JP2008075173A - 低ヤング率チタン合金 - Google Patents

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文彦 源島
Takuo Yamaguchi
拓郎 山口
Shuji Hanada
修治 花田
Hiroaki Matsumoto
洋明 松本
Sadao Watanabe
貞夫 渡辺
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Abstract

【課題】従来品に比べてヤング率を低減させた低ヤング率チタン合金を提供する。
【解決手段】バナジウムを10〜20%、アルミニウムを0.2〜10%含み、残部がチタンと不可避不純物から成り、構成相に少なくともマルテンサイト相を含む低ヤング率チタン合金である。
バナジウムを14〜20%、アルミニウムを0.2〜10%含み、残部がチタンと不可避不純物から成り、構成相がβ相であり、冷間塑性加工又は室温からの冷却によりマルテンサイト変態する低ヤング率チタン合金である。
【選択図】なし

Description

本発明は、低ヤング率チタン合金に係り、更に詳細には、高強度低弾性率で高弾性変形能な低ヤング率チタン合金に関する。
チタン合金は比強度や耐食性に優れるため、航空、軍事、宇宙、深海探査、化学プラントなどの特殊分野で多用されている。このチタン合金はその組織上、α型、α+β型、β型に分類される。中でも、α+β型チタン合金のTi−6%Al−4%Vは強度が高いこと等の理由で多用されてきた。
しかし、Ti−6%Al−4%V等のα+β型チタン合金はヤング率が高いため、自動車用のコイルスプリングやトーションバーという用途には不向きであった。
また、従来のβ型合金としては、例えば、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−22V−4Alなどがあり、しなやかである特徴から、眼鏡フレームやゴルフクラブに用いられている。
従来のチタン合金のヤング率について付言しておくと、α合金で115GPa程度であり、α+β合金(例えば、Ti−6Al−4V合金など)で110GPa程度であり、β合金(例えば、Ti−15V−3Cr−3Al−3Snなど)の溶体化処理材で80GPa程度、時効処理後では110GPa程度である。
一方、ヤング率が80GPaを下回る種種のβ型チタン基合金が提案されている(例えば特許文献1〜4参照。)。
特開2005−113227号公報 特開2002−180168号公報 特開2004−353039号公報 特許第3375083号公報
しかし、これらのチタン合金はTi−6%Al−4%V等と比較して高価な元素を使用している上、Ti−6%Al−4%Vと比較して生産量が少ないため、少量生産となりコスト高であった。
一方、本発明者らは、Ti−V−Al系について、マルテンサイト変態が起こりうる条件や相安定性を詳細に調査したところ、新たな知見を得た。
即ち、バナジウムとアルミニウムを所定量含むTi−V−Al系合金は、ベータトランザス温度以上でβ単相となり、急冷すると主としてα”相やα’相(いずれもマルテンサイト相)やβ相となる。これはマルテンサイト変態点がV,Al等の元素により敏感に変化するためで、V量が多くなるとマルテンサイト変態点は室温以下に下がる。
ここで、V量が少なく室温でマルテンサイト相を有する合金は、ヤング率が低いことが分かった。更に、圧延等の方法で加工されると、特定のマルテンサイトバリアントが成長するため、結晶方位(集合組織)がそろえられることがわかった。換言すれば、ヤング率が低い結晶方位を特定の方向にそろえることができるため、低ヤング率のTi−V−Al系合金が得られることがわかった。特に、マルテンサイト相は、異方性を利用してヤング率を下げる効果が大きく、例えば溶体化処理後の冷間圧延により圧延方向にヤング率を低減できることを見出した。更に、加工硬化により高強度化も同時に起こるため、低ヤング率と高強度を併せもつことができることがわかった。
更に、チタン合金のβ相はヤング率が低いことで知られているが、本発明者らは、Ti−V−Al系合金において、バナジウムとアルミニウムの含有量を調整すると、室温で保持されたβ相が応力や冷却によってマルテンサイト変態して熱力学的に不安定なること、また、このようなマルテンサイト変態する前段階の温度域のβ相は、ヤング率が更に低減されることを見出した。
