JP2008067375A - 音響伝送路型スピーカーシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】低周波数域における音響振動の不要な共振若しくは反共振を抑圧し、且つ、中高周波数域における透過波の定在波形成を防止することによって、再生帯域内の音圧対周波数特性が平坦化された音響伝送路型スピーカーシステムを提供する。
【解決手段】この音響伝送路型スピーカーシステムは、管体部4の内部に、1A、1B、1Cおよび1Dの各振動板がエッジ2に支持されて所定の間隔を置き配設されている。各振動板はエッジ2の変形の範囲内で管体部4の長さ方向に振幅することができる質量要素であり、各振動板に分割されて形成された空気室3A、3Bおよび3Cの内部の空気は弾性要素である。この音響伝送路型スピーカーシステムは、隣接する空気室間に通気路6Bおよび6Cが形成されていることにより、振動板1Bおよび1Cの振幅を制限し、前記振動板が係わる不要な共振若しくは反共振を抑圧することを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】この音響伝送路型スピーカーシステムは、管体部4の内部に、1A、1B、1Cおよび1Dの各振動板がエッジ2に支持されて所定の間隔を置き配設されている。各振動板はエッジ2の変形の範囲内で管体部4の長さ方向に振幅することができる質量要素であり、各振動板に分割されて形成された空気室3A、3Bおよび3Cの内部の空気は弾性要素である。この音響伝送路型スピーカーシステムは、隣接する空気室間に通気路6Bおよび6Cが形成されていることにより、振動板1Bおよび1Cの振幅を制限し、前記振動板が係わる不要な共振若しくは反共振を抑圧することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、直列に結合した振動子の間を音響振動が伝達する音響伝送路に音響源である電気音響変換器を結合させたスピーカーシステムに関する。
共鳴管方式のスピーカーシステムにおいては、電気音響変換器であるドライバユニットの背面から放射された音波が管内で共振することによって、共振周波数における音響出力の増強が行われる。この時、管内には共振モードの定在波が成立している。共振モードの定在波は、開口した管の端(管端)で腹となる。すなわち、管端での音波の振幅は比較的大きなものとなるので、管端から強い音響出力を得ることができる。これに対して反共振モードの定在波は、管の内部において腹となり、開口した管端で節となる。したがって、管端における音波の振幅は極めて小さくなるので、管端から外部への音響出力は小さなものとなる。その結果、典型的な共鳴管方式のスピーカーシステムの音圧対周波数特性は、共振モードに対応する複数の周波数におけるピークと、反共振モードに対応する複数の周波数におけるディップが混在した非平坦な特性になり、忠実な音響再生には適さないものとなる。特に中高音域におけるピークは耳障りであるので、これを除去または低減することは、重要な課題となっている。
このような課題を解決するために、たとえば、特許文献1には、共鳴管の開口部分に遮蔽板を配設することによって、中高音域成分が共鳴管の外部に漏洩することを防止した例が開示されている。
また、優先日において公知にはなっていない技術であるが、共鳴管内での音波の伝搬モードを変更することによって、音圧対周波数特性にピークやディップが出現する原因となる定在波の発生を制限した例が、特願2006−130871号「音響伝送路およびこれを用いたスピーカーシステム並びに音響伝送路の組立キット用の管体モジュール」として出願されている。特願2006−130871号として出願されているような音響伝送路を用いたスピーカーシステム(以下、「音響伝送路型スピーカーシステム」と称する)においては、音響的質量と音響的弾性の組み合わせより成る音響振動素子を媒体とする音響振動(以下、単に「音響振動」称する)が伝搬する。この音響振動は大気中を伝搬する通常の音波に比べて低い速度で伝搬する振動であって、大気中を伝搬する通常の音波とは異なる伝搬モードの振動として区別される。なお、音響的質量、すなわち質量要素は、具体的には、振動板およびポート管である。以下、図18〜図23を用いて音響伝送路型スピーカーシステムについて説明する。
図18は、音響的質量として振動板を用い、音響的弾性として空気を用いた音響伝送路型スピーカーシステムの一例である。管体部4はたとえば円筒形であり、その内部には隔壁14Bによって分割されて空気室3Aおよび3Bが形成されている。隔壁14Bには、たとえば円板形状を成す振動板1Bが配設されている。端部壁13Aにおいては、電気音響変換器であるドライバユニット5の振動板1Aがエッジ部材2を介して設けられており、この振動板1Aが音響的質量として用いられている。すなわち図18は、振動板1Aを開放端とし、管体部4の他方の端を閉止端壁8とする片端開放の共鳴管に等価な構成となっている。
図18における基本共振モードは、管体部4の全長を1/4波長とする定在波に対応する。図18の点線f4は、振動板1Aにおいて腹となり閉止端壁8において節となる、この共振モードの定在波の速度振幅を模式的に示している。また、f4に対応する共振ピークが、図19の音圧対周波数特性(a)の低周波数側に示されている。一方、図18の実線f2は、管体部4の全長を1/2波長とする反共振モードの定在波の速度振幅を模式的に示している。この反共振モードの定在波は、管内部の振動板1Bを腹とする一方、管端の振動板1Aにおいては節となるので振動板1Aから外部への音響出力は小さなものとなる。この結果として音圧対周波数特性に現れるディップは、図19(a)のf2の位置に示されている。
図18の構成の利点は、音響振動による定在波の系列が図19に示されるf2の周波数を最高周波数として終息し、f2よりも高い周波数においては共振や反共振の原因とならないことである。したがって、たとえば図19(a)に示されているように、f2よりも高い周波数においては、比較的平坦な特性を得る事が可能となっている。また、f4に対応する共振ピークは、特に小型のスピーカーシステムにおいて低い周波数域を増強する手段として有用である。このように、図18に示される音響伝送路型スピーカーシステムは、有利な点を有する一方、周波数f2の付近に見られるような大きなディップは低い周波数域において多くの伝達情報を欠損させることとなり有害である。
ところで、図18の音響伝送路型スピーカーシステムの管体部4の内部には、上記の音響的質量と音響的弾性の組み合わせより成る音響振動素子を媒体とする音響振動以外にも、振動板を透過しつつ管体部4内の空気中を伝搬する通常の音波(以下、「透過波」と称する)も存在する。
透過波は、振動板1Aと振動板1Bの間や、振動板1Bと閉止端壁8の間などの対向する平面の間で定在波を形成する。このような透過波の定在波による共振、反共振の影響は、図19(a)に見られるような高周波数域における多数の鋭いピークやディップとなって現れる。特にピークは、特定の高音信号が強調された耳障りな再生音の原因となり有害である。
図20は、両端開放の共鳴管に等価な音響伝送路型スピーカーシステムの例である。管体部4の内部は隔壁14Bと14Cとによって3分割されて空気室3A、3Bおよび3Cが形成されている。隔壁14Bと14Cには振動板1Bと1Cが、端部壁13Aと13Dには振動板1Aと1Dが、それぞれエッジ部材2を介して配設されている。これら振動板1A、1B、1C、1Dと、空気室3A、3B、3Cとはは、管体部4の軸線方向に沿って質量要素と弾性要素とが交互に配列されてなる音響振動部を構成する。なお、本実施形態では、ドライバユニット5が、管体部4の側壁に設けられた通孔16を介して、音響伝送路に音響的に結合されている。なお、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に配置するために、たとえば、管体部4に支持部が設けられている。支持部は、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に固定しつつ、ドライバユニット5の裏面側を覆うように空間を外界と区画することによって、ドライバ容器15を形成している。
以上のように図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムは、振動板1Aと1Dを開放端とする両端開放の共鳴管に等価な構成となっていて、ドライバユニット5は中央の空気室3Bにおいてこの共鳴管構造に結合されている。
図21は図20と同一の構成の音響伝送路型スピーカーシステムにおける管体部4内の定在波の様子を示している。図21における基本共振モードは、管体部4の全長を1/2波長とする定在波に対応する。図21の点線f3は、この基本共振モードの定在波の速度振幅を模式的に示しており、この定在波は、振動板1Aと1Dにおいて腹となり空気室3Bにおいて節となる。また、この基本共振モードであるf3に対応する共振ピークが、図23の音圧対周波数特性(a)の低周波数側に示されている。図21においては、各振動板位置において腹となり管体部4の全長を3/2波長とする定在波も成立可能であり、実線f1により、この共振モードの定在波の速度振幅が模式的に示されている。また、f1に対応する共振ピークが、図23の音圧対周波数特性(a)の低周波数側に示されている。
一方、図22の実線f0は、ドライバユニット5から振動板1Cを経て振動板1Dに至る経路を1波長とする別の共振モードの定在波の速度振幅を模式的に示している。このモードは、ドライバユニット5が管体部4の側壁に取り付けられたことにより寄生的に発生するモード(以下、「寄生モード」と称する)であり、一般にはドライバユニット5の振動板質量が小さいためにf1よりも高い周波数で発生する。この寄生モードでは、ドライバユニット5の前面から外部に放射される音波と、振動板1Dから外部に放射される音波とが逆相関係にあり互いに打ち消しあうので、合成された音響出力は小さなものとなる。この合成された音響出力の低下に起因して音圧対周波数特性に現れるディップは、図23(a)のf0の位置に示されている。f0に見られるような大きなディップは低い周波数域において多くの伝達情報を欠損させることとなるので、図19(a)におけるf2のディップと全く同様に有害である。また、透過波が各振動板間で発生形成する定在波により、高周波数域に多数の鋭いピークやディップが現れ有害であることも、図19(a)の場合と同様である。
特開平8−51688号公報
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、再生帯域内の音圧対周波数特性が平坦化された音響伝送路型スピーカーシステムを提供することにある。より具体的には、本発明は、低周波数域における音響振動の不要な共振若しくは反共振を解消し、かつ、中高周波数域における透過波の定在波形成を防止することによって、再生帯域内の音圧対周波数特性が平坦化された音響伝送路型スピーカーシステムを提供することにある。
以上の課題は、以下の手段によって解決される。
(1)本発明のスピーカーシステムは、内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、前記質量要素を挟み隣接する2個の空気室間に、当該質量要素の前後における圧力差を軽減するための通気径路が形成されていることを特徴とする。
(2)上記の質量要素の少なくとも一つは、前記管体部内部で振動可能に配設された振動板である。
(3)上記の振動板の少なくとも一つが、前記音響伝送路を伝搬する音響振動が形成する定在波における速度振幅の腹に対応する位置に配設されている。
(4)上記の通気径路は、前記管体部内部を複数の空気室に区画する隔壁に形成された通気口である。
(5)上記のスピーカシステムは、管体部内部を複数の空気室に区画するように前記管体部内部に配置されており通孔を有する隔壁を有し、前記振動板は、前記隔壁に対向するように隣接して設けられており、前記通気経路は、前記振動板を保持する枠体と前記隔壁との間の空隙である。
(6)上記の通気径路は、前記振動板に形成された通気口である。
(7)上記の通気径路は、前記振動板の少なくとも一部を構成する通気性素材の部分である。
(8)上記の通気径路の少なくとも一方の端に吸音材が配設されている。
(9)本発明のスピーカーシステムは、内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、前記空気室の少なくとも一つの内部に音波を遮るための遮蔽板が配設されていることを特徴とする。
(10)上記のスピーカーシステムは、遮蔽板を迷路状に屈曲して配置することにより、前記音響伝送路を通過する音波の行程長を延長する。
(11)上記の管体部は両端に開口を有しており、前記電気音響変換器から放射された音波が、前記音響伝送路を経由して異なる前記開口より外部に放出されるとともに、前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記遮蔽板が配置されている。
(12)上記の管体部の内部空間を当該管体部の径方向に区分する複数の遮蔽板が重積されている。
(13)本発明のスピーカーシステムは、内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、前記管体部の側壁板材の厚さが局所的に変化していることを特徴とする。
(14)上記のスピーカーシステムは、管体部の側壁内面に複数の凹部が設けられている。
(15)上記の凹部内に、制振材が充填されている。
(16)本発明のスピーカーシステムは、内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、前記電気音響変換器の背面から放射された音波が、前記音響伝送路を通過して前記開口より外部に放出される間の経路に奇数個の前記空気室が区画されていることを特徴とする
(17)上記の電気音響変換器は、結合用振動版を介して前記音響伝送路に結合される。
(17)上記の電気音響変換器は、結合用振動版を介して前記音響伝送路に結合される。
(18)上記のスピーカシステムは、少なくとも2個の定在波を前記音響伝送路の異なる発生区間において発生させるとともに、前記発生区間の一部が相互に重畳された配置となっている。
(19)上記の発生区間の異なる少なくとも2個の定在波の周波数が略一致している。
(20)本発明のスピーカーシステムは、内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに、端部または側壁に少なくとも2つの開口を含む管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に内部振動板と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、前記電気音響変換器から放射された音波が、前記音響伝送路を経由して異なる前記開口より外部に放出されるとともに、前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記電気音響変換器と前記2つの開口との相対的な位置関係が設定されていることを特徴とする。
