JP2008111021A - ウレタンエマルジョン - Google Patents

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Abstract

【課題】塗膜や接着剤として用いた場合に、強度(破断強度、降伏強度)、弾性率、耐傷付き性および表面硬さを良好に維持しつつ造膜性に優れ、皮革への密着性を良好に維持しつつ耐水性に優れ、作業性にも優れるウレタンエマルジョンの提供。
【解決手段】芳香環を主鎖骨格に有し、イオン性基を側鎖に有し、第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合したイソシアネート基を末端に有し、更に、炭素数8以上のアルキレン基および炭素数6以上のアルキレン基を有するポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョン。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウレタンエマルジョンに関する。
溶剤系接着剤を使用する生産ラインにおいて、職場環境の改善や、製品のVOC対策等の観点から、接着剤の無溶剤化の技術が開発されてきている。この無溶剤化の技術としては、ウレタンエマルジョン(水系ポリウレタン)を用いることが知られている。
このウレタンエマルジョンを塗膜や接着剤として用いた場合、高強度、高弾性率化や、耐傷付き性(傷つき難さ)、表面硬さを付与する観点から、結晶性ポリオールを用いてウレタンプレポリマーを合成したり、イソシアネート系架橋剤を併用したりする方法が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)
特開平4−328187号公報 特許第3478343号公報
しかしながら、結晶性ポリオールを用いた場合は、得られるウレタンエマルジョンの最低造膜温度が非常に高いため、常温で造膜した場合には塗膜にクラックが入るという造膜性に劣る問題があった。また、イソシアネート系架橋剤を併用する方法は、2液タイプとなるため作業性に劣る問題があった。
一方、本発明者は、このウレタンエマルジョンを皮革製品に塗布して利用する際に、密着性を向上させる観点から、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)やアクリル酸を共重合させたり、イソシアネート系架橋剤を併用したりする方法を検討したが、HEMAやアクリル酸を共重合させた場合は、HEMAやアクリル酸自体の水溶性の高さに起因して耐水性が悪くなる問題があることが明らかとなった。また、イソシアネート系架橋剤を併用する方法では、2液タイプとなるため作業性に劣る問題があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、塗膜や接着剤として用いた場合に、強度(破断強度、降伏強度)、弾性率(破断伸び、降伏伸び)、耐傷付き性および表面硬さを良好に維持しつつ造膜性に優れ、皮革への密着性を良好に維持しつつ耐水性に優れ、作業性にも優れるウレタンエマルジョンを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンが、塗膜や接着剤として用いた場合に、強度、弾性率、耐傷付き性および表面硬さを良好に維持しつつ造膜性に優れ、皮革への密着性を良好に維持しつつ耐水性に優れ、作業性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(1)〜(4)に記載のウレタンエマルジョンを提供する。
(1)芳香環を主鎖骨格に有し、イオン性基を側鎖に有し、第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合したイソシアネート(NCO)基を末端に有し、更に、炭素数8以上のアルキレン基および炭素数6以上のアルキレン基を有するポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョン。
(2)上記ウレタンプレポリマーが、イソシアネート基を2個以上有する芳香族ポリイソシアネート化合物(A)と、炭素数10以上のジカルボン酸と炭素数6以上のジオール化合物との縮合重合で得られるポリエステル系ポリオール(B)と、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)とを共重合させた後に、イソシアネート基を2個以上有する脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)を反応させて合成しうる、上記(1)に記載のウレタンエマルジョン。
(3)上記ポリエステル系ポリオール(B)が、セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとの縮合重合で得られる上記(2)に記載のウレタンエマルジョン。
(4)上記芳香族ポリイソシアネート化合物(A)が、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびこれらのイソシアヌレート体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)の水添物、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の水添物、キシリレンジイソシアネート(XDI)の水添物およびこれらのイソシアヌレート体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記(2)または(3)に記載のウレタンエマルジョン。
以下に示すように、本発明によれば、塗膜や接着剤として用いた場合に、強度、弾性率、耐傷付き性および表面硬さを良好に維持しつつ造膜性に優れ、皮革への密着性を良好に維持しつつ耐水性に優れ、作業性にも優れるウレタンエマルジョンを提供することができ、これにより、生産ラインにおける職場環境の改善や、製品のVOC対策も図ることができるため非常に有用である。
