JP2008056505A - 電気伝導性炭複合多孔質セラミックス、およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭とガラス粒子とを複合させた電気伝導性炭複合ガラスセラミックスを提供する。
【解決手段】微粉砕した炭および微粉砕したガラス粒子に、窯業原料を調合したケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム及びリン酸からなる基本成分に、酸化ホウ素を加えたバインダーを添加、混合する。この混合物を加圧成形して任意の形状に成形し、還元雰囲気中で600〜1200℃の高温で焼成して得られる電気伝導性炭複合ガラスセラミックスの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭、ガラス粒子、及びバインダー剤とを微粉砕混合し、加圧成型後に還元雰囲気で焼成し、電気伝導性の炭複合セラミックスを創成する技術に関するものである。
上記バインダー剤は、ケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、リン酸、を基本的構成成分とし、砕石泥、粘土、ベントナイト、スーパークレイ、長石、カオリン、骨灰、などの窯業原料を調合して作られる。このバインダー剤には、酸化ホウ素、あるいは、チタン、酸化チタン、酸化鉄等の金属成分を複合させることができる。
炭と、ガラス粒子と、上記バインダー剤と、必要に応じて添加される、酸化ホウ素、および、チタン、酸化チタン、酸化鉄等の金属成分、とからなる複合成分の原料混合物は、ボールミルで微粉砕混合された後、半乾燥状態として、金型を使用して任意の形状に加圧成型される。
加圧成型物の焼成は、炭の燃焼消失を防止するために、酸素の侵入を阻止する還元雰囲気において、600〜1200 ℃ 間の温度で、ガラス粒子がバインダー成分とともに焼結するように加熱焼成される。
このようにして製造される炭複合セラミックスは、セラミックス化した部分により炭が一様に複合固定されており、炭が本来有する電気伝導性に基づいて、電気伝導性の炭複合セラミックスを与える。
炭を除いて、ガラス粒子と、ケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、リン酸、酸化ホウ素等よりなるバインダー成分を混合して焼結すると絶縁体のセラミックスを与える。また、製造した電気伝導性セラミックスを酸化雰囲気で焼成すると、炭が燃焼消失して電気伝導性は失われ、絶縁体のセラミックスを与える。従って、本発明において複合されている微粒子の炭は、セラミックス質に取り囲まれてはいるものの、炭の特性に基づいて電気伝導性を示すように、緻密な連続状態で存在するか、あるいは、炭周囲のセラミックス成分を、例えば、電気伝導性を有する炭化ケイ素のような炭化物に変化させ、それらの炭化物を挟んで連続した形態で存在する構造を形成しているものと推定される。
このように、本発明は基本的に窯業技術の分野に属し、炭を燃焼させる酸素の侵入を防ぐために、還元雰囲気での加熱焼成が実施される。そして、炭に基づいた電気伝導性が現れるように、炭が炭複合セラミックス材料全体に渡って連続して複合固定された状態が実現される。
また、原料中に、金属あるいは金属酸化物を添加することにより、炭複合セラミックス中に金属酸化物が担持され、電気伝導性を有する金属酸化物担持の炭複合セラミックスが製造できるという特徴も有する。
従って、本発明は、複合担持された炭が、炭の持つ諸機能を効果的に発現することのできる、電気伝導性炭複合セラミックスを提供するとともに、該炭複合セラミックスに、種々の触媒機能を付与する目的のために、更に、金属あるいは金属酸化物を複合させて、より高度な機能、例えば触媒機能、を有する金属酸化物を担持した電気伝導性炭複合材料を提供する技術等に関するものである。
炭とガラスカレットとバインダー剤を使用し、炭複合ガラスセラミックスブロックを製造する方法が特許文献1に開示されている。本出願の発明は特許文献1に記載の実施方法を鋭意改良し、特許文献1の実施方法では得ることのできなかった、電気伝導性炭複合セラミックスを新規にしたものである。
特許文献1に記載の炭複合ガラスセラミックスブロックは、ガラスカレットの高温における軟化とバインダー剤のセラミックス化により、炭粒子を包括保持させて製造されるものであり、再利用の可能性が低い濃い着色のワイン瓶などに由来する廃ガラスの有効利用を可能にするとともに、多孔質の炭をガラスセラミックスブロック中に保持させて、炭に由来する種々の特性を発揮する材料となるような炭複合ガラスセラミックスブロックの製造が実現されたものである。
この製造方法では、炭と、ガラスカレットと、ケイ酸ナトリウムとケイ酸と酸化アルミニウムとを含むバインダー剤とを混合してスラリー状の成型原料を作り、これをブロック状に低温成型し、その後乾燥離型し、次いで予熱、加熱後、900℃前後の高温で一定時間保持し、その後冷却、放冷してブロック状の炭複合ガラスセラミックスブロックを得ている。従って、炭とガラスカレットに加えて、ケイ酸ナトリウムを用いるバインダー剤を使用してスラリー状として木枠で成型する製造方法が実施されている。
