JP2008122203A - 核磁気共鳴装置およびその操作方法 - Google Patents

核磁気共鳴装置およびその操作方法 Download PDF

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Abstract

【課題】NMR装置の感度を低下させることなく実験核送受信信号とロック核送受信信号間の干渉を低減すると共に、試料の温度安定度に関する要求を緩和させる。
【解決手段】磁石、プローブ、交流電気信号送信システム、低ノイズ増幅器、プローブの中に配置された1つ以上のプローブコイル、プローブコイルの一つと接続された同調回路、同調回路と前記交流電気信号送信システム及び前記低ノイズ増幅器を接続する送受スイッチング回路、前記低ノイズ増幅器と接続された検波器、前記磁石と前記プローブとの間に配置されたロックコイル、前記ロックコイルに電流を供給するロック電源、前記ロック電源が供給する電流量を制御するロック制御器を備えた核磁気共鳴装置において、前記低ノイズ増幅器と前記同調回路と前記送受スイッチング回路を単一にして、観測する原子核から検出される信号の一部周波数成分の信号を前記ロック制御器の入力とする。
【選択図】図1

Description

本発明は核磁気共鳴装置とその操作方法に関する。
核磁気共鳴装置(Nuclear Magnetic Resonance装置。以下、NMR装置という)は、磁石の中に置かれた試料に交流磁場を照射し、試料中の実験対象分子(以下、実験分子という)を構成する原子核スピンの状態を変化させて、原子核スピンの応答である自由誘導減衰信号(Free Induction Decay信号。以下、FID信号という)を検出する装置である。FID信号は減衰時定数Tdを持って指数関数的に減衰する。交流磁場の照射とFID信号の検出は試料近傍に配置した一つ若しくは複数のプローブコイルにより行われる。NMR装置が検出する前記FID信号の分解能は磁石の磁場が持つ空間的均一度および時間的安定度に依存する。そのため、磁場均一度調整(シミング)の方法および装置、磁場安定度制御(ロック)の方法および装置は重要である。
従来技術は、例えば特許文献1と特許文献2に記載の如く、NMR装置の実験対象核(例えば、水素核。以下、実験核という)とは共鳴周波数が数十〜数百MHz異なるロック用核(例えば、重水素核。以下、ロック核という)を含むロック用物質を試料の中に入れ、ロック用物質に対し上記の如くNMR測定を行っている。そして、検出したFID信号から測定時点でロック用核が持った共鳴周波数Frを求め、Frと予め決めていた希望共鳴周波数F0の差が0になるように磁石の磁場強度もしくはNMR装置の基準周波数を変えることで、ロックを達成した。ロック核に交流磁場を照射しFID信号を検出するためには、非特許文献1に記載されているように、観測核用コイルをダブル・チューニング(2重同調)して用いる必要がある。特許文献3には2重同調回路の一例が記載されている。
2重同調回路を用い、試料の近傍に配置した1つのプローブコイルを実験核のNMR測定と共用する従来のロック技術において、実験核への送受信信号とロック核への送受信信号が共に通る2重同調回路からプローブコイルまでの回路では、実験核およびロック核との送受信信号間で干渉が生じやすい。実験核送受信信号とロック核送受信信号間に干渉が生じると、プローブコイルの共振特性を示すQ値の低下、実験核のFID信号やロック核のFID信号に望ましくない変調の発生、実験核用およびロック核用受信回路のアンプが飽和するなどの好ましくない現象が現われる。この干渉を低減するために多数の技術が考案されており、特許文献3はその一例である。特許文献3によれば、送受信信号の振幅が最大になる位置に、一段を開放し、外部導体の両端を接地したn/4波長同軸共振器(ただし、nは正の奇数)を設けることで、電気的干渉を防ぐことができるとする。
非特許文献2によれば、ロック核として重水核を用いる場合、特にタンパク質など生体高分子を対象にするNMR測定において、測定対象の温度を設定温度に対し0.05度Kの範囲内に維持する必要がある。タンパク質など生体高分子に対するNMR測定では重水素を含む重水を溶媒中に入れロックに用いることが多いが、重水中の重水素が持つ共鳴周波数は温度に対し10ppb/Kのシフトを示すため、測定対象の温度が例えば0.1度K変動すると重水素の共鳴周波数が1ppb変化してしまう。ロックではこの変動が0になるように磁場を制御するため、結果として磁場に1ppbの誤差が生じることになる。従って、ロックのためには測定対象の温度を一定範囲内に維持しなければならないとされる。