本発明は、このような従来技術の有する課題及び新たな知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来品に比べてヤング率を低減させた低ヤング率チタン合金を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、バナジウムとアルミニウムを所定量含み、マルテンサイト相を含む又はマルテンサイト相へ変態する構成相を有することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1の低ヤング率チタン合金は、バナジウムを10〜20%、アルミニウムを0.2〜10%含み、残部がチタンと不可避不純物から成り、
構成相に少なくともマルテンサイト相を含むことを特徴とする。
また、本発明の第2の低ヤング率チタン合金は、バナジウムを14〜20%、アルミニウムを0.2〜10%含み、残部がチタンと不可避不純物から成り、
構成相にβ相を含み、当該β相が冷間塑性加工又は室温からの冷却によりマルテンサイト変態することを特徴とする。
また、本発明の第1,第2の低ヤング率チタン合金の好適形態は、線材又は長尺状の板材に加工され、少なくともα’相又はα’’相から成るマルテンサイト相を含み、X線回折法による回折強度が以下の式(1)、式(2)
(Iα’’(002)/Iα’’(111))/(Iα’’(002)/Iα’’(111))≦1 …(1)
(Iα’(002)/Iα’(101))/(Iα’(002)/Iα’(101))≦1 …(2)
(ここで、式中において、
Iα’’(002):長手方向に対して垂直断面のα’’相の(002)面反射強度
Iα’’(111):長手方向に対して垂直断面のα’’相の(111)面反射強度
Iα’’(002):長手方向に対して平行断面のα’’相の(002)面反射強度
Iα’’(111):長手方向に対して平行断面のα’’相の(111)面反射強度
Iα’(002):長手方向に対して垂直断面のα’相の(002)面反射強度
Iα’(101):長手方向に対して垂直断面のα’相の(101)面反射強度
Iα’(002):長手方向に対して平行断面のα’相の(002)面反射強度
Iα’(101):長手方向に対して平行断面のα’相の(101)面反射強度、を示す)
で表される関係の少なくとも1つを満たすことを特徴とする。
本発明によれば、バナジウムとアルミニウムを所定量含み、マルテンサイト相を含む又はマルテンサイト相へ変態する構成相を有することとしたため、従来品に比べてヤング率を低減させた低ヤング率チタン合金を提供することができる。
以下、本発明の低ヤング率チタン合金について説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り、質量百分率を表わすものとする。
本発明の第1の低ヤング率チタン合金は、バナジウム(V)を10〜20%、アルミニウム(Al)を0.2〜10%含み、残部がチタン(Ti)と不可避不純物から構成される。また、溶体化処理後の構成相に少なくともマルテンサイト相を含んで成る。
また、本発明の第2の低ヤング率チタン合金は、Vを14〜20%、Alを0.2〜10%含み、残部がTiと不可避不純物から構成される。また、溶体化処理後の構成相にβ相を含み、当該β相は、冷間塑性加工又は室温からの冷却によりマルテンサイト変態する。
このような構成により、本発明の低ヤング率チタン合金は、既存のTi−V−Al系合金に比べてヤング率が低下する。
ここで、Ti−V−Al系合金の構成相について説明する。
α”相やα’相は、ヤング率を低下させる。このα”相やα’相はバリアントを適切に制御すると、特に特定の方向に対するヤング率を低下させ得る。例えば、ベータトランザス温度以上で溶体化処理後、冷間圧延や線引き等の冷間塑性加工を施すと加工方向(圧延方向又は線引き方向)のヤング率を低下させることが可能である。この際、加工度は特に限定しないが、例えば冷間圧延の場合、ヤング率を低減させる上で十分な結晶配向させるためには、少なくとも40%以上の圧下率があると望ましい。
また、β相は、α”相へマルテンサイト変態する前駆段階では、熱力学的に不安定であり、ヤング率を低下させる。更に、上記熱力学的に不安定なβ相においては、冷間加工により、加工誘起でα”相が現れ、加工方向のヤング率を低減させることが可能である。但し、α”相へ変態しない安定なβ相は、さほどヤング率を低下させない。
上述したβ相及びα”相及びα’相の他に、本発明の低ヤング率チタン合金では、溶体化処理後、例えば400℃程度の低温時効でα相が析出するので、時効硬化を利用して強度を高めることができる。但し、α相はヤング率も同時に高めるので、ヤング率を低下させる観点からは避けることが望ましい。これより、極微量のα相を存在させることで高強度と低ヤング率を両立させることができる。例えば、β相及びα”相及びα’相に対して、α相は5vol%程度含まれていればよい。
また、マルテンサイト変態を起こすβ型チタン合金は、β相が不安定で脆化の原因となるω相が現れやすく、実用高強度β型Ti合金としては避けられる傾向にあったが、本発明の低ヤング率チタン合金の組成域ではω相は抑制されている。