しかし、特許文献1の実施形態に示された、ケイ酸ナトリウムを使用してスラリー状とした原料混合物について、木枠を用いて成型する方法では、成型時に比重の軽い炭粒子が表面に浮き上がる傾向があること、および、加圧不足によりブロック内部に空隙が残ることなどが原因となり、炭がブロック内部に一様に分布して製造されず、複合された炭の分布状態が不均一となる問題がある。
また、特許文献1に記載の加熱焼結工程においては、ブロック中の炭を燃焼消失させる酸素を遮断する対策がとられていないので、ブロック表面近くでは炭粒子はほとんど燃焼消失し、炭を含まない一定の厚みのセラミックス層の内側において炭粒子を包括した状態となる。従って、この加熱焼結工程も、複合される炭の分布状態が不均一となる問題を与える。
一方、特許文献1に記載の実施工程において、その実施工程が、成型後乾燥したブロック表面に低融点釉薬あるいは低融点ガラス微粉末を塗布し、加熱焼結工程において早期に釉薬あるいはガラス質が軟化し、ブロック表面を覆うようにして改良実施されると、軟化した釉薬あるいはガラス質が炭粒子を燃焼させる酸素の侵入拡散を早期に阻止し、炭粒子をブロック内部に一様に包括する炭複合ガラスセラミックスブロックを製造することが可能であった。しかし、この方法では、製造した炭複合ガラスセラミックスブロックの表面がガラス質で覆われており、その製品化の工程においてその部分をカット除去することが必要となり、製造工程の増加とカット屑の処理の問題が発生する。
本発明の炭複合セラミックスに類似した資材の開発状況について説明すると、特許文献2に記載の「支持された活性炭複合体およびその製造方法」では、炭に活性炭を使用し、架橋性樹脂をバインダーとし、さらに、有機質支持体を加えて炭化する方法によって、活性炭複合体が製造されているが、架橋性樹脂を使用する点において、本発明の技術とは異なっている。
また、特許文献3において、ホウケイ酸ガラスの軟化・固着により、成形体を700℃以下、脱酸素雰囲気で焼成し焼結する活性炭複合材料の製造方法が出願されている。この発明では、700℃以下の低温で、バインダー剤に含まれているアルミナ、シリカ等の主成分を溶融させることなく焼結させる方法が実施され、また、原料のガラス質としては、ホウケイ酸ガラスが使用される。本出願の発明では、使用するガラス質は、瓶ガラスのリサイクル工程で排出されるガラス粒子、或いは、ソーダライム系のガラス粒子であり、一般の瓶ガラスもソーダライム系ガラス質であるので、当該特許において使用されるホウケイ酸ガラスとは異なる。また、本発明では、バインダー剤の原料中に、リン酸を複合して用いる組成上の特徴があり、当該特許のバインダー剤とはその組成が異なる。
一方、炭をセルロース、ニカワ、樹脂、架橋性樹脂などの有機物をバインダーとし、成型された炭複合資材の炭ボード、竹炭ボードが開発されている。しかし、バインダーに有機物を使用すると、高湿度雰囲気における微生物腐食、高温雰囲気での劣化、火災による発火、水圏での利用における溶解、などの問題があり、防火性と長期的耐久性に問題がある。本発明の炭複合セラミックスでは、炭を複合固定しているバインダーはセラミックス質であり、防火性と長期的耐久性を有している。
また、電気伝導性の炭複合材としては、特許文献4において、ボード状発熱体が製造されているが、このボード状発熱体は粉炭に接着剤を加えて成型される資材であり、本発明の実施工程による電気伝導性炭複合セラミックスとは製造技術が異なる。
特開2004-175576号公報 特表2001-504793号公報 特開2005-350319号公報 特開2004-227947号公報
特許文献1に示された製造方法によると、炭とガラスカレットとバインダー成分に水を加えてスラリー状にして成型する成型方法が採用されるが、この成型方法では成型過程において比重の軽い炭が表面に浮き上がる傾向が有ること、木枠成型による加圧力不足が原因で内部に空隙が残ることなどで、ブロック内部における炭の分布が不均一となるという問題があり、また、加熱工程において、ブロック表面近傍では炭粒子が酸素侵入により燃焼消失した状態となり、ブロックの表面と内部で炭の分布が不均一となるという問題が有った。
一方、一般的な炭複合材料では、炭を複合固定しているバインダー剤が炭の表面を覆って炭粒子どうしを接合する状態となり、材料内部に複合されている炭は外気との接触を断たれ、炭自体が有する本来の諸機能を十分に発揮できない傾向があるという問題を有する。
炭複合材料が炭の持つ諸機能を十分に発揮するためには、内部に含まれる炭もその機能を十分発揮できるようにすることが必要であり、バインダー質に内部の炭粒子と通じる貫通細孔を形成するか、あるいは炭粒子が連続して包括されるような炭の複合状態を実現することが必要である。従って、炭複合セラミックスでは、炭を複合固定するバインダー剤が、焼結後において通気性のセラミックス質を形成するように、その組成を特殊化したバインダー剤を開発することが課題となる。
