JP2008088311A - カーボンブラックおよびそれを配合したゴム組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動車タイヤのトレッド用として配合ゴムに高耐摩耗と低転がり抵抗性を同時付与し得る、低燃費タイヤ用として好適なカーボンブラックおよびこのカーボンブラックを配合したゴム組成物を提供すること。
【解決手段】窒素吸着比表面積(NSA)が110〜170m/g、DBP吸収量が90〜140cm/100g、窒素吸着比表面積とよう素吸着量(IA)との比(NSA/IA)が1.2以上、トルエン着色透過度(LT)が80%以下のカーボンブラックに表面処理を施して、処理前後の窒素吸着比表面積、DBP吸収量、窒素吸着比表面積とよう素吸着量の比の変化が±10%以内、トルエン着色透過度が95%以上に処理されたことを特徴とするカーボンブラック。および、このカーボンブラックを天然ゴム、合成ゴムまたはそれらのブレンドゴム100重量部に対し20〜150重量部配合したゴム組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴムに配合して高い耐摩耗性と低い転がり抵抗性を高度にバランスよく付与することができ、各種自動車タイヤのトレッド用途において高耐摩耗性と、低転がり抵抗性すなわち低燃費性とを同時にバランスよく併有させることのできるカーボンブラック、およびこのカーボンブラックをゴムに配合したタイヤトレッド用として好適なゴム組成物に関する。
ゴム補強用のカーボンブラックには比表面積やストラクチャーなどの特性により、多様な品種に分類されており、ゴムへの配合に当たっては部材用途に適合する品種のカーボンブラックを選定して用いている。
そして、各種自動車タイヤのトレッド部のような高度の耐摩耗性が要求されるゴム部材には、従来からSAF(N110)、ISAF(N220)などの粒子径が小さく、比表面積が大きい、高ストラクチャーのハード系カーボンブラックが使用されている。
また、省資源、省エネルギーに対する社会的要請から、近年、低燃費タイヤの研究開発が盛んに行われている。低燃費化のためには転がり抵抗を小さくすることが有効であり、転がり抵抗はゴム特性として反発弾性や発熱性と密接に関係している。一般に、ゴム組成物に低転がり抵抗性を付与し、低発熱性および高反発弾性などのゴム特性を付与するためにはゴムに配合するカーボンブラック特性として粒子径が大きく、比表面積の小さいカーボンブラックを配合することが有効である。
一方、タイヤトレッド用としては耐摩耗性が高いことが必要であり、上述したように配合ゴムに高い耐摩耗性を付与するためにはカーボンブラック特性として粒子径が小さく、比表面積が大きいことが必要であるから、低燃費タイヤのトレッド用としてゴムに配合するカーボンブラックに要求される特性方向は逆方向となり、背反関係になる。
そこで、カーボンブラックの比表面積、粒子径、ストラクチャーなどの基本的特性を単純に評価するのではなくて、基本的特性を組み合わせ評価することにより、低燃費タイヤのトレッド用として耐摩耗性、転がり抵抗性、発熱性、反発弾性などのゴム特性の両立化を図る研究が盛んに行われており、多くの特許が出願されている。
例えば、特許文献1には特定範囲の特性を有するカーボンブラックを前提に、(Tint/CTAB)、(24M4DBP/Dst)、(NSA/IA)から算出したf値を特定することにより配合ゴムに高耐摩耗性とグリップ性能をバランスよく付与するカーボンブラックが、特許文献2にはタイヤの低燃費性の指標となる60℃の損失正接(tanδ)が小さいカーボンブラックの製造方法として、カーボンブラックをゴムおよび加硫助剤から選ばれる少なくとも一種のゴムコンパウンド成分の共存下、非酸化性雰囲気中300〜1500℃で30秒以上熱処理するカーボンブラックの製造方法が提案されている。
また、特許文献3にはジエン系ゴム100重量部に対し、揮発分0.4重量%以下でかつ硫黄分0.005重量%以下、真比重が1.87〜2.18である熱処理カーボンブラックを3〜40重量部配合した転がり抵抗の小さいタイヤ用ゴム組成物が、特許文献4には、配合ゴムの耐摩耗性と発熱性などをバランスよく改良するカーボンブラックとして、NSA/IA、DBP、NSA+7×dn、Tint−Bなどを特定したカーボンブラックが開示されている。
また、特許文献5にはNSA150〜250m/g、DBP吸収量が100〜160cm/g、比着色力(Tint)が120%以上の特性を有し、不活性ガス雰囲気下700〜1100℃の温度域において熱処理されたカーボンブラック100重量部に対して、ジエン系ゴム120〜150重量部、アロマ系オイル50〜70重量部配合してなる、耐摩耗性、補強性、グリップ性能に優れたゴム組成物が開示されている。
