JP2008058088A - モータの絶縁抵抗劣化検出方法および検出装置 - Google Patents

モータの絶縁抵抗劣化検出方法および検出装置 Download PDF

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眞一 堀越
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博裕 佐藤
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Tomoshi Tanabe
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Abstract

【課題】インバータ回路におけるスイッチング素子の漏洩電流に影響を受けずに精度高くモータの絶縁劣化を検出する。
【解決手段】モータ10の駆動を停止させ、電磁接触器接点5をオフした後、リレー接点K1,K2を閉じ、平滑コンデンサC、リレー接点K2、抵抗R1、モータ10のコイル、大地G2、G1、リレー接点K1、抵抗R2、平滑コンデンサCの閉回路を形成する。ADコンバータ2b、2cで、抵抗R2の両端電圧V2、モータコイルと大地間の電圧V1を検出しデジタル値に変換する。検出回路コントローラ2aでは、電圧V2を抵抗R2で割って、スイッチング素子Q14〜Q16の漏洩電流を含まないモータの漏洩電流を求め、該モータの漏洩電流で電圧V1を割ってモータの絶縁抵抗を求め、絶縁抵抗劣化を検出する。精度の高いモータの漏洩電流を検出でき、絶縁抵抗劣化を精度高く検出できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、モータの絶縁抵抗劣化の検出方法、該検出方法を実施する絶縁抵抗劣化検出装置に関する。
モータを長年使用し続けると、その使用環境等に応じてモータの絶縁が劣化する。この絶縁の劣化による漏洩電流により漏洩遮断機が作動し、該モータを使用した装置が突然作動を停止する。このような場合、モータに問題があるものか、駆動装置に問題があるものか不明であり、突然停止の原因調査に時間がかかり、このモータを使用している装置や製造ラインの停止が長期化する傾向にある。
モータの絶縁抵抗劣化を検出する方法として、上述したように漏洩電流検出によって検出する方法が一般的であった。しかし、漏電検出器、漏電保護リレー等の漏電検出器では、漏れ電流がある程度まで大きく(3mA〜15mA)ならなければ検出できず、モータの絶縁抵抗劣化が進んだ段階でしか検出できないという問題があった。また、漏電による突然の停止であることから、停止の原因がモータ自体によるものかモータ駆動装置等やその他の周辺機器が影響しているものか、装置や製造ライン等のシステム全体の作業を停止して調査せねばならない。さらに、この漏電検出器では、モータ絶縁抵抗劣化の予測、予防保全には役立てることができない。
空気調和装置においては、圧縮機におけるモータ絶縁抵抗劣化を早期に発見し運転不能になることを未然に防止するようにした方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、モータの運転停止中において、直流電圧を任意の電圧と周波数に変換してモータを駆動する電力変換器の1つのトランジスタに高周波パルスを印加して駆動し、3相交流電源を整流しフィルタした直流電源の電圧(若しくは予め設定された電圧値)と、モータ電流を検出し、この直流電源の電圧とモータ電流に基づいて、絶縁抵抗値を算出し、求めた絶縁抵抗値が設定絶縁抵抗値を下回ると警報を出す方法である。また、1つのトランジスタに印加する高周波パルスの代わりに、単にトランジスタを導通させてモータ絶縁抵抗値を算出し絶縁抵抗劣化を予測する方法も提案されている。
特開2001−141795号公報
上述した、特許文献1に記載された方法では、モータ絶縁抵抗劣化の予測、予防保全には役立てることができるが、電圧と電流を検出しなくてはならない。しかも、この検出器は大電流を考慮したものとしなくてはならず、コストが増大する要因となる。