本発明のウレタンエマルジョンは、芳香環を主鎖骨格に有し、イオン性基を側鎖に有し、第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合したイソシアネート基を末端に有し、更に、炭素数8以上のアルキレン基および炭素数6以上のアルキレン基を有するポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンである。
本発明においては、このような特定の構造を有するウレタンプレポリマーを用いることにより、得られるウレタンエマルジョンを塗膜や接着剤として用いた場合において、強度、弾性率、耐傷付き性および表面硬さを良好に維持しつつ造膜性に優れ、皮革への密着性を良好に維持しつつ耐水性に優れ、作業性にも優れることになる。これは、具体的な作用は明らかではないが、結晶性の高いポリオール骨格を有さず、芳香環および凝集力の高い所定のポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有し、所定のイソシアネート末端を有する特定構造のウレタンプレポリマーを用いることによるものと考えられる。
なお、芳香族ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとから合成されるウレタンプレポリマーも芳香環およびポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有するが、このウレタンプレポリマーは、水との反応性が高く、エマルジョン合成時の乳化温度を低く(例えば、10℃程度以下に)する必要があり、その際に、ウレタンプレポリマー自体が固形化するため、エマルジョン化ができないものであった。
これに対し、本発明で用いるウレタンプレポリマーは、第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合したイソシアネート基を末端に有するため、水との反応性が抑制され、エマルジョン合成時の乳化温度を高く(例えば、20〜30℃程度に)でき、ウレタンプレポリマー自体が固形化しない温度でエマルジョン化することができる。
本発明のウレタンエマルジョンは、固形分質量が30〜60質量%であるのが好ましく、40〜55質量%であるのがより好ましい。固形分質量が30質量%以上であると、フィルム化する際の乾燥性が良好となり、60質量%以下であると、流動性が良好となり、作業性がより向上する。
本発明のウレタンエマルジョンの製造方法は特に限定されないが、その具体例としては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族ポリイソシアネート化合物(A)と、炭素数10以上のジカルボン酸と炭素数6以上のジオール化合物との縮合重合で得られるポリエステル系ポリオール(B)と、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)とを共重合させた後に、イソシアネート基を2個以上有する脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)を反応させて得られるウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させる方法が好適に挙げられる。
以下、芳香族ポリイソシアネート化合物(A)、ポリエステル系ポリオール(B)、化合物(C)および脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)ならびにこれらを反応させて得られるウレタンプレポリマーおよびウレタンエマルジョンについて詳述する。
<芳香族ポリイソシアネート化合物(A)>
上記芳香族ポリイソシアネート化合物(A)は、ベンゼン核(ベンゼン環)を有し、かつ、ベンゼン環に直接結合した2個以上のイソシアネート基を有する炭素環式化合物であれば特に限定されない。なお、ベンゼン核は縮合環中に有していてもよい。
このような芳香族ポリイソシアネート化合物(A)としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、および、これらのイソシアヌレート体などの変成体等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、これらのうち、TDI、MDIであるのが、比較的安価で入手しやすい理由から好ましい。
<ポリエステル系ポリオール(B)>
上記ポリエステル系ポリオール(B)は、炭素数10以上のジカルボン酸と炭素数6以上のジオール化合物との縮合重合で得られるポリエステルポリオールである。
本発明においては、このようなポリエステルポリオールを用いることにより、凝集力の高いポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有するウレタンプレポリマーが得られ、該ウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンが、塗膜や接着剤として用いた場合に、強度、弾性率、耐傷付き性および表面硬さを良好に維持しつつ造膜性に優れ、皮革への密着性を良好に維持しつつ耐水性に優れ、作業性にも優れるウレタンエマルジョンとなる。
炭素数10以上のジカルボン酸としては、具体的には、例えば、セバシン酸(オクタンジカルボン酸)、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、セバシン酸、デカンジカルボン酸であるのが、得られる本発明のウレタンエマルジョンの凝集力と流動性の両立が図れるため好ましい。
ジオール化合物としては、具体的には、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、1,6−ヘキサンジオールであるのが、入手が容易で、かつ、得られる本発明のウレタンエマルジョンの凝集力と流動性の両立が図れるため好ましい。
上記ポリエステル系ポリオール(B)としては、具体的には、例えば、上記で例示した炭素数10以上のジカルボン酸と、上記で例示したジオール化合物とを縮合重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。中でも、セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとを縮合重合して得られるポリエステルポリオールであるのが、得られる本発明のウレタンエマルジョンの凝集力、流動性および粘度のバランスが優れるためから好ましい。
