉32について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の第1の電磁波シールド面材20の端部が折り曲げられたものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図3に示すように、電磁波シールド扉32は、周囲が第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22とによって覆われており、内部は空洞になっている。
第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22とは、共に導電性を有する平板状の鋼材であり対向している。
第1の電磁波シールド面材34の左右両側は、第2の電磁波シールド面材22側に略直角に折り曲げられて電磁波シールド扉32の側面の一部を形成している。
また、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に形成された空間M1の内部に向かうように、第1の電磁波シールド面材34の端部が折り曲げられている。
第2の電磁波シールド面材22は、第1の電磁波シールド面材34よりも電磁波Pが存在する側に設けられており、第2の電磁波シールド面材22の左右両側が第1の電磁波シールド面材34側に略直角に折り曲げられて電磁波シールド扉32の側面の一部を形成している。
また、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に形成された空間M1の内部に向かうように、第2の電磁波シールド面材22の端部が折り曲げられている。
さらに、第1の電磁波シールド面材34の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部は、木製の絶縁部材24を介して接合されている。すなわち、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22とは電気的に非導通となっている。
ここで、空間M1とは、第1の電磁波シールド面材34、絶縁部材24、第2の電磁波シールド面材22によって囲まれた電磁波シールド扉32の内部空間のことである。第1の電磁波シールド面材34の端部が空間M1の内部に向うように折り曲げられることによって、第1の電磁波シールド面材34の端部先端34Aの端面は、この空間M1の内部に向いている。また、第2の電磁波シールド面材22の端部が空間M1の内部に向うように折り曲げられることによって、第2の電磁波シールド面材22の端部先端22Aの端面は、この空間M1の内部に向いている。
次に、本発明の第2の実施形態に係る電磁波シールド扉32の作用及び効果について説明する。
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、第2の実施形態の電磁波シールド扉32では、第2の電磁波シールド面材22から、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に形成された空間M1の内部に放射された電磁波Pの強度は小さくなっている。よって、この電磁波Pが第1の電磁波シールド面材34を透過して、第1の電磁波シールド面材34の面から電磁波シールド扉32の背面側外部の空間M3へ放射されることは殆どない。
また、第1の電磁波シールド面材34の端部先端34Aからの放射は、第1の電磁波シールド面材34の面からの電磁波Pの放射よりも大きくなる。しかし、第1の電磁波シールド面材34の端部は、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に形成された空間M1の内部に向かうように折り曲げられているので、放射された電磁波Pを電磁波シールド扉32の内部に閉じ込めることができる。
よって、第1の電磁波シールド面材34から電磁波シールド扉32の外部へ放射される電磁波Pをより低減することができ、これにより電磁波Pに対する電磁波シールド扉32の遮蔽性をより向上させることができる。
なお、第2の実施形態の第1の電磁波シールド面材34、第2の電磁波シールド面材22だけでは、構造体としての十分な強度が得られない場合には、剛性の高い材料を基材として、この基材の表面に第1の電磁波シールド面材34、第2の電磁波シールド面材22を貼り付けて電磁波シールド扉32を構築してもよい。