特開2000−080302号公報 特開2001−323184号公報 特開2002−053701号公報 特開2002−188022号公報 特開2004−026920号公報
一般的に、カーボンブラック配合ゴムに高耐摩耗性と低転がり抵抗性を付与するための改良方向の1つとしては、カーボンブラック粒子の表面活性を高めることが有効とされており、表面活性度の指標の1つとして窒素吸着比表面積/よう素吸着量の比が用いられている。
カーボンブラック粒子の表面活性度を高くするにはカーボンブラックの生成時間を短くすること、すなわち反応滞留時間を短くするほど表面活性が大きくなる。しかし、カーボンブラック生成反応の時間を短くすることは、原料炭化水素を熱分解してカーボンブラッ
クを生成する際の中間生成物である重縮合炭化水素が残留し易くなり、この重縮合炭化水素の残留量が多くなると配合ゴムの補強性などのゴム特性が悪化することになる。
カーボンブラック粒子表面に残留する重縮合炭化水素量はトルエン着色透過度によって評価されるが、本発明者は特定の比表面積およびストラクチャーを有し、高表面活性のカーボンブラックすなわち一定値以下のトルエン着色透過度を有するカーボンブラックを、過度に結晶化させないマイルドな条件下に表面処理して、トルエン着色透過度を上げるとともに表面処理前後の比表面積、ストラクチャーなどの変化度合いを特定の範囲内に保持すると、配合ゴムに高耐磨耗性と低転がり抵抗性、低発熱性をバランスよく付与し得ることを確認した。
本発明は、この知見に基づいて完成したもので、その目的は自動車タイヤのトレッド用として配合ゴムに高耐摩耗と低転がり抵抗性を同時付与し得る、低燃費タイヤ用として好適なカーボンブラックおよびこのカーボンブラックを配合したゴム組成物を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係るカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が110〜170m/g、DBP吸収量が90〜140cm/100g、窒素吸着比表面積とよう素吸着量(IA)との比(NSA/IA)が1.2以上、トルエン着色透過度(LT)が80%以下のカーボンブラックに表面処理を施して、処理前後の窒素吸着比表面積、DBP吸収量、窒素吸着比表面積とよう素吸着量の比の変化が±10%以内、トルエン着色透過度が95%以上に処理されたことを構成上の特徴とする。
また、本発明のゴム組成物は、上記のカーボンブラックを天然ゴム、合成ゴムまたはそれらのブレンドゴム100重量部に対し20〜150重量部の割合で配合してなることを構成上の特徴とする。
本発明によれば、配合ゴムに高位の耐摩耗性と低位の転がり抵抗性とをバランスよく付与することができ、低燃費タイヤのトレッド用に好適なゴム配合用のカーボンブラック、およびゴム組成物が提供される。
本発明のカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が110〜170m/g、DBP吸収量が90〜140cm/100g、窒素吸着比表面積とよう素吸着量(IA)との比(NSA/IA)が1.2以上、トルエン着色透過度(LT)が80%以下のカーボンブラックを対象として、表面処理を施したものである。
表面処理を施す対象とするカーボンブラックの窒素吸着比表面積が110m/g未満では、配合ゴムの耐摩耗性が低くなりタイヤトレッド用としては不適である。しかし、窒素吸着比表面積が170m/gを越えると配合ゴムの加工性が著しく低下することになる。
表面処理を施す対象とするカーボンブラックのDBP吸収量を90〜140cm/100gとするのは、90cm/100g未満ではゴムへの配合、混練時に掛かる剪断応力が小さく、ゴム中への分散性が低下するので、タイヤトレッド用としてはモジュラスや耐摩耗性が不足する。一方、140cm/100gを越えると、配合ゴムの加工性が著しく低下するためである。
次に、表面活性度を示す窒素吸着比表面積とよう素吸着量(IA)との比(NSA/IA)を1.2以上とするのは、1.2未満ではゴムとの結合が弱く、また表面処理の効果が小さくなるためであり、また、同様の理由からトルエン着色透過度(LT)が80%以下のカーボンブラックを対象とする。
これらの選択的特性を有するカーボンブラックを対象として表面処理が施される。なお、これらの選択的特性を有するカーボンブラックは特別なものではなく、例えば、オイルファーネス法により製造されるファーネスブラックを用いることができ、公知の特性調節手段により製造することができる。
