JP2008096103A - 鳥類等飛翔性動物の観測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鳥類等飛翔性動物の観測において、夜間や高高度域であっても観測可能であって、分解能が優れ、必要な場所に運搬して手軽に観測を行うことができる観測方法を提供する。
【解決手段】船舶用レーダー2の空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部21から発射されて飛翔性動物に当たって反射された電波を捕捉することにより、該飛翔性動物を観測する鳥類等飛翔性動物の観測方法。
【選択図】図1
【解決手段】船舶用レーダー2の空中線部21を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部21から発射されて飛翔性動物に当たって反射された電波を捕捉することにより、該飛翔性動物を観測する鳥類等飛翔性動物の観測方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、鳥類等飛翔性動物の観測方法に関する。
鳥類は、個体の生息や種の維持のため、巣やねぐらと採餌地との間を往来するばかりでなく、繁殖地と越冬地との間の長い距離を定期的に渡る等、飛翔行動に大きな生理生態的特徴を持つ。このため、環境アセスメント等において鳥類の生息保全を検討する際には、飛翔行動状況の把握が必要になるケースが多い。送電線等の高くて視認性が悪い構造物や発電用風車の設置、飛行場の建設等が、バードストライクを引き起こしたり、渡りを阻害したりすることがあり、そのような鳥類への影響の検討に際しては、事業計画空間と鳥類飛翔空間との重なりの有無や程度を確認することが求められるからである。
例えば飛行場の建設予定地周辺等の比較的狭い空間における鳥類の飛翔行動を観測する場合、従来は、測風経緯儀又はレーザー測遠システムによる観測が行われていた。測風経緯儀とは、目標の方位角及び鉛直角を2地点から同時に計測し、その交点を目標の位置として求めるものである。また、レーザー測遠システムは、1地点から目標にレーザー光を当て、目標の方位角、鉛直角、及び、斜距離を計測し、目標の位置を求めるものである。
一方、大陸間の渡りなど広範囲の鳥類の飛翔行動を研究するために、気象用ドップラーレーダーを用いて、レーダーから発射され鳥類に当たって跳ね返ってきた電波を捉えることにより、目視観察など通常の方法では到底把握することができない広い範囲や、夜間における鳥類の動きを観測する手法もある。
なお、気象用ドップラーレーダーを用いた渡り鳥調査手法について記載されたものに、下記非特許文献1がある。
植田 睦之、"レーダーを用いた渡り鳥調査手法開発調査(環境省委託調査)結果報告"、[online]、平成18年7月14日、NPO法人バードリサーチ、[平成18年8月21日検索]、インターネット〈URL:http://www.bird-research.jp/1_katsudo/rader/NewsVol3No7.pdf〉
植田 睦之、"レーダーを用いた渡り鳥調査手法開発調査(環境省委託調査)結果報告"、[online]、平成18年7月14日、NPO法人バードリサーチ、[平成18年8月21日検索]、インターネット〈URL:http://www.bird-research.jp/1_katsudo/rader/NewsVol3No7.pdf〉
しかし、測風経緯儀は、2地点からの視準線が交差した場合にのみ観測値が得られ、レーザー測遠システムは、目標である鳥にレーザー光が当たった場合にのみ観測値が得られることから、いずれも小型で早く飛んだり複雑な軌跡で飛ぶものの観測は困難で、観測できない個体が多数生じたり、鳥が見えない夜間や高高度域の観測はできないという問題があった。
また、気象用ドップラーレーダーは、観測範囲は広いものの狭い範囲の分解能が低く、大型で運搬が困難であるとともに非常に高価であるため、必要な場所で手軽に観測に用いることができないという問題もあった。上記非特許文献1に記載されている気象用ドップラーレーダー(ウィンドプロファイラ)も、大型の設置施設であり、任意の場所や範囲を手軽に観測することができないという問題があった。
この発明は、上述した問題を解決するものであり、鳥類等の飛翔性動物の観測において、夜間や高高度域であっても観測可能であって、分解能が優れ、必要な場所に運搬して手軽に観測を行うことができる観測方法を提供することを目的とする。
