JP2008046036A - Ae・超音波検出システム、及びそれを備えた材料監視装置並びに非破壊検査装置 - Google Patents

Ae・超音波検出システム、及びそれを備えた材料監視装置並びに非破壊検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】FBGが温度、およびひずみ変化を受けてブラッグ波長が変動しても、常にFBGが受けるAE・超音波を検出可能にするシステムを提供する。
【解決手段】本発明によるAE・超音波検出システムでは、FBGからの反射光をFBGの反射波長幅以上のFSRを有するファブリ・ペローフィルタに入射している。その透過光強度変化はFBGが受けるAE・超音波に対応するものである。また、FBGからの反射光をFSRがFBGの反射波長幅以上であり、フィルタの透過率ピーク波長がFSR/4だけ異なる2つのファブリ・ペローフィルタに入射する。2つのファブリ・ペローフィルタの透過光強度を電圧信号に変換して、両信号を加算、および減算処理することにより、FBGが受けるAE・超音波に対応した大きな振幅を有する信号を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、AE・超音波検出システムに関し、例えば、FBGセンサを利用してAE・超音波を検出する技術であって、それを構造物健全性評価に適用するシステムに関するものである。
近年、構造物の信頼性を向上させることを目的に健全性評価装置を構築することが期待されている。構造物の健全性を評価する際、ひずみ計測とき裂などの欠陥を検出することは非常に重要である。これまでひずみは金属の変形に伴う電気抵抗変化を利用した抵抗式ひずみゲージを用いて計測されることが多かった。また、き裂などの欠陥を検出する手法としては欠陥発生に伴う弾性波放出(AE:アコースティック・エミッション)の検出と超音波を利用した非破壊検査が行われている。
これまでAEの検出センサ、および超音波を用いた非破壊検査における超音波の検出センサとしては圧電素子が広く用いられている。しかし、圧電素子を用いたAE・超音波計測には次の問題がある。つまり、圧電素子は電磁波障害を受けることから、電磁波雰囲気でのAE・超音波計測ができない。また、圧電素子は狭帯域な応答周波数特性を有することから、検出するAE・超音波の周波数帯域に合わせて圧電素子の種類を変更する必要がある。
近年、上述の圧電素子におけるAE・超音波検出の問題を解決するため光ファイバセンサの一種であるFBG(ファイバ・ブラッグ・グレーティング)センサ(以下、明細書中では、単に「FBG」と称する場合もある)を用いたAE・超音波検出が注目されている。従来、提案されたFBGを用いたAE・超音波検出システムは用いる光源により2つに大別される。1つは特許文献1に記載されるように、レーザ光源を用いるシステムである。これはFBGの反射率が半減する波長に発振波長を設定したレーザ光をFBGに入射させる。このときFBGが受けるAE・超音波に応じてFBG反射光強度は変化することから、AE・超音波を検出することができる。もう1つは、特許文献2に記載されるように、広帯域光源を利用するシステムである。これはFBGの中心反射波長であるブラッグ波長を含む広帯域光をFBGに入射させ、その反射光をFBGの反射波長幅と同程度の透過波長幅を有する光フィルタに送る。このとき光フィルタの透過波長域の一部はFBGの反射波長域と重なっている必要がある。光フィルタの透過光強度、または反射光強度はFBGが受けるAE・超音波に応じて変化することを利用して、AE・超音波を検出することができる。
ところが、FBGは、FBGが受ける温度、およびひずみに応じてブラッグ波長が変動する。例えば、一般的に構造物の健全性評価に利用されているブラッグ波長1550nmを有するFBGでは、反射波長幅200pmから2000pmに対して温度1℃あたりブラッグ波長は10pm変化し、また1マイクロひずみあたり1.2pm変化する。このためFBGが大きな温度、およびひずみ変化を受けた場合、レーザ光源を用いたシステムでは、レーザ発振波長がFBGの反射波長域から外れてしまうことがある。また、広帯域光源を用いたシステムでも同様に光フィルタの透過波長域とFBGの反射波長域が交差しない状況になる。このような場合、FBGが受けるAE・超音波を検出することができなくなる。このためレーザ発振波長、また光フィルタの透過波長をFBGのブラッグ波長変動に合わせて制御する必要がある。しかし、高速にFBGブラッグ波長が変動するような場合、これらの制御がブラッグ波長変化に追随できずにAE・超音波を検出することができないことが考えられる。特に、材料破壊時に発生するAEは大きなひずみ変化に伴い生じる現象であることから、AE発生時には大きなブラッグ波長変動が生じ、従来の計測システムではAEを検出することが極めて困難になると考えられる。