表面処理の方法は高温熱処理が容易であるが、高温熱処理はカーボンブラック粒子表面の結晶化が進むため表面活性が低下し、ゴムとの結合力が弱くなるので、配合ゴムの補強効果が不十分となる。
そこで、本発明の表面処理はマイルドな処理が好ましく、窒素や不活性ガスなどの非酸化性雰囲気中で比較的に低温で処理すること、例えば500℃以下、好ましくは400℃以下の温度で熱処理することが好適である。あるいは、有機溶媒、例えばトルエン、ベンゼンなどの有機溶媒で洗浄処理する方法により表面処理することもできる。
そして、本発明のカーボンブラックは上記の特性を有するカーボンブラックを対象として適宜な方法でマイルドに表面処理を施し、表面処理の程度として表面処理前後のカーボンブラック特性の変化の度合い、すなわち、処理後の特性/処理前の特性の比の変化割合(%)を窒素吸着比表面積、DBP吸収量、窒素吸着比表面積とよう素吸着量の比の変化を±10%以内に特定するものである。これらの比の変化が±10%を越えるような強烈な処理では表面活性度が損なわれるためである。
また、表面処理後のトルエン着色透過度(LT)を95%以上とするのも処理の適正度を示すものであって、95%に達しないような表面処理では不十分であって、表面活性度の効果が十分に得られないためである。
なお、これらのカーボンブラック特性は、下記の方法によって測定される値である。
(1)窒素吸着比表面積;
JISK6217−2「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部、比表面積の求め方−窒素吸着法、単点法」による。
(2)DBP吸収量;
JISK6217−4「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部、DBP吸収量の求め方」による。
(3)よう素吸着量;
JISK6217−1「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第1部、よう素吸着量の求め方−滴定法」による。
(4)トルエン着色透過度;
JISK6218「ゴム用カーボンブラックの付随的性質の試験方法、8トルエン着色透過度 A法」による。
本発明のゴム組成物は、上記の特性に表面処理されたカーボンブラックを常法に従い、天然ゴム、又はスチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴムなどの各種合成ゴムおよびそれらのブレンドゴムなどのエラストマーに、ゴム成分100重量部に対して20〜150重量部の割合で配合したものである。
カーボンブラックの配合比率が20重量部を下回ると十分な補強効果が得られず、150重量部を超えるとゴム成分への配合混練り時に粘度が上昇して混練加工性が著しく低下するためである。なお、カーボンブラックのゴム成分への配合に際しては、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、加硫助剤、軟化剤、可塑剤などの通常使用される必須成分と共に、混練りしてゴム組成物が得られる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制約されるものではない。
実施例1〜6、比較例1〜6
表面処理を施す対象とするカーボンブラックを図1に示した反応炉を用いて製造した。
図1に示した反応炉は、炉頭部に接線方向の燃焼用空気導入ダクト8と軸方向の燃焼用バーナ9が装着され、下流側出口が緩やかに縮径する内径700mm、長さ500mm(縮径部、内径150mm、長さ150mm)の燃焼室1、該燃焼室と同軸的に連結する第1段狭径反応室2(内径150mm、長さ400mm)、第2段狭径反応室3(内径200mm、長さ300mm)および引き続く広径反応室4(内径500mm、長さ3000mm)とから構成され、第1段狭径反応室2には第1原料油供給ノズル5、第2段狭径反応室3には第2原料油供給ノズル6、広径反応室4には反応停止用冷却水ノズル7が装着されている。
この反応炉により、原料油に比重1.073、エングラー粘度(40/20℃)2.10、トルエン不溶分0.03%、相関係数(BMCI)140、初期沸点103℃の芳香族炭化水素油を、また燃料油には比重0.903、粘度(Cst/50℃)16.1、残炭分5.4%、引火点96℃の炭化水素油を用いて、反応条件を変えて特性の異なるカーボンブラックを製造した。
これらのカーボンブラックについて窒素雰囲気中で熱処理する温度および時間を変えて表面処理する方法、またはトルエンで洗浄処理する方法により表面処理を行った。表面処理後の特性を測定して処理前後の特性変化の比を求め、得られた結果を表1(実施例)、表2(比較例)に示した。なお、比較例1,2,5は表面処理を施さなかった例である。また、表3には参考例として、市販されている3種類のハード系カーボンブラックの特性(未処理品)を示した。