また、電磁波シールド扉32の変形例である図4の電磁波シールド扉36に示すように、電磁波シールド扉36の内部に鋼製の補強部材38を設けてもよい。補強部材38のように、補強部材が導電性を有する場合には、第1の電磁波シールド面材34と鋼材38の間、又は鋼材38と第2の電磁波シールド面材22の間に木製の絶縁部材40を設ければよい。この場合、第1の電磁波シールド面材34の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部の間に設けられた絶縁部材24はなくてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態に係る電磁波シールド扉42について説明する。
第3の実施形態は、第2の実施形態の第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に電磁波吸収体を設けたものである。したがって、以下の説明において、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図5に示すように、第1の電磁波シールド面材34の第2の電磁波シールド面材22と対向する面にフェライトによって形成された板状の電磁波吸収体44が設けられている。すなわち、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に、電磁波吸収体44が設けられている。
次に、本発明の第3の実施形態に係る電磁波シールド扉42の作用及び効果について説明する。
第3の実施形態では、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、電磁波吸収体44が、電磁波シールド扉42の空間M1に閉じ込められた電磁波Pを吸収し、この電磁波Pを熱に換えて消滅させるので、電磁波シールド扉42の空間M1から外部に漏洩する電磁波Pを減らすことができる。
また、電磁波シールド扉42の内部から第1の電磁波シールド面材34に向う電磁波Pを電磁波吸収体44が遮断する。よって、第1の電磁波シールド面材34から電磁波シールド扉42の外部へ放射される電磁波Pをより低減することができる。
これらにより電磁波Pに対する遮蔽性をより向上させることができる。
なお、第3の実施形態では、第1の電磁波シールド面材34の内側の面に電磁波吸収体44を設けた例を示したが、これに限らず、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に設けられていればよい。また、電磁波シールド扉42の軽量化のために電磁波吸収体44をメッシュ状にしてもよい。
また、第3の実施形態の第1の電磁波シールド面材34、第2の電磁波シールド面材22だけでは、構造体としての十分な強度が得られない場合には、剛性の高い材料を基材として、この基材の表面に第1の電磁波シールド面材34、第2の電磁波シールド面材22を貼り付けて電磁波シールド扉42を構築してもよい。
また、電磁波シールド扉42の変形例である図6、7の電磁波シールド扉52、56に示すように、電磁波シールド扉52、56の内部に電磁波吸収体を兼ねた補強部材54、60を設けてもよい。
図6の補強部材54は、電気絶縁性を有するフェライトによって形成されている。
図7の補強部材60はC型鋼であり、この内部にフェライトによって形成された電波吸収体62が設けられている。また、第1の電磁波シールド面材34と補強部材48の間に木製の絶縁部材58が介在している。
次に、本発明の第4の実施形態に係る電磁波シールド扉64について説明する。
第4の実施形態は、第2の実施形態の第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22の端部に電磁波吸収体を設けたものである。したがって、以下の説明において、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図8に示すように、第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22の端部に、フェライトによって形成された電磁波吸収体66が設けられている。
次に、本発明の第4の実施形態に係る電磁波シールド扉64の作用及び効果について説明する。
第4の実施形態では、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、電磁波シールド面材の端部先端からの電磁波の放射は、電磁波シールド面材の面からの放射に比べて大きくなる。
よって、第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22の端部に電磁波吸収体66を設けることにより、第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22の端部先端から放射される電磁波Pを効率よく吸収することができる。