特許第2504666号公報 米国特許第4193024号明細書 特開2006−214843号公報 荒田洋治、「NMRの書」、丸善株式会社、2000年 G.Wider,"Technical aspects of NMR spectroscopy with biological macromolecules and studies of hydration in solution",Progress in Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy,vol.32,p221〜223,1998
しかし、干渉を低減するために回路素子が増えれば、信号減衰が大きくなりNMR装置の感度を低下させてしまう。従って、従来技術において、NMR装置の感度を低下させることなく前記干渉を低減することは、不可能ではないとしても、極めて困難であった。
また、従来のロック技術は、生体高分子を実験分子としたNMR測定において、試料の温度を設定温度に対し0.05度Kの範囲内に制御することが求められる。温度をこの精度で制御することはNMR装置の温度制御性能を改善することだけでは達成できないため、NMR装置を設置する施設の空調設備を増設することが要求され、0.05度K以内と言った温度安定性の要求はNMR装置を導入するユーザーの負担であった。
本発明の目的は、NMR装置の感度を低下させることなく実験核送受信信号とロック核送受信信号間の干渉を低減することと、試料の温度安定度に関する要求を緩和させることにある。
本発明は、磁石と、磁石に挿入されその中に試料空間を有するプローブと、交流電気信号を出力する送信システムと、電気信号を増幅する低ノイズ増幅器と、プローブの中に前記試料空間を囲む形で配置された一つ若しくは複数のプローブコイルと、前記プローブコイルの一つと電気的に接続され該プローブコイルの共振周波数を観測しようとする原子核の核磁気共鳴信号の周波数に同調すると共に該プローブコイルの入力インピーダンスを調整する同調回路と、前記同調回路と前記送信システム若しくは前記同調回路と前記低ノイズ増幅器を電気的に接続する送受スイッチング回路と、前記低ノイズ増幅器と電気的に接続された検波器と、前記磁石と前記プローブとの間に配置されたロックコイルと、前記ロックコイルと電気的に接続され電流を供給するロック電源と、前記ロック電源が前記ロックコイルに供給する電流量を制御するロック制御器とを備えた核磁気共鳴装置において、前記低ノイズ増幅器と、前記同調回路と、前記送受スイッチング回路を単一にして、観測しようとする原子核から検出される信号の一部周波数成分の信号を前記ロック制御器の入力とすることを主要な特徴とする。
また、本発明は、前記した構成を有する核磁気共鳴装置に試料を挿入し、試料中の分析しようとする分子に含まれた観測しようとする原子核に由来する核磁気共鳴信号を取得する核磁気共鳴装置操作方法において、前記低ノイズ増幅器と、前記同調回路と、前記送受スイッチング回路を単一にして、観測しようとする原子核から検出される信号の一部周波数成分の信号を前記ロック制御器の入力とすることを主要な特徴とする。
本発明では、実験核と同じ核種のロック核を使うため、NMR装置の感度を低下させることなく実験核送受信信号とロック核送受信信号間の前記干渉が解消される。また、タンパク質など生体高分子に対するNMR測定においても、実験核と同じ核種のロック核を使うため、試料の温度安定度に関する要求が緩和される。
ロック核及び実験核として同じ核種を用い、ロック分子に実験分子と異なる分子を用いることで、ロック専用の送信システムや受信回路を大幅に低減しながら、NMR装置の感度を低下させることなく実験核送受信信号とロック核送受信信号間の前記干渉を低減すると共に、試料の温度安定度に関する要求を緩和させることができた。以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する、ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図1は実施例の構成を示すブロック図である。