以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1から図3は、本発明に係る実施形態の電動ステアリングロック装置(以下「ロック装置」と略する。)を示す。このロック装置は、図示しないステアリングの回動操作に伴って回動するステアリングシャフト1の周囲に配設され、エンジン等を始動または停止させるためのキー操作または始動ノブ操作に連動して動作するものである。なお、このステアリングシャフト1には、従来と同様に、周方向の所定位置に係合凹部2が形成されている。
本実施形態のロック装置は、一端開口のケース10と、該ケース10の開口を閉塞するカバー23とを有し、前記ステアリングシャフト1の係合凹部2に位置するように固定されるケーシングを備えている。そして、このケーシングの内部には、前記係合凹部2に係合するロックボルト32と、該ロックボルト32の駆動手段であるアクチュエータ44と、アクチュエータ44の駆動力をロックボルト32に伝達する伝達機構と、前記ロックボルト32の動作位置を検出する位置検出機構とが収容されている。
前記ケース10は、一端開口の受皿形状をなし、その開口端には、後述するカバー23を位置決めするための係合段部11が設けられている。このケース10の一側には、半円状の保持部12aを有するブラケット12と協働してステアリングシャフト1に外嵌する保持部13が設けられている。このケース10には、図2および図4に示すように、後述する回転ギア47およびウォーム46を配置するギア配設部14と、電動モータ45を配設するモータ配設部15とが、隔壁を突設することにより区画して設けられている。ギア配設部14は、その中心が保持部13の中心に径方向に対応する位置に設けられている。そして、このギア配設部14の中心には、凸状に突出する位置決め凸部16が設けられ、この位置決め凸部16を貫通するようにロックボルト32を進退可能に挿通させる挿通孔17が設けられている。また、位置決め凸部16の周囲には、回転ギア47の回動を規制するストッパ部18が突設されている。さらに、図3に示すように、モータ配設部15から貫通して配設される電動モータ45の出力軸に当接し、回転時に該出力軸の撓みを防止する撓み防止部14aが設けられている。さらにまた、ケース10には、その開口端と反対側の閉鎖面に、基板65および保持部材55をネジ止めして配設するための複数のボス19が設けられるとともに、ギア配設部14の反対側に位置する側壁には、コネクタ67を露出させる切欠部20が設けられている。なお、図4中符号21はカバー23をネジ止めして固定するためのネジ止め部である。また、符号22は、ケース10を車両に配設するためのブラケット部である。
前記カバー23は、図2および図5に示すように、前記ケース10の開口端を閉塞する一端開口の受皿形状をなし、その開口端には、係合段部11に係合する係合部24が設けられている。このカバー23には、前記ギア配設部14と対応して回転ギア47の端部を位置決めする位置決め筒部25が設けられている。この位置決め筒部25は、その軸心がギア配設部14の中心と一致するように設けられており、その先端縁に回転ギア47の先端内周縁に係合する嵌合凸部26が設けられている。また、位置決め筒部25の内周面には、後述するカム部材37の回転を阻止し、軸方向に進退させるためのガイド溝27が、周方向に所定間隔(90度)をもって設けられている。さらに、位置決め筒部25の中心には、カム部材37を介してロックボルト32を挿通孔17から進出するように付勢する付勢手段として図1に示すスプリング28を挿通保持する保持筒部29が設けられている。なお、切欠部20と対応する位置には、閉塞状態でコネクタ67を位置決めするための位置決め凸部30が設けられている。また、ネジ止め部21に対応する位置には同様にネジ止め部31が設けられている。
前記ロックボルト32は、図2および図6に示すように、前記挿通孔17に挿通可能な四角柱形状のもので、その上端には、係合凹部2に挿入係止される係合凸部33が設けられている。そして、後述するアクチュエータ44および伝達機構によって、進出して係合凹部2に係合するロック位置、および、後退してその係合が解除されるアンロック位置の間を移動されるとともに、スプリング28によってカム部材37を介して進出方向に付勢されるものである。また、このロックボルト32の下端には、後述するカム部材37に挿入係止される装着凸部34が設けられている。この装着凸部34には、図1に示す係止ピン35を挿入する係止孔36が設けられている。
