JP2008089499A - セルロース系材料およびそれを用いたバイオセンサ - Google Patents

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【課題】低密度の膜の形成、生体系分子選択性材料の共有結合による固定化、および夾雑物の吸着の抑制を可能とし、さらに送液機能を有するバイオセンサのセンサ膜用の新規材料の提供。
【解決手段】生体材料の固定化に寄与する固定化官能基を有する長鎖状界面活性ポリマーと、セルロース誘導体とを含むことを特徴とするセルロース系材料。
【選択図】図1

Description

本発明は、バイオセンサ用生体分子認識材料の固定機能および送液機能を兼ね備えるセルロース系材料、および該材料を含むバイオセンサに関するものである。
表面プラズモン共鳴(SPR)法に代表される全反射光学系を用いるセンサシステムは、基板表面(全反射面)の近傍で生じる屈折率変化を選択的に検出するシステムである。このシステムは、基板表面近傍に分子選択性物質を固定化することによって、サンプル中に含まれる測定対象物質の吸着反応による基板表面近傍での屈折率変化を高感度に検出することができるため、バイオセンサ用システムとしての有用性が高い。また、利用する光の波長や光学系の設計により多少の違いがあるものの、多くはセンシング可能な領域は基板表面から1μm以内の距離の領域であり、微量のサンプルを用いた高感度の測定が可能である。
SPRに代表される全反射光学系を用いるバイオセンサでは、一般に、基板の上に生体系分子選択性材料が固定化されたセンサ膜を有する取替え可能なチップを用いて測定する。バイオセンサにおいて安定かつ感度の高い応答を得るためには、生体系分子選択性材料をより多量に安定に固定化し、かつ、サンプルである液体試料を安定に送液する機能が求められる。
バイオセンサ用チップのセンサ膜の材料は、センサ膜の感度向上、ならびに生体系分子選択性材料を固定化するための空間の確保という観点から、低密度であることが望ましい。また、生体系分子選択性材料の固定化機能を有することが望まれる。しかしながら、セルロース系材料の中でも低密度の膜を形成可能な材料であるセルロースアセテートのみを主成分とする膜の場合、生体系分子選択性材料の共有結合による固定化に寄与する官能基を持たない。したがって、何らの処理も施さないセルロースアセテートは、化学的固定化に適さない。また、センサ膜の材料には、サンプルに含まれる夾雑物(たとえば、血清に由来するタンパク質など)の吸着を抑える機能を有することも望まれている。
また、現状のバイオセンサにおいては、ポンプを用いてサンプルの送液を行うことが一般的である。しかしながら、測定の低コスト化および簡便化、ならびにバイオセンサのメンテナンスフリー化を目的として、センサ膜自身に送液機能を持たせることが検討されてきている。そのような機構の1つとして、水溶液が毛細管現象によってろ紙へと滲み込む効果の利用が検討され、プラスチックの流路にろ紙を入れた測定チップが発表されている(非特許文献1参照)。
J-E. Kim他, Anal. Chem., 2005, 77, 7901-7907 Journal of Membrane,Science, 161(1-2), 31-40 (1999)
低密度の膜の形成、生体系分子選択性材料の共有結合による固定化、および夾雑物の吸着の抑制を可能とし、さらに送液機能を有するバイオセンサのセンサ膜用の新規材料を提供することが本発明の課題である。また、当該新規材料を用いたバイオセンサを提供することが本発明の別の課題である。
本発明の第1の態様であるセルロース系材料は、生体材料の固定化に寄与する固定化官能基を有する長鎖状界面活性ポリマーと、セルロース誘導体とを含むことを特徴とする。ここで、固定化官能基がアミノ基であることが望ましい。また、セルロース誘導体はヒドロキシル基またはカルボキシル基を有することができる。さらに、長鎖状界面活性ポリマーが10万以上200万以下、より好ましくは50万以上100万以下の粘性平均分子量を有することが望ましい。
本発明の第2の態様のバイオセンサ用チップは、基板と、第1の態様に記載のセルロース系材料を含む膜とを含むことを特徴とする。ここで、基板とセルロース系材料を含む膜との間に金属薄膜をさらに含んでもよい。
