JP2008127406A - 生分解性重合体の合成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】短時間に効率的に生分解性共重合体を合成する方法を提供する。
【解決手段】グリコリド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、D,L−マバロノラクトン、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or−(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オンから選択される1種または2種以上の生分解性を有する単量体にマイクロ波を照射して開環重合させる。
【選択図】なし
【解決手段】グリコリド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、D,L−マバロノラクトン、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or−(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オンから選択される1種または2種以上の生分解性を有する単量体にマイクロ波を照射して開環重合させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、生分解性単独重合体又は生分解性共重合体を効率的に合成する合成方法に関する。
重合体は、分解性の観点から、難分解性重合体と、光分解性重合体と、生分解性重合体とに分類することができる。
汎用性のポリエチレン、汎用性のポリスチレン等に代表される難分解性重合体は、環境中に放出されても分解せずに残留するため、生物や人体に影響を及ぼす虞がある。
近年、環境汚染の進行に伴い、光照射により分解される光分解性重合体、酵素や微生物によって分解される生分解性重合体等、容易に分解可能な重合体の研究が盛んに行われている。
生分解性重合体は、環境、人体等に安全な重合体として年々需要が増加してきており、ポリエチレン、ポリスチレン等の汎用性の重合体の代替として注目を集めている。
例えば、生分解性共重合体は、手術用の縫い糸等の医療材料や、除草剤等の農薬組織体として利用されており、仮に、人体や自然環境中に放置された場合においても、体内中の酵素や自然環境中の微生物等によって分解されることにより、人体又は環境への悪影響を阻止できるといった大きな利点がある。
生分解性重合体の市価は、例えば最も重要の多いポリ乳酸が約500円/kgであるように、汎用の重合体に比べても高価であるが、製造コストを低減させることによって低価格が実現されれば、さらなる需要が見込まれる。
例えば、以下の特許文献1には、この生分解性重合体の合成方法の一例として、ラクチドと、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基から成る群から選択される少なくとも1種の反応性置換基を有するε−カプロラクトンとを開環重合することが記載されている。
しかしながら、従来の生分解性重合体の合成方法では、反応釜中の反応溶液を攪拌しながら加熱し、熱伝導により反応溶液中の分子を加熱するため、反応時間が長時間となっていた。また、このように長時間反応させることにより、熱による解重合も同時に進行し、反応時間の割に収率が低いといった問題も生じていた。
また、長時間の反応は、燃料や電力などのエネルギーの消費を増加させるため、合成した生分解性共重合体の価格を抑制することが困難であった。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、効率的に生分解性単独重合体又は生分解性共重合体を合成する生分解性重合体の合成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、環状化合物である生分解性を有する単量体にマイクロ波を照射して当該単量体を開環重合させることにより、短時間で効率的に生分解性重合体を合成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、環状化合物であるグリコリド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、D,L−マバロノラクトン、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or−(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オンから選択される1種または2種以上の生分解性を有する単量体にマイクロ波を照射して当該単量体を開環重合させることを特徴とする。
本発明によれば、生分解性重合体を短時間で効率的に合成することが可能となる。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態では、1種又は2種の環状化合物である生分解性を有する単量体にマイクロ波を照射し、この単量体を開環重合させて生分解性単独重合体または生分解性共重合体を合成する。