本実施形態のロックボルト32は、前記係止ピン35によって連結される別体のカム部材37を備えている。このカム部材37は、その下部がカバー23の位置決め筒部25内に配置され、上部が後述する回転ギア47の内部に配置される略円柱状のものである。このカム部材37の下端外周部には、位置決め筒部25のガイド溝27に挿通されるガイド凸部38が周方向に所定間隔をもって突設されている。また、このカム部材37の下端には、図1に示すように、保持筒部29およびスプリング28を収容する円形状のスプリング収容凹部39が上向きに窪むように設けられている。さらに、カム部材37の上端には、図6に示すように、ロックボルト32の装着凸部34を装着する矩形状の装着凹部40が下向きに窪むように設けられるとともに、係止孔36と一致する係止孔41が貫通するように設けられている。そして、カム部材37の外周部には、その軸心と同一となる回転ギア47の回転軸心を中心として、略螺旋状をなすように旋回する略半円形状に窪んだカム溝42が径方向に対向するように一対設けられている。このカム溝42は、回転ギア47の回転動力を該カム部材37を介してロックボルト32の直線運動に変換するものである。このカム溝42は、一(下)端の所定領域がロックボルト32によるステアリングシャフト1のロック領域として予め設定され、他(上)端の所定領域がロックボルト32によるステアリングシャフト1のアンロック領域として予め設定されている。そして、このアンロック領域の境界部分には、カム溝42内に位置するように上向きに突出する突部43が設けられている。なお、このカム溝42および突部43については、後で更に詳細に説明する。
前記アクチュエータ44は、ロックボルト32を移動させるための動力源であり、モータ配設部15に配設される電動モータ45と、該電動モータ45の出力軸に配設されたねじ歯車であるウォーム46とからなる。前記電動モータ45は、カム部材37を進出させる正転作動と、カム部材37を後退させる逆転作動とが可能なものが使用される。
前記伝達機構は、図1および図2に示すように、カム部材37に設けた前記カム溝42と、このカム部材37を内部に進退可能に配設した状態でアクチュエータ44によって回動される回転ギア47と、該回転ギア47に配設され前記カム部材37を移動させるカムフォロワ54とを備えている。
前記回転ギア47は、図2および図7に示すように、外周部にウォーム46の歯と噛み合う複数のはす歯を形成したウォームホイール部48を備えている。このウォームホイール部48は、ケース10のギア配設部14より若干小さい外径をなす。また、このウォームホイール部48の内部には、その回転軸心と同軸でロックボルト32を連結したカム部材37より若干大きい直径の内筒49が一体成形されている。そして、この回転ギア47の一端であるウォームホイール部48の端部と、他端である内筒49の端部との間の寸法(即ち、回転ギア47の全高)は、組付状態のケース10のギア配設部14の底とカバー23の位置決め筒部25の先端との間の寸法より、若干大きく形成されている。内筒49は、その内部にカム部材37を回転軸心に沿って移動可能に収容するもので、その内径がケース10の位置決め凸部16の外径より若干大きく、外径がカバー23の位置決め筒部25の外径と略同一に形成されている。そして、この内筒49の一(下)端開口の内周縁には、位置決め筒部25の嵌合凸部26に外嵌する嵌合凹部50が設けられている。また、この内筒49の一端内周面には、開口縁から軸方向に沿って延びる略半円形状に窪んだ縦溝51が、径方向に対向するように一対設けられている。なお、この内筒49の他端縁には、ケース10のストッパ部18に当接することにより回動が規制される当接部(図示せず)が突設されている。さらに、ウォームホイール部48の下端(図7では上端)面内周縁には、該回転ギア47をケース10に組み付けた状態に維持するための保持段部52が設けられ、この保持段部52の所定領域に、後述する可動部材61を連動して回動させるための操作部53が更に設けられている。なお、この操作部53については、後で更に詳細に説明する。
前記カムフォロワ54は、球状のスチールボールからなり、図2に示すように、回転ギア47の縦溝51に配設される。そして、この縦溝51から突出した部分が、カム部材37のカム溝42に嵌められた状態で、回転ギア47が回動されると、縦溝51が周方向の回転されることにより、回転不可能に規制されたカム部材37のカム溝42に沿って摺動し、該カム部材37を介してロックボルト32を、回転ギア47の回転軸心に沿って進退させる。