また、本発明のチタン合金は、Tiを主成分とするものであるが、Tiは残部であって、その含有が限定されるものではない。言い換えれば、重量比率で考えたときに、含有元素中でもっとも多い元素がTiであれば良い。
特に、低密度化、高比強度化を図る観点からは、Ti合金全体を100%としたときに、Ti含有量が50原子%以上であることが好ましい。また、当然に不可避不純物は存在し得る。
本発明のチタン合金において、Vは、β相を安定化させるとともにマルテンサイト相を発現させ、ヤング率を低下させる元素であり、第1の低ヤング率チタン合金では10〜20%とし、第2の低ヤング率チタン合金では14〜20%とする。
V量が上記範囲より少ないとその効果が薄く、20%を超えるとβ相が安定になりすぎ、マルテンサイト相が現れなくなり、ヤング率が高くなる上、密度が大きくなるのでTi合金の特徴の1つである軽量化が図れない。
また、Al量は0.2〜10%とする。Alは、Ti合金の強度を向上させる元素である上、脆化の原因となるω相を抑制する効果も有する。一方、侵入型固溶元素量が多い場合は、特にAlの含有量が増え過ぎると、Ti合金の延性が低下する。
なお、上記延性の低下は、塑性変形開始前に破断を生じ得るため、結果的に弾性変形能の低下をも招来することとなる。
更に、本発明のチタン合金には、VとAl以外に、スズ(Sn)、シリコン(Si)又はインジウム(In)、及びこれらを任意に組合わせたものを含有することができる。
より具体的には、チタン合金全体を100%とした場合に0.01%〜10%含有することが好ましく、このときはTi合金の強度と延性とのバランスが良好となり易い。
Sn、Inは、いずれも固溶強化元素であり、ω相を抑制し、Ti合金の加工性を向上させる上で有効な元素である。含有量が10%を超えると、Ti合金の脆化を招くことがある。
Siは固溶強化元素であり、ω相を抑制し、Ti合金のヤング率を低下させる上で有効な元素である。含有量が10%を超えると、Ti合金の脆化を招くことがある。
なお、上記元素は、所定の範囲内で任意に組合せることができるが、このことは、本発明のチタン合金の趣旨を逸脱しない範囲内で、更に別の元素を配合することを排除するものではない。
また、本発明のチタン合金は、ベータトランザス温度以上で溶体化処理した後、冷間塑性加工を施されて成ることが好ましい。
ベータトランザス温度以上で溶体化処理すると、低弾性が得られるα’’相、α’相及びβ相の体積分率を大きくすることができる上、α相の体積分率が少ないため加工性がよくなる。更に、その後冷間加工を施すと、加工硬化により強度を上げることができる上、弾性率についても加工前から上昇することはない。
更に、本発明のチタン合金は、線材又は長尺状の板材に加工され、少なくともα’相又はα’’相から成るマルテンサイト相を含み、X線回折法による回折強度が以下の式(1)、式(2)
(Iα’’(002)/Iα’’(111))/(Iα’’(002)/Iα’’(111))≦1 …(1)
(Iα’(002)/Iα’(101))/(Iα’(002)/Iα’(101))≦1 …(2)
(ここで、式中において、
Iα’’(002):長手方向に対して垂直断面のα’’相の(002)面反射強度
Iα’’(111):長手方向に対して垂直断面のα’’相の(111)面反射強度
Iα’’(002):長手方向に対して平行断面のα’’相の(002)面反射強度
Iα’’(111):長手方向に対して平行断面のα’’相の(111)面反射強度
Iα’(002):長手方向に対して垂直断面のα’相の(002)面反射強度
Iα’(101):長手方向に対して垂直断面のα’相の(101)面反射強度
Iα’(002):長手方向に対して平行断面のα’相の(002)面反射強度
Iα’(101):長手方向に対して平行断面のα’相の(101)面反射強度、を示す)
で表される関係の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
このときは、長手方向が更に低弾性となるので有効である。詳細は現在鋭意研究中であるが、α’’相及びα’相のマルテンサイトバリアント長手方向へ低弾性となる方向へ配向するためと考えられる。
また、線材や長尺状の板材の加工方法としては、特に限定しないが、例えば、冷間加工、熱可塑性加工の他、切削や切断等の機械加工によって加工することができる。従って、圧延により長尺状の板材を製造した場合は、部材の切り出し方により、圧延方向に対し任意の角度の板材を取ることもできるため、上記式(1)、式(2)の長手方向は圧延方向とは限らない。
