JP2008061571A - 飼料用液状油脂の製造方法および配合飼料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡易な工程で、原料油の質によらず、ダイオキシン類のような有害物質およびその他の不純物・異物の除去に高い効果を発揮し、高品質で安全性の高い飼料用液状油脂および配合飼料を製造することを目的とする。
【解決手段】 酸価20以下の魚油を加温して、10℃以上温度を低くした水または温水を用いて洗浄する第1の水洗工程、水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程、アルカリ処理した油を分離し、加温して、10℃以上温度を低くした温水を用いて洗浄する第2の水洗工程、水洗した油を加温して水分を蒸発させる脱水工程、脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する吸着処理工程、吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離するろ過工程とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 酸価20以下の魚油を加温して、10℃以上温度を低くした水または温水を用いて洗浄する第1の水洗工程、水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程、アルカリ処理した油を分離し、加温して、10℃以上温度を低くした温水を用いて洗浄する第2の水洗工程、水洗した油を加温して水分を蒸発させる脱水工程、脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する吸着処理工程、吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離するろ過工程とを有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、魚油に含まれる有害物質、特にコプラナーPCBを含むダイオキシン類や不純物等を除去して、飼料用として好適に用いられる液状油脂を製造する方法、さらにはこれを用いた配合飼料に関する。
養殖技術の発達により、今日では養殖魚介類が天然魚介類に代わる重要な食材として活用されている。一方、食品の安全性についての関心が高まっており、食材を通して摂取される有害物質の量に対する要求が厳しくなっている。例えば、海洋汚染等により、天然魚介類にダイオキシン類のような有害物質が含まれることがあり、これに由来する魚油を飼料用液状油脂とした配合飼料を用いることで、養殖されている魚介類においても、有害物質が蓄積されるおそれがある。
ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)およびポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、さらにコプラナーPCB(Co−PCB)といった物質に対する総称で、これらダイオキシン類の耐用一日摂取量は4pg−TEG/kg体重/日とされている(TEG:毒性等価係数を換算係数として算出される毒性等量)。厚生労働省の調査によると、一般的な食生活で取り込まれるダイオキシン類の量は、耐用一日摂取量を充分下回るものであり、健康に影響を与えるものではないと考えられているが、そのうち魚介類からの摂取量割合が多いことが懸念材料となっている。
一般に飼料用液状油脂は、原油となる魚油に溶け込んでいる不純物を、水洗いや酸・アルカリによる処理工程において除去し、さらに脱色・脱ろうといった処理を行って得られる、液状の精製油である。精製までの処理工程は、原油のダメージ度合いや、要求される品質に応じて種々の変更が可能であるが、現状では、油脂に含まれるダイオキシン類を除去するための工程は付加されていない。
一方、食品用油脂は、品質規格が酸価(AV)や水分、過酸化物価(POV)等により厳密に定められており、食用として適した油脂となるようにさらに処理される。通常は、油脂を150〜170℃程度に加熱して触媒を加え、不飽和脂肪酸に水素を付加する水素添加工程、および260〜300℃程度の高温減圧下で水蒸気蒸留する脱臭工程等が追加され、風味や安定性を向上させる。これら過程を経た食品用油脂には、ダイオキシン類が低減化していることが知られており、水素添加工程で使用される触媒の作用によって、油脂に含まれるダイオキシン類が除去されると推測される。また、脱臭工程では、高温処理により有臭成分に加え、過酸化物等の分解除去が可能とされる。
ただし、食品用油脂における水素添加のように油脂を硬化させる反応は、液状油脂の製造には適さず、触媒の使用は製造コストを増大させる。また、養殖用の配合飼料とするには、魚臭が残存している方がよく、高温処理により酸化劣化しやすくなることから、脱臭工程は必要な処理とはいえない。そこで、魚油から飼料用液状油脂を製造する過程でダイオキシン類等の有害物質を除去し、より安全性の高い高品質の飼料用油脂を製造することを検討した。また、このような飼料用液状油脂から製造した配合飼料により、養殖魚の安全性が飛躍的に向上することが期待できる。
従来技術として、例えば特許文献1には、ダイオキシン類の含量の低い魚油を製造する方法が開示されている。この方法は、魚油を、a)酸またはアルカリで精製し、b)冷間清浄澄化し、c)減圧下に40〜100℃の温度で活性炭とともに撹拌し、d)20〜40℃に冷却し、e)活性炭を分離し、f)減圧下に熱いスチームで0.5〜20時間脱臭し、g)20〜70℃に冷却する方法である。
特表2002−517601号公報
また、特許文献2には、魚油中の有機塩素系汚染物質の含量を低減させる方法として、a)温度範囲が30〜95℃の減圧下で、魚油を活性炭と接触させる工程と、b)魚油から活性炭を分離する工程とを有し、中和および/または脱ろうの前工程を含まない方法が開示されている。