さらに、セラミックス質で複合固定された炭が連続して存在することにより、炭自体が本来有する電気伝導性に基づいて、炭複合セラミックス全体が電気伝導性を有する電気伝導性炭複合セラミックス材料を創成することも解決しようとする課題である。
一方、本発明の研究過程で把握された内容であるが、ケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、リン酸、より構成されるバインダー剤を使用した場合、組成によっては、1100℃以上の高温での焼成において、リン酸を含んだ成分が揮発昇華し、耐熱容器の蓋の部分に析出する傾向があり、1100℃以上の高温での焼成が困難となる問題がある。すなわち、1000℃ での加熱焼成では良好に焼結し、炭複合セラミックスが製造可能であったバインダー組成について、1200℃ で加熱焼成した場合には焼結せず、炭複合セラミックスが製造できないという問題があった。従って、バインダー組成を改良し、高温で揮発昇華する成分を減少させることにより、炭複合セラミックスの焼結不良を防止する対策を講じることも解決すべき課題となる。
加えて、炭複合セラミックスは、セラミックス質に通気性を持たせることで、炭の持つ諸機能が十分に発揮できる機能性材料となるけれども、炭複合セラミックスの発展的用途を考える場合、種々の触媒機能を有する金属酸化物類を、炭複合セラミックス中にさらに複合させて、金属酸化物を担持した電気伝導性の炭複合セラミックスを製造することも課題である。
炭粒子が一様に複合固定された均質な炭複合セラミックスを製造するために、水を加えてスラリー状態とし、混合後に成型する特許文献1で実施される成型方法を、スラリー状としない半乾式法へと改良する。すなわち、炭と、ガラス粒子、およびバインダー原料とをボールミルで微粉砕混合し、少量の水を加えて調湿した後に、半乾式状態で、金型を使用し、高圧でプレス成型する方法へと改良する。
また、酸素侵入による表面近くでの炭の燃焼消失を防止するために、還元状態における加熱焼成を実施する。すなわち、加熱焼成工程において、成型物を収納する耐熱性の容器を使用し、その容器中に成型物を置いて炭粒子で覆い、炭に囲まれた状態で加熱焼成する方法により、侵入酸素を遮断する。なお、市販の雰囲気炉を焼成に使用すれば、この酸素侵入の問題は当然回避される。
これらの製造方法の改良により、炭複合セラミックス中に複合される炭が不均一分布状態となる問題は解決され、炭がセラミックス質全体に渡って一様に分布する炭複合セラミックスを製造することが可能となる。
また、炭複合セラミックスの材料内部に含まれる炭が、その機能を十分発揮できるような炭複合状態とするために、焼成後において、貫通細孔を持った通気性のセラミックスを形成するバインダー剤を開発する。本特許出願の発明者は、特開2006-117450号公報「高吸水性の透水性、保水性レンガの製造方法および高吸水性の透水性、保水性レンガ」において、透水性を有するセラミックスを開発し、その透水性、保水性の発現にとって、リン酸を含む骨灰を使用することが重要であることを把握している。セラミックスが透水性を持てば当然通気性をも有するので、この「高吸水性の透水性、保水性レンガの製造方法および高吸水性の透水性、保水性レンガ」の開発で得たノウハウに基づき、通気性のセラミックス質を形成するバインダー剤を開発する。すなわち、特許文献1に示された、ケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、等よりなるバインダー組成に、更に、リン酸を添加し、通気性を持つセラミックス質を形成するためのバインダー剤を開発する。このために、主としてケイ酸と酸化アルミニウムが主成分である、砕石泥、粘土、スーパークレイ、ベントナイト、カオリン、長石、などの窯業原料を単独あるいは複合させて使用し、リン酸分を供給するために骨灰を添加して使用する。また、それらの原料混合物全体の構成化学成分を調整するために、必要に応じて、アルカリ金属酸化物、あるいは、酸化カルシウムを補う炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の化学試薬を添加する。
さらに、1100℃ 以上の高温焼成時にリン酸を含んだ成分が揮発昇華し、炭複合セラミックスの焼結不良を起こすという問題点については、ガラス工学の分野でリン酸に比べてより広範に使用されている酸化ホウ素を前記のバインダー組成に添加して改善する。
一方、炭複合セラミックスの発展的用途を考えた場合の課題である、種々の触媒機能を付与するための、金属酸化物を担持した炭複合セラミックスの製造については、チタン、酸化チタン、酸化鉄等の金属あるいは金属酸化物を、単独、あるいは複合して、炭と、ガラス粒子と、バインダー剤とからなる原料中に添加し、一緒に微粉砕混合して成型し、還元雰囲気において加熱焼成して製造する方法により実現する。
