以下に、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本第1実施形態に係り、自車両と前方障害物との衝突を予測判定し、予測判定に基づいて乗員保護装置を作動させる衝突予測システムの全体を概略的に示すブロック図である。この衝突予測システムは、衝突を予測して衝突可能性を判定する衝突予測装置10と、運転者に経路案内するとともに、各種情報を供給するナビゲーション装置20とを備えている。
これら衝突予測装置10とナビゲーション装置20とは、バス30、ゲートウェイコンピュータ40およびLAN(Local Area Network)50を介して、互いに通信可能に接続されている。ここで、ゲートウェイコンピュータ40は、衝突予測装置10とナビゲーション装置20との間で共有される各種データおよびこれら装置10,20の連携を制御する制御信号の流れを統括的に制御するコンピュータである。また、バス30には、車両の衝突を回避する装置や車両の衝突時のダメージを軽減する装置などからなる乗員保護装置60が接続されている。
衝突予測装置10は、図2に示すように、衝突予測電子制御ユニット11(以下の説明において、単に衝突予測ECU11という)を備えている。衝突予測ECU11は、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としている。そして、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20および各センサから供給された各信号を取得して、図4から図8に示すプログラムを実行する。このため、衝突予測ECU11には、車速センサ12、舵角センサ13、ヨーレートセンサ14、レーダセンサ15および加速度センサ16が接続されている。ここで、これら各センサから出力された検出値は、後述するバスインターフェース17を介してバス30に出力されて、ナビゲーション装置20および乗員保護装置60によっても利用可能とされている。
車速センサ12は、車速に応じたパルス信号に基づいて、車速Vを検出して出力する。舵角センサ13は、前輪の操舵角に応じた信号を出力する。そして、衝突予測ECU11によって前輪の操舵角δが検出される。ヨーレートセンサ14は、自車両の重心周りの回転角速度に応じた信号に基づいて自車両のヨーレートγを検出して出力する。
レーダセンサ15は、自車両の前端部(例えば、フロントグリル付近)に組み付けられており、ミリ波の送受信に要する時間に基づいて、自車両の前方の所定範囲内に存在する前方障害物との相対距離を表す相対距離Lおよび相対速度を表す相対速度VRを検出して出力する。また、レーダセンサ15は、自車両を基準として、前方障害物の存在方向(上下方向、左右方向)を検出し、同存在方向を表す存在方向情報も出力する。加速度センサ16は、自車両の略重心位置に設置されており、自車両の上下方向の変位速度に応じた信号に基づいて上下方向の加速度Gを検出して出力する。
また、衝突予測ECU11には、バスインターフェース17が接続されている。バスインターフェース17は、バス30に接続されており、ナビゲーション装置20からの各種情報を衝突予測ECU11に供給したり、衝突予測ECU11から供給される各センサ12,13,14,15,16の各検出値や各種情報をナビゲーション装置20および乗員保護装置60に出力したりする。
ナビゲーション装置20は、図3に示すように、ナビゲーション電子制御ユニット21(以下の説明において、単にナビゲーションECU21という)を備えている。ナビゲーションECU21も、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品としている。そして、ナビゲーションECU21には、GPS(Global Positioning System)受信機22、ジャイロスコープ23、記憶装置24およびLANインターフェース25が接続されている。
GPS受信機22は、自車両の現在地を検出するための電波を衛星から受信するとともに、自車両の現在地を例えば座標データとして検出して出力する。ジャイロスコープ23は、自車両の進行方位を検出するための車両の旋回速度を検出して出力する。そして、ナビゲーションECU21は、GPS受信機22およびジャイロスコープ23から出力された各検出値の取得に加えて、車速センサ12から出力された車速Vを取得して、自車両の現在地を検出する。
記憶装置24は、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMなどの記録媒体および同記録媒体のドライブ装置を含むものであり、ナビゲーションECU21で実行される図示しないプログラムおよび道路データを含む各種データを記憶している。ここで、道路データは、道路種別(高速道路、国道、県道など)を表す道路種別データ、道路周辺の環境(トンネルや鉄橋など)を表す道路環境データ、道路形状(車線数やカーブ半径など)を表す道路形状データ、道路の路面状態(路面の摩擦係数μなど)を表す路面状態データおよび道路の勾配値および同勾配値を有する道路長を表す道路勾配データを含んで構成されている。
LANインターフェース25は、車両内に構築されたLAN50と接続し、ナビゲーションECU21とゲートウェイコンピュータ40との間の通信を可能とするものである。これにより、LANインターフェース25は、LAN50を介して、ナビゲーションECU21からの各種情報をゲートウェイコンピュータ40に供給したり、衝突予測装置10から供給された各種情報をゲートウェイコンピュータ40から取得してナビゲーションECU21に供給したりする。
乗員保護装置60は、衝突予測装置10の衝突予測に基づいて衝突を回避するために自車両の走行状態を制御する装置や、車両衝突時に乗員に与えるダメージを軽減するための装置から構成されている。この乗員保護装置60としては、例えば、自車両の車速を減速制御する装置、運転者のブレーキ踏力を補助する装置、衝突を回避するためにステアリングを自動的に操舵する自動操舵装置、衝突時に乗員の前方への移動を防止する装置、エアバックの作動およびエアバック作動時の衝撃吸収効率を適正化する装置、衝撃エネルギーの吸収荷重を変更する装置、操作ペダルを移動する装置や乗員保護装置60および自車両の走行状態制御装置以外の装置への電源供給を遮断する遮断回路などがある。
