JP2008074799A - 白内障の予防及び/又は治療のための医薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】白内障に対して優れた予防及び/又は治療効果を達成可能な医薬を提供する。
【解決手段】白内障の予防及び/又は治療のための医薬であって、オールトランスレチノイン酸やレチノイン酸レセプターRARのサブタイプαに結合するレチノイドなどのレチノイド類を有効成分として含む医薬。
【選択図】なし

Description

本発明は白内障の予防及び/又は治療のための医薬に関するものである。
白内障は、水晶体の混濁により視力が障害される疾患である。世界では、失明の最も大きい原因であり、国内でも65歳以上では半数が白内障にかかるといわれている。白内障には、先天性(小児白内障)のもののほか、糖尿病などの他の疾患から誘引され発症するものや老化によるものが挙げられる。特に老化による老人性白内障が最も一般的である。水晶体混濁の原因としては加齢(老人性)や紫外線などが挙げられているが、その他にも糖尿病、ステロイドの長期使用、外傷、炎症などの眼疾患、内眼手術、遺伝(先天性)、アトピー性皮膚炎に伴うものなどがあり、詳しい原因や発症のメカニズムについては殆ど解明されていない。発展途上国では視力障害の大半が白内障によるため、その障害発症程度を緩和することが急務となっている。
白内障の予防及び/又は治療のための医薬としては、ピレノキシン点眼薬、還元型グルタチオン点眼薬、唾液腺ホルモン錠、チオプロニン錠、ビタミン類(例えば、ビタミンC、ビタミンEなど)、アルドースレダクターゼ(AR)活性阻害剤(例えば、トルレスタット、エパルレスタットなど)などが臨床で使用されている。しかしながら、これらの医薬はいずれも充分な予防及び/又は治療効果を有するものではなく、白内障の進行を効果的に予防できる医薬ではない。従って、白内障に対しては現時点では有効な薬物療法はなく、ほとんどの症例において症状の進行に伴って眼内レンズを挿入するための手術治療が必要となる。
一方、レチノイン酸(ビタミンA酸)はビタミンAの活性代謝産物であり、発生途上にある未熟な細胞を特有な機能を有する成熟細胞へと分化させる作用や、細胞の増殖促進作用や生命維持作用などの極めて重要な生理作用を有している。これまでに合成された種々のビタミンA誘導体、例えば、特開昭61-22047号公報や特開昭61-76440号公報記載の安息香酸誘導体、及びジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry, 1988, Vol. 31, No. 11, p.2182)に記載の化合物なども、同様な生理作用を有することが明らかにされている。レチノイン酸及びレチノイン酸様の生物活性を有する上記化合物は「レチノイド」と総称されている。
例えば、オール・トランス(all-trans)・レチノイン酸は、細胞核内に存在する核内レセプター・スーパーファミリー (Evans, R.M., Science, 240, p.889, 1988) に属するレチノイン酸レセプター(RAR)にリガンドとして結合して、動物細胞の増殖・分化あるいは細胞死などを制御することが明らかにされている(Petkovich, M., et al., Nature, 330, pp.444-450, 1987)。また、レチノイン酸の生理活性の発現については、レチノイドX レセプター(RXR, 9-cis-レチノイン酸をリガンドとする)の存在が証明されている。レチノイドX レセプターは、レチノイン酸レセプター(RAR) と二量体を形成し、遺伝子の転写を惹起ないし抑制して、レチノイン酸の生理活性の発現を調節していることが明らかにされた(Mangelsdorf, D.J. et al., Nature, 345, pp.224-229) 。
レチノイン酸様の生物活性を有する上記化合物(例えば、4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸: Am80など)も、レチノイン酸と同様にRAR に結合して生理活性を発揮することが示唆されている(Hashimoto, Y., Cell Struct. Funct., 16, pp.113-123, 1991; Hashimoto, Y., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990を参照)。これらの化合物は、臨床的には、ビタミンA欠乏症、上皮組織の角化症、リウマチ、遅延型アレルギー、骨疾患、及び白血病やある種の癌の治療や予防に有用であることが見出されている。
特開昭61-22047号公報 特開昭61-76440号公報 Journal of Medicinal Chemistry, 31, No. 11, p.2182, 1988 Cell struct. Funct., 16, pp.113-123, 1991 Biochem. Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990
本発明の課題は、白内障に対して優れた予防及び/又は治療効果を達成可能な医薬を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、レチノイン酸などのレチノイドが白内障に対して極めて優れた予防及び/又は治療効果を有していることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明により 白内障の予防及び/又は治療のための医薬であって、レチノイドを有効成分として含む医薬が提供される。