そこで、本願出願人は、上述した従来のモータの絶縁抵抗劣化を検出する方法の問題点を改善し、安価で、かつ絶縁抵抗劣化を予知できるモータの絶縁抵抗劣化検出方法及びモータの絶縁抵抗劣化検出装置を開発し、特願2005−352265、特願2005−352105で提案している。
図3は前記特願2005−352265で提案した発明(以下先願発明という)に係るモータの絶縁抵抗劣化検出方法及びモータの絶縁抵抗劣化検出装置の概要図である。
モータ10を駆動するモータ駆動装置1は、3相交流電源から電磁接触器接点5を介して入力される交流を整流回路により直流電源に変換する電源部6と、直流電源から任意の交流電源に変換してモータ10を駆動するモータ駆動アンプ8で構成されている。
モータ駆動装置1の電源部6は、3相交流電源から電磁接触器接点5を介して入力された電力を整流し直流電源に変換するダイオードD1〜D6で構成される整流回路と、各ダイオードD1〜D6と並列に回生電流を交流電源に帰還させるためのIGBT等で構成されたスイッチング素子Q1〜Q6を備え、該スイッチング素子Q1〜Q6を制御するコントローラ7を備えている。また、ダイオードD1〜D6の整流回路で整流された直流出力を平滑する平滑コンデンサCを備え、さらに、平滑コンデンサCのエネルギーを放電させる放電抵抗R13を備えている。
また、モータ駆動アンプ8は、IGBT等で構成されたスイッチング素子Q11〜Q16と該スイッチング素子Q11〜Q16とそれぞれ並列に接続されたダイオードD11〜D16で構成されたインバータ回路とコントローラ9で構成され、インバータ回路の出力がモータ10に接続されている。
電源部6の整流回路の出力ライン(DCリンク部)12,13はモータ駆動アンプ8に接続され、該モータ駆動アンプ8に直流電圧を供給する。インバータ回路は各相毎にスイッチング素子とダイオードを並列に接続した並列回路を2つ直列に接続した直列回路を有し、この直列回路をそれぞれ平滑コンデンサCに並列に接続し、電源部6の整流回路の出力ライン(DCリンク部)12,13に接続されている。スイッチング素子とダイオードを並列に接続した2つの並列回路の接続点Aにモータのコイルがそれぞれ接続されている。
電源部6及びモータ駆動アンプ8のコントローラ7,9は数値制御装置等のこのモータ駆動装置1を制御する制御装置に接続され、該制御装置からの指令に基づいて、コントローラ9によって、スイッチング素子Q11〜Q16をオン/オフ制御してモータ10を駆動制御するものである。また、該制御装置からの指令に基づいて、電磁接触器接点5をオン、オフ制御するものである。
上述したモータ駆動装置1は従来のモータ駆動装置と同じである。このような、モータ駆動装置1およびモータ10において、モータ10の絶縁抵抗劣化を検出するために、先願発明は、コンデンサCの一端、即ちDCリンク部のマイナス側ライン13を大地G1に接続する第1の接点a1、および、コンデンサCの他端であるDCリンク部のプラス側ライン12とモータ10のコイルを接続する接続線の1相の線とを電流検出器Sを介して前記接続点Aで接続する第2の接点a2を有する。
第1の接点、第2の接点は、連動して動作するものであり、リレー接点でも、また、手動で操作する連動接点でもよい。また、電流検出器Sは、DCリンク部のプラス側ライン12とモータ10のコイルを接続する接続線の1相の線との間を接続する導線と該導線に流れる電流を検出するセンサで構成されるもので、ホール素子を用いた電流センサでも、導線の一部に検出抵抗を設けておき、この検出抵抗の両端の電位差より、該導線および抵抗を流れる電流を検出するものでもよいものである。
モータ10の絶縁抵抗劣化を検出する際には、スイッチング素子Q11〜Q16をオフとしてモータ10の運転を停止し、電磁接触器接点5がオフとなったとき、手動操作により、またはリレーを作動させて第1,第2の接点a1,a2をオンさせ、コンデンサC、第2の接点a2、電流検出器S、モータのコイル、大地G2,G1、第1の接点a1、コンデンサCの閉回路を形成し、コンデンサCの蓄積エネルギーはこの閉回路を介して放電され、このときこの閉回路に流れる電流を電流検出器Sで検出する。モータの絶縁抵抗が大きいときには、この閉回路に流れる電流は僅かであり、電流検出器Sでの検出値は僅かである。しかし、モータの絶縁抵抗が劣化すると、閉回路に流れる電流は増加し電流検出器Sで検出される検出値も増加し、この電流検出器Sでの検出値が、所定値以上のときには、モータの絶縁が劣化していると判別するようにする。
