JP2008082449A - 静圧気体軸受 - Google Patents

Abstract

【課題】大量生産が可能で安価な静圧気体軸受を提供する。
【解決手段】上面に自成絞り形状又はオリフィス形状の複数の空気吹出口２ａを、下面に複数の空気吹出口と連通する給気溝２ｂを有する樹脂製軸受部材２と、樹脂製軸受部材の下面に給気溝を覆うように接合され、給気溝と連通する給気口３ａを有する基体３とを備える静圧気体軸受。樹脂製軸受部材を射出成形し、基体の構造も簡単で樹脂製軸受部材の下面に接合する。基体３側に給気溝３ｅを設けてもよい。樹脂製軸受部材と基体を、ポリフェニレンスルフィド樹脂又はガラス繊維、炭素繊維もしくは無機質充填材の少なくともいずれか１つによって強化した補強材入りポリフェニレンスルフィド樹脂で形成することができ、基体は金属製としてもよい。樹脂製軸受部材と基体とは、超音波接合、高周波誘導加熱による接合又は接着剤を介しての接合により接合することができる。
【選択図】図１

Description

本発明は、静圧気体軸受に関し、特に、液晶スクリーン等、比較的大型で、衝撃に弱い物品の水平移動等に用いることができ、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受に関する。

従来、静圧気体軸受は、超低摩擦、超高精度及び超高速運動を実現することのできる軸受として、スラスト軸受の場合には、物品を載置したり、水平移動させて超精密加工や超精密測定等を行い、筒状のラジアル軸受の場合には、内部に軸を挿通させ、超高速回転を行わせるなどの用途がある。この静圧気体軸受の空気吹出口の絞りの形式としては、多孔質絞り、表面絞り、オリフィス絞り、自成絞りなどがあり、用途に応じて負荷容量及び剛性等を調節しながら使用していた。

例えば、特許文献１には、比較的高い剛性を保ちながら、高い減衰性を実現した気体軸受装置として、２つの相対向する実質的に平行な軸受面と、オリフィスを通じて両軸受面の間の軸受ギャップに気体を供給する、少なくとも１つの気体ダクトを有する気体軸受装置が提案されている。

また、特許文献２には、多孔質体からなる母材と、この母材上に接合され、予め所望の空気透過量になるように、貫通孔の径及び分布を調整して作成された多孔板からなる表面絞り層とを備え、表面絞り層を介して気体を噴出させ、その静圧によって被支持部材を支持する静圧気体軸受が提案されている。

特表２００６−５１０８５６号公報 特開２００１−５６０２７号公報

上記従来の静圧気体軸受等は、超低摩擦、超高精度及び超高速運動を実現することができるものの、軸受材料として、主に、高強度の金属やセラミックが用いられるとともに、高精度の研削仕上げなどを行う必要があるため、大量生産が困難で価格が高騰するという問題があった。

しかし、超低摩擦、超高精度及び超高速運動までは要請されないが、例えば、液晶スクリーン等の物品を非接触で搬送したり、温度変化を生じさせることなく物品を水平移動させたり、軸を回転させる場合には、静圧気体軸受を用いると装置の構成が簡単になるなど種々の利点があるが、高価格の静圧気体軸受しか市場に出回っていない現状では、静圧気体軸受が広く活用されるには至っていなかった。

そこで、本発明は、上記従来の静圧気体軸受における問題点に鑑みてなされたものであって、種々の分野で活用することができる安価な静圧気体軸受を提供することを目的とする。

上記目的を達成するため、本発明は、静圧気体軸受であって、上面に自成絞り形状又はオリフィス形状の複数の空気吹出口を、下面に該複数の空気吹出口と連通する給気溝を有する樹脂製軸受部材と、該樹脂製軸受部材の下面に前記給気溝を覆うように接合され、該給気溝と連通する給気口を有する基体とを備えることを特徴とする。