(21)上記の管体部は、前記電気音響交換器の取り付け位置を基準として一端に第1開口を有するとともに、他端側に位置する側壁部分に少なくとも一つの側壁開口を有しており、当該第1開口および側壁開口には、それぞれ振動板が設けられている。
(22)上記の管体部は、前記他端に第2開口を有し、当該第2開口には、振動板が設けられている。
(23)上記の側壁開口に設けられた振動板の背面に沿って伸延し、当該側壁開口に設けられた振動板と前記内部振動板との音響的結合を弱める一方、当該側壁開口に設けられた振動板と前記第2開口に設けられた振動板とを協働させるための遮蔽板を有する。
本発明に係る音響伝送路型スピーカーシステムは、再生帯域内の音圧対周波数特性が平坦化することができるという効果を有する。特に、音響伝送路を構成する振動板の振幅を制限することが可能となっていて、その結果、その振動板が定在波の腹となって低周波数域において発生する音響振動の不要な共振若しくは反共振が抑制され、再生帯域内の音圧対周波数特性を平坦化することができるという効果を有している。また、本発明に係る音響伝送路型スピーカーシステムは、中高周波数域における透過波の定在波形成を防止することによって、再生帯域内の音圧対周波数特性を平坦化することができるという効果を有している。さらにまた、本発明に係る音響伝送路型スピーカーシステムは、低周波数域においてドライバユニットの前面から外部に放射される音波と、音響伝送路の開口から外部に放出される音波と、が逆相関係となって互いに打ち消しあうことを回避可能であるという効果を有している。
以下、本発明について図面を参照してより詳細に説明する。以下の第1〜第17実施形態のいずれも、音響伝送路スピーカーシステムにおいて、再生帯域内の音圧対周波数特性が平坦化する技術を開示するものであるが、以下のように大別される。
第1〜第5実施形態は、振動板を挟み隣接する2個の空気室間に通気経路を形成することによって、振動板の表面と裏面の間の大きな圧力差を軽減して、その振動板が定在波の腹となって低周波数域において発生する音響振動の不要な共振若しくは反共振を抑制するものである。
第6、第7、および第13実施形態は、空気室内に遮蔽板を設けることによって、主として、中高周波数域における透過波の定在波形成を防止するものである。特に、第13実施形態は、径方向への透過波の定在波形成を防止するものである。
第8〜第12実施形態では、ドライバユニットの背面から放射されて異なる開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、主として、ドライバユニットと開口との相対的な位置関係を設定することによって、低周波数域においてドライバユニットの前面から外部に放射される音波と、音響伝送路の開口から外部に放出される音波との干渉を低減するものある。
第14および第15実施形態は、管体部の側壁面の内側に凹部を設けて側壁板材の厚さを局所的に変化させることにより、管体部の側壁面のたわみ振動に起因して中高周波数域において強い共振が生じることを防止するものである。
第16および第17実施形態は、ドライバユニットの背面から放射された音波が、音響伝送路を通過して前記開口より外部に放出される間の経路に奇数個の空気室が区画されるようにすることにより、低周波数域においてドライバユニットの前面から外部に放射される音波と、音響伝送路の開口から外部に放出される音波と、が逆相関係となって互いに打ち消しあうことを回避するものである。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。
本実施形態の音響伝送路型スピーカシステムは、電気音響変換器であるドライバユニット5と、このドライバユニット5が音響的に結合される音響伝送路と、を有する。
ドライバユニット5は、振動板1Aを有しており、入力電気信号を対応する音響出力信号に変換する電気音響交換器である。すなわち、ドライバユニット5は、スピーカーのドライバとして機能する。
一方、ドライバユニット5が結合される音響伝送路は、管体部4と、音響振動部とを有する。音響振動部は、管体部4に振動可能に設けられた振動板1A、1B(以下、総称して「振動板1」と称する場合がある)と、管体部4内部において互いに区画された空気室3A、3B(以下、総称して「空気室3」と称する場合がある)とを備える。ここで、振動板3は、質量要素として機能し、空気室4内の空気が弾性要素として機能する。これら振動板3および空気室4は、管体部4の軸線方向に沿って交互に配列される。したがって、管体部4の軸線方向に沿って質量要素1と弾性要素3とが交互に配列されてなる音響振動部1、3が構成されている。この音響振動部は、図18において説明したように、大気中を伝搬する通常の音波とは異なる所定の音響振動の波動を伝搬するように構成されている。
以上のように、音響伝送路は、大別して、管体部4、振動板1、および空気室3などの要素を有する。以下、それぞれの要素について説明する。
管体部4は、たとえば、円筒管である。管体部4は、内径よりも大きな軸線方向の長さ(全長)を有するように構成されている。本実施形態の管体部4においては、一端には、閉止端壁8が設けられている一方、他端には、開口を有する端部壁13Aが設けられている。この端部壁13Aに、ドライバユニット5が取りつけられている。本実施形態では、ドライバユニット5は、背面を管体部4の内側に向けて、管体部4の端部に取り付けられている。
管体部4の内面には、隔壁14Bが設けられている。たとえば、管体部4の全長を2Lとし、隔壁14Bを、管体部4の端部から距離Lの位置に配置することができる。
次に、振動板1について説明する。振動板1は、振動板1Aと振動板1Bを含む。振動板1Aは、端部壁13Aにおける電気音響変換器であるドライバユニット5の振動板であり、エッジ部材2を介してドライバユニット5に配設されている。一方、振動板1Bは、管体部4内の隔壁14Bにエッジ部材2を介して配設されている。振動板1A、1Bを支持するエッジ部材2は、振動板1A、1Bを管体部4の軸線方向に振動可能に支持するものであり、ゴム、発泡ウレタン樹脂等の可撓性材料により構成されていて容易に変形可能である。したがって、振動板1A、1Bも、管体部4の軸線方向に振幅することが可能である。
振動板1の材質としては、たとえば一般的なドライバユニット(電気音響交換器)の振動板と同様に、金属薄板、樹脂繊維織物、高密度紙等の高剛性かつ軽量の素材を用いることができる。また、各振動板1の有効振動面積が管体部4の内部の断面積に比べて極端に小さいと、各振動板1の振動により発生する波動が球面波に近くなるので、各振動板1の有効振動面積は、好ましくは、管体部4の内部の断面積の25%以上であり、さらに好ましくは、管体部4の内部の断面積の50%以上である。一方、音響振動部の音響振動の伝搬速度を大気中の音速に比べて低下させる効果を高める見地からは、各振動板1の有効振動面積が管体部4の内部の断面積の75%以下であることが望ましい。
次に、空気室3について説明する。空気室3は、管体部4の内部の空気室であり、本実施形態では、管体部4の内部空間が隔壁14Bによって2個の空気室3A、3Bに区画されている。したがって、各空気室3A、3Bは、管体部4の軸線に沿って直列に配列されている。空気室3A、3Bは、その間に質量要素である振動板1Bを挟むように隣接している。
ここで、本実施形態では、管体部4の内部空間を複数の空気室3A、3Bに分割する隔壁14Bに、通気路6Bが形成されている。通気路6Bは、空気室3A、3B間を連通する小さい貫通孔である。通気路6Bは、たとえば円筒形状の通路であり、その開口直径がその長さに比べて十分小さく設定されていることにより、通気抵抗を伴う通路となっている。また、通気路6Bの開口面積は振動板1Bの面積に比べて極めて小さく設定されている。このような通気路6Bは、質量要素である振動板1Bを挟み隣接する2個の空気室3A、3B間に、当該振動板1Bの前後における圧力差を軽減するための通気径路となる。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。
図1に示される本実施形態における音響伝送路は、振動板1Aを開放端とし、管体部4の他方の端を閉止端壁8とする片端開放の共鳴管に等価であり、図18に示された上記の音響伝送路型スピーカーシステムと同様の共振モードを具備している。すなわち、図1における基本共振モードは図18の点線f4と同様の、管体部4の全長を1/4波長とする定在波に対応する。この定在波は、振動板1Aにおいて腹となり閉止端壁8において節となる。f4に対応する共振ピークが、図19(a)のように音圧対周波数特性の低周波数側に現れる点も全く同様である。
ところが図1に示される本実施形態においては、通気路6Bの作用により、図18の実線f2のような管体部4の全長を1/2波長とする反共振モードの定在波の振幅を弱めることができる。この定在波は、管内部の振動板1Bを腹とするので、振動板1Bの位置において速度振幅が最大であり、かつ、振動板1Bの位置において圧力勾配が最大となっている。すなわち振動板1Bを挟み、振動板1Bの表面と裏面の間に最も大きな圧力差が発生する。ところが図1に示される本実施形態においては、通気路6Bを通じて空気室3Aと3Bの間で空気の流動が可能となっているので、振動板1Bの表面と裏面の間に大きな圧力差が成立することができず、したがってこの反共振モードの定在波の速度振幅も大きくなることができない。この結果、図19(a)のf2に見られる大きなディップを、たとえば図19(b)のように抑圧することが可能となる。
なお、通気路6Bの開口面積は振動板1Bの面積に比べて極めて小さく設定されているので、振動板1Bの表裏の圧力勾配を完全に解消してしまうことはなく、共鳴的でない通常の振動応答は維持されているので、音響振動を伝達する振動要素としては機能している。したがって、振動板1Bは、定在波の腹になることは抑止されているが、定在波の腹以外の位置を占めることは可能となっている。たとえば、管体部4の全長を1/4波長とする基本共振モードの定在波は、振動板1Bの位置において大きな圧力勾配を持たないため、通気路6Bにより圧力勾配を緩和させる作用は、この基本共振モードの定在波に対しては強く影響しない。したがって、図19(a)のf4に対応する共振ピークは、図19(b)においてもほぼ維持されている。
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図1に示された第1実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、管体部4の内部空間を2分割するために隔壁が1つ設けられており、この1つの隔壁に通気路6Bが設けられていた。
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図1に示された第1実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、管体部4の内部空間を2分割するために隔壁が1つ設けられており、この1つの隔壁に通気路6Bが設けられていた。
しかしながら、本実施形態では、管体部の内部空間を3分割するために隔壁が2つ設けられており、2つの隔壁の双方にそれぞれ通気路が設けられている場合である。また、ドライバユニットは、管体部の端部に設けられておらず、側面に設けられている。
本実施形態の音響伝送路型スピーカシステムも、第1実施形態と同様に、電気音響変換器であるドライバユニッ5と、ドライバユニット5が音響的に結合される音響伝送路とを有する。
音響伝送路は、管体部4と、音響振動部とを有する。音響振動部は、管体部4に振動可能に設けられた振動板1A、1B、1C、1D(以下、総称して「振動板1」と称する場合がある)と、管体部4内部において互いに区画された空気室3A、3B、3C(以下、総称して「空気室3」と称する場合がある)とを備える。これら振動板3および空気室4は、管体部4の軸線方向に沿って質量要素と弾性要素とが交互に配列されてなる音響振動部1、3が構成されている。
本実施形態の管体部4は、第1実施形態の場合と異なり、両端が開口している。具体的には、管体部1の両端には、開口を有する端部壁13A、13Dが設けられている。また、管体部4の内面には、隔壁14B、14Cが設けられている。なお、本実施形態では、管体部4の全長を3Lとしたとき、隔壁14B、14Cは、それぞれ管体部1の端部から距離L、2Lの位置に等間隔で配置することで、質量要素である振動板3と弾性要素である空気室4とが周期的に配置されるようにしてもよい。
振動板1A、1Dは、それぞれ各端部壁13A、13Dにエッジ部材2を介して配設されており、振動板1B、1Cは、各隔壁14B、14Cにエッジ部材2を介して配設されている。振動板1およびエッジ部材2の材質や有効振動面積などは、上記の第1実施形態の場合と同様である。
本実施形態の空気室3は、管体部4の内部空間が隔壁14B、14Cによって3分割されてなる空気室3A、3B、および3Cを含む。空気室3A、3B、3Cは、管体部4の軸線に沿って直列に配列されている。この結果、質量要素である振動板1と弾性要素である空気を含む空気室3とが交互に配列された本実施形態の音響伝送路が構成される。空気室3A、3Bは、その間に質量要素である振動板1Bを挟むように隣接しており、空気室3B、3Cは、その間に質量要素である振動板1Cを挟むように隣接している。
なお、本実施形態では、ドライバユニット5が、管体部4の側壁に設けられたドライバ通孔16を介して、音響伝送路に音響的に結合されている。具体的には、音響伝送路の管体部4の側壁には、ドライバユニット5を音響伝送路に音響的に結合するためのドライバ通孔16が設けられている。本実施形態では、奇数の空気室、具体的には3個の空気室3A、3B、3Cが直列して配列されており、ドライバ通孔16は、これら奇数個の空気室3A、3B、3Cのうち中央部に配列された空気室3Bと外界とを連通するように配置されている。このように、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に配置するために、たとえば、管体部4に支持部が設けられている。支持部は、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に固定しつつ、ドライバユニット5の裏面側を覆うように空間を外界と区画することによって、ドライバ容器15を形成する。