この欠点を解決するため、特許文献3は、同一材料で熱的に結合された2つのブラッググレーティングを用いることにより、常にブラッググレーティングが受ける超音波を検出することを可能にする技術を開示している。その中では、熱的に結合されたセンサ、およびフィルタのブラッググレーティングは、温度変化を受けた場合に同期してブラッグ波長が変動する。
特開2005−326326号公報 特開2005−009937号公報 特開2003−169801号公報
しかしながら、特許文献3に記載の超音波検出では、センサ部がひずみ変化を受けるような場合においては、センサ部とフィルタのブラッグ波長は同期して変動しないため超音波を検出することができなくなる状況がある。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、FBGが温度、およびひずみ変化を受けてブラッグ波長が変動しても、常にFBGが受けるAE・超音波を検出可能にするシステムを提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明によるAE・超音波検出システムでは、FBGからの反射光をFBGの反射波長幅以上のFSRを有するファブリ・ペローフィルタに入射している。その透過光強度変化はFBGが受けるAE・超音波に対応するものである。
また、AE・超音波検出システムでは、FBGからの反射光をFSRがFBGの反射波長幅以上であり、フィルタの透過率ピーク波長がFSR/4だけ異なる2つのファブリ・ペローフィルタに入射する。2つのファブリ・ペローフィルタの透過光強度を電圧信号に変換して、両信号を加算、および減算処理する。これによりFBGが受けるAE・超音波に対応した大きな振幅を有する信号を得ることができる。なお、加算、および減算処理された2つの信号のうち、大きな振幅を有する信号はFBGが受けるAE・超音波に対応する。
なお、FBGとして反射特性にサイドローブのないアポダイズドFBGを用いるとよい。また、反射特性が飽和していない、つまり反射率が最大になる波長域において平坦な反射率−波長関係のないFBGを用いることがAE・超音波検出において望ましい。三角形状の反射率−波長関係を有するFBGがAE・超音波検出においては理想的である。
即ち、本発明によるAE・超音波検出システムは、広帯域波長光を発する広帯域光源と、被検体に取り付けられ、前記広帯域波長光が入射するFBGセンサと、周期的な透過特性を有し、前記FBGセンサからの反射光或いは透過光の一部を透過させるフィルタと、前記フィルタの透過光の強度を電気信号に変換する光電変換手段と、を備えることを特徴とする。そして、前記広帯域光源は、FBGのブラッグ波長を含む広帯域光を発し、前記フィルタは、前記FBGの反射波長幅或いは透過波長幅以上のFSRを有する。また、前記フィルタの透過率ピーク波長は、前記FBGの反射率或いは透過率が半減する波長に等しくするのが好ましい。
また、本発明によるAE・超音波検出システムは、広帯域波長光を発する広帯域光源と、被検体に取り付けられ、前記広帯域波長光が入射するFBGセンサと、前記FBGセンサからの反射光或いは透過光を分岐して、第1の反射光或いは透過光、第2の反射光或いは透過光を生成する光分岐手段と、周期的な透過特性を有し、前記第1の反射光或いは透過光の一部を透過させる第1のフィルタと、周期的な透過特性を有し、前記第1のフィルタとは透過率ピーク波長がFSR/4離れ、前記第2の反射光或いは透過光の一部を透過させる第2のフィルタと、前記第1及び第2のフィルタそれぞれの透過光の強度を電気信号に変換する光電変換手段と、を備えることを特徴とする。このシステムは、さらに、前記変換手段で得られた、それぞれのフィルタの透過光の強度に対応する電気信号を加算及び減算処理する処理手段を備える。ここで、前記広帯域光源は、FBGのブラッグ波長を含む広帯域光を発し、前記第1及び第2のフィルタは、前記FBGの反射波長幅或いは透過波長幅以上のFSRを有するのがこの好ましい。