試料1は実験分子とロック分子を溶媒とともに試験管に入れたものである。実験分子と実験核は例えばエチルベンゼンとその水素核を用い、ロック分子は例えばNMRスペクトルの周波数基準として一般的に用いられるTMS(tetramethylsilane)を用いる。試料1は磁石2中に挿入されたプローブ3の試料挿入空間4に配置される。プローブ3の内部空間は分離壁5で試料挿入空間4から分離され、分離壁5を囲む形で実験核用プローブコイル6が配置される。非特許文献1に開示された従来技術の実験核用プローブコイルがロック核用に兼用されているのに対し、実験核をロック核として用いる本発明ではプローブコイルが実験核専用に設計され実装される。プローブの種類によっては実験核用プローブコイル6の周辺に更にデカップリング用プローブコイルを配置することもあるが、本発明を単純に拡張することで以下説明する効果を同様に得ることができるため、デカップリング用プローブコイルを備えた構成に関する説明は省略する。また、実験核への交流磁場照射と実験核からのFID信号検出に異なるプローブコイルを用いる構成も可能であり、この構成でも本発明を単純に拡張することで対応できるため、別途の説明を省略する。
実験核用プローブコイル6は同調回路7に接続される。同調回路7は、実験核用プローブコイル6の共鳴周波数をユーザーが設定する同調周波数に同調させると共に、前記同調周波数における実験核用プローブコイル6のインピーダンスをユーザーが設定する特定インピーダンスに整合させる。前記同調周波数は例えば実験分子が発するFID信号のスペクトルの中心周波数であり、前記特定インピーダンスは例えば50Ωである。ロックに関する例えば特許文献1〜3の従来技術では、同調回路7で同調させる周波数が実験核の共鳴周波数とロック核の共鳴周波数の2つであったのに比べ、本発明の同調回路7は1つの周波数に同調させるだけで済むため、同調回路は単純で少ない素子で実現できる。同調回路を単純にすることで、回路損失が減りNMR装置の感度が向上される。また、実験核とロック核の区別がないため、実験核送受信信号とロック核送受信信号間の干渉も解消される。
同調回路7は、プローブケーブル8を介し、送受スイッチング回路9に接続される。送受スイッチング回路9にはまた制御信号ケーブル10、送信信号ケーブル11、受信信号ケーブル12が接続される。送受スイッチング回路9は、制御信号ケーブル10から入力される信号電圧がしきい値以上なら送信モードになり、送信信号ケーブル11から入力される信号をプローブケーブル8に出力する。制御信号ケーブル10から入力される信号電圧がしきい値より低い時に、送受スイッチング回路9は受信モードになり、プローブケーブル8から入力される信号を受信信号ケーブル12に出力する。
送信システム13が出力する交流電気信号は、送信信号ケーブル11、送受スイッチング回路9、プローブケーブル8、同調回路7を経由し実験核用プローブコイル6に送られ、そのプローブコイルに流れる電流を変化させる。実験核用プローブコイル6で変化する電流は試料1の周辺に交流磁場を発生させ、試料1中の実験分子およびロック分子に含まれた実験核の核スピン状態を変化させる。送信される交流電気信号はパルス変調された複数のパルスからなり、その中心周波数F_RFは実験核の共鳴周波数若しくはその近傍の数MHz以内の値である。一般的に交流電気信号にはパルス変調の他に、目的とする実験核の核スピン状態の変化を達成するために振幅変調、周波数変調、位相変調など種々の変調を施す。交流電気信号を構成する複数のパルス間のタイミングとその変調内容を合わせてパルスシーケンスと称す。本発明はロック分子中の実験核と実験分子中の実験核を異なる核スピン状態に変化させるため、周波数選択的パルスを用いる。
図2に、周波数選択的パルスの一例として文献「R.Freeman,“Shaped radiofrequency pulses in high resolution NMR”,Progress in Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy,vol.32,p.59〜106,1998.」に開示されているE−BURP−1パルスを示す。図2(a)の横軸は時間、縦軸は振幅を示す。振幅が縦軸の中心線より下に現れている部分は、位相を180度反転させることを指す。送信する交流電気信号の振幅と位相を図2(a)の如く変調すると、図2(b)の如く周波数選択的に核スピンを励起させることができる。図2(b)の横軸は共鳴周波数を、縦軸は励起の度合を示す。実線と破線は各々吸収モードと分散モードと呼ばれる信号の励起を示す。図2(b)の中央部にある周波数選択的に励起された部分の周波数幅は、図2(a)に示した周波数選択的パルスの時間幅により決まる。例えば、図2(a)に示したパルスの全体横幅が10m秒であれば、図2(b)の全体横幅は2000Hzとなり、周波数選択的に励起される領域の幅は約600Hzとなる。