前記電動モータ45および回転ギア47は、保持部材55によってケース10に組み付けた状態に保持される。この保持部材55は、図2および図8に示すように、ケース10のギア配設部14を覆う第1閉塞部56とモータ配設部15を覆う第2閉塞部57とを備えている。第1閉塞部56は、回転ギア47の保持段部52より若干大きい内径の貫通孔58を備えるとともに、一面(図8の下面)に、ケース10のギア配設部14を囲繞する隔壁の内面に嵌合される枠部59が突設されている。また、第1閉塞部56において、アクチュエータ44のウォーム46に対応する位置には円弧状の膨出部60が設けられている。第2閉塞部57は、電動モータ45においてケース10の底と反対側の面を覆う形状のものである。なお、この保持部材55は、ケース10のボス19にネジ止めにより固定される。
前記位置検出機構は、図1および図2に示すように、回転ギア47に連動される可動部材61と、該可動部材61の動作位置を検出する磁気センサ68A〜68Cを実装した基板65とを備え、可動部材61の回転位置を検出することにより、該可動部材61、回転ギア47およびカム部材37を介してロックボルト32の動作位置を検出するためのものである。
前記可動部材61は、図2および図9に示すように、回転ギア47の内筒49に外嵌され、後述する基板65に対する垂線方向である該回転ギア47の回転軸心と同軸で回転可能なリング状のものである。この可動部材61には、カバー23の側に配置される一面(図9中上面)に、略C字形状をなす磁石62が固定される配設凹部63が設けられている。また、反対側の面には、回転ギア47の操作部53に当接する受部64が設けられている。なお、磁石62および受部64については、後で更に詳細に説明する。
前記基板65は、図1および図2に示すように、コネクタ67、磁気センサ68A〜68C、および、制御手段であるマイコン69が実装され、これらが周知のパターン回路で接続されたものである。この基板65には、図1および図2に示すように、回転ギア47の内筒49と対応する位置に、該内筒49の外径より大きい内径の貫通孔66が設けられている。なお、この基板65は、電動モータ45とはリード線を介して電気的に接続されている。
前記コネクタ67は、図示しない相手方コネクタが接続されることにより、自動車から電動モータ45等を動作させるための電力や、電動モータ45をロック作動またはアンロック作動させるための制御信号を入力するとともに、位置検出機構によって検出したロックボルト32の動作位置の検出信号を外部に出力するためのものである。
前記磁気センサ68A〜68Cは、磁気検出手段である従来と同様のホールICからなり、可動部材に配設した磁石62の磁力を検出した状態ではLow信号を出力し、磁力を検出しない状態ではHi信号を出力するものである。なお、各磁気センサ68A〜68Cの配設位置については、後で更に詳細に説明する。また、磁気センサ68A〜68CはホールICに限られず、MR素子や磁気抵抗素子等を使用してもよい。
前記マイコン69は、内蔵した記憶手段であるROMに記憶されたプログラムに従って、電動モータ45を正転および逆転制御することにより、ロックボルト32をロック作動およびアンロック作動させるものである。この際、磁気センサ68A〜68Cの検出状態に基づいて、可動部材61の動作位置を検出する位置判断手段の役割をなす。また、各磁気センサ68A〜68Cの検出状態に基づいて、いずれかの磁気センサ68A〜68Cの故障の有無を検出する故障判断手段の役割をなす。
なお、前記可動部材61は、図2および図10に示すように、ホルダー70によって基板65に対して所定間隔をもって作動(回動)可能に保持されている。このホルダー70は、基板65に接触するように配置されるベース71を備えている。このベース71には、回転ギア47の内筒49より僅かに大きく、基板65の貫通孔66および可動部材61の内径より小さい貫通孔が設けられ、この貫通孔の内周縁より上下に突出するように筒部73が設けられている。ベース71と筒部73との境界部分において、基板65と反対側に位置する非接触面の側には、可動部材61を載置した状態で回動させることに伴う摩擦抵抗を低減するとともに、可動部材61と基板65との間隔を所定の間隔に設定するための膨出部74が設けられている。また、非接触面側に位置する筒部73の端部には、可動部材61の内周面を貫通してケース10の側で該可動部材61に係止し、該可動部材61を回動可能に保持するための保持爪部75が設けられている。さらに、接触面側に位置する筒部73の端部には、基板65の貫通孔66を貫通してカバー23の側で該基板65に係止する係止爪部76が設けられている。
