JP2008089367A - 核スピン偏極装置及び該方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、過渡的に核スピンの偏極状態を生成することができる核スピン偏極装置及び核スピン偏極方法を提供する。
【解決手段】本発明では、静電場SE内の、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子Aへ励起光としてのパルスレーザ光が照射され、原子Aが複数の超微細準位へコヒーレントに励起される。これによって過渡的に核スピンの偏極状態が生成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、核スピンを偏極することができる核スピン偏極装置及び核スピン偏極方法に関する。
静止している微視的粒子の内部自由度の1つにスピン角運動量があり、このスピン角運動量は、熱平衡下では、通常あらゆる方向に等確率で向いている無偏極の状態にある。或る状態の原子核は、一定の大きさの核スピンを持つので、核スピンについての依存性を調べることによってダイナミクスについてより詳細な情報を得ることができる。このため、例えば、核物理等の分野で核スピンの偏極度(核スピンの揃い方の度合い)を上げることが望まれる。また、非破壊かつ高精度な分析手法として幅広い分野で活用されている核磁気共鳴(NMR)は、他の分析方法に較べて感度が低いため、その高感度化が望まれている。このNMRの信号強度は、核スピンの偏極度に依存しているので、核スピンの偏極度を上げることが望まれる。さらには、核スピンの応用として量子コンピュータが提案されており、核スピンを制御することが重要となってきている。
従来、核スピンを偏極する方法しては、加速イオンビームとターゲットとの衝突によって発生した所定方向の2次粒子(破砕核)を利用する核破砕法や、アルカリ金属原子を狭帯域連続発振レーザ光で偏極する光ポンピング法(例えば非特許文献1参照)や、アルカリ金属を光ポンピング法によって偏極させ、偏極させたアルカリ金属に所望の原子を衝突させることによって該所望の原子を偏極させるスピン交換衝突法(例えば非特許文献2参照)が知られている。
E.Arnold et al,Physics Letters B 197,311(1987) M.Tanaka et al,Physical Review A 50,1184(1994)
ところで、上記核破砕法では、核スピンの偏極度が1%未満であり、偏極度が極めて低い。上記光ポンピング法は、略100%の偏極度が得られるが、高出力な連続発振レーザ光源が必要であり、また、この連続発振レーザ光の波長及びレーザスペクトル幅の精密な最適化も必要である。このため、使用可能なレーザ光源が限られる結果、使用可能な波長域やレーザ光の強度が制約されるので、偏極可能な核種が制約されてしまう。また、偏極を完成するためには、数μ秒を要してしまう。また、上記スピン交換衝突法では、所望の原子を偏極させることができるが、間接的に偏極されるので、高い偏極度が得難い。このように従来の核スピン偏極方法は、一長一短があり、新たな手法が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みて為された発明であり、過渡的に核スピンの偏極状態を生成することができる核スピン偏極装置及び核スピン偏極方法を提供することを目的とする。
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。即ち、本発明に係る一態様では、核スピンを偏極する核スピン偏極装置において、静電場を生成する静電場生成部と、前記静電場内の、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子を、複数の超微細準位へコヒーレントに励起するための励起光を発光する発光部とを備えたことを特徴とする。そして、本発明に係る他の一態様では、核スピンを偏極する核スピン偏極方法において、静電場内の、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子に励起光を照射して複数の超微細準位へコヒーレントに励起する工程を備えることを特徴とする。
