JP2008114807A - 空気入りタイヤおよびその補修方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたガスバリア性を長期間の走行後も安定して発揮することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】エチレン含有率が20〜60モル%であり、かつ酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、無機層状化合物(B)とを、A/Bの質量比で30/70〜50/50にて含有するコーティング剤であって、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液中に前記無機層状化合物を100MPa以下の加圧下で分散させてなるコーティング剤からなるガスバリア性被膜が、タイヤ内面に、膜厚0.5〜2.5μmにて設けられた空気入りタイヤである。また、上記コーティング剤を、走行後の空気入りタイヤの内面に塗布してガスバリア性被膜を形成する空気入りタイヤの補修方法である。
【選択図】図1
【解決手段】エチレン含有率が20〜60モル%であり、かつ酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、無機層状化合物(B)とを、A/Bの質量比で30/70〜50/50にて含有するコーティング剤であって、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液中に前記無機層状化合物を100MPa以下の加圧下で分散させてなるコーティング剤からなるガスバリア性被膜が、タイヤ内面に、膜厚0.5〜2.5μmにて設けられた空気入りタイヤである。また、上記コーティング剤を、走行後の空気入りタイヤの内面に塗布してガスバリア性被膜を形成する空気入りタイヤの補修方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガスバリア性(耐空気透過性)に優れる空気入りタイヤに関する。本発明はまた、走行後のタイヤのガスバリア性を改善する空気入りタイヤの補修方法に関する。
チューブレス空気入りタイヤにおいては、長期間にわたって空気圧を安定して保持するために、そのタイヤ内面にインナーライナーと呼ばれるガスバリア性に優れるゴム層が設けられている。
従来、かかるインナーライナーのガスバリア性向上のため、空気透過性の低いハロゲン化ブチルゴムを用いて、そのハロゲン含有量を増加させるなどといった手法がとられている。しかしながら、更なるガスバリア性向上のためには、インナーライナー層のゴム厚みを増加させる必要があり、その結果、タイヤ重量が増加して、燃費が悪化してしまう。その一方で、タイヤを軽量化して低燃費化を図りたいという要請も強いが、ゴムの薄出し(カレンダー)には下限があり、更にゴム厚みを小さくするとガスバリア性も低減する。
かかる問題を解決して、ガスバリア性とタイヤ軽量化を両立するために、種々の提案がされている。例えば、下記特許文献1には、タイヤ本体の内面に、ガスバリア性の高いエチレン−ビニルアルコール共重合体よりなる空気不透過層を一体的に設けることが開示されている。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体のみでは、充分なガスバリア性は得られない。
また、下記特許文献2には、無機層状化合物を含むエチレン−ビニルアルコール共重合体をコーティング膜としてタイヤ本体の内面に積層することで、更なるガスバリア性の向上を図ることが提案されている。しかしながら、この特許文献2の技術でも、無機層状化合物によるガスバリア性機能を損なうことなく、エチレン−ビニルアルコール系共重合体中に均一に分散させる上で必ずしも十分ではなく、ガスバリア性の改良効果が不十分であったり、また、走行時のタイヤ歪みによりコーティング膜が割れるなどして、長期間にわたる安定したガスバリア性を発揮できない場合がある。
その他、下記特許文献3には、エチレン−ビニルアルコール共重合体にエポキシ化合物を反応させてなる変性樹脂をインナーライナーに用いることが開示され、下記特許文献4には、インナーライナーにエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いることが開示され、下記特許文献5及び6には、インナーライナーに層状珪酸塩や層状粘土鉱物などの無機層状化合物を配合することが開示されている。
特開2000−177307号公報
特開2004−130831号公報
特開2005−343217号公報
特開平08−216610号公報
特表平08−510421号公報