なお、これらの乗員保護装置60を構成する各装置は、自車両の衝突直前または衝突直後に作動するものであり、本発明とは直接関係しない。したがって、本明細書において、これらの各装置の作動の詳細な説明は省略するが、以下に簡単に説明しておく。
自車両の車速を減速制御する装置は、検出された前方障害物との相対距離や相対速度が所定範囲を外れたときに、適正な相対距離や相対速度を確保するために、自動的にブレーキ装置を作動させて自車両の車速を減速させる装置である。運転者のブレーキ踏力を補助する装置は、衝突を回避するために運転者がブレーキペダルを操作して自車両を停車させるときに、運転者の踏力を補助(詳しくは、ブレーキ油圧の増圧および増圧状態の維持)して、自車両のブレーキ装置を確実に作動させる装置である。衝突を回避するためにステアリングを自動的に操舵する自動操舵装置は、衝突回避時に、運転者のステアリング操作を補助したり、衝突回避方向に確実にステアリングを操舵したりする装置である。
衝突時の乗員の前方への移動を防止する装置としては、例えば、シートベルト巻き取り装置がある。このシートベルト巻き取り装置は、自車両が前方障害物に衝突した際に、慣性によって乗員が前方へ移動することを防止する。すなわち、シートベルト巻き取り装置は、自車両の衝突を検出すると、シートベルトを巻き取るとともに巻き取った位置でロックし、シートベルトが引き出されることを防止するようになっている。なお、この機能を実現するために、シートベルトを電動モータまたは圧縮ガスを利用して巻き取りロックする装置が実施されている。
エアバックの作動およびエアバック作動時の衝撃吸収効率を適正化する装置としては、例えば、乗員のシートベルト装着の有無あるいは乗員の体格(体重)に応じて、ステアリングコラムを移動させるコラム移動装置がある。このコラム移動装置は、乗車した乗員とステアリングとの距離を、エアバックの展開に必要な距離として効率よく衝撃を吸収するために、ステアリングコラムを移動させるようになっている。なお、この機能を実現するために、ステアリングコラムの角度を変更する装置、ステアリングと乗員との距離を変更する装置あるいはシートを前後方向に移動させる装置などが実施されている。
衝撃エネルギーの吸収荷重を変更する装置としては、例えば、ステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって、運転者の操舵ハンドルへの衝突を緩和する衝撃エネルギー吸収装置がある。この衝撃エネルギー吸収装置は、車両衝突に伴って、運転者がステアリングに衝突しても、衝突に伴い生じた衝撃エネルギーをステアリングコラムの変形に伴うエネルギー吸収によって的確に緩和するようになっている。なお、この機能を実現するために、例えば、ステアリングコラムの外周面方向から円錐状のピンを挿入し、所定量挿入されたピンがステアリングコラムの外周面を裂きながら相対移動するときの変形抵抗を利用する衝撃エネルギー吸収装置などが実施されている。
操作ペダルを移動する装置としては、例えば、車両衝突直前や車両衝突時に、操作ペダルを車両前方へ移動させるペダル移動装置がある。このペダル移動装置は、車両衝突を検出すると、慣性によって投げ出される運転者の脚部と操作ペダル(例えば、アクセルペダル、ブレーキペダルなど)との衝突を回避するために、操作ペダルを車両前方へ移動させるようになっている。なお、この機能を実現するために、例えば、電動モータの駆動力によって操作ペダルを移動させたり、アクセルペダルとブレーキペダルとの移動タイミングを変更して移動させるペダル移動装置などが実施されている。
乗員保護装置60および自車両の走行状態制御装置以外の装置への電源供給を遮断する遮断回路は、上記の乗員保護装置60や車両走行制御装置(例えば、ABSや車両安定制御装置など)に、優先的に電源を供給するために、その他の装置への電源供給を遮断する遮断回路である。すなわち、遮断回路は、車両衝突や衝突回避に必要でない装置、例えば、オーディオ装置などへの電源供給を遮断する。
次に、上記のように構成した本実施形態に係る衝突予測システムの作動を詳細に説明する。図示しないイグニッションスイッチの投入により、衝突予測装置10の衝突予測ECU11は、図4の衝突予測プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行し始める。
この衝突予測プログラムの実行は、ステップS10にて開始され、ステップS11にて、衝突予測ECU11は、レーダセンサ15から出力された自車両前端から前方障害物までの相対距離Lおよび自車両と前方障害物との間の相対速度VRを取得する。そして、取得した相対距離Lおよび相対速度VRを今回のプログラムの実行によって入力されたことを表す今回相対距離Lnewおよび今回相対速度VRnewとして設定する。
今回相対距離Lnewおよび今回相対速度VRnewの設定後、衝突予測ECU11は、ステップS12にて、今回相対速度VRnewが正であるか否かを判定する。今回相対速度VRnewが正でなければ、ステップS12にて「No」と判定して、ステップS24に進み、プログラムの実行を一旦終了する。これは、今回相対速度VRnewが正でない場合には、自車両の前端部から前方障害物までの相対距離Lが変化しないまたは増加していることを意味し、この場合には、自車両が前方障害物に衝突する可能性がないので、衝突予測する必要がないからである。
また、今回相対速度VRnewが正であれば、ステップS12にて「Yes」と判定して、ステップS13に進む。ステップS13においては、衝突予測ECU11は、舵角センサ13からの出力信号に基づいて検出した操舵角δの絶対値|δ|が予め設定された操舵角δsよりも大きいか否かを判定する。この判定によって、衝突予測ECU11は、自車両が現在カーブ走行しているか否かを判定することができる。すなわち、操舵角δの絶対値|δ|が予め設定された操舵角δs以下であれば、自車両がカーブ走行していないため、衝突予測ECU11は「No」と判定して、ステップS16に進む。