但し、板材の場合、上記(1)式、(2)式のうち、長手方向に対する平行断面の面強度については、最表面の加工変形層を取り除いた板表面の面強度とする。
更にまた、本発明のチタン合金のヤング率は70GPa以下であることが好適である。
ここで、ヤング率とは、JIS Z 2280に準じて測定したものを示し、ヤング率は一般に温度依存性があるが本発明では室温で測定した値を用いる。
ここで、本発明のチタン合金の製造方法は、特に限定されず以下のように製造できる。
例えば、チタン合金にて通常用いられる真空溶解法、アルゴンアーク溶解法、電子ビーム溶解法等を用いて溶製する。得られた鋳塊は熱間圧延、熱間鍛造、押出し、冷間圧延、引抜き等の一般的に用いられる方法で成形加工する。成形加工の途中又は終了後に溶体化や均質化を目的にβ変態点以上に加熱、急冷し、チタン合金が得られる。なお、これ以外にも、超塑性成形、焼結等、種々の製造方法により製造できる。
以上に説明した本発明のチタン合金は、種々の形態が含まれるものであり、素材(例えば、鋳塊、スラブ、ビレット、焼結体、圧延品、鍛造品、線材、板材、棒材等)に限らず、それを加工したチタン合金部材(例えば、中間加工品、最終製品、それらの一部等)などがあり得る。
即ち、種々の製品に幅広く利用でき、高強度低弾性を付与し、生産性の向上と低コスト化を図ることができる。
代表的には、現在広く用いられているTi−6%Al−4%V合金と同種の元素を含有するため、溶製時にTi−6%Al−4%Vのリサイクル品を原料として使用することが可能であり、低コスト化が実現できる。例えば、自動車、産業機械、バイク、自転車、精密機器、家電品、航空宇宙機器、船舶、装身具、スポーツ・レジャ用品、生体関連品、医療器材、玩具等に利用できる。
また、防振特性が要求される製品に利用できる。即ち、本発明のチタン合金は、従来のチタン合金に対してヤング率が低い上、マルテンサイト相又はマルテンサイト変態を利用できるが、当該マルテンサイト相はTi−NiやMn−Cuに代表される双晶型の制振合金と同じく双晶変形するので、これら双晶型の制振合金と同様に振動吸収特性が優れる製品が得られる。
具体的には、本発明のチタン合金は、例えば、自動車のスプリングなどに好適に利用できる。この場合は、ヤング率が小さく、弾性変形能が大きいため、従来のバネ鋼に対して巻き数の低減が可能となる上、制振性にも優れたスプリングとなり得る。また、本発明のチタン合金は、通常のスプリング鋼よりかなり軽量であるため、その大幅な軽量化が実現できる。更に、制振特性に優れるので自動車の車室内こもり音の発生を防止する防振緩衝材として、また、カーオーディオのマウントなどに利用することでビビリ音の解消などに好適に使用することができる。
また、装身具の一種である眼鏡フレームなどに好適に利用できる。この場合は、低ヤング率であるために、蔓部分等が撓み易くなり、顔によくフィットし、また、衝撃吸収性や形状の復元性にも優れるようになり得る。また、高強度で冷間加工性にも優れるため、細線材から眼鏡フレーム等への成形も容易であり、その歩留りも向上し得る。
更に、スポーツ・レジャ用品の一種であるゴルフクラブなど、特に、そのシャフトに好適に利用できる。この場合は、そのシャフトはしなり易くなり、ゴルフボールへ伝達される弾性エネルギーが増大して、ゴルフボールの飛距離が向上し得る。一方、ゴルフクラブのヘッド、特にフェース部分にも好適に利用でき、この場合は、その低ヤング率と高強度による薄肉化とによりゴルフボールの飛距離を相当伸ばし得る。
更にまた、本発明のチタン合金は、例えば、自動車のエンジンバルブ用のスプリング、サスペンションスプリング、各種メタルシール、シャシー、ボルト、各種トーションバー、ゼンマイ、動力伝動ベルト(CVTのフープ等)、ギア、歯車、タイヤの内張り、タイヤの補強材、燃料タンク等の各種容器類、器具固定用ベルトやワイヤー等の各種分野の各種製品に利用できる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1,2,4,5,7,9,11,13,15〜19,21)
表1に示す組成のチタン合金を以下のようにして作製した。
純度99.9%のTi,V,Alの純金属を用い、アルゴン雰囲気中でアーク溶解によって、表1に示す組成の合金に作製し、約90gのインゴットを得た。
このインゴットを1150℃で24時間の均質化処理をアルゴン雰囲気中で行った後、800℃で熱間圧延し、厚さ3mmの板(以下「HR材」という)を得た。
HR材を更に石英管中に真空封入した後Ar置換し、950℃×2時間の溶体化熱処理を行った後、氷水中に焼き入れた。このようにして本例のチタン合金(以下「ST材」という)を得た。なお、インゴットからST材を得るまでの工程を図1に示す。
(実施例3,6,8,10,12,14,20,22)