次に、カム部材37のカム溝42の具体的な構成について説明する。
前記カム溝42は、図11の展開図に示すように、下端から上向きに緩勾配の傾斜角度(水平線とのなす角が約5度)で延びる第1延設部42aと、該第1延設部42aの端から該第1延設部42aより急勾配の傾斜角度(水平線とのなす角が約43度)で延びる第2延設部42bと、該第2延設部42bの端から水平方向に延びる第3延設部42cとを備えている。このカム溝42は、下端(左)側がロックボルト32によるロック位置、上端(右)側がロックボルト32によるアンロック位置を構成する。具体的には、回転ギア47の縦溝51に沿ってカムフォロワ54が上下動しない状態において、該カムフォロワ54がカム溝42の下側に位置すると、カム部材37が図2(A)に示すように上向きに移動したロック状態となり、カムフォロワ54がカム溝42の上側に位置すると、カム部材37が図2(B)に示すように下向きに移動したアンロック状態となる。なお、図11において、カム溝42に対して実線で示したカムフォロワ54の摺動位置(高さ)が、ロックボルト32の係合凸部33の先端がステアリングシャフト1の係合凹部2の開口端に位置した状態である。
即ち、本実施形態では、ロックボルト32の係合凸部33がステアリングシャフト1の係合凹部2内に進入している状態を緩勾配の第1延設部42aで進退させ、係合凸部33が係合凹部2から離脱した状態を急勾配の第2延設部42bで進退させる構成としている。ここで、ロックボルト32の進退動作において、係合凸部33が係合凹部2内に進入すると、それらの間には摩擦抵抗が生じる。そのため、係合凸部33が係合凹部2内に進入した状態では、係合代が徐々に増減するように進退させ、係合凸部33が係合凹部2から離脱した状態では迅速に進退させて、電動モータ45に加わる負荷を低減できるように構成している。
一方、図11において、カム溝42の下端にカムフォロワ54が位置している状態は、回転ギア47の当接部がケース10のストッパ部18の一端に当接する位置であり、カム溝42の上端にカムフォロワ54が位置している状態が、当接部がストッパ部18の他端に当接する位置である。言い換えれば、本実施形態では、当接部およびストッパ部18の周方向の寸法設定により、回転ギア47が360度未満(本実施形態では約250度)の所定範囲(以下「回動範囲」と称する。)のみ、正転および逆転できるように構成している。
このようなカム溝42において、ロックボルト32によってステアリングシャフト1がロック状態であると認定できる領域は、走行中の振動等による位置ズレは勿論、ロックボルト32およびステアリングシャフト1の剛性を考慮して、確実にロック状態を維持できる高さ(係合代)に設定する必要がある。また、アンロック状態であると認定できる領域は、走行中の振動等による位置ズレを考慮して、確実に係合凸部33が係合凹部2に進入しない高さ(後退量)に設定する必要がある。
そのため、本実施形態では、前記条件に加え、電動モータ45の動作を停止した後の惰性動作を含めて、停止後に回転ギア47の当接部がケース10のストッパ部18に当接しない最低範囲を、ロック領域として設定している。また、前記条件を満足できる高さまで第2延設部42bを延ばし、電動モータ45の動作を停止した後の惰性動作を含めて、停止後に回転ギア47の当接部がケース10のストッパ部18に当接しない最低範囲に前記第3延設部42cを設け、この第3延設部42c内をアンロック領域として設定している。さらに、アンロック領域の始点位置である第2および第3延設部42b,42cとの境界部分に、カム溝42内でのカムフォロワ54の摺動を阻止する移動阻止手段である前記突部43を形成している。なお、この第3延設部42cは、前記突部43を設ける構成により、他の延設部42a,42bより縦方向の幅が大きくなるように構成している。また、この突部43によりカムフォロワ54は、スプリング28によってロック側に進出するように付勢されたカム部材37において、走行中の振動では突部43を乗り越えてアンロック位置からロック位置の側へは摺動できず、電動モータ45の駆動力が加わることにより、突部43を乗り越えてアンロック位置からロック位置の側へ摺動できる構成とすることができる。
次に、回転ギア47の操作部53および可動部材61の受部64について具体的に説明する。
