電算機室やOA(オフィスオートメーション)機器対応用のフリーアクセスフロアとして、支持脚でパネルを支持する二重床構造が知られ、これについて多種多様な構成が広く用いられている。とくに、建物の既設の床スラブは不陸を有するのが常であるが故に、パネルの敷設時に支持脚の高さを調整しながら不陸に適応させる支持脚の高さ調整機構を有する二重床構造(フリーアクセスフロア)がある。これは主に、パネルおよび支持脚が一体的に固設された支持脚一体型構造と、パネルおよび支持脚が別体で分離可能な支持脚分離型構造とに大別される。
しかしこの種の二重床構造は、二重床構造の施工後に、オフィスでのレイアウト変更等により配線器具の設置や配線の移増設等を変更す際、敷設された多数のパネルを取り外す必要が生じ、変更時の施工作業が大がかりになるという欠点を有している。
かかる欠点を解消する二重床構造として、例えば、略立方体形のパネルの相互間や複数のパネルの隅部箇所に直線部や交差部の配線通路を形成してその上方開口をカバーで塞ぎ、上面を平坦化する配線溝型の二重床構造が知られている。この種の二重床構造は、例えば実開平4-66248号公報(フリーアクセスフロア:特許文献13)に記載されるように、パネル相互間に配線溝が形成され、ここに配線や配線器具等を設置して、これをカバー(サブパネル、クロスパネル)で覆う構造を有し、配線および配線器具の設置や移増設等に対する施工作業の労力を低減することができる。
しかし、このようなフリーアクセスフロアは、隣接するメインパネルとの段差面にサブパネルを載置して、この段差面でサブパネルを支持する構造である。そのため、二重床構造やパネルの設置状態での安定性に欠ける。例えば床面の不陸が大きい場合や不陸調整が不十分な場合、カバーで不陸を吸収したり不陸に追従したりすることができず、浮き上がったり、ガタツキが生じたりして、什器の移動や歩行の際にガタツキ音を生ずる。
このような構造では、カバー敷設の位置決め固定の際や、その敷設状態で、安定性が悪いという問題があった。
そのため、カバーの位置決め固定の構造に技術的工夫を施し、この問題を解消すべく提案された公知技術として、実開平1-168741号公報(フリーアクセスフロア:特許文献1)、実開平5-96281号公報(フリーアクセスフロア:特許文献2)、実公平7-587号公報(配線用フロアパネル装置:特許文献3)、および特開平9-296592号公報(床構造及び床施工方法:特許文献4)がある。
特許文献1および同2は、結合板(蓋)側に爪(突起)を設け、パネル(床板)側の段差にその爪(突起)が嵌め込まれる孔(溝)を設け、爪(突起)と孔(溝)を係合する構造を開示している。特許文献3は、カバー部材に下方に突出して形成された凸部が配線溝形成用ブロックの段部の凹部に係合する係合構造を開示している。特許文献4は、交差部パネル部材と直線部パネル部材を床パネル本体の載置棚部で位置決め機構により位置決め固定し、交差部をビス留めで取り付ける構造を開示している。
この他の関連技術には、連結部材を回転操作することによりパネル隅部を相互に固定して連結する構成として、特開平3-144060号公報(フロアパネルの連結装置:特許文献5)、実開平5-54736号公報(フロアパネルの連結装置:特許文献6)、および実開平5-34237号公報(フロアパネルの連結構造:特許文献7)がある。
これらの連結構造は、回転操作による連結部材を採用することにより、簡単な操作で比較的容易に施工することができるとともに、パネルを確実に連結することが可能である。
ところで、特許文献1および同2の公知技術では、パネル相互間やパネルコーナー部において配線溝上に設けられるカバーは、パネルに比べて小さく、しかも比較的数多く敷設される。このため、施工作業が煩雑であり、施工作業者や使用者がカバー材の装着を忘れたり、カバーを紛失したりすることが多いという問題がある。
また、このようなカバーを装着するための部分は、ダイキャスト等による板厚の厚い鋼板や補強リブ構造を採用してカバーに高い強度や耐荷重性を確保し、比較的広い間隔で設置されるパネル相互間やパネルコーナー部の集合箇所にそのようなカバーを配置する。このため、カバーの構造が複雑であるとともに、カバー材が高価であるという問題がある。
さらに、特許文献1および同2では、パネルの平板部上面より一段低いコーナー部上面に結合板を設置する際、その上面に形成された爪挿入孔に結合板の爪を差し込んで嵌合させ、この爪および孔による嵌合構造を多数、それぞれのパネルコーナー部について施す。そのため、施工作業は、床の不陸や支持脚の設置位置等により影響を受けやすく、位置ズレ等により嵌め合わせや取付け作業が困難となる欠点がある。しかも、爪と孔との間のクリアランス寸法のとり方が微妙である。このため、複数箇所で爪と孔とを嵌合させ複数の結合板との嵌合を同時に行なう構造は、非常に設計が難しい。このような設計上の困難性から、爪が孔にはいりにくくなってきつかったり、逆に緩くてガタツキを生じさせてしまう等の支障が生ずる。
特許文献3では、略方形のカバー板を配線溝形成用ブロックの縁の段部に載置し、略方形カバー板の下方に突出している凸部がこの段部に形成された凹部に係合することで、カバー板が位置決めされる。このような構成は、施工が迅速かつ簡単に行なえるというメリットがある。しかし、カバー板は載置させても固定されていないため、カバー板の位置ズレやガタツキが生じ、敷設状態の安定性に欠け、位置決め固定が不十分であるという欠点がある。
特許文献4は、直線部および交差部のカバー部材を床パネル本体と位置決め機構で位置決め固定し、交差部で雌ねじ孔にビスをねじ込むビス留め取付け構造である。これは、耐震上の効果はあるものの、例えば配線変更等に応じたパネルやカバーの着脱が施工上、困難であり、構造が複雑で部品点数が増加するため、施工の煩雑化やコスト増加等の問題がある。
特許文献5〜7は、回転操作による連結部材の連結構造を開示している。これは、パネル側および連結部材側の両方に独自の回転式係合あるいは嵌合構造を形成する必要がある。したがって、連結部やパネル隅部の構造が複雑で、部品点数も増加するため、同様に施工の煩雑化やコストアップの問題がある。また、その連結部材は、パネルと別体の分離された部材であるので、前述したように、施工作業者の装着し忘れや紛失の問題もある。
さらに、配線溝上に設置するカバーの施工作業性を向上し上述の問題をある程度解消し得る公知技術として、特開平8-53927号公報(床パネル:特許文献8)、特開平9-158454号公報(配線床の溝蓋の設置方法:特許文献9)、および特開平11-81639号公報(床パネル:特許文献10)がある。これら特許文献8〜10では、カバーにヒンジ構造や係合・嵌合構造を採用し、パネルとカバーとを一体的に構成している。これにより、配線敷設等に伴うカバー開閉の際の施工作業性が向上し、カバー材の装着し忘れや紛失を防止することができる。
