以下本発明の特定発明としての流体圧式アクチュエータの実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は本発明において流体として空気を用いた空気圧式アクチュエータの実施形態1における膨張状態を示す側面図、図2は図1の空気圧式アクチュエータの収縮状態を示す側面図である。なお、図1では、空気圧式アクチュエータの内部構造を示すために、メッシュスリーブ及び低摩擦体の一部を破断して示している。
図1、及び図2において、膨張収縮体としてのインナーチューブ1の長さ方向の一端部には、流体である空気をインナーチューブ1内に対して供給・排出するための給排気管2が接続されている。インナーチューブ1の他端部は、ブッシュ(図示省略)を挿入することにより気密に閉じられている。インナーチューブ1は、例えばブチルゴム等の弾性体により構成されている。給排気管2には、小型エアコンプレッサーと電磁弁等から成る空気の給排気装置(図示省略)が接続されている。
インナーチューブ1の外周は、網目状の被覆体であるメッシュスリーブ3により覆われている。このメッシュスリーブ3は、荷重に対する伸びが極めて小さな樹脂製、例えばナイロン又はポリエステル繊維等の高張力繊維等の線材(フィラメント)を編み上げたもので、その網目はメッシュスリーブ3の長さ方向へ所定の角度を持って2方向からクロスするように編み上げられている。上記のメッシュスリーブは内周から圧力を受けると、径方向へ膨張して長さが収縮し、圧力が開放されると径と長さが元の状態に復帰する特性を持つように形成されている。前記先行技術文献1に開示されたメッシュスリーブのフィラメント同士がクロス点で固着されているのに対し、本実施形態のメッシュスリーブはフィラメント同士がクロス点で固着されずに交差している点で異なる。この相違は、選考技術文献に開示されたメッシュスリーブは、動作するたびにフィラメントのクロス点に生ずる応力によって破損する懸念があるが、本実施形態のメッシュスリーブはクロス点においてフィラメント同士が固着されていなく、上記応力によってフィラメント同士のクロス点からメッシュスリーブが破損する問題はない。ただし、本発明は、先行技術文献1に記載されたフィラメント同士のクロス点が固着しているメッシュスリーブを除外するものではない。
メッシュスリーブ3の長さ方向の両端部は、締付具4a,4bにより締め付けられており、これによりインナーチューブ1の両端部に対して固定されている。
インナーチューブ1とメッシュスリーブ3との間には、メッシュスリーブ1に対する摩擦係数がインナーチューブ1に対するそれよりも小さい低摩擦体5が設けられている。低摩擦体5は、インナーチューブ1の全体を覆うように配置され、締付具4a,4bによりインナーチューブ1の両端部でインナーチューブ1に対してメッシュスリーブ3と共に固定される。低摩擦体5は、収縮時にほぼインナーチューブ1の収縮時の外径に等しい周長を有した筒状体であり、低摩擦体5の材料としては、例えばストッキング等に使用される伸縮可能な布材を用いることができる。このような布材は、例えばポリウレタンの芯繊維にナイロン繊維を組み合わせた合成繊維を編み上げて伸縮可能に構成されており、樹脂製フィラメントを編み上げたメッシュスリーブに対する摩擦係数が、ブチルゴムやシリコンゴム製のインナーチューブに対する摩擦係数よりも小さい。なお、低摩擦体5は使用する繊維がそうであるように、公知のストッキングの編上げ技術を用いて繋ぎ目のない筒状体として製造されることが望ましい。
このような空気圧式アクチュエータでは、インナーチューブに対して空気を供給することによりインナーチューブ1が膨張するが、メッシュスリーブ3の素材は(伸縮性をほとんど持っていないので)伸張されず、インナーチューブ1の径の増大は全長の縮小に変換される。また、インナーチューブ1から供給された空気を排出することにより、インナーチューブ1の径が小さくなり、アクチュエータの全長は元に戻る。
このような膨張・収縮に際し、インナーチューブ1とメッシュスリーブ3との間に低摩擦体5が設けられているので、インナーチューブ1とメッシュスリーブ3とは直接摩擦されず、少ない繰返し動作でインナーチューブ1に裂傷が生じることや、メッシュスリーブ3の繊維が破断することが防止される。したがって、空気圧式アクチュエータの繰返し動作に対する耐久性、換言すれば長寿命化が達成できる。
図3はメッシュスリーブ3の一部を示す拡大図である。メッシュスリーブ3は複数本のポリエチレンフィラメント6の束を網目状に編んで構成されている。また、メッシュスリーブ3はポリエチレンフィラメント6の本数を充分に多く、すなわち配置密度を充分に高くすることにより目の細かい網目構造にされている。これにより、空気の供給によって膨張させられたインナーチューブ1の一部がメッシュスリーブ3の網目からはみ出すことが防止され、インナーチューブ1の耐久性を向上することができる。