一方、操舵角δの絶対値|δ|が予め設定された操舵角δsよりも大きければ、自車両がカーブ走行しているため、衝突予測ECU11は「Yes」と判定して、ステップS14に進む。ステップS14においては、衝突予測ECU11は、カーブ道路上障害物存在確認ルーチンを実行する。このカーブ道路上障害物存在確認ルーチンは、レーダセンサ15によって検出された前方障害物であっても、自車両がカーブ走行することにより、実際には衝突する可能性が低い前方障害物(例えば、反対車線を走行している車両や、反対車線側に設置された看板など)を除外して、衝突する可能性が高い前方障害物を正確に選択するルーチンである。
このカーブ道路上障害物存在確認ルーチンは、図5に示すように、ステップS100にて開始され、ステップS101にて、自車両が現在カーブ走行しているカーブ半径R1を演算する。すなわち、衝突予測ECU11は、舵角センサ13からの出力信号に基づく操舵角δおよびヨーレートセンサ14からのヨーレートγを利用して、自車両のカーブ半径R1を演算して、ステップS102に進む。
ステップS102においては、衝突予測ECU11は、自車両と前方障害物との相対距離すなわち今回相対距離Lnewが所定距離(例えば、50m)以下であるか否かを判定する。すなわち、今回相対距離Lnewが50m以下であれば、衝突予測ECU11は「Yes」と判定して、ステップS103に進む。一方、今回相対距離Lnewが50mよりも大きければ、衝突予測ECU11は「No」と判定して、ステップS107に進む。ここで、この今回相対距離Lnewの比較判定においては、衝突予測ECU11は、その他の条件を加えて相対距離を判定することも可能である。すなわち、衝突予測ECU11は、その他の条件として、例えば、今回相対速度VRnewが120km/h以下の場合に相対距離を判定する条件や自車両と前方障害物との衝突時間が1.5sec以内の場合に相対距離を判定する条件などに基づいて、相対距離を判定することもできる。
ステップS103においては、衝突予測ECU11は、前方障害物が存在しているカーブ半径R2を推定する。具体的に説明すると、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20から前方障害物が存在している道路の道路形状データおよび路面状態データを取得する。ここで、衝突予測ECU11がナビゲーション装置20のナビゲーションECU21と通信して道路形状データおよび路面状態データを取得する動作について説明する。まず、衝突予測ECU11は、バス30を介して、ゲートウェイコンピュータ40に前方障害物までの相対距離すなわち今回相対距離Lnewを供給する。
ゲートウェイコンピュータ40は、LAN50を介して、供給された今回相対距離Lnewをナビゲーション装置20のナビゲーションECU21に供給する。ナビゲーションECU21は、LANインターフェース25を介して、今回相対距離Lnewを取得し、図示しないRAMに一時的に記憶する。また、ナビゲーションECU21は、GPS受信機22、ジャイロスコープ23および車速センサ12からの各検出値を取得して、自車両の現在地および進行方向を検出する。そして、ナビゲーションECU21は、検出した自車両の現在地、進行方向および前記記憶した今回相対距離Lnewを利用して、前方障害物が存在している位置を確認する。続いて、ナビゲーションECU21は、記憶装置24を検索して、存在位置を確認した前方障害物が存在している道路の道路形状データおよび路面状態データを取得するとともに、取得した各データを、LAN50を介して、ゲートウェイコンピュータ40に供給する。
このように、道路形状データおよび路面状態データがナビゲーションECU21から供給されると、ゲートウェイコンピュータ40は、供給された各データをバス30を介して、衝突予測ECU11に供給する。衝突予測ECU11は、供給された道路形状データおよび路面状態データを取得して、図示しないRAMに一時的に記憶する。そして、衝突予測ECU11は、記憶した道路形状データを利用して、前方障害物の存在状態すなわち道路のカーブ半径R2を推定する。このとき、衝突予測ECU11は、記憶した道路形状データに道路の車線数を表すデータが含まれているため、今回相対距離Lnewおよび存在方向情報を利用して、前方障害物が存在している車線を特定する。
そして、衝突予測ECU11は、特定した車線のカーブ半径を前方障害物が存在するカーブ半径R2として推定する。ここで、衝突予測ECU11は、前方障害物が移動している場合には、記憶した路面状態データを利用して、道路形状データに基づいて推定したカーブ半径R2を補正して、より正確にカーブ半径R2を推定することも可能である。このように、カーブ半径R2を推定すると、衝突予測ECU11は、ステップS104に進む。
ステップS104においては、前記ステップS101にて演算したカーブ半径R1と前記ステップS103にて推定したカーブ半径R2とを今回相対距離Lnewで結ぶ曲線、例えば、クロソイド曲線を周知の演算方法を利用して演算する。なお、クロソイド曲線の演算処理については、周知の方法によって演算されるものであり、本明細書においては、その詳細な説明を省略するが、以下に、簡単に説明しておく。
曲線としてのクロソイド曲線とは、その曲率が弧長に比例する曲線のことをいい、基本式としてR×L=A2で表される。ここで、Lは、クロソイド原点から任意点Pまでの曲線長、Rは、任意点Pにおける曲率半径、Aはクロソイドパラメータをそれぞれ示す。そして、この固有の特性を利用して、円弧同士、線分同士、または線分と円弧間を連結する曲線として、例えば、道路設計などに利用されている。
