JP2008075153A - 焼結体の製造方法および焼結体 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属酸化物の含有量が少なく、かつ優れた特性(寸法精度)を有する金属焼結体を、安全、容易かつ安価に製造し得る焼結体の製造方法、および、かかる焼結体の製造方法で得られる優れた特性を有する焼結体を提供すること。
【解決手段】金属粉末と、ポリエーテル系樹脂と、このポリエーテル系樹脂の融点より熱分解温度が高い第2の樹脂とを含む結合材とを含有する組成物を成形し、成形体を得る成形体形成工程[A]と、この成形体を、オゾン含有雰囲気に曝すことにより、前記成形体中からポリエーテル系樹脂を分解・除去して、第1の脱脂体を得る第1の脱脂工程(脱脂工程)[B]と、第1の脱脂体を前記オゾン含有雰囲気よりオゾン濃度が低い低オゾン含有雰囲気に曝して中間脱脂体を得る中間工程[C]と、中間脱脂体を加熱して第2の脱脂体を得る第2の脱脂工程[D]と、第2の脱脂体を焼結させて焼結体を得る焼結工程[E]とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、焼結体の製造方法および焼結体に関するものである。
金属材料の焼結体は、一般に、金属材料粉末と結合材を混合した原料粉末(混合粉末)を、射出成形法等の各種成形方法を用いて成形体とし、この成形体に対して、結合材の融解温度より高く、金属材料の焼結温度より低い温度で脱脂処理を施して脱脂体を得、得られた脱脂体を焼結させることにより得ることができる。
ところが、例えば、射出成形法に供される原料粉末は、その射出成形時の流動性を向上させる目的等で結合材を比較的多く含有している。この結合材を除去するためには、長時間の加熱が必要となり、生産効率が低下したり、加熱処理中に成形体が変形する等の問題がある。
また、加熱処理で成形体中の結合材を十分に除去することができず、焼結工程において残留した結合材が気化した際に、焼結体に割れが発生する等の問題もある。
かかる問題点を解決するために、金属材料粉末とポリアセタールを含有する結合材とを混合した原料粉末で構成された成形体を、気体状の酸含有雰囲気または三フッ化ホウ素含有雰囲気で加熱処理して脱脂体を得る脱脂体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、一般に、酸は劇物、三フッ化ホウ素は毒物であるため、人体にとって有害であり、その取り扱いに際しては、厳重な保護具を必要とするなど大変な手間がかかる。
また、酸および三フッ化ホウ素は、金属溶解性が高く、設備に耐食性の高い材料を用いる必要があるため、コスト高となる。
さらに、酸含有雰囲気は、加熱処理後に大気中に放出されると、大気汚染の原因となり、これを防ぐためのコストがかかる。
特許第3128130号公報
本発明の目的は、金属酸化物の含有量が少なく、かつ優れた特性(寸法精度)を有する金属焼結体を、安全、容易かつ安価に製造し得る焼結体の製造方法、および、かかる焼結体の製造方法で得られる優れた特性を有する焼結体を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の焼結体の製造方法は、主として金属材料で構成された粉末と、ポリエーテル系樹脂を含む結合材とを含有する組成物を所定の形状に成形し、成形体を得る成形体形成工程と、
該成形体を、オゾン含有雰囲気に曝すことにより、前記成形体中から前記ポリエーテル系樹脂を分解・除去し、脱脂体を得る脱脂工程と、
該脱脂体を、少なくとも1回、前記オゾン含有雰囲気よりオゾン濃度が低い低オゾン含有雰囲気に曝す中間工程と、
前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体を焼結させて、焼結体を得る焼結工程とを有することを特徴とする。
これにより、金属酸化物の含有量が少なく、かつ優れた特性(寸法精度)を有する金属焼結体を、安全、容易かつ安価に製造することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記オゾン含有雰囲気中のオゾン濃度は、50〜10000ppmであることが好ましい。
これにより、効率よく確実に前記ポリエーテル系樹脂の分解・除去を行うことができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記オゾン含有雰囲気の温度は、20〜180℃であることが好ましい。
これにより、より容易かつ速やかに前記ポリエーテル系樹脂の分解・除去を行うことができる。また、前記脱脂体の保形性が低下するのを防止することができる。その結果、最終的に得られる前記焼結体の寸法精度が低下するのをより確実に防止することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記ポリエーテル系樹脂は、ポリアセタール系樹脂を主成分とするものであることが好ましい。
前記ポリアセタール系樹脂は、オゾンを含有する雰囲気に曝すことによりホルムアルデヒド等に分解して前記成形体から放出されるが、その分解性が特に高く、より確実に脱脂を行うことができる。したがって、前記脱脂工程トータルに要する時間をより短縮することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記ポリエーテル系樹脂は、その重量平均分子量が1〜30万のものであることが好ましい。
これにより、前記ポリエーテル系樹脂の融点および粘度が最適なものとなり、前記脱脂体の形状の安定性(保形性)の向上を図ることができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記結合材中の前記ポリエーテル系樹脂の含有率は、20wt%以上であることが好ましい。
これにより、前記ポリエーテル系樹脂が分解・除去される効果がより確実に得られ、前記結合材全体の脱脂をより促進させることができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記中間工程の少なくとも最終段階における前記低オゾン含有雰囲気は、実質的にオゾンを含有しないことが好ましい。
これにより、前記脱脂体中からオゾンをほぼ排除することができるので、前記脱脂体中の前記金属材料の酸化を確実に防止することができ、最終的に得られる前記焼結体中に金属酸化物が残存するのを防止することができる。その結果、特に機械的強度(靭性等)に優れた焼結体が得られる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記低オゾン含有雰囲気の温度は、前記オゾン含有雰囲気の温度より低いことが好ましい。
これにより、前記低オゾン含有雰囲気中のオゾンの酸化作用を低下させ、前記脱脂体中の前記金属材料の酸化をさらに抑制することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記低オゾン含有雰囲気は、オゾン以外に、非酸化性ガスを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、前記中間工程における前記金属材料の酸化を特に確実に抑制することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記脱脂工程、前記中間工程および前記焼結工程を、連続炉を用いて連続して行うことが好ましい。
これにより、複数の前記脱脂体を同時に処理して前記焼結体を製造することができるので、前記焼結体の製造効率を高めることができる。また、前記連続炉によれば、製造途中で、前記脱脂体が大気に曝されることが防止される。このため、前記脱脂体と大気との接触によって、前記脱脂体中に含まれる金属材料が酸化するのを確実に防止することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記連続炉は、内部のオゾン濃度が、前記成形体の進行方向の途中で低下するように設定された空間を有しており、
該空間中を前記成形体を通過させることにより、前記脱脂工程および前記中間工程を連続して行うことが好ましい。
これにより、これらの工程をより短時間で行うことができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記空間中のオゾン濃度は、連続的に変化するよう設定されていることが好ましい。
これにより、前記成形体から露出した前記粉末がオゾンに曝される頻度が抑制され、前記粉末を構成する前記金属材料の酸化を特に抑制することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記結合材は、前記ポリエーテル系樹脂の融点より熱分解温度が高い第2の樹脂を含み、
前記中間工程の後に、前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体を加熱することにより、該脱脂体中から前記第2の樹脂を分解・除去する第2の脱脂工程を有することが好ましい。
これにより、前記成形体中の前記ポリエーテル系樹脂と前記第2の樹脂とを、それぞれ前記脱脂工程と前記第2の脱脂工程とに分けて、選択的に脱脂することができる。その結果、前記成形体の脱脂の進度を制御することができ、保形性、すなわち寸法精度に優れた前記脱脂体を容易かつ確実に得ることができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記第2の脱脂工程における加熱温度は、180〜600℃であることが好ましい。