発明者らは、前記従来技術の問題点を確認するために、メッシュスリーブを網目の粗い構造とした場合と網目の細かい構造とした場合とについて、耐久性の試験を行った。この耐久試験において、網目の粗い第1試験体としては144本のポリエチレンフィラメントを有するメッシュスリーブを用い、網目の細かい第2試験体としては288本のポリエチレンフィラメントを有するメッシュスリーブを用いた。また、両者の編上げ方法は同一とし、両者ともインナーチューブへ空気を供給していない初期状態の径を約15mmに形成し、空気を供給した後に内圧により直径30mmまで拡大させた。さらに、試験用のメッシュスリーブとしては、電気配線を保護したり結束したりするために使用される可変径網目状スリーブを用いた。さらにまた、この試験では、低摩擦体は使用しなかった。
その結果、第1試験体では、耐圧力は0.3MPa、長さの収縮率は25%となり、繰返し負荷を印加した場合に、許容伸縮回数が200〜300回であったのに対して、第2試験体は、耐圧力は0.7MPa、長さの収縮率は30%となり、繰返し負荷を印加した場合に、許容伸縮回数が7,000〜20,000回であった。この試験結果をもう少し詳しく説明すると、第1試験体では、伸縮回数の増加に伴いインナーチューブの両端部近傍で網目のサイズが大きくなり、膨張時にインナーチューブが網目からはみ出す現象が見られた。これに対して、第2試験体では、繰返し使用によっても、メッシュスリーブの長さ方向の全体にわたって網目のサイズが変化せず、均等な膨張収縮が繰り返された。
この試験から、メッシュスリーブの網目を粗くすると、インナーチューブへ供給される空気の圧力が小さくてもアクチュエータの収縮率が大きくできるが、インナーチューブがメッシュスリーブの網目からはみ出したり、メッシュスリーブが破損したりするために、アクチュエータの寿命が短いことが判明した。
次に本発明の効果を確認するために、上記の試験と同様の第2試験体と、第2試験体へ前記低摩擦体5を組み込んだ第3試験体とで耐久性の比較試験を行った。試験用の低摩擦体としては、市販のストッキング(繊維の太さは40デニール)の一部を利用した。
その結果、第2試験体は上記のように耐圧力が0.7MPa、長さの収縮率が30%の繰返し負荷を印加した場合に、許容伸縮回数が7,000〜20,000回であったのに対して、第3試験体では、耐圧力が0.7MPa、長さの収縮率が30%の繰返し負荷を印加した場合に、許容伸縮回数が80,000〜400,000回であった。このような比較試験からも低摩擦体を組み込むことによりアクチュエータの耐久性が向上することが確認された。
以上の実施形態においては、アクチュエータへ空気を送り込むとインナーチューブが径方向へ膨張し、インナーチューブの周方向へ引張応力が発生する。これゆえにメッシュスリーブの網目の間からインナーチューブがはみ出すこととなる。次の第2の実施形態の空気圧式アクチュエータは、アクチュエータを作動させたときに、インナーチューブの周方向に引張応力が生じないようにしたものである。
図4はこの発明の実施形態2による空気圧式アクチュエータの側面図、図5は図4に示すインナーチューブの斜視図、図6は図5のインナーチューブの横断面図、図7は図5のインナーチューブの膨張状態の横断面図である。なお、図4はアクチュエータの内部構造を示すためにメッシュスリーブの一部を破断して示してある。
図において、膨張収縮体としてのインナーチューブ11は、収縮状態から膨張状態へ移る過程で、表面積を同一に保ちつつチューブに囲まれた領域の断面積が増大されるように構成されている。すなわち、インナーチューブ11には、収縮時に内側に突出する複数の襞状部11aがチューブの周方向に等間隔で複数設けられている。インナーチューブ11の膨張時には、図7に示すように襞状部11aが拡げられることによりインナーチューブ11に囲まれる領域の断面積が増大される。
インナーチューブ11は、図1に示す実施形態と同様に、例えばブチルゴムやシリコンゴム等の伸縮性を有する弾性体により構成されている。インナーチューブ11の外周は、網目状の被覆体であるメッシュスリーブ3により覆われている。メッシュスリーブ3の構成は実施形態1と同様である。
なお、この例では、インナーチューブ11の断面周囲長(図6の断面に外接する円の周長)に対して、インナーチューブ11が膨張したときの断面周囲長(図7の円周長)が2.2倍以内となっている。