本実施形態のスピーカーシステムにおいては、管体部4の内部空間を複数の空気室3A、3B、3Cに区画する隔壁14B、14Cに、通気路6B、6Cが形成されている。具体的には、空気室3Aと空気室3Bとを区画する隔壁14Bには、通気路6Bが形成されており、この通気路6Bによって空気室3Aと空気室3Bとを連通している。同様に、空気室3Bと空気室3Cとを区画する隔壁14Cには、通気路6Cが形成されており、この通気路6Cによって空気室3Bと空気室3Cとを連通している。通気路6Bおよび6Cは、たとえば円筒形状の通路であり、それらの開口直径が長さに比べて十分小さく設定されていることにより、通気抵抗を伴う通路となっている。また、通気路6Bの開口面積は振動板1Bの面積に比べて極めて小さく、また、通気路6Cの開口面積は振動板1Cの面積に比べて極めて小さく設定されている。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。
図2は、振動板1Aと1Dを開放端とする両端開放の共鳴管に等価であり、図21〜図23に示された上記の音響伝送路型スピーカーシステムと同様の基本共振モードを具備している。すなわち、図2における基本共振モードは図21の点線f3と同様の、管体部4の全長を1/2波長とする定在波に対応する。この定在波は、振動板1Aおよび1Dにおいて腹となり空気室3Bの中央において節となる。また、f3に対応する共振ピークが、図23(a)のように音圧対周波数特性の低周波数側に現れる点も全く同様である。
ところが図2においては通気路6Cの作用により、図22において実線f0で示されるような寄生モードの定在波の振幅を弱めることができる。この定在波は、管内部の振動板1Cを腹とするので、振動板1Cの位置において速度振幅が最大であり、かつ、振動板1Cの位置において圧力勾配が最大となっている。すなわち振動板1Cを挟み、振動板1Cの表面と裏面の間に最も大きな圧力差が発生する。ところが図2においては、通気路6Cを通じて空気室3Bと3Cの間で空気の流動が可能となっているので、振動板1Cの表面と裏面の間に大きな圧力差が成立することができず、したがってこの寄生モードの定在波の速度振幅も大きくなることができない。この結果、図23(a)のf0に見られる大きなディップを、たとえば図23(b)のように抑圧することが可能となる。
ところで、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、左右対称な形状であるので、振動板1Cを腹として図2の右側に発生するのと同様の寄生モードは、振動板1Bを腹として図2の左側に発生することも可能である。しかしながら、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、隔壁14Bおよび14Cの両方に通気路を形成しているので、振動板1Cを腹として図2の右側に発生する寄生モードのみならず、振動板1Bを腹として図2の左側に発生する寄生モードの双方の定在波に関しても、上記のようにディップの抑圧効果を奏することができる。
なお、本実施形態においても、通気路6Cの開口面積は振動板1Cの面積に比べて極めて小さく設定されているので、振動板1Cの表裏の圧力勾配を完全に解消してしまうことはない。同様に、通気路6Bの開口面積は振動板1Bの面積に比べて極めて小さく設定されているので、振動板1Bの表裏の圧力勾配を完全に解消してしまうことはない。すなわち、共鳴的でない通常の振動応答は維持されており、音響振動を伝達する振動要素としては機能している。したがって、振動板1Cを例にとれば、振動板1Cは、定在波の腹になることは抑止されているが、定在波の腹以外の位置を占めることは可能となっている。たとえば、管体部4の全長を1/2波長とする基本共振モードの定在波は、振動板1Cの位置において大きな圧力勾配を持たないため、通気路6Cにより圧力勾配を緩和させる作用は、この基本共振モードの定在波に対しては強く影響しない。したがって、図23(a)のf3に対応する共振ピークは、図23(b)においてもほぼ維持されている。しかしながら、図21の点線f1と同様の、各振動板位置において腹となり管体部4の全長を3/2波長とする定在波の強度は、通気路6Cの作用により弱いものとなる。このため図23(a)のf1に対応する共振ピークは、図23(b)においてはその強度が若干低下している。
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムは、図1に示される第1実施形態の音響伝送型スピーカーシステムにおいて、通気路6Bの開口部に吸音材12を配置している点が主として異なる。他の構成は、図1に示される第1実施形態の音響伝送型スピーカーシステムと基本的に同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムは、図1に示される第1実施形態の音響伝送型スピーカーシステムにおいて、通気路6Bの開口部に吸音材12を配置している点が主として異なる。他の構成は、図1に示される第1実施形態の音響伝送型スピーカーシステムと基本的に同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
通気路6Bは、たとえば、側壁面9の内面に接する幅40mm、高さ1mmの方形の空隙状開口を持ち、長さは隔壁14の厚さと等しく10mmに設定されている。4個の通気路6Bの総開口面積は、直径が64mmの振動板に比べて、十分小さなものとなっている。通気路6Bは、管体部4の側壁面9に接して配置されることが望ましい。
通気路6の開口部には、吸音材12が配置されている。吸音材12はウール等の繊維集合体であり、通過する気流を減速して風切り音の発生を防止するものである。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。
第1実施形態の場合と同様に、通気路6Bの作用により、振動板1Bの表面と裏面の間に大きな圧力差が成立することができず、反共振モードの定在波の速度振幅も大きくなることができない。この結果、図19(a)のf2に見られる大きなディップを、たとえば図19(b)のように抑圧することが可能となる。
また、上記のような細い通路を空気流が通過すると風切り音の発生が顕著となるが、通気路6Bの開口部に配置された吸音材12によって、通過する気流を減速して風切り音の発生を防止するものである。
図18に示される基本的な音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4の側壁が隔壁14Bにより分割されるため、分割された各側壁のたわみ振動の基本周波数は、たとえば数100Hzとなり、異常な共鳴音として聴覚に認識されることがあるが、本実施形態では、通気路6Bが、管体部4の側壁面9に接して配置されることによって、管体部4の側壁が隔壁14により実質的に分割されていないため、かかる異常な共鳴音が発生しない。
なお、本実施形態では、管体部4の内部空間が側壁14Bによって2分割されている場合を説明したが、本発明はこの場合に限られず、図2に示される第2実施形態のように管体部4の内部空間が3つの空気室に分割する側壁14B、14Cに通気路6B、6Cを設ける場合にも適用できることはもちろんである。
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。図1〜図3に示された第1〜第3実施形態では、前記管体部4内部を複数の空気室に分割する隔壁14Bなどに形成された通気口6Bが、前記質量要素である振動板1を挟み隣接する2個の空気室3間を連通する通気径路として機能する場合を説明した。本実施形態では、これらの場合と異なり、隔壁14Bに通気口6Bを形成するのではない。本実施形態においても、管体部4内部を複数の空気室に区画するように管体部内部に配置されており通孔18を有する隔壁14B、14Cを有しており、振動板1B、1Cが、それぞれ隔壁14B、14Cに対向するように隣接して設けられている。そして、振動板1B、1Cを保持する枠体である振動板保持枠10と前記隔壁14B(14C)との間の空隙7が形成されており、この空隙7が、前記質量要素である振動板1を挟み隣接する2個の空気室3間を連通する通気径路として機能する。この点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図2に示される第2実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。図1〜図3に示された第1〜第3実施形態では、前記管体部4内部を複数の空気室に分割する隔壁14Bなどに形成された通気口6Bが、前記質量要素である振動板1を挟み隣接する2個の空気室3間を連通する通気径路として機能する場合を説明した。本実施形態では、これらの場合と異なり、隔壁14Bに通気口6Bを形成するのではない。本実施形態においても、管体部4内部を複数の空気室に区画するように管体部内部に配置されており通孔18を有する隔壁14B、14Cを有しており、振動板1B、1Cが、それぞれ隔壁14B、14Cに対向するように隣接して設けられている。そして、振動板1B、1Cを保持する枠体である振動板保持枠10と前記隔壁14B(14C)との間の空隙7が形成されており、この空隙7が、前記質量要素である振動板1を挟み隣接する2個の空気室3間を連通する通気径路として機能する。この点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図2に示される第2実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
図4に示されるように、本実施形態においては、振動板1Bと1Cは、振動板保持枠10にエッジ部材2を介して取り付けられている。振動板1Bは、隔壁14Bに対向して設けられており、より具体的には、振動板1Bを保持する振動板保持枠10は隔壁14Bから一定の距離を置いて設けられている。同様に、振動板1Cは、隔壁14Cに対向して設けられており、より具体的には、振動板1Cを保持する振動板保持枠10は隔壁14Cから一定の距離を置いて設けられている。たとえば、振動板1Bを保持する振動板保持枠10と隔壁14Bとの間に、図示しないスペーサが設けられることによって、スペーサの厚さの分だけ、振動板保持枠10Cは隔壁14Cから間隔を置いて配置されることが可能である。スペーサの大きさは、振動板保持枠10の全周と比べて小さいので、振動板保持枠10Bと隔壁14Bとの間の空隙7は、振動板保持枠10のほぼ全周にわたり形成されている。また、空隙7の幅は、スペーサの厚さに対応する。同様に、振動板1Cを保持する振動板保持枠10Cについても、振動板保持枠10と隔壁14Cの間の空隙7は、振動板保持枠10Cのほぼ全周にわたり形成されており、空隙7の幅は、振動板保持枠10Cと隔壁14Cの間のスペーサの厚さに対応するように構成することができる
なお、隔壁14Bおよび14Cには振動板1Bおよび1Cにほぼ等しい大きさの振動板通孔18が形成されていて、振動板1Bおよび1Cは、この振動板通孔18を通じて空気室3B内の空気に接している。振動板保持枠10の外縁から振動板通孔18に至る距離は、空隙7の長さに対応する。
なお、隔壁14Bおよび14Cには振動板1Bおよび1Cにほぼ等しい大きさの振動板通孔18が形成されていて、振動板1Bおよび1Cは、この振動板通孔18を通じて空気室3B内の空気に接している。振動板保持枠10の外縁から振動板通孔18に至る距離は、空隙7の長さに対応する。
たとえば、スペーサの厚さを0.5mmとし、振動板保持枠10の外縁から振動板通孔18に至る距離を5mmとすることにより、各空隙7の幅が0.5mmとなり、各空隙7の長さが5mmとなる。
このような構成によっても、上記の第1〜第3実施形態の場合と同様の効果を奏することができ、隔壁14B、14Cに孔を形成する必要がない。
(第5実施形態)
図5は、第5実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図2に示した第2実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムにおいて管体部の内部空間を分割するための隔壁に通気路6Bを設ける代わりに、振動板1B、1C自体に通気路6を設けたものである。この点を除いて、基本的な構成は、図2の第2実施形態の場合と同様であるので、繰り返しの説明は省略する。
(第5実施形態)
図5は、第5実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図2に示した第2実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムにおいて管体部の内部空間を分割するための隔壁に通気路6Bを設ける代わりに、振動板1B、1C自体に通気路6を設けたものである。この点を除いて、基本的な構成は、図2の第2実施形態の場合と同様であるので、繰り返しの説明は省略する。
本実施形態では、振動板1B、1C自体に、それぞれ複数の通気路6が設けられている。通気路6は、たとえば、振動板1Bおよび1Cに穴開け加工を施して形成したものである。したがあって、通気路6の長さは、振動板1B、1Cの厚さと等しい。なお、通気路6の直径は、これら通気路6の長さに比べて小さく設定される。
たとえば、個々の通気路6は円筒形状をしており、その長さは振動板1B、1Cの厚さと等しい1mmであるのに対し、直径は0.5mmとなっている。振動板1Bおよび1Cには、たとえば、同一形状の通気路6がそれぞれ50個形成されている。このように振動板1Bに設けられた通気路6が、振動板1Bを挟み隣接する2個の空気室3A、3B間に形成された通気経路となる。同様に、振動板1Cに設けられた通気路6が、振動板1Cを挟み隣接する2個の空気室3B、3C間に形成された通気経路となる。これらの通気経路は、隣接する空気室3A、3B間、および空気室3B、3C間に、振動板1の前後における圧力差を軽減する。
なお、図5に示された音響伝送路型スピーカーシステムでは、振動板1Bおよび1Cに穴開け加工を施して通気路6を形成しているが、振動板1B、1Cの少なくとも一部に、多孔質金属、多孔質樹脂、繊維集合体等の素材を用いても、同等の通気性を具備した振動板を構成することができる。この場合、振動板1B、1Cの少なくとも一部を構成する通気性素材の部分が、上記の通気経路となる。
本実施形態によっても、振動板1B、1Cに設けられた通気経路により、空気室3Aと3Bの間、および空気室3Bと3Cの間で空気の流動が可能となるので、振動板1B、1Cの表面と裏面の間に大きな圧力差が成立することができず、したがってこの寄生モードの定在波の速度振幅も大きくなることができない。したがって、第2実施形態の場合と同様に、この場合も、図23(a)のf0に見られる大きなディップを、たとえば図23(b)のように抑圧することが可能となる。
(第6実施形態)