なお、DCリンク部のプラス側ライン12とモータ10のコイルを接続する接続線の1相の線との間を接続する導線に検出抵抗を挿入して、該検出抵抗の両端の電位差より該導線および抵抗を流れる電流を検出する形式の電流検出器Sを用いる場合で、導線に挿入する検出抵抗値が大きく、電流検出器Sを接続したままでも、モータの駆動に影響がでない場合には、第2の接点a2をなくしてもよいものである。
上述した、モータの絶縁抵抗劣化を検出するための電流検出回路は、電磁接触器接点5をオープンにして、第1,第2の接点a1,a2を閉じ、閉回路を形成し、該閉回路に流れる電流を電流検出器Sで検出するものであるから、図4に示すような直列回路に書き換えることができる。
スイッチSW1、SW2は、第1,第2の接点a1,a2に相当し、抵抗R1、R2は電流検出器Sが有する抵抗に相当し、R3はスイッチング素子Q11〜Q13の漏洩電流等価抵抗、R4はスイッチング素子Q14〜Q16の漏洩電流等価抵抗であり、R5はモータ10の対地間絶縁抵抗に相当する。又、E1は、平滑コンデンサCに蓄電された電荷による電圧を示す。又符号Aは、モータコイルと電流検出器Sの接続点である。すなわち、インバータ回路の直列に接続された2つのスイッチングの接続点とモータコイルを接続する点であり、該点に電流検出器Sの一端が接続されているものである。
スイッチSW1、SW2が閉じられると、コンデンサ、スイッチSW2、電流検出器Sの抵抗R1、R2、モータの対地間絶縁抵抗R5、大地G2,G1、スイッチSW1、コンデンサの閉回路が形成され、該閉回路にコンデンサの電圧E1が印加される。この閉回路に流れる電流が電流検出器Sにより抵抗R2(又は抵抗R1)の電圧降下を検出することによって検出される。この検出電流の大きさによって、モータ10の対地間絶縁抵抗R5の劣化を検出する。
しかし、コンデンサCの電圧E1は、各相毎に直列に接続された2つのスイッチング素子の両端にも印加され、これらスイッチング素子に漏洩電流が流れる。電流検出器Sの抵抗R1、R2の値は、スイッチング素子Q11〜Q13の漏洩電流等価抵抗R3より十分に小さい値に選択されているから、漏洩電流等価抵抗R3を介する漏洩電流は小さく、モータ10の対地間絶縁抵抗R5を介して流れる電流にほとんど影響を与えない。しかし、電流検出器Sに流れる電流(抵抗R1、R2を流れる電流)は、スイッチング素子Q14さらにはモータのコイルを介してスイッチング素子Q15、Q16の漏洩電流等価抵抗R4にも分流して流れる。
そのため、電流検出器Sで検出される電流は、スイッチング素子Q14〜Q16の漏洩電流等価抵抗R4に流れる電流をも含むことになり、モータ10の対地間絶縁抵抗R5に流れる電流と一致しなくなる。漏洩電流等価抵抗R4に流れる電流が大きくなると、電流検出器Sで検出される電流とモータ10の対地間絶縁抵抗R5に流れる電流との誤差が大きくなり、電流検出器Sで検出される電流の大きさに基づいて判断される対地間絶縁抵抗R5も大きな誤差を含むものとなる。すなわち、漏洩電流等価抵抗R4に流れる電流が大きくなると、電流検出器Sで検出される電流も大きくなり、該検出電流で判断される対地間絶縁抵抗R5は実際よりも小さいものと判断されることになる。
そこで、本発明の目的は、モータ駆動アンプにおけるインバータ回路を構成するスイッチング素子の漏洩電流の影響を排除して、正確にモータの絶縁抵抗劣化を検出できるモータの絶縁抵抗劣化検出方法及び装置を提供することにある。