次に、本実施形態2における動作を説明する。インナーチューブ11内に空気が供給されることにより、インナーチューブ11の表面積が変化しないままインナーチューブ11に囲まれた領域の断面積が増大される。すなわち、本実施形態2のインナーチューブ11では、膨張時に、断面における外周長を同一に維持したままインナーチュ−ブ11囲まれた断面積が増大するようにチューブの断面形状が変化する。そして、上記のようなインナーチューブ11の膨張により、アクチュエータの全長が縮小され、アクチュエータの両端間に駆動力が発生する。本実施形態を実施するには、インナーチューブ11が図7に示すように襞が全部伸ばされてインナーチューブ11の断面が円となったときに、アクチュエータが所望の長さだけ縮むように、メッシュスリーブ3とインナーチューブ11の関係を設定すればよい。
全長が縮小したアクチュエータは、インナーチューブ11から空気を排出することによって、インナーチューブ11は図6に示す断面形状に復帰するので、元の長さに戻る。
本実施形態2の空気圧式アクチュエータは、インナーチューブ11の弾性を利用せずに、換言すればチューブの周方向へ引張応力を生じさせることなくチューブを膨張させることができる。したがって、インナーチューブ11がメッシュスリーブ3の網目からはみ出すことがない。したがって、インナーチューブ11に傷が生じ、その傷が膨張時に拡がるということが少なくなる。また、インナーチューブ11には膨張時に引張応力が作用しないので、インナーチューブへ引張応力を繰返し作用させてもインナーチューブに塑性変形が生ずることが防止され、インナーチューブ11の特性を安定に保つことができる。したがって、インナーチューブ11の耐久性が向上するので、アクチュエータの長寿命化が図れる。
さらに本実施形態2によれば、インナーチューブは供給された空気の分だけ膨張するのでアクチュエータが発生する力の特性が線形に近くなり、また上記の如くインナーチューブに塑性変形が生じないことからヒステリシスロスも低減されるので、アクチュエータの伸縮制御の精度を向上することができる。
なお、上記実施形態2においては、インナーチューブ11の表面積を同一に保つように空気の供給を制御したが、インナーチューブの11の材質の弾性変形の範囲内であれば、インナーチューブ11の表面積が図7の状態からある程度増大するレベルまで空気の供給を行っても良い。この場合にも、インナーチューブ11の膨張過程の大部分でインナーチューブ11には引張応力が生じないので、インナーチューブ11の耐久性を向上させることができる。
また、インナーチューブ11の構造を、膨張の初期段階からインナーチューブ11の表面積が増大しつつ襞状部が拡がるようにしても良い。この場合も、インナーチューブ11の弾性変形量は襞状部を全く設けない場合に比べて少なくて済み、インナーチューブ11の耐久性を向上することができる。
さらに実施形態2では、インナーチューブ11の外周にメッシュスリーブ3を配置したが、インナーチューブ11とメッシュスリーブ3との間に実施形態1と同様の低摩擦体5を設けても良い。
次に本発明の第3の実施形態の空気圧式アクチュエータを説明する。図8は本発明の実施形態3のインナーチューブの収縮時の横断面図である。図8に示すように、インナーチューブ12は収縮時に折り畳まれた断面形状をしている。このようなインナーチューブ12を用いた場合にも、膨張時にインナーチューブの表面積を変化させずにインナーチューブに囲まれた領域の横断面積を増大させることができる。したがって、本実施形態3によっても、インナーチューブ12の耐久性を向上させ、アクチュエータの長寿命化を図ることができるとともに、伸縮制御の精度を向上することができる。
以上、本発明の流体圧式アクチュエータとして空気圧を用いたアクチュエータを例に挙げて説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。例えば膨張収縮体へ供給される流体は、空気に限定されるものではなく、用途に応じて種々の気体又は液体を用いることができる。
また、実施形態1乃至3においては、細長いチューブ状のアクチュエータのみを示したが、膨張収縮体の形状を変えた種々の流体圧式アクチュエータにも本発明を適用することができる。
さらに、上記実施形態2及び3におけるインナーチューブの収縮時の横断面形状は、図5及び図8に示したものに限定されるものではなく、例えば星状に襞が形成されたものでも良い。
さらにまた、この発明の流体圧式アクチュエータは、人間が着用する着用形ロボットを駆動するためのアクチュエータ、すなわち人工筋肉として使用することができる。さらに、産業用ロボットや建設機械等を駆動するためのアクチュエータとして使用することができる。さらにまた、関節に障害を有する身体障害者用リハビリテーション機器を駆動するアクチュエータとしても使用することができる。すなわち、本発明の流体圧式アクチュエータは広範な分野の機器に用いることができる。