これにより、効率よく確実に前記第2の樹脂の分解・除去を行うことができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記第2の脱脂工程における雰囲気は、還元性ガスを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体中の前記金属材料の酸化を確実に防止しつつ、前記第2の樹脂を分解・除去することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記第2の樹脂は、ポリスチレンおよびポリオレフィンの少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。
これらの材料は、前記脱脂体中での結合強度が高く、前記脱脂体が変形するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、流動性が高く、加熱により分解し易いことから、容易に脱脂することができる。その結果、寸法精度に優れた前記脱脂体をより確実に得ることができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記組成物は、さらに、添加剤を含み、
前記第2の脱脂工程において、前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体中から、前記第2の樹脂とともに前記添加剤を分解・除去することが好ましい。
これにより、前記結合材に、前記添加剤が有する機能を発揮させるとともに、前記脱脂体の保形性や寸法精度に悪影響を与えることなく前記添加剤を分解・除去することができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記添加剤は、前記粉末の前記組成物中での分散性を向上させるための分散剤を含むことが好ましい。
これにより、前記組成物中において、前記粉末と、前記ポリエーテル系樹脂および前記第2の樹脂とがより均一に分散し、得られる前記脱脂体および前記焼結体は、その特性にバラツキが少なく、より均一なものとなる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記分散剤は、高級脂肪酸を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、前記組成物中において、前記粉末の分散性を特に高めることができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30のものであることが好ましい。
これにより、前記組成物は、成形時の成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。また、前記高級脂肪酸は、比較的低温でも容易に分解し得るものとなる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記脱脂工程、前記中間工程、前記第2の脱脂工程および前記焼結工程を、連続炉を用いて連続して行うことが好ましい。
これにより、複数の前記脱脂体を同時に処理して前記焼結体を製造することができるので、前記焼結体の製造効率を高めることができる。
本発明の焼結体の製造方法では、前記成形体形成工程において、前記成形体を射出成形法または押出成形法により形成することが好ましい。
前記射出成形法は、成形型の選択により、複雑で微細な形状の前記成形体を容易に形成することができる。また、前記押出成形法は、成形型の選択により、所望の押出面形状を有する柱状または板状の前記成形体を、特に容易かつ安価に形成することができる。
本発明の焼結体は、本発明の焼結体の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、金属酸化物の含有量が少なく、かつ優れた特性を有する金属焼結体が得られる。
以下、本発明の焼結体の製造方法および焼結体について、図示の好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の焼結体の製造方法の実施形態を示す工程図、図2は、本実施形態で用いる焼結体製造用の組成物を模式的に示す図である。
<焼結体製造用の組成物>
まず、焼結体の製造に用いる組成物(焼結体製造用の組成物)10について説明する。
組成物10は、主として金属材料で構成された粉末1と、ポリエーテル系樹脂3を含む結合材2とを含有するものである。
(1)粉末
粉末1は、主として金属材料で構成されたものである。
この金属材料としては、特に限定されないが、例えば、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属材料、またはこれらの各元素を含む化合物等が挙げられる。
後述するように、組成物10は、成形性に優れることから、本発明は、焼結体を構成する材料として、比較的高硬度または難加工性となるような金属材料を用いる場合に好適に適用される。
そのような金属材料の具体例としては、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS329J1、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630のようなステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼等に代表されるFe系合金、TiまたはTi系合金、WまたはW系合金、Co系超硬合金、Ni系サーメット等が挙げられる。
また、組成の異なる2種以上の材料を組み合わせて用いることにより、従来、鋳造では製造できなかった組成の焼結体を得ること可能となる。また、新規の機能や多機能を有する焼結体が容易に製造でき、焼結体の機能・用途の拡大を図ることができる。
粉末1の平均粒径は、特に限定されないが、0.3〜100μm程度であるのが好ましく、0.5〜50μm程度であるのがより好ましい。粉末1の平均粒径が前記範囲内の値であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体、およびかかる成形体を脱脂・焼結してなる焼結体を製造することができる。また、得られる焼結体の密度をより高いものとすることができ、焼結体の機械的強度、寸法精度等の特性をより優れたものとすることができる。これに対し、粉末1の平均粒径が前記下限値未満であると、成形体の成形性が低下する。また、粉末1の平均粒径が前記上限値を超えると、焼結体の密度を十分に高めるのが困難となり、焼結体の特性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、「平均粒径」とは、対象となる粉末の粒度分布において、体積の累積で50%の部分に分布する粉末の粒径を指す。
また、組成物10中における粉末1の含有率は、特に限定されないが、60〜98wt%程度であるのが好ましく、70〜95wt%程度であるのがより好ましい。粉末1の含有率が前記範囲内であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体、およびかかる成形体を脱脂・焼結してなる焼結体を製造することができるとともに、焼結体の密度をより高いものとし、焼結体の特性をより高めることができる。これに対し、粉末1の含有率が前記下限値未満であると、成形体の成形性が低下する。また、粉末1の含有率が前記上限値を超えると、焼結体の密度を十分に高めるのが困難となり、焼結体の特性が低下するおそれがある。
このような粉末1としては、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、粉末1が金属材料で構成されている場合、水アトマイズ法等の液体アトマイズ法(例えば、高速回転水流アトマイズ法、回転液アトマイズ法等)、ガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法や、粉砕法、カルボニル法、還元法等の化学的方法等で得られたものを用いることができる。
(2)結合材
結合材2は、後述する成形体を得る工程における、組成物10の成形性(成形のし易さ)、成形体の形状の安定性(保形性)に大きく寄与する成分である。組成物10が、このような成分を含むことにより、寸法精度に優れた焼結体を容易かつ確実に製造することができる。
このような結合材2は、ポリエーテル系樹脂3を含有するものである。
このポリエーテル系樹脂3は、オゾンを含有する雰囲気に曝すことにより、分解する性質を有するため、後述する第1の脱脂工程において、容易かつ速やかに除去、すなわち、脱脂することができるものである。その結果、保形性を維持しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮して、脱脂体の生産効率、すなわち焼結体の生産効率を向上させることができる。
ポリエーテル系樹脂3としては、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂のような直鎖状ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリチオエーテルスルホン系樹脂のような芳香族ポリエーテル系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、結合材2は、ポリアセタール系樹脂(ポリアセタール樹脂またはその誘導体)を主成分とするものが好ましい。ポリアセタール系樹脂は、オゾンを含有する雰囲気に曝すことによりホルムアルデヒド等に分解して成形体から放出されるが、その分解性が特に高く、後述する第1の脱脂工程において、より確実に脱脂を行うことができる。したがって、脱脂工程トータルに要する時間をより短縮することができる。