このようなヒンジ構造としては他に、実開平6-85845(連結型二重床パネル:特許文献11)もある。これは、カバー部材を別材として設けたものではなく、支持脚付方形床パネルの隣接するパネルを相互に連結する際の施工作業を容易にする目的で、パネルのー辺側に突出嵌合片を設け、その対向する他辺側にこの突出嵌合片が嵌入される嵌着孔を設け、パネル本体が突出嵌合片の凹溝条によって弾性的に屈曲可能に開閉するパネル連結構造である。このパネルは、樹脂材等で一体成形され、着脱自在である。
この種の技術には他に、特開平2-202317号公報(電線の敷設部構造:特許文献12)、特許番号第2506712号公報(フリーアクセス床:特許文献15)、特開平3-290561号公報(フロア、ならびにフロアにおける線管類の敷設方法:特許文献16)、および特開2002-305835号公報(配線用ダクト:特許文献17)もある。
さらに、実開平6-1587号公報(OAフロア床下地材の配置構造:特許文献14)には、分電盤等により分電配設される電線、または水や温水等を供給する配管に沿って、それらの周囲の床下地材とは色などの異なる表面を有する床下地材を敷設することにより、それらの電線や配管上に位置する床下地材を明示したOAフロアの床下地材配置が開示されている。この他、実公平4-36350号公報(フロアパネル装置:特許文献18)、特開平8−312114号公報(二重床:特許文献19)や実開平8-9344号公報(フリーアクセスフロア材:特許文献20)、および特開平3-233073号公報(OAフロアー構造:特許文献21)が存在する。
本願の関連する技術分野において、磁気作用による吸着機構を適用した技術には、特開平7-292938号公報(床パネル構成体:特許文献22)、特開平9-247827号公報(床下配線位置確認構造:特許文献23)、特開2002-252917号公報(フリーアクセスフロア:特許文献24)、および特開2002-291131号公報(ケーブルプロテクタ及びケーブルプロテクタ用の台座:特許文献25)等が存在する。これらの技術は単に、磁性材を用いて床仕上げ材をパネル片表面に固定する技術(特許文献22)、床パネル本体に設けられた磁石により方位磁石器具で床下の配線接続器の位置を確認可能とする技術(特許文献23)、電源タップに磁石を取り付け支持部材の電源タップ受け金具に磁力で取り付ける技術(特許文献24)、ケーブルプロテクタの台座に溝を形成し、そこに磁石を貼り付けて、壁や床等に敷設する技術(特許文献25)が開示されているにすぎない。
上述した種類のカバー構造を有するOAフロアについて、カバーの着脱や開閉についてスムーズな操作性と迅速な施工性が望まれていた。
実開平1-168741号公報
実開平5-96281号公報
実公平7-587号公報
特開平9-296592号公報
特開平3-144060号公報
実開平5-54736号公報
実開平5-34237号公報
特開平8-53927号公報
特開平9-158454号公報
特開平11-81639号公報
実開平6-85845号公報
特開平2-202317号公報
実開平4-66248号公報
実開平6-1587号公報
特許第2506712号公報
特開平3-290561号公報
特開2002-305835号公報
実公平4-36350号公報
特開平8-312114号公報
実開平8-9344号公報
特開平3-233073号公報
特開平7-292938号公報
特開平9-247827号公報
特開2002-252917号公報
特開2002-291131号公報
次に添付図面を参照して本発明によるカバー部材開閉機構を備えた二重床構造の実施例を詳細に説明する。
実施例の基本的構成
図1、図2および図3を参照すると、本発明によるカバー部材開閉機構を備えた二重床構造の実施例は、支持脚分離型のフロアパネルである。パネル20を支持する支持部は、建物の床面に配設される高さの調整可能な支持脚ユニット10を含み、支持脚ユニット10は、略方形の基台101の略隅部に4本の支持脚102が各々立設して配置されている。これらの支持脚102で方形状床板のパネル20の隅部を支持することによって、パネル20が敷設される。
パネル20が敷設されると、それぞれの支持脚ユニット10に配置された複数の支持脚102の相互間、および隣接する複数のパネル20の相互間の空間は、図示のように所定幅の配線通路50を連続的に縦横へ格子状に形成する。この配線通路50には、その直線部の上方開口に直線部カバー30が覆設される。また、その交差部の上方開口には、交差部カバー40が覆設される。
支持脚ユニット10は、床面に敷設される基台101と、配線通路50が形成されるように基台101上に所定の間隔で立設された4本の支持脚102とで構成されている。各支持脚102は、例えばボルト脚部103a、ナット部103b、およびパネル20の隅部を支持するパネル受け部103cで構成され、これらが高さ調整機構103を形成している。
ナット部103bの上面は、高さ調整用の工具、例えば六角レンチ(図示せず)を受け入れる六角形状の開口部103dをなしている。開口部103bにレンチの頭部を挿入してナット部103bを回動させてこれを上下動させることによって、パネル受け部103cで支持されるパネル20の高さを上方から調整可能である。こうして、床面の不陸に対する調整やパネル面の平坦化が可能である。
パネル20は、図1、図2および図3から解るように、略方形の平面形状を有する板材である。その隅部は角部の先端を切り落とした形状をなし、また、4辺の側周縁の近傍には直線部カバー30を受けるための段部201が形成されている。隅部周縁の近傍にもまた、交差部カバー40を受けるための段部202が形成されている。これらの段部201および202は、パネル20の全周縁に沿って連続的に一巡している。
パネル20にはまた、支持脚102のナット部103bを挿入可能な支持脚挿入孔203がパネル20の四隅部の対応する位置に設けられ、パネル20の底面をパネル受け部103c受けて支持脚102で支持する。
このような構成により、支持脚ユニット10でパネル20の支持および位置決めが可能であり、パネル20の隅部を強固に相互に結合し、四隅に集合するパネル20の位置決め固定を簡単かつ確実に行なうことが可能である。
パネル20は、鋼などの金属材等の堅固な板で構成される。これは、内部が中空や空洞であったり、またはそれにコンクリート等の充填補強材を充填した平板部材など、金属製、木製、コンクリート製、金属とコンクリートの複合材など、任意の材料で構成してよい。また、平板部材の表裏面に補強リブを形成するなど、種々の材質、材料および形状を適用することができる。その大きさも、例えば約500mm〜600mm角の方形で、厚さ約20mm〜40mmとするなど、施工する現場の状況に適合して形成することができる。