固定化官能基をあらかじめ導入した長鎖状界面活性ポリマーをセルロース誘導体に混合することによって、安価なセルロース系材料に対して、抗体や酵素に代表される生体系分子選択性材料を共有結合によって固定化する機能、およびタンパク質などの夾雑物の吸着を抑制する機能を付与することができた。本発明のセルロース系材料は低密度の膜を形成することができ、かつ送液機能をも併せ持つために、バイオセンサ用のセンサ膜の材料として有用である。
本発明のセルロース系材料を用いて作製したバイオセンサ用チップは、安価であり、生体系分子選択性材料を安定に固定化することができ、同時に夾雑物に起因するノイズの発生を抑制することができる。
本発明のセルロース系材料は、固定化官能基を有する長鎖状界面活性ポリマーと、官能基を有するセルロース誘導体とを含む。
本発明において用いることができる長鎖状界面活性ポリマーは、界面活性能を有するポリマーであり、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類を含む。長鎖状界面活性ポリマーは、10万以上200万以下、好ましくは50万以上100万以下の粘性平均分子量を有する。10万以上の粘性平均分子量を有することによって、長鎖状界面活性ポリマーが洗浄によってセンサ膜から流出することを防止することができる。実際、粘性平均分子量2万のPEGとセルロース系材料との混合物から作製した膜において、洗浄を行った後に膜中に残存するPEGが約4%に過ぎないことが知られている(非特許文献2参照)。また、粘性平均分子量を100万以下とすることによって、セルロース系材料との混合の際に必要な溶解性(たとえば、アセトンなどに対する溶解性)を得ることができる。
長鎖状界面活性ポリマーに導入することができる固定化官能基は、アミノ基、マレイミド基、スクシンイミジル基、ヨードアセトアミド基などを含み、好ましくはアミノ基である。ポリアルキレングリコール類を使用する場合、たとえば、ポリアルキレングリコール末端のヒドロキシル基をメタンスルホニル化あるいはトルエンスルホニル化などを用いて活性化し、続いて求核剤としてのアミン化合物を作用させることによって、アミノ基を導入することができる。あるいはまた、ポリアルキレングリコール類に対して固定化官能基を導入するための反応剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニジルスクシネート、ビスジアソベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオプロピオネート)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル4−(N−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどを用いることができる。
本発明のセルロース系材料において用いることができるセルロース誘導体は、疎水性部分と親水性部分とを併せ持つ材料であり、セルロース;セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースなどのセルロースエステル類;およびメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類を含む。用いることができるセルロースエステル類およびセルロースエーテル類は、一部のヒドロキシル基のみがエステル化またはエーテル化され、官能基としてのヒドロキシル基を依然として有するものであってもよい。
固体状のセルロース誘導体と、固定化官能基を有する長鎖状界面活性ポリマーとを、有機溶媒中で粉砕・混合・溶解させることによって、セルロース系材料の溶液を得ることができる。本発明においては、セルロース誘導体100重量部に対して、固定化官能基を有する長鎖状界面活性ポリマー0.5〜20重量部、好ましくは1〜3重量部を混合する。この工程によって、セルロース誘導体と長鎖状界面活性ポリマーとを分子レベルで複合化して、長鎖状界面活性ポリマーがセルロース誘導体と絡み合い、非特異的吸着を生じるサイトとなるセルロースの官能基を前述の固定化官能基がマスクするように作用する。加えて、膜を形成した際に、長鎖状界面活性ポリマーが、セルロース誘導体から脱離してセルロース系材料膜から流出ないし喪失しないようにすることができる。特に、官能基としてカルボキシル基を有するカルボキシメチルセルロースをセルロース誘導体として使用した場合、カルボキシル基と、長鎖状界面活性ポリマーに固定化官能基として導入されるアミノ基との間により強い相互作用が働き、セルロース誘導体と長鎖状界面活性ポリマーとの絡み合いが強くなると考えられる。