なお、第4の実施形態では、第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22の端部に、電磁波吸収体が設けられた例を示したが、これに限らず、第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22の少なくとも一方の面材の端部に、電磁波吸収体が設けられていればよい。
また、第4の実施形態の第1の電磁波シールド面材34、第2の電磁波シールド面材22だけでは、構造体としての十分な強度が得られない場合には、剛性の高い材料を基材として、この基材の表面に第1の電磁波シールド面材34、第2の電磁波シールド面材22を貼り付けて電磁波シールド扉64を構築してもよい。
次に、本発明の第5の実施形態に係る電磁波シールド扉68について説明する。
第5の実施形態は、第1の実施形態の第1の電磁波シールド面材20の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部との間に設けられた絶縁部材24を電磁波吸収体としたものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図9に示すように、電磁波シールド扉68では、第1の電磁波シールド面材20の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部との間に形成される開口を、フェライトで形成された電磁波吸収体70が塞いでいる。
次に、本発明の第5の実施形態に係る電磁波シールド扉68の作用及び効果について説明する。
第5の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、電磁波シールド扉68の内部に閉じ込められた電磁波Pは、第1の電磁波シールド面材20の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部との間に形成された開口から漏れ易い。
よって、この開口に電磁波吸収体70を設けることによって、電磁波Pに対する電磁波シールド扉68の遮蔽性が低下するのを防ぐことができる。
なお、第5の実施形態の第1の電磁波シールド面材20、第2の電磁波シールド面材22だけでは、構造体としての十分な強度が得られない場合には、剛性の高い材料を基材として、この基材の表面に第1の電磁波シールド面材20、第2の電磁波シールド面材22を貼り付けて電磁波シールド扉68を構築してもよい。
次に、本発明の第6の実施形態に係る電磁波シールド扉72について説明する。
第6の実施形態は、第2の実施形態の第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22を電気的に絶縁されたボルトによって固定したものである。したがって、以下の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図10に示すように、電磁波シールド扉72では、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に、電気絶縁性を有する木製の支持部材74が設けられている。
そして、この支持部材74を挟み込む第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22が、ボルト76及びナット78によって固定されている。ナット78の周囲は電気絶縁性を有する絶縁ゴムによって覆われており、これによって、第2の電磁波シールド面材22に面する電磁波シールド扉72正面の空間M2に電磁波が発生しても、ボルト76及びナット78を介して、電磁波が第2の電磁波シールド面材22から第1の電磁波シールド面材34へ伝播することはない。
次に、本発明の第6の実施形態に係る電磁波シールド扉72の作用及び効果について説明する。
第6の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができ、また、電気的に絶縁されたボルト76によって、簡単かつ確実に、第1の電磁波シールド面材34及び第2の電磁波シールド面材22を支持部材74に固定することができる。
図11、12に示す電磁波シールド扉80、84は、第6の実施形態の変形例である。
図11の電磁波シールド扉80では、第1の電磁波シールド面材34の端部と第2の電磁波シールド面材22の端部は、木製の支持部材82を介して接合されている。そして、この支持部材82を挟み込む第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22が、ボルト76及びナット78によって固定されている。
図12の電磁波シールド扉84では、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22との間に、電気絶縁性を有する木製の支持部材86が設けられている。
