JP2001289248A - すべり軸受およびその製造方法 - Google Patents

すべり軸受およびその製造方法

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JP2001289248A
JP2001289248A JP2000106682A JP2000106682A JP2001289248A JP 2001289248 A JP2001289248 A JP 2001289248A JP 2000106682 A JP2000106682 A JP 2000106682A JP 2000106682 A JP2000106682 A JP 2000106682A JP 2001289248 A JP2001289248 A JP 2001289248A
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particles
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Naoto Mizuno
野 直 人 水
Yoshio Okada
田 義 夫 岡
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Nissan Motor Co Ltd
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐荷重性能と耐焼付性、異物埋収性などすべ
り軸受として必要な摺動性能を従来にない高い水準で満
足させ、しかも低コストなすべり軸受と、このようなす
べり軸受の製造方法を提供する。 【解決手段】 AlまたはCu系合金からなる軸受合金
の摺動面における最大荷重負荷部分に硬化処理を施すと
共に、所定サイズのディンプル状油溜りを形成する一
方、比較的荷重が低く、異物埋収性が必要な部分、すな
わち最大荷重負荷方向に対して円周方向に20°から7
0°までの範囲の摺動面には、少なくともその一部に硬
化処理を施すことなく異物埋収性を維持させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車や工
作機械、農業機械などの各種機械装置の構造部品として
使用されるすべり軸受およびその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来より、エンジンの
出力向上や燃費低減、機械装置のコンパクト化などへの
ニーズに対し、すべり軸受の高面圧化が検討されてき
た。
【0003】これまでの高面圧対応すべり軸受として
は、高強度Cu軸受合金にPb合金オーバレイめっきを
付加した高強度ケルメットや、スパッタリング法により
硬質表面層を形成させたものなどが実用化されている。
【0004】また、例えば特開平5−99228号公報
に開示されているように、油溜りとなるディンプルや油
溝の付与により耐焼付性や馴染み性を向上させる取り組
みが数多くあると共に、特開平8−105448号公報
に開示されているように、比較的軟質な軸受合金の上に
スチールグリッドを投射し、軸受の強度を向上させる取
り組みなども見られる。
【0005】しかしながら、上記高強度ケルメットに関
しては、近年、環境負荷物質の使用量低減の観点からP
bの使用が規制される動きとなってきていることから、
馴染み性や耐焼付性確保のためのPb基オーバレイめっ
きを必要とする現在の構成のケルメット軸受の拡大採用
については、今後は困難な状況となっている。
【0006】また、スパッタリング法を適用したすべり
軸受については、表面の硬度や耐摩耗性は向上するもの
の、馴染み性や異物埋収性に劣るばかりでなく、コスト
が高いという問題もあることから用途が限定されるもの
であった。
【0007】さらに、ディンプル状の油溜りや油溝の付
与については、軸受表面の油保特性を高め、耐焼付性や
馴染み性を補助する機能を有するが、高面圧下での使用
に対応するための軸受の疲労強度向上という観点におい
ては、これだけでは不十分であった。
【0008】そして、軸受合金へのスチールグリッドの
投射に関しては、合金の耐摩耗性は向上するものの、馴
染み性や異物埋収性への跳ね返りを考慮すると十分な表
面強化が困難であること、また、非鉄合金軸受へのスチ
ール粒の埋設は、耐焼付性に悪影響を与える場合があ
り、結果として高面圧下で安定して使用できるすべり軸
受を得るのは困難であった。