以上に説明した様に、本発明では、微粉砕した炭およびガラス粒子に、ケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、リン酸を基本構成成分とし、必要に応じて酸化ホウ素を添加したバインダー剤を加えて十分に混合し、調湿した後において高圧プレスして成型し、酸素の侵入を遮断する還元雰囲気において加熱焼成する方法により、炭粒子が連続して包括されるような炭の複合状態を実現し、実用的強度を有するとともに、炭の電気伝導性に基づいて、炭複合セラミックス質全体が電気伝導性を示す電気伝導性炭複合セラミックスを提供すること、並びに、上記原料に加えて、金属あるいは金属酸化物を添加して微粉砕混合し、上記同様の製造工程によって、電気伝導性を有する金属酸化物を担持した炭複合セラミックスを提供すること、などの課題が解決される。
以上の通り、本発明は、特許請求の範囲に記載の通りの電気伝導性炭複合セラミックスの製造方法であるので、原料を微粉砕して混合後、プレス成型し、酸素の侵入が阻止される還元雰囲気において高温焼成することにより、陶磁器質内装タイルに設定されたJIS 規格値値を十分クリア-する実用的強度と、貫通細孔による通気性とを有し、炭自体の特性に基づく高い吸放湿性能と、揮発性有機物の吸着除去作用等を有する電気伝導性炭複合セラミックスを提供することができる。
本発明による電気伝導性炭複合セラミックスは、成型型枠を使用してプレス成型されるので、成型型枠の形状に基づいて、板状、ブロック状、円筒状、曲面状など任意の形状に製作できる。
板状やブロック状に成型製造されれば、通気性を示す貫通細孔と連続した炭の相とによる、高い吸放湿性能や揮発性有機物の吸着性能などが有効に作用するので、居室空間や、調湿が必要な各種貯蔵庫等を構築するための壁材料等の建材として効果的に利用できる。
そのような用途においては、炭を複合固定するバインダーがセラミックス質であることに基づいて、高湿度雰囲気等においても、微生物による腐食分解を受けることのない長期的な耐久性を有するとともに、高温で発火して燃え上がることのない防火性を有するという特徴を持つ。従って、他の有機物バインダーを用いた炭複合資材を利用することが厳しい種々の特殊環境においても、長期耐久性を発揮し、有効に利用できる炭複合資材が提供される。また、水圏でも溶解することなく利用できるため、水の浄化資材としての用途にも適用可能である。
一方、電気伝導性炭複合セラミックスの持つ電気伝導性は、当該材料に電流を通じてジュール熱を発生させる発展的な用途に繋がる。炭複合セラミックスは多量含有している炭の特性に基づいて、遠赤外線の放出性能に優れると推定される。従って、電流を通じて発熱させ、より多量の遠赤外線を放出させ得る可能性がある。これにより、低温で発汗させるサウナ室や健康にやさしい居室空間の暖房が実現する可能性が有るほか、冷凍物質の温和な解凍にも利用可能と考えられるなど、その用途は広範になり得る。
金属酸化物を担持した電気伝導性炭複合セラミックスについては、担持された金属酸化物による触媒機能が付与されるので、通気性のある多孔性の触媒として、例えば脱臭装置の脱臭触媒など多方面において反応触媒として利用される可能性を持つ。そして、耐水性を有するので、水溶性物質の電気化学反応についての電極触媒として利用される可能性も有している。
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る炭複合ガラスセラミックスの製造方法を示す工程図である。
まず、概要を示すと、本発明では原料粉砕混合工程 S1 において、ボールミルを使用して、炭、ガラス粒子、バインダー剤を十分に微粉砕混合する。炭には有機質の炭化物、例えば木炭、竹炭、コーヒー炭、ヤシ殻炭、石炭コークス、石油コークスなどが挙げられ、好ましくは竹炭、コーヒー炭を使用し、ガラス粒子にはリサイクル用に粉砕された廃ガラスの粒子、あるいは市販のソーダライム系ガラス粒子が利用できる。
バインダー剤は、砕石泥、粘土、スーパークレイ、ベントナイト、長石、カオリン、などのケイ酸とアルミナの供給源となる窯業原料を単一あるいは複合して使用し、更に骨灰を加えて調合する。この基本的バインダー剤に加えて、必要に応じて、酸化ホウ素、あるいは、チタン、酸化チタン、酸化鉄などの金属や金属酸化物が添加される。
調湿工程 S2 においては、混合物の質量の約10パーセント程度の少量の水を添加し、ミキサーで混合して原料混合物を半乾燥状態とし、S3 の加圧成型後の取扱い中に容易に崩壊しない強度を保つようにする。
S3の加圧工程においては、成型用の金型を使用し、金型中に調湿した原料混合物を入れ、通常 5〜10N/mm程度の圧力でプレスするが、必要に応じてこの圧力範囲値よりも強い加圧力を適用する。金型から離型後、S4の乾燥工程で、時間をかけて十分乾燥して水分を除去する。
S5 の焼成準備工程では、耐熱ステンレス鋼製の箱型容器中に焼結防止のために炭粉末を塗布したセラミックス製の底板を置き、底板上に成型物を置いて成型物の周囲を炭粒子で覆い、ガス抜き用の小さな穴を開けた蓋をする。
このように、容器中に収納して成型物を炭で覆う方法は、電気炉を使用して炭複合セラミックスを製造する場合に適用するが、炭複合成型物の表面近くに含まれる炭の燃焼消失を防止する効果を持つ。
