JP2008054694A - 酵母を配合するミネラル強化流動食 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】亜鉛、マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種をミネラル成分として含有する酵母であって、
亜鉛については2重量%以上、マンガンについては2.5重量%以上、クロムについては0.1重量%、モリブデンについては0.1重量%以上含有する酵母の少なくとも1種を、
乾燥形態の酵母換算で、0.001〜0.2重量%含有することを特徴とする流動食であって、亜鉛を含有する酵母を用いる場合には、マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種と併用する、前記流動食。
【選択図】なし
Description
現在、平成12年度から採用される予定の「第6次改訂栄養所要量」では、ミネラルに関して、これまでのカルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、リン及びマグネシウムに加え、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロム及びモリブデンについても適正摂取量或いは推奨栄養所要量と許容上限摂取量が定められる方向で検討されている。
これらの微量元素の欠乏症としては、亜鉛では味覚障害、免疫機能低下等が挙げられる。また、銅欠乏に関しては、銅欠乏による貧血の他に、心臓関連の異常も観察されている。また、セレンは動物の成長と生殖に必要であり、種々の疾病予防の作用も持つと言われている。これら微量元素は生体の維持や成長に必須の栄養素と言える。
これまで、このような微量元素を強化する場合には、牡蛎抽出物、植物胚芽抽出物、大豆蛋白等で強化しているものが認められる。これらを使用してミネラル成分を強化する場合、牡蛎抽出物では独特の味が出てしまい味の面で課題を有している。また、大豆蛋白質等では十分量添加するにはかなりの添加量を必要とし、ざらつき感があったり、粘度が上昇することにより流動性が悪くなり十分に添加するのが困難であるという問題点がある。
このような情況下に上記ミネラル成分、特にその微量元素を強化できる流動食配合用食品原料の開発が求められている。
本発明の目的は、味や風味に何等影響を与えることなく、またざらつき感、乳化不良等を有しない流動性その他の優れた物性を有するこのようなミネラル成分、特にその微量元素を十分に配合した流動食を開発することにある。
即ち、本発明は、酵母を配合した流動食に存する。酵母として、好ましくはミネラル成分を高濃度に含有するような酵母、例えば亜鉛含有酵母、銅含有酵母等を使用することができる。流動食としては、濃厚流動食が好適である。
本発明は、亜鉛、マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種をミネラル成分として含有する酵母であって、
亜鉛については2重量%以上、マンガンについては2.5重量%以上、クロムについては0.1重量%、モリブデンについては0.1重量%以上含有する酵母の少なくとも1種を、
乾燥形態の酵母換算で、0.001〜0.2重量%含有することを特徴とする流動食であって、亜鉛を含有する酵母を用いる場合には、マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種と併用する、前記流動食を提供する。
本発明の流動食の形態としては、固体状、特に粉末状、液体状及び半固形状の何れかの形態にあることが好ましい。
尚、酵母を新しい食品原料とし使用する試みとしてこれまでに、製造方法に関して亜鉛高含有酵母の製造(特開平8−332082号公報参照。)が提案され、また食品への利用に関して、美容・健康向け組成物(特開平9−124438号公報参照。)が提案されている。しかし、前者に関して、食品への具体的利用方法については全く触れていない。また、後者では酵母を塩酸で加水分解後、アルカリで中和し、遠心分離し濾過した抽出物を飲料へ使用することが提案されているが、酵母そのものを飲料に添加することには触れておらず、そのときの沈殿、ざらつき感、乳化不良等の物性改善には示唆さえ見当たらない。
そのエネルギー値については、通常1kcal/ml以上であり、好ましくは1〜2kcal/ml程度である。
蛋白質の原料としては、乳蛋白質(全乳蛋白質、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム等)及びこれらの加水分解物、その他の動物性蛋白質(卵蛋白質、ゼラチン等)及びこれらの加水分解物、植物性蛋白質(大豆等)及びその加水分解物、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン等)が挙げられる。流動食における総蛋白質の配合比率については、2〜9g/100ml程度が好ましい。
脂質としては、一般に食用として利用されているものを使用することができる。例えば、植物性油脂(大豆油、コーン油、サフラワー油、ヤシ油、オリーブ油等)、動物性油脂(魚油、乳脂肪、牛脂、ラード等)、その他中鎖脂肪酸、高度不飽和脂肪酸等も使用可能である。流動食における脂質の配合比率については、1.5〜9g/100ml程度が好ましい。
使用するビタミンとしては、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、ナイアシン、パントテン酸、葉酸等が使用され、これらを組み合わせて使用することができる。
ミネラルとして、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄等は、食品添加物扱いの塩の形態で使用することができ、また、これらを組み合わせて使用することもできる。