このクロソイド曲線を用いて、衝突予測ECU11は、カーブ半径R1とカーブ半径R2とを連結する。すなわち、衝突予測ECU11は、上記クロソイド曲線の基本式を利用して、Lを自車両と前方障害物間の距離すなわち今回相対距離Lnewとし、Rを前方障害物の位置における曲率半径とし、所定のクロソイドパラメータを利用して、クロソイド曲線を演算する。なお、曲線は、クロソイド曲線として演算することに限られず、例えば、単に、今回相対距離Lnewの1/2の地点で、カーブ半径R1がカーブ半径R2に変化する曲線として演算することも可能である。そして、衝突予測ECU11は、曲線を演算すると、ステップS105に進む。
ステップS105においては、衝突予測ECU11は、前記ステップS104にて演算した曲線に従って自車両が今回相対距離Lnewだけ走行した地点を通るカーブ半径R3を演算する。すなわち、衝突予測ECU11は、前記ステップS104にて演算した曲線上の地点であって自車両から今回相対距離Lnew離れた地点を選択する。そして、衝突予測ECU11は、選択した地点と、例えば、自車両の基準点を通るカーブ半径R3を演算して、ステップS106に進む。
ステップS106においては、衝突予測ECU11は、自車両がカーブ半径R3にて今回相対距離Lnewだけ走行した場合における前方障害物と自車両との相対的な横位置すなわち相対横位置Xrを演算する。以下、この相対横位置Xrの演算について説明するが、この演算については、種々の演算方法が存在する。そこで、本実施形態においては、相対横位置Xrを、自車両の中心軸と前方障害物の側面との間のオフセット量として説明する。また、相対横位置Xrを、自車両が走行するカーブ半径R3と前方障害物までの今回相対距離Lnewとを用いて演算する場合について説明する。
上記の相対横位置Xrを演算するにあたり、まず、衝突予測ECU11は、自車両の中心軸と前方障害物の側面との間の瞬間的な相対横位置Xを検出する。すなわち、衝突予測ECU11は、前方障害物までの今回相対距離Lnewおよび前記ステップS103にて推定した前方障害物が存在するカーブ半径R2を利用して、自車両の位置および進行方向を基準としたときの、前方障害物の存在方向(進行方向)に基づいて、相対横位置Xを検出する。
この検出された相対横位置Xは、今回プログラムが実行された瞬間における相対横位置Xであるため、自車両が前方障害物に対して直進して接近すると仮定した場合の相対横位置Xである。しかしながら、自車両がカーブ半径R3でカーブしながら走行している場合には、自車両が前方障害物に対して直進して接近しない。このため、衝突予測ECU11は、検出した相対横位置Xをカーブ半径R3と前方障害物までの今回相対距離Lnewとを用いて、Lnew2/(2×R3)となる補正量を演算し、同補正量によって相対横位置Xを補正して、相対横位置Xrを演算する。そして、相対横位置Xrを演算すると、ステップS108に進む。
また、前記ステップS102にて、今回相対距離Lnewが50mよりも大きければ、衝突予測ECU11は「No」と判定して、ステップS107に進む。ステップS107においては、前記ステップS101にて演算したカーブ半径R1に基づいて、前記ステップS106と同様に補正量をLnew2/(2×R1)として演算し、相対横位置Xを補正して相対横位置Xrを演算する。そして、相対横位置Xrを演算すると、ステップS108に進む。
前記ステップS106または前記ステップS107の演算処理後、衝突予測ECU11は、ステップS108にて、所定距離ΔWと前記ステップS106またはステップS107にて演算された相対横位置Xrとを比較して、相対横位置Xrが所定距離ΔW以下であるか否かを判定する。ここで、所定距離ΔWは、自車両が前方障害物と衝突することなく走行するために必要な予め設定されている領域の幅(自レーン)の1/2として決定されている。すなわち、衝突予測ECU11は、相対横位置Xrが所定距離ΔW以下であれば、前方障害物が自レーン内に存在しているため、「Yes」と判定して、ステップS109に進む。ステップS109においては、衝突予測ECU11は、前方障害物を衝突する可能性の高い衝突対象物として認識し、ステップ111に進む。
一方、相対横位置Xrが所定距離ΔWよりも大きければ、前方障害物が自レーン内に存在していないため、衝突予測ECU11は「No」と判定して、ステップS110に進む。ステップS110においては、衝突予測ECU11は、前方障害物が衝突する可能性の低い前方対象物と認識し、衝突対象物から除外して、ステップS111に進む。ステップS111においては、衝突予測ECU11は、カーブ道路上障害物存在確認ルーチンの実行を終了する。
ふたたび、図4のフローチャートに戻り、ステップS15においては、衝突予測ECU11は、カーブ道路上の前方障害物を衝突対象物として認識したか否かを判定する。すなわち、衝突予測ECU11は、前記ステップS14にてカーブ道路上障害物存在確認ルーチンを実行することにより、前方障害物を衝突対象物から除外していれば、「No」と判定してステップS24に進み、プログラムの実行を一旦終了する。また、衝突予測ECU11は、前方障害物を衝突対象物として認識していれば、「Yes」と判定してステップS16に進む。
ステップS16においては、衝突予測ECU11は、加速度センサ16から出力された加速度Gの絶対値|G|が予め設定された加速度Gsよりも大きいか否かを判定する。この判定によって、衝突予測ECU11は、自車両が現在坂路を走行しているか否かを判定することができる。すなわち、加速度Gの絶対値|G|が予め設定された加速度Gs以下であれば、自車両が坂路を走行していないため、衝突予測ECU11は「No」と判定してステップS19に進む。
一方、加速度Gの絶対値|G|が予め設定された加速度Gsよりも大きければ、自車両が坂路を走行しているため、衝突予測ECU11は「Yes」と判定して、ステップS17に進む。ステップS17においては、衝突予測ECU11は、坂路上障害物存在確認ルーチンを実行する。この坂路上障害物存在確認ルーチンは、レーダセンサ15によって検出された前方障害物のうち、例えば、自車両の段差通過に伴う上下動(振動)が発生したときに検出された衝突する可能性が低い前方障害物(例えば、看板や橋梁など)を除外して、衝突する可能性が高い前方障害物を正確に選択するルーチンである。