本発明においては、上記ポリエステル系ポリオール(B)は、重量平均分子量が500〜50000程度であるのが好ましく、500〜5000であるのがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、得られるウレタンプレポリマーの硬度および粘度が良好となる。
なお、上記で例示した製造方法において、後述する化合物(C)が、イオン性基以外にイソシアネート基と反応性を有する基として水酸(OH)基を2個以上有する場合には、ポリオール化合物(B)は必須成分ではなく、所望により用いることができる。
<化合物(C)>
上記化合物(C)は、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物であれば特に限定されない。
ここで、イソシアネート基と反応性を有する基としては、具体的には、例えば、水酸基、第1級アミノ基(−NH2)、第2級アミノ基(−NH−)、メルカプト基等が挙げられる。なお、本発明においては、化合物(C)におけるイソシアネート基と反応性を有する基としてカルボキシ基を含まないものとする。
また、イオン性基としては、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホ基などのアニオン性基;第3級アミノ基(≡N)などのカチオン性基;等が挙げられる。
このような化合物(C)としては、具体的には、例えば、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪族モノヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエチル安息香酸、ヒドロキシけい皮酸などの芳香族モノヒドロキシカルボン酸;ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸などのジヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシベンゼンスルホン酸などのヒドロキシスルホン酸;メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸などのメルカプトカルボン酸;3N−メルカプトエタンスルホン酸などのメルカプトスルホン酸;アミノアジピン酸、アミノ安息香酸などのアミノカルボン酸;アミノベンゼンスルホン酸などのアミノスルホン酸;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)>
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)は、イソシアネート基を2個以上有する化合物のうち、上記芳香族ポリイソシアネート化合物(A)以外のものであれば特に限定されない。
このような脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)の水添物、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の水添物、キシリレンジイソシアネート(XDI)の水添物、および、これらのイソシアヌレート体などの変成体等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、これらのうち、IPDI、HDIであるのが、比較的安価で入手しやすい理由から好ましい。
<ウレタンプレポリマー>
上記ウレタンプレポリマーは、上記芳香族ポリイソシアネート化合物(A)と、上記ポリエステル系ポリオール(B)と、上記化合物(C)とを共重合させた後に、上記脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)を反応させて得られる。
ここで、上記共重合とは、ポリイソシアネート化合物(D)を反応させる前に、ウレタンプレポリマー前駆体を生成する重合をいい、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物(A)、ポリエステル系ポリオール(B)および化合物(C)を、不活性ガス雰囲気下、60〜90℃下で2〜8時間程度かくはん等して重合させる態様が好適に挙げられる。
また、上記共重合は、得られるウレタンプレポリマー前駆体とポリイソシアネート化合物(D)とを反応させる観点から、NCOインデックス〔芳香族ポリイソシアネート化合物(A)中のNCO基/(ポリエステル系ポリオール(B)中のOH基および化合物(C)中のNCO基と反応性を有する基)〕が、1.0以下となるように行う。
更に、上記共重合は、必要に応じて有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒の存在下で行うことができ、有機錫化合物の存在下で行うのが好ましい。
有機錫化合物としては、具体的には、例えば、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ラウリン酸第一錫、オレイン酸第一錫などのカルボン酸第一錫;ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジ−2−エチル-ヘキソエート、ジラウリル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテートなどのカルボン酸のジアルキル錫塩;水酸化トリメチル錫、水酸化トリブチル錫、水酸化トリオクチル錫などの水酸化トリアルキル錫:酸化ジブチル錫、酸化ジオクチル錫、酸化ジラウリル錫などの酸化ジアルキル錫;二塩化ジブチル錫、二塩化ジオクチル錫などの塩化ジアルキル錫;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫マレエートであるのが、比較的安価で取り扱いやすい理由から好ましい。