特表2004−504442号公報
しかしながら、特許文献1の方法は、減圧下での活性炭との撹拌、冷却、分離の後、再び減圧・スチーム下での脱臭といった工程が複雑で、工程数が多い。また、脱臭工程で魚臭が除去される不具合がある上、減圧のための真空ポンプや減圧に耐える容器が必要で、装置が大がかりとなる。これは、特許文献1が飼料用油脂の製造を目的とする方法でないためで、この方法では、製造に手間と時間がかかり、コストが増大する不具合がある。
また、特許文献2の方法は、簡易な方法で、費用をかけずに家畜飼料用の品質等級の魚油を提供しようとするもので、最小限の処理しかなされない。ところが、前処理をしないため、原料油の質によっては、飼料用油脂として必ずしも充分な品質が得られるとはいえず、また、減圧下での処理であるため、特殊な装置を必要し、製造コストが増加する特許文献1の方法と同様の問題があった。
さらに、特許文献2の方法において、より高品質の精製油を得るために、活性炭処理を繰り返したり、シリカ吸着剤による前処理を行う方法も例示されているが、処理工程数が増え、作業性が低下する。このように、得られる精製油の品質を向上させようとすると、他の処理工程を付加せざるを得ず、最小限の処理で所望の品質を実現することは容易でない。
このため、ダメージの大きい原油を用いた時にも有効で、ダイオキシン類の低減だけでなく、他の不純物・異物を確実に除去して、飼料用として充分な品質の液状油脂を、安価に得る方法が望まれている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複雑な工程や特殊な装置を必要とすることなく、また原料油の質によらず、ダイオキシン類のような有害物質およびその他の不純物・異物の除去に高い効果を発揮して、高品質で安全性の高い飼料用液状油脂を得ること、さらにはこれを用いた配合飼料を製造することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルカリ処理と水洗および脱水処理を適切に行い、活性炭による処理と組み合わせることにより、原油に含まれるダイオキシン類等の有害物質を低減し、かつ不純物・異物等の除去に高い効果を発揮することを見出した。すなわち、本願請求項1の発明は、
魚油に含まれる有害物質を除去して飼料用の液状油脂を製造する方法であり、
原料油として酸価20以下の魚油を用い、
この魚油を加温して、これより10℃以上温度の低い水または温水を用いて洗浄する第1の水洗工程と、
水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程と、
アルカリ処理した油を分離し、加温して、これより10℃以上温度の低い水または温水を用いて洗浄する第2の水洗工程と、
水洗した油を加温して水分を蒸発させる脱水工程と、
脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する吸着処理工程と、
吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離するろ過工程とを有する。
魚油に含まれる有害物質を除去して飼料用の液状油脂を製造する方法であり、
原料油として酸価20以下の魚油を用い、
この魚油を加温して、これより10℃以上温度の低い水または温水を用いて洗浄する第1の水洗工程と、
水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程と、
アルカリ処理した油を分離し、加温して、これより10℃以上温度の低い水または温水を用いて洗浄する第2の水洗工程と、
水洗した油を加温して水分を蒸発させる脱水工程と、
脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する吸着処理工程と、
吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離するろ過工程とを有する。
原料となる魚油は、第1の水洗工程で、夾雑物や水溶性不純物が除去される。この時、洗浄用の水または温水の温度を、魚油より10℃以上低くすると分離が容易になる。次いで、アルカリ処理工程で、遊離脂肪酸を中和するとともに、リン脂質、ガム質といった不純物を除去する。第2の水洗工程は、アルカリ処理時の残留石鹸やアルカリ分を除去し、続く脱水工程を安全に行うために重要で、同様に温度差を10℃以上設けると分離が容易になる。
これらの処理を適切に行った後、活性炭および活性白土で処理することにより、魚油に含まれる有害物質を効果的に除去し、不純物をさらに除去して品質を向上させることができる。その後、活性炭および活性白土をろ過して製品油とする。この際、粒径が小さい活性炭のみでは作業がしにくいが、活性白土を併用することでろ過性が大きく向上し、作業性を高める。
請求項1記載の発明によれば、簡易な工程で、原油の質によらず、ダイオキシン類のような有害物質およびその他の不純物・異物の除去に高い効果を発揮して、より高品質で安全性の高い飼料用液状油脂を製造することができる。特に、酸価20以下の魚油に有効で、減圧下での処理を必要としないので、装置構成を簡単にすることができる。よって、複雑な工程や特殊な装置が不要で、作業性に優れ、製造コストを低減できる。
請求項2記載の発明のように、具体的には、有害物質とは、コプラナーPCBを含むダイオキシン類である。
吸着処理工程における活性炭処理は、コプラナーPCBを含むダイオキシン類の低減に特に高い効果を発揮し、安全性の高い飼料用液状油脂を製造することができる。
請求項3記載の発明のように、吸着処理工程は、大気圧下で行うことができる。
前処理を適切に行った魚油は、大気圧下で活性炭および活性白土との接触処理を行うことで、有害物質および不純物を容易に除去できる。従来の方法では、減圧条件とすることで吸着効率を高めるとともに、水分や揮発性の不純物を除去しやすくしていたものと思われるが、本発明の一連の処理工程を採用することにより、減圧を行うことなく、所望の品質の精製油を得ることができる。