上記の発明の好ましい態様によれば、該レチノイドがオールトランスレチノイン酸である上記の医薬;該レチノイドが非天然型のレチノイドである上記の医薬;該レチノイドが芳香環と芳香族カルボン酸又はトロポロンとが連結基を介して結合した基本骨格を有するレチノイドである上記の医薬が提供される。
また、別の好ましい態様によれば、糖尿病における白内障の予防及び/又は治療のための上記医薬が提供される。
上記発明のさらに好ましい態様によれば、該レチノイドがレチノイン酸レセプター(RAR)・サブタイプα及びサブタイプβに結合するレチノイドである上記の医薬;該レチノイドがレチノイドXレセプターX(RXR)に結合するレチノイドである上記の医薬;該レチノイドが置換フェニル基と安息香酸又はトロポロンとが連結基を介して結合した基本骨格を有するレチノイドである上記の医薬;該レチノイドが4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸又は4-[(3,5-ビストリメチルシリルフェニル)カルボキサミド]安息香酸である上記の医薬;該レチノイドがジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピニル安息香酸を基本骨格とするレチノイドである上記の医薬;該レチノイドが4-[2,3-(2,5-ジメチル-2,5-ヘキサノ)ジベンゾ[b,f][1,4]-チアゼピン-11-イル]安息香酸である上記の医薬;及び、該レチノイドが4-[5-(4,7-ジメチルベンゾフラン-2-イル)ピロール-2-イル]安息香酸である上記の医薬が提供される。
別の観点からは、上記の医薬の製造のための上記レチノイドの使用、及び白内障の予防及び/又は治療方法であって、上記のレチノイドの有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
本発明の医薬は白内障に対して優れた予防及び/又は治療効果を発揮できる。
本明細書において、レチノイドとはオールトランスレチノイン酸(all-trans retinoic acid (atRA))または9-シス-レチノイン酸が生理作用を発現するために必要な受容体に結合してレチノイン酸に類似する作用又はその一部の作用を発揮する化合物のことであり、少なくとも1種以上のレチノイド様作用、例えば、細胞分化作用、細胞増殖促進作用、及び生命維持作用などの1種以上の作用を有している化合物を意味している。レチノイドであるか否かは、H. de The, A. Dejean: 「Retinoids: 10 years on.」, Basel, Karger, 1991, pp.2-9に記載された方法により容易に判定できる。
また、レチノイドは一般的にレチノイン酸レセプター(RAR)に結合する性質を有しており、場合によりRARとともにRXRに結合する性質を有しているが、本発明の医薬の有効成分として用いられるレチノイドはRARのサブタイプαに結合してアゴニスト活性を示すものであることが好ましい。RARαアゴニストであるか否かの判定については、レチノイン酸レセプター・サブタイプのアゴニストについても上記文献記載の方法により容易に確認することができる。
本発明の医薬の有効成分としては、天然型レチノイド又は非天然型のレチノイドのいずれを用いてもよいが、好ましくは天然型レチノイドのうちオールトランスレチノイン酸、または非天然型のレチノイドを用いることができる。非天然型レチノイドとしては、例えば、芳香環と芳香族カルボン酸又はトロポロンとが連結基を介して結合した基本骨格を有するレチノイドを用いることができる。
より具体的には、非天然型のレチノイドとして、下記の一般式:B−X−A(式中、Bは置換基を有していてもよい芳香族基を示し、Xは連結基を示し、Aは置換基を有していてもよいカルボン酸置換芳香族基又はトロポロニル基を示す)で表されるレチノイドを用いることができる。
Bで表される芳香族基としては置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されない。フェニル基上の置換基としては、例えば、低級アルキル基を用いることができる(本明細書において低級とは炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個を意味する)。低級アルキル基としては直鎖又は分枝鎖のアルキル基が好ましく、より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert- ブチル基などを挙げることができる。また、フェニル基上の置換基として、例えば、メトキシ基などの低級アルコキシ基、ハロゲン原子(ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよい)、例えばトリメチルシリル基などの低級アルキル置換シリル基などを挙げることができる。フェニル基としては、例えば、2ないし4個の低級アルキル基で置換されたフェニル基、あるいは1又は2個のトリ低級アルキルシリル基で置換されたフェニル基などが好ましく、2ないし4個のアルキル基で置換されたフェニル基、又は2個のトリメチルシリル基で置換されたフェニル基などがより好ましい。