受信ケーブル12は低ノイズ増幅器15に接続される。低ノイズ増幅器15は実験核用プローブコイル6で検出されたFID信号を増幅し、ケーブル16を通じて増幅されたFID信号を中間周波数変換回路18に出力する。中間周波数変換回路18は増幅されたFIDと送信システム13から入力される周波数F_LOの局部発信信号19を乗算し、フィルタリングし中間周波数に変換された中間周波数FID信号20を出力する。中間周波数FID信号20において、実験分子から検出した中心周波数F_RFのFID信号はNMR装置で決まっている中間周波数F_IFを中心周波数として持つ。F_RFは実験核の種類および磁石2の強度により決まり、例えば磁場強度14テスラの磁石2で水素核を実験核とした場合、600MHzである。詳細な値は更に実験分子の分子構造により数十ppm以下の範囲でシフトされる。ロック分子から検出するFID信号の中心周波数は、前記F_RFからF_LX離れた値、即ちF_RF+F_LXである。前記の中間周波数F_IFは一般的に数MHzから数十MHz間の或る値であり、例えば、13.1MHzである。中間周波数FID信号20はロック分子から検出したFID信号と実験分子から検出したFID信号を同時に含む。
中間周波数FID信号20は送信システム13から入力されるクロック信号21により動作するアナログ/ディジタル変換器30でデータ系列31に変換される。アナログ/ディジタル変換されたデータ系列31はマルチプレクサ32で同じデータからなる2つのデータ系列データとなり、ロック分子用ディジタル検波器33と実験分子用ディジタル検波器34に入力される。これらのディジタル検波器は各々実験分子からと、ロック分子からのFID信号を検波するためのものである。ロック分子用ディジタル検波器33は同位相信号(in−phase signal、以下I信号)と直交信号(quadrature signal、以下Q信号)の2チャンネルを持つ直交検波器であり、数値制御発信器(Numerically Controlled Oscillator。以下、NCOという)35、チャンネル毎の数値乗算器36と37、ディジタルフィルタ38と39を有する。実験分子用ディジタル検波器34も同じ構成である。ディジタル検波器33と34は前記クロック信号21により動作する。ロック分子用ディジタル検波器33は入力データをIとQの2チャンネルに複製しNCO35で発生させたF_IF+F_LXの周波数を持つ余弦波と正弦波の参照データと数値乗算器36と37、ディジタルフィルタ38と39を用いて検波する。
直交ディジタル検波器の構成と動作は文献「C.A.Michal,K.Broughton,and E. Hansen,“A high performance digital receiver for home−built nuclear magnetic resonance spectrometers”,Review of Scientific Instruments,vol.73,p453〜458,2002」に詳細に開示されている。図3は、直交ディジタル検波器の構成と動作原理をアナログ直交検波器と比較して示す図である。図3(a)と(b)は、各々、アナログとディジタルの直交検波器のブロック図である。直交検波器は、アナログでもディジタルでも、入力信号F(t)を2つの系統に分割し、正弦波と余弦波の参照信号Rs(t)とRc(t)を乗算し、フィルタリングする共通の動作原理を持つ。下記にF(t)、Rs(t)、Rc(t)の信号を表す式を記す。ω0は搬送波の角周波数、ω1は観測しようとする核スピンの状態を表す角周波数である。
Figure 2008122203
F(t)をRs(t)およびRc(t)と乗算し、またフィルタリングした後の信号を表す式を下記に記す。フィルタリング後の正弦波と余弦波信号を各々QとI信号と称す。
Figure 2008122203