そして、本発明によれば、静圧気体軸受を構成する樹脂製軸受部材を金型を用いて射出成形によって形成することができ、機械的な加工を不要とすることができるとともに、基体の構造も樹脂製軸受部材と連通する給気口を有するのみで、樹脂製軸受部材の下面に接合するだけで静圧気体軸受を組み立てることができるため、静圧気体軸受の大量生産が可能になり、安価な静圧気体軸受を提供することができる。

また、本発明は、静圧気体軸受であって、自成絞り形状又はオリフィス形状の複数の空気吹出口を有する樹脂製軸受部材と、該樹脂製軸受部材に接合され、該樹脂製軸受部材との接合面に前記複数の空気吹出口と連通する給気溝と、該給気溝と連通する給気口とを有する基体とを備えることを特徴とする。

本発明によれば、静圧気体軸受を構成する樹脂製軸受部材を金型を用いて射出成形によって形成することができ、機械的な加工を不要とすることができるとともに、樹脂製軸受部材と連通する給気溝と、該給気溝と連通する給気口とを有する基体を樹脂製軸受部材に接合するだけで静圧気体軸受を組み立てることができるため、静圧気体軸受の大量生産が可能になり、安価な静圧気体軸受を提供することができる。

前記静圧気体軸受において、前記樹脂製軸受部材を、ポリフェニレンスルフィド樹脂、又は、ガラス繊維、炭素繊維もしくは無機質充填材の少なくともいずれか１つによって強化した補強材入りポリフェニレンスルフィド樹脂で形成することができ、強度の大きい樹脂製軸受部材とすることができる。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、摺動性がよく、自己潤滑性も有するため、仮に他の部材と接触することがあっても損傷する虞が少なく、安全性が高い。

また、前記基体についても、ポリフェニレンスルフィド樹脂、又は、ガラス繊維、炭素繊維もしくは無機質充填材の少なくともいずれか１つによって強化した補強材入りポリフェニレンスルフィド樹脂で形成してもよく、金属で形成してもよい。

前記静圧気体軸受において、前記樹脂製軸受部材と前記基体とを、前記樹脂製軸受部材と前記基体とは、超音波接合、高周波誘導加熱による接合又は接着剤を介しての接合により接合することができる。また、該両者の間に、前記給気溝の外側に該給気溝を囲繞するように配置されたＯリングと、該両者を互いに緊締する緊締手段とを介して接合してもよく、いずれの方法によっても、静圧気体軸受を容易に組み立てることができる。

前記静圧気体軸受において、前記樹脂製軸受部材の前記上面の中央部を凹状に形成することができる。これにより、前記空気吹出口からの空気の吹き出しに伴う反力が樹脂製軸受部材に加えられても、反りによる樹脂製軸受部材の上面の曲面化を防止することができる。

前記静圧気体軸受において、前記給気溝を、平面視環状又は口状に形成することができ、同心図形状に複数配置してもよい。これにより、この静圧気体軸受によって支持される物品の形状及び用途に対応した静圧気体軸受を提供することができる。

以上のように、本発明によれば、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受を提供することが可能となる。

次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。

図１乃至図４は、本発明にかかる静圧気体軸受の一実施の形態を示し、この静圧気体軸受１は、樹脂製軸受部材２と、基体３とで構成される。

樹脂製軸受部材２は、ポリフェニレンスルフィド樹脂等の樹脂によって、図２に示すように、全体的に円板状に形成され、例えば、φ８０ｍｍ×２０ｍｍ程度の寸法を有する場合には、上面に、直径０．２〜０．４ｍｍ程度の自成絞り形状の空気吹出口２ａが８個設けられ、下面に、これらの空気吹出口２ａの各々と連通する、断面が矩形状で平面視環状の給気溝２ｂを備える。この空気吹出口２ａは、図２（ｂ）に示したような自成絞り形状以外にも、図３に示すように、樹脂製軸受部材１２の給気溝１２ｃに空気通路１２ｂを介して連通し、空気通路１２ｂより大径の、いわゆるオリフィス形状の空気吹出口１２ａとすることもできる。また、樹脂製軸受部材２には、ガラス繊維、炭素繊維又は無機質充填材の少なくともいずれか１つを補強材として混入させて強度を増したポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることが好ましい。