【0009】
【発明の目的】本発明は、従来のすべり軸受における上
記課題に鑑みてなされたものであって、環境にも配慮
し、耐荷重性能と耐焼付性、異物埋収性などすべり軸受
として必要な摺動性能を従来にない高い水準で満足さ
せ、しかも低コストなすべり軸受と、このようなすべり
軸受の製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係わ
るすべり軸受は、Al系合金またはCu系合金からなる
軸受合金が裏金上に直接あるいは中間層を介して積層さ
れてなる円弧形状あるいは円筒形状のすべり軸受であっ
て、軸受合金の表面およびその内部方向深さ100μm
未満の範囲のみが表面硬化処理によって軸受合金内部よ
りも10Hv以上硬化していると共に、当該硬化部表面
に深さ1〜20μmのディンプル状油溜りが形成され、
さらに軸受の最大荷重負荷方向に対し円周方向に20°
から70°までの範囲の摺動面の少なくとも一部に表面
硬化処理を施さない非硬化部が設けてある構成としたこ
とを特徴としており、すべり軸受におけるこのような構
成を前述した従来の課題を解決するための手段としてい
る。
【0011】本発明に係わるすべり軸受における実施の
一形態として、請求項2に係わるすべり軸受において
は、摺動面上に、軸受合金よりも軟質なコーティング層
が2〜50μmの厚さに直接あるいは中間層を介して形
成されている構成とし、請求項3に係わるすべり軸受に
おいては、この軟質コーティング層がSnまたはSn合
金、InまたはIn合金、固体潤滑剤をふくむ樹脂複合
材のいずれかからなる構成、請求項4に係わるすべり軸
受においては、前記軟質コーティング層がSnまたはS
n合金、InまたはIn合金のいずれかからなる母相に
固体潤滑剤を分散させた複合めっき層である構成とした
ことを特徴としている。
【0012】また、本発明の請求項5に係わるすべり軸
受の製造方法は、上記すべり軸受けのための製造方法で
あって、軸受合金に対して粒径100μm以下の非鉄粒
子を50m/s以上の速度で投射することによって表面
硬化処理を施し、同時にディンプル状油溜りを形成する
構成とし、すべり軸受の製造方法におけるこのような構
成を上記従来の課題を解決するための手段としたことを
特徴としている。
【0013】本発明に係わるすべり軸受の製造方法実施
の一形態として、請求項6に係わる製造方法において
は、前記非鉄粒子が酸化物,炭化物,窒化物,硫化物,
Sn,Sn合金,In,In合金のいずれか1種または
2種以上からなるものである構成とし、請求項7に係わ
るすべり軸受の製造方法においては、軸受合金に投射し
た粒子を被投射面に付着もしくは埋設させて軸受合金表
面の少なくとも一部を形成する構成としたことを特徴と
している。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係わるすべり軸受におい
ては、軸受合金に表面硬化処理を施すようにしているの
で、高面圧下での摺動における軸受合金へのクラック発
生・進展に伴う疲労剥離が効果的に抑制されることにな
る。しかし、硬さの上昇幅が10Hvに満たない程度の
硬化処理では、剥離防止による十分な寿命改善効果を得
ることができない。さらに、表面からの硬化深さを10
0μm未満の範囲に限定しているので、内部は軸受合金
の本来有する柔軟性が維持され、軸の片当たりが生じた
場合でも局所的な面圧上昇を抑制して寿命が向上するほ
か、裏金や中間層との積層界面の密着性も変化せず、安
定して長期間使用に耐えるすべり軸受となる。
【0015】さらに、硬化部表面にディンプル形状の油
溜りを付与していることから、摺動中の油膜切れを防止
し、高水準の耐焼付性能が維持されることになるが、こ
のディンプル深さが1μm未満では十分な保油特性が得
られず、逆に20μmを超えると供給油量が少ない場合
などにディンプルのエッジ部において金属接触を生じや
すくなる。
【0016】そして、本発明に係わるすべり軸受におい
ては、ディンプル状油溜りを伴う表面硬化処理の処理範
囲について、軸受の最大荷重負荷方向に対し円周方向に
20°から70°までの方向の少なくとも一部に硬化処
理を施さない非処理部を設けているので、優れた異物埋
収性能が得られる。これは、次のような理由によるもの
である。
【0017】すなわち、表面を強化したすべり軸受にお
いては、スパッタリング法に関して述べたように、強度
や耐摩耗性などの向上のはねかえりとして、特に異物埋