以上説明したように、本発明によれば、膨張収縮体と被覆体との間に被覆体に対する摩擦係数が膨張収縮体のそれよりも小さい低摩擦体が設けられているので、繰返し使用に対するアクチュエータの耐久性の向上、すなわち長寿命化が図れる。
また、本発明によれば、収縮状態から膨張状態へ移る過程の少なくとも一部で、表面積を同一に保ちつつ囲まれた領域の面積が増大するように膨張する膨張収縮体を用いたので、アクチュエータの繰返し使用に対する耐久性の向上、すなわち長寿命化が図れる。
次に、本発明の関連発明としてのCPM装置について説明する。図9は上記流体圧式アクチュエータを構成要素として備えたCPM装置の概略構成図である。図9において、20はCPM装置本体、80はボックスタイプの制御装置、90はCPM装置本体20と制御装置80との間を接続するエアホースであり、図では1本で示してあるが、制御装置内の電磁弁から各種タイプのエアアクチュエータへ接続される複数本のエアホースが束ねられたものである。制御装置80は、図では省略されているが、ボックス内部にエアコンプレッサー、電磁弁、及び中央制御装置(CPU)及びそれらを電気的に接続する回路が収納されるとともに、これらに電力を供給する電源コンセントを外部に備えている。コンプレッサーは、圧力空気を生成するもの、電磁弁はエアアクチュエータへの空気の供給、排出を行うためのもの、CPUはCPM装置の動作を制御するためのもので、CPUに備えられたROMにCPM装置の動作シーケンスが複数種記憶されている。そして、制御ボックスタイプの制御装置80には、操作パネル81が設けられている。なお、電磁弁は、各アクチュエータの近傍に設けても良い。アクチュエータの近傍へ電磁弁を設けることで、アクチュエータへの空気の供給効率、アクチュエータからの空気の排出効率の向上が図れる。
図9に示すようにCPM装置を構成すると、CPM装置本体には前述の流体圧式エアアクチュエータが駆動用アクチュエータとして組み込まれ、エアコンプレッサーのような重量物はCPM装置本体とは分離して設けられので、CPM装置本体の移動操作が容易となる。
次に、CPM装置20の第1の実施形態を、図10乃至図12を用いて説明する。
図10は肘の屈曲・伸展運動を行わせるためのCPM装置の平面図、図11は図10に示すCPM装置の下面図で、肘の屈曲動作時の状態を示す図、図11は図10に示すCPM装置の上面図で、肘の伸展動作時の状態を示す図である。
図10において、21はCPM装置のベースとしてのベースプレートで、このベースプレート21の上面には、回動支持部22が設けられている。この回動支持部22は、ベースプレート21の上面に配置された回動支持部材22aと、この回動支持部材22aの図示右端の上下に設けられた1組の回動支持部22b,22cとから成る。そして、回動支持部22b,22cには図1のY軸に平行な回動軸23a,23bが設けられ、この軸23a,23b によって、人の前腕を支持する前腕支持プレート24が回動可能に回動支持部22b,22cと連結されている。人体の肘は1組の回動支持部22b,22cの中間に置かれ、前腕支持プレート24によって前腕が支持されるようになっている。回動支持部材22aはベースプレート21とほぼ同一の幅を有し、幅方向の両端部で厚みが厚く、中央部で厚みが薄く形成され、内部は中空になっていて、ベースプレート21を覆うカバーの役目も果たしている。前腕支持プレート24は図12に示す水平状態と、図11に示す約120°立位状態との間で回動可能となっている。
前腕支持プレート24は上面がほぼ平面で、裏面が前記回動支持部材22aの上面に沿った形状をしたほぼ板状部材で、図示右端部に前記回動支持部22b,22cに取り付けられた回動軸23a,23bへ連結される連結部材24a,24bが設けられている。前腕支持プレート24上には、掌部分を緩く保持(狭持)する保持部材25が設けられていると共に、肘より先の部分が前腕支持プレート24のエッジに当たることを防ぐ目的で、前腕支持プレート24の一部分に凹部24cが形成されている。保持部材25は、CPM装置を使用する時に、使用者が肘を前記回動支持部の付近に置き、前腕を前腕支持プレート24上で伸ばすと、掌が保持部材25によって緩く保持されるような位置に配置されている。