実施例の特徴的構成
ところで、本実施例の特徴は、主として以下の3つの事項を含む。
まず、カバー部材は、その端縁部においてパネルを連結する連結部で自在に開閉可能である。しかも、カバー部材を開状態とする際、磁気吸着、接着・粘着、係合突起および係止のうちの少なくとも1つを含むカバー部材開状態維持機構により、カバー部材の上面がパネルの上面に接してその開状態を維持することができる。これによって、スムーズで、迅速な開閉操作が可能である。
また、パネルと直線部カバー部材および交差部カバー部材を連結する連結部により、パネルの隣り合う2辺側に直線部カバー部材の一方の端縁部側を接続し、またパネルの隅部に交差部カバー部材の一端縁部側を接続して1パネルユニットが形成される。その際、交差部カバー部材の周縁部が直線部カバー部材の端部と干渉しないように、交差部カバー部材は、正八角形から変形して隣接する辺の長さが異なり1つおきの辺の長さが実質的に等しい平面形状、すなわち略異形八角形の平面形状に形成されている。これによって、直線部カバー部材および交差部カバー部材を開閉操作したときに、両カバー部材同士の接触、引掛りおよび当接がなく、スムーズかつ迅速に開状態または閉状態に移行することができる。
さらに、カバー部材は、その端縁部の上面に切断可能位置が指示されている。これにより、連結部の略近傍の位置で所定の領域を切断することができる。そこで、相互に隣接する複数のパネルの周縁部の間の空間に覆設されたカバー部材を開閉する際、カバー部材から配線が立ち上がっている場合でも、カバー部材の開閉操作を阻害せず自在に開閉できるよう、この切断領域から配線を立ち上げるように配線の変更が可能である。
以下に、本発明の好適な実施例を図面を参照して、これらの特徴的事項も含めて、詳細に説明する。
直線部カバーの説明
カバー部材開閉機構は、図3および図4に示すように、基本的には、連結部301bを有しヒンジ構造301、310を形成する連結機構と、直線部カバー30の上面をパネル20の上面に接して固定させ、これを開状態に維持するためのカバー部材開状態維持機構302‐206、302b‐204a、320‐220、330‐220、340とから構成される。
直線部カバー30のヒンジ構造301は、図2、図3および図4に示すように、その長手方向の一方の1辺側に設けられた2つのヒンジ部301と、パネル20の隣り合う2辺の周縁近傍にそのヒンジ部301に対応して設けられこれに係合するヒンジ係合孔204とからなる。
直線部カバー30は、図示の例では樹脂材で形成され、その表面側には、裏面側に設けられた突起部303と補強用リブ304との間の位置にスリット状の開口305(図9)が多数設けられ、これにより強度を向上させるとともに、直線部カバー30の下に敷設された配線器具類を目視確認を可能にしている。
直線部カバー30はまた、図1〜図7に示すように、略長方形の板状をなし、パネル20の隣り合う2辺にそれぞれ設けられている。各直線部カバー30は共通した形状であり、直線部カバー30の一方の長辺側にはヒンジ部301が設けられている。ヒンジ部301は、側方に突出するように形成され、直線部カバー30を回動して開閉する際に連結部として屈曲性を呈する屈曲部301aと、パネル20のヒンジ係合孔204に着脱可能に係合し嵌合される係合部としての略突起形状のヒンジ係合部301bとを有する。
この屈曲部301aは、図6Bに例示のように、例えば同図における垂直断面が略凹形状の薄肉の連結部材や、断面が略V字状の切込みが形成された可撓性を有する連結部材である。しかし、これに限定されず、直線部カバー30の自由な開閉を許容する構成であれば、どのような材質、材料、形状、厚さや長さに設定してもよい。
また、ヒンジ係合部301bは、弾性力により着脱を容易にすべく、図7に示す如く、例えば割溝を形成する2つの略矢形の形状に形成される。ヒンジ部301やヒンジ係合部301bの形状は、任意でよく、例えば図示の例に限らず、これと異なる形状の略矢形としてもよい。
ところで、ヒンジ部301に相当する従来のこの種のヒンジ機構は、カバー30を開状態への操作後、その連結部の弾性力により閉状態に復帰することがあった。とくに配線変更の場合、カバーが返ってしまうと、配線敷設が困難であった。
そこで本実施例では、以下に説明する4つの態様のカバー部材開状態維持機構により、この課題を解決している。
カバー部材開状態維持機構はまず、係止構造にて実現される。この態様は、図2からよく解るように、係止構造としての係止部302および係止孔206により構成されている。これにより、配線敷設時、直線部カバー30を手操作にて閉状態から開状態にした際、必要に応じて直線部カバー30の上面をパネル20の上面に当接させ、その当接位置で開状態を容易かつ確実に維持することができ、その後の配線敷設、施工作業が効率的に行なえる。
より具体的には、係止構造(係止爪)による係止作用を奏するカバー部材開状態維持機構は、図2および図3に示すように、パネル20の二辺側の周縁位置にヒンジ構造(ヒンジ部)301とは別に設けられ、係止部302と、パネル20の対応する位置に設けられ係止部302に係止される被係止部としての係止孔206とを含む。係止部302は、直線部カバー30の上面で略中央部分に1箇所、設けられ、また係止孔206は、係止部302に対応してパネル20の1辺の周縁部の略中央位置に設けられている。
係止部302は、本実施例では、略舌状に形成され、また係止孔206は、図6に例示するように四角形状を有する。こうして、直線部カバー30を開けると、パネル20に設けられた係止孔206に略舌状の係止部302の先端部分が係合し係止する。これにより、例えば開状態から閉状態へ復帰する反動に抗して、直線部カバー30は、その上面がパネル20の上面に接したまま、容易にその開状態を維持することができる。
ところで本実施例では、図6Aおよび図6Bに示すように、係止部302の裏側に、複数の返り部302aが連続的に形成されている。返り部302aは、係止孔206に確実に係合し係止することができ、これによって容易に直線部カバー30は開状態を維持する。また、その係止を離脱すれば、容易に直線部カバー30を閉じることができる。係止部302の構造および形状は、その係合、係止および離脱が容易であればよく、例えば係止部302に返り部302aを形成しなくてもよい。また、係止部302は弾性力を有してもよい。