図6は、第6実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上述した図1〜図5に示される第1〜第5実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、振動板を挟み隣接する2個の空気室間に、当該振動板の前後における圧力差を軽減するための通気経路を形成することによって、振動板の表面と裏面の間に大きな圧力差を軽減し、その振動板が定在波の腹となって低周波数域において発生する音響振動の不要な共振若しくは反共振が抑制するものであった。
(第6実施形態)
図6は、第6実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上述した図1〜図5に示される第1〜第5実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、振動板を挟み隣接する2個の空気室間に、当該振動板の前後における圧力差を軽減するための通気経路を形成することによって、振動板の表面と裏面の間に大きな圧力差を軽減し、その振動板が定在波の腹となって低周波数域において発生する音響振動の不要な共振若しくは反共振が抑制するものであった。
本実施形態では、通気経路に加えて、遮蔽板を設けることによって、透過波(上記の音響的質量と音響的弾性の組み合わせより成る音響振動素子を媒体とする音響振動以外の音波であって、振動板を透過しつつ管体部内の空気中を伝搬する通常の音波)が各振動板間で形成する定在波により高周波数域に現れる有害なピークやディップにも配慮した構造となっている。
本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、空気室3B内に傾斜して配設された遮蔽板17を設けている点を除いては、図3に示される第3実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと同様の構成を有する。したがって、同様の構成については繰り返しの説明を省略する。
図6に示されるように、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムも、電気音響変換器であるドライバユニッ5と、ドライバユニット5が音響的に結合される音響伝送路と、を有する。この音響伝送路は、管体部4と、音響振動部とを有する。音響振動部は、振動板1A、1B(以下、総称して「振動板1」と称する場合がある)と、管体部4内部において互いに区画された空気室3A、3B(以下、総称して「空気室3」と称する場合がある)とを備える。ここで、振動板3は、質量要素として機能し、空気室4内の空気が弾性要素として機能する。これら振動板3および空気室4は、管体部4の軸線方向に沿って交互に配列される。したがって、管体部4の軸線方向に沿って質量要素と弾性要素とが交互に配列されてなる音響振動部1、3が構成されている。
そして、空気室3B内には、音波を遮るための遮蔽板17が配置されている。本実施形態では、遮蔽板17は、振動板1Bと閉止端壁8の間に設けられている。本実施形態では、複数枚の遮蔽板17が配置されており、各遮蔽板17は、好ましくは、管体部4の軸線方向に対して傾斜して配設されている。これらの遮蔽板17は、管体部4の内面に固定されている。遮蔽板17の材質は、ある程度、音波を遮断できるものであればよく、特定の材料に限定されない。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送型スピーカーシステムにおいて、空気室3B内に傾斜して配設された遮蔽板17は、振動板1Bと閉止端壁8の間に介在して平行な対向平面の形成を防止している。したがって、本実施形態の音響伝送型スピーカーシステムによれば、通気口6Bの効果によって、図19(b)に示されているように、f2に対応するディップを抑圧するのみならず、遮蔽板17の効果によって、高周波数域に現れる鋭いピークやディップを解消して、再生帯域内において平坦な音圧対周波数特性を得ることができる。
なお、好ましくは、第6実施形態に示されたように、通気路6Bおよび遮蔽板17の双方を用いることによって、低周波数域に現れるディップを抑圧するとともに、周波数域に現れる鋭いピークやディップを解消することが望ましいが、高周波数域に現れる鋭いピークやディップを解消する目的としては、通気口6Bを設けることなく、遮蔽板17のみを設けてもよい。
(第7実施形態)
図7は、第7実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムも、図6の第6実施形態と同様に、空気室内に遮蔽板を有しているが、本実施形態では、遮蔽板を迷路状に屈曲して配置することにより、前記音響伝送路を通過する音波の行程長を延長したものである。特に、電気音響変換器であるドライバユニット5から放射された音波が、音響伝送路を経由して異なる開口より外部に放出する際に、前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記遮蔽板が配置されている
なお、以上の点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの基本的な構成は、図5に示される第5実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの場合と同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
図7は、第7実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムも、図6の第6実施形態と同様に、空気室内に遮蔽板を有しているが、本実施形態では、遮蔽板を迷路状に屈曲して配置することにより、前記音響伝送路を通過する音波の行程長を延長したものである。特に、電気音響変換器であるドライバユニット5から放射された音波が、音響伝送路を経由して異なる開口より外部に放出する際に、前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記遮蔽板が配置されている
なお、以上の点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの基本的な構成は、図5に示される第5実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの場合と同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
本実施形態の管体部4の内部には、隔壁14B、14Cが設けられており、隔壁14B、14Cにより、管体部4の内部空間は、空気室3A、3B、3Cに分割されている。両端に位置する空気室3Aと3Cにおいては、遮蔽板17が迷路状に配置されており、より具体的には、複数の遮蔽板17がジグザグ状に配置されている。遮蔽板17は、管体部4の内面に固定されており、空気室3A、3Cにおいては、たとえば、一の方向へ伸延する遮蔽板と、前記一の方向の反対方向である他の方向へ伸延する遮蔽板とが互い違いに配列されている。空気室3Aに設置される遮蔽板17の数および配置間隔と、空気室3Cに設置される遮蔽板17の枚数および配置間隔とが異なるように、各遮蔽板17が配置されている。
このように、複数の遮蔽板17がジグザグに配置されることによって、音響伝送路を通過する音波の行程長が延長されることとなる。特に、ドライバユニット5が結合された中央の空気室3Bを基準として両側に位置する二つの空気室3B、3Cにおいて、遮蔽板17の配置が非対称となっているので、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて空気室3Aの端部壁13Aの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長と、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて空気室3Cの端部壁13Dの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長とが異なるように、構成されている。
なお、中央に位置する空気室3Bには、図6に示される第6実施形態における遮蔽板と同様に、管体部4の軸線方向に対して傾斜した遮蔽板17が配置されている。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。
図5に示される第5実施形態のように、遮蔽板が無い状態では、たとえば空気室3Aにおいては振動板1Aと1Bが、一定の距離を置いて広い面積で対向しているので、特定の周波数において強い定在波が発生する。これに対し図7に示される本実施形態においては、複数の遮蔽板17が振動板1Aと1Bの間の異なる位置において介在しているので、対向平面間の距離が場所により一定でなくなり、したがって、定在波の発生を複数の周波数に分散することができる。また、個々の対向平面の面積も減少するので、各周波数における定在波の強度は弱いものに留まり、特定の周波数において強い定在波が発生するのを回避することができる。また、空気室3Bには、図6に示される傾斜した遮蔽板と同様の遮蔽板が配設されているので、振動板1Bと1Cの間に透過波による定在波が形成されることを防止することができる。
さらに、本実施形態のように空気室3A内と3C内で遮蔽板による迷路の長さが異なる場合には、音響振動に対しては管体部4の両端のどちらの開口から放出される場合にも同一の音響的長さを経由させつつ、透過波に対しては迷路の長さに応じて異なる音響的長さを経由させることとなっている。このことにより、図7に示される本実施形態では、管体部4の両端の開口から放出された透過波が、ドライバユニット5の正面から放射された音波と干渉することが問題な場合に、管体部4の両端に位置する2個の開口から放出される透過波を互いに異なる位相にすることができ、したがって、管体部4の2個の開口から放出された透過波がそれぞれ異なる周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強めるので、管体部4の2個の開口から放出される透過波が同一の周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強める場合に比べて干渉の強度を低減することが可能となる。
(第8実施形態)
図8は、第8実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図7に示される第7実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、ドライバユニット5の背面から放射されて、管体部4両端の異なる2つの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、遮蔽板が配置される場合を説明した。
図8は、第8実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図7に示される第7実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、ドライバユニット5の背面から放射されて、管体部4両端の異なる2つの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、遮蔽板が配置される場合を説明した。
しかしながら、同様の効果は、端部または側壁に少なくとも2つの開口を含む管体部をもちいてる際に、前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記電気音響変換器と前記2つの開口との相対的な位置関係を設定することによってもなしえる。特に、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、ドライバユニット5を中央の空気室3B以外の空気室に音響的に結合することによって、ドライバユニット5の背面から放射されて異なる2つの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように構成されている。
なお、ドライバユニット5が中央の空気室に結合されていない点を除いて、本実施形態の基本的な構成は、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムの場合と同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
図8に示されるように、本実施形態の音響伝送路型スピーカシステムも、電気音響変換器であるドライバユニッ5と、ドライバユニット5が音響的に結合される音響伝送路とを有する。振動板1A、1B、1C、1Dの材質などは、第1実施形態の場合と同様なので、繰り返しの説明を省略する。
音響伝送路は、両端が開口した管体部4と、音響振動部とを有する。音響振動部は、管体部4に振動可能に設けられた振動板1A、1B、1C、1D(以下、総称して「振動板1」と称する場合がある)と、管体部4内部において互いに区画された空気室3A、3B、3C(以下、総称して「空気室3」と称する場合がある)とを備える。これら振動板3および空気室4は、管体部4の軸線方向に沿って質量要素と弾性要素とが交互に配列されてなる音響振動部1、3が構成されている。
本実施形態では、奇数の空気室、具体的には3個の空気室3A、3B、3Cが直列して配列されており、通孔16は、これら奇数個の空気室3A、3B、3Cのうち中央部以外に配列された空気室(ここでは、空気室3C)と外界とを連通するように配置されている。すなわち、ドライバユニットを中心として空気室3A、3B、3Cの配置を非対称としている。
なお、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に配置するために、たとえば、管体部4に支持部が設けられている。支持部は、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に固定しつつ、ドライバユニット5の裏面側を覆うように空間を外界と区画することによって、ドライバ容器15を形成する。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態のように、ドライバユニット5を挟む空気室の配置を非対称とすることにより、透過波の回り込み経路を不均等化することができる。すなわち、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて空気室3Aの端部壁13Aの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長と、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて空気室3Cの端部壁13Dの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長とが異なるように、構成されている。したがって、図8に示される本実施形態では、管体部4の両端の開口から放出された透過波が、ドライバユニット5の正面から放射された音波と干渉することが問題となる場合において、管体部4の2個の開口から放出される透過波を異なる位相にすることができる。すなわち、管体部4の2個の開口から放出された透過波がそれぞれ異なる周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強めるにすぎず、管体部4の2個の開口から放出される透過波が同一の周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強める場合に比べて干渉の強度を低減することが可能となる。
