JP2008107275A - アレルギー性皮膚炎の診断法 - Google Patents

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光俊 冨永
Kenji Takamori
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Abstract

【課題】アレルギー性皮膚炎の経過を正確に判断できる方法の提供。
【解決手段】皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量を測定することを特徴とするアレルギー性皮膚炎の診断方法。診断が、アレルギー性皮膚炎の診断又はアレルギー性皮膚炎治療法の治療効果若しくは治療経過の判定であって、アレルギー性皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である。皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量測定試薬を含有するアレルギー性皮膚炎診断薬。
【選択図】なし

Description

本発明は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎の診断、治療効果の判定等が可能な診断法に関する。
アトピー性皮膚炎、かぶれ、湿疹等のアレルギー性皮膚炎は、皮膚の炎症やかぶれ、湿疹を呈する疾患である。このうち、アトピー性皮膚炎は増悪、寛解を繰り返す、かゆみのある湿疹を主病変とする慢性に経過する疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつとされている、難治性の疾患である。
アレルギー性皮膚炎の治療法には、ステロイド、抗ヒスタミン薬、その他の薬物療法の他、UVA(紫外線A波)を照射するPUVA療法(非特許文献1)等がある。
アトピー性皮膚炎は、増悪、寛解を繰り返すため、治療効果の判定や治療経過の判断は困難であり、新たな診断法の開発が望まれている。
Henseler T, Wolff K, Honigsmann H, Christophers E., Lancet. 1981 Apr 18;1(8225):853-7.
本発明の目的は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性皮膚炎の経過を正確に判断できる診断法を提供することにある。
本発明者は、神経反発因子として知られているセマフォリン3Aに注目し、健常人の皮膚及びアトピー性皮膚炎患者のPUVA療法前後の皮膚中のセマフォリン3A発現量を測定してきたところ、健常人と比較してアトピー性皮膚炎患者ではセマフォリン3Aの発現量が少なく、PUVA療法後の患者ではセマフォリン3Aの発現量が健常人のレベルにまで回復することを見出した。かかる知見に基づき、皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量を測定すればアレルギー性皮膚炎の治療経過等の診断が可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量を測定することを特徴とするアレルギー性皮膚炎の診断方法を提供するものである。
また本発明は、皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量測定試薬を含有するアレルギー性皮膚炎診断薬を提供するものである。
本発明の診断法によれば、アレルギー性皮膚炎、特に増悪、寛解を繰り返すアトピー性皮膚炎の治療経過、治療効果等が正確に判定できる。
セマフォリン3A(Sema 3A)は、ニューロピリン1及び神経軸索の伸張を抑制する反発因子として知られている(Raper JA, (2000), Curr Opin Neurobiol 10:88-94, Fujisawa H, (2004), J Neurobiol 59:24-33)。セマフォリン3Aが正常ヒト表皮で発現することは知られているが、セマフォリン3Aとアレルギー性皮膚炎との関連性は全く知られていない。
一方、セマフォリン3A遺伝子はクローニングされている(Kolodkin,A.L., Matthes,D.J. and Goodman,C.S., Cell 75 (7), 1389-1399 (1993). Puschel AW; Adams RH; Betz H., Neuron 14,941-948, 1995)。
本発明の診断においては、皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量を測定する。ここで、皮膚試料としては、ヒトの表皮を含む皮膚試料が好ましく、ヒト皮膚からバイオプシーにより採取できる。
皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子の測定手段としては、例えばセマフォリン3Aを測定する場合には免疫染色等が採用できる。測定に用いる抗セマフォリン3A抗体及びその標識体は市販品を用いることができる。
免疫染色の場合には、例えば蛍光免疫染色により測定可能である。セマフォリン3A量の定量は、例えば蛍光強度を、市販のソフトウェアで定量することにより行うことができる。
セマフォリン3A遺伝子を測定する場合には、例えば、RT−PCR法等が挙げられる。また、セマフォリン3A遺伝子の定量はリアルタイムRT−PCRにより行うことができる。
また、本発明の診断薬としては、上記の抗セマフォリン3A抗体、その標識体、第2抗体、標識第2抗体などを含有するものが好ましい。さらに、緩衝剤等と組み合せた診断キットも、本発明の診断薬に含まれる。