本願請求項1、2に係る発明は、モータの絶縁抵抗劣化検出方法の発明であり、請求項1に係る発明は、スイッチを介して交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する電源部と、該電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動アンプを備えたモータ駆動装置によって駆動されるモータの絶縁抵抗劣化検出方法であって、前記スイッチをオフとし、モータの運転を停止した後、前記コンデンサの一端を大地に接続すると共に他端とモータコイル間を接続し、前述のコンデンサ、モータコイルおよび大地で形成される閉回路を形成し、前記コンデンサの電圧が印加されるモータ駆動アンプと前記閉回路中において、前記モータ駆動アンプのスイッチング素子の漏洩電流を含まない前記閉回路中の位置で、モータコイルと大地を通して流れる電流とモータコイルと大地間の電圧とを検出してモータの絶縁抵抗劣化を検出するようにしたものである。
又、請求項2に係る発明は、コンデンサの他端とモータコイル間の接続をモータの駆動に影響を与えない大きさの抵抗を介して接続しておくものであり、他は請求項1に係る発明と同じである。
請求項3〜6に係る発明は、モータの絶縁抵抗劣化検出装置に関するもので、請求項3に係る発明は、スイッチを介して交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する電源部と、該電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動アンプを備えたモータ駆動装置によって駆動されるモータの絶縁抵抗劣化検出装置であって、前記コンデンサ、モータコイルおよび大地で閉回路を形成させる、前記コンデンサの一端を大地に接続する第1の接点と前記コンデンサの他端をモータコイルする第2の接点と、前記スイッチをオフとする信号に基づいて前記第1、第2の接点をオンとする手段と、前記コンデンサの電圧が印加されるモータ駆動アンプと前記閉回路中において、前記モータ駆動アンプのスイッチング素子の漏洩電流を含まない前記閉回路中の位置に配置されて前記モータコイルと大地を通して流れる電流を検出する電流手段と、モータコイルと大地間の電圧を測定する手段を有し、前記電流検出手段で検出した電流で、前記測定した電圧を除算してモータの絶縁抵抗の値を得て、この値が基準値より小さい場合、モータの絶縁抵抗劣化と判定する絶縁抵抗劣化検出手段を備えたことを特徴とするものである。
又、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明における第2の接点を設けずに、前記コンデンサの他端とモータコイル間をモータの駆動に影響を与えない大きさの抵抗で接続したもので、他の構成は請求項3に係る発明と同じである。
さらに、請求項5に係る発明は、前記絶縁抵抗劣化検出手段の電流検出手段を、前記閉回路中に設けられた抵抗の両端に生じる電位差を検出して、流れる電流の大きさを検出するか、または、前記閉回路中に設けた電流センサで、流れる電流の大きさを検出してモータの絶縁抵抗劣化を検出するものとした。又、請求項6に係る発明は、前記絶縁抵抗劣化検出手段を、前記電流検出値と同時刻に検出したモータに印加される電圧値とをADコンバータでデジタル値に変換し、この電圧値を電流値にて除算した値と、基準値と比較し、除算値が基準値を下回る場合、表示手段に異常を通知するものとした。
インバータ回路におけるスイッチング素子の漏洩電流の影響を受けずに、モータの漏洩電流を検出し、モータの絶縁抵抗を検出するようにしたから、精度高くモータの絶縁抵抗を検出でき、モータの絶縁抵抗劣化を高精度に検出できる。
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、図2に示す本発明のモータの絶縁抵抗劣化検出装置の一実施形態における、モータの絶縁抵抗劣化を検出するための電流検出回路の説明図であり、前述した先願でのモータの絶縁抵抗劣化検出方法、装置におけるモータの絶縁抵抗劣化を検出するための電流検出回路を示す図4と対応する図である。
図4と本実施形態の図1と相違する点は、電流検出器が設けられず、平滑コンデンサC(該コンデンサに蓄電された電荷による電圧E1)の一端(+側)とインバータ回路における直列に接続された2つのスイッチング素子の間とモータコイルとの接続点Aには、第2のスイッチSW2が抵抗R1を介して接続されている点、及び、平滑コンデンサC(該コンデンサに蓄電された電荷による電圧E1)の他端(−側)は抵抗R2を介して第1のスイッチSW1で大地G1に接続されるようになっている点で、図4に示す先願の例とは相違している。
