JP2008095903A - テクスチャを有するすべり軸受とその性能予測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固定部材1とこれと隙間を隔てて摺動する運動部材2とからなり、その間に流体潤滑膜を形成させて、運動部材に固定部材に向けて作用する力を支承するテクスチャを有するすべり軸受。固定部材1と運動部材2のいずれか一方又は両方に、複数のディンプル3からなるテクスチャを有する。ディンプルの摺動方向間隔はディンプルの摺動方向長さの2倍よりも大きく設定されている。
【選択図】図8
Description
また、図16に模式的に示す矩形(A)又は円形(B)の窪み(又は凹み)を設ける場合もある。
すべり軸受において、荷重が大きくなると隙間は狭くなり、過大な荷重が作用すると運動部材と固定部材が直接接触し、摩耗や焼付きなどの不具合が発生する。
しかし、従来の研究報告のほとんどは、試行錯誤によっており、テクスチャを有する表面(以下、テクスチャ表面と呼ぶ)の特性をどのように設計し、テクスチャ表面をどのような条件で適用すべきか等は、明らかでなく、そのためテクスチャ表面の最適設計を可能にするモデルの確立が強く要望されていた。
前記テクスチャは、前記固定部材と運動部材のいずれか一方又は両方に設けられた複数のディンプルであり、該ディンプルの摺動方向間隔がディンプルの摺動方向長さの2倍よりも大きく設定されている、ことを特徴とするテクスチャを有するすべり軸受が提供される。
前記複数のディンプルは、間隔を隔てて配置されたディンプル群であり、該ディンプル群は、固定部材及び/又は運動部材の摺動方向に一定の周期で設けられた上流側ディンプル群と下流側ディンプル群とからなり、
さらに前記上流側ディンプル群と下流側ディンプル群の間にディンプルのない無ディンプル領域を有し、
該無ディンプル領域は、前記摺動方向に各ディンプル群のディンプル間隔の2倍より長く、かつ摺動方向に直交する幅方向全体にわたり設けられる。
前記ディンプル群は、前記固定部材の上面のみに設けられる。
前記固定部材と運動部材のいずれか一方又は両方に、複数のディンプルが間隔を隔てて配置されたディンプル群からなるテクスチャを設定し、
運動部材と固定部材の間の潤滑膜に発生する圧力分布をレイノルズ方程式に基づいて求め、これから、平均潤滑膜圧力と摩擦係数を求める、ことを特徴とするすべり軸受の性能予測方法が提供される。
特に、上流側ディンプル群と下流側ディンプル群の間に無ディンプル領域を設けることにより、下流側ディンプル群で潤滑膜圧力の高い主圧力を発生させ、上流側ディンプル群でこの圧力発生を助長し、より大きな圧力を発生させることができることが、後述する解析結果から確認された。
一般的に、多くの同一形状のディンプルが、摺動面の一方に均等に分散配置される。摺動面の間には潤滑油で満たされた隙間がある。2つの面が水平方向にある摺動速度で相対的に移動するとき、流体力学的効果により、各ディンプルの凹み領域で部分的に油圧が上昇する。それゆえ、各ディンプルは微細なスラストベアリングとして機能する。各部分の圧力とせん断応力の分布は、ディンプル形状、隙間、ディンプル密度、油の粘度、摺動速度、ディンプルの境界条件(隣接するディンプルとの相互作用を反映する)、等によって決まる。
単一ディンプルモデルにおいて、レイノルズ方程式は、一般的に数1の式(1)で現すことができる。
この図に示すように、この発明では、(a)RA:円形孔、(b)SA:矩形孔、(c)ED:楕円ディンプル、(d)SD:球面ディンプル、(e)SG:矩形溝、(f)EG:楕円溝、(g)CG:円形溝、(h)IG:傾斜溝の8種のディンプル形状を解析した。
この図から、ディンプル深さhmが平均3〜4μmの範囲で、最大平均圧力が存在することがわかる。RAとSAのディンプル形状は、ほとんど同じ平均圧力であり、これらはEDとSDのディンプル形状の平均圧力より高い。溝型形状は同様の平均圧力Pavとディンプル深さhmの関係曲線を示すが、ピーク値の位置がわずかに異なる。
マルチディンプル軸受の問題を解決するために、効率的な計算方法を見つける必要がある。なぜなら、計算時間はグリッド数により指数関数的に増大するからである。ここで、我々は領域分割法(domain decomposition method:DDM)を導入した。この方法は、20数年前に大規模微分方程式を解くために開発されたものである。
単一ディンプルモデルの結果と比較すると、平均圧力ははるかに高い。しかし、単一ディンプルモデルの結果と同様に、各曲線に最大値があり、最大圧力に相当するディンプル深さは、2〜4μmの範囲であり、単一ディンプルモデルの結果とほとんど同じであった。
この例において、隙間h0は3μm、摺動速度u=1m/s、下方の板が固定部材であり、固定部材がSD型ディンプル3のテクスチャを有する。固定部材と運動部材の大きさは2mm×2mmであり、10×10=100個のディンプルを有する。各ディンプルのセル寸法は200μm×200μm、ディンプルの直径は143μm、固定部材と運動部材の面粗さは0.1μm、油粘度ηは0.08Pa.sとした。SD型ディンプルの各ディンプルの間隔は、移動方向およびこれに直交する幅方向にそれぞれ200μmの一定間隔を隔てる。