本発明のセルロース系材料は、抗体、酵素などの生体系分子選択性材料と共有結合することができる固定化官能基を有するため、生体系分子選択性材料を安定的に固定化することができる。このことによって、液体サンプルまたはバッファ溶液などの送液中に生体系分子選択性材料がセルロース系材料から流出することを防止することができる。また、セルロース系材料中の長鎖状界面活性ポリマーのマスキング効果によって、測定の対象物質と生体系分子選択性材料との反応を阻害する夾雑物(タンパク質など)が、セルロース誘導体の官能基の非特異的吸着によってセルロース系材料中に吸着されることを防止することができる。これらの相乗的作用によって、対象物質と生体系分子選択性材料との反応に基づく、対象物質の安定したバイオセンシングが可能となる。
本発明のセルロース系材料を用いたバイオセンサ用チップの第1の構成例を図1に示す。図1(a)は上面図であり、図1(b)は切断線b−bで切断した断面図である。本構成のバイオセンサ用チップは、基板10と、基板10上に設けられた金属薄膜20と、金属薄膜20上に直接接触して設けられたセンサ膜30とを含む。本構成のバイオセンサ用チップは、特にSPR測定用のバイオセンサ用チップとして有用である。サンプルは、サンプル滴下点60においてセンサ膜に滴下され、毛細管現象によってサンプル流動方向へと流れていく。そして、測定領域70において、種々の光学的測定(特にSPR)が行われ、サンプル中に含まれる対象物質を測定する。
基板10は、ガラス、プラスチック樹脂(アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを含む)などの当該技術において知られている任意の材料を用いて形成することができる。基板10は、測定に用いる励起光(入射光)110および反射光の波長において透明であることが望ましい。
金属薄膜20は、金属表面に存在する表面プラズモンを励起させるための金属製の薄膜である。金属薄膜20は、金、銀、銅などの金属を用いて作製することができる。また、センサ膜30中のエバネッセント波と表面プラズモンとを効率よく結合させるため、40〜50nm程度の膜厚を有することが望ましい。金属薄膜20は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。金属薄膜20は、蛍光性基を有する生体系分子選択性材料を用いた蛍光分析を行うバイオセンサ用チップにおいては省略することが可能である。表面プラズモン共鳴(SPR)法に代表される全反射光学系を用いるバイオセンサ用チップにおいては、金属薄膜20が全反射面を提供する。
センサ膜30は、本発明のセルロース材料を含み、生体系分子選択性材料を固定化する機能、およびサンプルの流路としての機能を有する膜である。センサ膜30は種々の形状を有することができるが、好ましくは矩形状の形状を有する。センサ膜30は、本発明のセルロース材料の溶液または分散液を金属薄膜20上に塗布し、次いで溶媒を蒸発させることによって形成することができる。塗布に用いる溶液または分散液を形成するための溶媒としては、アセトン、エタノール、イソプロパノールなどを用いることができ、好ましくはアセトンと、エタノールまたはイソプロパノールとの混合溶媒を用いることが好ましい。塗布の方法としては、当該技術において知られている任意の方法を使用することができるが、好ましくはスピンコート法を用いることができる。また、蒸発による溶媒の除去については、室温の温度条件、および大気圧の圧力条件下で実施してもよい。センサ膜30は数百nmから1μm以上に至る細孔を有する。細孔の大きさは、セルロース誘導体を含む塗布溶液の配合比率などを変化させることにより制御することが可能である。
センサ膜30の形成前に金属薄膜20の上に両面シール部材またはレジスト(不図示)を配設して、センサ膜30の形成位置および形状を画定してもよい。シール部材40を形成するための材料としては、パターニング可能な材料を用いることができ、そのような材料は、たとえばSiO、Al、Si、AlNなどの無機酸化物あるいは窒化物、金属、半導体などを含む。レジストは、フォトレジストなどの高分子材料であってもよい。両面シール部材およびレジストの形成は、当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。好ましくは、両面シール部材またはレジストを配設し、センサ膜の形成を行い、次いで両面シール部材またはレジストならびにその上に形成されたセンサ膜を除去して、形成位置および形状が画定されたセンサ膜30を得ることができる。