収性の低下が問題となる。これまでの単体評価や実機試
験における供試品の調査によれば、すべり軸受摺動面に
混入してくる異物は、最大荷重負荷部にはほとんど埋収
されず、最大荷重負荷部から円周方向に20°から70
°までの範囲にその大半が埋収されることがわかってき
ている。これは、摺動中の軸と軸受との相対位置関係に
起因するものと考えられ、言い換えれば、最大荷重負荷
部には高荷重に耐え得る強度や油膜保持性能は要求され
るが、異物埋収性能はさほど必要ではなく、異物がより
多く埋収される部位にのみ異物埋収性を付与すれば必要
な特性が得られることになる。本発明のすべり軸受は、
この点に着目し、最大荷重負荷部分は硬化処理によって
積極的に強化すると共に、油溜りとなる適切なサイズの
ディンプルを形成することで油膜切れを防止する一方、
比較的荷重が低く、異物埋収性が要求される部位には硬
化処理を施さない代わりに異物埋収性を維持する構成と
したものである。
【0018】本発明に係わるすべり軸受においては、上
記の構成とすることにより、通常は十分な馴染み性や異
物埋収性が確保されるが、異物がとくに発生しやすい環
境での使用など、条件によっては、請求項2に記載して
いるように、請求項1に記載のすべり軸受の摺動面上
に、軸受合金よりも軟質なコーティング層を2〜50μ
mの厚さに直接、あるいは必要に応じて中間層を介して
設けることができ、これによって、より一層安定した初
期馴染み性、異物埋収性能が確保されることになる。
【0019】さらに、本発明に係わるすべり軸受におい
ては、請求項3あるいは請求項4に記載しているよう
に、上記軟質コーティング層がSnまたはSn合金、I
nまたはIn合金、固体潤滑剤をふくむ樹脂複合材のい
ずれか、SnまたはSn合金、InまたはIn合金のい
ずれかからなる母相に固体潤滑剤を分散させた複合めっ
き層からなるものとすることができ、このような潤滑性
に優れた材料でコーティング層を構成することによっ
て、摺動時の摩擦損失が一層低減し、耐焼付性にもより
優れた軸受が得られることになる。
【0020】なお、本発明の請求範囲には含まれないこ
とになるが、このようなコーティング層を設ける場合に
限っては、表面硬化処理に際して、異物埋収のための非
硬化部を設けず、軸受合金の摺動面全面に硬化処理を施
して使用することも状況によっては可能と考えられる。
ただし、コーティング層が摩耗したのちの軸受性能につ
いては、本発明のすべり軸受に劣るものとなることが予
測される。
【0021】本発明に係わるすべり軸受を製造するに際
しては、請求項5に記載しているように、粒径100μ
m以下の非鉄粒子を軸受合金に対して50m/s以上の
速度で投射するようになすことができる。これによっ
て、表面硬化処理とディンプル状油溜りの形成とが一度
の処理で行われ、本発明に係わるすべり軸受の製造が極
めて容易なものとなる。このとき、投射粒子径が100
μmを超えると、微細で均一な形状のディンプルを得る
ことが困難となり、粒径がこの範囲の投射粒子を用いた
場合、投射速度が50m/s未満では、軸受合金表面に
十分な強化硬化を与えることができない。また、投射粒
子として非鉄粒子を選択するのは、非鉄軸受合金、特に
Al系軸受合金に鉄系の粒子を投射し、これが摺動面に
残存した場合には、異物として相手軸材との摺動特性に
害を及ぼす例があることを考慮したものである。
【0022】そして、このような投射用の非鉄粒子とし
ては、請求項6に記載されているように、酸化物,炭化
物,窒化物,硫化物,Sn,Sn合金,In,In合金
のいずれか1種または2種以上からなる粒子を用いるこ
とができる。
【0023】さらに、本発明に係わるすべり軸受の製造
方法においては、請求項7に記載しているように、軸受
合金に投射した粒子を被投射面に付着もしくは埋設させ
て軸受合金表面の少なくとも一部を形成することがで
き、これによって、目的に応じて必要な処理後硬さ、デ
ィンプル形状、および耐焼付性,耐摩耗性などの摺動特
性の選択が自由なものとなる。
【0024】
【発明の効果】本発明の請求項1に係わるすべり軸受
は、上記構成、すなわちその最大荷重負荷部分を硬化処
理すると共に、所定サイズのディンプル状油溜りを形成
する一方、比較的荷重が低くて異物埋収性が必要な部分
には硬化処理を施さずに異物埋収性を維持させる構造の
ものであるから、環境負荷にも配慮した上で、従来にな
い高い水準で強度や耐摩耗性、耐焼付性、異物埋収性な