焼成の準備をした後、S6〜S8 の加熱工程に入る。加熱工程は、200℃で 2〜4時間程度の予熱工程 S6 の後、600〜1200℃ の間の設定温度にゆっくり昇温し、所定の温度で6〜12 時間保持する加熱保持工程 S 7 と、数時間かけての 100 ℃ への徐冷工程 S8 とからなる。
その後、放冷工程 S9 で室温近くまで放冷し、炭粒子に埋没した中から、成型構造を維持した状態で焼成された炭複合セラミックス製品を得る。この炭複合セラミックスは電気伝導性を有し、炭の含有量あるいは焼成温度の変化により電気伝導度の異なるものが製造される。
本特許出願時点において、炭の含有量の変化に基づく電気伝導度の制御範囲は0.4Ω/cm〜5.0 Ω/cm 程度となっており、セラミックスとしては比較的良好な電気伝導性を持つ。
まず、原料についての実施例を示すと、炭には、竹炭あるいはコーヒー炭が使用され、ガラス粒子は、ガラス瓶のリサイクル業者によって粉砕された3〜5mm 径の粒子、あるいは市販のソーダライム系のガラス粒子が使用される。なお、実施形態の製造工程S1において、ボールミルを使用しての粉砕混合工程があるため、炭とガラス粒子ともに、ボールミルで粉砕できるサイズであれば使用サイズは限定されない。
原料の混合比は、全原料の重量パーセントについて、炭とガラス粒子の合計量が70〜99%、バインダー剤が1〜30%とされ、バインダー剤中の骨灰量は1.0〜12.5% とされる。望ましくは、全原料について、炭とガラス粒子の合計が75〜90%、バインダー剤が10〜25%とされ、バインダー剤中の骨灰量 は1.5〜12.5% とされる。また、炭と、ガラス粒子およびバインダー剤、との配合比率は、炭含有量の違いにより電気伝導性が大きく変化するので、電気伝導度の必要性に応じて、炭添加量が重量パーセントで、10〜50%の範囲内において調整して使用される。
なお、バインダー剤原料は、砕石泥、スーパークレイ、ベントナイト、長石、カオリン、などの窯業原料を単一あるいは複合し、骨灰と併せて使用されるが、成分量調節のために、必要に応じて炭酸カリウム、炭酸カルシウムの試薬類でアルカリ金属酸化物と酸化カルシウムが追加される。そして、各原料の複合割合は、炭を除いたセラミックス質部分の酸化物組成が以下の範囲に入るように設定される。すなわち、セラミックス質部分を構成する酸化物の組成範囲は、酸化物のモルパーセント組成で、ケイ酸 47〜75%、酸化アルミニウム 2.5〜9%、酸化ナトリウムと酸化カリウムの合計量としてのアルカリ金属酸化物7〜15%、酸化カルシウム 10〜20%、リン酸0.4〜5.0% の範囲とされる。
なお、酸化ホウ素を添加する場合には、市販の化学試薬の酸化ホウ素を使用して、全酸化物組成中のモルパーセント組成で0〜17.5%が添加可能であるが、製造コストを考慮すると望ましくは0〜10%とした方が良く、原料ガラスの一部として、酸化ホウ素成分を補足するホウケイ酸ソーダ系ガラスも併用できる。
本発明において、セラミックス質部分の酸化物構成成分が、原料中の炭の化学組成を除外して、ガラス粒子と各バインダー剤とに由来する酸化物成分によって、酸化物成分のモルパーセントにより設定される理由について詳細に説明すると、炭を複合固定しているセラミックス質部分は、ガラス粒子とバインダー剤とで形成されるので、その酸化物含有量は、ガラス粒子とバインダー剤の両方に由来する酸化物成分の合計量となる。従って、炭の化学組成についてはバインダー組成から除外される。一方、上述の各種窯業原料と骨灰は、いくつかの成分を複合して含有するので、本発明においては、各原料の組成分析を蛍光X-線分析により実施して、それぞれの原料の酸化物組成を把握しており、使用する原料を構成する主要酸化物の重量比と、その原料の使用重量とから、各酸化物の合計質量比をモルパーセントとして求め、調合を行っている。このように組成分析を行って各原料の構成酸化物成分量を把握しておくことにより、種々雑多の窯業原料が本発明の原料の一部として効果的に複合利用される。
本発明で使用された各原料についての蛍光X-線分析による組成分析の結果を表1〜6に示す。なお、酸化物の名称については、SiO2はケイ酸、Al2O3は酸化アルミニウム、Na2Oは酸化ナトリウム、K2Oは酸化カリウム、CaOは酸化カルシウム、P2O5はリン酸である。
次に、製造工程の実施例を述べると、製造工程は、上記の組成範囲内に調合された、炭とガラス粒子とバインダー剤との原料混合物をボールミルに入れ、約24時間かけて十分粉砕混合される。
粉砕混合終了後、混合物を取り出し、水を混合物の全重量に対して重量パーセントで5〜10%となるように加え、ミキサーで混合して原料混合物全体が調湿された半乾燥状態とされる。
調湿後、任意の形状に作成した金型中に入れ、プレス機を使用して10N/mm 程度の圧力でプレスされる。10cm×10cm×1cmの板状成型物を作る場合、150〜160g程度の調湿原料混合物を金型に入れプレスすると所定のサイズの成型物が得られる。