基体３は、樹脂又は金属によって、図４に示すように、全体的に円板状に形成され、図２に示した樹脂製軸受部材２の給気溝２ｂと連通する空気通路３ｂと、給気口３ａと、空気通路３ｂと給気口３ａとの間に雌ねじ部３ｃを備える。この基体３も、樹脂製軸受部材２と同様に、ポリフェニレンスルフィド樹脂、又はガラス繊維、炭素繊維又は無機質充填材等を補強材として混入させたポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成することができ、アルミニウム等の金属で形成することもできる。

次に、上記構成を有する静圧気体軸受１の製造方法について、図面を参照しながら説明する。

図２に示す樹脂製軸受部材２は、金型を用いて全体を射出成形する。この際、樹脂製軸受部材２の上面の中心部を、空気供給により樹脂製軸受部材２の上面が撓む量程度に、縁部より縁部より凹むように凹状に形成する。

図４に示す基体３の材質を樹脂とする場合には、樹脂製軸受部材２と同様に射出成形する。一方、基体３をアルミニウム等の金属で製造する場合には、鋳型を用いて基体３全体を鋳造した後、給気口３ａをドリル等で機械加工する。

樹脂製軸受部材２と基体３とは、両側面の当接部１０（図１参照）を全周にわたって接着剤を用いて接合してもよく、基体３を樹脂成形した場合には、樹脂製軸受部材２と基体３とを、樹脂製軸受部材２の給気溝２ｂより外側の部分で超音波又は高周波誘導加熱を用いて接合することができる。

また、基体３の材質を金属とした場合には、図５に示すように、給気溝２ｂを囲繞するように、基体３に溝部３ｄを形成し、この溝部３ｄに弾力性のあるＯリング４を嵌め込み、Ｏリング４の外側で、樹脂製軸受部材２と基体３をボルト５及びナット６で緊締してもよい。

次に、図１乃至図４に示した静圧気体軸受１の動作について、図面を参照しながら説明する。

図６に示すように、基体３の雌ねじ部３ｃに、静圧気体軸受１に空気を供給するための樹脂製チューブ８の端部に取り付けられたプラグ８ａをねじ込み、樹脂製チューブ８を介して給気口３ａに空気を供給する。給気口３ａから取り入れられた空気は、空気通路３ｂ及び樹脂製軸受部材２の給気溝２ｂを介して各々の空気吹出口２ａから上方（矢印方向）に噴出する。これにより、静圧気体軸受１の上方に位置する物品９を空気層を介して支持する。

尚、上記実施の形態では、空気吹出口２ａを８個としたが、支持すべき物品の形状や用途に合わせて空気吹出口２ａの数を増減することができる。また、空気吹出口２ａの配置は、平面視で同一円周上に等配としたが、方形状にしてもよく、さらには、同心円状など同心図形状に配置してもよい。

また、上記実施の形態では、図１等に示すように、給気溝２ｂを樹脂製軸受部材２に形成しているが、給気溝を基体３に形成するようにしてもよい。例えば、図７に示すように、樹脂製軸受部材２の上面から、樹脂製軸受部材２の下面まで貫通する断面が均一の空気通路２ｃを穿設し、基体３の上面に、空気通路２ｃを介して空気吹出口２ａと連通するように給気溝３ｅを形成してもよい。

尚、図１乃至図４に示した静圧基体軸受１においては、給気溝２ｂを樹脂製軸受部材２に設けているため、基体３を給気口３ａ及び空気通路３ｂを有するように形成することができ、基体３の製造が容易となるとともに、図２に示すように、給気溝２ｂの底面から樹脂性軸受部材２の上面２ｄまでの厚さｄ１が薄いため、空気吹出口２ａ及び空気通路２ｃを容易に形成することができる。尚、空気吹出口２ａを図３に示すようなオリフィス形状とした場合には、オリフィス部分のみを別途機械加工してもよい。