本実施例において、係止構造は、前述した直線部カバー30の係止部302とパネル20の係止孔206とを含むが、これは一例にすぎない。例えば、図6Cおよび図6Dに示すように、パネル20において、直線部カバー30のヒンジ部301が配設されている端縁部側のほぼ中央付近に凹部204aを形成し、また、直線部カバー30の対応する位置には、その裏面側または側縁側から伸びてパネル20の側縁部側に及んで凹部204aに対応した突出係止部302bを形成してもよい。カバー部材30を閉状態から開状態へ操作すると、直線部カバー30が若干略弓形状に撓みつつも、突出係止部302bの先端部が凹部204aに引掛り、この引掛りが図6Eに矢印Aで示すように、直線部カバー30を開状態へ促してその開状態を維持する。この例示と同等もしくは類似の機能や作用効果を奏する構成であればよい。ヒンジ部301、突出係止部302bおよび凹部204aは、実施例では角の丸い形状や角のある形状をしているが、勿論、本発明はこれらの特定の形状に限定されない。
さて、カバー部材開状態維持機構を係合突起構造で実現する態様によれば、係合・突起構造は基本的には、相互に係合する係合突起部320および係合孔220を含む。図9および図10に示すように、係合突起部320は、頭部320a、先端部320b、および係合可能に屈曲する屈曲部320cを有する。本実施例では、直線部カバー30には多数のスリット状開口が配列されている。それらのスリット状開口のうち直線部カバー30の2つのヒンジ部301の間の略中央部にある開口305の内方に、係合突起部320が形成されている。
図10に示す断面から解るように、係合突起部320は、先端部320bが直線部カバー30の上面側に位置し、かつ頭部320aが裏面側に位置し、屈曲部320cがスリット状開口305の縁部に結合されて、屈曲部320cが弾性的に屈曲して先端部320bおよび頭部320aが一体的に上下動するように配設されている。
これによって、配線敷設時に、直線部カバー30を矢印Aの方向に手で操作して閉状態から開状態にする際(図10(a))、直線部カバー30の上面がパネル20の上面に近接したとき、カバー裏面側の係合突起部320の頭部320aをさらに指等で軽く押圧すると(同図(b)、矢印B)、先端部320bを係合孔220に係合させることができる(図10(c))。先端部320bは、図示のように係合孔220の縁部に引っ掛る状態となる。これによって両者は確実に係合され、その近接した位置で、直線部カバー30が図示のように裏面側を上面にした開状態に、容易かつ確実に維持される。こうして、その後の配線敷設施工作業の効率的に行なわれる。
直線部カバー30を開状態から閉状態へ復帰させるには、再度その頭部320aを指等で軽く矢印Bの方向に押圧する。これによって、先端部320bが係合孔220の縁部との係合から離脱し、ヒンジ部301の復帰機能を利用してカバー30を容易に閉じることができる。また、このカバー30を強制的に復帰させることによって離脱させるように構成してもよい。
この態様によれば、係合突起部320の操作性は、その開閉時に軽く指で押圧する程度でよい。この操作は、開閉操作の回動に合わせて極めて簡単に行なえ、操作感も良好である。とくに、屈曲部320cは、スリット状開口305の縁部に結合されて形成されているので、その材質に応じた厚さおよび幅にすることで最適な屈曲性を得ることができる。しかも、直線部カバー30と一体成形できるので、製造が容易で低コスト化、軽量化が達成される。
係合突起構造は、図示の例に限定されるものではなく、基本的に、前述の係合突起部320、頭部320a、先端部320bおよび屈曲部320cに相当する構成で同様の作用・効果が得られる構造であれば、どのようなものであってもよい。
上述の実施例では、係合突起構造が一体成形されていた。しかし、別体部材でもよく、他の例を図19を参照して以下に説明する。図19A〜図19Dには、例えば、直線部カバー30に設けられた係合部材330とパネル20に設けられた係合孔220とから構成される係合突起構造が示されている。係合部材330は、図19Bから解るように頭部330aおよび先端部330dから構成された略瓢箪形状または略ピン形状の別部材である。係合部材330は、図19Bから解るように、直線部カバー30の表裏面のほぼ中央部に設けられ圧入により貫通可態な開口孔330cに嵌入されている。圧入され嵌合された係合部材330は、図19Bおよび図19Cに矢印Cで示すように、カバー30の中央位置で上下動可能である。また、パネル20の係合孔220は、係合部材330の先端部330bを受け入れてこれを係合可能な位置および大きさに形成されている。
そこで、図19Cに矢印Aで示すように直線部カバー30を開いて開状態に維持しようとする際、頭部330aを指等で軽く押圧すれば、図19Dに示すように係合部材330の先端部330bはパネル20の係合孔220に受容されてこれに簡単かつ確実に係合される。
このように、係合部材330は、合成樹脂等の別部材の成形品であるため、安価で構造が簡単で製造が容易であり、カバー30の開状態を簡単に維持し、操作性が向上し施工が容易である。
上述の態様は、カバー部材開状態維持機構が係止構造あるいは係合・突起構造で実現されていた。本発明は、勿論これらの特定の態様に限定されるものではなく、カバー30の表裏面やパネル20の上面等のいずれか一方または両方に、すなわち任意の位置に係止部・被係止部ないし係合部・被係合部をそれぞれ設けてもよい。要は、カバー30の開操作により、カバー部材を開状態に係止・係合構造等によって維持であればよい。
カバー部材開状態維持機構を接着・粘着構造で実現する態様は、図11A〜図11Cに示すように、接着および(または)粘着作用を有する接着・粘着材330により構成され、これは、直線部カバー30およびパネル20の周縁部の少なくともいずれか一方に設けられている。接着・粘着材330は、本態様では同図に示すように、接着テープ材や粘着テープ材から所望のサイズに形成され、直線部カバー30の2つのヒンジ部301の間の略中央部にある前述の多数配列されたスリット状開口部305の1つに貼り付けられている。または、図示しないが、パネル20の周縁において、直線部カバー30が開状態のときにその上面が接する領域部分230に貼り付けてもよい。
直線部カバー30に接着・粘着材330を貼り付ける場合、そのサイズや厚さに応じた凹部330bを、図示のようにカバー30に形成して、これを貼付けの位置決めに利用し、また接着・粘着の安定性を得ることができる。この凹部330bは、パネル20の縁部における所望の領域部分230に同様にして設けてもよい。
接着・粘着材330には、両面接着テープ、両面粘着テープ等、任意の接着または粘着材が適用される。これらは、直線部カバー30が開状態でパネル20の周縁部の上面に接して維持される程度の接着力が得られればよい。勿論、埃やごみの付着、温度・湿度の変動や経時変化に比較的強い接着材や粘着材を用いるのがよく、サイズも、例えば約1cm〜2cm角程度で、厚さ約0.5mm〜1.5mm程度の方形状や円形状のものが有利である。また、直線部カバー30およびパネル20の材料による接着の相性を考慮するとよい。