そして、この支持部材74を挟み込む第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22が、ボルト88によって固定されている。支持部材86には、雌ネジ部が形成されており、ボルト88の雄ネジ部と螺合されている。
なお、第1〜6の実施形態では、枠体12の周囲が、導電性を有する鋼製の板材16で覆われた例を示したが、板材16は導電性を有する材料であればよく、ステンレス、アルミニウム、銅などの金属材料等を用いてもよい。また、金属メッキ等によって、枠体12の表面に導電層を形成させてもよい。
また、枠体12の内部に断熱遮音材18が収納された例を示したが、使用用途に応じた材料を適宜収納してもよいし、空洞でもよい。
また、第1〜6の実施形態の第1の電磁波シールド面材20、34と第2の電磁波シールド面材22を鋼材とした例を示したが、導電性を有する材料であればよく、ステンレス、アルミニウム、銅などの金属材料等を用いてもよい。また、第1の電磁波シールド面材20、34、及び第2の電磁波シールド面材22は、基材の表面に金属メッキ等によって形成された導電層であってもよい。
また、第1〜6の実施形態の電磁波シールド扉10、28、32、36、42、52、56、64、68、72、80、84の内部を空洞にした例を示したが、電磁波シールド扉の使用用途に応じた材料を適宜収納してもよいし、枠体12のように断熱遮音材を収納してもよい。
また、第1〜6の実施形態で示した絶縁部材24、40、58、補強部材30、及び支持部材74、82、86を木製材料で形成された部材としたが、電気絶縁性を有する材料で形成されていればよく、アクリル樹脂、ゴム系素材等を用いてもよい。
また、第3〜6の実施形態で示した電磁波吸収体44、62、66、補強部材48、54、及び電磁波吸収体70をフェライトによって形成した例を示したが、比誘電率が大きく、かつ電気絶縁性を有する電磁波吸収材料であればよく、フェライトタイル、カーボン混入発泡材等によって形成してもよいし、剛性を必要としない場合には、ゴム系の電磁波吸収材料を用いてもよい。
また、第1〜6の実施形態では、電磁波シールド扉10、28、32、36、42、52、56、64、68、72、80、84の表面に第1の電磁波シールド面材20、34及び第2の電磁波シールド面材22を設けた例を示したが、これらの電磁波シールド面材の表面に電気絶縁性を有する絶縁シートや木製ボード等の絶縁層を設けてもよい。
また、電磁波シールド扉に3つ以上の電磁波シールド面材を設けてもよい。例えば、図13の電磁波シールド扉94に示すように、第1の電磁波シールド面材34と同形状で導電性を有する第3の電磁波シールド面材90、及び第2の電磁波シールド面材22と同形状で導電性を有する第4の電磁波シールド面材92を、第1の電磁波シールド面材34と第2の電磁波シールド面材22の間に設けてもよい。
また、第1〜6の実施形態では、第1の電磁波シールド面材34や第2の電磁波シールド面材22の左右両側を対向する電磁波シールド面材側に略直角に折り曲げられて電磁波シールド扉の側面の一部を形成した例を示したが、図14の第1の電磁波シールド面材34の端部に示すように、端部を折り畳むように折り曲げてもよい。
電磁波シールド扉の側面の一部を形成するように電磁波シールド面材の端部を折り曲げた方が、電磁波シールド扉の側面の電磁波シールド面材とこれに対向する枠体12の板材16とによって構成されるコンデンサのインピーダンスが小さくなる。これにより、この隙間から侵入する電磁波の強度を小さくすることができ、漏洩する電磁波を低減することができるので好ましい。
このように、コンデンサ効果により枠体と電磁波シールド扉の間の隙間から漏洩する電磁波を低減することができるので、この隙間はできるだけ小さく(1mm以内程度)した方がよい。例えば、電磁波シールド扉の水平度を調整できる機構が備わったヒンジ等を用いることが有効である。
図15に示す電磁波シールド扉96は、本発明の実施形態を電磁波シールドルームの両開きの扉に応用した例を示したものである。
電磁波シールド扉96では、電磁波シールド扉96の枠体98に2つの扉本体100、102がヒンジ104、106を介して開閉自在に取り付けられている。すなわち、2つの扉本体100、102は、矢印108、110の方向に開く観音開き扉である。
枠体98及び扉本体100、102は、周囲がステンレス等の導電性を有する金属材料112、114A、114B、116A、116Bでそれぞれ覆われている。枠体98の内部には断熱遮音材が収納され、扉本体100、102の内部は空洞になっている。また、金属材料114Aと金属材料114Bの間、及び金属材料116Aと金属材料116Bの間の接合部には木製の絶縁体118が設けられている。さらに、金属材料114B、116Bの内側には、鋼製の補強材120、122が設1けられている。