ど、要求される摺動性能をことごとく満足するすべり軸
受を低コストで得ることができるという極めて優れた効
果をもたらすものである。
【0025】本発明の請求項2に係わるすべり軸受にお
いては、軸受合金よりも軟質なコーティング層が2〜5
0μmの厚さに摺動面上に直接あるいは中間層を介して
設けてあるので、より一層安定した初期馴染み性および
異物埋収性能を確保することができ、請求項3あるいは
請求項4に係わるすべり軸受においては、軟質コーティ
ング層がSnまたはSn合金、InまたはIn合金、固
体潤滑剤をふくむ樹脂複合材のいずれか、あるいはSn
またはSn合金、InまたはIn合金のいずれかからな
る母相に固体潤滑剤を分散させた複合めっき層からなる
であるから、摺動時の摩擦損失を一層低減させることが
でき、耐焼付性をより改善することができる。
【0026】本発明の請求項5に係わるすべり軸受の製
造方法においては、粒径100μm以下の非鉄粒子、例
えば請求項6に記載されているような酸化物,炭化物,
窒化物,硫化物,Sn,Sn合金,In,In合金のい
ずれか1種または2種以上からなる非鉄粒子を軸受合金
に対して50m/s以上の速度で投射するようにしてい
るので、表面硬化処理とディンプル状油溜りの形成とを
一度の処理で行うことができ、本発明に係わるすべり軸
受を極めて容易、かつ低コストに得ることができる。さ
らに、請求項7に係わるすべり軸受の製造方法において
は、軸受合金に投射した粒子を被投射面に付着もしくは
埋設させ、軸受合金表面の少なくとも一部を形成するよ
うにしているので、処理後硬さ、ディンプル形状、およ
び耐焼付性,耐摩耗性などの摺動特性を目的に応じて自
由に選択することができるという極めて優れた効果がも
たらされる。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて、より具体
的に説明する。
【0028】実施例1 Al系軸受合金を連続鋳造法により厚さ20mmの板状
材に鋳造し、得られた鋳造ビレットの上下面を1mm面
切削し、続いて冷間圧延によって8mmの厚さまで圧下
した。この状態で200〜300℃の熱処理を行うこと
によって歪みを除去した。
【0029】この後、上記軸受合金および厚さ1mmの
純Al板の密着面を清浄にした上で、これらをクラッド
し、得られたクラッド材を冷間圧延によって1mmの厚
さにまで圧下した。
【0030】そして、この積層材を焼鈍した後、裏金と
なる鋼板の上にAl系軸受合金が表面層側となるように
クラッドし、得られたクラッド材を切断後、エンジン用
半割軸受形状に成形し、寸法調整を行った。
【0031】続いて、表1に示すように粒径55μmの
SiO粒子を用いて、図1に示すように軸受合金表面
の最大荷重負荷方向Lに対して円周方向にそれぞれ20
°、合計40°の範囲に前記粒子を110m/sの速度
で投射することによって表面硬化処理を行った。以上の
結果、軸受合金層の層厚さが約0.3mmで合計厚さが
約1.5mmのすべり軸受を得た。
【0032】実施例2 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形し、寸法調整を行った軸受素材に、表1に示す
ように粒径55μmのSn粒子を用いて、軸受合金表面
の図1に示す範囲に前記粒子を110m/sの速度で投
射することによって表面硬化処理を行った。そして、さ
らに投射Sn粒子による膜を約1μmの厚さに形成し
た。以上の結果、軸受合金層の層厚さが約0.3mmで
合計厚さが約1.5mmのすべり軸受を得た。
【0033】実施例3 上記実施例1と同様の方法により表面硬化処理を行っ
た。続いて、硬化処理後の合金表面に脱脂、亜鉛置換、
拡散防止めっきなどの前処理を適宜施した上に、Snめ
っき層からなるコーティング層を20μmの厚さに付与
した。
【0034】以上の結果、裏金としての鋼板厚さが約
1.2mm、表面層を含めた軸受合金層の層厚さが約
0.3mmで合計厚さが約1.5mmのすべり軸受を得
た。
【0035】実施例4 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形した後、寸法調整を行った軸受素材に、表1に
示すように粒径55μmのZrO粒子を用いて、図2
に示すように軸受合金表面の最大荷重負荷方向Lに対し
て円周方向にそれぞれ20°、合計40°の範囲と、水
平面から25°の範囲、すなわち最大荷重負荷方向Lに