請求項4記載の発明のように、吸着処理工程において、まず活性炭を添加、攪拌し、次いで活性白土を添加、攪拌する。
活性炭と活性白土をこの順で添加することで、活性炭の吸着面積を効率よく利用して、有害物質の除去効率を高めることができる。
請求項5記載の発明のように、好適には、第2の水洗工程において、水または温水による洗浄を複数回行う。
アルカリ処理後に行う第2の水洗工程では、アルカリ分を除去して中性の溶液とする。この水洗を繰り返し行い、中性となるまで充分に洗浄することで、続く脱水工程を良好に行うことができる。
請求項6記載の発明のように、好ましくは、吸着処理工程において、活性炭の添加量が1.0〜8.0重量%であり、活性白土の添加量が1.0〜5.0重量%であるとよい。
活性炭の添加量は、原油中の有害物質の量に応じて増減することができるが、好適には、1.0重量%以上であると有害物質の除去に対する効果が高い。通常は、1.0〜8.0重量%の範囲で適宜設定することで充分な効果が得られる。活性白土の添加量が1.0重量%に満たないと、ろ過機の処理能力によってはろ過性を向上させる効果が得られず、5.0重量%を超えても効果に大きな差異はない。
請求項7記載の発明のように、吸着処理工程において、横回転攪拌と、循環式攪拌とを併用する。
通常の横回転攪拌に加え、装置下部から取り出した油を上部から循環させることで、活性炭および活性白土と油との撹拌を短時間で効果的に実施し、吸着処理効率を向上させることができる。
請求項8記載の発明のように、好適には、請求項1ないし8の方法で製造した飼料用液状油脂を用いて配合飼料とする。
本発明は、水産動物である魚類から採油した原油を処理して、コプラナPCBを含むダイオキシン類等の有害物質や、不純物・異物を除去して、高品質の飼料用液状油脂を製造する方法を提供するものである。本発明の方法で得られる飼料用液状油脂は、養殖魚介類用の配合飼料の製造等に利用することができる。
本発明の製造方法は、次の1)〜6)の順で行われる各工程を有する。
1)第1の水洗工程:原料油となる酸価20以下の魚油を加温して、これより温度の低い水または温水を用いて洗浄する。
2)アルカリ処理工程:水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させる。
3)第2の水洗工程:アルカリ処理した油を分離し、加温して、これより温度の低い水または温水を用いて洗浄する。
4)脱水工程:水洗した油を加温して水分を蒸発させる。
5)吸着処理工程:脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する。
6)ろ過工程:吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離する。
以下に、これら各工程について詳述する。
1)第1の水洗工程:原料油となる酸価20以下の魚油を加温して、これより温度の低い水または温水を用いて洗浄する。
2)アルカリ処理工程:水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させる。
3)第2の水洗工程:アルカリ処理した油を分離し、加温して、これより温度の低い水または温水を用いて洗浄する。
4)脱水工程:水洗した油を加温して水分を蒸発させる。
5)吸着処理工程:脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する。
6)ろ過工程:吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離する。
以下に、これら各工程について詳述する。
1)第1の水洗工程
本発明の製造方法では、まず、飼料用液状油脂の原料となる魚油を水洗する。原料は、水産動物である魚類から抽出される油であって、水産加工場、魚市場、スーパーマーケット等で魚類を加工した時に出てくる骨・皮・内蔵物等(魚アラという)を、分別工場で魚カス・魚油に分離する際に得られる魚油や、南米・北米・北欧といった世界各国から輸入される魚油を原料とする。魚種は、特に問わず、例えば、アジ、イワシ、タラ、マグロ、雑魚等、種々の魚類から得られる魚油が使用できる。
本発明の製造方法では、まず、飼料用液状油脂の原料となる魚油を水洗する。原料は、水産動物である魚類から抽出される油であって、水産加工場、魚市場、スーパーマーケット等で魚類を加工した時に出てくる骨・皮・内蔵物等(魚アラという)を、分別工場で魚カス・魚油に分離する際に得られる魚油や、南米・北米・北欧といった世界各国から輸入される魚油を原料とする。魚種は、特に問わず、例えば、アジ、イワシ、タラ、マグロ、雑魚等、種々の魚類から得られる魚油が使用できる。
原料となる魚油の品質は様々であり、一般に、油脂中の遊離脂肪酸含量を示す酸価が、品質評価の指標として用いられる。本発明の方法によれば、酸価5以下の比較的良質な魚油のみならず、よりダメージ度合いの高い魚油であっても、充分処理可能である。処理可能な原料油の目安としては、酸価20以下の魚油であれば、有害物質および不純物を除去して、飼料用油脂として充分な品質の精製油を得ることが可能である。なお、酸価に対応する国際的指標としてFFAが用いられており、通常、酸価20はFFAで約10%程度に相当する。
このような原料油には、除去しようとする有害物質に加え、魚油を得る過程で混入ないし生成する種々の不純物が含まれる。ここで、第1の水洗工程として魚油を水洗する目的は、魚油中に含まれる固形物・ゴミ等の夾雑物や、タンパク質、水溶性不純物等を洗い落とすことにある。水洗方法は、魚油を攪拌しながら40〜80℃に加温し、水を投入する。魚油の温度が80℃より高くなると、油以外の物質の比重差で、浮き上がるものと沈むものに分離して、作業がやりづらくなる。好適には、魚油の温度が70℃前後とするとよい。