なお、図1において、R3は図2におけるスイッチング素子Q11〜Q13の漏洩電流等価抵抗、R4は図2におけるスイッチング素子Q14〜Q16の漏洩電流等価抵抗であり、R5は図2におけるモータ10の対地間絶縁抵抗に相当する。又、E1は、図2における平滑コンデンサCに蓄電された電荷による電圧を示す。
第1、第2のスイッチSW1、SW2(図2におけるリレー接点K1、K2に対応)をオンとして、平滑コンデンサC(電圧E1の+側)、スイッチSW2、抵抗R1、モータ10の対地間絶縁抵抗R5、大地G2、大地G1、スイッチSW1、抵抗R1、コンデンサC(電圧E−側)となる閉回路を形成し、該閉回路に平滑コンデンサCの電圧E1を印加する。又、平滑コンデンサCの電圧E1は、モータ駆動アンプ8のインバータ回路の各相毎の2つのスイッチング素子を直列に接続した直列回路の両端にも印加されている。
インバータ回路へのコンデンサの電圧E1の印加によって、スイッチング素子Q11〜Q13には漏洩電流等価抵抗R3により漏洩電流が流れ、スイッチング素子Q14〜Q16も漏洩電流等価抵抗R4により漏洩電流が流れる。一方、前記閉回路に印加されたコンデンサの電圧E1によって、モータ10の対地間絶縁抵抗R5、大地G2、G1、スイッチSW1、抵抗R2にも、モータ10の漏洩電流が流れる。
ただし、前記閉回路中において、接続点A、モータ10の対地間絶縁抵抗R5、大地G2、大地G1、スイッチSW1、抵抗R2に流れる電流はインバータ回路のスイッチング素子の漏洩電流を含まない、モータ10の漏洩電流のみである。
そこで、この閉回路中の、接続点Aからモータ10の対地間絶縁抵抗R5、大地G2、大地G1、スイッチSW1、抵抗R2までの間の位置において流れる電流を検出すれば、インバータ回路のスイッチング素子の漏洩電流を含まない、モータ10の漏洩電流のみを検出でき、モータの絶縁抵抗劣化を正確に検出できる。
この実施形態では、抵抗R2の両端間の電圧V2と接続点Aと大地G2間の電圧V1を同時に測定する。抵抗R2の測定電圧V2と抵抗R2によって、該抵抗R2に流れる電流、すなわちモータ10の漏洩電流iが検出され、該検出されたモータの漏洩電流iと測定電圧V1によってモータ10の対地間絶縁抵抗R5が求められる(R5=V1/i)。
図2は、図1に示したモータの絶縁抵抗劣化を検出するための電流検出回路を実際のモータ駆動装置およびモータに適用した、本発明のモータの絶縁抵抗劣化検出方法を実施する装置の一実施形態のブロック図とモータ駆動装置およびモータの関係を示すブロック図である。
本実施形態のモータの絶縁抵抗劣化検出装置は、モータの絶縁抵抗劣化を検出する検出回路部2とモータ駆動装置1を制御する数値制御装置等の制御装置20で構成されている。
図2において、モータ10を駆動するモータ駆動装置1は図3に示した従来のモータ駆動装置と同じである。ただし、この実施形態では、平滑コンデンサCの充電電圧を検出する電圧検出手段を追加して設けられている点で図3に示した従来例とは相違している。
すなわち、このモータ駆動装置1も、3相交流電源から電磁接触器接点5を介して入力される交流を整流回路により直流電源に変換する電源部6と、直流電源から任意の交流電源に変換してモータ10を駆動するモータ駆動アンプ8で構成されている。
モータ駆動装置1の電源部6は、3相交流電源から電磁接触器接点5を介して入力された電力を整流し直流電源に変換するダイオードD1〜D6で構成される整流回路と、各ダイオードD1〜D6と並列に回生電流を交流電源に帰還させるためのIGBT等で構成されたスイッチング素子Q1〜Q6、該スイッチング素子Q1〜Q6を制御するコントローラ7、及びダイオードD1〜D6の整流回路で整流された直流出力を平滑する平滑コンデンサC、平滑コンデンサCのエネルギーを放電させる放電抵抗R13を備えている。