なお、本発明によるAE・超音波検出システムでは、前記FBGセンサからの反射光或いは透過光の特性は、サイドローブが存在しないアポダイズド処理されたものであり、かつ反射率が最大となる波長域において飽和していないとするのが好ましい。
なお、上述のシステムでは、前記フィルタは、ファブリ・ペローフィルタ或いはAWGフィルタであることが好ましい。
さらに、本発明の材料監視装置は、上述の何れかのAE・超音波検出システムを備え、材料破壊時に生じるアコースティック・エミッションを検出することにより材料微視破壊を発見するものである。
また、本発明の非破壊検査装置は、上述の何れかのAE・超音波検出システムを備え、超音波を利用して材料・構造物非破壊検査を行うものである。
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
本発明によれば、高速に温度・ひずみが変動する状況下においてもFBGセンサを用いてAE・超音波を検出することが可能になり、AE・超音波を利用する非常に信頼性の高い構造物健全性評価システムを供することができる。
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明による第1の実施形態に係るAE・超音波検出システムの基本的構成を示す図である。図1に示すAE・超音波検出システム1は、広帯域光源と1つのファブリ・ペローフィルタを組み合わせた構成を採っている。
図1に示すように、AE・超音波検出システム1は被検体13の健全性を評価するものであって、広帯域光源10と、光サーキュレータ11と、FBG(アポダイズド処理済)12と、ファブリ・ペローフィルタ14と、光電変換器15と、データ収録装置16と、を備えている。
図1において、広帯域光源10からの広帯域光は、光サーキュレータ11を介してFBG12に入射する。ここで、FBGとは、光ファイバのコア部の屈折率を周期的に変化させた回折格子の構造のセンサであり、FBGに光が入射されると、ブラッグ波長と呼ばれる波長成分がFBGで反射され、残りの成分は透過される。このブラッグ波長のシフト量分が歪や温度に依存して変化するようになっている。また、FBG12は、アポダイズド処理されており、反射光分布曲線はガウス分布を示す。
FBG12からの反射光は、光サーキュレータ11を介してファブリ・ペローフィルタ14に入射する。ファブリ・ペローフィルタ14は、入射した反射光のうち、所定波長の光のみを透過させる。そして、透過した光は、光電変換器15に入力され、ここで光強度に対応した電気出力に変換される。データ収録装置16は、この電気出力を、FBG12が検知したAE・超音波として図示しない表示部に表示したり、図示しない記録装置内に記録する。
続いて、本実施形態のAE・超音波検出システム1の動作がより良く理解できるように、AE・超音波計測実験について説明する。図2は実験用のシステムを示しているが、超音波発振子17及び1軸変位ステージ18は実験を行う際に被検体13の歪を擬似的に表現するために設けられたており、それら以外は図1の構成と同様である。
図3は、FBG12、およびファブリ・ペローフィルタ14の光学特性を示している。ここで、FBG12はアポダイズド処理されているので、図示のように反射特性にサイドローブがなく、反射波長幅は0.34nmとなっている。また、ファブリ・ペローフィルタ14の光学特性は、FBG12の光学特性の反射波長幅より若干広い0.4nmのFSRを有し、透過半値全幅は40pmである。ファブリ・ペローフィルタ14の透過特性は、図4のように波長FSR(Free Spectral Range:フリー・スペクトル・レンジ)毎に周期的に透過域が現れる特徴を有する。なお、FBG12の反射波長幅とファブリ・ペローフィルタ14のFSRは等しいのが理想的であるが、FSRが反射波長幅以上であれば、FBG12とファブリ・ペローフィルタ14の組合せはセンサとして機能する。つまり、図17に示すように、反射波長幅>FSRの場合(図17(a))、FBG12の反射波長域の中に2つ以上のフィルタ透過域が存在することになる。このような条件下ではフィルタ出力はFBG12が受信する超音波又はAE信号の波形とは一致しない応答信号となる。よって、この場合には、FBG12とフィルタ14の組合せはセンサとして機能しない。一方、反射波長≦FSRの場合(図17(b)(c))、フィルタ出力は、FBG12が受信する超音波又はAE信号の波形と等しい応答信号を出力し、FBG12とフィルタ14の組合せはセンサとして機能する。つまり、反射波長幅<FSRの場合(図17(b))、センサ出力の不感帯域(センサ感度の低い領域)が広がる。図17(b)において、FBG12の反射波長が矢印で示される範囲にあるときはセンサ感度が低くなり、図17(c)に示す反射波長幅=FSRのときにセンサ出力の不感帯域が最小となる。