前腕支持プレート24は連結部材24a,24bを介して、回動支持部22b,22cの各々の回動軸23a,23bに結合されている。回動軸23a,23bは、両端支持構造によって回転可能に回動支持部22b,22cによって支持されている。回動軸23a,23bには、それぞれプーリ26a,26bが固定され、プーリ26a,26bにはワイヤ27a,27bが巻き付けられている。それらのワイヤ27a,27bの一端はプーリ26a,26bに固定されている。なお、ワイヤが巻き付けられるプーリ26a,26bの溝の径は、前腕支持プレート23を回動させるためのモーメント(前腕支持プレートの重量と回動中心から重心までの距離との積<アクチュエータの収縮力と溝の径との積)を考慮して決定することができる。また、プーリ26a,26bに対するワイヤ27a,27bの巻き付け量は前腕支持プレート24の回動角度を考慮して決定することができる。
そして、2本のワイヤのうちの1つのワイヤ27aにおける端部と、ベースプレート21との間または回動支持部材22aとの間(好ましくは、回動支持部材22aとの間)には、前腕支持プレート24を水平状態からほぼ120°回動させるための駆動力を発生する流体圧式アクチュエータ(空気圧式アクチュエータ)としてのチューブ形エアアクチュエータ28aが設けられている。また、ワイヤ27のうちのもう一方のワイヤ27bにおける端部と、ベースプレート21との間または回動支持部材22aとの間(好ましくは、回動支持部材22aとの間)には、前腕支持プレート24を120°回動された状態から水平状態へ復帰させるための駆動力を発生する流体圧式アクチュエータ(空気圧式アクチュエータ)としてのチューブ形エアアクチュエータ28bが設けられている。
詳細に説明すると、チューブ形エアアクチュエータ28aの一端部は前記ワイヤ27aの一端部に接続され、そのワイヤ27aの他端部は図10に示すようにプーリ26aへ導入されてプーリ26aへ固定されている。また、チューブ形エアアクチュエータ28bの一端部もワイヤ27bの一端部へ接続され、そのワイヤ27bの他端部は図11に示すようにプーリ26b へ導入されてプーリ26b へ固定されている。
しかし、チューブ形アクチュエータ28bは前腕支持プレート24を図11に示す状態から戻すものであるので、チューブ形アクチュエータ28b が作動した時に、プーリ26b の回転と逆方向へ前腕支持プレート24を回動させる機構が必要となる。この逆作動機構29は図12においては簡略化して示しているが、詳細には、例えば次のように構成されている。すなわち、プーリ26bは回動軸23bに対し回転自在に取り付けられ、このプーリ26bには傘歯車Aが同軸に固定されている。そしてこの傘歯車Aに噛み合うように小さな傘歯車Bが回動軸23bを間に挟んで2個配置されている。さらにそれらの2個の傘歯車Bにかみ合うように傘歯車Cが配置され、この傘歯車Cが回動軸23bへ固定されている。逆作動機構29をこのように構成するとワイヤ27bからプーリ26bへ伝達された力は、傘歯車Aから傘歯車Bを介して傘歯車Cへ伝達されるが、傘歯車Aと傘歯車Cとは回転方向が逆となる。したがって、チューブ形アクチュエータ28bが作動すると、前腕支持プレート24は図11の状態から水平方向へ回動されることとなる。なお、以上の逆作動機構29は、ワイヤ27bをプーリ26bへ導入する方向をプーリ26aへのワイヤ27aの導入方向と同一にするためのもので、補助プーリを別途設けてワイヤ27bを上記とは逆方向からプーリ26bへ導入することで、逆作動機構の簡略化を計ることも可能である。
なお、以上のチューブ形エアアクチュエータ28a,28bは、本発明の特定発明にて説明を行った図1及び図4に示すタイプの空気圧式アクチュエータが使用される。なお、チューブ形アクチュエータ28a,28bは同一仕様のものでも、異種仕様のものでもよい。異種仕様とする場合には、前腕支持プレート24 を水平から立ち上げるためのアクチュエータ28aは収縮力の強いものを用い、前腕支持プレート24を水平へ戻すためのアクチュエータ28bは収縮力の弱いものを用いると良い。
したがって、チューブ形アクチュエータ28aの一端部に接続されたエアチューブ(図示省略)を介してアクチュエータのインナーチューブへ、例えばエアコンプレッサーや電磁弁から成る空気給排気装置(図示省略)から空気を供給することにより、チューブ形アクチュエータ28aの長さが収縮する。チューブ形エアアクチュエータ28aに生じた収縮力がワイヤ27aへ伝達されると、プーリ26aが回転し、前腕支持プレート24が図9の水平状態から図10に示す立位方向へ回動される。そして、チューブ形エアアクチュエータ28aから空気を排出すると共に、チューブ形アクチュエータ28bの一端部に接続されたエアチューブ(図示省略)を介してアクチュエータのインナーチューブへ、例えばエアコンプレッサーや電磁弁から成る空気給排気装置(図示省略)から空気を供給することによりチューブ形アクチュエータ28bの長さが収縮する。チューブ形エアアクチュエータ28bに生じた収縮力がワイヤ27bへ伝達されると、プーリ26bが回転するとともに逆作動機構29が動作し、前腕支持プレート24が水平方向へ回動される。前腕支持プレート24はチューブ形アクチュエータ28a及び28bの長さ方向への交互の収縮動作によって往復動作させられる。これにより、肘の屈曲・伸展運動を行わせることができる。なお、前腕支持プレート24の回動速度は、障害者の障害度合いや、障害の回復度合いに応じて、チューブ形アクチュエータ28a,28bに対して単位時間当たりに供給または排出される空気量を電磁弁の開放制御によって調節することで、任意に可変設定することができる。