さらに、平滑コンデンサCの両端電圧を検出する電圧検出手段として、抵抗R14,R15を設け、この抵抗でR14,R15で平滑コンデンサCの両端電圧を分圧し、その分圧電圧を電源部6のコントローラ7が検出するようにしている。
また、モータ駆動アンプ8は、IGBT等で構成されたスイッチング素子Q11〜Q16と該スイッチング素子Q11〜Q16とそれぞれ並列に接続されたダイオードD11〜D16で構成されたインバータ回路とコントローラ9で構成されている。
電源部6の整流回路の出力ライン(DCリンク部)12,13はモータ駆動アンプ8に接続され、該モータ駆動アンプ8に直流電圧を供給する。すなわち、インバータ回路は各相毎にスイッチング素子とダイオードを並列に接続した並列回路を2つ直列に接続した直列回路を有し、この直列回路をそれぞれ平滑コンデンサCに並列に、すなわち、電源部6の整流回路の出力ライン(DCリンク部)12,13に接続され、この2つのスイッチング素子とダイオードを並列に接続した並列回路の接続点Aとモータ10のコイルがそれぞれ接続されている。
電源部6及びモータ駆動アンプ8のコントローラ7,9は数値制御装置等のこのモータ駆動装置を制御する制御装置20に接続され、該制御装置20からの指令に基づいて、コントローラ9によって、スイッチング素子Q11〜Q16をオン/オフ制御してモータ10を駆動制御するものである。また、該制御装置からの指令に基づいて、電磁接触器接点5をオン、オフ制御するものである。
検出回路部2は、マイクロプロセッサ31、該マイクロプロセッサ31を制御するシステムプログラムを格納したROM32、設定値等の各種データを記憶する不揮発性RAM等で構成されたメモリ33、インタフェース回路及び制御回路34からなる検出回路コントローラ2aと、2つのADコンバータ(アナログ信号をデジタル信号に変換するコンバータ)2b、2c、抵抗R1、R2、リレー接点K1、K2を有し、モータ駆動装置1の電源部6の出力であるDCリンク部のプラス側ライン12をリレー接点K2、抵抗R1を介してインバータ回路の1つの相(例えばU相)における、2つのスイッチング素子の接続点Aとを接続している。又、DCリンク部のマイナス側ライン13を抵抗R2、リレー接点K1を介して大地G1に接続している。
ADコンバータ2bは抵抗R2の両端間の電圧V2をデジタル信号に変換して検出回路コントローラ2aのインタフェース回路及び制御回路34に出力している。又、ADコンバータ2cは、大地G1と前記接続点Aとの間の電圧(モータの絶縁抵抗にかかる電圧)V1を検出しデジタル信号に変換して検出回路コントローラ2aのインタフェース回路及び制御回路34に出力している。
制御装置20は、モータ駆動装置1の電源部6のコントローラ7、モータ駆動アンプ8のコントローラ9及び、検出回路部2の検出回路コントローラ2aと接続されている。この各コントローラ7、9、2aと制御装置20間の信号線は図2においては破線で示している。
制御装置20はコントローラ9を介してスイッチング素子Q11〜Q16をオフとして、モータ10の運転を停止させ、電磁接触器接点5をオフにする信号を出力し、該電磁接触器接点5をオフとする。そうすると、平滑コンデンサCに充電された電荷は放電抵抗R13を通じてゆっくり放電され、このときの電圧を抵抗R14,R15で分圧してこの分圧された電圧を電源部6のコントローラ7を介して検出回路部2のコントローラ2aで検出し、予め設定された電圧に到達した時点で、該コントローラ2aは、リレーを作動させてその接点K1,K2を同時に閉じる。
その結果、平滑コンデンサCのプラス側端子、DCリンク部のプラス側ライン12、リレー接点K2、抵抗R1、インバータ回路とモータコイルの接続点A、モータのコイル、モータ10の絶縁抵抗(R5)、大地G2,G1、リレー接点K1、抵抗R2、DCリンク部のマイナス側ライン13、平滑コンデンサCのマイナス側端子の閉回路が形成される。平滑コンデンサCの充電電圧がこの閉回路に印加される。モータ10のコイルから、モータの絶縁抵抗を介して大地G2に流れる漏洩電流は大地G1、リレー接点K1、抵抗R2に流れる。このモータ10の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流による抵抗R2の両端間の電圧V2は、ADコンバータ2bでデジタル信号に変換されて検出回路コントローラ2aのインタフェース回路及び制御回路34に入力される。