この坂路上障害物存在確認ルーチンは、図6に示すように、ステップS150にて開始され、ステップS151にて、自車両が現在走行している坂路の坂路勾配値を演算する。具体的に説明すると、衝突予測ECU11は、加速度Gが大きいときは、大きな値となる関係にある坂路勾配値を加速度Gに対応させて記憶した坂路勾配値マップを用意している。そして、衝突予測ECU11は、坂路勾配値マップを参照することにより、加速度Gに対応した坂路勾配値を演算し、ステップ152に進む。
ステップS152においては、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20の道路勾配データを利用して、前記ステップS151にて演算した坂路勾配値が適切であるか否かを確認する。すなわち、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20から現在車両が存在している道路の道路勾配データを取得し、加速度センサ16から出力された加速度Gが坂路走行に伴って検出されたものであるかすなわち段差通過や加減速などによる上下動に伴って検出されたものではないかを確認する。
ここで、衝突予測ECU11がナビゲーション装置20から道路勾配データを取得する動作について説明する。ナビゲーション装置20のナビゲーションECU21は、自車両の走行に伴って、繰り返し現在地を検出するとともに、自車両が存在している道路を特定している。これにより、ナビゲーションECU21は、記憶装置22を検索して、特定した道路の道路勾配データを取得する。そして、ナビゲーションECU21は、取得した道路勾配データを、LAN50を介して、ゲートウェイコンピュータ40に供給する。ゲートウェイコンピュータ40は、供給された道路勾配データを、バス30を介して、衝突予測ECU11に供給する。
衝突予測ECU11は、供給された道路勾配データを取得すると、同道路勾配データに含まれる勾配値と、前記ステップS151にて演算した坂路勾配値とを比較して、自車両が坂路上に存在しているかを確認する。すなわち、衝突予測ECU11は、演算した坂路勾配値が取得した勾配値に比して、所定範囲内の値である場合に、自車両が坂路上に存在していると確認する。この確認により、自車両が確かに坂路上に存在していると確認した場合には、衝突予測ECU11は、演算した坂路勾配値を用いて、以降の処理を実行する。このとき、自車両が坂路上に存在するにもかかわらず、演算した道路勾配値がナビゲーションECU21から取得した勾配値に比して所定範囲外の値である場合には、衝突予測ECU11は、演算した坂路勾配値を取得した勾配値と一致するように補正する。
一方、道路勾配データに含まれる勾配値に基づいて、自車両が平坦路に存在しているにもかかわらず、加速度Gが検出された場合には、衝突予測ECU11は、自車両が平坦路上に存在しているとして、以降の処理を実行する。すなわち、衝突予測ECU11は、道路勾配データに含まれる勾配値に基づいて、明らかに自車両が坂路上に存在しないことを確認すると、検出された加速度Gを、例えば、路面上に存在する段差を自車両が通過したことによる上下動(振動)に起因して発生した加速度とし、自車両は平坦路に存在していると認識する。これにより、自車両が坂路上に存在しているか否かを正確に確認することができる。
前記ステップS152の確認処理後、衝突予測ECU11は、ステップS153にて、前方障害物が坂路上に存在しているか否かを判定する。具体的に説明すると、衝突予測ECU11は、レーダセンサ15から出力された存在方向情報を取得して、前方障害物が存在している方向を特定するとともに、前方障害物までの今回相対距離Lnewと道路勾配データの道路長とを比較する。
この比較によって、特定された方向に存在する前方障害物までの今回相対距離Lnewが道路長よりも小さければ、前方障害物が坂路上に存在するため、衝突予測ECU11は「Yes」と判定して、ステップS154に進む。ステップS154においては、衝突予測ECU11は、坂路上に存在する前方障害物を衝突する可能性の高い衝突対象物として認識し、ステップS156に進む。
一方、特定された方向に存在する前方障害物までの今回相対距離Lnewが道路長よりも長ければ、前方障害物が坂路上に存在しないため、衝突予測ECU11は「No」と判定して、ステップS155に進む。ステップS155においては、衝突予測ECU11は、前方障害物が衝突する可能性が低い対象物と認識し、衝突対象物から除外して、ステップS156に進む。なお、このように除外される前方障害物としては、例えば、道路上方に設けられた橋梁や看板などである。ステップS156においては、衝突予測ECU11は、坂路上障害物存在確認ルーチンの実行を終了する。
ふたたび、図4のフローチャートに戻り、ステップS18においては、衝突予測ECU11は、坂路上の前方障害物を衝突対象物として認識したか否かを判定する。すなわち、衝突予測ECU11は、前記ステップS17にて坂路上障害物存在確認ルーチンを実行することにより、前方障害物を衝突対象物から除外していれば、「No」と判定してステップS24に進み、プログラムの実行を一旦終了する。また、衝突予測ECU11は、前方障害物を衝突対象物として認識していれば、「Yes」と判定してステップS19に進む。
ステップS19においては、衝突予測ECU11は、衝突回避時間変更ルーチンを実行する。この衝突回避時間変更ルーチンは、図7に示すように、ステップS200にて開始され、ステップS201にて、自車両が鉄橋またはトンネルを通過中であるか否かを判定する。具体的に説明すると、衝突予測ECU11は、バス30、ゲートウェイコンピュータ40およびLAN50を介して、ナビゲーション装置20と通信する。そして、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20のナビゲーションECU21から、自車両が現在走行している道路の道路環境データを取得する。ここで、ナビゲーションECU21は、道路環境データを供給するにあたり、自車両の現在地を検出し、同検出した現在地を利用して、記憶装置24の道路環境データを検索する。