図1は、本発明を説明するための図である。図1(A)は、基底状態および励起状態nsmp(m、nは主量子数)のエネルギー図であり、図1(B)は、励起光照射後の原子における励起状態のエネルギー図であり、図1(C)は、さらに静電場を印加した場合における原子のエネルギー図である。図1の●は、原子の占有密度である。
基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子は、励起光が照射されることによって、図1(A)に示すエネルギーE0の基底状態から、図1(B)に示すように、エネルギーE1、E2の励起状態へ励起される。これら2つの励起状態は、同一の電子配置nsmpに属する超微細準位である。励起光は、エネルギーE0の準位から少なくともエネルギーE1の準位及びエネルギーE2の準位へ同時に励起することができるスペクトル幅を持つ必要がある。つまり、複数の超微細準位をコヒーレントに励起する必要がある。このような励起光は、例えば、パルス状のレーザ光(パルスレーザ光)が好適である。ここで、の左肩の数字は、スピン多重度を表し、中央のアルファベットは、軌道角運動量Lを表し、右下の数字は、軌道角運動量Lとスピン角運動量Sとの和Jを表す。中央のアルファベットは、L=0、1、2、3、4、・・・に対応してS、P、D、F、G、・・・をとり得る。なお、Iを核スピン、Fを全角運動量とし、L,S,J,I,Fをベクトルとすれば、F=J+I,J=L+Sの関係にある。
一般に、コヒーレントに励起された複数の超微細準位は、超微細相互作用によってそれら超微細準位(図1に示す例ではエネルギーE1の準位及びエネルギーE2の準位)の間を遷移する。このため、時間経過に従って占有密度が一方の準位に偏在する状態が出現し、過渡的に偏極状態を作ることができる。この一方の準位から他方の順へ遷移する時間(遷移時間)の時間スケールは、これら2つの準位におけるエネルギー差(E2−E1)を△とすると、△−1によって決まる。
核スピンが0ではない(I≠0)原子については、励起状態は、超微細構造を持つため、励起状態の準位構造における上記エネルギー差△(=E2−E1)は、極僅かである。このため、超微細準位間の遷移に要する遷移時間の時間スケールは、△−1を用いて計算すると、マイクロ秒(10−6秒)より長いオーダとなる。一方、自然放出によって励起状態から基底状態に戻る時間の時間スケールは、数ナノ秒から数百ナノ秒である。このため、単に励起しただけでは、超微細相互作用によって核スピンの偏極状態が出現する前に、基底状態に戻ってしまう。
そのため、注目すべきは、静電場SEが原子に印加される。これによってエネルギーE0、E1、E2の各準位は、図1(C)に示すように、エネルギーE0+δ0、E1+δ1、E2+δ2の各準位へシュタルクシフト(スタルクシフト、Stark shift)する。このため、励起状態の準位構造における上記エネルギー差は、(E2+δ2)−(E1+δ1)=(E2−E1)+(δ2−δ1)=△+△sとなって、大きくなる(δ2−δ1=△sとした)。この結果、超微細準位間の遷移時間が短くなる。例えば、静電場SEの強度を数kV/cmとすれば、核スピンにおける遷移時間の時間スケールは、ナノ秒(10−9秒)のオーダとなり、自然放出が起こる前に、時間経過に従って偏極度Pが変化する過渡的な偏極状態を作ることができる。
本発明では、静電場生成部が静電場SEを生成し、発光部が励起光を発光する。このため、この生成された静電場SE内の、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子に、この発光された励起光が照射され、過渡的に核スピンの偏極状態を生成することができる。
上記シュタルクシフトのシフト量は、静電場SEの強度に比例し、静電場SEの強度が大きくなるほど、シュタルクシフトは、大きくなる。このため、静電場SEの強度が大きくなるほど、励起状態の準位構造における上記エネルギー差△+△sは、大きくなって、その結果、超微細準位間の遷移時間が短くなる。従って、静電場SEの強度は、大きいほど好ましい。
また、上述の核スピン偏極装置において、前記励起光によって励起された原子が閉殻構造となるように該原子をイオン化するイオン化部をさらに備えたことを特徴とする。そして、上述の核スピン偏極方法において、さらに、前記励起光によって励起された原子をイオン化によって閉殻構造に形成する工程を備えることを特徴とする。