これら操作部53および受部64は、回転ギア47に連動させて可動部材61を動作させるための連動機構を構成するものである。これらは、図3に示すように、互いの一端を当接させた状態で合わせて略C字形状をなし、互いの他端の間に所定間隔の遊びP(本実施形態では約18度)が形成されるように、それぞれ同一点を中心とした円環の一部からなる円弧形状に形成されている。これにより、電動モータ45を動作させると、回転ギア47が回転し、その遊びPの距離だけ回転するのに要する遅延時間をもって、可動部材61が連動して回転する構成としている。
次に、可動部材61に配設する磁石62と基板65に配設する磁気センサ68A〜68Cについて具体的に説明する。
まず、本実施形態では、図11に示すように、メインの第1の磁気センサ68Aにより、可動部材61、回転ギア47およびカム部材37を介してロックボルト32の動作位置、即ち、ロック領域内に移動しているか、アンロック領域内に移動しているかの両方を検出する。また、サブの第2の磁気センサ68Bにより、ロックボルト32の係合凸部33が、ステアリングシャフト1の係合凹部2の開口端から完全に離脱した状態であるか否かを検出する。さらに、第2サブの第3の磁気センサ68Cにより、ロックボルト32がアンロック領域内に移動しているか否かを検出する。これにより、磁気センサ68A〜68Cのいずれか1つが故障しても、他の2つで確実にロックボルト32がアンロック領域の側に移動しているか否かを検出できるように構成している。なお、磁気センサ68A〜68Cにより、ロックボルト32がロック領域の側に移動しているか否かを検出できるように構成してもよい。しかし、自動車の走行に係る安全を第1に考えると、ロックボルト32がアンロック領域内に位置している状態が最も安全であり、他の領域では安全を確実に確保できるとはいえないため、本実施形態ではアンロック側を検出するように構成している。
そして、操作部53および受部64の間に遊びPが存在しない場合には、磁石62を含む可動部材61は、回転ギア47の回動範囲と同一範囲で回動する。この条件で第1の磁気センサ68Aによって、ロックボルトがロック領域内およびアンロック領域内のいずれに位置するかを検出するには、まず、回転ギア47がロック側の端部に位置した状態で、磁石62は、一端62aが第1の磁気センサ68Aからロック領域の範囲分更にロック側に延びるように設定する(図12(A)参照)。これにより、可動部材61がアンロック側に回動し、磁石62の一端62aが第1の磁気センサ68Aを越えた時点が、ロック領域の境界であるロック判断位置となる。同様に、回転ギア47がアンロック側の端部に位置した状態で、磁石62は、他端62bが第1の磁気センサ68Aからアンロック領域の範囲分更にアンロック側に延びるように設定する(図13(A)参照)。これにより、可動部材61がロック側に回動し、磁石62の他端62bが第1の磁気センサ68Aを越えた時点が、アンロック領域の境界であるアンロック判断位置となる。そのため、このような設定位置になるように、可動部材61には、一端62aから他端62bまで延びるC字形状の磁石62を配設する。
ついで、回転ギア47がロック側からアンロック側へ移動するときに、磁石62の磁界に伴う検出誤差範囲が全てアンロック領域内に位置するように、遅延時間を設定する。そして、その遅延時間に相当する遊びPを、操作部53および受部64の間に形成する。
その結果、回転ギア47がアンロック回転(作動)した際に、第1の磁気センサ68Aによって回転ギア47がアンロック領域(位置)まで回転したことを検出する第1アンロック検出位置が設定される。同様に、回転ギア47がロック回転した際に、第1の磁気センサ68Aによって回転ギア47がアンロック領域から離脱したことを検出する第2アンロック検出位置が設定される。そして、この第2アンロック検出位置は、第1アンロック検出位置よりロック側に位置するように設定される。本実施形態では、アンロック領域の境界であるアンロック判断位置を基準として、第1アンロック検出位置はアンロック側に位置し、第2アンロック検出位置はロック側に位置するように設定される。そして、前記突部43は、第1アンロック検出位置と第2アンロック検出位置との間に位置する。
また、回転ギア47がロック回転した際に、第1の磁気センサ68Aによって回転ギア47がロック領域まで回転したことを検出する第1ロック検出位置が設定される。同様に、回転ギア47がアンロック回転した際に、第1の磁気センサ68Aによって回転ギア47がロック領域から離脱したことを検出する第2ロック検出位置が設定される。そして、この第2ロック検出位置は、第1ロック検出位置よりアンロック側に位置するように設定される。本実施形態では、ロック領域の境界であるロック判断位置を基準として、第1ロック検出位置はロック側に位置し、第2ロック検出位置はアンロック側に位置するように設定される。