フェニル基上に置換する2個の低級アルキル基が隣接する場合には、それらの2つの低級アルキル基は一緒になってそれらが結合するフェニル基の環構成炭素原子とともに5員環又は6員環を1個又は2個、好ましくは1個形成してもよい。このようにして形成される環は飽和でも不飽和でもよく、環上には1又は2個以上の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基などが置換していてもよい。上記の形成された環上には、好ましくは2〜4個のメチル基、さらに好ましくは4個のメチル基が置換していてもよい。例えば、フェニル環上に置換する2個の隣接する低級アルキル基が一緒になって5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン環や5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン環などが形成されることが好ましい。Bで表される芳香族基としては、芳香族複素環基を用いてもよい。そのような例として、Bが置換基を有していてもよいベンゾフラニル基、好ましくはベンゾルフラン-2-イル基、特に好ましくはBが4,7-ジメチルベンゾフラン-2-イル基であるレチノイドを例示することができる。
Aで表されるカルボン酸置換芳香族基としてはカルボン酸置換フェニル基又はカルボン酸置換複素環基などを用いることができるが、4-カルボキシフェニル基が好ましい。Aが示すカルボン酸置換複素環基を構成する複素環カルボン酸の例として、例えばピリミジン-5-カルボン酸などを挙げることができる。また、Aで表されるトロポロニル基としてはトロポロン-5-イル基が好ましい。これらのカルボン酸置換芳香族基またはトロポロニル基の環上には1以上の他の置換基が存在していてもよい。
Xで表される連結基の種類は特に限定されないが、例えば、-NHCO-、-CONH-、-N(RA)-(RAは低級アルキル基、例えばシクロプロピルメチル基などを示す)、又は-C(RB)(RC)-(RB及びRCはそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基などを示す)などを例示することができる。また、Xが2価の芳香族基であってもよい。例えば、Xがピロールジイル基である場合などを挙げることができる。さらに、Xで表される連結基とBで表される芳香族基とが結合して環構造を形成してもよい。そのような例として、B−X−Aで表されるレチノイドの基本骨格がジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピニル安息香酸又はジベンゾ[b,f][1,4]ジアゼピニル安息香酸となる場合を挙げることができる。なお、本明細書において「基本骨格」という用語は1又は2以上の任意の置換基が結合するための主たる化学構造を意味する。
好ましいレチノイドとして、天然型レチノイン酸のオールトランスレチノイン酸及び、非天然型レチノイド、例えば、フェニル置換カルバモイル安息香酸又はフェニル置換カルボキサミド安息香酸を基本骨格とするレチノイドを用いることができる。フェニル置換カルバモイル安息香酸又はフェニル置換カルボキサミド安息香酸を基本骨格とするレチノイドは種々知られている。フェニル置換カルバモイル安息香酸を基本骨格とするレチノイドの代表例としてAm80(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸, Hashimoto, Y., Cell Struct. Funct., 16, pp.113-123, 1991; Hashimoto, Y., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990を参照)、フェニル置換カルボキサミド安息香酸を基本骨格とするレチノイドの代表例としてTac101(4-[(3,5-ビストリメチルシリルフェニル)カルボキサミド]安息香酸, J. Med. Chem., 33, pp.1430-1437, 1990)を挙げることができる。
好ましいレチノイドとしては、例えば、下記の一般式(I):
〔式中、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、又は低級アルキル置換シリル基を示し、R1、R2、R3、R4、及びR5のうち隣接するいずれか2つの基が低級アルキル基である場合には、それらが一緒になってそれらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに5員環又は6員環を形成してもよく(該環は1又は2以上のアルキル基を有していてもよい)、X1は-CONH-又は-NHCO-を示す〕で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(I) において、R1、R2、R3、R4、及びR5が示す低級アルキル基としては、炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、又はtert- ブチル基などを用いることができる。上記の低級アルキル基上には1個又は2個以上の任意の置換基が存在していてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子などを例示することができる。R1、R2、R3、R4、及びR5が示す低級アルキル置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基などを挙げることができる。