価電子スピンと核スピンは、超微細相互作用を通してそれぞれの持っている角運動量のやり取りを行う。このため、核スピンの偏極状態が消失してしまう。上記構成によれば、イオン化によって、核スピンと相互作用する価電子が取り除かれ、電子配置が閉殻構造となるので、核スピンの偏極度が凍結(維持)され得る。
また、上述の核スピン偏極装置において、前記発光部は、前記励起光によって励起された原子の占有密度が基底状態と励起状態との間で完全な反転分布となる光強度の励起光を発光することを特徴とする。
この構成によれば、図1(C)に示すように、励起光によって励起された原子が基底状態と励起状態との間で完全な反転分布、即ち、総ての原子が励起状態となるので、イオン化部によって核スピンの偏極状態が凍結された場合に、基底状態の原子が無いため該基底状態の原子がイオン化されないから、核スピンを所望の偏極度で凍結することが容易となる。
本発明に係る核スピン偏極装置及び核スピン偏極方法によれば、過渡的に核スピンの偏極状態を生成することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(実施形態の構成)
図2は、実施形態における核スピン偏極装置の構成を示す図である。図2において、核スピン偏極装置1は、発光部11と、一対の電極12、12と、直流電源13と、イオン化部14と、発光制御部15とを備えて構成される。
直流電源13は、一対の電極12、12に直流電力を供給する装置であり、一対の電極12、12間に予め設定された所定の電圧値の電圧を印加する。直流電源13は、例えば、交流を直流に変換する整流回路、整流回路の出力を平滑する平滑回路、及び、平滑回路の出力を昇圧するDC−DCコンバータ等を備えて構成される。
一対の電極12、12は、例えば金属(合金を含む)製の平板状の電極であり、電極面が互いに対向するように所定の距離を空けて平行に配置される。一対の電極12、12は、直流電源13の各出力端子にそれぞれ接続され、そして、一対の電極12、12の一方は、接地される。一対の電極12、12は、直流電源13の直流電圧が印加されることによって互いに対向する電極面内に形成される静電場SEが所定気圧の真空状態(所定の真空度)にすることができるように、例えば、真空チャンバ(不図示)内に配置される。
発光部11は、一対の電極12、12の互いに対向する電極面内に形成される静電場SE内の原子Aを、複数の超微細準位へコヒーレントに励起するための励起光を発光する装置である。発光部11によって発光した励起光は、上記真空チャンバに設けられた第1導入用窓を介して、上記静電場SE内に導かれる。発光部11は、例えば、レーザ光を発光するレーザ光源を備えて構成される第1レーザ発光部である。
イオン化部14は、発光部11の励起光によって励起された原子Aが閉殻構造となるように、この原子Aをイオン化する装置である。イオン化部14は、例えば、レーザ光を発光するレーザ光源を備えて構成される第2レーザ発光部である。レーザ光源を備えて構成されるイオン化部14は、発光部11の励起光によって励起された原子Aをイオン化すべく、この原子Aのイオン化エネルギーに対応する周波数以上の周波数のレーザ光を発光する。即ち、レーザ光源を備えるイオン化部14は、原子Aのイオン化エネルギーに対応する周波数のレーザ光、又は、原子Aのイオン化エネルギーに対応する周波数より高い周波数のレーザ光を発光する。このレーザ光は、上記真空チャンバに設けられた第2導入用窓を介して、上記静電場SE内に導かれる。なお、第2導入用窓は、上記第1導入用窓と兼用されてもよく、また別体で上記真空チャンバに設けられてもよい。
発光制御部15は、発光部11の発光とイオン化部14におけるレーザ光源の発光とを制御する装置であり、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータを備えて構成される。レーザ光源を備える発光部11は、発光制御部15の制御によって、所定のタイミングで所定のパルス幅のパルス状のレーザ光を発光する。そして、レーザ光源を備えるイオン化部14は、発光制御部15の制御によって、所定のタイミングで所定のパルス幅のパルス状のレーザ光を発光する。
次に、本実施形態の動作について説明する。
(実施形態の動作)
このように構成された核スピン偏極装置1では、まず、上記真空チャンバ内に配置されている蒸発源(不図示)へ固体状の原子Aが配置され、真空ポンプ(不図示)等によって上記真空チャンバ内の気体が排気され、上記真空チャンバ内が所定の真空度の真空とされる。