一方、カムフォロワ54が第1および第2延設部42a,42bの境界部分に摺動した位置は、係合凸部33が係合凹部2に進入しているか否かを判断でき、全く進入していない比較的安全といえる状態を判断するための準アンロック判断位置である。また、遊びPによる検出遅延時間を設けた可動部材61では、ロック側からアンロック側へ回動するときの検出位置が、アンロック側からロック側へ回動するときの検出位置より、アンロック側へ位置する。
そのため、第2の磁気センサ68Bは、アンロック側からロック側へ回動するときの第3検出位置が、検出誤差範囲を含めて前記準アンロック判断位置を基準としてアンロック側に位置するように設定している。これにより、第2の磁気センサ68Bによって、ロックボルト32が略安全といえる位置まで作動しているのか否かを判断できるように構成している。
また、第3の磁気センサ68Cは、第1の磁気センサ68Aとは異なる位置で、ロックボルト32がアンロック領域内に位置しているか否かを検出できる構成としている。そして、遊びPによる検出遅延時間を有する可動部材61に対して、ロック側からアンロック側へ回動するときの検出位置が、検出誤差範囲を含めて前記アンロック判断位置を基準としてアンロック側に位置するように設定している。また、アンロック側からロック側へ回動するときの検出位置が、検出誤差範囲を含めて前記アンロック判断位置を基準としてロック側に位置するように設定している。これにより、第1の磁気センサ68Aが故障した場合でも、確実に安全であるといえるアンロック領域にロックボルト32が位置していることを確実に検出することができる。
次に、前記ロック装置のアンロック作動およびロック作動について説明する。
前記ロックボルト32をロック状態からアンロック状態にするには、図2(A)に示すロック状態で、電動モータ45が正転駆動される。そうすると、図3に示すように、ウォーム46を介して回転ギア47が反時計回りに回動され、カム溝42の下端近傍に位置していたカムフォロワ54がカム溝42内を摺動または回転しながら移動する。しかし、カムフォロワ54は、回転ギア47の縦溝51内に位置していて周方向には移動できないので、回転ギア47の回転によってロックボルト32が後退方向に移動し始める。
この際、カムフォロワ54がカム溝42の第1延設部42aに沿って移動するときには、ロックボルト32は、ロック位置から比較的ゆっくりと後退する。これにより、ロックボルト32の係合凸部33がステアリングシャフト1の係合凹部2から引き抜かれるときの引き抜き荷重を大きくすることができる。そのため、ステアリングシャフト1に据え切りトルクが加わっており、係合凹部2の内面が係合凸部33の外面に圧接している状態でもロックボルト32を確実に引き抜くことができる。また、引き抜き荷重増大のための減速ギア等を廃止できるとともに、電動モータ45を小型化することができる。その結果、ロック装置全体の小型化を図ることができる。
引き続き、回転ギア47の回転にしたがってカムフォロワ54がカム溝42の第2延設部42bに沿って移動するときは、ロックボルト32は比較的速く後退する。このように、ステアリングシャフト1の係合凹部2から先端が引き抜かれた後はロックボルト32の動作を速くすることで、電動モータ45の作動時間を短くできる。さらに、ステアリングのロックを解除した後のエンジン始動までの時間を短くすることもでき、ユーザの利便性を向上することができる。
このようにして、ロックボルト32がロック位置からアンロック位置に移動することで、ステアリングシャフト1の係合凹部2に対するロックボルト32の係合凸部33の係合が解除される。その結果、ステアリングシャフト1の回動規制が解除され、図2(B)に示すアンロック状態になる。
逆に、ロックボルト32をアンロック状態からロック状態にするには、アンロック状態で、電動モータ45が逆転駆動される。そうすると、図3に示すように、ウォーム46を介して回転ギア47が時計回りに回転され、カムフォロワ54がカム溝42内に沿って移動する。この際、第3延設部42cの端部にカムフォロワ54が位置すると、突部43に当接して移動を妨げる。しかし、電動モータ45による回転ギア47の回転駆動力によって、スプリング28の付勢力に抗してカム部材37を軸方向下向きに移動させて、カムフォロワ54が突部43を乗り越えて、第2延設部42bの側に進入する。