この態様では、適切な接着・粘着材330として両面接着テープ、両面粘着テープ等を適用すれば、比較的簡単な構成で、場合によっては、貼付けのみにより直線部カバー30の開状態を維持することでき、その開閉操作性も向上する。安価な接着・粘着材330を所望のサイズに形成して貼り付ける作業で十分であり、トータルコストを抑えることが可能である。
上述の態様ではカバー部材開状態維持機構に接着・粘着構造が適用されている。しかしこれは、他の構造、たとえばファスナ係合構造でもよい。例えば、テープ状、条片状またはシート状などの雄片および雌片の組合せからなるファスナ係合構造が有利に適用される。例えば、ファスナ雄片が直線部カバーの側辺部分に延在して取り付けられた態様では、直線部カバーが開状態にあるとき、カーペットに装着されている雌片に、またはカーペットのパイル自体にこれが係合することができる。
さて、カバー部材開状態維持機構を磁気吸着構造で実現する態様がある。これは、直線部カバー30またはパネル20の周縁部の少なくともいずれかに設けられた磁性材または磁石340を有し、磁界発生作用を有する磁気吸着構造として機能する。例えば、磁石340を直線部カバー30に設けた適用例では、図12A〜図12Cに示すように、磁石340は磁石収容部340aに収容される。より詳細には、磁石収容部340aは、カバー30の裏面側に設けられた磁石挿入口340bと、その上面側に形成された開口部340cを形成する開口縁部340dとで構成されている。磁石340は、図12Aおよび図12Bに示すように、磁石挿入口340bから挿入されて開口縁部340dで係止され、直線部カバー30の上面側で開口部340cから露出するように、収容部340a内に固定される。
これにより、カバー30の上面には、磁石340の磁界領域が十分に形成される。この磁気作用により、図12Cに示すように、直線部カバー30を矢印Aでしめすように手で操作して閉状態から開状態にすると、直線部カバー30の上面がパネル20の上面に吸引されて当接し、開状態を容易かつ確実に維持することができ、その後の配線敷設、施工作業が効率化される。
前述したようにこの本実施例では、パネル20は、鋼板などの常磁性金属製であるため、磁石340が十分に吸着する。しかし、パネル20自体が金属以外の材料で形成されている場合でも、磁気で吸引される他の磁性材料、または磁石340と極性が反対の磁石等をそのパネル20に設けてもよい。この場合、逆に直線部カバー30に金属や磁気で吸着される他の磁性材料等を設けてもよい。
この態様では、磁石340は、カバー30の2つのヒンジ部301の間の略中央部分に1箇所設けられた磁石収容部340aに一体成形で配設されている。しかし、これに限らず、例えばヒンジ部301の近傍位置にそれぞれ1箇所ずつ設けてもよい。また、磁石340の固着構造も特定の態様に限定されるものではなく、他の、例えば圧入による構造やインサート成形で内部に収容する構造であってもよい。さらに、磁石の固定に接着剤を用いる場合には、例えば、所望の部位に接着剤溜り部を設けて磁石340を確実に固定するようにしてもよい。また、磁石340も、上述の態様のようなボタン型形状や略円柱型形状に限らず、シート状、ラベル、テープ状でもよい。
このような構成によれば、開状態から閉状態へ復帰するヒンジ部301の反動に抗して、直線部カバー30の上面がパネル20の上面に吸着され、開状態に容易に維持される。かくして、磁気作用による吸着で開状態の操作をごく自然に行なえ、カバー30をパネル20の定位置に維持させることができる。
本実施例では、直線部カバー30は、例えば軟質あるいは硬質のゴム系材料、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂、ビニル系樹脂、合成樹脂、その他の軟質もしくは硬質樹脂などの材料で形成される。突起部303や補強用リブ304の間に設けられた多数のスリット状の開口305によりそれらの開口305の近傍に厚肉部分が形成されるので、カバー30の強度を確保できる。
交差部カバーの説明
図3に戻って、交差部カバー40のカバー部材開閉機構は、基本的には、パネル隅部207にてパネル20を連結する連結部404を備えている。交差部カバー40の形状は、開閉を許容するヒンジ構造をなす連結機構を利用して直線部カバー30および交差部カバー40を開閉操作した際、直線部カバー30の端部と交差部カバー40の周縁部とが相互に干渉しないに構成されている。
本実施例において、交差部カバー40は、図1〜図4、図10〜図12C、および図15A〜図16に示すように、前述した配線経路50の交差部、すなわちパネル20の隅部の集合位置に設置される。その端部には、パネル20を連結する連結部404aにより開閉を許容する連結機構としてヒンジ構造が設けられている。
交差部カバー40は、図13A〜図15Bに示すように、基本的には、その上面側にあって全体として略板状の基体をなす金属材401と、その下面側にあって弾性を有する樹脂材402とからなり、それらが重合われた複合材構造である。これらは、一体化され、上面側から見ると略異形八角形の平面形状をなし(図15A)、側面形状は下方、すなわち建物の床基材側に突出した略凸型形状をなしている(図15B)。
交差部カバー40のヒンジ構造はヒンジ部404を含み、前述した直線部カバー30のヒンジ構造のヒンジ部301および310と基本的に共通の構成、作用・効果を有する。より具体的には、図3、図4および図14A〜図18に示すように、カバー40の一端部側に突出して一体成形された1つのヒンジ部404と、パネル20の4つの隅部の1つにおいてヒンジ部404に係合するヒンジ係合孔205とからなる。ヒンジ係合孔205は、支持脚挿入孔203より周縁部に近い位置で段差202の近傍に形成されている。
金属材401は、例えば鋼材やアルミ材または鋼板等の金属製であり、図13Aおよび図13Bに示すように、その上面が平坦に形成された略異形八角形の平面形状である。その裏面には、下方に突出した爪状の複数の凸部401aが形成され、これによって下面に樹脂材402が嵌め合わされて重合し、これと一体化される。
図示の例では、凸部401aは、4箇所に所定間隔で突設されている。鋼板製の場合、凸部401aは、プレス打抜き折曲げ加工で形成される。その位置は、例えば集合する各パネル20の隅部周縁207へ係合可能なように、パネル20に対応している。