本発明の鳥類等飛翔性動物の観測方法は、船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部から発射されて飛翔性動物に当たって反射された電波を捕捉することにより、該飛翔性動物を観測することを特徴とする。
本発明の観測方法によれば、船舶用レーダーをその空中線部を鉛直面に沿って回転させて用いるので、夜間や高高度域であっても飛翔性動物を観測可能であって、分解能も優れている。また、船舶用レーダーは比較的小型で安価であるので、必要な場所に運搬して手軽に観測を行うことができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
観測装置1は、小型〜大型の鳥類、コウモリ類など、小型鳥類以上の表面積を持つ飛翔性動物を観測するためのものであり、図1に示すように、船舶用レーダー2と、GPS受信機4と、軌跡解析用プロッター5と、プリンター6と、録画装置7と、発電機8とを備えている。
一般に船舶用レーダーとは、衝突防止及び自船位置の測定のために船舶に設置され、他船、島、陸岸、航路標識等の物標を検出するためのパルスレーダーであり、電波法で規格が定められ、3GHz帯〜9GHz帯内の指定周波数帯の使用が認められている。本実施形態では、船舶用レーダー2として表1に示すものを用いる。
現在、我が国で運用されている主なレーダーの種類は表2の通りである。これらのうち、鳥類の反射が映ると言われているものは、船舶用レーダー、航空管制用レーダー、気象用レーダー、軍事用警戒捜査レーダーであるが、民生用の船舶用レーダー以外はいずれも大型据置の特注機器で移動不可能であり、免許等の問題からも鳥類観測に使用することは不可能である。また、我が国における鳥類飛翔高度の観測最高値は約1200mであることから、探査距離が100〜200mである小型のミリ波レーダーは、鳥類観測には適さない。
GPS受信機4は、受信したGPS衛星からの信号に基づいて自機位置の経度緯度を演算し、その情報を軌跡解析用プロッター5に出力するものである。本実施形態では、古野電気株式会社製GP−36を用いる。
軌跡解析用プロッター5は、船舶用レーダー2から入力された情報と、GPS受信機4から入力された情報とに基づいて、捕捉された飛翔性動物等の位置の緯度経度を演算・表示するとともに、その軌跡を判りやすく表示部に表示するものである。本実施形態では、古野電気株式会社製GD−280を用いる。
プリンター6は、指示部22の表示部22aの画像や、プロッター5の表示部の画像を印刷するためのカラープリンターである。
録画装置7は、指示部22の表示部22aの画像や、プロッター5の表示部の画像を録画するための録画用VTRである。
発電機8は、上記の各機器の電源となるものである。
また、観測装置1は、図2に示すように、空中線部21を鉛直面に沿うように支持する空中線部架台9を備えている。
次に、本実施形態の観測方法について説明する。本実施形態の観測方法では、観測装置1の船舶用レーダー2を、観測対象範囲やその近傍に設置して行う。通常、船舶用レーダー2は、空中線部21を水平面に沿って回転させ、船舶用レーダー2から物標までの距離と方位角を計測し、物標の平面的な位置を観測する。しかし、本実施形態の観測方法では、空中線部21を、空中線架台9に支持させて、水平面に対して垂直になるように立ててから、図2の一点鎖線矢印に示すように回転させる。すなわち、空中線部21を鉛直面に沿って回転させる。
すると、元々空中線部21は、水平面に沿って回転させたときに、空中線部21の上下に10°ずつのビーム幅を有するが、空中線部21を鉛直面に沿って回転させることにより、図3(a)に示すように、空中線部21の長手方向に沿って空中線部21を通る鉛直面(図3中一点鎖線で示す。以下、「ビーム中心断面」と言う。)を挟んで10°ずつのビーム幅を有することとなる。すなわち、船舶用レーダー2は、図3(b)に示すように、ビーム中心断面を中心に20°のビーム幅で電波を発射することにより、図2に示すように、空中線部21の設置地点を中心とする一定幅の探査断面を空域に連続的に作り出し、その断面内を飛翔する鳥類等からの反射波を受信して、指示部22に表示する。
指示部22の表示部22aの画面上では、画面内に設けられている測距バーニャにより空中線部21から物標までの水平距離や垂直距離(すなわち、飛翔高度)を計測することにより、物標がビーム中心断面を横切る際の空間位置や、ビーム中心断面に沿って飛ぶ際の飛翔高度変化を観測することができる。