対して円周方向に20°〜65°の領域を除く範囲に前
記粒子を110m/sの速度で投射することによって、
軸受合金表面に表面硬化処理を施した。
【0036】続いて、硬化処理後の合金表面に、同様に
脱脂、亜鉛置換、拡散防止めっきなどの前処理を適宜施
した上に、MoSを含有するコーティング層を20μ
mの厚さに付与した。以上の結果、裏金としての鋼板厚
さが約1.2mm、表面層を含めた軸受合金層の層厚さ
が約0.3mmで合計厚さが約1.5mmのすべり軸受
を得た。
【0037】実施例5 Cu系軸受合金を溶解し、鋼板上に連続的に注湯し、注
湯後すぐに鋼板の下面より水冷により急冷し、鋼板上に
デンドライト組織を持つ鋳造軸受合金を積層した材料を
作成した。得られた積層材を切断後、エンジン用半割軸
受形状に成形し、これに寸法調整を施したのち、表1に
示すように粒径55μmのSiO粒子を用いて、軸受
合金表面の図1に示す範囲に前記粒子を110m/sの
速度で投射することによって表面硬化処理を行った。
【0038】続いて、軸受合金表面に、脱脂、拡散防止
めっきなどの前処理を施したのち、Snめっき層からな
るコーティング層を20μmの厚さに付与した。以上の
結果、裏金としての鋼板厚さが約1.2mm、表面層を
含めた軸受合金層の層厚さが約0.3mmで合計厚さが
約1.5mmのすべり軸受を得た。
【0039】実施例6 実施例5と同様の方法によりCu系軸受合金の積層材を
エンジン用半割軸受形状に成形したのち、寸法調整を行
った軸受素材に、表1に示すように粒径55μmのZr
粒子を用いて、軸受合金表面の図2に示す範囲に前
記粒子を110m/sの速度で投射することによって表
面硬化処理を行った。
【0040】続いて、軸受合金表面に、脱脂、拡散防止
めっきなどの前処理を施したのち、同様にSnめっき層
からなるコーティング層を20μmの厚さに付与した。
以上の結果、裏金としての鋼板厚さが約1.2mm、表
面層を含めた軸受合金層の層厚さが約0.3mmで合計
厚さが約1.5mmのすべり軸受を得た。
【0041】比較例1 上記実施例1と同様の方法によりAl系軸受合金のクラ
ッド材をエンジン用半割軸受形状に成形した後、寸法調
整を行った軸受素材に、表1に示すように粒径55μm
のスチール粒子を用いて、軸受合金表面の図3に示す範
囲に110m/sの速度で投射することによって表面硬
化処理を行った。これによって、軸受合金層の層厚さが
約0.3mmで合計厚さが約1.5mmのすべり軸受を
得た。
【0042】比較例2 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形した後、寸法調整を行った軸受素材に、表1に
示すように粒径55μmのZrO粒子を用いて、図3
に示すように軸受合金表面の全域に、当該粒子を110
m/sの速度で投射することによって表面硬化処理を行
った。これにより、軸受合金層の層厚さが約0.3mm
で合計厚さが約1.5mmのすべり軸受を得た。
【0043】比較例3 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形した後、寸法調整を行った軸受素材に、表1に
示すように粒径55μmのSiO粒子を用いて、図4
に示すように軸受合金表面の最大荷重負荷方向Lに対し
て円周方向にそれぞれ20°〜70°の範囲に前記粒子
を110m/sの速度で投射することによって、表面硬
化処理を施した。この結果、軸受合金層の層厚さが約
0.3mmで合計厚さが約1.5mmのすべり軸受を得
た。
【0044】比較例4 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形した後、寸法調整を行った軸受素材に、表1に
示すように粒径55μmのSiO粒子を用いて、軸受
合金表面の図1に示す範囲に110m/sの速度で投射
することによって表面硬化処理を行った。
【0045】続いて、硬化処理後の合金表面に脱脂、亜
鉛置換、拡散防止めっきなどの前処理を適宜施した上
に、Al−20%Sn合金によるスパッタリングを20
μmの厚さに施した。以上により、裏金としての鋼板厚
さが約1.2mm、表面層を含めた軸受合金層の層厚さ
が約0.3mmで合計厚さが約1.5mmのすべり軸受
を得た。
【0046】比較例5 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形した後、寸法調整を行った軸受素材に、表1に
示すように粒径90μmのZrO粒子を用いて、軸受