本発明の流動食は、前記流動性を有する液体状の食品であればよく、例えば濃厚流動食が含まれ、また高カロリーで、良好なチューブ流動性、低浸透圧、耐加熱処理性を有する液状栄養食が含まれる。更に、このような液状栄養食を収納する栄養剤等液状栄養食及び無菌高カロリー流動食も含まれる(特開平8−196236号公報、特開平10−210951号公報等参照。)。
本発明に使用する酵母、特にミネラル成分を高含量に含む酵母については食用酵母であれば特に制限は無く従来法により製造することもできる(特開平8−332082号公報参照。)が、好ましくはパン酵母(Saccharomyces cerevisiae等)ビール酵母、ぶどう種酵母、清酒酵母、アルコール酵母、甘酒酵母、味噌醤油酵母等、食品に利用されるものを適用することができる。
本発明に使用する酵母の製造方法に関しては特に困難は無く、例えば、炭水化物、蛋白質、ミネラル、ビタミン等を含んだ栄養培地に亜鉛、銅、マンガン、セレン、クロム、モリブデン等の必要なミネラル成分を強化し、前記に示したような酵母を培養することにより目的とするミネラル成分を高濃度に含んだ酵母を製造することができる。亜鉛含有酵母の場合、例えば塩化亜鉛等の亜鉛化合物を必要量培地に添加して目的とする亜鉛を高含量に含む酵母を製造することができる。
このようにして製造された酵母は、蛋白分解酵素のような酵素処理によって細胞壁を壊した後、そのまま若しくは熱処理、スプレードライして粉末にしたものを流動食に配合して使用することができる。
同様に、それぞれマンガンについては、好ましくは2.5重量%以上で最適には5重量%程度以上、セレンについては、好ましくは0.05重量%以上で最適には0.1重量%程度以上、クロムについては、好ましくは0.1重量%以上で最適には0.2重量%程度以上、モリブデンについては、好ましくは0.1重量%以上で最適には0.2重量%程度以上含有する酵母を使用することができる。以上、化合物の場合各元素換算値で表わされている。本発明に使用する酵母には、これらの酵母を少なくとも1種含むことができる。
ミネラル高含有酵母を配合した流動食における酵母(前記粉末状で)の含有量については、前述の通りヒトが食する段階の液状流動食の状態で好ましくは0.001〜0.2重量%程度、より好ましくは0.005〜0.07重量%程度、更に好ましくは0.01〜0.06重量%程度の範囲である。0.001重量%未満の添加では、その栄養効果が期待できず、また0.2重量%を超えると酵母の沈殿が生じたり、乳化状態が悪くなり物性的に問題が生じ易くなり、また官能評価上もざらつきを感じるようになるので、何れも好ましくない。この場合、更に味や風味の点で異様な味、異風味が発現し易くなる。
流動食を製造する場合、流動食が固体(粉末等の状態)又は半固体状である場合は、液体で1kcal当たりに換算し、上記段落に示す酵母の含有量となるように調製することが好ましい。
本発明の形態としては、液体状の流動食は勿論、半固形状の形態にあるもの、及び水に溶解して液体の流動食にて使用可能な粉末状の形態にあるものを含み、これら何れの形態にあるものも本発明の流動食に含まれる。
尚、UHT滅菌法では、間接加熱方式、直接加熱方式のどちらでも使用することができる。また、容器としては軟質合成樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等)で密閉され加熱殺菌可能な容器が使用される。また、紙にアルミ箔、合成樹脂(例えば、ポリエチレン)がラミネートされた素材により形成されたものが使用され、この容器はアセプティック包装法に適用される。
中味の流動食を殺菌する方法としては、オートクレーブ処理法の場合110〜120℃程度で10〜30分程度の加熱処理、UHT滅菌法を用いた間接加熱滅菌法の場合で、130〜150℃、2〜60秒程度の加熱処理が好適である。
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。尚、%値は重量比率で表わされている。
流動食の配合組成は、下記に示す通りである。脱イオン水を70℃に加温し、これに酵母、カゼインナトリウム、デキストリン、ミネラルミックス、ビタミンミックス及びミルクフレーバーを加え混合した。これとは別に、容器中で大豆油を70℃に加温した後、これに乳化剤を加え、これを先に調製した水溶液に加えて混合した。得られた混合物について、高圧ホモジナイザーを使用して49MPs(500kgf/cm2)にて1回乳化を行った。得られた乳化物についてレトルト(120℃20分)処理により殺菌し、評価用流動食の試作品を調製した。乾燥酵母(亜鉛強化タイプ)の含有量について、亜鉛として2.5mg/液状流動食100gとなるように乾燥酵母を添加している。
次に、評価用流動食について官能評価を行った。官能評価は熟練したパネラー4名により行った。
使用する酵母に関しては、本発明品として下記試料A,Bを使用し、比較のために対照品として亜鉛酵母含有量を異にする市販品「亜鉛イースト」Bio Springer社製(試料C)、更には酵母無添加のものも調製し、比較した。
酵母中の亜鉛含有量(乾燥亜鉛酵母中に含有するZnの重量%)は次の通りである。
A:High Zinc Yeast(Grow社製) 5.0%
B:ミネラル酵母−Zn(オリエンタル酵母社製) 2.0%
C:亜鉛イースト(Bio Springer社製) 0.26%
(酵母を除いた流動食の配合組成)
成分 配合組成(重量%)
カゼインNa 4.5
大豆油 2.6
デキストリン 13.6
水溶性食物繊維 1.1
(難消化性デキストリン)
ビタミンミックス 0.07
ミネラルミックス 1.4
ミルクフレーバー 0.2
乳化剤 0.5
脱イオン水 76.03
合計 100
亜鉛含有酵母(亜鉛として2.5mg/全流動食100g)
また、仕上がり流動食中のビタミン及びミネラルの含有量(流動食100g中)は次の通りである。
ビタミン 含量
A 170I.U.