使用する水は、温水または冷水(常温水)とし、魚油の温度より10℃以上低く設定する。温度差を設けることで水と油が分離しやすくなり、夾雑物や水溶性不純物を水に抱き込ませるようにして沈降させることができる。好適には、40℃以上低く設定すると、より効果的である。水の使用量は、魚油の重量または容量に対して10〜50%の範囲とし、好適には、10%前後とするのがよい。また、使用する温水または水に塩(食塩)を1〜5%溶かした塩水を用いることもできる。塩水を使用するのは、油中の水切りをよくする目的がある。
水の投入は、シャワーリング式が効果的であり、魚油を70℃前後に加温、攪拌しながら、温水または水をシャワーリング式で投入後、3〜15分程度攪拌して、静止させる。静止時間は、30〜120分程度ないしそれ以上とする。作業工程上、一晩静置させることもある。静止させた状態では、上層部に油が、中間層部に不純物と異物が、下層部に水洗水が分離されて位置する。
2)アルカリ処理工程
次に、水洗した魚油をアルカリ処理する。
アルカリ処理は、魚油中の遊離脂肪酸を除去するだけでなく、リン脂質、ガム質、色素成分、油溶性タンパク質、金属成分、その他不純物を除くために行うものである。アルカリ処理が適切でないと、収率が悪くなったり、脱色効果が出なくなったり、品質上の欠陥原因となる。なお、本発明で原油の酸価を規定しているのは、酸価が高いと、中和に必要なアルカリ量も増え、処理中に中和された石鹸分が、脱酸油をもケン化させて、全てが石鹸化されてしまうケースが起こり得るからである。
次に、水洗した魚油をアルカリ処理する。
アルカリ処理は、魚油中の遊離脂肪酸を除去するだけでなく、リン脂質、ガム質、色素成分、油溶性タンパク質、金属成分、その他不純物を除くために行うものである。アルカリ処理が適切でないと、収率が悪くなったり、脱色効果が出なくなったり、品質上の欠陥原因となる。なお、本発明で原油の酸価を規定しているのは、酸価が高いと、中和に必要なアルカリ量も増え、処理中に中和された石鹸分が、脱酸油をもケン化させて、全てが石鹸化されてしまうケースが起こり得るからである。
処理方法は、1)の水洗工程後に中間層部と下層部を抜き取って上層部の油だけを残したものを、攪拌しながら40〜80℃に加温し、アルカリを投入する。この時、油の酸価を測定してアルカリ必要量を計算し、アルカリ濃度を調整する。アルカリとしては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムが一般的に使用され、ボーメ比重で8〜30度Beのものを使うとよい。原料油の種類により異なるが、好適には12〜26度Beのものが使用される。
油は例えば70℃に加温し、攪拌しながら、アルカリ溶液をシャワーリング式で投入する。5〜15分程度攪拌し、その後、静止させる。この過程で、魚油中の遊離脂肪酸がアルカリにより中和されて石鹸を生成する。静止時間は、60分以上とする。
3)第2の水洗工程
次に、アルカリ処理した油を再度水洗する。
アルカリ処理した油は、上部の油は脱酸油となり、下部は脱酸フーツ(油脂がアルカリにより鹸化中和されてできる金属石鹸)に分かれる。第2の水洗工程の目的は、アルカリ反応により生じた金属石鹸や、色素、過剰アルカリ等を洗い落とすことにある。水洗方法は、下部の脱酸フーツを抜き取った後、脱酸油を攪拌しながら、40〜90℃に加温し、温水または水を投入する。
次に、アルカリ処理した油を再度水洗する。
アルカリ処理した油は、上部の油は脱酸油となり、下部は脱酸フーツ(油脂がアルカリにより鹸化中和されてできる金属石鹸)に分かれる。第2の水洗工程の目的は、アルカリ反応により生じた金属石鹸や、色素、過剰アルカリ等を洗い落とすことにある。水洗方法は、下部の脱酸フーツを抜き取った後、脱酸油を攪拌しながら、40〜90℃に加温し、温水または水を投入する。
使用する水は、温水または冷水(常温水)とし、魚油の温度より20℃以上低く設定する。より大きい温度差を設けることで水と油が分離しやすくなり、水洗を効果的に行って金属石鹸等の異物を沈降除去させることができる。好適には、40℃以上低く設定すると、より効果的である。水の使用量は、油に対して10〜100%の量とする。例えば、水温が20℃前後であるとすると、魚油を70℃前後ないしそれ以上に加温することで、水洗により温度低下しても40℃以上の温度差を保つことができる。
水洗方法は、上記第1工程の水洗とほぼ同様であり、シャワーリング式で投入後、3〜15分程度攪拌して、静止させる。静止時間30〜60分毎に、下層水と中間層部を抜き取る。静止させた状態で、上層部に油が、中間層部に不純物と異物が、下層部に水洗水が分離されて位置する。
この水洗を、下層水のpHが中性になるまで、好適には2〜3回繰り返し行う。ここで、水洗する目的は、アルカリ処理により油中に残留するアルカリと微量石鹸等を洗い落とすことにあり、水洗をしないと、続く脱水時にこれらの異物が原因で、泡となり吹き上がる危険を伴ったり、品質の欠陥につながることもあり、第2の水洗工程が充分になされることは重要である。
4)脱水工程
水洗した油は、加温して水分を蒸発させる。
完全に水洗された油を攪拌しながら、90〜130℃に加温して脱水する。
脱水処理の目的は、次工程の吸着処理効率を高めることにある。脱水せずに吸着処理のための活性炭を投入すると、油中の水分を吸着してしまい、本来の効果を発揮することが困難となるため、脱水は必須工程である。また、高温で処理することにより、油に含まれる過酸化物を分解除去する効果がある。
水洗した油は、加温して水分を蒸発させる。
完全に水洗された油を攪拌しながら、90〜130℃に加温して脱水する。
脱水処理の目的は、次工程の吸着処理効率を高めることにある。脱水せずに吸着処理のための活性炭を投入すると、油中の水分を吸着してしまい、本来の効果を発揮することが困難となるため、脱水は必須工程である。また、高温で処理することにより、油に含まれる過酸化物を分解除去する効果がある。