次に図5を用いて、FBG12のブラッグ波長とファブリ・ペローフィルタ14の透過率ピーク波長との関係が超音波検出感度に及ぼす影響について説明する。図2において、一軸変位ステージ18を移動させてFBG12にひずみを与え、そのブラッグ波長を変化させて、超音波発振子17から光ファイバを通して伝搬される超音波を検出する。ここでは、フィルタ透過率ピーク波長λがFBGの反射率が半減する波長λ-3dBに一致するとき(図5(a))、隣り合うフィルタ透過率ピーク波長の中間にFBGのブラッグ波長が位置するとき(図5(b))、およびフィルタ透過率ピーク波長λとFBGのブラッグ波長λが一致するとき(図5(c))の3つの状態を作り、超音波発振子から発生させた超音波をFBG12で検出する。
図6は、上記3つの状態におけるそれぞれの応答信号と超音波発振子に入力した励起信号を示している。つまり図6では、光電変換器15によって、図5(a)乃至(c)におけるファブリ・ペローフィルタ透過光強度曲線で囲まれた面積に対応するフィルタ透過光強度が電圧信号に変換され、その信号強度は、FBG12が検出する超音波(弾性波)に対応する。図6からは、フィルタ透過率ピーク波長λがFBG12の反射率が半減する波長λ-3dBに位置するとき、超音波を高感度で検出していることがわかる。FBG12の反射率が半減する波長においては反射率−波長関係の変化勾配が高く、十分なフィルタ透過光強度があることから高感度に超音波を検出することができる。しかし、他の2つの条件、隣り合うフィルタ透過率ピーク波長の中間にFBG12のブラッグ波長が位置するとき、およびフィルタ透過率ピークλとFBG12のブラッグ波長λが一致するときにおいてはほとんど超音波が検出されない。なぜなら、図5(b)及び(c)の場合、ファブリ・ペローフィルタ透過光強度の積分値(面積)は、超音波によってFBG反射光強度分布が多少変位したとしてもほとんど変化が無いからである。
より詳しく考察すると、本実施形態では、隣り合うフィルタ透過率ピーク波長の中間にFBG12のブラッグ波長が位置するとき、図3からも分かるように、FBG12のブラッグ波長変動に伴うフィルタ透過光強度はほとんど生じない。たとえばFBG12が引張りを受けて長波長側に反射特性がシフトしたとき、長波長側に存在する透過域での透過光強度は増大するが、短波長側に存在する透過域での透過光強度は減少する。つまり、隣り合うフィルタ透過域における透過光強度変化が相殺することになる。また、フィルタ透過率ピークλとFBG12のブラッグ波長λが一致するときは、ブラッグ波長近傍においては反射率−波長関係の変化勾配が低い。このためブラッグ波長が変動してもフィルタ透過光強度に現れる変化は小さくなる。これらの理由から上記した2つの条件下ではAE・超音波検出感度が低くなる。しかし、これら2つの条件下以外ではブラッグ波長とフィルタ透過率ピーク波長との位置関係により感度にばらつきはあるが、AE・超音波を検出できると推察される。
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係るAE・超音波検出システム2の基本的構成を示している。第2の実施形態のAE・超音波検出システム2では、広帯域光源20と2つのファブリ・ペローフィルタ25及び26とを組み合わせている。
図7に示すように、AE・超音波検出システム2は被検体23の健全性を評価するものであって、広帯域光源20と、光サーキュレータ21と、FBG(アポダイズド処理済)22と、ファブリ・ペローフィルタ(1)25及び同フィルタ(2)26と、温度制御器27及び28と、光電変換器(1)29及び同(2)30と、データ収録装置31と、を備えている。