環状化合物としては、例えば、グリコリド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、D,L−マバロノラクトン、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or−(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン等が挙げられる。
マイクロ波は、波長1〜1000mm、周波数30〜0.3GHzの電磁波である。本実施の形態では、1種又は2種の環状化合物である生分解性を有する単量体に微量の触媒存在下でこのマイクロ波(波長122mm、周波数2.45GHz)を照射する。これにより、単量体分子中の環状構造が開環し、この開環反応が連続して起こることにより重合体が合成される。
また、本実施の形態では、マイクロ波照射による開環重合の重合温度を200℃以下とする。重合温度が200℃を超えた高温となると、合成した重合体に褐変化が生じ、さらに急激に解重合が進行するためである。
また、本実施の形態では、マイクロ波照射による開環重合を空気雰囲気下で行う。重合の効率低下の一因となる水分や重合体の褐変化を促す酸素を排除するために、開環の雰囲気を空気に替えてアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気としてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例では、マイクロ波照射によりε−カプロラクトン(以下、CLと記載する。)の単独重合体(以下、PCLと記載する。)、L−ラクチド(以下、L−LAと記載する。)とCLとのランダム共重合体(以下、PLLACLと記載する。)、及び、L−LAとグリコリド(以下、GLと記載する。)とのランダム共重合体(以下、PLLAGLと記載する。)を合成した。
マイクロ波照射よるPCLの合成
(実施例1)先ず、重合触媒に対するモノマー比が1000mol/molになるように、重合触媒として8.4mg(2.1×10−5mol)のオクチル酸スズ(Sn(oct)2)、続いてモノマーとして2.4g(2.1×10−2mol)のCLをシュレンクチューブに入れ、シュレンクチューブ内の混合物を十分に攪拌した。次に、このシュレンクチューブを簡易型マイクロ波反応装置(四国計測工業株式会社製)内に設置して所定の出力に設定したマイクロ波を照射した。この間、反応温度を、光ファイバー温度計を用いて所定の温度を超えないように注意しながら測定した。マイクロ波照射の終了後、合成したPCLをクロロホルムに溶解させ、続いて過剰のメタノール中にPCLを沈殿させた。その後、PCLを真空乾燥機で乾燥させ、乾燥したPCLの重量を計量して収率を求めた。最後に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によりPCLの分子量を決定した。
(実施例1)先ず、重合触媒に対するモノマー比が1000mol/molになるように、重合触媒として8.4mg(2.1×10−5mol)のオクチル酸スズ(Sn(oct)2)、続いてモノマーとして2.4g(2.1×10−2mol)のCLをシュレンクチューブに入れ、シュレンクチューブ内の混合物を十分に攪拌した。次に、このシュレンクチューブを簡易型マイクロ波反応装置(四国計測工業株式会社製)内に設置して所定の出力に設定したマイクロ波を照射した。この間、反応温度を、光ファイバー温度計を用いて所定の温度を超えないように注意しながら測定した。マイクロ波照射の終了後、合成したPCLをクロロホルムに溶解させ、続いて過剰のメタノール中にPCLを沈殿させた。その後、PCLを真空乾燥機で乾燥させ、乾燥したPCLの重量を計量して収率を求めた。最後に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)によりPCLの分子量を決定した。
この実施例1において、マイクロ波の出力を500W、570W、620W、重合温度145−170℃としたときの結果を表1に示す。なお、表1に示される結果は、反応溶液に粘性が見られた時点、すなわち重合体が形成された時点のものである。
この表1に示すように、マイクロ波の出力を500W、570W、620Wと増加させると、マイクロ波の照射時間を短縮してもPCLの収率及び分子量は共に増加した。すなわち、マイクロ波の出力を620Wとした場合、マイクロ波の照射時間が7.50分で収率79.0%、分子量2.49×104のPCLが合成され、最も良好の結果となった。
(実施例2)実施例1の結果を踏まえてマイクロ波の出力を620W、重合温度145−170℃として、マイクロ波の照射時間を6.00分、7.50分、9.00分、12.00分と増加させ、実施例1と同様の手順でCLの重合を行った。この実施例2の結果を表2に示す。
この表2に示すように、マイクロ波の出力を620W、重合温度を145−170℃とした場合、マイクロ波の照射時間が9.00分までは、照射時間の増加に伴ってPCLの収率及び分子量は共に増加した。すなわち、出力620Wのマイクロ波を9.00分照射した場合、収率91.4%、分子量2.99×104のPCLが合成され、最も良好の結果となったが、マイクロ波の照射時間が12.00分では、PCLの収率及び分子量は共に減少した。なお、照射時間12.00分で収率及び分子量が共に減少した要因は、反応時間の増加によるPCLの熱分解であると考えられる。