一方、ADコンバータ2cは、大地と接続点A間の電圧V1、すなわち、モータの絶縁抵抗(R5)にかかる電圧V1を検出しデジタル信号に変換して、検出回路コントローラ2aのインタフェース回路及び制御回路34に入力する。検出回路コントローラ2aのマイクロプロセッサ31は、ADコンバータ2bから入力される電圧V2とADコンバータ2cから入力される電圧V1をほぼ同時に読み取る。そして、入力された電圧V2をメモリ33に設定されている抵抗R2の値で除して、漏洩電流の大きさを求める。次に、入力された電圧V1を算出した漏洩電流で除算してモータの絶縁抵抗(R5)の値を求める。さらに、マイクロプロセッサ31は、この求めた抵抗値と、予めメモリ33に登録されている絶縁劣化と判定できる基準値と比較して、求めた抵抗値が該基準値を下回るときは、異常と判断し、異常信号を制御装置20に送信し、該制御装置20の表示器21にモータの交換を促すメッセージ等のモータ絶縁抵抗異常の表示を行う。
以上のように、本実施形態では、モータの漏洩電流が流れ、モータ駆動装置1のモータ駆動アンプ8におけるインバータ回路のスイッチング素子の漏洩電流が流れない回路部分で、その流れる電流を検出するので、スイッチング素子の漏洩電流に影響されない正確なモータの漏洩電流を検出でき、モータの絶縁抵抗劣化を精度高く検出することができる。
なお、本実施形態では、抵抗R2の両端間の電圧を検出して、モータの漏洩電流を検出したが、抵抗R2、リレー接点K1に流れる電流を検出する電流検出器をこの位置に設けて、直接モータの漏洩電流を検出してもよいものである。
又、リレー接点K2(スイッチSW2)は設けずに、抵抗R1をモータの駆動に影響を与えない程度の大きな抵抗値として、DCリンク部のプラス側ライン12とモータコイル(接続点A)間を常に接続しておいてもよいものである。
本発明の一実施形態における、モータの絶縁抵抗劣化を検出するための電流検出回路の説明図である。 本発明の一実施形態のブロック図とモータ駆動装置およびモータの関係を示すブロック図である。 先願発明におけるモータの絶縁抵抗劣化検出方法及びモータの絶縁抵抗劣化検出装置の概要図である。 先願発明におけるモータの絶縁抵抗劣化を検出するための電流検出回路の説明図である。
符号の説明
1 モータ駆動装置
2 検出回路部
2a 検出回路コントローラ
2b、2c ADコンバータ
5 電磁接触器接点
6 電源部
7 電源部のコントローラ
8 モータ駆動アンプ
9 モータ駆動アンプのコントローラ
10 モータ
K1、K2 リレー接点
a1,a2 接点
Q1〜Q6,Q11〜Q16 スイッチング素子
D1〜D6,D11〜D16 ダイオード
20 制御装置
21 表示器

Claims (6)

  1. スイッチを介して交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する電源部と、該電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動アンプを備えたモータ駆動装置によって駆動されるモータの絶縁抵抗劣化検出方法であって、
    前記スイッチをオフとし、モータの運転を停止した後、前記コンデンサの一端を大地に接続すると共に他端とモータコイル間を接続し、前述のコンデンサ、モータコイルおよび大地で形成される閉回路を形成し、前記コンデンサの電圧が印加されるモータ駆動アンプと前記閉回路中において、前記モータ駆動アンプのスイッチング素子の漏洩電流を含まない前記閉回路中の位置で、モータコイルと大地を通して流れる電流とモータコイルと大地間の電圧とを検出してモータの絶縁抵抗劣化を検出するようにしたことを特徴とするモータの絶縁抵抗劣化検出方法。