特開2004−204204号公報
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、従来にも増して優れたガスバリア性を備えるとともに、該ガスバリア性を長期間の走行後も安定して発揮することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。また、本発明は、走行後の空気入りタイヤのガスバリア性を簡便に改善することができる空気入りタイヤの補修方法を提供することを目的とする。
本発明に係る空気入りタイヤは、エチレン含有率が20〜60モル%であり、かつ、酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、無機層状化合物(B)とを、A/Bの質量比で30/70〜50/50にて含有するコーティング剤であって、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液中に前記無機層状化合物を100MPa以下の加圧下で分散させてなるコーティング剤からなるガスバリア性被膜が、タイヤ内面に、膜厚0.5〜2.5μmにて設けられたものである。
また、本発明に係る空気入りタイヤの補修方法は、該コーティング剤を、走行後の空気入りタイヤの内面に塗布して、該タイヤ内面に該コーティング剤からなるガスバリア性被膜を形成するものである。
本発明に係る空気入りタイヤであると、上記特定のコーティング剤からなるガスバリア性被膜をタイヤ内面に特定の膜厚で形成したことにより、優れたガスバリア性が得られるとともに、長期間走行後の該ガスバリア性被膜の割れを防止して、長期間にわたって安定したガスバリア性を発揮することができる。
本発明に係る補修方法であると、長期間走行後の空気入りタイヤに対し、そのタイヤ内面に上記特定のコーティング剤を塗布することで、ガスバリア性に優れる被膜を形成することができ、空気入りタイヤのガスバリア性を簡便に補修改善することができる。
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
本発明の空気入りタイヤにおいてタイヤ内面に塗布するものとして用いられるコーティング剤は、エチレン含有率が20〜60モル%であり、かつ、酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、無機層状化合物(B)とを、A/Bの質量比で30/70〜50/50にて含有するとともに、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液中に前記無機層状化合物を100MPa以下の加圧下で分散させてなるものである。かかるコーティング剤としては、特開2003−276124号公報に開示されたものを用いることができ、詳細には次の通りである。
まず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をけん化することによって得られるものであり、けん化度が95モル%以上のものが用いられる。けん化度が95モル%未満では、ガスバリア性、耐油性が低下し、空気入りタイヤ内面のガスバリア層としての本来の性能を発揮することができない。また、該共重合体(A)のエチレン含有率は20〜60モル%であり、エチレン含有率がこれよりも小さいと、耐水性、耐湿性が悪化し、高湿度下でのガスバリア性が悪化する。またエチレン含有率がこれよりも大きくても、ガスバリア性が悪化する。
無機層状化合物(B)としては、溶媒に膨潤・劈開するものが好ましく用いられ、例えば、カオリナイト族、アンチゴライト族、スメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族などの各種の粘土系鉱物が好ましいものとして挙げられる。具体的には、カオリナイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、シロウンモ、タルク、バーミキュライトなどであり、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。
これらエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と無機層状化合物(B)との混合比A/Bは、質量比で、30/70〜50/50である。無機層状化合物(B)が50質量%未満では、高湿度下での酸素バリア性が悪化し、逆に、70質量%を超えると、ガスバリア性被膜の物性が不足する。