合金表面の図1に示す範囲に110m/sの速度で投射
することによって表面硬化処理を行った。この結果、軸
受合金層の層厚さが約0.3mmで合計厚さが約1.5
mmのすべり軸受を得た。
【0047】比較例6 上記実施例1と同様の方法によりエンジン用半割軸受形
状に成形した後、寸法調整を行った軸受素材に、表1に
示すように粒径55μmのZrO粒子を用いて、軸受
合金表面の図1に示す範囲に60m/sの速度で投射す
ることによって表面硬化処理を行った。この結果、軸受
合金層の層厚さが約0.3mmで合計厚さが約1.5m
mのすべり軸受を得た。
【0048】比較例7 実施例5と同様の方法によりCu系軸受合金の積層材を
エンジン用半割軸受形状に成形したのち、寸法調整を行
った軸受素材に対して、表1に示すように粒径55μm
のZrO粒子を用いて、軸受合金表面の図2に示す範
囲に前記粒子を110m/sの速度で投射することによ
って表面硬化処理を行った。
【0049】続いて、軸受合金表面に、脱脂、拡散防止
めっきなどの前処理を施したのち、Al−20%Sn合
金によるスパッタリングを20μmの厚さに施した。以
上の結果、裏金としての鋼板厚さが約1.2mm、表面
層を含めた軸受合金層の層厚さが約0.3mmで合計厚
さが約1.5mmのすべり軸受を得た。
【0050】比較例8 実施例5と同様の方法によりCu系軸受合金の積層材を
エンジン用半割軸受形状に成形したのち、寸法調整を行
った軸受素材に表面硬化処理を施すことなく、当該軸受
合金表面に、脱脂、拡散防止めっきなどの前処理を施し
たのち、Snめっき層からなるコーティング層を20μ
mの厚さに付与した。
【0051】以上の結果、裏金としての鋼板厚さが約
1.2mm、表面層を含めた軸受合金層の層厚さが約
0.3mmで合計厚さが約1.5mmのすべり軸受を得
た。
【0052】
【表1】
【0053】[耐焼付性試験]上記実施例1〜6、およ
び比較例1〜8により得られた各すべり軸受を用いて、
表2に示す条件の耐焼付性試験を実施し、各すべり軸受
の耐焼付性を比較調査した。その結果を表3に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】表3に示した結果から明らかなように、本
発明の実施例1〜6のすべり軸受は、いずれも優れた耐
焼付性を備えていることが判明した。
【0057】これに対し、投射粒子としてスチールを用
い、かつ表面硬化処理を摺動面の全面に施した比較例1
においては、当該粒子が摺動表面に多少残存していたも
のと思われ、また、全面に硬化処理を施したことによる
馴染み性や異物埋収性の低下も重なり、本発明実施例の
すべり軸受よりも耐焼付性が劣っていた。また、投射粒
子が本発明実施例と同様であっても、表面硬化処理を摺
動面の全面に施した比較例2、および表面硬化処理を施
さない非硬化部が本発明実施例と異なる比較例3のすべ
り軸受においては、馴染み性や異物埋収性の低下に伴
い、本発明実施例のすべり軸受と比較して耐焼付性が低
下していることが確認された。
【0058】さらに、摺動表面全体に硬質なスパッタリ
ング皮膜を施した比較例4および7のすべり軸受、ディ
ンプル状油溜りの深さが33μmと深い比較例5のすべ
り軸受においても、本発明実施例のすべり軸受と比較し
耐焼付性が劣っていることが判明した。
【0059】[耐疲労試験]上記実施例1〜6、および
比較例1〜8により得られた各すべり軸受を、表4に示
す条件でアンダーウッド試験に供した。その結果を表5
に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】表5に示した結果から明らかなように、本
発明の実施例1〜6のすべり軸受は、いずれも優れた耐
疲労性能を有していることが確認された。
【0063】これに対し、投射粒子としてスチールを用
い、かつ表面硬化処理を摺動面の全面に施した比較例1
においては、本発明実施例のすべり軸受よりも耐疲労性
が劣っている。これは、軸受表面に埋設されたスチール
粒子が相手軸と同系材料であることによる耐焼付性の低
下と、投射位置が本発明実施例と異なることによる馴染
み性や異物埋収性の低下が重なり、摺動性に悪影響を与
えたものと考えられる。
【0064】また、投射粒子が本発明実施例と同様であ
っても表面硬化処理部、すなわち粒子の投射部位が本発
明実施例と異なる比較例2および3のすべり軸受におい
ても、馴染み性や異物埋収性の低下に伴い本発明実施例