(実施例3)実施例1及び実施例2で行われたマイクロ波照射によるCLの単独重合が従来のオイルバスを用いたCLの熱重合に比べてどの程度効率的にPCLを合成できるかを検討する実験を行った。この実施例3では、マイクロ波重合及び熱重合共にモノマーのCLを0.8g(0.7×10−2mol)、重合触媒のオクチル酸スズを2.8mg(0.7×10−5mol)とした。また、熱重合ではオイルバスによる重合温度を120℃、150℃とし、マイクロ波重合ではマイクロ波照射による重合温度を155℃とした。この実施例3の結果を表3に示す。
この表3に示すように、重合温度が150℃の熱重合において合成したPCLは、重合時間が180分では収率81.3%、分子量2.33×104であり、重合時間が300分では収率82.1%、分子量2.47×104であった。また、重合温度が120℃の熱重合において合成したPCLは、重合時間が180分では収率24.1%、分子量1.12×104、重合時間が300分では収率66.0%、分子量2.46×104であった。
一方、重合温度155℃としたマイクロ波の照射によるCLの単独重合では、熱重合によるCLの単独重合の45分の1〜75分の1の重合時間で、収率66.8%、分子量2.24×104のPCLを合成できた。
マイクロ波照射によるPLLACLの合成
実施例1〜実施例3の結果を踏まえ、マイクロ波照射によりL−LAとCLとのランダム共重合を行った。このL−LAとCLとのランダム共重合では、L−LAとCLとの仕込比を50/50、20/80、80/20とした。
実施例1〜実施例3の結果を踏まえ、マイクロ波照射によりL−LAとCLとのランダム共重合を行った。このL−LAとCLとのランダム共重合では、L−LAとCLとの仕込比を50/50、20/80、80/20とした。
(実施例4)実施例4では、モノマーのL−LAとモノマーのCLとの仕込比を50/50とした。先ず、モノマーと重合開始剤との比が1000mol/molになるように、重合開始剤であるオクチル酸スズ8.4mg(2.1×10−5mol)を、続いてL−LA1.5g(1.05×10−2mol)及びCL1.2g(1.05×10−2mol)をシュレンクチューブに入れた。シュレンクチューブ内の反応溶液を十分に攪拌した後、簡易型マイクロ波反応装置内にシュレンクチューブを設置し、マイクロ波の出力を所定の値に設定し、モノマーであるL−LA及びCLへのマイクロ波照射を行った。なお、マイクロ波照射中の反応温度は光ファイバー温度計を使用し、所定の温度を超えないように測定した。マイクロ波の照射後、合成したポリマーをクロロホルムで溶解し、過剰のメタノール中で沈殿させ、得られたポリマーを真空乾燥機で乾燥させた。このポリマーの重量を測り、収率を求めた後、GPC、1HNMR(1H Nuclear Magnetic Resonance)によって分子量、組成比を決定した。620Wであるマイクロ波を5.00分照射したときの結果を表4に示す。
表4に示すように、マイクロ波の照射時間を5.00分として合成したPLLACLは、重合温度が125−200℃では、収率88.0%、分子量1.96×104であり、重合温度が135−200℃では、収率76.6%、分子量2.10×104であり、重合温度が145−200℃では、収率77.2%、分子量2.14×104であり、何れの場合も組成比(L−LA/CL)は、仕込比(L−LA/CL)の50/50に近い値であった。また、重合温度が135−180℃では、収率66.4%、分子量66.4×104であり、組成比(L−LA/CL)は64/36となり、仕込比(L−LA/CL)の50/50と大きくずれた。
このように、重合温度における最高温度が180℃であるよりも200℃である方が収率、分子量、及び組成比(L−LA/CL)は良好であった。なお、200℃よりもさらに高温とすると、合成したPLLACLに褐変化が生じた。
これより、重合温度を調節することによって、収率及び分子量を増加させて合成したPLLACLの組成比を仕込比に近づけることができ、また、合成したPLLACLの褐変化を抑制できることがわかった。
(実施例5)実施例5では、仕込比(L−LA/CL)を20/80とする以外は、実施例4と同様に実験を行った。この実施例5の結果を表5に示す。
表5に示すように、重合温度125−200℃において、マイクロ波の照射時間を5.00分とした場合、合成したPLLACLは、収率83.0%、分子量2.78×104となり、マイクロ波の照射時間を8.00分とした場合、合成したPLLACLは、収率88.4%、分子量3.00×104となった。このように、マイクロ波の照射時間が8分までは、反応時間の増加に伴って合成したPLLACLの収率及び分子量は共に増加し、組成比は仕込比と同程度であった。
また、重合温度135−200℃において、マイクロ波の照射時間を9.00分とした場合、合成したPLLACLは、収率86.4%、分子量2.55×104となり、収率及び分子量は僅かに減少した。