その後、ロックボルト32がスプリング28の付勢力も伴って図2(B)に示すアンロック位置から図2(A)に示すロック位置まで進出する。これにより、ロックボルト32の係合凸部33がステアリングシャフト1の係合凹部2内に進入して係合し、ステアリングシャフト1は回動規制されてロック状態になる。
この際、ステアリングシャフト1の係合凹部2がロックボルト32の係合凸部33と一致していない場合が多い。この場合には、ロックボルト32を係合凹部2に進入できないため、図2(A)に示すロック状態とすることはできない。しかし、回転ギア47を回動させることによるカムフォロワ54とカム溝42との摺動は、前記と同様に行われ、カムフォロワ54が縦溝51に沿って下向きに移動する点でのみ相違する。そして、この状態でステアリングシャフト1が回転され、ロックボルト32に係合凹部2が一致すると、スプリング28の付勢力によって図2(A)に示すロック状態とすることができる。
次に、前記ロック作動およびアンロック作動に伴う回転ギア47と可動部材61との連動、および、可動部材61による磁気センサ68A〜68Cのオン、オフ動作について説明する。
図12(A)に示すように、カム溝42の下端にカムフォロワ54が位置するロック状態では、第1から第3の磁気センサ68A〜68Cの全てオン状態をなす。そして、マイコン69がアンロック作動させ、電動モータ45を正転駆動させて回転ギア47を反時計回りに回転させると、図12(B)に示すように、回転ギア47が遊びP分回動して、操作部53が可動部材61の受部64に当接する。この状態では、第1から第3の磁気センサ68A〜68Cは、全てオン状態を維持する。
ついで、回転ギア47が更に反時計回りに回転すると、操作部53が受部64を押圧することにより、可動部材61が回転ギア47に連動して反時計回りに回転する。そして、図12(C)に示すように、可動部材61に配設した磁石62の一端62aが第1の磁気センサ68Aを越えると、第1の磁気センサ68Aは磁気を検出できなくなるためオフ状態になる。なお、第2および第3の磁気センサ68B,68Cはオン状態を維持する。
ついで、可動部材61の連動に従って、図12(D)に示すように、続いて磁石62の一端62aが第2の磁気センサ68Bを越えると、第2の磁気センサ68Bは磁気を検出できなくなるためオフ状態になる。なお、他の第1の磁気センサ68Aはオフ状態を維持し、第3の磁気センサ68Cはオン状態を維持する。
ついで、可動部材61の連動に従って、図12(E)に示すように、続いて磁石62の一端62aが第3の磁気センサ68Cを越え、略同時に磁石62の他端62bが第1の磁気センサ68Aを越える。これにより、第3の磁気センサ68Cは磁気を検出できなくなるためオフ状態になり、第1の磁気センサ68Aは再び磁気を検出することによりオン状態になる。なお、他の第2の磁気センサ68Bはオフ状態を維持する。
そして、マイコン69は、この図12(E)の状態を磁気センサ68A〜68Cを介して検出することにより、カムフォロワ54がアンロック領域に至り、回転ギア47およびカム部材37を介してロックボルト32がアンロック状態になったと判断し、電動モータ45を停止させる。なお、回転ギア47および可動部材61は、惰性動作により、図12(F)に示すように回転する。なお、この状態では、第1の磁気センサ68Aはオン状態を維持し、第2および第3の磁気センサ68B,68Cはオフ状態を維持する。
一方、図12(F)と同一である図13(A)に示すアンロック状態で、マイコン69が電動モータ45を逆転駆動させ、回転ギア47を時計回りに回転させると、図13(B)に示すように、回転ギア47の操作部53と可動部材61の受部64の逆側に形成された遊びP分、回転ギア47が回動して、操作部53が受部64に当接する。この状態では、第1の磁気センサ68Aはオン状態を維持し、第2および第3の磁気センサ68B,68Cはオフ状態を維持する。
ついで、回転ギア47が更に時計回りに回転すると、操作部53が受部64を押圧することにより、可動部材61が回転ギア47に連動して時計回りに回転する。そして、図13(C)に示すように、可動部材61に配設した磁石62の他端62bが第1の磁気センサ68Aを越え、略同時に磁石62の一端62aが第3の磁気センサ68Cを越える。これにより、第1の磁気センサ68Aはオフ状態になり、第3の磁気センサ68Cはオン状態になる。なお、他の第2の磁気センサ68Bはオフ状態を維持する。
ついで、可動部材61の連動に従って、図13(D)に示すように、続いて磁石62の一端62aが第2の磁気センサ68Bを越えると、第2の磁気センサ68Bはオン状態になる。なお、他の第1の磁気センサ68Aはオフ状態を維持し、第3の磁気センサ68Cはオン状態を維持する。