解析方法は、図4と同じである。得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは2.51kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは5.88kg/cm2,摩擦係数fは0.0793であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは2.93kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは7.15kg/cm2,摩擦係数fは0.0781であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは2.62kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは6.78kg/cm2,摩擦係数fは0.0876であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは2.91kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは8.46kg/cm2,摩擦係数fは0.063であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは3.45kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは7.18kg/cm2,摩擦係数fは0.0661であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは3.67kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは10.86kg/cm2,摩擦係数fは0.0607であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは4.30kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは13.58kg/cm2,摩擦係数fは0.0517であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは3.80kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは13.66kg/cm2,摩擦係数fは0.0552であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは4.47kg/cm2, 最大潤滑膜圧力Pmaxは13.76kg/cm2,摩擦係数fは0.0498であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは3.61kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは13.55kg/cm2,摩擦係数fは0.0620であった。
同一の解析方法で得られた圧力分布(右図)から、平均潤滑膜圧力Pavは3.64kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは13.27kg/cm2,摩擦係数fは0.0613であった。
特に、図8、図9から、固定部材と運動部材は、互いにほぼ一定の間隔で平行に位置する場合に、ディンプル群4が、固定部材の摺動方向に一定の周期で設けられその間にディンプルのない無ディンプル領域5を有する上流側ディンプル群4aと下流側ディンプル群4bとからなり、かつ無ディンプル領域5は、運動部材の摺動方向に各ディンプル群のディンプルの間隔の2倍より長く、かつ摺動方向に直交する幅方向全体を含む場合(図8、図9)には、平均潤滑膜圧力を高く(この例で3.61〜4.47kg/cm2)、摩擦係数を低く(この例で0.0498〜0.0620)できることが確認された。
解析方法は、図4と同じである。得られた圧力分布(右図)から、図10(0)の場合、平均潤滑膜圧力Pavは9.94kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは20.35kg/cm2であり、図10(1)の場合、平均潤滑膜圧力Pavは8.43kg/cm2,最大潤滑膜圧力Pmaxは17.93kg/cm2であった。
解析方法は、図4と同じである。得られた圧力分布(右図)から、(a)〜(e)に対して、平均潤滑膜圧力Pavは順に9.63,9.36,9.09,8.83,8.65kg/cm2であり、摩擦係数は順に0.0117,0.0119,0.0124,0.0128,0.0131であった。
解析方法は、図4と同じである。得られた圧力分布(右図)から、(A)〜(E)に対して、平均潤滑膜圧力Pavは順に11.68,12.79,12.98,12.07,11.92kg/cm2であり、摩擦係数は順に0.0090,0.0077,0.0071,0.0072,0.0078であった。