(第9実施形態)
図9は、第9実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図8に示される第8実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、ドライバユニット5を基準として空気室の配置を非対称とすることにより、2つの開口から外部へ放出される音波の行程長を互いに異なるように構成したが、本実施形態では、ドライバユニットの取り付け位置を基準として管体部4の一端に第1開口(振動板1Aが設けられる)を有するとともに、管体部4の他端側に位置する側壁部分に少なくとも一つの側壁開口(振動板1Dが設けられる)を有することによって、これら2つの開口から外部へ放出される音波の行程長を不均等化している。なお、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、振動板1Dを管体部4の側壁部分に設けている点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの基本的な構成は、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムの場合と同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
図9は、第9実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図8に示される第8実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、ドライバユニット5を基準として空気室の配置を非対称とすることにより、2つの開口から外部へ放出される音波の行程長を互いに異なるように構成したが、本実施形態では、ドライバユニットの取り付け位置を基準として管体部4の一端に第1開口(振動板1Aが設けられる)を有するとともに、管体部4の他端側に位置する側壁部分に少なくとも一つの側壁開口(振動板1Dが設けられる)を有することによって、これら2つの開口から外部へ放出される音波の行程長を不均等化している。なお、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、振動板1Dを管体部4の側壁部分に設けている点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの基本的な構成は、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムの場合と同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
図9に示されるとおり、本実施形態の管体部4は、ドライバユニット5の取り付け位置を基準として一端部には、開口(第1開口)を有する端部壁13Aが設けられており、この端部壁13Aに、振動板1Aが設けられている。一方、管体部4の他端側の側面には、開口(側壁開口)が設けられており、この側壁開口に振動板1Dが設けられている。振動板1Dは、エッジ部材2を介して管体部4に配設されている。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端である音響伝送路の一つの端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の側面に振動板1Dが配設されている。したがって、空気室3A側の透過波の回り込み経路が、管体部4の一端部では振動板1Aを経由するのに対して、管体部4の他端側にある空気室3Cでは管体部4の側面の振動板1Dを経由するより近距離の回り込み経路となる。このようにして、ドライバユニット5を挟む2系統の回り込み経路の長さが不均等化されている。換言すれば、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて空気室3Aの端部壁13Aの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長と、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて、管体部4の管側面の振動板1Dが設けられた開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長とが異なるように、構成されている。したがって、図9に示される本実施形態では、管体部4の2つの開口から放出された透過波が、ドライバユニット5の正面から放射された音波と干渉することが問題となる場合において、管体部4の2個の開口から放出される透過波を異なる位相にすることができる。したがって、管体部4の2個の開口から放出された透過波がそれぞれ異なる周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強めるにすぎず、管体部4の2個の開口から放出される透過波が同一の周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強める場合に比べて干渉の強度を低減することが可能となる。
(第10実施形態)
図10は、第10実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図9に示される第9実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、振動板1Dを管体部4の端部壁13に設ける代わりに、管体部4の側壁部分に設けていることによって、2つの開口から外部へ放出される音波の行程長を不均等化する場合を説明した。しかしながら、本実施形態では、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13の開口に振動板1Dを設けるとともに、管体部4の側壁部分に振動板1Eを設けている。なお、空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13に設けられた振動板1Dと、管体部4の側壁部分に設けられた振動板1Eとを共に有する点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図9に示される第9実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図10は、第10実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図9に示される第9実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、振動板1Dを管体部4の端部壁13に設ける代わりに、管体部4の側壁部分に設けていることによって、2つの開口から外部へ放出される音波の行程長を不均等化する場合を説明した。しかしながら、本実施形態では、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13の開口に振動板1Dを設けるとともに、管体部4の側壁部分に振動板1Eを設けている。なお、空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13に設けられた振動板1Dと、管体部4の側壁部分に設けられた振動板1Eとを共に有する点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図9に示される第9実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図10に示されるとおり、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムにおいて、管体部4は、両端が開口している。具体的には、管体部1の両端には、開口を有する端部壁13A、13Dが設けられている。これら端部壁13A、13Dにはそれぞれ振動板1A、1Dが設けられている。
一方、管体部4内部において互いに区画された空気室3A、3B、3Cのうち、空気室3Cに対応して、管体部4の側壁に開口が設けられており、この開口の部分には、振動板1Eが設けられている。振動板1Eは、管体部4の側壁にエッジ部材2を介して取りつけられている。
換言すれば、管体部4は、ドライバユニット5の取り付け位置を基準として一端には、端部壁13Aの開口(第1開口)を有するとともに、他端側に位置する側壁部分に一つの開口(側壁開口)を有しており、さらに、この他端には端部壁13Dの開口(第2開口)を有している。これら第1開口、第2開口、および側壁開口には、それぞれ振動板1A、振動板1D、振動板1Eが設けられている。
ここで、空気室3Cと振動板1Dおよび1Eで構成される振動要素の共振周波数を、空気室3Aと振動板1Aで構成される振動要素の共振周波数と略等しく設定するために、振動板1Dおよび1Eの各質量は、振動板1Aの略2倍に設定されている。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端である音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の側面に振動板1Eが追加されている。したがって、一方の空気室3A側の透過波の回り込み経路が管端の振動板1Aを経由するのに対して、空気室3C側には管側面の振動板1Eを経由するより近距離の回り込み経路があるので、ドライバユニット5を挟む2系統の回り込み経路の長さが不均等化されている。すなわち、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて空気室3Aの端部壁13Aの開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長と、電気音響変換器であるドライバユニット5の背面から放射されて、管体部4の管側面の振動板1Eが設けられた開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長とが異なるように、構成されている。したがって、管体部4の開口から放出された透過波がそれぞれ異なる周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強めるにすぎず、管体部4の各開口から放出される透過波が同一の周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強める場合に比べて干渉の強度を低減することが可能となる。
また、本実施形態では、振動板1Eが追加されている分だけ総振動板面積が拡大されており、総振動板面積の拡大により低音が増強される効果を兼備している。また、空気室3Cと振動板1Dおよび1Eで構成される振動要素の共振周波数を、空気室3Aと振動板1Aで構成される振動要素の共振周波数とをほぼ等しくするために、振動板1Dおよび1Eの各質量は、振動板1Aの質量のほぼ2倍に設定されているので、音響振動を伝達する振動要素としての機能を維持できる。
(第11実施形態)
図11は、第11実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図10に示される第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端である音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて管体部4の側壁面に1つの振動板1Eを追加して配置した場合を説明したが、本実施形態では、空気室3Cにおいて、管体部4の側壁面に振動板1Eにみならず更に振動板1Fを追加して配設している。すなわち、管体部4は、ドライバユニット5の取り付け位置を基準として一端には、端部壁13Aの開口(振動板1Aに対応する第1開口)を有するとともに、他端側に位置する側壁部分に複数の開口(振動板1E、1Fに対応する第1側壁開口、第2側壁開口)を有しており、さらに、この他端には端部壁13Dの開口(振動板1Dに対応する第2開口)を有している。なお、本実施形態では、空気室3Cにおいて、振動板1D、1E、1Fは、弾性支持手段19を介して管体部4壁面に取り付けられている。これらの点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図10に示される第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図11は、第11実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図10に示される第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端である音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて管体部4の側壁面に1つの振動板1Eを追加して配置した場合を説明したが、本実施形態では、空気室3Cにおいて、管体部4の側壁面に振動板1Eにみならず更に振動板1Fを追加して配設している。すなわち、管体部4は、ドライバユニット5の取り付け位置を基準として一端には、端部壁13Aの開口(振動板1Aに対応する第1開口)を有するとともに、他端側に位置する側壁部分に複数の開口(振動板1E、1Fに対応する第1側壁開口、第2側壁開口)を有しており、さらに、この他端には端部壁13Dの開口(振動板1Dに対応する第2開口)を有している。なお、本実施形態では、空気室3Cにおいて、振動板1D、1E、1Fは、弾性支持手段19を介して管体部4壁面に取り付けられている。これらの点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図10に示される第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図11に示されるように、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムにおいて、管体部4は、両端が開口している。具体的には、管体部1の両端には、開口を有する端部壁13A、13Dが設けられている。これら端部壁13A、13Dにそれぞれ対応して、振動板1A、1Dが設けられている。