このような構成の電磁波シールド扉を用いれば、枠体と電磁波シールド扉の間に電磁波シールド用ガスケットを取り付けなくても十分に電磁波の漏洩を低減することができる。よって、メンテナンスがほとんど不要であり、低コスト化が図れる。
また、電磁波シールド用ガスケットを介して枠体と扉本体とを密着させるために、ある程度の力で押し付けるように扉本体を閉じる必要はないので、扉本体に設けられるハンドルは一般の扉に使用されているハンドルを用いることができる。
なお、第1〜6の実施形態では、電磁波シールド扉に本発明の電磁波シールド構造体を適用した例を示したが、部屋の床、壁、天井等に本発明の電磁波シールド構造体を用いてもよい。この場合、部屋の床、壁、天井等を1つの電磁波シールド構造体としてもよいし、複数の電磁波シールド構造体を配設して構築してもよい。
このように、本発明の電磁波シールド構造体で部屋全体を覆うことにより、部屋の内部で発生した電磁波が部屋の外へ漏洩したり、部屋の外で発生した電磁波が部屋の内部に漏洩するのを低減すると共に、無線LAN等で扱われる情報が漏洩するのを防ぐことができる。よって、電磁波シールドルーム以外の一般のOAフロアに本発明を用いても優れた効果を発揮することができる。
以上、本発明の第1〜6の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜6の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
(実施例)
図16〜18は、図19に示す測定装置の構成により、本実施形態の電磁波シールド構造体に対して評価実験を実施した測定結果である。
図19に示すように、隣接する2つの電磁波シールドルーム124、126の内部に、送信アンテナ128、受信アンテナ130がそれぞれ設置されている。電磁波シールドルーム124、126は、導電性を有する鋼材132によって覆われている。
電磁波シールドルーム124と126の間には、外形寸法が幅1800mm、高さ1800mm、厚さ50mmからなる電磁波シールド構造体としての供試体134が取り付けられている。また、供試体134の一方の表面からL1の距離を離して送信アンテナ128が設置され、供試体134の他方の表面からL2の距離を離して受信アンテナ130が設置されている。
測定は、始めに供試体134を取り付けない状態で、送信アンテナ128から電磁波を送信させ、これを受信アンテナ130で受信して、その電磁波の強度(基準レベルA0)を測定した。
次に、供試体134を取り付けた状態で、送信アンテナ128から電磁波を発信させ、これを受信アンテナ130で受信して、その電磁波の強度(レベルA1)を測定した。
そして、この基準レベルA0の値からレベルA1の値を引いた値を電磁波遮蔽性能(dB)とした。すなわち、電磁波遮蔽性能(dB)の値が大きいほど電磁波遮蔽性が高いことになる。
そして、この測定を500MHz〜3000MHzの周波数の水平偏波及び垂直偏波に対して行った。
200MHz〜1000MHzの周波数の電磁波の測定の際には、送信アンテナ128及び受信アンテナ130を広帯域アンテナのログペリオディックアンテナを用いて、L1=3m、L2=2mとした。
また、1000MHz〜3000MHzの周波数の電磁波の測定の際には、送信アンテナ128及び受信アンテナ130を広帯域アンテナのダブルリジッドガイドホーンアンテナを用いて、L1=0.6m、L2=2mとした。
図16の値は、図19の供試体134を図20の平断面図に示す供試体134A(比較例)とした測定結果である。符号140は水平偏波の場合、符号142は垂直偏波の場合の周波数(MHz)に対する電磁波遮蔽性能(dB)の値である。
図20に示すように、比較例としての供試体134Aは、厚さ1.6mmの鋼材148で表面が覆われた扉本体144、146によって構成されている。扉本体146の電磁シールドルーム124に面する鋼材148と扉本体146の電磁シールドルーム126に面する鋼材148とは電気的に絶縁されていない。また、扉本体144の電磁シールドルーム124に面する鋼材148と扉本体144の電磁シールドルーム126に面する鋼材148とは電気的に絶縁されていない。
2つの扉本体144、146が閉じた図20の状態において、扉本体144と146を1つの構造体とした外形寸法が幅1800mm、高さ1800mm、厚さ50mmとなっている。
よって、図16に示すように、比較例の供試体134Aにおいては、15dB程度以上の電磁波遮蔽性が得られることがわかる。