上記共重合により生成したウレタンプレポリマー前駆体と、上記脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)との反応は、得られるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)が0.3〜3%となるように行うのが好ましい。ここで、NCO%とは、ウレタンプレポリマーの全質量に対するNCO基の質量%を表す。
このような共重合およびその後の反応により得られるウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、1500〜30000であるのが好ましく、3000〜20000であるのがより好ましい。
また、このようなウレタンプレポリマーとしては、上記で例示した各種の芳香族ポリイソシアネート化合物(A)、ポリエステル系ポリオール化合物(B)、化合物(C)および脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)から得られる反応生成物が挙げられ、具体的には、芳香族ポリイソシアネート化合物(A)としてTDI、ポリエステル系ポリオール(B)としてセバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとを縮合重合して得られるポリエステルポリオール、化合物(C)としてジメチロールブタン酸またはジメチロールプロピオン酸、脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)としてIPDIまたはHDIを用いて得られるウレタンプレポリマーが好適に例示される。
<ウレタンエマルジョン>
上記ウレタンエマルジョンは、上記ウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られる。
上記ウレタンプレポリマーの水媒体中での分散は、塩基性化合物、必要に応じて添加される粘度調整剤、鎖延長剤の存在下で行われる。
ここで、塩基性化合物は、ウレタンプレポリマーの水性化(中和)のために必要な化合物である。塩基性化合物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、所望により添加する粘度調整剤としては、水と相溶する有機溶剤が挙げられ、具体的には、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が好適に例示される。
また、所望により添加する鎖延長剤は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式ジアミン;ジフェニルジアミンなど芳香族ジアミン;トリアミン;等が挙げられる。
本発明のウレタンエマルジョンは、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等と混合し、水系ポリウレタン樹脂組成物とすることができる。
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料;等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜6、比較例1〜16)
芳香族ポリイソシアネート化合物(A1)、ポリエステル系ポリオール化合物(B1)および(B2)、ポリオール化合物1および2ならびに化合物(C1)を、下記表1に示す質量部で、窒素気流下、60℃で3時間反応させ、ウレタンプレポリマー前駆体を合成した。
次いで、合成した各ウレタンプレポリマー前駆体を、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)または酢酸エチル(粘度調整剤)に溶解させた後、脂肪族ポリイソシアネート化合物(D1)を下記表1に示す質量部添加し、窒素気流下、80℃で6時間反応させて、ウレタンプレポリマーを合成した。反応系の温度を下げて、ウレタンプレポリマーの固形化開始温度を白濁温度として下記表1に示す。
次いで、合成した各ウレタンプレポリマーを単離しない状態で、蒸留水中で、トリエチルアミン(塩基性化合物)およびピペラジン6水和物(鎖延長剤)とともに、下記表1に示す乳化温度で3時間分散させ、ウレタンエマルジョンを調製した。なお、蒸留水は、実施例1〜6および比較例16においては20℃で使用し、比較例1〜15においては0〜1℃で使用した。粘度調整剤、蒸留水、トリエチルアミンおよびピペラジン6水和物の各質量部ならびに得られた各ウレタンエマルジョンの粘度調整剤を除く固形分(%)を下記表1に示す。
得られた各ウレタンエマルジョンについて、以下に示す測定方法により各物性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
<乳化性>
ウレタンエマルジョンが調製できるか否かを、乳化性により評価した。
乳化性は、蒸留水中での分散時に相分離するか否かを目視により確認し、相分離せず、白色液体となるものを、ウレタンエマルジョンが調製できたものとして「○」と評価し、相分離し、白色液体とならないものを、ウレタンエマルジョンが調製できないものとして「×」と評価した。
<エマルジョン外観>
調製したウレタンエマルジョンの外観を目視により確認し、乳化後、ゲル化し、流動性がなくなったものをエマルジョン外観に劣るものとして「ゲル化」と評価し、乳白色の液体状態のものをエマルジョン外観に優れるものとして「○」と評価した。なお、乳化せずウレタンエマルジョンが調製できない比較例1および2は、下記表1中、「沈降」と記載した。
<造膜性>
造膜性の評価は、調製したウレタンエマルジョンをJIS H4000に規定の1050材のアルミニウム板(サイズ:10cm×10cm)に塗布量が100g/m2となるように塗布し、20℃で1日間、50℃で2日間(いずれも相対湿度55%)で硬化させた後の塗膜の表面状態を確認した。
その結果、手触りで異物がない表面のものを造膜性に優れるものとして「○」と評価し、表面にクラックが生じているものを造膜性に劣るものとして「クラック」と評価した。なお、エマルジョンが調製できないもの、調製後ゲル化してしまうものについては、造膜性の評価は行わず、下記表1中「−」と記載した。
<皮膜硬度>
皮膜硬度として皮膜鉛筆硬度を測定した。