一方、図７に示した静圧気体軸受１においては、給気溝３ｅを基体３側に設けているため、空気吹出口２ａから給気溝３ｅまでの距離、すなわち樹脂製軸受部材２の厚さｄ２が厚くなり、給気溝３ｅ周辺の強度を高めることができ、給気圧による樹脂製軸受部材２の変形を防止することができる。

本発明にかかる静圧気体軸受の一実施の形態を示す組立図であって、（ａ）は上面図、（ｂ）は、（ａ）のＡ−Ａ線断面図である。 図１に示した静圧気体軸受の樹脂製軸受部材を示す図であって、（ａ）は上面図、（ｂ）は（ａ）のＢ−Ｂ線断面図、（ｃ）は下面図である。 本発明にかかる樹脂製軸受部材の空気吹出口のもう一つの例を示す断面図である。 図１に示した静圧気体軸受の基体を示す図であって、（ａ）は上面図、（ｂ）は（ａ）のＣ−Ｃ線断面図である。 本発明にかかる静圧気体軸受のもう一つの実施の形態を示す断面図である。 図１に示した静圧気体軸受の使用例を説明するための断面図である。 本発明にかかる静圧気体軸受の他の実施の形態を示す組み立て図であって、（ａ）は、正面図、（ｂ）は、（ａ）のＤ−Ｄ断面図である。

符号の説明

１ 静圧気体軸受
２ 樹脂製軸受部材
２ａ 空気吹出口
２ｂ 給気溝
２ｃ 空気通路
３ 基体
３ａ 給気口
３ｂ 空気通路
３ｃ 雌ねじ部
３ｄ 溝部
３ｅ 給気溝
４ Ｏリング
５ ボルト
６ ナット
８ 樹脂製チューブ
８ａ プラグ
９ 物品
１０ 当接部
１２ 樹脂製軸受部材
１２ａ 空気吹出口
１２ｂ 空気通路
１２ｃ 給気溝

Claims (9)

1. 上面に自成絞り形状又はオリフィス形状の複数の空気吹出口を、下面に該複数の空気吹出口と連通する給気溝を有する樹脂製軸受部材と、
   該樹脂製軸受部材の下面に前記給気溝を覆うように接合され、該給気溝と連通する給気口を有する基体とを備えることを特徴とする静圧気体軸受。
2. 自成絞り形状又はオリフィス形状の複数の空気吹出口を有する樹脂製軸受部材と、
   該樹脂製軸受部材に接合され、該樹脂製軸受部材との接合面に前記複数の空気吹出口と連通する給気溝と、該給気溝と連通する給気口とを有する基体とを備えることを特徴とする静圧気体軸受。
3. 前記樹脂製軸受部材は、ポリフェニレンスルフィド樹脂、又は、ガラス繊維、炭素繊維もしくは無機質充填材の少なくともいずれか１つによって強化した補強材入りポリフェニレンスルフィド樹脂からなることを特徴とする請求項１又は２に記載の静圧気体軸受。
4. 前記基体は、ポリフェニレンスルフィド樹脂、又は、ガラス繊維、炭素繊維もしくは無機質充填材の少なくともいずれか１つによって強化した補強材入りポリフェニレンスルフィド樹脂、又は、金属からなることを特徴とする請求項１、２又は３に記載の静圧気体軸受。
5. 前記樹脂製軸受部材と前記基体とは、超音波接合、高周波誘導加熱による接合又は接着剤を介しての接合により接合されることを特徴とする請求項１乃至４のいずれかに記載の静圧気体軸受。
6. 前記樹脂製軸受部材と前記基体とは、該両者の間に、前記給気溝の外側に該給気溝を囲繞するように配置されたＯリングと、該両者を互いに緊締する緊締手段とを介して接合されることを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の静圧気体軸受。
7. 前記樹脂製軸受部材の前記上面の中央部は、凹状に形成されること特徴とする請求項１乃至６のいずれかに記載の静圧気体軸受。
8. 前記給気溝は、平面視環状又は口状に形成されることを特徴とする請求項１乃至７のいずれかに記載の静圧気体軸受。
9. 前記給気溝は、同心図形状に複数配置されることを特徴とする請求項１乃至８に記載の静圧気体軸受。

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