以上の観測方法を用いて観測を行った結果、小型鳥類の反応範囲が約2000mであることが確認された。これは、可視範囲を大きく超えるばかりでなく、現在の我が国における鳥類飛翔高度の観測最高値である1200mを大幅に上回っており、鳥類の飛翔高度観測のためには十分な観測範囲を持つことが分かる。
なお、計測誤差は、観測高度100m、観測角度45°の場合、±4.2mと計算され、十分実用的な精度を持つ観測が可能である。以下に、誤差理論値の計算方法を示す。ここで、水平ビーム幅とは、ビーム中心断面に沿った方向のビーム幅を言い、垂直ビーム幅とは、ビーム中心断面に直交する方向のビーム幅を言う(図3参照)。また、観測角度とは、空中線部21の水平方向からの傾きの角度を言う。
(1)水平ビーム幅(4.8°)により生じる誤差
空中線部中心からある物体までの高さhを測定した場合、どの範囲の反射が映るかから、誤差を算出すると、誤差=h−(h×cos4.8°)であるから、h=100mの場合、100−100×0.996=0.4であり、誤差は±0.4mとなる。
空中線部中心からある物体までの高さhを測定した場合、どの範囲の反射が映るかから、誤差を算出すると、誤差=h−(h×cos4.8°)であるから、h=100mの場合、100−100×0.996=0.4であり、誤差は±0.4mとなる。
(2)垂直ビーム幅(20°)により生じる誤差
(1)と同様の考え方で算出すると、誤差=h−(h×cos20°)であるから、h=100mの場合、100−100×0.940=6.0であり、誤差は±6.0mとなる。つまり、水平ビーム幅による誤差より、垂直ビーム幅による誤差の方が大きいので、水平ビーム幅による誤差は、垂直ビーム幅による誤差に吸収される。
(1)と同様の考え方で算出すると、誤差=h−(h×cos20°)であるから、h=100mの場合、100−100×0.940=6.0であり、誤差は±6.0mとなる。つまり、水平ビーム幅による誤差より、垂直ビーム幅による誤差の方が大きいので、水平ビーム幅による誤差は、垂直ビーム幅による誤差に吸収される。
(3)観測角度(45°)による誤差
真上を100%とすると、sinθ=%なので、45°の観測角度の場合は70.7%となり、100mの高さでは、±6.0m×0.707=±4.2mとなり、誤差は±4.2mと算出される。
真上を100%とすると、sinθ=%なので、45°の観測角度の場合は70.7%となり、100mの高さでは、±6.0m×0.707=±4.2mとなり、誤差は±4.2mと算出される。
以下に、具体的な観測結果を示す。
〈観測1〉秋季のサシバ等タカ類の渡りの観測
タカ類が海上へ飛び出す直前に経由する岬に、観測装置1を設置し、5日間の観測を行った。空中線部21の回転方向は、空中線部21のビーム中心断面が渡り経路に略平行になるように設定した。図4、図5に、プロッター5の画面のハードコピー例を示す。なお、図中、緑色の筋状に表れているものが鳥類の飛翔軌跡であり、その軌跡中に赤い点状に表れているものが現在の鳥類の位置を示す。図4では、サシバ4羽の飛翔軌跡とツバメの飛翔軌跡が示され、図5では、サシバ36羽の飛翔軌跡が示されている。なお、プロッター5や指示部22の画面(画像)を録画装置7に録画しておくことにより、レーダー2で捕捉された鳥類の個体数や飛翔高度を後で調べることができる。
タカ類が海上へ飛び出す直前に経由する岬に、観測装置1を設置し、5日間の観測を行った。空中線部21の回転方向は、空中線部21のビーム中心断面が渡り経路に略平行になるように設定した。図4、図5に、プロッター5の画面のハードコピー例を示す。なお、図中、緑色の筋状に表れているものが鳥類の飛翔軌跡であり、その軌跡中に赤い点状に表れているものが現在の鳥類の位置を示す。図4では、サシバ4羽の飛翔軌跡とツバメの飛翔軌跡が示され、図5では、サシバ36羽の飛翔軌跡が示されている。なお、プロッター5や指示部22の画面(画像)を録画装置7に録画しておくことにより、レーダー2で捕捉された鳥類の個体数や飛翔高度を後で調べることができる。
この観測の結果、目視観察で確認された5日間の合計渡り数288羽のうち、238羽(82.6%)の飛翔高度を観測できた。なお、観測できなかった50羽は、すべてレーダーのビーム外を飛翔したものであった。