上記蒸発源は、固体状の原子Aを蒸発して原子Aの蒸気を生成する装置である。蒸発源は、種々の装置が公知であり、例えば、固体状の原子Aを坩堝に入れ坩堝を抵抗加熱することによって蒸気を生成する抵抗加熱蒸発源や、固体状の原子Aを坩堝に入れ電子ビームをこの固体状の原子Aに照射することによって蒸気を生成する電子ビーム蒸発源等である。
原子Aは、例えば基底状態の軌道における準位の個数や励起状態の軌道における準位の個数等を考慮することによって、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子が利用可能である。このような原子Aは、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)のアルカリ土類金属である。
上記真空チャンバ内が所定の真空度の真空となると、直流電源13によって一対の電極12、12間に予め設定された所定の電圧値の直流電圧が印加される。一対の電極12、12は、上述したように、所定の距離を空けて平行に配置されるが、一対の電極12、12間に印加される上記電圧値は、この所定の距離を考慮して、一対の電極12、12間に形成される静電場SEの強度が数kV/cm程度となるように設定される。静電場SEの強度は、上述したように、大きいほど好ましいが、あまり大きくすると静電破壊が生じるので、静電場SEの強度の上限は、静電破壊を考慮して設定され、通常、10kV/cm程度とされる。
静電場SEの生成後、上記蒸発源が作動され、互いに対向する一対の電極12、12間に形成される静電場SE内に原子Aの蒸気が生成される。なお、上記真空チャンバ外で原子Aの蒸気が生成され、上記真空チャンバに気密に連通する導入管等によって原子Aの蒸気が互いに対向する一対の電極12、12間に形成される静電場SE内に導かれてもよい。
静電場SE内に原子Aの蒸気が生成されると、発光制御部15の制御によって発光部11から励起光としてレーザ光が発光され、原子Aにレーザ光が照射される。発光部11が発光するレーザ光の波長は、静電場SEによるシュタルクシフトを考慮した上で、原子Aの基底状態における準位のエネルギーE0+δ0と励起状態における準位のエネルギーE1+δ1、E2+δ2との差に応じて適宜に設定される。上述したように励起状態の準位が超微細構造であるので、基底状態の準位から励起状態の各準位へ励起可能なように広いスペクトル幅とすべく、レーザ光は、パルス状とされる。そのパルスレーザ光(ブロードバンドレーザ光)のパルス時間幅τは、超微細相互作用が誘起される前に励起すべく、超微細相互作用の時間スケールである、△+△sの逆数((△+△s)−1)より充分小さく設定される。そして、このパルスレーザ光は、円偏光とされる。このようなパルスレーザ光(ブロードバンドレーザ光)が照射されることによって、原子Aの複数の超微細準位がコヒーレントに励起される。
励起されると、原子Aの核スピンは、励起光によってコヒーレントに励起された超微細構造の複数の準位間を超微細相互作用によって遷移する。ここで、数kV/cmの静電場SEが作用しているので、この複数の超微細準位間を遷移する遷移時間が、励起状態の自然寿命の時間スケールより短くなる。この結果、核スピン偏極装置1は、時間経過に従って偏極度Pが変化する過渡的な原子Aの核スピンの偏極状態を作ることができる。
そして、発光制御部15の制御によって、原子Aの核スピンが所望の偏極度Pとなったタイミングで、レーザ光源を備えるイオン化部14からレーザ光が発光され、励起状態の原子Aにレーザ光が照射される。
レーザ光源を備えるイオン化部14からレーザ光が照射されると、励起状態の原子Aがイオン化され、価電子がはぎ取られることによって閉殻構造となる。これによって核スピンと相互作用する価電子が既に無いため、核スピンの偏極度が凍結(維持)され得る。
ここで、発光部11からのパルスレーザ光によって励起された際に基底状態の原子Aが残ると、レーザ光源を備えるイオン化部14からレーザ光が照射された際に、この基底状態の原子Aもイオン化される場合がある。基底状態の原子は、核スピンが無偏極であるため、この状態からイオン化が生じると、偏極度Pが低下してしまう。このため、パルスレーザ光によって励起された原子Aの核スピンが基底状態と励起状態との間で完全な反転分布となる光強度で発光部11がパルスレーザ光を発光することが好ましい。これによってより容易に核スピンを所望の偏極度Pで凍結することが可能となる。