樹脂材402は、前述した直線部カバー30と実質的に同じ材料でよい。樹脂材402は、例えば硬質ゴム等のゴム系材料、弾性材料、ポリプロピレン(PP)やABS樹脂、ビニル系樹脂、合成樹脂、その他軟質・硬質樹脂材料等を含む合成樹脂で形成される。その形状は、図14Aに示すように、例えば射出成形等で一体成形され、金属材401と略同一である。その裏面側には、補強機能を有する縦横の格子形状ないし十字状の突出部403が、図示のようにリブ状に形成されている。金属材401をこれに重合させると、凸部401aを差し込み式で受け入れてこれに係合し、嵌め込まれるように、リブ形状の突出部403の対応する位置で内方に対応する数の孔状の凹部403aが形成されている。
凹部403aに凸部401aが嵌挿されて一体的に組み立てられた突出部403aは、交差部カバー40が集合するパネル隅部にヒンジ部404で装着されると、そのパネル20の隅部周縁207と接して係合する。より詳細には、突出部403aは、図10、図12Cおよび図13Bの側面図に示すように、パネル隅部に落とし込みにより嵌り込む機能部である。とくに、下方周縁部には、テーパ部403b(図14D)が形成され、交差部カバー40の装着で嵌り込んだ際、圧入され、そのパネル隅部周縁部207で接して係合する。これによって、集合する各パネル隅部が強固に位置決め固定される。
このように、パネル隅部周縁207と交差部カバー40の側周縁すなわち突出部とが当接している係合部分は、樹脂材の凹部403aに金属材401の凸部401aが嵌合した形をとっている。そのため、カバー40が樹脂材のみで形成されていたとした場合に比して応力耐性に優れ、敷設されたパネル相互の位置ズレ防止だけでなく、耐震性をも確保することが可能である。
本実施例では、前述のように上面が金属材401で構成された交差部カバー40は、その金属材の重量により、図16に示すように、パネル20の上面に近接した位置で開状態を維持することができる。このため、交差部カバー40のヒンジ部404が設けられている一方の端部、およびこれと反対の対向する他方の端部には、前述した直線カバー30と同じような図示しない係止部や係止孔を含む係止構造を採用する必要がない。しかし、交差部カバー40が金属材401を用いずにすべて硬質樹脂材等の樹脂製で一体成形されている適用例では、より容易な、またはスムーズで迅速な開閉操作を要求する場合には、係止部や係止孔を含む係止構造を適用することが有利である。
パネルと直線部および交差部カバーを含むユニットパネル
次に、前述したヒンジ構造を用いて、パネル20と、直線部カバー30および交差部カバー40とを1ユニットに組み立てる場合をさらに詳細に説明する。
図2、図3、図4および図15A〜図16に示すように、1ユニットを形成する場合は、パネル20の周縁部相互間の配線通路50の上方には直線部カバー30が、またパネル20の隅部が集合する交差部の配線通路50の上方には交差部カバー40がそれぞれ位置するように、各カバー30および40をパネル20にヒンジ構造で連結する。
前述したように、直線部カバー30にはその一方の辺側に開閉を許容するヒンジ部301または310が、また交差部カバー40にはその一端部側に開閉を許容するヒンジ部404または410がそれぞれ設けられている。直線部カバー30および交差部カバー40のヒンジ部301または404、および310または410にそれぞれ対応するヒンジ被係合部(ヒンジ係合孔)204および205は、図4に示すように、パネル20の直線部カバー30が隣り合って設けられない2辺側と、パネル20の2辺側の交差部カバー40が設けられる隅部とに、それぞれ設けられている。これにより、直線部カバー30および交差部カバー40を矢印Hのように操作して開けても、2つのカバー30および40が相互に干渉し合うことがなく、開閉操作や施工性が確実に向上する。
図2、図4および図15A〜図16を参照すると、交差部カバー40の平面内において上下左右の位置には、他の隣接する直線部カバー30が設置される。しかし、直線部カバー30と交差部カバー40とでは、それぞれの開閉方向が異なるため、その開閉時にカバー30および40同士が直接干渉することはない。
ここで要約すると、本実施例では、交差部カバー40が略異形八角形の平面形状である。このため、連結機構としてのヒンジ構造を適用して相互に隣接する直線部カバー30および交差部カバー40を開閉動作させた際、その直線部カバー30の端部(図16における部分E)と交差部カバー40の周縁部(同じく部分F)とが相互に干渉することがない。
より詳細には、図16に示すように、交差部カバー40の四隅は、集合するパネル隅部周縁207の段部202の領域に載置される。このカバー40は、仮にパネル相互間の直線部分の段部201の領域にまで及ぶように構成したとすると、集合するパネル隅部の嵌合・係合領域が拡大してしまう。そのため、強度および耐震性は向上するであろう。しかし、それ故に交差部カバー40が略正八角形状をとらざるを得ず、サイズも大きくなるであろう。したがって、相互に隣接する直線部カバー30と交差部カバー40とを連続的に開閉操作すると、図16に示すように直線部カバー30の端部の部分Eと交差部カバー40の周縁の部分Fとが相互に干渉して接触し、カバーの開閉動作を妨げてしまうであろう。
しかし本実施例では、このような事態を防止すべく、同図に破線および斜線で示す領域Gのように、パネル隅部207の段部202だけで最大限に交差部カバー40の四隅を支持するように、交差部カバー40の辺側に対し四隅のみを延在させている。こうすることにより、交差部カバー40は、八角平面形状の各辺の長さが均等でなく、異なる略異形に形成されている。
これによって、交差部カバー40を確実に係合可能としている。したがって、直線部カバー30および交差部カバー40を開閉操作しても、図16に示すように、部分Fにてカバー30および40同士が接触したり、引掛ったり、当接したりすることがなく、開状態および閉状態を維持する。このように、直線部カバーおよび交差部カバーをスムーズで迅速に開閉操作することができる。
このようなパネル隅部207の段部202だけで交差部カバー40の四隅を支持する構成でもまた、前述した落とし込みに嵌り込む部分の凸部401aおよび凹部403aに係合、嵌合する構成と相まって、十分な固定強度とその安定性、耐震性を得ることが可能である。
なお、直線部カバー30の部分Aの端部をその幅が狭くなるように形成し、あるいは端部を滑らかな形状に形成したりして、カバー30および40同士が接触したり、引っ掛ったり、当接したりしないようにしてもよい。
他の実施例