解析方法は、図4と同じである。得られた圧力分布(右図)から、(F)〜(I)に対して、平均潤滑膜圧力Pavは順に11.78,10.41,10.03,9.61kg/cm2であり、摩擦係数は順に0.0084,0.0090,0.0088,0.0096であった。
上述した図10〜図13の比較及び図14から、固定部材が、摺動方向に一定の周期で設けられ運動部材との隙間の小さい上面と運動部材との隙間の大きい底面とからなり、ディンプル群(すなわちテクスチャ)が、固定部材の上面のみに設けられる場合には、テクスチャなし(0)、両面にテクスチャ(1)、底面にテクスチャ(a〜e)の場合に比較して、上面のみにテクスチャの場合(A〜I)では、明らかに高い平均潤滑膜圧力が得られることがわかる。
さらに本発明では、この解析方法(流体潤滑解析)をベアリング全面に多数の規則正しいディンプルがある場合に拡張した。また、微細なテクスチャパターン構造により膨大な演算時間となる問題を克服するために領域分割法を用いた。
さらに、流体負荷容量と流体膜の摩擦係数に対するテクスチャパターンの影響を数値解析結果に基づき検討した。
また、潤滑膜の圧力発生はレイノルズ方程式(式(1))に支配されるが、数値解析により、さまざまなテクスチャパターンと潤滑膜に発生する平均圧力の関係を求めた。(図6〜図10)
その結果、テクスチャの分布としては,主たる圧力を発生させるために下流側、およびこの圧力発生を助長するために上流側に設けるとより、図8(E)に示すように、特に効果的に大きな圧力を発生させることができることを確認した。
また、ステップ型スラスト軸受の場合、図12、図13に示すように、隙間が広い上流側の底面にはテクスチャを設けず、隙間が狭い下流側の上面にテクスチャを設けることにより、テクスチャがないときよりもより大きな潤滑膜圧力を発生させることができることを確認した。
以上のようなテクスチャの形成により、固定部材と運動部材の間の潤滑膜に圧力が発生し、両部材の接触に伴う摩耗・焼付きを回避することができる。
(1)本発明が対象とするテクスチャを有するすべり軸受は、潤滑剤(油,その他の液体,空気,その他の気体など)を介してお互いに相対する運動部材,固定部材から構成される。固定部材の表面にはテクスチャが形成されている。テクスチャの形状は円形,矩形だけでなく,溝型でもよい。
(2)運動部材のすべり運動により潤滑剤が部材間に引き込まれ,テクスチャにより形成された凹凸の作用で潤滑剤に圧力が生じる.この圧力により,運動部材に作用する荷重を支えることが可能になる。
(3)運動部材,または固定部材と運動部材の両方にテクスチャを形成させても同等な効果が期待できる。
1a 上面、1b 底面、
2 運動部材、
3 ディンプル
4 ディンプル群、
4a 上流側ディンプル群、4b 下流側ディンプル群、
5 無ディンプル領域
Claims (4)
- 固定部材とこれと隙間を隔てて摺動する運動部材とからなり、その間に流体潤滑膜を形成させて、運動部材から固定部材に向けて作用する力を支承するテクスチャを有するすべり軸受であって、
前記テクスチャは、前記固定部材と運動部材のいずれか一方又は両方に設けられた複数のディンプルであり、該ディンプルの摺動方向間隔がディンプルの摺動方向長さの2倍よりも大きく設定されている、ことを特徴とするテクスチャを有するすべり軸受。 - 前記固定部材と運動部材は、互いにほぼ一定の間隔で平行に位置し、
前記複数のディンプルは、間隔を隔てて配置されたディンプル群であり、該ディンプル群は、固定部材及び/又は運動部材の摺動方向に一定の周期で設けられた上流側ディンプル群と下流側ディンプル群とからなり、
さらに前記上流側ディンプル群と下流側ディンプル群の間にディンプルのない無ディンプル領域を有し、
該無ディンプル領域は、前記摺動方向に各ディンプル群のディンプル間隔の2倍より長く、かつ摺動方向に直交する幅方向全体にわたり設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のテクスチャを有するすべり軸受。 - 前記固定部材は、摺動方向に一定の周期で設けられ運動部材との隙間の小さい上面と運動部材との隙間の大きい底面とを有し、
前記ディンプル群は、前記固定部材の上面のみに設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のテクスチャを有するすべり軸受。 - 固定部材とこれと隙間を隔てて摺動する運動部材とからなり、その間に流体潤滑膜を形成させて、運動部材から固定部材に向けて作用する力を支承するテクスチャを有するすべり軸受の性能予測方法であって、
前記固定部材と運動部材のいずれか一方又は両方に、複数のディンプルが間隔を隔てて配置されたディンプル群からなるテクスチャを設定し、
運動部材と固定部材の間の潤滑膜に発生する圧力分布をレイノルズ方程式に基づいて求め、これから、平均潤滑膜圧力と摩擦係数を求める、ことを特徴とするすべり軸受の性能予測方法。
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