のすべり軸受と比較し耐疲労性が低下している。特に比
較例3においては、表面硬化範囲が最大荷重負荷部位に
及んでいないことが大きく影響し、耐疲労性の低下が大
きくなっている。
【0065】さらに、ディンプル深さが深い比較例5の
すべり軸受においては、ディンプル端部における油膜切
れ頻度増大の影響により耐疲労性が低下しており、粒子
の投射速度が遅くて軸受合金の表面硬化が不十分な比較
例6、表面硬化処理を施していない比較例8において
も、本発明実施例のすべり軸受と比較し耐焼付性が劣る
結果となっていることが判明した。
【0066】以上、これら2種の試験結果により、本発
明によるすべり軸受が従来にない高い水準で耐焼付性、
耐疲労性を同時に成立させていることが明らかであり、
従来の各種軸受合金では不可能であった性能を有してい
ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係わるすべり軸受における表
面硬化処理範囲を示す平面図(a)および正面図(b)
である。
【図2】本発明の他の実施例に係わるすべり軸受におけ
る表面硬化処理範囲を示す平面図(a)および正面図
(b)である。
【図3】比較例に係わるすべり軸受における表面硬化処
理範囲を示す平面図(a)および正面図(b)である。
【図4】他の比較例に係わるすべり軸受における表面硬
化処理範囲を示す平面図(a)および正面図(b)であ
る。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al系合金またはCu系合金からなる軸
    受合金が裏金上に直接あるいは中間層を介して積層され
    てなる円弧形状あるいは円筒形状のすべり軸受であっ
    て、軸受合金の表面およびその内部方向深さ100μm
    未満の範囲のみが表面硬化処理によって軸受合金内部よ
    りも10Hv以上硬化していると共に、当該硬化部表面
    に深さ1〜20μmのディンプル状油溜りが形成され、
    さらに軸受の最大荷重負荷方向に対し円周方向に20°
    から70°までの範囲の摺動面の少なくとも一部に表面
    硬化処理を施さない非硬化部が設けてあることを特徴と
    するすべり軸受。
  2. 【請求項2】 摺動面上に、軸受合金よりも軟質なコー
    ティング層が2〜50μmの厚さに直接あるいは中間層
    を介して形成されていることを特徴とする請求項1記載
    のすべり軸受。
  3. 【請求項3】 軟質コーティング層がSnまたはSn合
    金、InまたはIn合金、固体潤滑剤をふくむ樹脂複合
    材のいずれかからなることを特徴とする請求項2記載の
    すべり軸受。
  4. 【請求項4】 軟質コーティング層がSnまたはSn合
    金、InまたはIn合金のいずれかからなる母相に固体
    潤滑剤を分散させた複合めっき層であることを特徴とす
    る請求項2記載のすべり軸受。
  5. 【請求項5】 軸受合金に対して粒径100μm以下の
    非鉄粒子を50m/s以上の速度で投射することによっ
    て表面硬化処理を施し、同時にディンプル状油溜りを形
    成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいず
    れかに記載のすべり軸受の製造方法。
  6. 【請求項6】 非鉄粒子が酸化物,炭化物,窒化物,硫
    化物,Sn,Sn合金,In,In合金のいずれか1種
    または2種以上からなるものであることを特徴とする請
    求項5記載のすべり軸受の製造方法。
  7. 【請求項7】 軸受合金に投射した粒子を被投射面に付
    着もしくは埋設させて軸受合金表面の少なくとも一部を
    形成することを特徴とする請求項5または請求項6記載
    のすべり軸受の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008095903A (ja) * 2006-10-13 2008-04-24 Ihi Corp テクスチャを有するすべり軸受とその性能予測方法
JP2016064738A (ja) * 2014-09-24 2016-04-28 大豊工業株式会社 ラックガイドおよび当該ラックガイドを備えるラックピニオン式舵取り装置

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