一方、管体部4内部において互いに区画された空気室3A、3B、3Cのうち、端部に位置する空気室3Cに対応して、管体部4の側壁に2つの開口(第1側壁開口および第2側壁開口)が設けられており、これら開口の部分には、それぞれ振動板1Eおよび1Fが設けられている。
空気室3Cと振動板1D、1Eおよび1Fで構成される振動要素の共振周波数を、空気室3Aと振動板1Aで構成される振動要素の共振周波数とをほぼ等しく設定するために、振動板1D、1Eおよび1Fの各質量は、振動板1Aの質量のほぼ3倍に設定されている。
振動板1D、1Eおよび1Fは、剛性のある板状部材であり、たとえば、木製の板部材である。振動板1D、1Eおよび1Fは、弾性支持手段19を介して管体部4の側壁面に取り付けられている。長さ12cm、幅10cm、厚さ15mmの振動板がたとえば密度500kg/m3の典型的な木材で構成されている場合、重量は90gとなる。
また本実施形態のように振動板を剛性のある板状部材で構成した場合に、振動板1D、1E、1Fのたわみ振動の1次、3次、5次の何れかのモードの周波数を、図23におけるf0に相当する大きなディップの近傍に設定しておくことは有用である。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端である音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の側面に振動板1Eおよび1Fが追加されている。したがって、一端部に位置する空気室3A側の透過波の回り込み経路が管端の振動板1Aを経由するのに対して、他端部に位置する空気室3C側には管体部側面の振動板1Eおよび1Fを経由するより近距離の回り込み経路があるので、ドライバユニット5を挟む2系統の回り込み経路の長さが不均等化されている。したがって、管体部4の開口から放出された透過波がそれぞれ異なる周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強めるにすぎず、管体部4の各開口から放出される透過波が同一の周波数においてドライバユニット5の正面から放射された音波との干渉を強める場合に比べて干渉の強度を低減することが可能となる。
また、本実施形態では、複数の振動板、すなわち振動板1Eおよび1Fが追加されている分だけ総振動板面積が拡大されており、総振動板面積の拡大により低音が増強される効果を兼備している。また、空気室3Cと振動板1Dおよび1Eで構成される振動要素の共振周波数を、空気室3Aと振動板1Aで構成される振動要素の共振周波数とをほぼ等しく設定するために、振動板1D、1Eおよび1Fの各質量は、振動板1Aの質量のほぼ3倍に設定されているので、音響振動を伝達する振動要素としての機能を維持できる。
さらに、振動板1D、1E、1Fのたわみ振動の1次、3次、5次の何れかのモードの周波数を、図23におけるf0に相当する大きなディップの近辺に設定しておく場合には、図22に示された寄生モードに、たわみ振動の共振が重畳されることによって伝搬波の位相が乱れ、図23におけるf0のディップが軽減される。たとえば上記のように長さ12cm、幅10cm、厚さ15mm、密度500kg/m3の振動板が典型的な木材のヤング率8.8GPaを有する場合、たわみ振動の1次のモードの周波数は77Hzであるので、振動板の寸法を調整することによって、中低域に存在するf0の周波数と一致するように設計することは容易であり、これにより、図23におけるf0のディップを軽減することができる。
(第12実施形態)
図12は、第12実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。図10において説明した第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13Dの開口(第2開口)に振動板1Dを設けるとともに、管体部4の側壁部分の開口(側壁開口)に振動板1Eを設けることによって、総振動板面積が拡大され低音が増強される効果を奏するものであるが、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、側壁開口に設けられた振動板1Eの背面に沿って伸延する遮蔽板17を供える。この遮蔽板17は、この側壁開口に設けられた振動板1Eと、管体部4の内部に設けられた振動板(内部振動板)である振動板1Cとの音響的結合を弱める一方、振動板1Eと、上記端部の第2開口に設けられた振動板1Dとを協働させて、低音の増強効果を高める。なお、このような点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図10で示される第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと同様の基本構成を有している。したがって、繰り返しの説明は省略する。
図12は、第12実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。図10において説明した第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13Dの開口(第2開口)に振動板1Dを設けるとともに、管体部4の側壁部分の開口(側壁開口)に振動板1Eを設けることによって、総振動板面積が拡大され低音が増強される効果を奏するものであるが、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、側壁開口に設けられた振動板1Eの背面に沿って伸延する遮蔽板17を供える。この遮蔽板17は、この側壁開口に設けられた振動板1Eと、管体部4の内部に設けられた振動板(内部振動板)である振動板1Cとの音響的結合を弱める一方、振動板1Eと、上記端部の第2開口に設けられた振動板1Dとを協働させて、低音の増強効果を高める。なお、このような点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図10で示される第10実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと同様の基本構成を有している。したがって、繰り返しの説明は省略する。
図12に示されるように、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4は、両端が開口している。そして、管体部4の内部空間が、3つの空気室3A、3B、および3Cに区画されている。複数の空気室3A、3B、3Cのうち、端部に位置する一つの空気室3Cには、隣接する空気室3Bとの間の隔壁14Bの開口に、エッジ部材を介して振動板1Cが設けられている。空気室3Cは、この管体部4の内部に位置する内部振動板である振動板1Cの他に、管体部4の端部にある端部壁13Bの開口に設けられた振動板1Dと、管体部4の側壁面の開口に設けられた振動板1Eとを有している。
さらに、本実施形態においては、管体部4の側壁面に設けられた振動板1Eの背面に対向するように、遮蔽板17が設けられている。遮蔽板17は、振動板1Eと所定の間隔を隔てて設けられており、振動板1Eの背面のうち、管体部4の中央側(内部振動板1C側)の部分を遮蔽するように伸延している。たとえば、遮蔽板17は、空気室3Cと空気室3Bとを分ける隔壁14Cから遮蔽板17が伸延している。しかしながら、遮蔽板17は、振動板1Eの背面のうち管体部4の中央側を部分的に覆うように伸延していればよく、本実施形態と異なり、遮蔽板17が、管体部4の側壁内面から伸延していてもよい。このような遮蔽板17は、図12に示されるように、振動板1Eの背面側において、部分的に遮蔽された空間部分を形成している。
一方、遮蔽板17は、振動板1Eの背面側を完全に遮蔽しておらず、振動板1Eの背面のうち管体部4の端部側、すななわち端部に位置する振動板1D側の部分は露出されている。この露出されている部分は、通気開口19をなす。このように管体部4の端部側に通気開口19が形成されることによって、振動板1Eの背後の遮蔽板17で区画された空間が通気開口19を介して空気室3Cに接続されることとなる。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、音響伝送路の端部に位置する空気室3Cにおいて、管体部4の端部壁13の開口に振動板1Dを設けるとともに、管体部4の側壁部分に振動板1Eを設けることによって、総振動板面積が拡大され低音が増強される効果を奏する。この際、この効果を最大限に発揮するためには、振動板1Eは、同じく外部への音波放射を担う末端振動板として、振動板1Dと協調的に動作することが望ましい。
空気室3Cにおいて管体部4の側壁部に設けられた振動板1Eは、管体部4の端部に設けられた振動板1Dと、隣接する空気室3Bとの間に設けられた振動板1Cとの中間に配置されている。したがって、遮蔽板17がない場合には、振動板1Eは、振動板1Dのみならず、振動板1Cとも音響的に強く結合しており、振動板1Eは、必ずしも振動板1Dとのみ協調的に動作することができない。
しかしながら、本実施形態では、端部に位置する一の空気室3Cにおいて、管体部4の側壁に設けられた振動板1Eと、隣接する空気室3Bの間に設けられた振動板1Cとを隔てる一方、振動板1Eと、管体部4の端部に設けられた振動板1Dとの間には通気開口が形成されるように、遮蔽板17が設けられている。換言すれば、本実施形態では、振動板1Eの背後の遮蔽板17で区画された空間が通気開口19を介して空気室3Cに接続されていて、かつ、通気開口19が振動板1Dの近傍に配置されている。したがって、遮蔽板17は、振動板1Eと振動板1Cのの間の音響的な結合を弱めると同時に、振動板1Eと振動板1Dとの間の音響的な結合を強めることができる。
したがって、同じく外部への音波放射を担う末端振動板として設けられた振動板1Eと振動板1Dとが協調的に動作しやすくなり、振動板1Eに起因する総振動板面積の拡大に伴う低音増強効果を強めることが可能となる。
(第13実施形態)
図13は、第13実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。
図13は、第13実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。
図6および図7では、第6および第7実施形態として、遮蔽板を設けることによって、透過波が各振動板間で形成する定在波により高周波数域に現れる有害なピークやディップにも配慮した構成について説明した。これら第6および第7実施形態では、管体部4の軸方向に沿って各振動板1A、1B、1C、および1D間で生じる定在波により高周波数域に現れる有害なピークやディップを軽減するように、遮蔽板17を配置していた。しかしながら、透過波は、管体部4内部の径方向にも定在波を形成する。
本実施形態では、透過波が管体部4内部の径方向に形成する定在波により高周波数域に現れる有害なピークやディップを軽減するために、音響伝送路の内部を管体部4の径方向に細分化するための細分壁(径方向分割用遮蔽板)を有している。本実施形態は、このような細分壁が空気室内に設けられていることを除いて、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4の内部空間が3分割されて空気室3A、3Bおよび3Cが形成されている。そして、各空気室3A、3B、3C内には、空気室内部を管体部の径方向に細分化するための複数の細分壁20が所定の間隔で重積されている。径方向に重積された複数の細分壁20は、たとえば、互いに一体的に結合されて、管体部4の内壁に固定されている。細分壁20は、音波を遮蔽するという意味では、遮蔽板として機能する。なお、重積されて隣接する細分壁20の間の相互間隔によって、細分壁20間の反射に起因する定在波の周波数が決まるが、望ましくは、細分壁20間の相互間隔を10mm以下とすることができる。
具体的には、たとえば、各空気室3A、3B、3Cにおいて、複数の細分壁20が同心的に重積されて設けられていてもよい。この場合、同心的に重積された複数の細分壁20は互いに一体的に結合されて、管体部4の内壁に固定されている。あるいは、より簡単には、薄板若しくは厚紙を所定の周期でジグザグ状に折り返した物を管体部4の内壁に固定してもよい。
なお、図13に示される例では、管体部4の端部側にある空気室3A、3Cにおいて、複数の細分壁が重積されてなる一群の細分壁20が配置されている一方、ドライバユニット5が結合される空気室3Bでは、ドライバユニット5から放射される音波を径内部へ通過可能とするために、複数の細分壁が重積されてなる細分壁20が、軸方向に複数群に分割されており、ドライバユニット5と音響伝送路との音響的な結合を高めている。
以上のように、構成される音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送型スピーカーシステムにおいて、空気室3A、3B、3Cを径方向に分割する細分壁20が設けられる。したがって、透過波が管体部4内部の径方向に形成する定在波により高周波数域に現れる有害なピークやディップを軽減することができる。
また、細分壁20により、透過波が管体部4内部を径方向に伝搬することを阻止するとともに細分壁20の相互間隔を10mm以下に設定することにより、細分壁20間の反射に起因する定在波の周波数を15kHz以上とすることができるので、高周波数域に現れる鋭いピークやディップが可聴帯域外に追いやることができ、再生帯域内において平坦な音圧対周波数特性を得ることができる。
(第14実施形態)
図14は、第14実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端であり径方向の断面形状が方形である音響伝送路の管体部4の側壁面9に、凹部を設けることにより、管体部4の側壁板材の厚さを局所的に変化させている。なお、本実施形態は、このような細分壁が空気室内に設けられていることを除いて、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図14は、第14実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、両端が開口端であり径方向の断面形状が方形である音響伝送路の管体部4の側壁面9に、凹部を設けることにより、管体部4の側壁板材の厚さを局所的に変化させている。なお、本実施形態は、このような細分壁が空気室内に設けられていることを除いて、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムと基本的な構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