衝突予測ECU11は、取得した道路環境データに基づいて、自車両が鉄橋またはトンネルを通過していれば、「Yes」と判定してステップS203に進む。一方、自車両が鉄橋またはトンネルを通過していなければ、「No」と判定して、ステップS202に進む。ステップS202においては、衝突予測ECU11は、自車両が交差点で右折待ちをしているか否かを判定する。
具体的に説明すると、衝突予測ECU11は、バス30、ゲートウェイコンピュータ40およびLAN50を介して、ナビゲーション装置20と通信する。そして、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20のナビゲーションECU21に対して、自車両が現在交差点に位置しているか否かを確認する。また、衝突予測ECU11は、車速センサ12から出力された車速Vを取得し、自車両が現在停止しているか否かを確認する。
そして、衝突予測ECU11は、これらの確認に基づいて、自車両が交差点で右折待ちしているか否かを判定する。自車両が交差点で右折待ちをしていれば、衝突予測ECU11は、「Yes」と判定して、ステップS203に進む。ステップS203においては、衝突予測ECU11は、衝突判定基準値すなわち自車両と前方障害物との衝突を回避するために必要な時間を表す衝突回避時間Tcを長く設定する。これは、前記ステップS201または前記ステップS202の判定処理によって「Yes」と判定された場合には、衝突する可能性が低い前方障害物が検出されており、前方障害物を衝突対象物として選択し難くするためである。
すなわち、鉄橋またはトンネルの内壁や右折待ちにおいて自車両の前方を通過する車両などは、衝突する可能性が低いにもかかわらず、常にレーダセンサ15によって検出され続ける。このため、後述するステップS22の衝突判定処理によって誤判定し、乗員保護装置60が誤作動する可能性がある。このため、ステップS203においては、衝突予測ECU11は、誤判定および誤動作を防止するために、衝突予測判定処理に利用する衝突回避時間Tcを長く設定し、ステップS206にて衝突回避時間変更ルーチンの実行を終了する。
一方、前記ステップS202にて、自車両が交差点で右折待ちをしていなければ、衝突予測ECU11は、「No」と判定して、ステップS204に進む。ステップS204においては、自車両が高速道路を走行しているか否かを判定する。具体的に説明すると、衝突予測ECU11は、バス30、ゲートウェイコンピュータ40およびLAN50を介して、ナビゲーション装置20と通信する。そして、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20のナビゲーションECU21から、自車両が現在走行している道路種別データを取得する。ここで、ナビゲーションECU21は、道路種別データを供給するにあたり、自車両の現在地を検出し、同検出した現在地を利用して、記憶装置24の道路種別データを検索する。
衝突予測ECU11は、取得した道路種別データに基づいて、自車両が高速道路を走行していれば、「Yes」と判定してステップS205に進む。ステップS205においては、衝突予測ECU11は、衝突回避時間Tcを短く設定して、ステップS206に進む。これは、前記ステップS204の判定処理によって自車両が高速道路を走行している場合には、車速Vが大きいため、衝突回避時間Tcを短く設定する必要があり、前方障害物を衝突対象物として選択し易くするためである。
すなわち、高速道路を走行しているときは、車速Vが大きいため、衝突対象物を早期に検出して、後述するステップS22の衝突予測判定処理を適切に実行する必要がある。このため、衝突予測判定処理に利用する衝突回避時間Tcを短く設定する。一方、取得した道路種別データに基づいて、自車両が高速道路を走行していなければ、「No」と判定してステップS206に進み、衝突回避時間変更ルーチンの実行を終了する。
ふたたび、図4のフローチャートに戻り、ステップS20においては、衝突予測ECU11は、自動料金精算所すなわちETC(Electronic Toll Collection)ゲート確認ルーチンを実行する。このETCゲート確認ルーチンは、上記各ステップの実行によって検出された前方障害物がETCの停車指示用ETCゲートバーであるか否かを確認するものである。これは、衝突対象物としての前方障害物がETCゲートバーである場合には、自車両がETCゲートを通過する際に、自動的にETCゲートバーが跳ね上がって衝突が回避されるため、衝突対象物から除外する必要があるからである。
このETCゲート確認ルーチンは、ステップS250にて開始され、ステップS251にて、衝突予測ECU11は、ナビゲーション装置20からETC通過中信号を受信しているか否かを判定する。これを、具体的に説明する。ナビゲーション装置20のナビゲーションECU21は、自車両の現在地を検出することにより、自車両が現在ETCゲート利用レーン上に存在しているかを判断する。そして、自車両がETCゲート利用レーン上に存在している場合には、ETCゲートを通過していることを表すETC通過中信号を出力する。この出力されたETC通過中信号は、LAN50、ゲートウェイコンピュータ40およびバス30を介して、衝突予測ECU11に供給される。
そして、衝突予測ECU11は、ETC通過中信号を受信していなければ、「No」と判定してステップS254に進む。一方、ETC通過中信号を受信していれば、衝突予測ECU11は「Yes」と判定してステップS252に進む。ステップS252においては、前方障害物が自車両の正面にあり、所定距離(例えば、30m)範囲内の停止物か否かを判定する。すなわち、自車両がETCレーンを通過するときに検出された前方障害物がETCゲートバーであるか否かを判定する。
具体的に説明すると、自車両がETCゲートを通過するときには、通行料の精算処理が終了するまで、ETCゲートバーは、閉じた状態で自車両の正面に位置している。このため、衝突予測ECU11は、今回相対距離Lnew、今回相対速度VRnewおよび車速Vに基づいて、前方障害物を確認する。すなわち、今回相対距離Lnewを利用して、自車両の前端部から前方障害物までの距離が所定距離範囲内であるかを確認する。また、衝突予測ECU11は、今回相対速度VRnewおよび車速Vを利用して、前方障害物が停止しているか確認する。