パネル20の四隅部の配線通路50の交差部に嵌る交差部カバー40の係合部401aは、例えばパネル20の側周部を囲繞する弾性樹脂材402で覆われるように弾性樹脂材402を形成してもよい。これにより、係合部401aは、パネル四隅部の周縁207の被係合領域に樹脂材402を介して係合する。こうして、従来の欠点であった過度にきつい、または緩い係合が生ぜず、係合部分に弾性・樹脂部分を圧入して確実に係合することが可能である。この場合、係合部分がストッパとして機能し、交差部カバー40の位置決め固定を簡単かつ確実に行なうことができ、集合する4つのパネル20の隅部の相互作用等により良好な耐震性が得られる。こうしてパネル20の隅部周縁207や段部202に嵌った弾性樹脂材402はまた、緩衝材としても機能し、金属材401に起因するガタツキ音が防止される。
支持脚ユニット10から立設する支持脚102でパネル20が相互に固定支持され、かつ4枚のパネル20の隅部202が交差部カバー40で上方から押さえ付けられる。これとともに、交差部カバー40の係合(嵌合)部分が、集合する箇所の各パネル20の隅部周縁207の相互の被係合(被嵌合)領域に上下方向へ係合、嵌合する相乗効果により、パネル20の水平方向等へのズレや移動が規制され、耐震効果が得られる。
交差部カバー40は、上述の実施例では、別体の金属材401と樹脂材402とを嵌挿して、容易に離脱しないように圧入する構成であった。しかし、必ずしもこれに限定されず、例えばインサート成形等により一体成形してもよい。
上述の実施例ではまた、図13A〜図15Bに示すように、交差部カバー40は、凸部401aを凹部403aへ嵌合させて、すべて弾性樹脂材402等で覆っている。しかし、必ずしもその必要はなく、例えばパネル20の隅部周緑207に接する箇所で、凸部401aの先端を除いて側周部分のみを弾性樹脂材402で囲繞するように弾性樹脂材402を形成してもよい。
直線部カバーの切断可能位置指示部での切断
次に、本実施例におけるヒンジ部(ヒンジ構造)の開閉操作を詳細に説明する。例えば、建物の床に先行配線が行なわれた施工後にレイアウト変更等に伴う配線類の移・増設等の変更が生じた場合は、直線部カバー30および交差部カバー40の開閉作業を行なって、新たに配線敷設を行なう。その場合、前述したように、ヒンジ部301および404によるヒンジ構造で開閉可能な直線部カバー30および交差部カバー40を所望の配線経路(ルート)に沿って順次、開けてゆく。この開操作では、交差部カバー40の上面がパネル20の隅部の近傍領域の上面側に来るように配置して、開口状態を維持させる。
その際、直線部カバー30は、パネル20の上面に接するように開状態を維持させることができる。これは、上述したように、カバー部材開状態維持機構である係止作用を有する係止構造(係止爪)、係合作用を有する係合突起構造(係合突起)、接着作用を有する接着・粘着構造(両面テープ)、および(または)磁気作用による磁気吸着構造(磁石)による。
上述のごとくカバー30および40を開状態にすることで、図16および図17に示すように、所望の配線経路に沿って配線通路50の上方は連続して開口され、その上方から配線類を落とし込んで敷設することができる。
このようなカバーの開閉操作もしくは回動操作は通常、配線等を行なう電気工事者や施工業者、ユーザが行なう。ここで、図18に例示するように、予め先行配線が行なわれている場合は、直線部カバーのU字状ノックアウト開口部306を切り欠いて配線類の立ち上げを行なっていて、立上げ配線50Xが存在することがある。
ところが、そのような場合、立上げ配線50Xを開口部306から垂直に真っ直ぐ立ち上がることは、まずあり得ない。通常は、立上げ位置の都合やその状態、またはケーブルの屈曲性などの理由により左右に振られて立ち上がっている。このために、直線部カバー30を開操作しても、ケーブル50Xとの接触や引掛りが生じることが多い。こうした場合、前述したカバー部材開状態維持機構を有しているにも拘わらず、従来であれば、これが十分に機能せず、開閉操作に障害を来したであろう。
しかし本実施例では、連結機構301により自在に開閉可能な直線部カバー30を開く際、そのカバー30から配線立上げ50Xが行なわれている場合でも、切断可能位置指示部350(図11A)によりカバー30の開閉動作の阻害を回避している。
より詳細には、切断可能位置指示部350は、例えば連結機構301の略近傍の位置で直線部カバー30の上面に形成され、カバー30から所定の領域を切り欠くことができる。この切り欠かれた領域から、図18に示すように、配線立上げ50Yが可能であり、残った直線部カバー30を開閉しても、これが立上げ配線50Yに接触することなく、スムーズで迅速なカバーの開閉操作が可能である。
これによって、図示から明らかなように、直線部カバーのU字状ノックアウト開口部306の切断によって配線類を立ち上げる場合に比べて切断による方が開口領域が大きくとれる。したがって立上げ配線50Yが余裕をもって立上げ可能である。かくして、ケーブルを自在に立ち上げて屈曲させても、カバー30の端部にケーブルが接触することが最小化される。また、直線部カバー30のヒンジ部301による開閉に際しても、阻害することなく、容易かつ迅速にスムーズな開閉操作を行なうことができる。
本実施例では、このような切断を容易にするために、図8A、図11A、図16および図17に示すように、直線部カバー30の両端部に近い上面のある位置には、その端部から所定の領域を残して切断可能な切断可能位置指示部350が形成されている。切断可能位置指示部350は、図示のように、例えば文字「配線取出用切断線」(図示せず)を刻印やモールド等で表記した表示部350aと、両端部から同じ位置に形成され切断による切断工具の刃先の案内を容易にさせて切断位置を明示するVカット部350bとからなり、切断の施工作業を容易にさせている。
指示部350は、図17に示すごとく、表示部350aに文字「配線取出用切断線」を成形時に表記してもよい。または、図8Aおよび図11Aに示すように、切断ラインや区画、領域を示すシボ加工を施してもよい。要は、切断可能位置を示すうえで容易に目視可能な表記であればよい。
このようにして、切断可能位置指示部350を表記すれば、直線部カバー30は、図示のように比較的幅の狭い厚さでも、それほど厚くない樹脂材を用いて構成することができる。したがって、Vカット部350bから切断工具、例えばハサミやカッタの刃を入れて容易に切断することができる。
こうして、一様に多数敷設されたパネル20の四隅部207の少なくとも1つの隅部において、ケーブルの配線立上げYが自由自在に可能である。しかも、カーペットの角部分を剥がすだけで、交差部カバー40も含めてその交差部において、まとまった多数のケーブルを一括して立ち上げることができる。また、カーペットの縁部からケーブルの立上げを容易に行なうことができる。しかも、再三の配線変更や移増設する際にも、カーペットをめくってカバー30および40の開閉操作がスムーズかつ迅速に行なうことが可能であり、従来に比べて施工が極めて容易である。