上記コーティング剤は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の溶液中に無機層状化合物(B)を混合し、100MPa以下の加圧下で分散させてなるものであり、かかる加圧下での分散は公知の高圧分散装置を用いて行うことができる。このように所定の加圧下にて分散させることにより、無機層状化合物によるガスバリア性機能を損なうことなく、エチレン−ビニルアルコール系共重合体中に無機層状化合物を均一に分散させることができ、優れたガスバリア性を発揮させることができる。すなわち、高圧分散装置の加圧力が100MPaよりも大きいと、無機層状化合物の粉砕が大きくなり、ガスバリア性が低下してしまう。なお、加圧力の下限は特に限定されないが、10MPa以上であることが好ましい。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液の溶媒(溶剤)としては、特に限定されないが、水と低級アルコールとの混合液であることが好ましい。
以上よりなるコーティング剤をタイヤ内面に塗布することで、タイヤ内面にガスバリア性被膜が形成される。該コーティング剤を塗布する対象は、加硫前および加硫後のいずれでもよいが、好ましくは加硫成形後のタイヤ内面に塗布することである。また、その場合、タイヤ内面には、ブチル系ゴム組成物からなるインナーライナーゴム層が設けられていてもよく、インナーライナーゴム層のないタイヤ内面(この場合、ジエン系ゴム組成物からなるゴム層が塗布対象となる。)に塗布してもよい。好ましくは、インナーライナーゴム層を持つタイヤ内面に塗布することであり、インナーライナーゴム層を従来よりも薄くしつつ(例えば、インナーライナーゴム層の厚みを0.4〜1.4mmとする。)、その内面に上記コーティング剤からなるガスバリア性被膜を形成することで、タイヤの軽量化を図りつつ、極めて優れたガスバリア性を発揮することができる。
図1は、タイヤ内面に該ガスバリア性被膜を形成した一例を示したものであり、タイヤ内面にはその全体に上記コーティング剤からなるガスバリア性被膜(1)が設けられている。なお、図中、(2)はカーカス、(3)はベルト、(4)はトレッドゴム部、(5)はビードをそれぞれ示している。
上記コーティング剤は、タイヤ内面に0.5〜2.5μmの膜厚(乾燥後の膜厚)のガスバリア性被膜が形成されるように塗布される。ガスバリア性被膜の膜厚が0.5μm未満では、ガスバリア性の改良効果が不十分であり、一方、膜厚が2.5μmを超えると、タイヤの歪みにより、ガスバリア性被膜が割れて、ガスバリア性の改良効果が低減してしまう。
なお、コーティング剤の塗布方法は、特に限定されず、スプレー式、バーコーター式、刷毛塗りなどが挙げられる。特には、加硫成形後のタイヤ内面に対して均一な厚みを簡便に得られることから、スプレーコーティングが好ましい。
また、コーティング剤の塗布に際しては、タイヤ内面との接着性を向上するために、予め塗布面にプラズマ処理やアンカー処理などの表面処理を施しておいてもよい。好ましくは、プラズマ処理によりゴム表面に対するぬれ性を向上させることである。
本発明はまた、上記コーティング剤を用いて、走行後の空気入りタイヤのガスバリア性を改善するタイヤの補修方法を提案するものである。すなわち、長期間走行後のタイヤに対して、そのタイヤ内面に、上記コーティング剤を塗布して、ガスバリア性被膜を形成することにより、空気入りタイヤのガスバリア性を簡便に補修改善することができる。
かかる補修の際、タイヤ内面には、ゴム表面にオイルなどがブリードしているため、プラズマ処理やアンカー処理などの表面処理を施してから、上記コーティング剤を塗布することが好ましい。
また、特に、重荷重用タイヤにおいては、ある程度の摩耗が進行した時点で、ベルト外側のトレッドゴム部を更新用トレッドと取替えることにより、更新して再使用することが一般に行なわれている。このようなタイヤの更新加工時に、上記コーティング剤の塗布による補修加工を行うことにより、更新タイヤのガスバリア性を改善して製品寿命を延長することができ、好ましい。より詳細には、更新用トレッドを貼り付けて再加硫した後に、プラズマ処理などの表面処理を施して上記コーティング剤を塗布することが、作業性およびガスバリア性被膜の作業時における破損を防止する上で好ましい。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
コーティング剤としては、特開2003−276124号公報の実施例1に準拠して作製されたサカタインクス製「エコステージGB6」(上記A/Bの質量比:4/6、高圧分散装置の加圧力:50MPa)、及び、そのA/Bの質量比を変更したものを用いた。A/Bの質量比は下記表1に示す通りである。