このように動作することによって、核スピン偏極装置1は、過渡的に核スピンの偏極状態を生成することができ、また、所望の偏極度Pで核スピンの偏極状態を凍結することができる。
ここで、一例として、I=1/2および3/2であるマグネシウム(27Mg)及びカルシウム(37Ca)のシミュレーション結果について説明する。
図3は、マグネシウムのエネルギー図である。図4は、マグネシウムの場合における時間経過に対する核スピンの偏極度の変化を示す図である。図5は、カルシウムの場合における時間経過に対する核スピンの偏極度の変化を示す図である。図4及び図5の横軸は、ナノ秒単位で表す時間(time)であり、その縦軸は、核スピンの偏極度(spin polarization)である。
27Mgは、基底状態の価電子の主量子数が3であり、電子配置(3sをとる。基底状態における27Mgのスピン角運動量Iは、1/2であり、全角運動量Fは、1/2である。図3に示すように、このようなマグネシウム原子を3kV/cmの静電場SE内でパルスレーザ光によって(3s6p)に励起する場合についてシミュレーションを行った。励起状態の全角運動量Fは、1/2、3/2である。パルスレーザ光は、波長174.8nmでパルス時間幅1ns(ナノ秒)である。シミュレーションの結果を図4に示す。
図4から分かるように、核スピンの偏極度Pは、時間経過に従って0から増加し、約26ナノ秒で最大となり、その後、時間経過に従って減少し、約52ナノ秒で0となるプロファイルとなる。約26ナノ秒における最大値Pmaxは、約0.88である。
一般に、核スピンがIである核種における偏極度Pは、式1によって定義される。
P=Σ((m・Y(m))/I ・・・(式1)
ここで、mは、核スピンの量子化軸に対する射影成分で核スピンの向きを表し、Y(m)は、核スピンの向きがmである確率である。また、Σは、mについて和をとる。
このように3kV/cmの静電場SE内で励起することによって、27Mgの偏極度Pは、約52ナノ秒の周期で変化しており、過渡的に核スピンの偏極状態が生成される。
そして、所望の偏極度Pとなったタイミングで、図3に示すように、励起状態のマグネシウム原子を2価の陽イオンMg2+にイオン化することによって、所望の偏極度Pで核スピンの偏極状態が凍結される。例えば、最大の偏極度Pmax=0.88で核スピンの偏極状態を凍結する場合には、発光部11によって励起後、約26ナノ秒後にイオン化部14のレーザ光源によってレーザ光を照射すればよい。また例えば、偏極度P=0.5で核スピンの偏極状態を凍結する場合には、発光部11によって励起後、約15ナノ秒後又は約37ナノ秒後にイオン化部14のレーザ光源によってレーザ光を照射すればよい。
また、37Caは、基底状態の価電子の主量子数が4であり、電子配置(4sをとる。基底状態における37Caのスピン角運動量Iは、3/2であり、全角運動量Fは、3/2である。このようなカルシウム原子を3kV/cmの静電場SE内でパルスレーザ光によって(4s6p)に励起する場合についてシミュレーションを行った。励起状態の全角運動量Fは、1/2、3/2,5/2である。パルスレーザ光は、波長239.9nmでパルス時間幅1nsである。シミュレーションの結果を図5に示す。
図5から分かるように、核スピンの偏極度Pは、大略、4つのピークを持ち、さらに各ピークがピーク付近で2つに分かれているプロファイルである。即ち、核スピンの偏極度Pは、時間経過に従って0から増加し、約2.5ナノ秒で第1極大値となり、その後、若干減少して約3.5ナノ秒で第1極小値となり、その後、再び増加して約5ナノで第2極大値となり、その後、減少して約7.8ナノ秒で第2極小値となる。その後、核スピンの偏極度Pは、再び増加し、約10ナノ秒で第3極大値となり、その後、若干減少して約11ナノ秒で第3極小値となり、その後、再び増加して約12.5ナノ秒で第4極大値となり、その後、減少して約15ナノ秒で第4極小値となる。その後、核スピンの偏極度Pは、再び増加し、約17.5ナノ秒で第5極大値となり、その後、若干減少して約19ナノ秒で第5極小値となり、その後、再び増加して約20ナノ秒で第6極大値となり、その後、減少して約22.2ナノ秒で第6極小値となる。