B1 0.06mg
B2 0.08mg
B6 0.25mg
B12 0.5μg
C 5mg
D 8.3mg
ミネラル 含量
Na 100mg
K 70mg
Ca 60mg
Mg 13mg
P 85mg
Fe 1.2mg
E 0.7I.U.
ナイアシン 1.0mg
パントテン酸 0.75mg
葉酸 25μg
結果を表1に示した。
<実施例3>
実施例1で使用したものと同じ配合組成で各原料を混合し、同様に流動食の試作品を調製した。UHT(145℃15秒)にて殺菌の後、官能評価を行った。官能評価は熟練したパネラー4名によって行った。
ビタミンミックスにはビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、葉酸、パントテン酸カルシウム及びナイアシンを含む。また、ミネラルミックスにはナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン及び鉄を含む。
評価結果を表3に示した。
<実施例5>
流動食の配合組成に関し、添加する酵母を除いた組成は実施例1に示したものと同じである。脱イオン水(70℃)に、酵母、ガゼインナトリウム、テキストリン、ミネラルミックス、ビタミンミックス及びミルクフレーバーを加え混合した。別の容器に大豆油を70℃に加温し、これに乳化剤を加え、これを先に調製した水溶液に加えて混合した。これを、高圧ホモジナイザーを用いて49MPs(500kgf/cm2)にて1回乳化を行った。これを、レトルト(120℃20分)にて殺菌し、評価用流動食の試作品を調製した。
評価用流動食につき官能評価を行った。官能評価は熟練したパネラー4名によって同様に行った。
使用する酵母に関しては、下記のミネラル含有量になるよう混合した酵母(「ミックスミネラルイースト」Grow社製)を使用した。流動食への酵母の添加量について、乾燥酵母(ミックスタイプ)0.05〜1%/全流動食となるように乾燥酵母が添加された。尚、比較対照品として酵母無添加のものも調製した。
ミネラル含有量(乾燥酵母中の重量%)
亜鉛 3.53% 亜鉛酵母中の亜鉛含有量 5.0%
銅 0.24% 銅酵母中の銅含有量 1.0%
セレン 0.0059% セレン酵母中のセレン含有量 0.1%
ビタミンミックスにはビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、葉酸、パントテン酸カルシウム及びナイアシンを含む。ミネラルミックスには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン及び鉄を含む。
尚、仕上がり流動食中のビタミン及びミネラルの含有量(100g中)については、実施例1に示した通りである。
その結果を表5に示した。
Claims (7)
- 亜鉛、マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種をミネラル成分として含有する酵母であって、
亜鉛については2重量%以上、マンガンについては2.5重量%以上、クロムについては0.1重量%、モリブデンについては0.1重量%以上含有する酵母の少なくとも1種を、
乾燥形態の酵母換算で、0.001〜0.2重量%含有することを特徴とする流動食であって、亜鉛を含有する酵母を用いる場合には、マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種と併用する、前記流動食。 - 蛋白質、脂質、炭水化物及びビタミンを含有する請求項1記載の流動食。
- 蛋白質を2〜9g/100ml、脂質を1.5〜9g/100ml、炭水化物を10〜35g/100ml含有する請求項2記載の流動食。
- 乳化された形態にある請求項1〜3のいずれか1項記載の流動食。
- マンガン、クロム及びモリブデンの少なくとも1種を含有する酵母を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の流動食。
- 粉末状、液体状及び半固形状の何れかの形態にある請求項1記載の流動食。
- 容器内に収納された状態にあり、少なくとも殺菌されている請求項1〜6の何れか1項記載の流動食。
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