実施例2,5,7,9,11,13で得られたST材を、更に1mm厚まで冷間圧延して本例のチタン合金(以下「CR材」という)を得た。なお、インゴットからCR材を得るまでの工程を図1に示す。
(比較例1)
V量を14%、Alを用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、本例のチタン合金を得た。
(比較例2)
V量を12%、Al量を18%としたこと以外は、実施例1と同様の操作を試みたが、Alが本発明の範囲より多く含まれるため加工性が悪く、熱間圧延ができなかった(割れが生じた)。
(比較例3)
V量を25%、Al量を4%としたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、本例のチタン合金を得た。
(比較例4)
比較例3で得られたST材を、更に1mm厚まで冷間圧延して本例のチタン合金(CR材)を得た。
(比較例5)
V量を8%、Al量を6%としたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、本例のチタン合金を得た。
<評価方法>
上記各例のチタン合金について、以下の評価を行った。
1.ヤング率
JIS Z 2280に準じて、共振法により圧延方向のヤング率を室温で測定した。この結果を表1に示す。
2.構成相の調査
X線回折と光学顕微鏡観察を用いて、室温の構成相を調査した。X線測定は板材のまま行い、Cu管球を用いた。測定結果からピークを解析し構成相を決定した。この結果を表1に示す。なお、表1において、α”相とα’相が共存する場合は、α’相とα”相のピークが重なりα’相の存在の判別が付かなかったため括弧内に記載した。
また、液体窒素温度まで冷却したときの構成相を光学顕微鏡で調査した。この結果を表1に示す。なお、光学顕微鏡ではα”相とα’相の判断がつかないため、M相と表記した。
また、実施例1,2,7,9,11,13のチタン合金について、光学顕微鏡による組織写真を図2〜6に示す。実施例2,11,13,14のチタン合金について、X線測定結果を図7及び図8に示す。
3.長手方向垂直断面と平行断面のX線回折強度の測定
表2に本発明の成分範囲内の素材を種々の条件で加工熱処理を行い、内部の集合組織を変化させた長尺状の線材及び板材のX線強度比の測定結果とヤング率の関係を示した。各資料の長手方向垂直断面及び平行断面の2箇所を湿式研磨後更に鏡面研磨を行い、表面を整えた後、X回折測定を行った。
本例において、X線回折強度比は、斜入射X線分析装置による広角測定によって行った。X線の各強度は試料の測定面内での異方性を均質化するためにX回折の試料ステージを回転させながら測定した結果を用いた。以下に測定条件を示す。
使用X線:Cu−Kα
励起条件:45kV 40mA
測定範囲:2θ=30°〜80°
測定結果からバックグラウンドを除去し、ピーク強度比を算出した。
実施例24は線材で、実施例23,25,26は圧延により製造した板材である。実施例23,25,26は長手方向として圧延方向をとり、長手方向平行断面として板表面を取った。
4.引張試験
実施例1〜14、19〜22,比較例3〜5に示すチタン合金について、JIS Z 2241試験に準じて、引張試験により降伏強度を測定した。この結果を表1に示す。
Figure 2008075173
表1より、本発明の一実施例である実施例1〜22のチタン合金は、ヤング率が70GPa以下であり、十分に低いヤング率が得られた。
特に、V量が16%以下である実施例2とV量が多い(16%超)実施例11とを比べると、構成相がβ相である実施例11のヤング率がより低減されていた(図8参照)。
また、実施例16〜18より、Al量が少なくなっても十分に低いヤング率が得られた。
実施例1〜5、7,9,12,14〜22のチタン合金は、室温まで冷却したときの構成相に、斜方晶のα”相又は六方晶のα’相を含むことが分かった。
特に、V量が16%以下である実施例1〜3、実施例15〜18のチタン合金は、α”相又はα’相を多く含んでいた。
また、V量が多い(16%超)実施例11,13のチタン合金は、構成相がβ相であったが、これらを66%の圧延率で冷間圧延した実施例12,14のチタン合金(CR材)は、α”又はα’のマルテンサイト相がβ相に対して現れたり増えたりすることを確認した(図9参照)。図9のグラフに示すように、実施例13と実施例14を比べると、冷間圧延によって、グラフ中矢印で示した位置に新たにピークが現れており、マルテンサイト相が冷間加工において応力誘起変態して現れたことが確かめられた。
更に、実施例11,13のチタン合金は、液体窒素温度で冷却したときの光学顕微鏡観察により、図2〜5で示したのと同様のマルテンサイト組織が現れていたことから、構成相にマルテンサイト相を含むことが分かった。