また、重合温度135−200℃において、マイクロ波の照射時間を10分とした場合、合成したPLLACLは、収率77.2%、分子量2.41×104となり、収率及び分子量は共に減少しただけでなく、組成比は、モノマーの仕込比よりも僅かにずれた。これは、反応時間の増加によって合成したPLLACLが熱分解したためであると考えられる。
また、実施例5では、粘性が出始めてから熱分解が起こる直前までマイクロ波照射を行うことにより、合成したPLLACLの収率及び分子量は共に増加し、組成比は、仕込比と同程度となることがわかった。
(実施例6)実施例6では、仕込比(L−LA/CL)を80/20とする以外は、実施例4と同様に実験を行った。この実施例6の結果を表6に示す。
表6に示すように、マイクロ波の照射時間を2.00分として合成したPLLACLは、重合温度130−230℃では収率72.5%、分子量3.27×104であり、重合温度140−225℃では収率80.9%、分子量2.91×104であった。しかしながら、何れの重合温度も最高温度が高温であることから合成したPLLACLに褐変化が生じた。
また、マイクロ波の照射時間を4.00分として合成した重合温度125−200℃では収率83.2%、分子量2.93×104であり、重合温度135−190℃では収率80.7%、分子量2.89×104であった。
また、実施例6では、何れの場合も合成したPLLACLの組成比(L−LA/CL)は仕込比(L−LA/CL)と僅かにずれた。
不活性ガス雰囲気下でのマイクロ波照射よるPCLの合成
実施例1〜実施例3では、表2に示すように、マイクロ波の照射時間が9.00分で収率91.4%、分子量2.99×104のPCLを合成できたが、汎用性の重合体に替えて高分子材料として製品化するには、十分な分子量であるとはいえない。
実施例1〜実施例3では、表2に示すように、マイクロ波の照射時間が9.00分で収率91.4%、分子量2.99×104のPCLを合成できたが、汎用性の重合体に替えて高分子材料として製品化するには、十分な分子量であるとはいえない。
そこで、さらなる高分子量のPCLを合成するための重合法について検討した。
(実施例7)実施例7では、上述した実施例1〜実施例3において、重合に影響を及ぼす空気中の水分、及び、ポリマーの褐変化の一因となる空気中の酸素を除去するためにシュレンクチューブ内を不活性ガスのアルゴンで置換した。この実施例7では、シュレンクチューブ内をアルゴンガス雰囲気又は空気雰囲気とする以外は実施例1〜実施例3と同様の手順で行った。この実施例7の結果を表7に示す。
表7に示すように、空気雰囲気下で重合温度145−170℃として合成したPCLは、マイクロ波の照射時間が6.00分では収率76.0%、分子量2.01×104であり、マイクロ波の照射時間が9.00分では収率91.4%、分子量91.4×104であった。また、アルゴン雰囲気下で重合温度120−180℃として合成したPCLは、マイクロ波の照射時間が4.00で収率79.4%、分子量5.88×104であった。
このように、不活性ガスのアルゴン雰囲気下では、空気雰囲気下のときよりもマイクロ波の照射時間を短縮したにもかかわらず、より高収率に実用レベルである高分子量のPCLを合成できた。
不活性ガス存在下でのマイクロ波照射によるPLLACLの合成
(実施例8)実施例8では、L−LAとCLとの仕込比(L−LA/CL)を20/80とし、シュレンクチューブ内をアルゴンガス雰囲気又は空気雰囲気とする以外は実施例4〜実施例6と同様の手順で行った。この実施例8の結果を表8に示す。
(実施例8)実施例8では、L−LAとCLとの仕込比(L−LA/CL)を20/80とし、シュレンクチューブ内をアルゴンガス雰囲気又は空気雰囲気とする以外は実施例4〜実施例6と同様の手順で行った。この実施例8の結果を表8に示す。
表8に示すように、空気雰囲気下で合成したPLLACLは、重合温度125−200℃、マイクロ波の照射時間5.00分では、収率83.0%、分子量2.78×104であり、重合温度140−200℃、マイクロ波の照射時間8.00分では、収率88.4%、分子量3.00×104であった。また、アルゴン雰囲気下で合成したPLLACLは、重合温度140−200℃、マイクロ波の照射時間4.00分で収率93.0%、分子量6.18×104であった。
アルゴンガス雰囲気下において合成したPLLACLは、空気雰囲気下に比べてマイクロ波の照射時間が約半分であったにもかかわらず、分子量は約2倍となり、組成比(L−LA/CL)も仕込比(L−LA/CL)とほぼ同じであった。
このように、不活性ガスのアルゴン雰囲気下において仕込比(L−LA/CL)を20/80とした場合、空気雰囲気下に比べてより短時間でより高収率に実用レベルである高分子量のPLLACLを合成できた。
(実施例9)実施例9では、L−LAとCLとの仕込比(L−LA/CL)を50/50とし、シュレンクチューブ内をアルゴンガス雰囲気又は空気雰囲気とする以外は実施例4〜実施例6と同様の手順で行った。この実施例9の結果を表9に示す。