Figure 2008088311
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これらのカーボンブラックを表4に示す配合割合で天然ゴムに配合し、配合物を145℃の温度で30分間加硫してゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物について、下記の方法によりゴム物性を測定し、測定結果は参考例1のカーボンブラック(N234級カーボンブラック)を100として、表5に指数で示した。
(1)引張応力;
JISK6301「加硫ゴム物理試験方法」により測定した。
(2)耐摩耗性;
ランボーン摩耗試験機(機械式スリップ機構)を用い、次の条件で測定した。なお、指数値は大きいほど耐摩耗性が高いことを示す。
試験片;厚さ10mm、外径44mm、
エメリーホイール;GCタイプ 粒度#80、硬度H
添加カーボランダム粉;粒度#80、添加量9g/min
エメリーホイール面と試験片との相対スリップ率;18%、60%
試験片回転数;535rpm、
試験荷重;4Kg
(3)損失係数(tanδ)
全自動粘弾性アナライザ(上島製作所製)を用い、次の条件で測定した。なお、指数値が大きいほど発熱性が高い(転がり抵抗が大きい)ことを示す。
試験片;厚さ2mm、長さ35mm、幅5mm
周波数;50Hz
温度;60℃
動的歪率;1.3%
Figure 2008088311
Figure 2008088311
実施例1,2は、比較例1,2のカーボンブラックを窒素雰囲気中、400℃で5時間熱処理したものであるが、比較例1,2に比べてモジュラス、引張強さ、耐摩耗性などの補強性能は維持ないし向上が見られるのに加えて、転がり抵抗の指標である損失係数が大幅に低下しており、耐摩耗性と転がり抵抗のバランスが大幅に改良されている。また、実施例3,4も実施例1,2と同様に耐摩耗性と転がり抵抗のバランスが良好であることが認められる。
実施例5、6は実施例1、3のカーボンブラックを熱処理でなく、トルエン洗浄により表面処理したものであるが、実施例1,3と同様に耐摩耗性と転がり抵抗がバランスよく付与されていることが分かる。
また、比較例3、4は、カーボンブラックの生成反応時間を長くして、窒素吸着比表面積/よう素吸着量の比を下げたカーボンブラックについて、実施例1〜4と同じ表面処理を施した場合であるが、損失係数が大きくなり、耐摩耗性と転がり抵抗のバランスが崩れてしまっている。
なお、比較例6は実施例1、5のカーボンブラックについて高温で表面処理した場合であるが、処理の程度が激しいので表面活性度が低くなり過ぎて、耐摩耗性と転がり抵抗のバランスが悪化することが分かる。
更に、図2は実施例と比較例、参考例の損失係数(tanδ)とランボーン耐摩耗性の関係を打点した散布図であるが、図2からも実施例では耐摩耗性と転がり抵抗性とをバランスよく併有していることが認められる。
実施例、比較例においてカーボンブラックを製造するために用いた反応炉の側断面図である。 実施例と比較例、参考例の損失係数(tanδ)とランボーン耐摩耗性の関係を示す散布図である。
符号の説明
1 燃焼室
2 第1段狭径反応室
3 第2段狭径反応室
4 広径反応室
5 第1原料油供給ノズル
6 第2原料油供給ノズル
7 冷却水ノズル
8 燃焼用空気導入ダクト
9 燃焼用バーナ

Claims (2)

  1. 窒素吸着比表面積(NSA)が110〜170m/g、DBP吸収量が90〜140cm/100g、窒素吸着比表面積とよう素吸着量(IA)との比(NSA/IA)が1.2以上、トルエン着色透過度(LT)が80%以下のカーボンブラックに表面処理を施して、処理前後の窒素吸着比表面積、DBP吸収量、窒素吸着比表面積とよう素吸着量の比の変化が±10%以内、トルエン着色透過度が95%以上に処理されたことを特徴とするカーボンブラック。
  2. 天然ゴム、合成ゴムまたはそれらのブレンドゴム100重量部に対し請求項1のカーボンブラックを20〜150重量部の割合で配合したゴム組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2021193076A1 (ja) * 2020-03-23 2021-09-30 株式会社ブリヂストン ゴム組成物、及びタイヤ

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