5)吸着処理工程
脱水後、活性炭および活性白土を添加し、攪拌する。
この工程では有害物質等を吸着除去するために、添加助剤を用いる。添加助剤のうち、活性炭は、コプラナーPCBを含むダイオキシン類の吸着に高い効果を発揮する。また、活性白土は、微量成分や色素の吸着と、アルカリ処理で除去できない重金属の脂肪酸や石鹸、ガム質等の油の酸化促進物質を完全に除去するとともに、次工程のろ過性を向上させるために使用される。
脱水後、活性炭および活性白土を添加し、攪拌する。
この工程では有害物質等を吸着除去するために、添加助剤を用いる。添加助剤のうち、活性炭は、コプラナーPCBを含むダイオキシン類の吸着に高い効果を発揮する。また、活性白土は、微量成分や色素の吸着と、アルカリ処理で除去できない重金属の脂肪酸や石鹸、ガム質等の油の酸化促進物質を完全に除去するとともに、次工程のろ過性を向上させるために使用される。
ここで、一般的な油の精製において、例えば脱色効果を出すために活性炭・活性白土等を添加することは知られているが、本発明では、特に有害物質を吸着除去する目的で使用する。この時、コプラナーPCBを含むダイオキシン類の吸着に主に寄与する活性炭を先に添加し、次いで、活性白土を添加することにより、ダイオキシン類の除去率が高まるとともに、その他の不純物を除去して、より良質の精製油とする効果がみられ、これらを組み合わせて使用すると有効である。
吸着処理は、脱水された油に、まず活性炭を投入して、20〜120分程度横攪拌する。活性炭の添加量は、通常0.1重量%以上とし、添加量が0.1重量%に満たないとダイオキシン類の除去効果が得られない。好適には1.0〜8.0重量%の範囲で、魚原油中のコプラナーPCBを含むダイオキシン数値に応じて、添加される活性炭の量を増減させるとよい。通常の魚原油であれば、添加量が1.0重量%〜8.0重量%の範囲で調整することで、ダイオキシン類を除去する充分な効果が得られる。
一般に、活性炭には、石炭・ヤシガラ・竹・木材等を原料として生産される種々のものがあり、また、その粒子は、顆粒・粉末・粒状等の種類に分かれる。これらは、従来より水の浄化、空気の浄化、脱臭剤といった用途に利用されている。本発明で、ダイオキシン類の処理のために使用する活性炭としては、粒状より粉末状のものを用いるとより効果的である。また、一般的に水処理等に使われている活性炭で、充分対応可能であるが、ヨウ素吸着量や比表面積の大きいタイプのものがよい。この活性炭を先に添加すると、活性炭の吸着面積に油のみ接触されるから、効率よくダイオキシン類を吸着除去できる。
活性炭を添加後、さらに活性白土を、通常0.1重量%以上添加して、30〜120分程度攪拌する。活性白土は、食品添加物に指定される安全な物質で、油脂の脱色剤として利用され、カロチン等の色素、重金属の脂肪酸、石鹸、ガム質等や、油脂の過酸化脂質等を除去するために使用される。これら効果に加え、本発明では、ダイオキシン類の除去率を高め、粉末状の活性炭のろ過性を向上させる効果を有する。活性白土は、油中で粒子が大きく膨張するため、先に添加すると活性炭を被ってしまい、活性炭の吸着面積を有効に活用できないおそれがある。
活性白土の添加量は、好適には1.0〜5.0重量%の範囲で増減させるとよく、この数値に対して添加される活性白土の量が上記範囲となるように調整するとよい。添加量が1.0重量%に満たないと、次のろ過工程において、ろ過機の処理能力が大きいタイプの場合に、ろ布全体に助剤が行き渡らなくなり、ろ過がやりにくくなることがある。処理能力の小さいタイプであれば、通常問題は生じない。また、5.0重量%を超えると、それ以上はいくら量が増えても効果はおなじであり、脱色効果はむしろ悪くなることもある。
処理方法には連続式とバッチ式があるが、この時、バッチ式の撹拌装置として、従来の横回転攪拌に加え、新たな循環式撹拌を併用すると、より効果的である。横回転攪拌とは、容器内に配した回転羽根を水平方向に回転させて行う撹拌であり、循環式撹拌とは、容器底部に取り出し口を設け、ポンプで吸い上げて容器上部から落とし込むことで行う撹拌である。これにより、活性炭および活性白土と油中の有害成分および微量成分等との接触が増大して、吸着処理を短時間でより効果的に行うことができる。
この工程は、減圧下で行うこともできるが、常圧(大気圧)で充分な吸着効果を得ることができる。特に、横攪拌と循環式撹拌とを組み合わせた撹拌方式を採用すると効果的であり、比較的短時間に劣化させずに効率よく処理できる。また、減圧処理する場合に必要な真空ポンプや減圧に耐える撹拌容器等、特殊な装置構成とする必要がないだけでなく、第1の水洗工程から吸着処理工程までの一連の工程を、同一の装置で行うことができるので、非常に経済的である。
なお、この工程において、活性炭および活性白土以外の助剤を併せて使用しても差し支えない。例えば、活性白土は酸性であるため、使用量が多いと精製油の酸価が上がる要因となり、これを避けるために、ろ過剤としてパーライト等を併用することができる。パーライトは製品への影響がなく、ろ過性を向上させることができる。
6)ろ過工程
最後に、ダイオキシン類等を吸着させた活性炭と活性白土を、ろ過により取り除く。ろ過機は、例えば、最も多く使用されているフィルタープレスを使用することができる。他にもカートリッジ式や遠心力を利用したスパクラフィルター等のろ過機があり、液中の助剤を除去できるろ過機であれば、いずれを使用することもできる。
最後に、ダイオキシン類等を吸着させた活性炭と活性白土を、ろ過により取り除く。ろ過機は、例えば、最も多く使用されているフィルタープレスを使用することができる。他にもカートリッジ式や遠心力を利用したスパクラフィルター等のろ過機があり、液中の助剤を除去できるろ過機であれば、いずれを使用することもできる。
このようにして得られたろ過液に、必要に応じてビタミンや酸化防止剤等を添加して、飼料用液状油脂とする。