また、ポリエーテル系樹脂3としては、その重量平均分子量が、1〜30万程度のものが好ましく、2〜20万程度のものがより好ましい。これにより、ポリエーテル系樹脂3の融点および粘度が最適なものとなり、成形体の形状の安定性(保形性)向上を図ることができる。
また、ポリエーテル系樹脂3の結合材2における含有率は、20wt%以上であるのが好ましく、30wt%以上であるのがより好ましく、40wt%以上であるのがさらに好ましい。ポリエーテル系樹脂3の結合材2における含有率が前記範囲内であることにより、ポリエーテル系樹脂3が分解・除去される効果がより確実に得られ、結合材2全体の脱脂をより促進させることができる。
また、本実施形態では、結合材2は、ポリエーテル系樹脂3の融点より熱分解温度の高い第2の樹脂4を含有する。この第2の樹脂4は、第1の脱脂工程より後で行われる第2の脱脂工程において、成形体を加熱することにより、分解・除去されるものである。結合材2がこのような第2の樹脂4を含有することにより、成形体中のポリエーテル系樹脂3と第2の樹脂4とを、それぞれ第1の脱脂工程と第2の脱脂工程とに分けて、選択的に脱脂することができる。その結果、成形体の脱脂の進度を制御することができ、保形性、すなわち寸法精度に優れた脱脂体を容易かつ確実に得ることができる。
第2の樹脂4としては、特に限定されないが、その重量平均分子量が0.1〜40万程度のものが好ましく、0.4〜30万程度のものがより好ましい。これにより、第2の樹脂4の融点および粘度が最適なものとなり、成形体の形状の安定性(保形性)のさらなる向上を図ることができる。
このような第2の樹脂4としては、結合材2が含有するポリエーテル系樹脂3の融点より熱分解温度が高いものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、またはこれらの共重合体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、第2の樹脂4としては、ポリスチレンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。これらの材料は、脱脂体中での結合強度が高く、脱脂体が変形するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、流動性が高く、加熱により分解し易いことから、容易に脱脂することができる。その結果、寸法精度に優れた脱脂体をより確実に得ることができる。
このような結合材2の形態は、特に限定されず、いかなる形態であってもよいが、例えば、粉末状、液状、ゲル状等が挙げられる。
なお、組成物10中における結合材2の含有率は、特に限定されないが、2〜40wt%程度であるのが好ましく、5〜30wt%程度であるのがより好ましい。結合材2の含有率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに、成形体の密度をより高いものとし、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。
さらに、組成物10は、添加剤を含有していてもよい。
この添加剤は、前述の第2の脱脂工程において、第2の樹脂4とともに分解・除去されるものが好ましい。これにより、結合材に、添加剤が有する機能を発揮させるとともに、脱脂体の保形性や寸法精度に悪影響を与えることなく添加剤を分解・除去することができる。
ここで、添加剤としては、例えば、分散剤(滑剤)、可塑剤、酸化防止剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、分散剤5は、図2に示すように、粉末1の周囲に付着し、組成物10中における粉末1の分散性を向上させる機能を有するものである。すなわち、組成物10が分散剤を含有することにより、粉末1と、ポリエーテル系樹脂3および第2の樹脂4とがより均一に分散し、得られる脱脂体および焼結体は、その特性にバラツキが少なく、より均一なものとなる。
また、分散剤5は、滑剤としての機能、すなわち、後述する成形体形成工程において、組成物10の流動性を高める機能を有している。これにより、成形型内への充填性を高め、均一な密度の成形体を得ることが可能となる。
分散剤5としては、例えば、ステアリン酸、ジステアリン酸、トリステアリン酸、リノレン酸、オクタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ナフテン酸のような高級脂肪酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤等が挙げられる。
これらの中でも、分散剤5としては、高級脂肪酸を主成分とするものが好ましい。高級脂肪酸は、粉末1の分散性に特に優れるものである。
また、高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30であるのが好ましく、16〜24であるのがより好ましい。高級脂肪酸の炭素数が前記範囲内であることにより、組成物10は、成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。また、炭素数が前記範囲内であることにより、高級脂肪酸が比較的低温でも容易に分解し得るものとなる。
また、可塑剤は、組成物10に柔軟性を与え、後述する成形体形成工程における成形を容易にする機能を有するものである。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられる。
また、酸化防止剤は、結合材を構成する樹脂の酸化を防止する機能を有するものである。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。
上記のような各成分を含む組成物10は、例えば、各成分に対応する粉末を混合することにより調製することができる。各成分の混合は、いかなる雰囲気中で行ってもよいが、真空または減圧状態下(例えば、3kPa以下)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、組成物10中に含まれる金属材料の酸化を防止することができる。
また、必要に応じて、混合の後に、混練等を行ってもよい。これにより、例えば、組成物10の嵩密度が高くなり、組成の均一性も向上するため、成形体をより高密度で均一性の高いものとして得ることができ、脱脂体および焼結体の寸法精度も向上する。
組成物10の混練は、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いて行うことができるが、特に加圧ニーダー式混練機を用いるのが好ましい。加圧ニーダー式混練機は、組成物10に高い圧力を付与することができるため、高硬度の粉末1を含む組成物10や粘度の高い組成物10をより確実に混練することができる。
混練条件は、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、混練温度:50〜200℃程度、混練時間:15〜210分程度とすることができる。また、混練の際の雰囲気は、前記混合と同様に、いかなる雰囲気中で行ってもよいが、真空または減圧下(例えば、3kPa以下)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、前述と同様に、組成物10中に含まれる金属材料の酸化を防止することができる。
また、得られた混練物(コンパウンド)は、必要に応じ、粉砕されてペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1〜10mm程度とされる。
混練物のペレット化には、ペレタイザ等の粉砕装置を用いて行うことができる。
<焼結体の製造>
次に、組成物10を用いて焼結体を製造する方法(本発明の焼結体の製造方法)について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の焼結体の製造方法の第1実施形態について説明する。
図3は、本実施形態で得られた成形体を模式的に示す縦断面図、図4は、本実施形態で得られた第1の脱脂体を模式的に示す縦断面図、図5は、本実施形態で得られた第2の脱脂体を模式的に示す縦断面図、図6は、本発明の焼結体を模式的に示す縦断面図、図7は、本実施形態で用いる連続炉を模式的に示す平面図である。
図1に示す焼結体の製造方法は、組成物10を所定の形状に成形し、成形体を得る成形体形成工程[A]と、得られた成形体を高オゾン含有雰囲気に曝すことにより、成形体中からポリエーテル系樹脂3を分解・除去し、第1の脱脂体を得る第1の脱脂工程[B]と、得られた第1の脱脂体を低オゾン含有雰囲気に曝してなる中間脱脂体を得る中間工程[C]と、得られた中間脱脂体を加熱することにより、中間脱脂体中から第2の樹脂4を分解・除去し、第2の脱脂体を得る第2の脱脂工程[D]と、得られた第2の脱脂体を焼結させることにより、焼結体を得る焼結工程[E]とを有する。