そして、前方障害物が自車両の前端部から所定距離範囲内に存在し、かつ、停止していることを確認すると、衝突予測ECU11は「Yes」と判定して、ステップS253に進む。ステップS253においては、衝突予測ECU11は、前方障害物がETCゲートバーであると決定する。また、前方障害物が自車両の前端部から所定距離範囲内に存在しない、または、停止していないことを確認すると、衝突予測ECU11は「No」と判定して、ステップS254に進む。ステップS254においては、衝突予測ECU11は、前方障害物がETCゲートバーではないと決定する。前記ステップS253または前記ステップS254の処理後、ステップS255に進み、ステップS255にて、ETCゲート確認ルーチンの実行を終了する。
ふたたび、図4のフローチャートに戻り、ステップS21にて、衝突予測ECU11は、前方障害物をETCゲートバーとして決定したか否かを判定する。すなわち、前記ステップS20にてETCゲート確認ルーチンを実行した結果、前方障害物がETCゲートバーと決定していれば、「No」と判定して、ステップS24に進み、プログラムの実行を一旦終了する。これは、前方障害物がETCゲートバーであるため、自車両との衝突が自動的に回避されるためである。
一方、前方障害物がETCゲートバーでなければ、衝突予測ECU11は「Yes」と判定して、ステップS22に進む。ステップS22においては、衝突予測ECU11は、自車両と検出した前方障害物との衝突を判定する。すなわち、衝突予測ECU11は、衝突回避時間Tcと今回相対速度VRnewとを乗じて計算される距離と今回相対距離Lnewとを比較して、前方障害物と自車両とが衝突するか否かを判定する。
すなわち、衝突予測ECU11は、衝突回避時間Tcと今回相対速度VRnewとを乗算して自車両の移動距離を予測し、同予測移動距離と今回相対距離Lnewとの比較に基づいて自車両と前方障害物との衝突を予測する。そして、ECU10は、予測移動距離よりも今回相対距離Lnewが大きければ、「No」と判定してステップS24に進み、プログラムの実行を一旦終了する。一方、予測移動距離よりも今回相対距離Lnewが小さければ、「Yes」と判定して、ステップS23に進む。なお、衝突予測判定に関しては、上記した衝突予測判定に限定されるものではなく、種々の衝突予測判定方法が考えられる。したがって、他の衝突予測判定方法を採用して、衝突予測判定が実行可能であることはいうまでもない。
ステップS23においては、衝突予測ECU11は、乗員保護装置60の作動を指示するための衝突判定フラグFRGを、乗員保護装置60の作動を表す”1”に設定するとともに、”1”に設定された衝突判定フラグFRGをバス30に出力する。これは、自車両と前方障害物との衝突を回避するためまたは衝突回避が不能な場合に乗員を保護するために、乗員保護装置60を作動させる必要があるためである。
このように、衝突予測ECU11が、”1”に設定した衝突判定フラグFRGをバス30に出力することにより、乗員保護装置60は、衝突判定フラグFRGを取得する。そして、乗員保護装置60は、例えば、ABSやトラクションコントロールを作動させて車両の走行状態を制御して衝突を回避するように制御したり、ペダル移動装置の作動、遮断回路の作動などを制御し、衝突による乗員へのダメージを軽減するように各装置を作動する。ステップS23の処理後、ECU10は、ステップS24に進み、プログラムの実行を一旦終了する。
以上の説明からも理解できるように、この第1実施形態によれば、衝突予測装置10の衝突予測ECU11は、前方障害物の存在状態すなわち前方障害物が存在しているカーブ半径R2を精度よく推定することができる。また、自車両の走行状態を表すパラメータすなわち加速度センサ16にて検出した加速度Gを確認するとともに正確に補正することができる。この推定および補正は、ナビゲーション装置20から供給される各種情報すなわち道路形状データ、路面状態データおよび道路勾配データに基づいて補正することができる。
また、衝突予測ECU11は、自車両が静止物(トンネルの内壁など)の存在する道路を走行しているときまたは交差点にて右折待ちの状況から走行を開始するときには、衝突判定基準値としての衝突回避時間Tcを長く変更することができる。このように、衝突回避時間Tcを長くすることによって、衝突予測判定において前方障害物を衝突する可能性が高い衝突前方対象物として選択し難くすることができる。これにより、前方障害物として検出され続ける静止物または右折時に自車両の前方を横切る車両などを、自車両と衝突する可能性が低い前方障害物として除外することができる。したがって、これらの前方障害物との衝突予測における、誤判定を大幅に低減することができる。
また、衝突予測ECU11は、自車両が高速道路を走行しているときには、衝突回避時間Tcを短く変更することができる。このように、衝突回避時間Tcを短くすることによって、衝突予測判定において前方障害物を衝突する可能性が高い衝突前方対象物として選択し易くすることができる。これにより、自車両が高速道路を高速走行している場合には、衝突する可能性のある前方障害物を早期に検出して、衝突予測判定を適切に実行することができる。したがって、衝突予測判定に基づいて、例えば、乗員保護装置60を適切なタイミングで作動させることができる。
また、衝突予測ECU11は、自車両がETCゲートを通過するときに、自車両前方に存在する車両停止指示用のETCゲートバーを検出することができる。そして、ETCゲートバーと判定することにより、衝突予測が禁止されるため、ETCゲートバーと自車両とが衝突するという誤判定を防止することができて、衝突予測判定の精度を向上することができる。
上記実施形態においては、衝突予測ECU11は、自車両に搭載されたナビゲーション装置20の記憶装置24に予め記憶している道路データを利用して、カーブ道路上に存在している前方障害物の存在確認、自車両が存在している道路の坂路勾配値や、自車両の走行環境を確認するように実施した。