皮膜鉛筆硬度の測定は、JIS K5600-5-4:1999の引っかき硬度(鉛筆法)に準じて行った。
<降伏強度、破断強度>
調製したウレタンエマルジョンを平滑なポリエチレン板上に流延して50℃下で1日乾燥することにより得られたフィルムをダンベル状に打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準じて行い、降伏強度[MPa]および破断強度[MPa]を測定した。
<皮革への密着性>
皮革への密着性の評価は、碁盤目試験により行った。
具体的には、まず、調製したウレタンエマルジョンを、JIS H4000に規定の1050材のアルミニウム板(サイズ:10cm×10cm)に塗布量が100g/m2となるように塗布し、20℃で1日間、50℃で2日間(いずれも相対湿度55%)で硬化させ、試験体を作製した。
次に、得られた試験体の有効面に、1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を塗膜に直角に保ち、瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った基盤目の数を調べた。完全に剥がれないで残った基盤目数が100、即ち、全く剥がれなかったものが最も好ましいが、90以上であれば実用レベルである。
<耐水性>
耐水性の評価は、上記碁盤目試験で作製した試験体を50℃の温水に3日間浸漬させた後に、上記碁盤目試験を行い、同様の測定を行った。
Figure 2008111021
Figure 2008111021
Figure 2008111021
上記表1中の各成分は、以下のものを使用した。
・芳香族ポリイソシアネート化合物(A1):TDI(コスモネートTDI100、三井武田ケミカル社製)
・ポリエステル系ポリオール化合物(B1):セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとの縮合重合で得られるポリエステルポリオール化合物(2H−200S、重量平均分子量2000、豊国製油社製)
・ポリエステル系ポリオール化合物(B2):セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとの縮合重合で得られるポリエステルポリオール化合物(2H−350S、重量平均分子量3500、豊国製油社製)
・ポリオール化合物1:ビスA型ポリオール化合物(BPX−33、重量平均分子量550、旭電化工業社製)
・ポリオール化合物2:アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとの縮合重合で得られるポリエステルポリオール化合物(N−136、重量平均分子量2600、日本ポリウレタン工業社製)
・化合物(C1):ジメチロールブタン酸(日本化成社製)
・脂肪族ポリイソシアネート化合物(D1):IPDI(デグサ社製)
・アセトン(粘度調整剤):和光純薬社製
・MEK(粘度調整剤):和光純薬社製
・酢酸エチル(粘度調整剤):和光純薬社製
・トリエチルアミン(塩基性化合物):和光純薬社製
・ピペラジン6水和物(鎖延長剤):日本乳化剤社製
上記表1に示す結果より、第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合したイソシアネート基を末端に有さないウレタンプレポリマーを用いた比較例1〜14に対して、実施例1〜6では、造膜性の良好なウレタンエマルジョンが合成できることが分かり、炭素数の少ないポリエステルポリオールを使用した従来例である比較例15や、芳香環を主鎖骨格に有さないウレタンプレポリマーを用いた比較例16に比べ、強度(破断強度、降伏強度)、硬度が優れ、皮革への密着性および耐水性にも優れることが分かった。また、架橋剤を使用しないことから、1液タイプの接着剤として使用でき、作業性にも優れることが分かる。

Claims (4)

  1. 芳香環を主鎖骨格に有し、イオン性基を側鎖に有し、第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合したイソシアネート基を末端に有し、更に、炭素数8以上のアルキレン基および炭素数6以上のアルキレン基を有するポリエステルポリオール骨格を主鎖骨格に有するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョン。
  2. 前記ウレタンプレポリマーが、イソシアネート基を2個以上有する芳香族ポリイソシアネート化合物(A)と、炭素数10以上のジカルボン酸と炭素数6以上のジオール化合物との縮合重合で得られるポリエステル系ポリオール(B)と、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)とを共重合させた後に、イソシアネート基を2個以上有する脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)を反応させて合成しうる、請求項1に記載のウレタンエマルジョン。
  3. 前記ポリエステル系ポリオール(B)が、セバシン酸と1,6−ヘキサンジオールとの縮合重合で得られる請求項2に記載のウレタンエマルジョン。
  4. 前記芳香族ポリイソシアネート化合物(A)が、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびこれらのイソシアヌレート体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    前記脂肪族ポリイソシアネート化合物(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)の水添物、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の水添物、キシリレンジイソシアネート(XDI)の水添物およびこれらのイソシアヌレート体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2または3に記載のウレタンエマルジョン。
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