アナログとディジタルの直交検波器の差は、入力信号F(t)とRs(t)及びRc(t)との乗算装置が、アナログ/ディジタル変換装置の前段にあるか或いは後段にあるかである。ディジタル直交検波器はアナログ/ディジタル変換装置の後段に位置するディジタル信号処理装置(DSP)で乗算およびフィルタリング処理を行う。ディジタル直交検波器は、アナログ回路の代わりにディジタル信号処理装置を用いることで、安定性と周波数選択性の面でアナログ直交検波器より良好とされる。
ロック分子用ディジタル検波器33が出力する同位相信号データ40すなわちIデータと直交信号データ41即ちQデータはロック制御器42で処理され、ロック制御器42は電流制御値43をロック電源44に出力する。ロック制御器42の構成と処理は後で説明する。ロック電源44はロック電流ケーブル45を通じて、磁石2とプローブ3の間に配置されたロックコイル46に電流制御値43で指定された量の電流を流す。ロックコイル46に流れる電流は磁場を生成し、磁石2の磁場強度変動を補正する。ロック制御器42はまたNMR装置のシステムバス50を経由し装置制御コンピュータ51にロック制御器で処理したデータを送信する。実験分子用ディジタル検波器34から出力されるデータも信号処理器53で処理され、システムバス50を経由し、装置制御コンピュータ51に送られる。装置制御コンピュータ51は別途の通信手段、例えばEthernet(登録商標)によりユーザーコンピュータ52と通信を行う。
ロック制御器42の処理に関して図4を用いて説明する。ロック分子用ディジタル検波器33から出力されるIデータとQデータは、下記の式に示すように指数関数的に減衰する単一周波数成分の余弦波と正弦波で表現される。
Figure 2008122203
上述の式において、VはIデータとQデータの初期振幅、Tdは減衰時定数、F_ERとθはIデータとQデータの周波数と位相、hi(t)とhq(t)はIデータとQデータの雑音である。F_ERはユーザーが希望する磁石2の磁場強度におけるロック分子の共鳴周波数F_LOCKと、実際の磁石の中で検出されたロック分子の共鳴周波数F_RF+F_LXの差を示すエラー周波数である。ロックの制御はF_ERを0にする制御である。雑音hi(t)とhq(t)は、平均回路60を用いてIデータとQデータを平均し、<I>データ61、<Q>データ62を求めることで低減できる。F_ERは通常、数10Hzのオーダーであり、Tdは数百ミリ秒のオーダーであるため、10ミリ秒もしくはそれ以下の時間の間にIデータとQデータを平均しても誤差は10%以下である。平均する時間は制御コントローラ69により設定される。平均されるデータの数Nに対し、雑音hi(t)とhq(t)は√N分の1に減少することが知られており、アナログ/ディジタル変換器30に容易に入手できる1秒に1000万点以上を処理できる素子を用いれば、例え1ミリ秒間平均してもN=10,000で、雑音hi(t)とhq(t)は1/100に低減できる。ディジタル素子の発展傾向から、平均化による雑音低減効果が益々増大することは言うまでもない。固定位相θを除去するために、<I>データ61と<Q>データ62データを位相補正回路63に入力する。位相補正回路63は、下記の式に示した如く三角関数を乗算し、その結果を加算する回路であり、固定位相θを取り除いたI’データ64とQ’データ65を出力する。位相θは制御コントローラ69により設定される。下記式の処理は、ソフトウェアで実現してもディジタル回路を用いて実現してもよい。アナログ回路を用いる実現方法もあるが、I’データ64を出力する部分回路とQ’データ65を出力する部分回路間の差により誤差が発生しやすいため好ましくない。
Figure 2008122203
I’データ64とQ’データ65データは指数関数的に減衰するため、その値を用いて例えば特許文献1の従来技術でロック制御を行うことは困難である。この難点は、I’データ64とQ’データ65の時間領域S/Nを求める雑音比判断回路66と、I’の2乗とQ’の2乗を加算するパワー演算回路67を用いることで解決される。雑音比判断回路66は、一定時間のI’データ64とQ’データ65からそれらの平均と標準偏差を求め、平均/標準偏差の比が予め決めた値、例えば10以下なら、NOISY信号68をハイレベルにする。NOISY信号68がハイレベルになると制御コントローラ69はロック制御器42の動作を中止させる。制御コントローラ69により雑音比判断回路66も動作を中止するため、NOISY信号68はハイレベルの状態を保つ。制御コントローラ69は送受スイッチング回路9が送信から受信に切り替わる時から一定遅延、例えば10マイクロ秒を待ってから雑音比判断回路66を含むロック制御器42の動作を再開させる。パワー演算回路67の出力は下記の式で表現され、このような処理はソフトウェアでもディジタル回路でも容易に実現できる。