本発明のバイオセンサ用チップは、複数の独立したセンサ膜30を有してもよい。図1(a)には、3つの独立したセンサ膜30を設けた構成例を示した。複数の独立したセンサ膜30のそれぞれに対して、異なる種類の生体系分子選択性材料を固定化することによって、1つのバイオセンサ用チップを用いて、複数種の対象物質の測定を行うことが可能となる。
センサ膜30の測定領域70に位置する部分において、生体系分子選択性材料の固定化を行う。最初に、センサ膜30に対して、活性化剤を滴下し、センサ膜30中の固定化官能基を活性化する。固定化官能基がアミノ基である場合、活性化剤としてグルタルアルデヒド水溶液などを用いることができる。次いで、生体系分子選択性材料の溶液を滴下し、固定化に充分な時間にわたって静置する。最後に、水を用いて洗浄を行い、固定化されなかった余剰の生体系分子選択性材料を除去する。この方法によって固定化された生体系分子選択性材料は、共有結合によって長鎖状界面活性ポリマーに結合されているので、サンプルないしバッファ溶液などによって測定領域70のセンサ膜30から流出することがない。
本発明のバイオセンサ用チップの第2の構成例を図2に示す。図2(a)は上面図であり、図2(b)は切断線b−bで切断した断面図である。本構成のバイオセンサ用チップは、サンプル滴下点60を含む領域の油脂除去膜40と、測定領域70を含む領域のセンサ膜30とが、流体連絡の状態で連結されている点を除いて、図1に示したバイオセンサ用チップと同様の構成を有する。本構成のバイオセンサ用チップもまた、特にSPR測定用のバイオセンサ用チップとして有用である。
食品関係の産業においては、油脂分を多く含むサンプル中の物質の特定、たとえば牛乳中の毒素や抗原の特定が求められる場合がある。タンパク質に由来する夾雑物と同様に、油脂分もバイオセンシングを妨害する恐れがあるので、サンプル中から排除することが好ましい。
本構成のバイオセンサ用チップにおいては、サンプル滴下点60から測定領域70の手前までに至る領域を油脂除去膜40で構成している。油脂除去膜40を形成する材料は、測定対象となるタンパク質からなる測定対象物質を吸着しないこと、および適切な親水性を有してサンプルの流動を確実にすることに加えて、親油性を有して油脂分を有効に吸着できることが求められる。たとえば、親水性と疎水性とを併せ持つセルロース誘導体に対して、長鎖状界面活性ポリマーを複合化することによって親油性を付与した材料を使用して、油脂除去膜40を形成することができる。用いることができるセルロース誘導体および長鎖状界面活性ポリマーは、長鎖状界面活性ポリマーが生体系分子選択性材料を固定化するための固定化官能基を有さなくてもよいという点を除いて、前述と同様の材料を用いることができる。また、この目的においては、セルロース誘導体100重量部に対して、長鎖状界面活性ポリマー0.5〜20重量部、好ましくは1〜3重量部を混合することが望ましい。
本構成のバイオセンサ用チップは、金属薄膜20の形成後、センサ膜30および油脂除去膜40のそれぞれに対して両面シール部材またはレジストを用いるパターニングを実施することによって作製することができる。センサ膜30と油脂除去膜40との流体連絡を確実にするために、センサ膜30と油脂除去膜40とが重なる部分を有してもよい。
本構成のバイオセンサ用チップを用いれば、サンプル滴下点60に滴下されたサンプルは、油脂除去膜40内を移動する間に含有する油脂分が除去され、油脂分を含まないサンプルがセンサ膜30に供給される。そして、センサ膜30においては、測定の対象物質と生体系分子選択性材料との反応を阻害する夾雑物が、セルロース誘導体の官能基の非特異的吸着によってセルロース系材料中に吸着されることを防止して、対象物質の高感度での測定が可能となる。したがって、本構成のバイオセンサ用チップを用いた場合、油脂分を除去するために別途の工程を行う必要性を排除し、低コスト化が可能になると同時に、当該工程においてサンプルが変質する可能性も排除することができ、対象物質の信頼性の高い測定が可能となる。
[実施例1]