観測された飛翔高度の経時変化を10分毎の積算日射量変化と共に示したものが、図6である。図6の上から順に1日目、2日目、…を示す。この図から、両者には相関が見られることが分かる。日射量は上昇気流の発生指標となり、日射量が多いほど強い上昇気流が発生すると言われている。すなわち、タカ類の渡り高度は、上昇気流の影響を受けていることが把握できた。かかる成果は、本観測方法が、飛翔高度の全体像を把握できる技術であることを証明するのみならず、行動生態特性の解析につながる観測技術であることを実証している。
〈観測2〉秋季夜間の小鳥類の渡り
ある半島中央部の樹林帯づたいに飛ぶ可能性がある渡り鳥を観測するため、樹林帯に挟まれた平地上に、観測装置1を設置し、2日間の観測を行った。両日の天候は、1日目が晴れ、風向南西、風速0〜2m/sの弱風であり、2日目が晴れ、風向北西、風速4〜6m/sの強風であった。空中線部21の回転方向は、渡り経路が空中線部21のビーム中心断面に略直交するように設定した。図7、図8に、指示部22の画面のハードコピー例を示す。なお、図中に映っている鳥類の位置に、十字形で印を付けている。図7では、不明種1羽が高度518mで飛翔していること、図8では、不明種1羽が高度412mで飛翔していることが分かる。
ある半島中央部の樹林帯づたいに飛ぶ可能性がある渡り鳥を観測するため、樹林帯に挟まれた平地上に、観測装置1を設置し、2日間の観測を行った。両日の天候は、1日目が晴れ、風向南西、風速0〜2m/sの弱風であり、2日目が晴れ、風向北西、風速4〜6m/sの強風であった。空中線部21の回転方向は、渡り経路が空中線部21のビーム中心断面に略直交するように設定した。図7、図8に、指示部22の画面のハードコピー例を示す。なお、図中に映っている鳥類の位置に、十字形で印を付けている。図7では、不明種1羽が高度518mで飛翔していること、図8では、不明種1羽が高度412mで飛翔していることが分かる。
この観測の結果を表3に示す。目視と鳴き声による観察では、1日目31羽以上、2日目1羽の通過を確認した。これに対し、観測装置1による観測では、1日目43羽以上、2日目25羽以上の通過を確認した。
図9は、観測された飛翔高度と周囲の地形を図示したものである。この図から分かるように、この観測では、両日とも大きな渡り群の反応は見られず、夜間の渡りは少数であること、また、農地上空に比べ樹林上空の飛翔数が多いことなどが把握できた。
以上のように、本観測方法によれば、夜間や高高度域であっても観測可能であって、個体数も把握できるなど分解能が優れている。また、船舶用レーダー2は比較的小型で安価であるので、必要な場所に運搬して手軽に観測を行うことができる。
表4に、各観測方法の比較評価を示す。上述したように、測風経緯儀やレーザー測遠システムによる観測では、観測できない個体が多数生じるという欠点がある。また、鳥に発信機を装着して行動を観測するラジオテレメトリーや衛星テレメトリーも、広い範囲での観測が可能であるが、装着分の観測データしか得られないという欠点がある。これらに比べ、本観測方法は、最大約2kmに及ぶレーダー2の観測範囲内を通過する略全数の観測が可能であり、姿が大きいか小さいか、位置が遠い(高い)か近い(低い)か、個体数が単数か複数か、速度が速いか遅いかの別なく観測できることから、観測期間中の飛翔高度等の全容を観測することが可能である。
1…観測装置
2…船舶用レーダー
21…空中線部
2…船舶用レーダー
21…空中線部
Claims (1)
- 船舶用レーダーの空中線部を鉛直面に沿って回転させ、該空中線部から発射されて飛翔性動物に当たって反射された電波を捕捉することにより、該飛翔性動物を観測することを特徴とする鳥類等飛翔性動物の観測方法。
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JP2006274240A JP2008096103A (ja) | 2006-10-05 | 2006-10-05 | 鳥類等飛翔性動物の観測方法 |
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2006
- 2006-10-05 JP JP2006274240A patent/JP2008096103A/ja active Pending
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