また、さらに、この飼料用液状油脂を用いて、養殖魚介類に与える配合飼料を調製することもできる。配合飼料は、通常、飼料用液状油脂10〜30重量部を使用し、魚粉70〜90重量部に配合して得られる。必要に応じて小麦粉、ビタミン剤や粘着剤等を添加することもできる。なお、ダイオキシン類は油溶性であり、原料である魚類から油を抽出した残部からなる魚粉にはダイオキシン類が含まれることはない。
このように、本発明方法で得られた飼料用液状油脂、配合飼料は、コプラナーPCBを含むダイオキシン類の含有量が極めて低く、魚介類の養殖用として高い安全性を有する。また、複雑な製造工程や製造装置を必要としないので、製造コストが低く、工業的利用価値が高い。
(実施例1)
まず、活性炭によるダイオキシン類の除去効果を、以下のようにして確認した。コプラナーPCBを含有する魚油(表1:試料1)に対して、粉末状の活性炭を1重量%、2重量%、3重量%の割合となるように添加、撹拌して、コプラナーPCBを吸着させた。吸着処理前後のコプラナーPCBの含有量を、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定した。実測濃度とこれに基づいて算出した除去率を、表1に示す。
吸着処理条件:80℃、60分
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
まず、活性炭によるダイオキシン類の除去効果を、以下のようにして確認した。コプラナーPCBを含有する魚油(表1:試料1)に対して、粉末状の活性炭を1重量%、2重量%、3重量%の割合となるように添加、撹拌して、コプラナーPCBを吸着させた。吸着処理前後のコプラナーPCBの含有量を、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定した。実測濃度とこれに基づいて算出した除去率を、表1に示す。
吸着処理条件:80℃、60分
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
表1の結果を基に作成した図1に明らかなように、活性炭の添加量に比例してコプラナーPCBの除去率が増加していることが判る。
(実施例2)
鱈原油(表2:試料2)を用いて、活性炭によるダイオキシン類の除去効果を確認する試験を行った。鱈原油に対して、粉末状の活性炭3重量%を添加し、以下の条件で吸着処理を行った。上記実施例と同様にして、吸着処理前後のコプラナーPCBを含むダイオキシン類の実測濃度およびTEQ濃度を測定し、その結果を表2に併記した。
吸着処理条件:80℃、60分
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
(実施例2)
鱈原油(表2:試料2)を用いて、活性炭によるダイオキシン類の除去効果を確認する試験を行った。鱈原油に対して、粉末状の活性炭3重量%を添加し、以下の条件で吸着処理を行った。上記実施例と同様にして、吸着処理前後のコプラナーPCBを含むダイオキシン類の実測濃度およびTEQ濃度を測定し、その結果を表2に併記した。
吸着処理条件:80℃、60分
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
表2の結果から、活性炭3重量%の添加により、原油中のダイオキシン類のTEQ濃度3.1pg−TEQ/gが、1.5pg−TEQ/gと半減したことが判る。
(実施例3)
鱈原油に添加する活性炭の添加量を1〜7重量%の範囲で変更し、上記実施例と同様にして、吸着処理前後のコプラナーPCBを含むダイオキシン類の濃度を測定し、除去量を算出したところ、表3の通りであった。また、この結果に基づく活性炭の添加量と除去量の関係を図2に示した。
鱈原油:表2の試料2と同じものを用いた
吸着処理条件:80℃、60分
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
(実施例3)
鱈原油に添加する活性炭の添加量を1〜7重量%の範囲で変更し、上記実施例と同様にして、吸着処理前後のコプラナーPCBを含むダイオキシン類の濃度を測定し、除去量を算出したところ、表3の通りであった。また、この結果に基づく活性炭の添加量と除去量の関係を図2に示した。
鱈原油:表2の試料2と同じものを用いた
吸着処理条件:80℃、60分
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
表3、図2の結果から、添加量1〜7重量%の範囲で、活性炭の添加量が増加するのに伴い除去量が増加しているのが判る。このように、活性炭の添加量と除去量は比例関係にあり、TEQ濃度では、活性炭の添加量5〜6重量%で約1pg−TEQ/gになる。なお、この値は、原油に含まれるダイオキシン濃度に依存するので、同等の効果(TEQ濃度を約1pg−TEQ/gまで低減)を得るのに必要な活性炭の添加量は、その都度増減する。
(実施例4)
実施例1ないし3の実験結果に基づき、実際に工場にて試行を行った。
原料油として、北海道周辺海域で漁獲されたスケソウダラ、サンマ、サバ、カレイ等から抽出分別された魚原油3470kgを用いて、本発明方法により飼料用液状油脂の製造を実施した。
・使用設備
ステンレス製10トン反応缶、スチーム式加熱コイル、攪拌機、循環用ギアポンプ、フィルタープレス横置き型、製品受けタンク
・加工工程
原油仕込み→温水洗い一回→アルカリ処理→水洗い2回→脱水→吸着処理(助剤添加)→ろ過→製品
実施例1ないし3の実験結果に基づき、実際に工場にて試行を行った。
原料油として、北海道周辺海域で漁獲されたスケソウダラ、サンマ、サバ、カレイ等から抽出分別された魚原油3470kgを用いて、本発明方法により飼料用液状油脂の製造を実施した。
・使用設備
ステンレス製10トン反応缶、スチーム式加熱コイル、攪拌機、循環用ギアポンプ、フィルタープレス横置き型、製品受けタンク
・加工工程