成型終了後、110℃程度の温度で数日間乾燥され、乾燥後に焼成準備を行う。焼成のために一般的な酸化雰囲気の電気炉が使用される場合には、耐熱ステンレス鋼製、或いはSiC製の箱型容器が使用される。この耐熱容器中には、成型物が底板と焼結するのを防止するために、炭粉末あるいは離型剤を塗布したセラミックス製の底板が置かれ、この底板上に成型物が置かれ、更に、成型物の周囲全体が炭粒子で覆われるように炭粒子が充填され、次いでガス抜き用の小さな穴を開けた蓋がされる。
焼成準備終了後、成型物を入れた耐熱容器は電気炉中に置かれ、200℃で 2〜4時間程度の予熱工程と、600〜1200℃ の間の設定温度にゆっくり昇温して所定の温度で6〜12 時間保持する加熱保持工程で焼成される。
加熱保持工程終了後、徐冷、放冷工程を経て室温近くまで放冷され、炭粒子に埋没した中から、成型構造を維持した状態で焼成された炭複合セラミックス製品が得られる。
得られた製品については、10cm×10cm×1cmの板状に成型された製品を使って、曲げ強度試験、吸放湿試験、揮発性有機物の吸着除去試験等が行われ、円柱状に成型された製品を使って、破壊強度試験とガス透過性試験が行われる。そして、長さ20mm、幅10mm、厚み10mmの直方体の製品を使って、その10×10mmとなる両側断面に銀ペーストを塗布して電極とし、対極間の抵抗値を簡易抵抗テスターで測定する簡易的電気伝導度測定、あるいは、交流電流を用いた4端子法による精密な電気伝導度の測定が行われる。
次に、本発明において実施した、バインダー剤の組成を含めての具体的実施例を説明する。
表8に示した組成例1〜3は、炭、廃ガラス粒子、砕石泥、骨灰の4種原料で構成される最も簡便な原料組成である。表8中の組成例1〜3の組成について説明すると、組成例1〜3は、セラミックス質を形成する廃ガラス粒子と、砕石泥と、骨灰とに由来する各酸化物のモルパーセント組成を一定に保ち、炭の使用量を順次変化させている。表中の酸化物組成は、炭を除いた各原料に由来する酸化物組成であり、炭を複合担持するバインダーセラミックス質の酸化物組成と一致する。
なお、表8以降の各表中においても、その酸化物組成は、ガラス粒子を含めたバインダー剤の酸化物組成を示し、炭を複合担持するバインダーセラミックス質の酸化物組成に一致する。
組成例1〜3において、原料に使用されている廃ガラス粒子と砕石泥は、現時点で産業廃棄物に相当し、輸送費用のみで提供される。本組成例で使用された砕石泥は、上記表6に示された酸化物組成を持ち、鉄分の含有量が他の窯業原料に比べて高く、焼結性に優れている。この砕石泥を使用すると、ケイ酸含有量が70% 以上の実用的電気伝導性炭複合セラミックスを製造することが可能であった。従って、本発明を実施する上において、他の窯業原料や試薬を複合させて構成成分を調整する必要のない特に優れた原料である。
これらの原料組成の中で、組成例1と組成例2から、上述した製造工程において、それぞれ1000℃、6時間の加熱保持により製造された10cm×10cm×1cmの形状の板状炭複合セラミックスは、曲げ破壊荷重が15〜27 N/cm 程度の値を有し、陶磁器質内装タイルに設定されたJIS 規格値の12 N/cm を十分クリア-する実用的強度を有した。
しかし、組成例3から同様に製造された板状炭複合セラミックスは曲げ破壊荷重が10 N/cm以下の値となり、実用的強度を有しなかった。組成例1〜3では、表8中の酸化物組成に示されているように、ケイ酸が70パーセント以上の比較的高ケイ酸含有の酸化物化学組成となっている。従って、炭、廃ガラス粒子、砕石泥、骨灰の4種原料だけを使用して、実用的強度を有する炭複合セラミックスを製造する場合には、炭の配合比率について、炭が重量パーセントで25パーセント以下とすることが望まれる。しかしながら、後述する実施組成例の組成例5以降における酸化物組成においては、ガラス粒子の使用量を減じるとともに、砕石泥の代わりに他の窯業原料を複合した組成として、ケイ酸含有量が50〜60パーセント程度に調節される。このような組成においては、炭を重量パーセントで30〜45パーセント添加しても強度のある炭複合セラミックスが製造される。
一方、組成例1と2から製造した各板状炭複合セラミックスのサンプルについて、簡易テスターで電気抵抗を測定すると、それぞれ、100 〜 200 Ωcm-1程度の電気抵抗値を示す電気伝導性を有し、通気性があり、珪藻土の吸放湿性能を2倍以上上回る吸放湿性能と、揮発性有機物であるホルムアルデヒドの高い吸着除去作用を有した。
表9に示した組成例4について説明すると、組成例4は、砕石泥の代わりに一般的な窯業原料の、ベントナイト、カオリン、長石を組合わせて使用し、成分調整のために、アルカリ金属酸化物と酸化カルシウムをそれぞれ化学試薬のK2CO3 およびCaCO3 で補ったものである。この原料組成から、実施例の製造工程に従い、1000℃、6時間の加熱保持により製造された炭複合セラミックスは、表8の組成例1から製造された炭複合セラミックスの諸特性とほぼ同様であった。