次に、本発明のCPM装置の第2の実施形態について説明する。図13は図10 に示す本発明のCPM装置の第1の実施形態へ手首の屈曲・伸展機構を組み込んだ第2の実施形態のCPM装置の平面図で、図14はその第2の実施形態のCPM装置において手首屈曲動作が成された時の状態を示す平面図である。前腕支持プレート24には、円盤状の回動テーブル31が設けられている。回動テーブル31は、図13のX軸と平行な軸線、すなわち前腕支持プレート24の上面に直交する軸線を中心として回動可能に前腕支持プレート24へ取り付けられている。保持部材25は、回動テーブル31上に搭載されている。したがって、保持部材25は回動テーブル31と共に回動され得る。
前腕支持プレート24の裏側には、回動テーブル31を回動させるための第1エアシリンダー32が配置されている。第1エアシリンダー32のロッド(プランジャ)32aの先端が回動テーブル31の回転中心から所定の距離の位置で、回動テーブル31の回転軸へ連結されたアーム(図示省略)の先端へ連結され、また第1エアシリンダー32のシリンダー本体の端部が前腕支持プレート24へ連結されている。第1エアシリンダー32のロッド先端と回動テーブル31との接続点は、回動テーブル31を回動(往復動作)させる角度とロッドのストロークに応じて決めることができる。なお、回動テーブル31と第1エアシリンダー32を接続するための部材は、上記図示を省略されたアームに代え、円盤状部材とすることもできる。
以上のように構成された保持部材25の動作機構において、第1エアシリンダー32へ接続されたホースを介してエアコンプレッサーと電磁弁とから成るエア供給源によって空気の供給・排気を行うことによって、保持部材25が回動テーブル31の回動によって図14に示すように回動される。したがって、保持部材25によって狭持された手首の屈伸運動を行わせることができる。
次に、本発明のCPM装置の第3の実施形態を説明する。この実施形態は、前記第1及び第2の実施形態のCPM装置へ前腕のひねり運動機構を付加したものである。図15は図10又は図13に示された実施形態のCPM装置へ組み込まれた前腕ひねり運動機構を説明するための図で、図10又は図13 の左側面図である。図15において、保持部材25の内部は中空に形成され、その中空部に第2エアシリンダー33及び第3エアシリンダー34が配置され、それらのエアシリンダーの本体部が固定されている。これらのエアシリンダー33及び34のロッド(プランジャ)33a及び34aにはそれぞれ第1リンク35、第2リンク36が回転可能に接続され、それらの第1リンク35及び第2リンク36の他端は前腕支持プレート24又は回転テーブル31へ設けられた接続具37へ回転可能に接続されている。そして、第2シリンダー33及び第3シリンダー34へは図示を省略しているが、空気を供給するエアホースが接続されており、それらのエアホースは保持部材25の中空部に沿って這わされ、保持部材25の中央部から前腕支持プレート24の裏面へ通されて、その他のエアホースと束ね処理されている。
以上のように構成された前腕ひねり運動機構において、第2シリンダー33と第3シリンダー34へエアコンプレサーと電磁弁とから成るエア供給源によって排他的に空気を供給することによって、保持部材25が接続具37を中心として揺動する。例えば、図15に示すように第1シリンダー33へ空気を供給すると、第2シリンダー33のロッド33aが突出する。第2シリンダー33のロッド33aが突出しても、第3シリンダー34へは空気が供給されていないので第3シリンダー33と第2リンク36の連結状態には変化が起こらず、第2シリンダー33のロッド33aが伸びた分だけ保持部材25が第2シリンダー33の本体によって押されることとなる。すなわち、保持部材25は図16に示すように揺動して傾斜させられる。図16に示すように保持部材25が揺動した後、第3シリンダー34へ空気を供給すると、保持部材25は上記動作とは逆方向(図示2点鎖線の位置方向)へ揺動させられる。これによって、保持部材25内へ挟持されていた掌へ往復方向に回転力が伝達される。したがって、前腕は外転及び内転のひねり運動をされることとなる。なお、保持部材25の揺動速度及び揺動角度は、電磁弁の開放制御により調整することが可能である。すなわち、保持部材25の揺動速度を速めるためには、電磁弁の開放量を大きくし、揺動速度を遅くするためには電磁弁の開放量を小さくすることで、また、保持部材25の揺動角度を調節するためにはシリンダーへの空気の供給量または電磁弁の開放時間を制御することで対応が可能である。