Figure 2008122203
NOISY信号68がローレベルの場合、上記の式の第2および第3項は第1項より十分小さく無視できる。上記式の残る第1項から指数関数的に減衰する振幅の情報が得られる。正規化回路70はI’データとQ’データをパワー演算回路67の出力のルートで除算し、正規信号データであるNIデータ71とNQデータ72を出力する。下記の式は正規化されたI’データであるNIデータ71と正規化されたQ’データであるNQデータ72の数学的表現である。NOISY信号68がローレベルの場合、雑音は無視できるため省略する。
Figure 2008122203
NIデータ71とNQデータ72は、フィードバック補償器73に入力される。フィードバック補償器73はNIデータ71とNQデータ72から求めた電流制御値43を出力する。NIデータ71とNQデータ72から電流制御値43を求める方法は多数あるが、最も一般的な方法は、NQデータ72を用いたPI制御である。前述のとおり、ロックの制御はF_ERを0にする制御である。一般的なロック制御状況において、F_ER×tは1より十分小さいため、NQデータ72は、F_ERに近似的に比例する。一方、NIデータ71は近似的にF_ERの2乗に比例するため、F_ERの小さい変化に鈍感である。以上の理由で、NQデータ72を用いるPI制御が一般的な方法である。PI制御のゲインGPとGIは制御コントローラ69により設定される。
NIデータ71とNQデータ72から電流制御値43を求めるもう一つの例が特開2006−38570号公報に示されている。この公報の記載によれば、電流制御値43をNIデータ71とNQデータ72から下記式の如く算出することで、制御範囲を狭小化することなく単調整を向上できる。なお、下記の式においてSCは電流制御値43を表す。Gはゲインである。
Figure 2008122203
本発明の一実施例によるNMR装置の全体構成を示すブロック図である。 周波数選択的パルスの一例を示す図である。 直交ディジタル検波器の構成と動作原理を示すブロック図である。 ロック制御器の構成の一例を示すブロック図である。
符号の説明
1…試料、2…磁石、3…プローブ、4…試料挿入空間、5…分離壁、6…実験核用プローブコイル、7…同調回路、8…プローブケーブル、9…送受スイッチング回路、10…制御信号ケーブル、11…送信信号ケーブル、12…受信信号ケーブル、13…送信システム、15…低ノイズ増幅器、16…ケーブル、18…中間周波数変換回路、19…局部発振信号、20…中間周波数FID信号、21…クロック信号、30…アナログ/ディジタル変換器、31…データ系列、32…マルチプレクサ、33…ロック分子用ディジタル検波器、34…実験分子用ディジタル検波器、35…数値制御発信器、36…数値乗算器、37…数値乗算器、38…ディジタルフィルタ、39…ディジタルフィルタ、40…同位相信号データ、41…直交信号データ、42…ロック制御器、43…電流制御値、44…ロック電源、45…ロック電流ケーブル、46…ロックコイル、50…システムバス、51…装置制御コンピュータ、52…ユーザーコンピュータ、53…信号処理器、60…平均回路、61…<I>データ、62…<Q>データ、63…位相補正回路、64…I’データ、65…Q’データ、66…雑音比判断回路、67…パワー演算回路、68…NOISY信号、69…制御コントローラ、70…正規化回路、71…NIデータ、72…NQデータ、73…フィードバック補償器。

Claims (7)

  1. 磁石と、
    前記磁石に挿入され、その中に試料空間を有するプローブと、
    交流電気信号を出力する送信システムと、
    電気信号を増幅する低ノイズ増幅器と、
    前記プローブの中に前記試料空間を囲む形で配置された一つ若しくは複数のプローブコイルと、
    前記プローブコイルの一つと電気的に接続され、該プローブコイルの共振周波数を観測しようとする原子核の核磁気共鳴信号の周波数に同調すると共に該コイルの入力インピーダンスを調整する同調回路と、