表9に示すように、空気雰囲気下でマイクロ波の照射時間5.00分として合成したPLLACLは、重合温度135−180℃では、収率66.4%、分子量1.53×104、組成比(L−LA/CL)が64/36であり、重合温度145−200℃では収率77.2%、分子量2.14×104、組成比(L−LA/CL)が50/50であった。また、アルゴンガス雰囲気下で重合温度110−180℃、マイクロ波の照射時間6.00分として合成したPLLACLは、収率84.2%、分子量4.16×104、組成比(L−LA/CL)が60/40であった。
アルゴンガス雰囲気下において合成したPLLACLは、空気雰囲気下に比べて分子量は約2倍となったが、組成比(L−LA/CL)は仕込比(L−LA/CL)と大きくずれた。
このように、不活性ガスのアルゴン雰囲気下において仕込比(L−LA/CL)を50/50とした場合、短時間でより高収率に高分子量のPLLACLを合成できた。
(実施例10)実施例10では、L−LAとCLとの仕込比(L−LA/CL)を80/20とし、シュレンクチューブ内をアルゴンガス雰囲気又は空気雰囲気とする以外は実施例4〜実施例6と同様の手順で行った。この実施例10の結果を表10に示す。
表10に示すように、空気雰囲気下でマイクロ波の照射時間を4.00分として合成したPLLACLは、重合温度125−200℃では収率83.2%、分子量2.93×104であり、重合温度135−190℃では収率80.7%、分子量2.89×104であった。また、アルゴンガス雰囲気下において、重合温度130−190℃、マイクロ波の照射時間3.00分で合成したPLLACLは、収率82.7%、分子量5.87×104であった。また、何れの場合も組成比(L−LA/CL)は、仕込比(L−LA/CL)と僅かにずれた。
アルゴンガス雰囲気下では、空気雰囲気下に比べて照射時間が1分短縮されたにもかかわらず、合成したPLLACLの分子量は、約2倍となった。
このように、不活性ガスのアルゴン雰囲気下において仕込比(L−LA/CL)を80/20とした場合、短時間でより高収率に実用レベルである高分子量のPLLACLを合成できた。
不活性ガス存在下でのマイクロ波照射によるPLLAGLの合成
環状化合物であるL−LAとグリコリド(GL)とのランダム共重合を行った。
環状化合物であるL−LAとグリコリド(GL)とのランダム共重合を行った。
(実施例11)実施例11では、L−LAとGLとの仕込比(L−LA/GL)を80/20として、実施例8〜実施例10と同様の手順で実験を行った。この実施例11の結果を表11に示す。
表11に示すように、アルゴン雰囲気下で、重合温度150℃、重合時間1440分として熱重合により合成したPLLAGLは、収率83.4%、分子量2.16×104、組成比(L−LA/GL)が80/20であった。また、空気雰囲気下で、重合温度135−200℃、マイクロ波の照射時間4.00分としてマイクロ波重合により合成したPLLAGLは、収率88.7%、分子量2.72×104、組成比(L−LA/GL)が85/15であり、アルゴン雰囲気下で、重合温度130−200℃、マイクロ波の照射時間3.00分としてマイクロ波重合により合成したPLLAGLは、収率92.7%、分子量5.66×104、組成比(L−LA/GL)が83/17であった。
このように、不活性ガスのアルゴン雰囲気下において仕込比(L−LA/GL)を80/20とした場合、従来の熱重合よりも、短時間でより高収率に実用レベルである高分子量のPLLAGLを合成できた。
本実施例では、短時間で高収率に実用レベルに近い高分子量の生分解性共重合体を合成することができた。すなわち、本発明を適用した実施の形態では、生分解性共重合体を製造させる際の製造コストを削減させ、省エネ化を実現することが可能となる。
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
Claims (3)
- 環状化合物であるグリコリド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、D,L−マバロノラクトン、トリメチレンカーボネート、1−メチルトリメチレンカーボネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5−ジオキセパン−2−オン、モルフォリン−2,5−ジオン、3,6−ジメチルモルフォリン−2,5−ジオン、(R)−or−(S)−3−メチル−4−オキサ−6−ヘキサノライド(MOHEL)、エチレンオキシド、5−メチル−5−ベンジロキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オンから選択される1種または2種以上の生分解性を有する単量体にマイクロ波を照射して当該単量体を開環重合させることを特徴とする生分解性重合体の合成方法。
- 前記マイクロ波照射による開環重合の重合温度が200℃以下であることを特徴とする請求項1記載の生分解性重合体の合成方法。
- 前記マイクロ波照射による開環重合が不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1記載の生分解性重合体の合成方法。
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