本発明者が健常人の皮膚におけるセマフォリン3Aを測定したところ、全ての健常人の皮膚、特に表皮上層のケラチノサイトにおいて観察された。一方、PUVA療法前のアトピー性皮膚炎患者表皮におけるセマフォリン3Aは健常人と比して減少していた。これに対し、PUVA療法後のアトピー性皮膚炎患者表皮のセマフォリン3Aは健常人のレベルにまで回復していた。
従って、皮膚、特に表皮のセマフォリン3Aの変化量を観察すれば、アレルギー性皮膚炎の経過、治療効果、治療経過等の診断が可能である。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
A.方法
(1)皮膚の採取
健常人のバイオプシーは、局所麻酔後3mmパンチを用いて腹部から採取した。
アトピー性皮膚炎患者からのバイオプシーは、局所麻酔後3mmパンチを用いて上腕、首、腹部など病変部から採取した。さらに、同様の患者からPUVA療法後の皮膚検体を同様の部位から採取した。これらのバイオプシーは、液体窒素により凍結ブロックを作製し、−80度で保存した。
(2)皮膚試料中のセマフォリン3A発現の測定
皮膚検体はOCTコンパウンドに包埋し、液体窒素により凍結ブロックを作製した。次に、CM1850 cryostatを用いて5μmの厚さで凍結切片を作製し、この切片をシランコートが施されたスライドグラスに貼り付けた。次に、これらのスライドグラスをアセトン溶液に浸し、10分間、−20度でインキュベーションを行い、組織切片を固定した。これらのスライドグラスをPBS(pH7.4)で2回洗浄し、洗浄後、5% normal donkey serumと2% BSAを含むPBS(ブロッキング液)を組織サンプルの上にのせ、1時間、室温でインキュベーションを行った。1時間後、スライドからブロッキング液を除去し、次にブロッキング液で希釈した1次抗体を組織サンプルの上にのせ、一晩(約16時間)、4度でインキュベーションを行った。翌日、スライドから1次抗体を除去し、PBSで3回洗浄後、ブロッキング液で希釈した蛍光物質が標識された2次抗体を組織サンプルの上にのせ、1時間、室温でインキュベーションを行った。2次抗体のインキュベーション後、スライドから2次抗体を除去し、PBSで3回洗浄後、vectashield mounting mediumにより封入を行った。そして、標本は共焦点レーザー顕微鏡DMIRE2 (Leica社)を用いて観察し、写真撮影を行った。
本実験で用いた抗体を以下に示す。
1次抗体である抗Sema3A抗体は、Abcam社から購入したものである。
Rabbit anti-Sema3A polyclonal antibody, Cat. no. ab23393.
Sema3Aの検出のためには蛍光物質が結合している二次抗体を用いた。これらの二次抗体は、インビトロジェン社から購入した。
Alexa Fluor 488 donkey anti-rabbit IgG, Cat. no. A21206, インビトジェン社
B.結果
(1)正常ヒト皮膚におけるセマフォリン3Aの発現分布免疫組織染色結果を図1に示す。図1中の緑色の部分がセマフォリン3Aが染色された部分である。
図1より、正常ヒト表皮にはセマフォリン3Aが多量発現していることが判明した。
(2)PUVA療法前後のアトピー性皮膚炎患者表皮におけるセマフォリン3Aの発現
免疫組織染色結果を図2に示す。図2中、Normal(A)が正常皮膚、AD(B)がPUVA療法前のアトピー性皮膚炎患者皮膚、PUVA(C)がPUVA療法後のアトピー性皮膚炎患者皮膚である。図2から明らかに、治療前のアトピー性皮膚炎患者の表皮ではセマフォリン3Aが明確に減少しており、治療後のアトピー性皮膚炎患者の表皮ではヒト正常皮膚と同等までセマフォリン3Aが回復していた。
また、正常者皮膚とアトピー性皮膚炎患者の皮膚からRNAを回収し、リアルタイムRT−PCRを行った結果を図3に示す。
図3から、アトピー性皮膚炎患者において約80%セマフォリン遺伝子の発現が減少していた。そして、治療後はこれが正常患者と同様に回復する。
正常ヒト皮膚のセマフォリン3Aについての免疫組織染色結果を示す図である。 正常ヒト皮膚(A)、治療前のアトピー性皮膚炎患者皮膚(B)、PUVA治療後のアトピー性皮膚炎患者皮膚(C)のセマフォリン3Aについての免疫組織染色結果を示す図である。 正常ヒト皮膚(Nomal)、治療前のアトピー性皮膚炎患者(AD1-AD5)皮膚のリアルタイムRT−PCRの結果を示す図である。

Claims (6)

  1. 皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量を測定することを特徴とするアレルギー性皮膚炎の診断方法。
  2. 診断が、アレルギー性皮膚炎の診断又はアレルギー性皮膚炎治療法の治療効果若しくは治療経過の判定である請求項1記載の診断法。
  3. アレルギー性皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である請求項1又は2記載の診断法。
  4. 皮膚試料中のセマフォリン3A又はセマフォリン3A遺伝子量測定試薬を含有するアレルギー性皮膚炎診断薬。
  5. 診断が、アレルギー性皮膚炎の診断又はアレルギー性皮膚炎治療法の治療効果若しくは治療経過の判定である請求項4記載の診断薬。
  6. アレルギー性皮膚炎が、アトピー性皮膚炎である請求項4又は5記載の診断薬。
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