これに対して、ナビゲーション装置20が外部(例えば、情報提供センターや交通情報提供センターなど)と通信して最新の通行情報を取得し、同取得した最新の通行情報を衝突予測ECU11に供給するように実施することも可能である。以下、この第2実施形態について、詳細に説明するが、上記第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この第2実施形態におけるナビゲーション装置20は、図9に示すように、外部と通信可能とするための通信装置26を備えている。通信装置26は、ナビゲーションECU21に接続されており、所定の周期で外部と通信して、最新の通行情報を取得する。このため、通信装置26は、外部と無線通信するためのアンテナ26aを備えている。ここで、最新の通行情報としては、例えば、自車両の現在地周辺の天気情報や渋滞情報、あるいは、自車両が現在走行している道路にて事故が多発していることを表す事故情報などである。また、通信装置26の外部との通信に関しては、例えば、車両間(車車間)通信や、道路と車両間(路車間)通信などを採用することも可能である。
そして、通信装置26によって取得された最新の通行情報は、ナビゲーションECU21に供給される。ナビゲーションECU21は、供給された最新の通行情報を、一旦、図示しないRAMの所定記憶位置に記憶して、記憶装置24に供給する。記憶装置24は、供給された最新の通行情報を、例えば、ハードディスクの所定記憶位置に記憶する。
このように構成した第2実施形態においても、衝突予測ECU11は、図4から図8に示した衝突予測プログラムを実行し、ステップS14にてカーブ道路上障害物存在確認ルーチンを実行する。そして、衝突予測ECU11は、図5に示したカーブ道路上障害物存在確認ルーチンのステップS103にて、ナビゲーション装置20のナビゲーションECU21から道路形状データ、路面状態データおよび最新の通行情報を取得する。このように、最新の通行情報を取得することにより、衝突予測ECU11は、ステップS103におけるカーブ半径R2の演算処理やステップS104からステップS106のカーブ半径R3および相対横位置Xrの演算、ステップS108における前方対象物の存在判定処理を、例えば、最新の情報に含まれている天気情報を利用することによって、より正確に実行することができる。
以上の説明からも理解できるように、この第2実施形態によれば、衝突予測ECU11は、自車両の走行状態を表すパラメータを最新の通行情報(例えば、天気情報)に基づいて補正することができるため、より正確に前方障害物を認識することができる。したがって、前方障害物と自車両との衝突可能性をさらに精度よく予測することができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り種々の変更が可能である。
例えば、上記第1実施形態および第2実施形態においては、衝突予測装置10とナビゲーション装置20とをそれぞれ設けて実施したが、ナビゲーション装置20を搭載していない車両においては、衝突予測装置10にナビゲーション機能を付与し、一体的に形成して実施することも可能である。
これを、図10を利用して具体的に説明すると、衝突予測装置10の衝突予測ECU11に対して、ナビゲーション装置20のGPS受信機22、ジャイロスコープ23、記憶装置24および通信装置26を接続して、衝突予測装置10を構成する。これにより、衝突予測ECU11は、自車両の現在地や、道路データ、最新の情報などを、直接取得することができて、図4から図8に示した衝突予測プログラムを実行することができる。
したがって、この場合においても、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ナビゲーション装置20を自車両に搭載するための搭載スペースを確保する必要がなく、衝突予測システムをコンパクトとすることができる。
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、衝突予測装置10がナビゲーション装置20からETC通過中信号を取得することによって、自車両が現在ETCゲートを通過しているか否かを判定するように実施した。しかしながら、衝突予測装置10が、自車両に搭載されて自動的に通行料金を精算するETC端末装置からETC通過中信号を取得するように実施することも可能である。以下に、この変形例を図11を用いて具体的に説明するが、ETC端末装置の詳細な作動は、本発明と直接関係しないため、その詳細な説明は省略する。
ETC端末装置70は、自車両がETCゲートに所定距離まで接近すると、ETCゲートに設けられたETC本体コンピュータから送信された電波を受信する。そして、ETC端末装置70は、ETC本体コンピュータに対して、通行料金を精算するために必要な情報(例えば、通行区間情報や精算カードの残金情報など)を送信するようになっている。そして、ETC端末装置70は、衝突予測装置10に対して、ETC通過中信号を供給するために、バス30に接続されている。
そして、ETC端末装置70は、ETC本体コンピュータから送信された電波を受信したときに、バス30を介して、衝突予測ECU11にETC通過中信号を供給する。衝突予測ECU11は、ETC端末装置70から供給されたETC通過中信号を取得する。これにより、衝突予測ECU11は、自車両がETCゲートを通介しているか否かを判定することができる。したがって、この変形例においても、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
10…衝突予測装置、11…衝突予測ECU、12…車速センサ、13…舵角センサ、14…ヨーレートセンサ、15…レーダセンサ、16…加速度センサ、17…バスインターフェース、20…ナビゲーション装置、21…ナビゲーションECU、22…GPS受信機、23…ジャイロスコープ、24…記憶装置、25…LANインターフェース、30…バス、40…ゲートウェイコンピュータ、50…LAN、60…乗員保護装置、70…ETC端末装置