表10に示した組成例5と組成例6について説明すると、組成例5と6は、炭複合セラミックスの通気性の調査と、1100℃ 以上の高温焼成時にリン酸を含んだ成分が揮発昇華し、炭複合セラミックスの焼結不良を起こすという問題点を調査した組成の代表例である。
なお、組成例5以降の各原料組成については、炭原料にコーヒー炭を、ガラス粒子に市販のソーダライム系ガラス粒子を使用している。
組成例5と組成例6の両組成間での大きな違いは、組成例5には酸化ホウ素が添加されておらず、組成例6には酸化ホウ素が添加されていることにある。その他の構成酸化物成分については、本発明の炭複合セラミックスの特性に著しい影響を与えない程度の差となっている。
組成例5と組成例6の両組成から製造された、直径25mm の円柱形で、長さ20mmの炭複合セラミックス製品のサンプルを、それぞれ内径25mmのガラス管に入れ、ガラス管と接する側面をエポキシ樹脂で密封して、左右断面間におけるガスの透過性をヘリウムガスの透過性で試験したところ、両サンプルともにガスの透過性を示し、貫通細孔を有することが確認された。そのガス透過量は、組成例5の組成から1000℃ 12時間の加熱保持で製造されたサンプルが5cm3/sec、組成例6 の組成から1000℃ 12時間の加熱保持で製造されたサンプルが 45cm3/sec、組成例6 の組成から1200℃ 12時間の加熱保持で製造されたサンプルが 20cm3/secの値を示した。このように、炭複合セラミックスの通気性は、リン酸と酸化ホウ素の両成分を添加したバインダー剤においてより良好になることが判明した。
一方、組成例5、 6の両組成から、本発明の製造工程に従って、1000℃ 12時間の加熱保持によって円柱形状の炭複合セラミックス製品を製造し、破壊強度を試験したところ、両組成からともに10 KNの破壊強度を有する良好な炭複合セラミックス成型物が製造された。しかし、組成例5について、1200℃ 12時間の加熱保持による焼成を行った場合には、成型物は全く焼結せずに粉体状となり、炭複合セラミックスが製造できなかった。そして、加熱保持前後においてリン酸含有量を比較したところ、焼成後には焼成前に比べてリン酸が2.4 モル%程度減少していた。このことから、組成例5では1200℃の高温において、リン酸を含む成分が揮発昇華し、バインダーとしての役割を持たなくなることが明らかとなった。
一方、組成例6については、1200℃ 12時間の加熱保持による焼成を行った場合においても、破壊強度10KNの強度を持つ炭複合セラミックスが製造され、加熱保持前後でのリン酸含有量にも大きな差は認められなかった。従って、組成例6では、酸化ホウ素がリン酸成分の昇華を抑制するような機構、あるいは酸化ホウ素がリン酸に置き換わってセラミックス骨格を形成する機構などにより、1200℃の高温でも強度のある炭複合セラミックスが製造できるものと考えられた。
このように、1200℃の高温加熱保持時にリン酸を含んだ成分が揮発昇華し、炭複合セラミックスの焼結不良を起こすという問題点は、酸化ホウ素の添加により解決された。
表11、の組成例7〜11について説明すると、組成例7〜11は、炭の添加量と電気伝導度について調査した組成例であり、それぞれの組成例においては、ガラス粒子を含めたバインダー剤中の酸化物組成が、同表中に示されたモルパーセントの酸化物組成にほぼ一定に保たれ、そして、炭添加量が重量パーセントで25〜45パーセントと順次変化させられている。なお、種々の形状に加工可能な一定の強度を持つ成型体を製造するためには、炭添加量の上限が45パーセント程度とされる。
このような原料組成から、本発明の製造工程に従って、1100℃と1200℃ においてそれぞれ12時間の加熱保持による焼成を行って、20mm×10mm×10mmの直方体の炭複合セラミックス製品を製造した。そして、10mm×10mmの両断面に銀ペーストを塗布して対向電極とし、両電極からそれぞれ内側へ2mm の位置の2個所に直方体サンプルを取巻く導線を取り付けてそれぞれ電極とし、四端子法により、交流電流を使用して対向電極間の電気伝導度(Ω-1cm-1)を測定した。
測定された電気伝導度を表12に示した。電気伝導度は、炭添加量が25パーセントのときに0.5 Ω-1cm-1程度の値を示し、45パーセントのときに1.9Ω-1cm-1程度の値を示した。この結果から、炭の添加量が増加するにつれて電気伝導度が増加することが明らかである。また、加熱保持温度が1100℃ より1200℃の場合に少し高い電気伝導度となる傾向が認められたが、著しい電気伝導度の差は認められなかった。
本発明の電気伝導性炭複合セラミックスの開発過程においては、上述の調査で高い電気伝導度を示した炭の添加量に基づき、炭を45%に固定し、バインダー剤について種々の酸化物組成に設定し、バインダー剤中の各酸化物成分量が炭複合セラミックスの電気伝導度に与える影響について精密に調査した。この調査では、モルパーセント組成で、ケイ酸(SiO2)48%〜58%、酸化アルミニウム(Al2O3)6.5%〜7.0%、アルカリ金属酸化物(Na2Oと K2Oの合計量)7%〜10%、酸化カルシウム(CaO)10%〜17%、リン酸(P2O5)2%〜4.5%、酸化ホウ素(B2O3)10%〜20% の含有量範囲内に設定した原料組成から多数の炭複合セラミックスを製造し、それぞれの電気伝導度を測定した。