粘性平均分子量10万の長鎖PEGを、0.2mol・L−1のトシルクロリドのピリジン溶液に添加し、室温において15分間にわたって撹拌した。続いて、トリオキサトリデカンジアミンを添加して、室温においてさらに15分間にわたって撹拌した。反応混合物に対して300Wのマイクロウェーブを照射した後に、溶媒交換を行い、アミノ基導入PEGのエタノール溶液(固形分5%)を調製した。
粉末状のセルロースアセテート2gに、実施例1で調製したアミノ基導入PEGのエタノール溶液1.2gを加え、アセトンを加えながらすり潰すことによって、スラリーを形成した。続いて、アセトンで希釈して、セルロースアセテート・アミノ基導入PEGの複合体溶液を調製した。
[実施例2]
BK7ガラス基板10(16mm×16mm×1mm)の上に、真空蒸着法を用いて膜厚50nmの金薄膜20を精製した。次いで、両面シール部材(デュラマウントPTT25(株式会社きもと製))により、センサ膜30を形成する部分(幅1mm×長さ10mmの長方形形状、3箇所)を除いて金薄膜表面を被覆した。次いで、実施例1のセルロースアセテート・アミノ基導入PEGの複合体溶液をスピンコート法によって塗布し、乾燥させた。そして、両面シール部材およびその上に形成されたセルロース系材料膜を剥離除去して、図1の構成を有するバイオセンサ用チップを得た。
得られたセルロース系材料(セルロースアセテート・アミノ基導入PEGの複合体)膜の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図3に示す。得られたセルロース系材料膜は、数百nmから1μm以上の径の細孔を有する多孔質膜であった。
得られたセルロース系材料膜を、一晩の間、水中に浸漬し、再びSEMにより観察した。その結果、観察の前後において膜の構造に変化は見られなかった。このことから、本発明のセルロース系材料膜において、構造の変化を伴うようなアミノ基導入PEGの流出が発生していないことが分かる。
[実施例3]
実施例2で作製したバイオセンサ用チップの観測領域70内のセンサ膜に、グルタルアルデヒド水溶液を滴下し、1分間静置の後に純水で洗浄した。次に、蛍光物質で標識した抗体を含む溶液を滴下し、30分間静置の後に表面を純水で洗浄した。
処理後のバイオセンサ用チップの観測領域70内のセンサ膜30を蛍光顕微鏡で観察したところ、蛍光を観測できた。このことから、蛍光標識された抗体がセンサ膜30中に固定化されていることが確認された。
さらに2時間にわたって純水で洗浄し、再び蛍光顕微鏡による観察を行ったところ、前述と同様に蛍光を観測することができた。このことから、生体系分子選択性材料(蛍光標識された抗体)がアミノ基導入PEGに対して共有結合によって固定され、かつそれら材料が純水洗浄によってセンサ膜30から流出することがないと判断された。以上のように、アミノ基導入した粘性平均分子量10万以上の長鎖PEGを複合化したことにより、抗体固定化機能を有するセルロース材料からなる複合膜を作製できる。
[実施例4]
夾雑物のモデルとしての牛血清アルブミンを含むバッファ溶液、および牛血清アルブミンを含まないバッファ溶液のそれぞれについて、実施例2で作製したバイオセンサ用チップを用いてSPR測定を行った。それぞれのバッファ溶液をサンプル滴下点60に滴下し、それら溶液がセンサ膜30内を移動して、充分に展開された後に測定領域70内のセンサ膜30においてSPR共鳴角度を測定した。その結果、240μg・mL−1の牛血清アルブミンを含むバッファ溶液を用いた場合に、牛血清アルブミンを含まないバッファ溶液に比較してSPR共鳴角度が16.4ミリ度(mdeg)シフトした。
[比較例1]
セルロースアセテート・アミノ基導入PEGの複合体溶液に代えて、セルロースアセテート溶液を用いたことを除いて実施例2と同様にして、バイオセンサ用チップを作製した。
得られたバイオセンサ用チップを用いて実施例4と同様のSPR測定を行った結果、240μg・mL−1の牛血清アルブミンを含むバッファ溶液を用いた場合に、牛血清アルブミンを含むバッファ溶液に比較してSPR共鳴角度が262.4ミリ度(mdeg)シフトした。
SPR測定においては、SPR共鳴角度のシフト量は、金薄膜20表面に存在する物質(センサ膜30の材料を含む)の濃度変化に対応する。したがって、シフト量の増大は牛血清アルブミンがより多く吸着したことを示す。実施例4と比較例2を比較すると、実施例4のSPR共鳴角度シフト量は、比較例4の値よりも著しく小さく、アミノ基導入PEGの存在が牛血清アルブミンの吸着を効果的に抑制したことが分かる。