  2. スイッチを介して交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する電源部と、該電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動アンプを備えたモータ駆動装置によって駆動されるモータの絶縁抵抗劣化検出方法であって、
    前記コンデンサの他端をモータの駆動に影響を与えない大きさの抵抗を介してモータコイルと接続しておき、前記スイッチをオフとし、モータの運転を停止した後、前記コンデンサの一端を大地に接続することによって、前述のコンデンサ、モータコイルおよび大地で形成される閉回路を形成し、前記コンデンサの電圧が印加されるモータ駆動アンプと前記閉回路中において、前記モータ駆動アンプのスイッチング素子の漏洩電流を含まない前記閉回路中の位置で、モータコイルと大地を通して流れる電流とモータコイルと大地間の電圧とを検出してモータの絶縁抵抗劣化を検出するようにしたことを特徴とするモータの絶縁抵抗劣化検出方法。
  3. スイッチを介して交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する電源部と、該電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動アンプを備えたモータ駆動装置によって駆動されるモータの絶縁抵抗劣化検出装置であって、
    前記コンデンサ、モータコイルおよび大地で閉回路を形成させる、前記コンデンサの一端を大地に接続する第1の接点と前記コンデンサの他端をモータコイルする第2の接点と、前記スイッチをオフとする信号に基づいて前記第1、第2の接点をオンとする手段と、
    前記コンデンサの電圧が印加されるモータ駆動アンプと前記閉回路中において、前記モータ駆動アンプのスイッチング素子の漏洩電流を含まない前記閉回路中の位置に配置されて前記モータコイルと大地を通して流れる電流を検出する電流手段と、モータコイルと大地間の電圧を測定する手段を有し、
    前記電流検出手段で検出した電流で、前記測定した電圧を除算してモータの絶縁抵抗の値を得て、この値が基準値より小さい場合、モータの絶縁抵抗劣化と判定する絶縁抵抗劣化検出手段を備えたことを特徴とするモータの絶縁抵抗劣化検出装置。
  4. スイッチを介して交流電源から供給された電力を整流回路で整流し、かつコンデンサで平滑化する電源部と、該電源部からの直流電圧を交流に変換してモータを駆動するモータ駆動アンプを備えたモータ駆動装置によって駆動されるモータの絶縁抵抗劣化検出装置であって、
    前記コンデンサの一端を大地に接続する接点と、
    前記コンデンサの他端とモータコイルを接続するモータの駆動に影響を与えない大きさの抵抗と、
    前記スイッチをオフとする信号に基づいて前記接点をオンとする手段と、
    前記コンデンサの電圧が印加されるモータ駆動アンプと前記閉回路中において、前記モータ駆動アンプのスイッチング素子の漏洩電流を含まない前記閉回路中の位置に配置されて前記モータコイルと大地を通して流れる電流を検出する電流手段と、モータコイルと大地間の電圧を測定する手段を有し、
    前記電流検出手段で検出した電流で、前記測定した電圧を除算してモータの絶縁抵抗の値を得て、この値が基準値より小さい場合、モータの絶縁抵抗劣化と判定する絶縁抵抗劣化検出手段を備えたことを特徴とするモータの絶縁抵抗劣化検出装置。
  5. 前記絶縁抵抗劣化検出手段の電流検出手段は、前記閉回路中に設けられた抵抗の両端に生じる電位差を検出して、流れる電流の大きさを検出するか、または、前記閉回路中に設けた電流センサで、流れる電流の大きさを検出してモータの絶縁抵抗劣化を検出するようにした請求項3又は請求項4に記載のモータの絶縁抵抗劣化検出装置。
  6. 前記絶縁抵抗劣化検出手段は、前記電流検出値と同時刻に検出したモータに印加される電圧値とをADコンバータでデジタル値に変換し、この電圧値を電流値にて除算した値と、基準値と比較し、除算値が基準値を下回る場合、表示手段に異常を通知する請求項5に記載のモータの絶縁抵抗劣化検出装置。
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