ここで、焼結体の製造方法を説明するのに先立って、成形体に脱脂・焼結を施すのに用いられる、図7に示す炉について説明する。
本発明の焼結体の製造方法は、いかなる炉を用いて行ってもよく、例えば、連続脱脂焼結炉、バッチ式脱脂炉・焼結炉等を用いることができるが、本実施形態では、連続脱脂焼結炉(以下、省略して「連続炉」と言う。)100を用いて行う場合を例に説明する。
図7に示す連続炉100は、内部に、互いに連通してなる4つのゾーン(空間)110、120、130、140を備えた炉である。
これらの各ゾーン110、120、130、140内には、成形体、第1の脱脂体、中間脱脂体、第2の脱脂体、焼結体等のワーク90を搬送するコンベア150が連続して配設されている。すなわち、連続炉100によれば、各ゾーン110、120、130、140内を、それぞれワーク90を通過させることにより、第1の脱脂工程[B]、中間工程[C]、第2の脱脂工程[D]、および焼結工程[E]を連続して行うことができる。そして、このコンベア150により、入炉口101からワーク90を炉内に入れるとともに、ゾーン110、ゾーン120、ゾーン130およびゾーン140を順次通過させて、出炉口102からワーク90を炉外に取り出すことができる。これにより、複数のワーク90を同時に処理して焼結体を製造することができるので、焼結体の製造効率を高めることができる。また、連続炉100によれば、焼結体の製造途中で、ワーク90が大気に曝されることが防止される。このため、ワーク90と大気との接触によって、ワーク90中に含まれる金属材料が酸化するのを確実に防止することができる。
各ゾーン110、120、130、140には、それぞれ独立して、各ゾーン内のワーク90を所定の温度に加熱可能なヒーター160が設けられている。また、各ゾーンには、連続炉100の長手方向に沿って複数のヒーター160が設けられており、各ヒーター160は、それぞれヒーター160の出力を調整する出力調整器165に接続されている。そして、出力調整器165により、各ヒーター160の出力を協調制御し、各ゾーンにおいて所定パターンの温度勾配を形成し得るようになっている。
さらに、各ゾーン110、120、130、140には、各ゾーン内に所定のガスを供給するノズル170が設けられている。また、各ゾーンには、連続炉100の長手方向に沿って複数のノズル170が設けられており、各ノズル170は、それぞれ、ガス供給源175と配管により接続されている。そして、ガス供給源175から発生させたそれぞれ異なる種類のガスを、各ノズル170を介して各ゾーン内に所定の流量で供給可能になっている。
なお、本実施形態では、ゾーン110のオゾン濃度が、図7のグラフに示すように、ゾーン110内でほぼ一定になっている。
また、ゾーン110とゾーン120との間隙、および、ゾーン120とゾーン130との間隙には、それぞれ前記各間隙中のガスを炉外に排出する排気手段115、125が設けられている。この排気手段115、125の作動により、ゾーン110とゾーン120との間、および、ゾーン120とゾーン130との間で、それぞれのガスが混在するのを防止することができる。すなわち、各ゾーン110、120、130、140において、それぞれガスの成分が不本意に変化するのを防止することができる。
なお、図7に示す連続炉100は、平面視で直線状をなしているが、途中で屈折していてもよい。
以下、図1に示す各工程について順次説明する。
[A] 成形体形成工程
まず、組成物10を混練してなる混練物または該混練物より造粒されたペレットを、所定の形状に成形して、図3に示すような成形体20を得る。
成形体20の形成は、例えば、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法(プレス成形法)、カレンダ成形法等の各種成形法により行うことができる。例えば、圧縮成形法の場合の成形圧力は、5〜100MPa程度であるのが好ましい。
このような各種成形法の中でも、成形体20は、射出成形法または押出成形法により形成されるのが好ましい。
射出成形法は、混練物またはペレットを用いて、射出成形機により射出成形し、所望の形状、寸法の成形体20を形成する。この場合、成形型の選択により、複雑で微細な形状の成形体20をも容易に形成することができる。
射出成形の成形条件としては、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、材料温度は、好ましくは80〜200℃程度、射出圧力は、好ましくは2〜15MPa(20〜150kgf/cm)程度とされる。
また、押出成形法は、混練物またはペレットを用いて、押出成形機により押出成形し、所望の長さに切断して、成形体20を形成する。この場合、成形型の選択により、所望の押出面形状を有する柱状または板状の成形体20を、特に容易かつ安価に形成することができる。
押出成形の成形条件としては、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、材料温度は、好ましくは80〜200℃程度、押出圧力は、好ましくは1〜10MPa(10〜100kgf/cm)程度とされる。
なお、形成される成形体20の形状寸法は、以後の各脱脂工程、中間工程および焼結工程における成形体20の収縮分等を見込んで決定される。
[B] 第1の脱脂工程
次に、成形体形成工程で得られた成形体20を、連続炉100のコンベア150に載せ、ゾーン110に搬送する。そして、ゾーン110を通過させつつ、成形体20を後述する中間工程における雰囲気より相対的にオゾン濃度が高い高オゾン含有雰囲気に曝す。これにより、成形体20中からポリエーテル系樹脂3を分解・除去し、図4に示すような第1の脱脂体30を得る。
前述したように、ポリエーテル系樹脂3は、オゾンと接触することにより、比較的低温で分解され、その分解物がガスとなって、容易かつ速やかに成形体20中から除去(脱脂)される。一方、第2の樹脂4および添加剤は、一部が分解される場合があるものの、ほとんど分解されることなく、成形体20中に残存する。これにより、得られる第1の脱脂体30の保形性を維持しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができる。また、オゾンは腐食性を有しないため、第1の脱脂工程を行う設備に腐食等が生じ難く、設備の維持・管理が容易かつ低コストになるという利点も有する。
また、このとき、ポリエーテル系樹脂3の分解物が成形体20の内部から外部へ放出されるが、これに伴い、第1の脱脂体30中に前記分解物が通過した跡に極めて小さな流路31が形成される。この流路31は、後述する第2の脱脂工程において、第2の樹脂4および添加剤の各分解物が、成形体20の外部に放出される際の流路となり得るものである。
さらに、この流路31は、ポリエーテル系樹脂3がオゾンに接触して分解することによって形成されるため、成形体20の外表面から内部に向かって順次形成されるものである。このため、流路31は、必然的に外部空間と連通したものとなり、後述する第2の脱脂工程において、第2の樹脂4および添加剤の各分解物を確実に外部に放出し得るものとなる。
本工程において用いる高オゾン含有雰囲気は、前述したように、後述する中間工程において用いる低オゾン含有雰囲気よりも、相対的にオゾン濃度が高い雰囲気である。この高オゾン含有雰囲気は、オゾン以外に、例えば、大気、酸素ような酸化性ガス、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガス、またはこれらの1種または2種以上を含有する混合ガス等を含有していてもよい。このうち、高オゾン含有雰囲気は、オゾン以外に不活性ガスを含有するのが好ましく、窒素を主成分とする不活性ガスを含有するのがより好ましい。不活性ガスは、粉末1を構成する材料との反応性が乏しいため、粉末1が不本意な化学反応等により変質・劣化するのを防止する。また、窒素は、比較的安価であるため、第1の脱脂工程の低コスト化を図ることができる。
また、高オゾン含有雰囲気中のオゾン濃度は、50〜10000ppm程度であるのが好ましく、80〜8000ppm程度であるのがより好ましく、100〜5000ppm程度であるのがさらに好ましい。オゾン濃度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実にポリエーテル系樹脂3の分解・除去を行うことができる。なお、オゾン濃度が前記上限値を超えても、オゾンによるポリエーテル系樹脂3の分解の効率のそれ以上の増大は期待できない。
また、このような第1の脱脂工程は、成形体20の周囲に新たな高オゾン含有雰囲気ガスを供給し、ポリエーテル系樹脂3の分解物を排出しつつ脱脂を行うのが好ましい。これにより、成形体20の周囲において、脱脂の進行に伴って成形体20から放出される分解ガスの濃度が上昇し、オゾンによるポリエーテル系樹脂3の分解の効率が低下するのを防止することができる。
このとき、供給する高オゾン含有雰囲気ガスの流量は、ゾーン110の容積に応じて適宜設定され、特に限定されないが、1〜30m/h程度であるのが好ましく、3〜20m/h程度であるのがより好ましい。
また、高オゾン含有雰囲気の温度は、ポリエーテル系樹脂3の組成等に応じて若干異なるが、20〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。高オゾン含有雰囲気の温度が前記範囲内の値であることにより、より容易かつ速やかにポリエーテル系樹脂3の分解・除去を行うことができる。また、第2の樹脂4の著しい軟化が避けられるため、第1の脱脂体30の保形性が低下するのを防止することができる。その結果、最終的に得られる焼結体の寸法精度が低下するのをより確実に防止することができる。