上記組成範囲で製作された酸化物成分量が異なる各炭複合セラミックスサンプルは、それぞれ0.1〜2.3Ω-1cm-1の間の電気伝導度を示し、この調査組成範囲においては、大きな電気伝導度の変化は認められなかった。しかし、リン酸と酸化カルシウム、および酸化ホウ素の含有量が高くなると、それらの含有量が低い場合に比べて電気伝導度が低下する傾向が認められた。
表13 の組成例12と組成例13について説明すると、組成例12と組成例13は、上述の各酸化物成分量が電気伝導度に与える影響を調査した炭複合セラミックス製品サンプルにおいて、特に高い電気伝導度を示した原料組成例である。組成例12の原料組成から1200℃ 12時間の加熱保持により製造したものが、2.3Ω-1cm-1 の電気伝導度を示し、組成例13の原料組成から1200℃ 12時間の加熱保持により製造したものが2.2Ω-1cm-1 の電気伝導度をそれぞれ示した。
表14に示した組成例14〜17について説明すると、組成例14〜17は、酸化チタン、チタン、酸化鉄などの金属酸化物あるいは金属を添加し、金属酸化物を担持した炭複合セラミックスを製造した組成例である。なお、添加される金属チタンは本発明の製造工程において、最終的には酸化チタンに酸化されて炭複合セラミックスに含まれることがX-線回折により確認されている。
金属酸化物あるいは金属を添加したこれらの原料組成を用いて、本発明の製造工程により炭複合セラミックスの製造を行ったところ、1000℃〜1200℃ の加熱保持においては焼結状態が不良となり、成型物を製造することが不可能であった。しかし、600℃〜800℃ 間の温度で12時間の加熱保持を行うと、強度のある成型物を製造することが可能であった。この金属酸化物担持炭複合セラミックスの電気抵抗を簡易テスターで測定したところ、4〜10 Ω/cm 程度の抵抗値を示し、電気伝導性を有することが明らかであった。
そこで、製造された金属酸化物を担持した炭複合セラミックスを、直径3mmで長さ30mmの円柱形状に加工し、白金リード線を取付けてガラス管に収納し、直径3mmのセラミックス表面だけを露出させた電極を作り、ポテンシオスタットを用いて電解質水溶液中でのサイクリックボルタンメトリーを行ったところ、担持金属酸化物に基づいた酸化還元電流が測定されることが確認された。このように、金属酸化物を担持した炭複合セラミックスは、その電気伝導性に基づいて電気化学測定系の電極として使用することが可能であり、担持された金属酸化物に基づく電気化学特性が現れることが明らかであった。
ここで、本実施の形態の金属酸化物を担持した炭複合セラミックスの電子顕微鏡写真を示す。図2は炭複合セラミックスの30倍の電子顕微鏡写真であり、図3及び図4は炭複合セラミックスの断面のそれぞれ170倍及び350倍の電子顕微鏡写真である。
以上の実施例で説明されたように、本発明の方法により、電気伝導性の炭複合セラミックス、および金属酸化物を担持した電気伝導性の炭複合セラミックスが提供されることが明らかである。炭複合セラミックスが電気伝導性を示すことは、当該炭複合セラミックスがその材料全体に渡って一様に炭を複合しており、しかもその炭が連続して存在することを現わしており、本発明のバインダー剤と、実施工程により実現されたものである。
本発明の一実施形態に係る炭複合ガラスセラミックスの製造方法を示す工程図である。 炭複合セラミックスの30倍の電子顕微鏡写真である。 炭複合セラミックスの断面の170倍の電子顕微鏡写真である。 炭複合セラミックスの断面の350倍の電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. 炭、ガラス粒子、およびバインダー剤とを微粉砕して混合し、混合物を加圧成型した後、還元条件において600℃〜1200℃の高温で焼成して製造される電気伝導性炭複合セラミックス。
  2. 請求項1記載のバインダー剤が、ケイ酸、酸化アルミニウム、アルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、リン酸を基本組成とし、さらに酸化ホウ素を加えることのできる組成であることを特徴とする請求項 1に記載の電気伝導性炭複合セラミックス。
  3. 請求項1、および請求項2記載の、炭と、ガラス粒子と、バインダー剤、とに加えて、金属あるいは金属酸化物を添加し、還元条件において600〜1200℃の高温で焼成することにより製造される、金属酸化物を担持した電気伝導性炭複合ガラスセラミックス。
  4. 微粉砕した炭およびガラス粒子と、請求項2記載のバインダー剤とに、必要に応じて請求項3記載の金属成分を加えて混合し、任意の形状に加圧成型し、還元条件において600℃〜1200℃の高温で焼成する方法による電気伝導性炭複合ガラスセラミックスの製造方法。

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