次に、本発明の第3の実施形態のCPM装置について図17を用いて説明する。この第3の実施形態のCPM装置は、人体の肩・肩甲帯の屈曲動作を行わせるに好適なもので、図10、図13、図15に示すCPM装置へ肩・肩甲帯の屈伸運動機構を付加したものである。図17は、図10,図13の右側面図に相当するものである。図17に示すように、ベースプレート21と回動支持部材22aとの間に第1パッド形エアアクチュエータ41及び第2パッド形エアアクチュエータ42が図のY軸方向へ並べて配置されている。それらの配置位置は、なるべく肘が置かれる位置に近い方が望ましい。したがって、回動支持部材22aの回動部22b,22cに近い位置へそれらのパッド形アクチュエータが配置される。このために、回動支持部材22aのパッド形エアアクチュエータ配置位置に対応する部分には中空部分に蓋を施すなどの方法で平面が形成されている。
これらのパッド形エアアクチュエータ41,42は、コンプレッサー,電磁弁を含む空気供給源へホースを介して接続される。そして、それらのパッド形エアアクチュエータ41,42は内部に空気が供給されることにより膨張し、回動支持部材22a を持ち上げ、回動支持部材22aとベースプレート21との間に隙間を作る。パッド形エアアクチュエータ41と42への空気の供給方法には、交互に空気の供給、排出を行う制御方法と、同時に空気の供給、排出を行う制御方法とが可能であり、それらの制御は制御装置にて選択することが可能となっている。
これらの制御方法のうち、パッド形エアアクチュエータ41と42とへ交互に空気の供給、排出を行うと、回動支持部材22aが揺動する(図18参照)。これにより前腕をCPM装置に置いた人体の肩・肩甲帯の屈曲・伸展運動が行われる。また、パッド形エアアクチュエータ41と42の両方へ同時に空気の供給、排出を行うことにより、前腕をCPM装置に置いた人体の肩の上下運動が行われる。なお、回動支持部材22aの揺動量と上下量、及びそれらの移動速度は、パッド形エアアクチュエータ41,42への空気の供給量及び単位時間当たりの空気の供給量を電磁弁の開放によって制御することで任意に設定することができる。
次に、本発明の第4の実施形態のCPM装置について説明する。図19はその側面図、図20は図19の平面図、図21は図19の左側面図、図22は図19の右側面図である。図において、ベースプレート51上の一端部には、回動支持部52が設けられている。回動支持部52には、前腕を支持する回動部材としての前腕支持プレート53が水平な回動軸54を中心として回動可能に連結されている。前腕支持プレート53は、水平状態(図19参照)と水平から120°回転した状態(図示せず)との間で回動可能になっている。
回動支持部52と前腕支持プレート53との間には、屈曲用チューブ形エアアクチュエータ55と伸展用チューブ形エアアクチュエータ56とが設けられている。これらのチューブ形エアアクチュエータ55,56は、図では簡略化して直線で示しているが、前述の実施形態のものと同様の構造を有している。そして、チューブ形エアアクチュエータ55,56の一端は前腕支持プレート53へ取り付けられた軸57,58へ回転可能に接続され、他端は回動支持部52へ取り付けられた軸59,60へ回転可能に接続されている。
ここで、チューブ形アクチュエータ55,56の取り付けと前腕支持プレート53の回転軸54との位置関係を説明する。チューブ形エアアクチュエータ55を取り付けている軸57と軸59の中心軸を結ぶ直線は、軸54と軸59の中心軸を結ぶ直線とほぼ60°の角度を有している。一方、チューブ形エアアクチュエータ56を取り付けている軸58と軸60の中心軸を結ぶ直線と、軸54と軸60の中心軸を結ぶ直線は180°未満の鈍角を有している。言い換えれば、軸60は軸54と軸59の中心軸を結ぶ直線よりも図示左側で、軸54の中心軸よりもベースプレート51側へ寄った位置に取り付けられている。