また、第1の脱脂の時間は、ポリエーテル系樹脂3の含有率や高オゾン含有雰囲気の温度等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、1〜30時間程度であるのが好ましく、3〜20時間程度であるのがより好ましい。これにより、効率よく確実にポリエーテル系樹脂3の分解・除去を行うことができる。
[C]中間工程
次に、第1の脱脂工程で得られた第1の脱脂体30を、コンベア150でゾーン120に搬送する。そして、ゾーン120を通過させつつ、第1の脱脂体30を前記高オゾン含有雰囲気よりオゾン濃度が低い低オゾン含有雰囲気に曝す。
ここで、第1の脱脂工程を経た第1の脱脂体30においては、形成された流路31中に、オゾン濃度の高い高オゾン含有雰囲気ガスが残存している。オゾン(O)は、3つの酸素原子のうち、1つを他の物質に付与して酸素分子(O)になる性質が強い、すなわち酸化作用が非常に強い物質である。したがって、流路31に残存した高濃度のオゾンは、第1の脱脂体30中の金属材料を著しく酸化させるおそれがある。特に、流路31に高濃度のオゾンが残存した状態で、第1の脱脂体30を第2の脱脂工程や焼結工程に移行させた場合には、熱が加わることで、かかる酸化作用がより顕著になる。
このようにして金属材料が酸化すると、最終的に得られる焼結体中に金属酸化物が残存することになり、焼結体の特性(例えば、機械的特性、電気的特性、化学的特性等)を低下させることが懸念される。具体的には、金属酸化物が、焼結体の靭性や導電性を低下させるおそれがある。
そこで、本発明では、第1の脱脂体30を低オゾン含有雰囲気に曝す中間工程を設けることとした。
この中間工程では、流路31に残存した高オゾン含有雰囲気ガスが低オゾン含有雰囲気ガス(またはオゾンを含有しないガス)に置換される。これにより、第1の脱脂体30中の金属材料とオゾンとの接触頻度が減少して、金属材料の酸化が抑制され、焼結体中の金属酸化物の残存量を抑制することができる。これにより、特に機械的強度(靭性等)に優れた焼結体が得られる。
また、焼結の際に異物となり得る金属酸化物の含有が抑制されることから、焼結性が向上し、より緻密な焼結体が得られる。
ここで、低オゾン含有雰囲気のオゾン濃度は、高オゾン含有雰囲気より低ければよいが、できるだけ低いのが好ましい。
具体的には、低オゾン含有雰囲気のオゾン濃度は、高オゾン含有雰囲気のオゾン濃度に応じて異なるが、500ppm以下であるのが好ましく、50ppm以下であるのがより好ましい。これにより、第1の脱脂体30中の金属材料の酸化をより確実に抑制することができる。
また、低オゾン含有雰囲気は、実質的にオゾンを含有しないのがさらに好ましい。これにより、流路31からオゾンをほぼ排除することができるので、金属材料の酸化を確実に防止することができ、最終的に得られる焼結体中に金属酸化物が残存するのを防止することができる。その結果、特に機械的強度(靭性等)に優れた焼結体が得られる。
なお、低オゾン含有雰囲気は、オゾン以外に、例えば、水素のような還元性ガス、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガス等の非酸化性ガス、またはこれらの1種または2種以上を含有する混合ガス等を含有していてもよいが、特に非酸化性ガスを主成分とするのが好ましい。これにより、本工程における金属材料の酸化を特に確実に抑制することができる。
このとき、供給する低オゾン含有雰囲気ガスの流量は、ゾーン120の容積に応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.5〜30m/h程度であるのが好ましく、1〜20m/h程度であるのがより好ましい。
また、低オゾン含有雰囲気の温度は、第1の脱脂工程における高オゾン含有雰囲気の温度より低いのが好ましい。これにより、流路31中に存在する低オゾン含有雰囲気中のオゾンの酸化作用をより低下させ、第1の脱脂体30中の金属材料の酸化をさらに抑制することができる。
具体的には、低オゾン含有雰囲気の温度は、高オゾン含有雰囲気の温度に応じて異なるが、5〜150℃程度であるのが好ましく、10〜120℃程度であるのがより好ましい。これにより、低オゾン含有雰囲気中のオゾンの酸化作用をより確実に抑制しつつ、第1の脱脂体30に急激な温度変化が加わるのを防止することができる。
また、第1の脱脂体30を本工程に供する時間は、できるだけ長い方がよいが、0.1〜5時間程度であるのが好ましく、0.5〜3時間程度であるのがより好ましい。これにより、流路31に残存した高濃度のオゾンを、低オゾン含有雰囲気ガスで必要かつ十分に置換することができる。
以上のようにして、第1の脱脂体30の流路31中の高オゾン含有雰囲気ガスを低オゾン含有雰囲気ガスで置換してなる中間脱脂体を得る。
[D] 第2の脱脂工程
次に、中間工程で得られた中間脱脂体を、コンベア150でゾーン130に搬送する。そして、ゾーン130を通過させつつ、中間脱脂体を加熱する。これにより、中間脱脂体中から第2の樹脂4および添加剤(例えば、分散剤5)を分解・除去し、図5に示すような第2の脱脂体40を得る。
加熱により分解された第2の樹脂4(および添加剤)は、第1の脱脂工程において形成された流路31を介して、中間脱脂体の外部に放出され、容易かつ速やかに脱脂が行われる。これにより、第2の脱脂体40の内部に多量の第2の樹脂4や添加剤が残留するのを防止することができる。すなわち、流路31を介して脱脂が行われるため、第2の樹脂4や添加剤の分解物が中間脱脂体の内部に閉じ込められることが抑制される。このため、得られる第2の脱脂体40における変形や割れ等の発生を確実に防止するとともに、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができる。その結果、寸法精度や機械的強度等の特性に優れる第2の脱脂体40および焼結体を得ることができる。
なお、中間脱脂体中の流路31は、後述する焼結工程において消滅するか、または極めて微小な空孔(ポア)として残存する。このため、得られる焼結体は、密度が特に高いものとなる。一方、焼結体の美的外観が低下したり、機械的強度が低下する等の問題が生じるおそれは極めて少なくなる。
本工程(第2の脱脂工程)を行う雰囲気には、特に限定されないが、水素のような還元性雰囲気、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、減圧雰囲気(真空)等が挙げられる。
特に、本工程を行う雰囲気は、還元性ガスを主成分とするものであるのが好ましい。本工程は比較的高温下で行われるものの、還元性ガスを主成分とする雰囲気下であれば、中間脱脂体中の金属材料の酸化を確実に防止しつつ、第2の樹脂4および添加剤を分解・除去することができる。
また、雰囲気の温度は、第1の脱脂工程における雰囲気の温度より高ければよく、また、第2の樹脂4や添加剤の組成に応じて若干異なるが、180〜600℃程度であるのが好ましく、250〜550℃程度であるのがより好ましい。雰囲気の温度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実に第2の樹脂4および添加剤の分解・除去を行うことができる。これに対し、雰囲気の温度が前記下限値未満であると、第2の樹脂4および添加剤の分解・除去の効率が低下するおそれがある。また、雰囲気の温度が前記上限値を超えても、第2の樹脂4および添加剤の分解の速度はほとんど向上しないため、効率的でない。
また、第2の脱脂の時間は、第2の樹脂4および添加剤の組成や含有率、雰囲気の温度等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.5〜10時間程度であるのが好ましく、1〜5時間程度であるのがより好ましい。これにより、効率よく確実に第2の樹脂4および添加剤の分解・除去(脱脂)を行うことができる。
なお、本工程は、必要に応じて行えばよく、例えば、組成物10中に第2の樹脂4および添加物を含有しない場合は、省略することもできる。この場合、第1の脱脂工程および中間工程を経て、脱脂体を得ることができる。
[E] 焼結工程
次に、第2の脱脂工程で得られた第2の脱脂体40を、コンベア150でゾーン140に搬送する。そして、ゾーン140を通過させつつ、第2の脱脂体40を加熱する。
第2の脱脂体40を加熱すると、内部の粉末1は、接しているもの同士の界面において、相互に拡散が生じ、粒成長して、結晶粒となる。その結果、全体として緻密な、すなわち高密度、低空孔率である図6に示すような焼結体50が得られる。
焼結工程における焼結温度は、粉末1を構成する材料の組成等により若干異なるが、例えば、900〜1600℃程度であるのが好ましく、1000〜1500℃程度であるのがより好ましい。焼結温度が前記範囲内の値であることにより、粉末1の拡散、粒成長が最適化され、優れた特性(機械的強度、寸法精度、外観等)を有する焼結体50を得ることができる。
なお、焼結工程における焼結温度は、前述した範囲内または範囲外で、経時的に変動(上昇または下降)してもよい。
焼結時間は、0.5〜7時間程度であるのが好ましく、1〜4時間程度であるのがより好ましい。