図17の値は、図19の供試体134を図21の平断面図に示す供試体134B(実施例1)とした測定結果である。符号150は水平偏波の場合、符号152は垂直偏波の場合の周波数(MHz)に対する電磁波遮蔽性能(dB)の値である。
図21に示すように、実施例1としての供試体134Bは、扉本体158、160によって構成されている。扉本体158表面の電磁シールドルーム124側に設けられた鋼材154Aと、扉本体158表面の電磁シールドルーム126側に設けられた鋼材154Bとの間の接合部には、アクリル樹脂からなる絶縁体162が設けられている。よって、鋼材154Aと鋼材154Bとは電気的に絶縁されている。
また、扉本体160表面の電磁シールドルーム124側に設けられた鋼材156Aと、扉本体160表面の電磁シールドルーム126側に設けられた鋼材156Bとの間の接合部には、アクリル樹脂からなる絶縁体162が設けられている。よって、鋼材156Aと鋼材156Bとは電気的に絶縁されている。
すなわち、鋼材154B、156Bが第1の電磁波シールド面材となり、鋼材154A、156Aが第2の電磁波シールド面材となっている。鋼材154A、154B、156A、156Bの厚さは、共に1.6mmである。
2つの扉本体158、160が閉じた図21の状態において、扉本体158と160を1つの構造体とした外形寸法が幅1800mm、高さ1800mm、厚さ50mmとなっている。
よって、図17に示すように、実施例1の供試体134Bにおいては、20dB程度以上の電磁波遮蔽性が得られることがわかる。
図18の値は、図19の供試体134を図22の平断面図に示す供試体134C(実施例2)とした測定結果である。符号164は水平偏波の場合、符号166は垂直偏波の場合の周波数(MHz)に対する電磁波遮蔽性能(dB)の値である。
図22に示すように、供試体134Cは、扉本体168、170によって構成されている。扉本体168表面の電磁シールドルーム124側に設けられた鋼材172Aと、扉本体168表面の電磁シールドルーム126側に設けられた鋼材172Bとの間の接合部には、電気絶縁性を有するゴム系フェライト材からなる電磁波吸収体176が設けられている。よって、鋼材172Aと鋼材172Bとは電気的に絶縁されている。
また、扉本体170表面の電磁シールドルーム124側に設けられた鋼材174Aと、扉本体170表面の電磁シールドルーム126側に設けられた鋼材174Bとの間の接合部には、電気絶縁性を有するゴム系フェライト材からなる電磁波吸収体176が設けられている。よって、鋼材174Aと鋼材174Bとは電気的に絶縁されている。
すなわち、鋼材172B、174Bが第1の電磁波シールド面材となり、鋼材172A、174Aが第2の電磁波シールド面材となっている。鋼材172A、172B、174A、174Bの厚さは、共に1.6mmである。また、電磁波吸収体176の幅は20mm、厚さは5mmであり、枠体側では2重とし、召し合い側では1重としている。
2つの扉本体168、170が閉じた図22の状態において、扉本体168と170を1つの構造体とした外形寸法が幅1800mm、高さ1800mm、厚さ50mmとなっている。
よって、図18に示すように、実施例2の供試体134Cにおいては、30dB程度以上の電磁波遮蔽性が得られ、かつ広い周波数の範囲で安定した電磁波遮蔽性が得られることがわかる。
図16〜18の測定結果からわかるように、構造体の表面を導電性の電磁波シールド面材で覆っただけの従来の電磁波シールド構造(図20、比較例)に比べて、電磁波の送信側の構造体表面に設けられた第2の電磁波シールド面材と電磁波の受信側の構造体表面に設けられた第1の電磁波シールド面材とを電気的に非導通とした電磁波シールド構造体(図21、実施例1)の方が、高い電磁波遮蔽性が得られることがわかる。
また、この実施例1よりも、電磁波吸収体を設けた電磁波シールド構造体(図21、実施例2)の方が、より高い電磁波遮蔽性が得られることがわかる。
また、実施例1、2の電磁波シールド構造体においては、第1の実施形態で説明したように、電磁波シールド面材の端部を電磁波シールド構造体の内部に向うように折り曲げたことによって、より優れた電磁波遮蔽性が発揮されている。
なお、一般のOAフロアで使用される機器から発生する電磁波の周波数帯は、例えば、ワイヤレスマイクは779.125MHz〜809.75MHz、携帯電話は810.05MHz〜957.95MHz及び1925.75MHz〜2167.4MHz、PHS(Personal Handy phone System)は、1893.65MHz〜1919.45MHz、無線LAN(IEEE802.11b、11g規格)は2400MHz〜2497MHzであり、これらの周波数帯域においても20(dB)以上の十分な電磁波遮蔽性が得られることが、図17、18に示す測定結果からわかる。