R1、R2、R3、R4、及びR5からなる群から選ばれる隣接する2つの低級アルキル基が一緒になって、それらが結合するベンゼン環上の炭素原子とともに5員環又は6員環を1個又は2個、好ましくは1個形成してもよい。このようにして形成される環は飽和、部分飽和、又は芳香族のいずれであってもよく、環上には1又は2以上のアルキル基を有していてもよい。環上に置換可能なアルキル基としては、炭素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることができる。例えば、メチル基、エチル基などを用いることができ、好ましくは2〜4個のメチル基、さらに好ましくは4個のメチル基が置換していてもよい。例えば、R2及びR3が置換するベンゼン環とR2及びR3とにより、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン環や5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8- テトラヒドロナフタレン環などが形成されることが好ましい。
他の好ましいレチノイドとしては、例えば、B−X−Aで表されるレチノイドの基本骨格がジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピニル安息香酸又はジベンゾ[b,f][1,4]ジアゼピニル安息香酸であるレチノイドを挙げることができる。このレチノイドの一例は、例えば、特開平10-59951号公報に記載されている。このようなレチノイドの特に好ましい例として、例えば、HX630(4-[2,3-(2,5-ジメチル-2,5-ヘキサノ)ジベンゾ[b,f][1,4]-チアゼピン-11-イル]安息香酸)を挙げることができる。また、Xが-N(RA)-であり、Bが芳香族複素環カルボン酸であるレチノイドとしては、例えば、2-[2-(N-5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル-N-シクロプロピルメチル)アミノ]ピリミジン-5-カルボン酸を挙げることができる。また、Xが2価の芳香族基であるレチノイドとしては、例えば、4-[5-(4,7-ジメチルベンゾフラン-2-イル)ピロール-2-イル]安息香酸を挙げることができる。Aがトロポロニル基である化合物としては、例えば、5-[[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル]カルボキサミド]トロポロンなどを挙げることができる。
特に好ましいレチノイドとして、Am80(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸)又はAm580(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8- テトラメチル-2- ナフタレニル)カルボキサミド] 安息香酸)が挙げられる。
本発明の医薬の有効成分としては、上記のレチノイドの塩を用いてもよい。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、若しくはカルシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩若しくはエタノールアミン塩などの有機アミン塩などの生理学的に許容される塩を本発明の医薬の有効成分として用いることができる。本発明の医薬の有効成分としては、上記のレチノイドのプロドラッグを用いてもよい。プロドラッグとは、哺乳類動物に経口的又は非経口的に投与した後に生体内、好ましくは血中で加水分解などの変化を受けてレチノイド又はその塩を生成する化合物又はその塩のことである。例えば、カルボキシル基、アミノ基、または水酸基などを有する薬剤をプロドラッグ化する手段は多数知られており、当業者は適宜の手段を選択可能である。レチノイド又はその塩のプロドラッグの種類は特に限定されないが、例えば、レチノイドがカルボキシル基を有する場合には、該カルボキシル基をアルコキシカルボニル基に変換したプロドラッグが例示される。好ましい例としては、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基などのエステル化合物が挙げられる。
上記のレチノイドは、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、これらの不斉炭素に基づく任意の光学異性体、光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、2個以上の不斉炭素に基づくジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の任意の混合物などは、いずれも本発明の医薬の有効成分として利用可能である。さらに、二重結合のシス又はトランス結合に基づく幾何異性体、及び幾何異性体の任意の混合物や、遊離化合物又は塩の形態の化合物の任意の水和物又は溶媒和物も本発明の医薬の有効成分として用いることができる。
本発明の医薬は、白内障の予防及び/又は治療のために用いることができる。より具体的には、本発明の医薬は、水晶体の白濁の形成を予防し、及び/又は水晶体の白濁を軽減することにより白内障を予防及び/又は治療することができる。本発明の医薬は、すでに水晶体に白濁が形成されている場合において、さらなる白濁の形成を抑制することにより白内障の進行を予防するために用いることもできる。好ましい適用対象の一つとして糖尿病における白内障を挙げることができるが、本発明の医薬の適用対象はこの特定の対象に限定されることはない。
本発明の医薬は、上記のレチノイド及びその塩、並びにそれらの水和物及び溶媒和物からなる群から選ばれる物質の1種または2種以上を有効成分として含んでいる。2種以上の異なるレチノイドを組み合わせて投与することにより好ましい有効性が得られることがある。本発明の医薬としては上記の物質それ自体を投与してもよいが、好ましくは、当業者に周知の方法によって製造可能な経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することができる。