また、焼結工程を行う雰囲気は、粉末1を構成する金属材料の組成に応じても適宜選択され、特に限定されないが、水素のような還元性雰囲気、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、これら各雰囲気を減圧した減圧雰囲気、または加圧した加圧雰囲気等が挙げられる。
このうち、焼結工程を行う雰囲気は、還元性雰囲気であるのが好ましい。還元性雰囲気によれば、第2の脱脂体40中の金属材料を酸化させることなく焼結させることができる。また、減圧雰囲気を形成するための排気ポンプ等も不要であることから、焼結工程にかかるランニングコストの低減を図ることもできる。
なお、減圧雰囲気の場合、その圧力は特に限定されないが、3kPa(22.5Torr)以下であるのが好ましく、2kPa(15Torr)以下であるのがより好ましい。
一方、加圧雰囲気の場合も、その圧力は特に限定されないが、110〜1500kPa程度であるのが好ましく、200〜1000kPa程度であるのがより好ましい。
なお、焼結工程を行う雰囲気は、工程の途中で変化してもよい。例えば、最初に3kPa程度の減圧雰囲気とし、途中で前記のような不活性雰囲気に切り替えることができる。
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、粉末1の焼結の効率が向上し、より短い焼結時間で焼結を行うことができる。
また、焼結工程は、前述の第2の脱脂工程と連続して行うのが好ましい。これにより、第2の脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体40に予熱を与えて、粉末1をより確実に焼結させることができる。
以上のようにして、金属酸化物の含有量が少なく、かつ優れた特性を有する焼結体を、安全、容易かつ安価に製造することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の焼結体の製造方法の第2実施形態について説明する。
図8は、本実施形態で用いる連続炉を模式的に示す平面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる焼結体の製造方法は、使用する連続炉の雰囲気の設定が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、図8に示す連続炉200では、ゾーン110の内部において、ワーク90の進行方向に沿ってオゾン濃度が連続的に変化している。
図8には、ゾーン110内のオゾン(O)濃度の分布を示すグラフを示す。このグラフに示すように、ゾーン110では、ワーク90の進行方向前方に向かって、途中からオゾン濃度が低くなっている。すなわち、ゾーン110内は、入炉口側に設けられ、相対的にオゾン濃度が高い高オゾン含有雰囲気の領域Hと、ゾーン120側に設けられ、高オゾン含有雰囲気よりオゾン濃度が低い低オゾン含有雰囲気の領域Lとに分けられている。
なお、このようにゾーン110内でオゾン濃度に勾配を設ける場合、例えば、ゾーン110に設けられた複数のノズル170のうち、領域Hに対応するノズル170から供給するガスの種類と流量を、領域Lに対応するノズル170から供給するガスと異ならせるようにすればよい。
次に、上記のような連続炉200を用いて行う、本実施形態にかかる焼結体の製造方法について、各工程を順次説明する。
[A] 成形体形成工程
まず、前記第1実施形態と同様にして、図3に示すような成形体20を得る。
[B] 第1の脱脂工程
次に、成形体形成工程で得られた成形体20を、連続炉200のコンベア150に載せ、ゾーン110に搬送する。そして、ゾーン110内の領域Hを通過させつつ、成形体20を高オゾン含有雰囲気に曝す。これにより、前記第1実施形態と同様にして、成形体20中からポリエーテル系樹脂3を分解・除去し、図4に示すような第1の脱脂体30を得る。
[C1] 中間工程(1回目)
次に、第1の脱脂工程で得られた第1の脱脂体30を、コンベア150でゾーン110内の領域Lに搬送する。そして、領域Lを通過させつつ、第1の脱脂体30を低オゾン含有雰囲気に曝す。これにより、前記第1実施形態と同様にして、第1の脱脂体30の流路31中に残存した高オゾン含有雰囲気ガスを低オゾン含有雰囲気ガスで置換する。
[C2] 中間工程(2回目)
次に、1回目の中間工程を経た第1の脱脂体30を、コンベア150でゾーン120内に搬送する。そして、ゾーン120内を通過させつつ、前記第1の脱脂体30を実質的にオゾンを含有しない雰囲気に曝す。これにより、第1の脱脂体30の流路31中に残存したオゾンをほぼ除去してなる中間脱脂体を得る。
[D] 第2の脱脂工程
次に、中間工程で得られた中間脱脂体を、コンベア150でゾーン120内に搬送する。そして、ゾーン120内を通過させつつ、中間脱脂体を加熱する。これにより、前記第1実施形態と同様にして、中間脱脂体中から第2の樹脂4および添加剤(例えば、分散剤5)を分解・除去し、図5に示すような第2の脱脂体40を得る。
[E] 焼結工程
次に、第2の脱脂工程で得られた第2の脱脂体40を、コンベア150でゾーン130内に搬送する。そして、ゾーン130内を通過させつつ、第2の脱脂体40を加熱する。これにより、前記第1実施形態と同様にして、第2の脱脂体40を焼結させ、図6に示すような焼結体50が得られる。
なお、本実施形態では、1つのゾーン110内で第1の脱脂工程と中間工程とを連続して行う。これにより、ゾーン110内の雰囲気は、高オゾン含有雰囲気から低オゾン含有雰囲気へと連続的に変化する。この際、成形体20では、高オゾン含有雰囲気に曝されたポリエーテル系樹脂3が分解して除去されるにつれて、ポリエーテル系樹脂3で覆われていた金属材料の粉末1が徐々に露出する。そして、この露出に伴って粉末1が徐々にオゾンに曝されることとなる。
これに対し、本実施形態では、ゾーン110内の雰囲気を、高オゾン含有雰囲気から低オゾン含有雰囲気へと変化するように設定しているため、露出した粉末1がオゾンに曝される頻度が抑制されることとなる。これにより、粉末1を構成する金属材料の酸化を特に抑制することができる。
また、1つのゾーン110内で第1の脱脂工程と中間工程とを連続して行うことにより、これらの工程をより短時間で行うことができる。
さらに、中間工程を2回に分けて行うことにより、第1の脱脂体30の流路31中に残存したオゾンをより確実に除去することができる。
以上のような第2実施形態にかかる焼結体の製造方法においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
[第3実施形態]
次に、本発明の焼結体の製造方法の第3実施形態について説明する。
図9は、本実施形態で用いる連続炉を模式的に示す平面図である。
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態および前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる焼結体の製造方法は、使用する連続炉の構成が異なる以外は、前記第2実施形態と同様である。
図9に示す連続炉300は、内部に、互いに連通してなる3つのゾーン(空間)110、130、140を備えた炉である。すなわち、図9に示す連続炉300は、図8に示す連続炉200の各ゾーン110、120、130、140のうち、ゾーン120を省略してなる炉である。
これらの各ゾーン110、130、140内には、前記第1実施形態と同様に、コンベア150が配設されている。
また、各ゾーン110、130、140内には、それぞれ独立して、図7および図8に示す連続炉と同様に、複数のヒーター160と複数のノズル170とが設けられている。さらに、各ヒーター160は、それぞれ出力調整器165に接続され、各ノズル170は、それぞれガス供給源175に接続されている。
ここで、本実施形態では、ゾーン110の内部において、図8のゾーン110と同様に、ワーク90の進行方向に沿ってオゾン濃度が変化している。
図9には、ゾーン110内のオゾン(O)濃度の分布を示すグラフを示す。このグラフに示すように、ゾーン110では、図8のゾーン110と同様に、ワーク90の進行方向前方に向かって、途中からオゾン濃度が低くなっている。すなわち、ゾーン110内は、高オゾン含有雰囲気の領域Hと、低オゾン含有雰囲気の領域Lとに分けられている。
次に、上記のような連続炉300を用いて行う、本実施形態にかかる焼結体の製造方法について、各工程を順次説明する。
[A] 成形体形成工程
まず、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様にして、図3に示すような成形体20を得る。
[B] 第1の脱脂工程
次に、成形体形成工程で得られた成形体20を、連続炉300のコンベア150に載せ、ゾーン110に搬送する。そして、ゾーン110内の領域Hを通過させつつ、成形体20を高オゾン含有雰囲気に曝す。これにより、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様にして、成形体20中からポリエーテル系樹脂3を分解・除去し、図4に示すような第1の脱脂体30を得る。
[C] 中間工程
次に、第1の脱脂工程で得られた第1の脱脂体30を、コンベア150でゾーン110内の領域Lに搬送する。そして、領域Lを通過させつつ、第1の脱脂体30を低オゾン含有雰囲気に曝す。これにより、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様にして、第1の脱脂体30の流路31中に残存した高オゾン含有雰囲気ガスを低オゾン含有雰囲気ガスで置換し、中間脱脂体を得る。