    前記同調回路と前記送信システム若しくは前記同調回路と前記低ノイズ増幅器を電気的に接続する送受スイッチング回路と、
    前記低ノイズ増幅器と電気的に接続された検波器と、
    前記磁石と前記プローブとの間に配置されたロックコイルと、
    前記ロックコイルと電気的に接続され、電流を供給するロック電源と、
    前記ロック電源が前記ロックコイルに供給する電流量を制御するロック制御器とを備えた核磁気共鳴装置において、
    前記低ノイズ増幅器と前記同調回路と前記送受スイッチング回路を単一にして、観測しようとする原子核から検出される信号の一部周波数成分の信号を前記ロック制御器の入力とすることを特徴とする核磁気共鳴装置。
  2. 請求項1において、
    前記検波器はディジタル検波器であり、前記プローブコイルで検出され前記低ノイズ増幅器で増幅された電気信号をアナログ/ディジタル変換器で変換したディジタルデータをマルチプレクサで少なくても2つのデータ系列に複製し、その一系列は観察しようとする分子の信号を検波する実験分子用ディジタル検波器に、別の一系列は前記ロック制御器に用いる一部周波数成分の信号を検波するロック分子用ディジタル検波器に入力し、前記ロック分子用ディジタル検波器の出力を前記ロック制御器の入力とすることを特徴とする核磁気共鳴装置。
  3. 請求項2において、
    前記実験分子用ディジタル検波器および前記ロック分子用ディジタル検波器は各々その内部に検波用参照信号を生成する数値制御発信器を有し、それらのディジタル検波器の数値制御発信器が出力する参照信号の周波数が異なることを特徴とする核磁気共鳴装置。
  4. 請求項3において、
    前記ロック制御器はその内部に制御コントローラと前記ロック分子用ディジタル検波器から出力されたデータを用いその時間領域S/Nを求める雑音比判断回路を有し、S/Nが予め設定した閾値以下に低下すると前記雑音比判断回路が前記制御コントローラに出力する信号の状態が変わり、前記制御コントローラは該信号の状態により前記ロック制御器の動作を停止させ、前記送受スイッチング回路の連結状態が送信から受信になってから所定の遅延時間を待ってから前記ロック制御器の動作を開始させることを特徴とする核磁気共鳴装置。
  5. 磁石と、
    磁石に挿入されその中に試料空間を有するプローブと、
    交流電気信号を出力する送信システムと、
    電気信号を増幅する低ノイズ増幅器と、
    プローブの中に前記試料空間を囲む形で配置された一つ若しくは複数のプローブコイルと、
    前記プローブコイルの一つと電気的に接続され該コイルの共振周波数を観測しようとする原子核の核磁気共鳴信号の周波数に同調すると共に該コイルの入力インピーダンスを調整する同調回路と、
    前記同調回路と前記送信システム若しくは前記同調回路と前記低ノイズ増幅器を電気的に接続する送受スイッチング回路と、
    前記低ノイズ増幅器と電気的に接続された検波器と、
    前記磁石と前記プローブとの間に配置されたロックコイルと、
    前記ロックコイルと電気的に接続され電流を供給するロック電源と、
    前記ロック電源が前記ロックコイルに供給する電流量を制御するロック制御器とを備えた核磁気共鳴装置に試料を挿入し、試料中の分析しようとする分子に含まれた観測しようとする原子核に由来する核磁気共鳴信号を取得する核磁気共鳴装置操作方法において、
    前記低ノイズ増幅器と前記同調回路と前記送受スイッチング回路を単一にして、観測しようとする原子核から検出される信号の一部周波数成分の信号を前記ロック制御器の入力とすることを特徴とする核磁気共鳴装置操作方法。
  6. 請求項5において、
    前記観測しようとする原子核を含みかつ分析しようとする実験分子とは異なるロック分子を前記試料中に入れ、前記ロック分子中の観測しようとする原子核に由来する核磁気共鳴信号を前記ロック制御器の入力として用いることを特徴とする核磁気共鳴装置操作方法。
  7. 請求項6において、
    前記ロック分子の核スピン状態を変化させるために周波数選択的パルスを用いることを特徴とする核磁気共鳴装置操作方法。
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