原油仕込み→温水洗い一回→アルカリ処理→水洗い2回→脱水→吸着処理(助剤添加)→ろ過→製品
図3は、本実施例の使用設備を簡略化して示すものであり、ステンレス製10トン反応缶1には魚原油が充填されており、上部穴11から撹拌機2の回転羽根21が挿通されるとともに、スチーム加熱するための蒸気導入管11が設けられている。また、反応缶1底部に設けた導出口12から抜き取った油を、循環用ギアポンプ3を設けた循環路31により、反応缶1上部穴13に還流できるようになっている。反応缶1側部には抜き取り用の導出管14が、上部には水投入用の導入管15が設けられる。循環路31は、ポンプ3下流に設けた分岐路32にてフィルタープレス4に接続され、フィルタープレス4でろ過された製品油は、管路41にてタンク5に送られる。
(原油仕込み→温水洗い)
まず、魚原油をステンレス反応缶1に仕込み、撹拌しながらスチーム加熱して、温度80℃に加温した。次に、水洗用の70℃の温水を用意し、魚油仕込み量に対して500kgを撹拌しながらシャワーリングにて投入して、5〜10分後に静止させた。約60分後に静止後、下層水と中間層部を抜き取った。
まず、魚原油をステンレス反応缶1に仕込み、撹拌しながらスチーム加熱して、温度80℃に加温した。次に、水洗用の70℃の温水を用意し、魚油仕込み量に対して500kgを撹拌しながらシャワーリングにて投入して、5〜10分後に静止させた。約60分後に静止後、下層水と中間層部を抜き取った。
(アルカリ処理)
魚原油酸価:1.3、仕込量3470kg、アルカリ試薬KOHのファクターとアルカリの過剰率により計算されるアルカリ必要量は、8.21kg(水酸化ナトリウム−固形換算)である。ボーメ計にて21度Beとなるように水にて希釈して処理用のアルカリを調整した。
魚原油酸価:1.3、仕込量3470kg、アルカリ試薬KOHのファクターとアルカリの過剰率により計算されるアルカリ必要量は、8.21kg(水酸化ナトリウム−固形換算)である。ボーメ計にて21度Beとなるように水にて希釈して処理用のアルカリを調整した。
水洗した油を70℃に加温し、攪拌しながら、アルカリ溶液をシャワーリングにて投入した。投入後、2〜5分攪拌して、静止させた。約60分以上静止させ、その後、下層部の脱酸フーツを抜き取った。
(水洗い)
アルカリ処理後の油を80℃に加温し、この脱酸油に対して約20容量%の700Lの水を、40℃に加温して攪拌しながらシャワーリングにて投入した。5分攪拌後に静止させて、静止開始から60分後に、下層水を抜き取った。この水洗を下層水のpHが中性になるまで、3回繰り返した。
アルカリ処理後の油を80℃に加温し、この脱酸油に対して約20容量%の700Lの水を、40℃に加温して攪拌しながらシャワーリングにて投入した。5分攪拌後に静止させて、静止開始から60分後に、下層水を抜き取った。この水洗を下層水のpHが中性になるまで、3回繰り返した。
(脱水→吸着処理(助剤添加))
水洗した油を攪拌しながら、90℃、100℃、110℃、130℃へと段階的に加温し、水分を蒸発させた。この時、前の水洗工程がうまく行われていないと、泡が吹く原因となり、作業上の危険性があるが、本発明では、水洗を繰り返すことで安全性を向上させることができる。脱水が完了したら、助剤を添加する。
水洗した油を攪拌しながら、90℃、100℃、110℃、130℃へと段階的に加温し、水分を蒸発させた。この時、前の水洗工程がうまく行われていないと、泡が吹く原因となり、作業上の危険性があるが、本発明では、水洗を繰り返すことで安全性を向上させることができる。脱水が完了したら、助剤を添加する。
まず、粉状活性炭40kgを、攪拌しながら徐々に投入し、30分以上攪拌した。ここで、活性炭の添加量は、魚原油に対して、1.15重量%であった。
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
活性炭:ダイヤホープPXO(商品名:三菱化学カルゴン株式会社製)、粒度44μm、ヨウ素吸着量1000mg/g
さらに活性白土(ガレオンアース:水澤化学株式会社製、商品名)50kgを、攪拌しながら徐々に投入し、次いでパーライト20kgを投入した後、60分以上、攪拌を続けた。活性白土の添加量は、魚原油に対して、1.44重量%であった。この時に、横回転攪拌に加え、反応缶1下部から吸い上げ、上から落とし込む循環式撹拌とを併用させた。
(ろ過→製品)
その後、フィルタープレス機(横置き型)4を使用してろ過をし、飼料用液状油脂を得た。得られた製品の分析結果を以下に示す。
製品分析: 分析値 酸価 ダイオキシン類(pg)
原油 1.3 1.6
製品 0.6 0.7
その後、フィルタープレス機(横置き型)4を使用してろ過をし、飼料用液状油脂を得た。得られた製品の分析結果を以下に示す。
製品分析: 分析値 酸価 ダイオキシン類(pg)
原油 1.3 1.6
製品 0.6 0.7
詳細を表4に示す分析結果に明らかなように、上記工程により製品中のダイオキシン類の含有量を大きく低減させ、TEQ濃度で1pg−TEQ/g以下にすることができる。また、原油に含まれていた遊離脂肪酸の含有量を低減して、酸価1.0以下のより良質な製品油を得ることができる。また、夾雑物その他不純物も除去されており、本発明方法を採用することによって、ダイオキシン類等の有害物質を低減させた飼料用として優れた品質の液状油脂を得ることができる。
なお、製品油の酸価を上昇させる要因として、酸性の活性白土の添加がある。本実施例では、製品油の酸価は0.6と十分低い値であるが、活性白土の添加量(本実施例1.44重量%)が増減すると、酸価も増減すると推測される。そこで、製品油の酸価に対する活性白土の影響度合いを調べるため、アルカリ処理により酸価1.0以下に調整した精製魚油に対して、活性白土を1〜5重量%の範囲で添加し、100℃±5℃で30分保持した後に、ろ過したものを酸価測定したところ、以下のようになった。
添加量: 無添加 1重量% 2重量% 3重量% 4重量% 5重量%