[D] 第2の脱脂工程
次に、中間工程で得られた中間脱脂体を、コンベア150でゾーン130内に搬送する。そして、ゾーン130内を通過させつつ、中間脱脂体を加熱する。これにより、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様にして、中間脱脂体中から第2の樹脂4および添加剤(例えば、分散剤5)を分解・除去し、図5に示すような第2の脱脂体40を得る。
[E] 焼結工程
次に、第2の脱脂工程で得られた第2の脱脂体40を、コンベア150でゾーン140内に搬送する。そして、ゾーン140内を通過させつつ、第2の脱脂体40を加熱する。これにより、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様にして、第2の脱脂体40を焼結させ、図6に示すような焼結体50が得られる。
以上のような第3実施形態にかかる焼結体の製造方法においても、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様の作用・効果が得られる。
以上、本発明の焼結体の製造方法および焼結体の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、焼結体の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.成形体の作製
以下では、各サンプルNo.の成形体をそれぞれ所定数量ずつ作製した。
(サンプルNo.1)
水アトマイズ法により製造されたSUS316L粉末と、ポリアセタール樹脂(重量平均分子量:5万)とを混合し、以下に示す混練条件で、加圧ニーダー(混練機)を用いて混練した。
なお、SUS316L粉末の平均粒径は10μmであった。
また、粉末とそれ以外の成分(結合材と添加物)との混合比は、重量比で91:9とした。
<混練条件>
・混練温度:190℃
・混練時間:1.5時間
・雰囲気 :窒素ガス
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径3mmのペレットとし、該ペレットを用い、以下に示す成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、サンプルNo.1の成形体を作製した。
なお、成形体は、15×15×15mmの立方体形状に成形した。また、この成形体は、その対向する2面の中央部に内径5mmの貫通孔を有している。
<成形条件>
・材料温度:200℃
・射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm
(サンプルNo.2〜10)
粉末以外の成分の混合比および結合材の組成を、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.2〜10の各成形体をそれぞれ作製した。
(サンプルNo.11〜12)
粉末以外の成分の混合比および結合材の組成を、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.11〜12の各成形体をそれぞれ作製した。
Figure 2008075153
2.焼結体の製造
(実施例1)
次に、サンプルNo.1の成形体に対し、図7に示すような連続炉を用いて、以下に示す条件で第1の脱脂工程および中間工程を順次行い、脱脂体を得た。
<第1の脱脂工程の条件>
・温度 :150℃
・時間 :20時間
・雰囲気 :オゾン含有窒素ガス(オゾン濃度:20ppm)
<中間工程の条件>
・温度 :100℃
・時間 :1時間
・雰囲気 :窒素ガス
次いで、得られた脱脂体を、連続炉を用いて、以下に示す条件で焼結させ、焼結体を得た。
<焼結工程の条件>
・温度 :1350℃
・時間 :3時間
・雰囲気 :水素ガス
(実施例2〜13)
用いる成形体のサンプルNo.、第1の脱脂工程の条件、および中間工程の条件を、それぞれ表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、焼結体を得た。
(実施例14)
サンプルNo.4の成形体を用い、中間工程と焼結工程との間に、第2の脱脂工程を以下に示す条件で行った以外は、前記実施例4と同様にして、焼結体を得た。
<第2の脱脂工程の条件>
・温度 :500℃
・時間 :1時間
・雰囲気 :水素ガス
(実施例15〜20)
用いる成形体のサンプルNo.、および第2の脱脂工程の条件を、それぞれ表2に示すように変更した以外は、前記実施例14と同様にして、焼結体を得た。
(実施例21)
図8に示すような連続炉を用い、この連続炉の第1の脱脂工程を行うゾーン中のオゾン含有窒素ガスを、オゾン濃度が1000ppmから50ppmに連続的に減少するよう設定した以外は、前記実施例14と同様にして、焼結体を得た。
(実施例22)
図9に示すような連続炉を用い、この連続炉の第1の脱脂工程を行うゾーン中のオゾン含有窒素ガスを、オゾン濃度が1000ppmから50ppmに連続的に減少するよう設定した以外は、前記実施例14と同様にして、焼結体を得た。
(比較例1)
オゾン濃度を0ppmに変更した以外は、前記実施例1と同様にして、焼結体を得た。
(比較例2)
オゾン濃度を0ppmに変更するとともに、第1の脱脂工程の時間を80時間に変更した以外は、前記実施例1と同様にして、焼結体を得た。
(比較例3)
中間工程を省略した以外は、前記実施例4と同様にして、焼結体を得た。
(比較例4)
第1の脱脂工程の時間を6時間に変更するとともに、中間工程における雰囲気中のオゾン濃度を20000ppmに変更した以外は、前記実施例8と同様にして、焼結体を得た。
(比較例5〜6)
用いる成形体のサンプルNo.および第2の脱脂工程の条件を、それぞれ表2に示すように変更した以外は、前記実施例14と同様にして、焼結体を得た。
3.評価
3−1.重量減少率の評価
実施例1〜22および比較例1〜6について、第1の脱脂工程における重量減少率をそれぞれ測定した。
また、実施例14〜22および比較例5〜6については、第2の脱脂工程における重量減少率もそれぞれ測定した。
これらの重量減少率の測定は、各ワークの重量を、各工程の前後で電子天秤を用いて測定し、減少した重量の割合を算出する方法で行った。
そして、各実施例および各比較例に算出した脱脂工程トータルにおける重量減少率と、この重量減少率から算出される、金属粉末以外の成分(結合材および添加剤)の除去率と、脱脂工程トータルに要した時間とを表2に示す。
Figure 2008075153
表2から明らかなように、各実施例の脱脂工程(第1の脱脂工程および第2の脱脂工程)では、96%以上の結合材および添加剤が除去された。このことは、脱脂が確実に行われていることを示している。
また、各実施例の脱脂工程では、結合材の組成や、第1の脱脂工程の雰囲気中のオゾン濃度、雰囲気の温度等によって若干異なるが、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができた。これは、第1の脱脂工程において、ポリエーテル系樹脂が速やかに分解・除去され、これにより、第2の樹脂の分解・除去も速やかに行われたためである。
さらに、結合材中のポリエーテル系樹脂の比率が高い成形体では、結合材の分解効率が高いため、処理時間の大幅な短縮がなされていた。
一方、各比較例のうち、比較例1、2では、長時間の脱脂を行っても半分以上の結合材が残留し、脱脂が不十分であった。これは、第1の脱脂工程の雰囲気中にオゾンが含まれていないため、ポリエーテル系樹脂の分解・除去が進まず、多量に残留したためである。
また、比較例5、6で用いた成形体は、ポリエーテル系樹脂を含有していないため、第1の脱脂工程において、150℃という低温下で結合材が十分に分解せず、これにより、第2の脱脂工程を長時間行っても十分な脱脂がなされなかった。
3−2.焼結体の密度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれ密度を測定した。なお、密度の測定は、アルキメデス法(JIS Z 2505に規定)により、100個のサンプルについて行い、その平均値を測定値とした。
次いで、各測定値から焼結体の相対密度を算出した。なお、この相対密度は、SUS316Lの密度の相対基準を7.98g/cm(理論密度)として算出した。
3−3.焼結体の寸法精度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれ幅方向の寸法を測定し、その寸法のバラツキを評価した。寸法の測定は、マイクロメータにより、100個のサンプルについて行い、そのバラツキを算出した。
次いで、各焼結体について、それぞれ中心穴の真円度を測定した。真円度の測定は、三次元測定器(ミツトヨ社製、型番:FT805)を用いて行い、平均値を真円度とした。
なお、比較例1の焼結体は、ほぼ全数に割れが発生していたため、密度・寸法の測定を省略した。
3−4.焼結体の酸化物含有量の評価
まず、各実施例および各比較例で得られた焼結体をそれぞれ切断し、以下の分析、観察を実施した。
3−4−1.各焼結体について含有酸素量の分析を行った。
3−4−2.各焼結体の切断面に研磨を施した後、この切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、切断面の観察像には、酸化物粒子の存在が認められた。