また、比較のため、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と無機層状化合物を、高圧分散装置を用いずに混合して調製したコーティング剤(比較例5)と、120MPaの加圧下で分散させて調製したコーティング剤(比較例6)とについても、評価を行った。
各コーティング剤を、ゴム基板に対して、表1に示す乾燥膜厚となるようにスプレーで塗布し、乾燥後に、下記測定方法によりガスバリア性を評価した。なお、比較例1は、コーティング剤を塗布していないゴム基板である。
ここで、塗布対象のゴム基板は、天然ゴム(RSS#3)100重量部、カーボンブラックN326(昭和キャボット製)60重量部、老化防止剤6C(モンサント製「サントフレックス6PPD」)2重量部、亜鉛華(三井金属製「亜鉛華3号」)8重量部、ステアリン酸コバルト(日本鉱業製)2重量部、加硫促進剤DZ(大内新興化学工業製「ノクセラーDZ−G」)1重量部、不溶性硫黄(アクゾ製「クリステックスOT−20」)4.5重量部からなるものである。そして、かかる配合からなるゴム基板を150℃×30分間で加硫し、その後、ゴム表面をプラズマ処理(キーエンス社製「ST−7010」を用い、照射レベル「High」にて、78cm2/分、10cm高さでプラズマを照射)したものを用いた。
・ガスバリア性:上島製作所製の空気透過試験機を用い、JIS K6404−10のB法(マノメータ法)に準拠して、測定温度80℃にてガス透過性を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が小さいほどガスバリア性に優れることを意味する。
加硫成形された空気入りタイヤ(サイズ:11R22.5 14PR、ブチル系ゴム組成物からなるインナーライナーゴム層を持つタイヤ)の内面に、上記と同様のプラズマ処理を施してから、上記各コーティング剤をそれぞれ表1に示す膜厚となるように塗布した。得られた各タイヤを自動車に装着し、10万km走行後のガスバリア性被膜の割れの有無を確認した。
結果は、表1に示す通りであり、実施例1及び2では、優れたガスバリア性が得られ、また、長期間走行後のガスバリア性被膜の割れもなく、そのため、長期間にわたって安定したガスバリア性を発揮することができるものであった。
これに対し、比較例2では、無機層状化合物の配合比率が大きいため、タイヤ走行後にガスバリア性被膜の割れが認められ、そのため、長期間にわたって安定したガスバリア性を発揮できるものではなかった。また、比較例3では、ガスバリア性被膜の膜厚が薄すぎたために、ガスバリア性の改善効果が不十分であった。比較例4では、ガスバリア性被膜の膜厚が厚すぎたために、ガスバリヤ性測定時にゴム基板の歪みによりコーティング膜が割れてガスバリヤ性が低下し、また、タイヤ走行後にもガスバリア性被膜の割れが認められた。更に、比較例5のように高圧分散処理していないコーティング剤を用いた場合や、100MPaを超える加圧力で高圧分散処理した比較例6では、ガスバリア性の改善効果が不十分であり、また、特に比較例5では無機層状化合物の分散が不十分なため、タイヤ走行後にガスバリヤ性被膜の割れが認められた。
本発明は、各種のチューブレス空気入りタイヤに利用することができる。
(1)ガスバリア性被膜、(2)カーカス、(3)ベルト、(4)トレッドゴム部、(5)ビード
Claims (3)
- エチレン含有率が20〜60モル%であり、かつ、酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、無機層状化合物(B)とを、A/Bの質量比で30/70〜50/50にて含有するとともに、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液中に前記無機層状化合物を100MPa以下の加圧下で分散させてなるコーティング剤からなるガスバリア性被膜が、タイヤ内面に、膜厚0.5〜2.5μmにて設けられた空気入りタイヤ。
- 前記ガスバリア性被膜が、前記コーティング剤を加硫成形後のタイヤ内面に塗布することで設けられてなる請求項1記載の空気入りタイヤ。
- エチレン含有率が20〜60モル%であり、かつ、酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と、無機層状化合物(B)とを、A/Bの質量比で30/70〜50/50にて含有するとともに、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶液中に前記無機層状化合物を100MPa以下の加圧下で分散させてなるコーティング剤を、走行後の空気入りタイヤの内面に塗布してガスバリア性被膜を形成する、空気入りタイヤの補修方法。
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