本実施形態では、両端が開口端であり径方向の断面形状が方形である音響伝送路の管体部4の側壁面9に、複数の凹部21が形成されている。すなわち、管体部4の側壁面9に、凹部21を配設して側壁板材の厚さを局所的に変化させている。たとえば、管体部4の側壁が木製の板材で形成されており、この木製の板材を加工して、その内面側に複数のディンプル、すなわち凹部21が形成されている。
このように構成される本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。隔壁14B、14Cにより3分割された管体部4の側壁が、強度確保に好適な厚さ10mmから20mmの木製の板材で構成されている場合には、分割された各側壁のたわみ振動の基本周波数は数100Hzとなり、異常な共鳴音として聴覚に認識されることがある。特に、この側壁板材のたわみ振動の基本周波数が、管体部4において透過波が形成する定在波の基本周波数と一致する場合には、この現象が顕著となる。
たとえば、両端が開口端である管体部4において透過波が形成する定在波の基本周波数は、管体部4の全長が34cmのとき、約500Hzであるので、分割された各側壁のたわみ振動の基本周波数と一致することがある。このとき、両者の結合により共鳴が増強されるので、スピーカーの再生音に特に耳障りな音を付加することとなる。
これに対して本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4の側壁面9に、凹部21を配設して側壁板材の厚さを局所的に変化させているので、側壁板材の振動が複数のたわみ変形モードに分散されることとなり特定の周波数で強い共振を発生することを回避することができる。
なお、本実施形態では、径方向の断面形状が方形の管体部4を例にとって説明したが、管体部4の側壁面内部に凹凸を設けることによって側壁板材の厚さを局所的に変化させるものであれば、管体部4の形状は、断面形状が方形のものに限定されないのはもちろんである。
(第15実施形態)
図15は、第15実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。図14に示される第14実施形態では、管体部4の側壁面の内側に凹凸を設けて側壁板材の厚さを局所的に変化させることにより、特定の周波数で強い共振が発生することを回避した音響伝送路型スピーカーシステムを説明した。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4の側壁面に複数の凹部21を設けて、この凹部21の内部に制振材22を充填した構成を有する。なお、凹部21の内部に制振材22を充填した点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの基本構成は、図14に示される第14実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと同様である。したがって、繰り返しの説明は省略する。
図15は、第15実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。図14に示される第14実施形態では、管体部4の側壁面の内側に凹凸を設けて側壁板材の厚さを局所的に変化させることにより、特定の周波数で強い共振が発生することを回避した音響伝送路型スピーカーシステムを説明した。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4の側壁面に複数の凹部21を設けて、この凹部21の内部に制振材22を充填した構成を有する。なお、凹部21の内部に制振材22を充填した点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムの基本構成は、図14に示される第14実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと同様である。したがって、繰り返しの説明は省略する。
本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、両端が開口端である音響伝送路の管体部4の側壁の内部に、凹部21を配設するとともに、凹部21の内部に制振材22が充填されている。制振材22は、ウレタンフォームなどの材料で構成され、凹部21の内部に充填されて、凹部21の内面に固着されている。
このように構成される本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムによれば、管体部4の側壁面9に、凹部21を配設して側壁板材の厚さを局所的に変化させるとともに、凹部21の内部に制振材22を充填しているので、複数のたわみ変形モードに分散された側壁板材の振動が更に制振材の作用により減衰され、特定の周波数で強い共振を発生することが回避される。
(第16実施形態)
図16は、第16実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の第2〜第15実施形態では、管体部4の側壁にドライバ通孔16を設けて、このドライバ通孔16を介して、ドライバユニット5が、音響伝送路に音響的に接続される場合を説明した。しかしながら、本実施形態では、ドライバ通孔16の位置に結合用振動板11を配設することによってドライバ容器15を区画して、ドライバユニット5が設置されるドライバ容器15を独立の空気室としている。この点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、基本的には、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムと同様の基本的構成を有する。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図16は、第16実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の第2〜第15実施形態では、管体部4の側壁にドライバ通孔16を設けて、このドライバ通孔16を介して、ドライバユニット5が、音響伝送路に音響的に接続される場合を説明した。しかしながら、本実施形態では、ドライバ通孔16の位置に結合用振動板11を配設することによってドライバ容器15を区画して、ドライバユニット5が設置されるドライバ容器15を独立の空気室としている。この点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、基本的には、図20に示される音響伝送路型スピーカーシステムと同様の基本的構成を有する。したがって、繰り返しの説明を省略する。
本実施形態においては、両端が開口している管体部4を有しており、管体部4の内部空間は、空気室3A、3B、3Cに区画されている。この複数の空気室3A、3B、3Cのうち中央に位置する空気室3Bに対応して、管体部4の側壁には結合用振動板11の取り付け用の開口が設けられており、この開口に、ドライバユニット5の結合用振動板11が備えられている。
なお、ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に固定しつつ、ドライバユニット5の裏面側を覆うように空間を外界と区画することによって、ドライバ容器15が形成されている。本実施形態では、ドライバ通孔の位置に結合用振動板11が配置されているので、結合用振動板11によって管体部4から区画されたドライバ容器15は、新たな空気室として機能する。
この結果、ドライバユニット5の背面から放射された音波が、音響伝送路を通過して一つの開口(端部壁13Aの開口)から外に放出される間の経路に、ドライバ容器15の空気室、空気室3B、空気室3Aという奇数個の空気室が区画されている。同様に、他の開口(端部壁13Dの開口)から外に放出される間の経路においても、ドライバ容器15の空気室、空気室3B、空気室3Cという奇数の空気室が区画されている。
また、本実施形態では、ドライバ容器15が新たな空気室として機能するために、空気室3A、3B、3Cの第1配列のみならず、空気室であるドライバ容器15、空気室3Bの第2配列とを有し、この第1配列と第2配列とが交叉している構成を有する。ドライバユニット5を開放端とみなし、かつ結合用振動板11に対向する管体部4内部の側壁面9を閉止端壁とみなせば、図16において縦方向に、ドライバ容器15と空気室3Bは、寄生的な片端開放の共鳴管となっている。そのため、ドライバユニット5を節、結合用振動板11を腹、側壁面9を節とし、ドライバユニット5から結合用振動板11を経て側壁面9に至る経路を1/2波長とする定在波に対応する反共振モード(以下、「寄生共鳴管モード」と称する)が存在する。
したがって、本実施形態では、管体部4内部の振動板1A、1B、1C、1Dと空気室3A、3B、3Cを含む第1配列によって構成される音響伝送路の区間における第1の定在波としての基本共振モードが発生するとともに、ドライバユニット5の振動板、ドライバ容器15、および空気室3Bを含む第2配列によって構成される音響伝送路の区間においても第2の定在波としての寄生共鳴管モードが発生する。そして、これら2つの定在波の発生区間の一部である空気室3Bが相互に重畳された配置となっているといえる。いいかえれば、本実施形態では、複数の定在波を音響伝送路の異なる発生区間において発生させるとともに、前記発生区間の一部が相互に重畳された配置となっている。そして、このような基本共振モードである第1の定在波の周波数である基本共振周波数と第2の定在波の周波数である反共振モードの音響振動の周波数とを略一致させることができる。
このように構成される本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは以下のように作用する。
図22に示されたような寄生モード、すなわち、ドライバユニット5が管壁に取り付けられたことにより寄生的に発生するモードに対応する周波数f0において、ドライバユニット5の前面から外部に放射される音波と、管端の振動板1D(または1A)から外部に放射される音波と、が逆相関係になることによって、互いに打ち消しあってしまい、図23(a)のf0の位置に示されるような大きなディップが生じてしまう。
このように、ドライバユニット5が管壁に取り付けられたことにより寄生的に発生するモードに対応する周波数f0において、ドライバユニット5の前面から外部に放射される音波と、管端の振動板1D(または1A)から外部に放射される音波と、が逆相関係になるのは、ドライバユニット5の背面から管端の振動板1D(または1A)に至る経路に偶数個の空気室が存在し、したがって、音響振動がこの経路を伝搬する間に偶数回の位相反転を行うことが原因となっている。
そこで、図16に示されるような本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムによれば、管体部4の側壁におけるドライバ通孔16の位置に結合用振動板11を配設することによってドライバ容器15を区画し、ドライバ容器15を独立の空気室としている。この結果、ドライバユニット5の背面から管端の振動板1D(または1A)に至る経路に奇数個の空気室が存在するように構成される。
このような図16に示される本実施形態によれば、寄生モードの音響振動が上記奇数個の空気室を伝搬する間の位相反転の回数は奇数回となる。したがって、ドライバユニット5の前面から外部に放射される音波と、管端の振動板1D(または1A)から外部に放射される音波とは正相関係となり、図23(a)のf0に見られるような大きなディップを生ずることがない。
なお、図16の形態と同様にドライバユニット5の背面から管端の振動板に至る経路に奇数個の空気室を配置することは、たとえば図20の音響伝送路型スピーカーシステムにおいて管体部4の両端を延長して空気室を増設することによっても可能なことは自明である。しかしながら、本実施形態によれば、ドライバユニット5の背面から管端の振動板に至る経路に奇数個の空気室を配置する際に、管体部4の両端を延長する場合と比べて、管体部4の全長を短かく維持することができ、かつ、部品点数の増加を回避することができるので、管体部4の両端を延長する場合に比べてより有利な形態となっている。
また逆に、たとえば図20において管体部4の両端の空気室を削除して、管体部4を単一の空気室とすることによっても、ドライバユニット5の背面から管端の振動板に至る経路に奇数個の空気室が配置されることは自明である。しかしながら、その場合には、図21および図23のf3に相当する共振モードが消失し、低音増強の機能を発揮することができなくなる。したがって、低周波数域の複数の周波数において共振し低音増強することができる本実施形態の形態は、管体部4を単一の空気室とする場合に比べてより有利である。
さらに、図16に示される本実施形態のように、空気室3A、3B、3Cの第1配列とドライバ容器15、3Bの第2配列とが交叉している形態によれば、ドライバユニット5と結合用振動板11が構成する反共振モードの音響振動の周波数を、音響伝送路(空気室3A、3B、3Cと振動板1A、1B、1C、1D)の基本共振周波数と近接させることにより、低音域を増強することが可能となる。
図16において、ドライバユニット5を開放端と見なし、かつ、結合用振動板11に対向する管体部4内部の側壁面9を閉止端壁と見なせば、ドライバ容器15と空気室3Bは、寄生的な片端開放の共鳴管となっている。そのため、ドライバユニット5を節、結合用振動板11を腹、側壁面9を節とし、ドライバユニット5から結合用振動板11を経て側壁面9に至る経路を1/2波長とする定在波に対応する反共振モードである寄生共鳴管モードが存在する。
この寄生共鳴管モードは、結合用振動板11の質量を十分大きく設定することにより、低い周波数において発生させることができるので、たとえば寄生共鳴管モードの周波数と管体部4内の音響伝送路の基本共振周波数とを近接させることが可能である。すなわち、発生区間の異なる少なくとも2個の定在波の周波数を略一致させることができる
図16の実線(a)は、この寄生共鳴管モードの速度振幅を模式的に示したものである。また、図16の点線(b)は、管体部4内の音響伝送路の基本共振モードの速度振幅を模式的に示したものである。この2つのモードの周波数が略等しいとき、管体部4内の音響伝送路の基本共振モードは、寄生共鳴管モードにより励振されて強い音波を管体部4の両端から外部に放出することとなる。
図16の実線(a)は、この寄生共鳴管モードの速度振幅を模式的に示したものである。また、図16の点線(b)は、管体部4内の音響伝送路の基本共振モードの速度振幅を模式的に示したものである。この2つのモードの周波数が略等しいとき、管体部4内の音響伝送路の基本共振モードは、寄生共鳴管モードにより励振されて強い音波を管体部4の両端から外部に放出することとなる。