次に、以上のような分析・観察に基づき、各焼結体中の金属酸化物の含有量を、以下の基準にしたがって評価した。
◎:金属酸化物の含有量が非常に少ない
○:金属酸化物の含有量が少ない
△:金属酸化物の含有量がやや多い
×:金属酸化物の含有量が非常に多い
3−5.焼結体の美的外観の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれ美的外観を評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。
◎:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが全くない
○:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが若干ある
△:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが多数ある
×:ほぼ全数に割れがある
以上、3−2〜3−5の各評価結果を表3に示す。
Figure 2008075153
表3から明らかなように、各実施例で得られた焼結体は、その相対密度がいずれも96%以上であり、空孔率の低い緻密体となっていた。また、各実施例で得られた焼結体は、いずれもその寸法精度も比較的良好であった。
さらに、各実施例で得られた焼結体は、いずれも金属酸化物の含有量が少なく、かつ美的外観に優れていた。
これに対し、各比較例で得られた焼結体には、その相対密度が95%未満と低いものがあった。これは、前述したような理由で脱脂が十分ではなかったためであると推察される。また、脱脂が不十分なため、除去し切れなかった結合材や添加剤が、焼結工程において急速に分解し、脱脂体から放出された際に、脱脂体(焼結体)の形状が損なわれたり、割れが生じたりする。このため、各比較例で得られた焼結体には、寸法精度が著しく低いものや、美的外観に劣るものが認められた。
さらに、比較例3、4で得られた焼結体は、その製造工程において、中間工程を省略したり、中間工程で非常にオゾン濃度の高い雰囲気にワークを曝したりしたため、ワークが多量のオゾンを含有した(ワーク中の間隙に高濃度のオゾンが残存した)状態で第2の脱脂工程および焼結工程に供されたと考えられる。このため、高温下でオゾンの酸化作用が特に促進され、ワーク中の金属材料が酸化し、これにより、焼結体中の金属酸化物の含有量が増大したと推察される。
本発明の焼結体の製造方法の実施形態を示す工程図である。 本発明の焼結体の製造方法の実施形態で用いる脱脂体製造用の組成物を模式的に示す図である。 本発明の焼結体の製造方法の第1実施形態で得られた成形体を模式的に示す縦断面図である。 本発明の焼結体の製造方法の第1実施形態で得られた第1の脱脂体を模式的に示す縦断面図である。 本発明の焼結体の製造方法の第1実施形態で得られた第2の脱脂体を模式的に示す縦断面図である。 本発明の焼結体を模式的に示す縦断面図である。 本発明の焼結体の製造方法の第1実施形態で用いる連続炉を模式的に示す平面図である。 本発明の焼結体の製造方法の第2実施形態で用いる連続炉を模式的に示す平面図である。 本発明の焼結体の製造方法の第3実施形態で用いる連続炉を模式的に示す平面図である。
符号の説明
1……粉末 2……結合材 3……ポリエーテル系樹脂 4……第2の樹脂 5……分散剤 10……組成物 20……成形体 30……第1の脱脂体 31……流路 40……第2の脱脂体 50……焼結体 90……ワーク 100、200、300……連続炉 101……入炉口 102……出炉口 110、120、130、140……ゾーン 115、125……排気手段 150……コンベア 160……ヒーター 165……出力調整器 170……ノズル 175……ガス供給源 A〜E……工程 H、L……領域

Claims (23)

  1. 主として金属材料で構成された粉末と、ポリエーテル系樹脂を含む結合材とを含有する組成物を所定の形状に成形し、成形体を得る成形体形成工程と、
    該成形体を、オゾン含有雰囲気に曝すことにより、前記成形体中から前記ポリエーテル系樹脂を分解・除去し、脱脂体を得る脱脂工程と、
    該脱脂体を、少なくとも1回、前記オゾン含有雰囲気よりオゾン濃度が低い低オゾン含有雰囲気に曝す中間工程と、
    前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体を焼結させて、焼結体を得る焼結工程とを有することを特徴とする焼結体の製造方法。
  2. 前記オゾン含有雰囲気中のオゾン濃度は、50〜10000ppmである請求項1に記載の焼結体の製造方法。
  3. 前記オゾン含有雰囲気の温度は、20〜180℃である請求項1または2に記載の焼結体の製造方法。
  4. 前記ポリエーテル系樹脂は、ポリアセタール系樹脂を主成分とするものである請求項1ないし3のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  5. 前記ポリエーテル系樹脂は、その重量平均分子量が1〜30万のものである請求項1ないし4のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  6. 前記結合材中の前記ポリエーテル系樹脂の含有率は、20wt%以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  7. 前記中間工程の少なくとも最終段階における前記低オゾン含有雰囲気は、実質的にオゾンを含有しない請求項1ないし6のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  8. 前記低オゾン含有雰囲気の温度は、前記オゾン含有雰囲気の温度より低い請求項1ないし7のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  9. 前記低オゾン含有雰囲気は、オゾン以外に、非酸化性ガスを主成分とするものである請求項1ないし8のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  10. 前記脱脂工程、前記中間工程および前記焼結工程を、連続炉を用いて連続して行う請求項1ないし9のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  11. 前記連続炉は、内部のオゾン濃度が、前記成形体の進行方向の途中で低下するように設定された空間を有しており、
    該空間中を前記成形体を通過させることにより、前記脱脂工程および前記中間工程を連続して行う請求項10に記載の焼結体の製造方法。
  12. 前記空間中のオゾン濃度は、連続的に変化するよう設定されている請求項11に記載の焼結体の製造方法。
  13. 前記結合材は、前記ポリエーテル系樹脂の融点より熱分解温度が高い第2の樹脂を含み、
    前記中間工程の後に、前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体を加熱することにより、該脱脂体中から前記第2の樹脂を分解・除去する第2の脱脂工程を有する請求項1ないし12のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  14. 前記第2の脱脂工程における加熱温度は、180〜600℃である請求項13に記載の焼結体の製造方法。
  15. 前記第2の脱脂工程における雰囲気は、還元性ガスを主成分とするものである請求項13または14に記載の焼結体の製造方法。
  16. 前記第2の樹脂は、ポリスチレンおよびポリオレフィンの少なくとも1種を主成分とするものである請求項13ないし15のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  17. 前記組成物は、さらに、添加剤を含み、
    前記第2の脱脂工程において、前記低オゾン含有雰囲気に曝された前記脱脂体中から、前記第2の樹脂とともに前記添加剤を分解・除去する請求項13ないし16のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  18. 前記添加剤は、前記粉末の前記組成物中での分散性を向上させるための分散剤を含む請求項17に記載の焼結体の製造方法。
  19. 前記分散剤は、高級脂肪酸を主成分とするものである請求項18に記載の焼結体の製造方法。
  20. 前記高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30のものである請求項19に記載の焼結体の製造方法。
  21. 前記脱脂工程、前記中間工程、前記第2の脱脂工程および前記焼結工程を、連続炉を用いて連続して行う請求項13ないし20のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  22. 前記成形体形成工程において、前記成形体を射出成形法または押出成形法により形成する請求項1ないし21のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  23. 請求項1ないし22のいずれかに記載の焼結体の製造方法により製造されたことを特徴とする焼結体。
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