経口投与に適する医薬用組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、眼軟膏剤、及び貼付剤等を挙げることができる。2種以上の医薬組成物を組み合わせて用いることもできる。本発明の医薬の好ましい形態として経口投与用の医薬組成物のほか、点眼剤又は眼内注射剤などの非経口投与用の医薬組成物を挙げることができる。白内障の手術時に補助医薬として用いられるヒアルロン酸などのムコ多糖製剤による粘弾性試薬又は眼内還流液に上記の有効成分を添加した形態の医薬組成物も好ましい。
上記の医薬組成物は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる1種又は2種以上の製剤用添加物を加えて製造することができる。製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができるがこれらに限定されることはない。
例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口投与用医薬組成物の製造には、乳糖や結晶セルロース、デンプン等の賦形剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、力ルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤などを必要に応じて用いることができる。点眼剤の製造には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸、モノエタノールアミン等の緩衝化剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、希塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤などを必要に応じて用いることができる。点眼剤のpHは特に限定されないが、眼科用製剤に許容される範囲内として例えば4〜8の範囲が好ましい。
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の症状、年齢、体重などの条件や投与方法及び有効成分の種類などに応じて適宜選択できる。例えば、経口投与の場合には1日あたり0.01〜1000 mg、好ましくは0.1〜100 mgを1回又は数回に分けて投与すればよい。点眼などの局所投与の場合には、例えば0.0001〜5質量%、好ましくは、0.001〜2質量%程度の濃度の製剤を1日1回〜数回局所投与すればよい。もっとも、上記の投与量は例示のためのものであり、適宜増減することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:糖尿病マウスモデルでの白内障における効果の評価
白内障として、より臨床疾患に近い自然発症モデルである糖尿病マウスを以下のように作成した。雄性C57BL/6マウス(5週齢)を通常の餌と水を与え無菌環境で飼育し、ストレプトゾトシン40 mg/kgをpH4.5の0.01Mクエン酸三ナトリウム水溶液に溶解して5日連続で腹腔内投与した。マウスの尿糖及び血糖を検査し、糖尿病の発症を確認した。6週後、マウスにオールトランスレチノイン酸(1.0 mg/kg、毎日)、Am580(3.75 mg/kg、1日おき)、又はAm80(3.75mg/kg、1日おき)を溶媒(ジメチルスルホキシド)に溶解したものを一週間腹腔内投与した。対照群には溶媒のみを毎日投与した。その後、マウスを解剖して両眼を摘出した。レンズを取り出して写真を撮り、白内障のレベルとしてレンズの白濁のレベルを画像処理解析ソフトのScion Imageを用いて計測し以下のように定量化した。(レンズ濃度)×(エリア(ピクセル))
結果を図1に示す。 図1に示した結果から、糖尿病を発症したマウスでは速やかにレンズの白濁が観測されたのに対し、オールトランスレチノイン酸、Am80、及びAm580投与群では、対照群に比べて著しくレンズの白濁を抑制した。これらの実験結果から、レチノイドは白内障におけるレンズの白濁を抑制できることが示された。
白内障におけるレンズ白濁に対する本発明の医薬の効果を示した図である。図中、Ctrl:正常群、DM:糖尿病マウス陰性対照群、ATRA:オールトランスレチノイン酸投与群(1.0 mg/kg、毎日)、Am580:Am580投与群(3.75 mg/kg、1日おき)、Am80:Am80投与群(3.75mg/kg、1日おき)を示す。

Claims (6)

  1. 白内障の予防及び/又は治療のための医薬であって、レチノイドを有効成分として含む医薬。
  2. レチノイドがオールトランスレチノイン酸である請求項1に記載の医薬。
  3. レチノイドが非天然型のレチノイドである請求項1に記載の医薬。
  4. レチノイドがレチノイン酸レセプターRARのサブタイプαに結合するレチノイドである請求項3に記載の医薬。
  5. レチノイドが芳香環と芳香族カルボン酸又はトロポロンとが連結基を介して結合した基本骨格を有するレチノイドである請求項3又は4に記載の医薬。
  6. レチノイドがAm80(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸)又はAm580(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8- テトラメチル-2- ナフタレニル)カルボキサミド] 安息香酸)である請求項3に記載の医薬。
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