このようにチューブ型エアアクチュエータ55,56を配置することにより、チューブ形エアアクチュエータの長さの縮小をプーリの回転に変換することなしに、前腕支持プレート53を往復回動することができる。その動作原理は以下のとおりである。チューブ形エアアクチュエータ55へ空気を供給すると、チューブ型エアアクチュエータ55の長さが縮小する時に発生する収縮力が、前腕支持プレート53を軸54周りに時計方向へ回転させる回転力(トルク)として作用する。そして、このトルクは軸54,59,57が一直線上になるまで、すなわち前腕支持プレート53が水平状態からほぼ120°回動するまで作用する。軸54,59,57が一直線上になるとトルクがなくなるので、前腕支持プレート53の回転が停止する。前腕支持プレート53の回転が停止すると、チューブ型エアアクチュエータ55の空気が排出され、チューブ型エアアクチュエータ56へ空気が供給される。すると、チューブ型エアアクチュエータ56の長さが収縮し、そのときに発生する収縮力が、前腕支持プレート53を軸54回りに半時計方向へ回転させるトルクとして作用する。これによって前腕支持プレート53は水平方向へ戻される。
このような前腕支持プレート53の往復回動動作により、肘の屈伸運動を行わせることができる。
前腕支持プレート53には、図20のZ軸と平行な軸を中心として回動する内転・外転プレート61が設けられている。内転・外転プレート61は、前腕支持プレート53の先端部に設けられたローリング機構部62と一体に回動される。前腕支持プレート53には、内転・外転プレート61を回動させる一対のワイヤ付きチューブ形エアアクチュエータ63,64が搭載されている。
ワイヤ付きチューブ形エアアクチュエータ63,64は、本発明の特定発明として説明したものと同様のチューブ形エアアクチュエータで、それらの端部には駆動力を伝達するためのワイヤ63a,64aが接続されている。ワイヤ付きチューブ形エアアクチュエータ63,64のエアアクチュエータ部分の伸縮によりローリング機構部62が回動され、内転・外転プレート61が前腕支持プレート53に対して回動(揺動)される。これにより、前腕の回内・回外運動を行わせることができる。
内転・外転プレート61上には、使用者の手首を緩く拘束する手首ホルダ65と、使用者の手に装着される装着ベルト66とが設けられている。装着ベルト66は、図のY軸と平行な軸67を中心に回動可能な手首駆動機構68に接続されている。手首駆動機構68と内転・外転プレート61との間には、手首駆動機構68を回動させる一対のチューブ形エアアクチュエータ69,70が設けられている。手首駆動機構68は、チューブ形エアアクチュエータ69,70への空気の給排を交互に行うことにより回動(揺動)される。これにより、手首の屈伸運動を行わせることができる。
ベースプレート51と前腕支持プレート53との間には、図22に示すように第1及び第2パッド形エアアクチュエータ71,72が図のY軸方向に沿って並べて配置されている。これらのパッド形エアアクチュエータ71,72の動作は、前記第3の実施形態のCPM装置と同様であり、第1及び第2パッド形エアアクチュエータ71,72のいずれか一方に選択的に空気を供給することにより、肩・肩甲帯の屈伸運動を行わせることができる。また、両方のパッド形エアアクチュエータ71,72に空気を同時に出し入れすることにより、肩の上下運動を行わせることができる。
本実施形態のCPM装置においても、チューブ形エアアクチュエータ55,56,63,64,69,70及びパッド形エアアクチュエータ71,72等を駆動源として使用したので、全体の小形軽量化を図ることができる。また、複数の関節の複雑な運動の組み合わせを容易に実現することができる。
なお、上記第1乃至第4の実施形態は、肩を含む上肢のリハビリテーションを行うCPM装置を示したが、本発明は、例えば腰を含む下肢のリハビリテーションを行うCPM装置にも適用できる。
また、上記各実施形態では、流体として空気を用いたが、例えばガスや油・水等の他の流体を用いても良い。
以上説明したように、本発明のCPM装置は、流体が供給・排出されることにより膨張・収縮する膨張収縮体と、膨張収縮体の外周を覆う網状の被覆体と、膨張収縮体と網状の被覆体との間に挿入された低摩擦体を有し、膨張収縮体が膨張することにより長さが縮小されて駆動力を発生する流体圧式アクチュエータを用いて回動部材を回動させるので、全体の小形軽量化を図ることができる。また、前記流体圧式アクチュエータは膨張収縮体と網状被覆体との間に低摩擦体が配置されたものであり寿命が長いので、使用者はCPM装置を長期にわたって安心して使用することが可能である。
また、ベースに対して回動部材を回動させるアクチュエータとして、また回動部材に対して可動部材を回動させる複数のアクチュエータとして空気圧式アクチュエータを用いたので、全体の小形軽量化が図れ、かつ複数の関節運動の組み合わせを容易に実現することができる。