酸価: 0.8 0.86 0.92 0.98 1.04 1.08
添加量: 無添加 1重量% 2重量% 3重量% 4重量% 5重量%
酸価: 0.8 0.86 0.92 0.98 1.04 1.08
このように、活性白土の添加量を増加するのに比例して、酸価も上昇しているが、その上昇幅は小さく、製品の品質を大きく左右するものではない。また、油脂の種類やグレードによっても異なる。通常は、製品油に要求される酸価と、吸着性能、ろ過性等を考慮して、活性白土の添加量を適宜設定するとよい。
(実施例5)
ダイオキシン類の除去に対する活性白土の効果を調べるため、以下の試験を行った。魚原油に対して、活性炭のみを添加したもの、活性炭および活性白土を添加したもの、活性炭、活性白土およびゼオライトを添加したものについて、それぞれ、処理後のダイオキシン類の含有量を測定し、実測濃度とTEQ濃度(毒性等量)を表5に示した。
吸着処理条件:90℃、30分
添加量:活性炭 2重量%、活性白土 2重量%、ゼオライト 2重量%
(ゼオライト:シルトンCPT−30:水澤化学株式会社製、商品名)
ダイオキシン類の除去に対する活性白土の効果を調べるため、以下の試験を行った。魚原油に対して、活性炭のみを添加したもの、活性炭および活性白土を添加したもの、活性炭、活性白土およびゼオライトを添加したものについて、それぞれ、処理後のダイオキシン類の含有量を測定し、実測濃度とTEQ濃度(毒性等量)を表5に示した。
吸着処理条件:90℃、30分
添加量:活性炭 2重量%、活性白土 2重量%、ゼオライト 2重量%
(ゼオライト:シルトンCPT−30:水澤化学株式会社製、商品名)
表5の結果に明らかなように、原油に含まれるダイオキシン類は、活性白土の併用により活性炭のみの2.1pg−TEQ/gから1.6pg−TEQ/gにさらに低減している。これに対し、ゼオライトを使用した場合には、逆にダイオキシン類が増えており、その理由は明らかでないものの、添加助剤によりダイオキシン類の除去効果には、大きな差が生じることが判る。
1 反応缶
2 撹拌機
3 ポンプ
4 フィルタープレス
5 タンク
2 撹拌機
3 ポンプ
4 フィルタープレス
5 タンク
Claims (8)
- 魚油に含まれる有害物質を除去して飼料用の液状油脂を製造する方法であって、
原料油として酸価20以下の魚油を用い、
この魚油を加温して、該魚油より10℃以上温度を低くした水または温水を用いて洗浄する第1の水洗工程と、
水洗した魚油をアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程と、
アルカリ処理した油を分離し、加温して、これより10℃以上温度を低くした水または温水を用いて洗浄する第2の水洗工程と、
水洗した油を加温して水分を蒸発させる脱水工程と、
脱水後の油に活性炭および活性白土を添加し、攪拌処理して有害物質を吸着除去する吸着処理工程と、
吸着処理した油をろ過して活性炭および活性白土を分離するろ過工程とを有することを特徴とする飼料用液状油脂の製造方法。 - 有害物質が、コプラナーPCBを含むダイオキシン類である請求項1記載の飼料用液状油脂の製造方法。
- 吸着処理工程を大気圧下で行う請求項1または2に記載の飼料用液状油脂の製造方法。
- 吸着処理工程において、まず活性炭を添加、攪拌し、次いで活性白土を添加、攪拌する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の飼料用液状油脂の製造方法。
- 第2の水洗工程において、水または温水による洗浄を複数回行う請求項1項に記載の飼料用液状油脂の製造方法。
- 吸着処理工程において、活性炭の添加量が1.0〜8.0重量%であり、活性白土の添加量が1.0〜5.0重量%である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の飼料用液状油脂の製造方法。
- 吸着処理工程において、横回転攪拌と、循環式攪拌とを併用する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の飼料用液状油脂の製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の飼料用液状油脂を含有してなる配合飼料。
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JP2006242791A JP2008061571A (ja) | 2006-09-07 | 2006-09-07 | 飼料用液状油脂の製造方法および配合飼料 |
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US9771542B2 (en) | 2011-07-06 | 2017-09-26 | Basf Pharma Callanish Ltd. | Heated chromatographic separation process |
US9790162B2 (en) | 2009-12-30 | 2017-10-17 | Basf Pharma (Callanish) Limited | Simulated moving bed chromatographic separation process |
WO2019007918A1 (en) * | 2017-07-07 | 2019-01-10 | Bunge Loders Croklaan B.V. | PROCESS FOR THE PREPARATION OF A HYDROGENIC GREASE COMPOSITION |
-
2006
- 2006-09-07 JP JP2006242791A patent/JP2008061571A/ja active Pending
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