ついで、可動部材61の連動に従って、図13(E)に示すように、続いて磁石62の一端62aが第1の磁気センサ68Aを越え、第1の磁気センサ68Aが再びオン状態になる。なお、他の第2および第3の磁気センサ68B,68Cはオン状態を維持する。
そして、マイコン69は、この図12(E)の状態を磁気センサ68A〜68Cを介して検出することにより、カムフォロワ54がロック領域に至り、回転ギア47およびカム部材37を介してロックボルト32がロック状態になったと判断し、電動モータ45を停止させる。なお、回転ギア47および可動部材61は、惰性動作により、図13(F)に示すように回転する。なお、この状態では、第1から第3の磁気センサ68A〜68Cは全てオン状態を維持する。
因みに、第1の磁気センサ68Aを除く他の磁気センサ68B,68Cのいずれかが故障した場合には、第1の磁気センサ68Aの検出に基づいて制御を継続することにより、安全性は十分に確保できる。一方、第1の磁気センサ68Aが故障した場合には、第3の磁気センサ68Cにより、ロックボルト32がアンロック領域まで後退しているか否かを判断できるとともに、第2の磁気センサ68Bにより、ロックボルト32の係合凸部33がステアリングシャフト1の係合凹部2内に進入しているか否かを判断できる。
本発明の電動ステアリングロック装置では、磁石62が固定された可動部材61を、磁気センサ68A〜68Cが配設された基板65に対して、ホルダー70によって所定間隔をもって作動可能に保持するため、ロックボルト32または伝達機構のガタツキに影響されることなく、磁気センサ68A〜68Cと磁石62との間隔を一定に保つことができる。その結果、可動部材61、回転ギア47およびカム部材37を介してロックボルト32の位置を検出する精度を向上することができる。また、可動部材61をリング状にして回転させるように構成したため、可動部材61の移動のスペースを小さくできる。その結果、電動ステアリングロック装置自体の小型化を図ることができる。
また、アンロック状態を検出する第2アンロック検出位置を第1アンロック検出位置に対してロック側に位置させているため、アンロック位置からロック位置の側に移動する場合の検出領域を広く設定できる。その結果、走行中の振動等によって回転ギア47または可動部材61が多少移動しても、位置検出手段によってアンロック状態から逸脱したと誤判断することはない。その結果、誤動作によって故障判定機能や警報機能が動作することを確実に防止できる。
しかも、本実施形態では、第1アンロック検出位置と第2アンロック検出位置との間に位置するように移動阻止手段として突部43を設けているため、走行中に振動が加わっても回転ギア47はアンロック位置に保持される。よって、一度、第1アンロック検出位置を通過することによりアンロック状態に切り替わった第1の磁気センサ68Aは、回転ギア47がアンロック領域にある状態では、アンロック領域から離脱した状態に切り替わることはない。そのため、センサ出力の信頼性を向上できる。
なお、本発明の電動ステアリングロック装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、可動部材の動作位置を検出するセンサとして磁石62の磁気を検出するものを適用したが、マイクロスイッチ等の物理的構造を検出する構成としてもよい。勿論、センサは3個に限られず、その個数は必要に応じて適宜選択でき、これらの検出に基づく制御については希望に応じて設計すればよい。
また、カム溝42を円柱状のカム部材37に設け、カムフォロワ54を回転ギア47の縦溝51に配設したが、カム溝を回転ギア47に設け、カムフォロワ54をカム部材37に相当するロックボルト32の円柱部に配設してもよい。
さらに、前記実施形態では、可動部材61を連動させる操作部53を回転ギア47に設けたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、直線的に動作するロックボルト32に操作部53を設けてもよい。この場合、可動部材61をロックボルト32に対向して直線的に動作可能に基板65などに配設する。そして、可動部材61には、前記遊びPの間隔を含んだ所定間隔を隔てて2つの受部64,64を設け、これら一対の受部64,64の間に前記ロックボルト32の操作部53を介在させる。これにより、前記実施形態と同様に、ロックボルト32の移動に対して所定の遅延時間をもって可動部材61が連動するように構成できる。