その後、核スピンの偏極度Pは、再び増加し、約25ナノ秒で第7極大値となり、その後、若干減少して約26.5ナノ秒で第7極小値となり、その後、再び増加して約27.5ナノ秒で第8極大値となり、その後、減少して約30ナノ秒で0となる。約15ナノ秒の第4極小値で左右対称となっている。第1極大値及び第8極大値は、同一の値であり、約0.53である。第2極大値及び第7極大値は、同一の値であり、約0.62である。この第2極大値及び第7極大値は、最大値Pmaxでもある。第3極大値及び第6極大値は、同一の値であり、約0.45である。第4極大値及び第5極大値は、同一の値であり、約0.55である。第1極小値及び第7極小値は、同一の値であり、約0.5である。第2極小値及び第6極小値は、同一の値であり、約0.07である。第3極小値及び第5極小値は、同一の値であり、約0.39である。第4極小値は、約0.16である。
このように3kV/cmの静電場SE内で励起することによって、37Caの偏極度Pは、約30n秒の周期で変化しており、過渡的に核スピンの偏極状態が生成される。
そして、所望の偏極度Pとなったタイミングで、励起状態のカルシウム原子を2価の陽イオンCa2+にイオン化することによって、所望の偏極度Pで核スピンの偏極状態が凍結される。例えば、最大の偏極度Pmax=0.62で核スピンの偏極状態を凍結する場合には、発光部11によって励起後、約5ナノ秒後又は約25ナノ秒後にイオン化部14のレーザ光源によってレーザ光を照射すればよい。
なお、上記シミュレーションでは、マグネシウムやカルシウムを例に取り上げたが、他のアルカリ土類金属についても同様に計算可能である。また、静電場SEの強度を3kV/cmに設定したが、他の強度でも同様に計算可能である。上述したように、静電場SEの強度を大きくすると、遷移時間は、短くなり、変化の周期が短くなる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
本発明を説明するための図である。 実施形態における核スピン偏極装置の構成を示す図である。 マグネシウムのエネルギー図である。 マグネシウムの場合における時間経過に対する核スピンの偏極度の変化を示す図である。 カルシウムの場合における時間経過に対する核スピンの偏極度の変化を示す図である。
符号の説明
1 核スピン偏極装置
11 レーザ発光部
12 電極
13 直流電源
14 イオン化部
14a 第2レーザ発光部
15 発光制御部

Claims (5)

  1. 核スピンを偏極する核スピン偏極装置において、
    静電場を生成する静電場生成部と、
    前記静電場内の、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子を、複数の超微細準位へコヒーレントに励起するための励起光を発光する発光部とを備えたこと
    を特徴とする核スピン偏極装置。
  2. 前記励起光によって励起された原子が閉殻構造となるように該原子をイオン化するイオン化部をさらに備えたこと
    を特徴とする請求項1に記載の核スピン偏極装置。
  3. 前記発光部は、前記励起光によって励起された原子の占有密度が基底状態と励起状態との間で完全な反転分布となる光強度の励起光を発光すること
    を特徴とする請求項2に記載の核スピン偏極装置。
  4. 核スピンを偏極する核スピン偏極方法において、
    静電場内の、基底状態の電子配置が(ns(nは主量子数)である原子に励起光を照射して複数の超微細準位へコヒーレントに励起する工程を備えること
    を特徴とする核スピン偏極方法。
  5. さらに、前記励起光によって励起された原子をイオン化によって閉殻構造に形成する工程を備えること
    を特徴とする請求項4に記載の核スピン偏極方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011510288A (ja) * 2008-01-18 2011-03-31 コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 軌道角運動量を伴う光を用いる核磁気共鳴分光学

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