更にまた、実施例3,6,8,10,20,22のように、溶体化後に冷間圧延を施すと、圧延方向のヤング率を更に下げることができた上、0.2%耐力が900MPa以上であった。これらより十分な強度があることも確かめられた。このように降伏強度が高い上、ヤング率が低いと弾性変形量を大きく取ることが可能となる。
更に、表2に示すように、(1)式又は(2)式を満たす実施例24,26はそれぞれ同じ化学組成である実施例23,25に対してヤング率が更に低減されることが確かめられた。
Figure 2008075173
一方、比較例1のチタン合金は、ω相を抑制する元素であるAlが全く含まれていないため、溶体化後にω相が現れてしまい、結果としてヤング率も高くなっていた。
比較例2では、Al量が本発明で規定する範囲を超えているため、加工性が悪くなり、熱間圧延時に割れが発生してしまい製造できなかった。
比較例3のチタン合金は、V量が本発明で規定する範囲よりも多いため、β相がより熱力学的に安定になり、液体窒素温度まで冷却してもα”相は現れず、十分に低いヤング率を得ることができなかった。また、Tiよりも相対的に高価なV量が増えることは、コスト面からも不利となる。
比較例4のように、比較例3のチタン合金の溶体化後に冷間圧延を施しても、β相が安定であるため応力誘起でα”相は現れなかった。
比較例5のチタン合金は、V量が本発明で規定する範囲よりも少ないため、ヤング率は80GPa超となり十分な弾性変形能を得ることができなかった。
実施例及び比較例で行った処理を示す工程図である。 実施例1のチタン合金の光学顕微鏡写真である。 実施例2のチタン合金の光学顕微鏡写真である。 実施例7のチタン合金の光学顕微鏡写真である。 実施例9のチタン合金の光学顕微鏡写真である。 実施例11のチタン合金の光学顕微鏡写真である。 実施例13のチタン合金の光学顕微鏡写真である。 実施例2と実施例11のX線回折結果を示すグラフである。 実施例13と実施例14のX線回折結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. バナジウムを10〜20%、アルミニウムを0.2〜10%含み、残部がチタンと不可避不純物から成り、
    構成相に少なくともマルテンサイト相を含むことを特徴とする低ヤング率チタン合金。
  2. バナジウムを14〜20%、アルミニウムを0.2〜10%含み、残部がチタンと不可避不純物から成り、
    構成相にβ相を含み、当該β相が冷間塑性加工又は室温からの冷却によりマルテンサイト変態することを特徴とする低ヤング率チタン合金。
  3. スズ、シリコン及びインジウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のものを0.01〜10%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の低ヤング率チタン合金。
  4. ベータトランザス温度以上で溶体化処理した後、冷間塑性加工を施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の低ヤング率チタン合金。
  5. 線材又は長尺状の板材に加工され、少なくともα’相又はα’’相から成るマルテンサイト相を含み、X線回折法による回折強度が以下の式(1)、式(2)
    (Iα’’(002)/Iα’’(111))/(Iα’’(002)/Iα’’(111))≦1 …(1)
    (Iα’(002)/Iα’(101))/(Iα’(002)/Iα’(101))≦1 …(2)
    (ここで、式中において、
    Iα’’(002):長手方向に対して垂直断面のα’’相の(002)面反射強度
    Iα’’(111):長手方向に対して垂直断面のα’’相の(111)面反射強度
    Iα’’(002):長手方向に対して平行断面のα’’相の(002)面反射強度
    Iα’’(111):長手方向に対して平行断面のα’’相の(111)面反射強度
    Iα’(002):長手方向に対して垂直断面のα’相の(002)面反射強度
    Iα’(101):長手方向に対して垂直断面のα’相の(101)面反射強度
    Iα’(002):長手方向に対して平行断面のα’相の(002)面反射強度
    Iα’(101):長手方向に対して平行断面のα’相の(101)面反射強度、を示す)
    で表される関係の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の低ヤング率チタン合金。
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