本実施例では、図17に破線412や一点鎖線414で示すような仕上げ材としてのカーペット敷設基準ラインを示す文字「カーペット目地線」(図示せず)とほぼ共通する位置に表示部350aが併記されている。勿論、このような態様に限定されるものではない。
直線部カバーの色分け
ところで、直線部カバー30は、その表側、すなわち敷設した際の上側面が着色され、配線通路50に収容される配線の種類をこれによって可視表示するように構成してもよい。
より詳細には、例えば、電力線などの強電配線を収容する配線通路50を覆う直線部カバー30は黒色に、また情報線などの弱電配線を収容する配線通路50を覆う直線部カバー30はこれとは異なる他の色、例えば青色に施色する。
この施色は、上述の樹脂材料に顔料を混入させて直線部カバー30を成形したり、成形後の直線部カバー30の表側面を上述の色の樹脂膜で被覆したり、塗料で塗装したりしてもよい。このような色分け表示により、配線通路50に収容される配線の種別を一目で判別することができる。
この種の技術では、従来技術である配線通路底部への塗装などのマーキングによって配線通路の区分表示をする方法に比べ、以下の特有の効果を奏する。
まず、直線部カバー30を着脱したり開閉したりすることなく、配線通路50内の配線種別を認識できる。これにより、例えば入線部に近い位置では通常、大量の配線がなされるが、それらが床の上に出る部分、すなわち立上り配線に、従来技術の欠点であったマーキングが隠れて配線種別が識別不能になるという恐れがない。
また、直線部カバー30は、着脱可能に構成されているので、現場の状況に応じて該当する配線種別の色表示のカバーに変更可能である。例えば、弱電区分として色表示された位置から強電線を立ち上げなければならない状況にあっても、配線立上り部は位置が特定できるため、施工現場でローカルに直線部カバー30を適切な色表示のものに交換することができる。
さらに、直線部カバー30は通常、ケーブルの布設前に所期の色表示のものを配設する。しかし、勿論、ケーブルの布設後、配線種別の実態に合った色表示のものに付け替えることも可能である。
上述した実施例では、配線種別を直線部カバー30の表面の色表示によって判別することができる。しかし、これのみに限定されず、色表示に加えて、またはこれに代わって、直線部カバー30の上側面の形態をパネル20のそれと、例えば面模様、疎面/平滑面、エンボス、凹凸など、他の表示方法で異ならせてもよい。
勿論、直線部カバー30のみでなく、交差部カバー40についても、同様の色表示ないしは配線種別表示を施してもよい。さらに、上述の例は、強弱電に応じた分類であったが、弱電線を弱電源線および通信線のように細分したり、別な分類の仕方をしてもよいことは、言うまでもない。
前述したように、異種配線に応じて直線部カバー30を色分け区分した実施例では、直線部カバー30が開操作により開状態を維持可能に構成されている場合、配線の移増設時に所望のタイルカーペットを剥して、当該色区分に色分けされた一連の直線部カバー30に従って配線経路50をたどり、前述したヒンジ機構によってそれらを開いて、開状態に維持することができる。
こうして、配線ルートに沿って、パネル20の上面に直線部カバー30が裏返しで固定される。同じ色の開状態の直線部カバー30は、開いた状態にも拘わらず、作業者を配線経路50にそのまま案内し、つまり配線経路50をその色によって指示することができる。したがって、電気工事者やユーザは、配線経路50を容易に把握することができる。
従来技術では、ヒンジ機構が設けられていないため、カバーを一旦開いたり外したりすると、カバー30が周囲に散乱しがちであり、それらを離脱させて積み重ねるのが常套であった。それ故に、配線経路50を認識し難いという問題があり、配線の変更、移増設や敷設施工、カバーの再設置などの作業が煩雑であった。しかし、本実施例では、これらの問題を一掃することができる。
実施例の効果
このようなカバー部材開閉機構を備えた二重床構造の実施例は、とりわけ以下のような主な効果を有する。
(1) 直線部カバー30および交差部カバー40をパネル20に装着する構造は、ヒンジ部301、404およびヒンジ係合孔204、205からなるヒンジ係合構造と係止部302および係止孔206からなる係止構造とを基本構成としているため、構造を複雑化させることなく、加工・製造、施工が容易である。
(2) 直線部カバー30および交差部カバー40には、硬質・軟質樹脂、その他のゴム等を含む弾性材料を用いることが可能であり、安価でかつ容易に加工・製造できる。また、これらの材料により、ヒンジ構造、嵌合・係合構造、係止構造を構成する部分が一体成形で可能であり、安価かつ容易に加工・製造できる。
(3) 直線部、交差部カバー30および40は、樹脂材や弾性材で形成することにより、小型化や軽量化を図ることができる。これによって、カバーの開閉動作を容易に行なうことができ、施工作業も容易かつ効率的である。
(4) ヒンジ構造により直線部カバー30および交差部カバー40が容易に開閉可能であるので、施工状態において、パネル20の隅部の交差部カバー40を開状態に、さらに隣り合う2つの直線部カバー30を開状態に維持すれば、配線通路50の開口部分に直接手を入れて1ユニットとしてパネル本体を持ち上げ、簡単に着脱することができる。これにより、パネル20の下方における配線器具の設置や配線変更が容易である。
(5) 直線部カバー30および交差部カバー40は、ヒンジ係合構造でパネル20に一旦結合されれば、容易に離脱したり損失したりすることがなく、カバー30および40の取扱いが簡単で着脱も自在かつ容易である。
(6) 交差部カバー40は、金属材401と弾性樹脂材402または樹脂材や弾性材との重合で構成されているので、金属材401に薄い鋼板材を使用して小型化、軽量化を図れるとともに、低コストで十分な強度を得られる。
(7) 交差部カバー40は、上述のような重合構成であるので、金属材の自重により直線部カバー30に比べて簡単にその開状態を維持することでき、したがってヒンジ部の設計が比較的容易である。
(8) 実施例では、交差部カバー40は、弾性樹脂材402を金属材401の底面に貼設し、重合したものであった。しかし、直線部カバー30も同様に、弾性樹脂材403を金属板401の底面に貼設し、重合した構成でもよく、これによりカバー30の強度をより向上させることができる。
(9) カバー30および40がパネル20にヒンジ連結されているので、パネル20の向きを所望の一方向に維持することができる。したがって、設置した元の位置へ戻す施工作業が簡単であり、例えば経時変化等によるパネル20の歪やそり等のクリープ現象が生じても、容易に元の敷設向きにパネル20の敷設方向を合わせて元通りに設置でき、再設置に伴う不陸再調整が不要である。