[実施例5]
粉末状のセルロースアセテート2gを、粘性平均分子量10万の長鎖PEGのエタノール溶液1.2g(固形分5%)を加え、アセトンを加えながらすり潰すことによって、スラリーを形成した。続いて、アセトンで希釈して、セルロースアセテート・長鎖PEGの複合体溶液を調製した。
続いて、セルロースアセテート・アミノ基導入PEGの複合体溶液に代えて、上記で調製したセルロースアセテート・長鎖PEGの複合体溶液を用いて、実施例2と同様に図1の構成を有するバイオセンサ用チップを作製した。
得られたバイオセンサ用チップのサンプル滴下点60に、油脂分を多く含む材料としての牛乳およびバッファ溶液を滴下し、SPR測定を行った。その結果、牛乳を用いた場合に、バッファ溶液に比較してSPR共鳴角度が約3.28度シフトした。
[比較例2]
比較例1で作製したバイオセンサ用チップのサンプル滴下点60に牛乳およびバッファ溶液を滴下し、SPR測定を行った。その結果、牛乳を用いた場合に、バッファ溶液に比較してSPR共鳴角度が約1.476度(約半分)シフトした。
以上の結果から、実施例5が比較例2に比較して約2倍の共鳴角度シフトを示したことから、セルロースアセテート・長鎖PEGの複合体膜が、牛乳中に含まれる油脂分をより多く吸着したことが分かる。したがって、セルロースアセテート・長鎖PEGの複合体膜が、サンプル溶液中から油脂分を取り除く機能を有することが分かった。したがって、図2に示すように生体系分子選択材料を固定化する固定化官能基導入長鎖状界面活性ポリマー・セルロースアセテート複合体のセンサ膜30の前段に、長鎖状界面活性ポリマー・セルロースアセテート複合体の油脂除去膜40を形成することで、膜内をサンプル溶液が流れる間に油分に代表される成分を吸着除去する機能を持つバイオセンサ用チップが作製できる。このチップのサンプル滴下点に牛乳を滴下し、牛乳が膜中を移動して測定領域に到達した際のSPR共鳴角度は、前段にセルロースアセテート・長鎖PEGの複合体を形成していないバイオセンサ用チップを用いて牛乳を測定した場合に比較して1.804度低い角度であった。
本発明のバイオセンサ用チップの第1の構成例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は切断線b−bで切断した断面図である。 本発明のバイオセンサ用チップの第2の構成例を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は切断線b−bで切断した断面図である。 長鎖PEG・セルロースアセテート複合膜の走査電子顕微鏡写真である。
符号の説明
10 基板
20 金属薄膜
30 センサ膜
40 油脂除去膜
60 サンプル滴下点
70 測定領域

Claims (8)

  1. 生体材料の固定化に寄与する固定化官能基を有する長鎖状界面活性ポリマーと、セルロース誘導体とを含むことを特徴とするセルロース系材料。
  2. 前記固定化官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系材料。
  3. 前記セルロース誘導体がヒドロキシル基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース系材料。
  4. 前記セルロース誘導体がカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース系材料。
  5. 前記長鎖状界面活性ポリマーが10万以上200万以下の粘性平均分子量を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のセルロース系材料。
  6. 前記長鎖状界面活性ポリマーが50万以上100万以下の粘性平均分子量を有することを特徴とする請求項5に記載のセルロース系材料。
  7. 基板と、請求項1から6のいずれかに記載のセルロース系材料を含む膜とを含むことを特徴とするバイオセンサ用チップ。
  8. 前記基板と前記セルロースを含む膜との間に金属薄膜をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のバイオセンサ用チップ。
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