また、この2つのモードの一致した周波数においては、ドライバユニット5の前面から放射される音波と、管体部4の両端から外部に放出される音波との位相差が、略正相関係であり、相互に強めあうという効果を奏する。
(第17実施形態)
最後に、本発明の第17実施形態について説明する。図17は、第17実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図16で説明した第16実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、結合用振動板11を介してドライバユニット5の背面から放射される音波を、管体部4内に構築された両端開放の共鳴管に等価な音響伝送路に結合した場合を説明したが、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、結合用振動板11を介してドライバユニット5の背面から放射される音波を、管体部4内に構築された片端開放の共鳴管に等価な音響伝送路に結合させている。なお、管体部4として、一端に閉止端壁8が設けられており、管体部4の内部空間が2つの空気室3A、3Bに分割されており、さらに、閉止端壁8側の空気室3Bに対して結合用信号板11を介して、ドライバユニット5が結合されている点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図16に示される第16実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
最後に、本発明の第17実施形態について説明する。図17は、第17実施形態における音響伝送路型スピーカーシステムの断面を表す図である。上記の図16で説明した第16実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、結合用振動板11を介してドライバユニット5の背面から放射される音波を、管体部4内に構築された両端開放の共鳴管に等価な音響伝送路に結合した場合を説明したが、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、結合用振動板11を介してドライバユニット5の背面から放射される音波を、管体部4内に構築された片端開放の共鳴管に等価な音響伝送路に結合させている。なお、管体部4として、一端に閉止端壁8が設けられており、管体部4の内部空間が2つの空気室3A、3Bに分割されており、さらに、閉止端壁8側の空気室3Bに対して結合用信号板11を介して、ドライバユニット5が結合されている点を除いて、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、図16に示される第16実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムと基本的構成が同様である。したがって、繰り返しの説明を省略する。
図17に示されるように、本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムでは、管体部4の一端には、開口を有する端部壁13Aが設けられている一方、他端には閉止端壁8が設けられている。
管体部4の内部空間は、2つの空気室3A、3Bに分割されている。管体部4の側壁において、閉止端壁8側の空気室3Bに対応する位置に、結合用振動板11を取り付けるための開口が設けられており、この開口部分に、ドライバユニット5の結合用振動板11を備えている。ドライバユニット5を管体部4の側壁の外側に固定しつつ、ドライバユニット5の裏面側を覆うように空間を外界と区画することによって、ドライバ容器15が形成されている。本実施形態では、結合用振動板11が配置されているので、結合用振動板11によって管体部4から区画されたドライバ容器15は、新たな空気室として機能する。
また、管体部4内部の振動板1A、1Bと空気室3A、3Bによって構成される音響伝送路の区間は、第1の定在波として基本共振モードを発生させ、ドライバユニット5の振動板、ドライバ容器15、および空気室3Bによって構成される音響伝送路の区間は、第2の定在波として寄生共鳴管モードを発生させる。空気室3Bは、基本共振モードの定在波を発生させる発生区間と、寄生共鳴管モードの定在波を発生させる発生区間として、各発生区間の一部が相互に重畳された部分となる。さらに、このような基本共振モードである第1の定在波の周波数である基本共振周波数と寄生共鳴管モードである第2の定在波の周波数とを略一致させている。
具体的な実施例では、管体部4の断面は一辺の長さが0.08mの正方形であり、空気室3Aおよび3Bの長さは共に0.11mとした。各振動板の有効直径は0.064mで、振動板1Aおよび振動板1Bの質量は共に10gとした。このとき、管体部4内の空気室3Aと3Bで構成される音響伝送路において、閉止端壁8を節とし振動板1Aを腹とし、管体部4の全長を1/4波長とする基本共振モードの定在波が生じ、その周波数は45Hzとなった。
一方、ドライバユニット5の振動板質量は4gとし、結合用振動板11の質量は31gとした。管体部4内の各空気室の容積が0.7リットルであるのに対し、ドライバ容器15の容積は1.1リットルと大きくした。この結果、ドライバユニット5と結合用振動板11による寄生共鳴管モードの周波数は45Hzとなって、管体部4の音響伝送路の基本共振モードの周数数と一致した。両モードの結合により、45Hz付近において音響出力の増強を得ることができる。また、管体部4の断面を四角形としたことにより、結合用振動板11と側壁面9とが平行面として対向しているため、側壁面9においては、寄生共鳴管モードを成立させるに必要な効率的な反射が可能となっている。
以上のように、構成される本実施形態の音響伝送路型スピーカーシステムは、以下のように作用する。
本実施形態においても、ドライバユニット5の背面から放射された音波が、音響伝送路を通過して一つの開口(端部壁13Aの開口)から外に放出される間の経路に、ドライバ容器15の空気室、空気室3B、空気室3Aという奇数の空気室が区画される。したがって、ドライバユニット5の前面から外部に放射される音波と、管端の振動板1Aから外部に放射される音波と正相関係となり、互いに打ち消しあうことがないので、大きなディップが生じることを防止することができる。
また、管体部4内部の振動板1A、1Bと空気室3A、3Bによって構成される音響伝送路の区間は、第1の定在波として基本共振モードを発生させ、ドライバユニット5の振動板、ドライバ容器15、および空気室3Bによって構成される音響伝送路の区間は、第2の定在波として寄生共鳴管モードを発生させるが、寄生共鳴管モードの周波数と管体部4の音響伝送路の基本共振モードの周数数とが近接するように設定されているので、低音域を増強することが可能となる。
以上のように、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の思想を逸脱しない範囲において、適宜に変更、追加、および省略することができる。
たとえば、上記の説明では、質量要素として振動板を例にとって説明したが、質量要素として、たとえばポート管を用いることもできる。
1 振動板、
2 エッジ部材、
3 空気室、
4 管体部、
5 ドライバユニット、
6 通気路、
7 空隙、
8 閉止端壁、
9 側壁面、
10 振動板保持枠、
11 結合用振動板、
12 吸音材、
13 端部壁、
14 隔壁、
15 ドライバ容器、
16 ドライバ通孔、
17 遮蔽板、
18 振動板通孔、
19 弾性支持手段、
20 細分壁、
21 凹部、
22 制振材。
2 エッジ部材、
3 空気室、
4 管体部、
5 ドライバユニット、
6 通気路、
7 空隙、
8 閉止端壁、
9 側壁面、
10 振動板保持枠、
11 結合用振動板、
12 吸音材、
13 端部壁、
14 隔壁、
15 ドライバ容器、
16 ドライバ通孔、
17 遮蔽板、
18 振動板通孔、
19 弾性支持手段、
20 細分壁、
21 凹部、
22 制振材。
Claims (23)
- 内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、
前記質量要素を挟み隣接する2個の空気室間に、当該質量要素の前後における圧力差を軽減するための通気径路が形成されていることを特徴とするスピーカーシステム。 - 前記質量要素の少なくとも一つは、前記管体部内部で振動可能に配設された振動板であることを特徴とする請求項1記載のスピーカーシステム。
- 前記振動板の少なくとも一つが、前記音響伝送路を伝搬する音響振動が形成する定在波における速度振幅の腹に対応する位置に配設されていることを特徴とする請求項2記載のスピーカーシステム。
- 前記通気径路は、前記管体部内部を複数の空気室に区画する隔壁に形成された通気口であることを特徴とする請求項1記載のスピーカーシステム。
- 前記管体部内部を複数の空気室に区画するように前記管体部内部に配置されており通孔を有する隔壁を有し、
前記振動板は、前記隔壁に対向するように隣接して設けられており、
前記通気経路は、前記振動板を保持する枠体と前記隔壁との間の空隙であることを特徴とする請求項2記載のスピーカーシステム。 - 前記通気径路は、前記振動板に形成された通気口であることを特徴とする請求項2記載のスピーカーシステム。
- 前記通気径路は、前記振動板の少なくとも一部を構成する通気性素材の部分であることを特徴とする請求項2記載のスピーカーシステム。
- 前記通気径路の少なくとも一方の端に吸音材が配設されていることを特徴とする請求項1記載のスピーカーシステム。
- 内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、
前記空気室の少なくとも一つの内部に音波を遮るための遮蔽板が配設されていることを特徴とするスピーカーシステム。 - 前記遮蔽板を迷路状に屈曲して配置することにより、前記音響伝送路を通過する音波の行程長を延長したことを特徴とする請求項9記載のスピーカーシステム。
- 前記管体部は両端に開口を有しており、
前記電気音響変換器から放射された音波が、前記音響伝送路を経由して異なる前記開口より外部に放出されるとともに、
前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記遮蔽板が配置されていることを特徴とする請求項10記載のスピーカーシステム。 - 前記管体部の内部空間を当該管体部の径方向に区分する複数の遮蔽板が重積されていることを特徴とする請求項9記載のスピーカーシステム。
- 内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、
前記管体部の側壁板材の厚さが局所的に変化していることを特徴とするスピーカーシステム。 - 前記管体部の側壁内面に複数の凹部が設けられていることを特徴とする請求項13に記載のスピーカーシステム。
- 前記凹部内に、制振材が充填されていることを特徴とする請求項14に記載のスピーカーシステム。
- 内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに少なくとも一端が開口している管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に質量要素と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、
前記電気音響変換器の背面から放射された音波が、前記音響伝送路を通過して前記開口より外部に放出される間の経路に奇数個の前記空気室が区画されていることを特徴とするスピーカーシステム。 - 前記電気音響変換器は、結合用振動版を介して前記音響伝送路に結合されることを特徴とする請求項16記載のスピーカーシステム。
- 少なくとも2個の定在波を前記音響伝送路の異なる発生区間において発生させるとともに、前記発生区間の一部が相互に重畳された配置となっていることを特徴とする請求項17記載のスピーカーシステム。
- 前記発生区間の異なる少なくとも2個の定在波の周波数が略一致していることを特徴とする請求項18記載のスピーカーシステム。
- 内径よりも大きな軸線方向の長さを有するとともに、端部または側壁に少なくとも2つの開口を含む管体部と、前記管体部の内部で当該管体部の軸線方向に内部振動板と空気室とが交互に配列された音響振動部と、よりなる音響伝送路に、音響的に結合される電気音響変換器を有するスピーカーシステムにおいて、
前記電気音響変換器から放射された音波が、前記音響伝送路を経由して異なる前記開口より外部に放出されるとともに、
前記電気音響変換器から放射されて異なる前記開口より外部に放出される音波が通過する音波の行程長が互いに異なるように、前記電気音響変換器と前記2つの開口との相対的な位置関係が設定されていることを特徴とするスピーカーシステム。 - 前記管体部は、前記電気音響交換器の取り付け位置を基準として一端に第1開口を有するとともに、他端側に位置する側壁部分に少なくとも一つの側壁開口を有しており、当該第1開口および側壁開口には、それぞれ振動板が設けられていることを特徴とする請求項20に記載のスピーカーシステム。
- 前記管体部は、前記他端に第2開口を有し、当該第2開口には、振動板が設けられていることを特徴とする請求項21に記載のスピーカーシステム。
- 前記側壁開口に設けられた振動板の背面に沿って伸延し、当該側壁開口に設けられた振動板と前記内部振動板との音響的結合を弱める一方、当該側壁開口に設けられた振動板と前記第2開口に設けられた振動板とを協働させるための遮蔽板を有することを特徴とする請求項22に記載のスピーカシステム。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101337553B1 (ko) * | 2012-05-14 | 2013-12-06 | 주식회사 이엠텍 | 음향변환장치의 인클로져 |
WO2017028434A1 (zh) * | 2015-08-19 | 2017-02-23 | 歌尔声学股份有限公司 | 扬声器模组 |
WO2020103301A1 (zh) * | 2018-11-23 | 2020-05-28 | 歌尔股份有限公司 | 扬声器模组 |
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2007
- 2007-08-10 JP JP2007210290A patent/JP2008067375A/ja active Pending
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