図7において、広帯域光源20からの広帯域光は、光サーキュレータ21を介してFBG22に入射する。FBG22からの反射光は、光サーキュレータ21及び1×2カップラ24を介して、2つのファブリ・ペローフィルタ25及び26に入射する。このとき利用したFBG22とファブリ・ペローフィルタ25及び26は第1の実施形態で用いたものと同じで、図9に示すように2つのファブリ・ペローフィルタの透過率ピーク波長がFSR/4離れるようにファブリ・ペローフィルタ(1)25と同フィルタ(2)26に取り付けた温度制御器27及び28で調整している。ファブリ・ペローフィルタ25及び26の透過波長は温度の影響を受けて変化するが、一般に市販されているファブリ・ペローフィルタは温度制御器でその透過波長を制御することができるようになっている。また、温度制御器27及び28でファブリ・ペローフィルタ25及び26の温度を一定に保つことにより、フィルタ透過率ピーク波長を一定に保つことができる。ファブリ・ペローフィルタ25及び26によって透過した光は、それぞれ光電変換器29及び30に供給される。光電変換器29及び30では、透過光の強度に対応した電気出力に変換される。データ収録装置31は、この電気出力をFBG22が検知したAE・超音波として図示しない表示部に表示したり、図示しない記録装置内に記録する。
続いて、本実施形態のAE・超音波検出システム2の動作がより良く理解できるように、AE・超音波計測実験について説明する。図8は実験用のシステムを示しているが、超音波発振子32及び1軸変位ステージ33は実験を行う際に被検体の歪を擬似的に表現するために設けられたものであり、それら以外は図8の構成と同様である。つまり、光ファイバの一部を超音波発振子32に取り付け、FBG22から光ファイバ端部までの一部を一軸変位ステージ33に取り付け、一軸変位ステージ33を移動させることにより、被検体23の歪を発生させている。
この実験では、図8に示す実験用のシステムを用い、FBG22のブラッグ波長とファブリ・ペローフィルタ透過率ピーク波長との関係が超音波検出感度に及ぼす影響を調べるためにFBG22に歪を与え、そのブラッグ波長を変化させて、超音波を検出している。図9に示すように、FBGのブラッグ波長とファブリ・ペローフィルタ(1)の透過率ピーク波長との相対波長が−FSR/2から0になるようにFBGのブラッグ波長を変動させる。そして、FBG22のブラッグ波長を変動させたときのファブリ・ペローフィルタ(1)25、およびファブリ・ペローフィルタ(2)26の透過光強度から測定された超音波応答の振幅強度が、図10に示されている。また、超音波応答感度はFBGの反射率Rと波長λとの関係において式(1)で与えられる。
Figure 2008046036
なお、図10には、式(1)から予想される理論的な感度曲線が併せて示されている。
ファブリ・ペローフィルタ(1)25及びおよび同フィルタ(2)26の実験から得られる応答強度は理論から予想される傾向と非常に良く一致している。また、両フィルタ出力を加算、および減算する合成処理により、大きな応答振幅を得ることができる。たとえば相対波長が−3FSR/8(−0.15nm)のとき、ファブリ・ペローフィルタ(1)25、および同フィルタ(2)26の応答出力は図11のようになる。
図12(a)に示すように、ファブリ・ペローフィルタ(1)25とFBG22のブラッグ波長の相対波長が−FSR/2から−FSR/4まではファブリ・ペローフィルタ(1)25、および同フィルタ(2)26のピーク波長は、FBG反射波長域の左半分にあり、両フィルタのAE・超音波に応じた応答変化は同相になる。したがって、ファブリ・ペローフィルタ(1)25の透過光強度を測定する光電変換器(1)29の出力P1、およびファブリ・ペローフィルタ(2)26の透過光強度を測定する光電変換器(2)30の出力P2を加算することにより、図11に示すように大きな応答信号を得ることができる。
また、ファブリ・ペローフィルタ(1)25の相対波長が−FSR/4から0までは図12(b)のようにファブリ・ペローフィルタ(1)25、および同フィルタ(2)26のピーク波長はFBG22のブラッグ波長を挟んで左右に分かれるため、両フィルタの応答変化は逆相になる。したがって、出力P1、および出力P2を減算することにより、大きな応答信号を得ることができる。
そして、図8のデータ収録装置31は、光電変換器(1)29、および光電変換器(2)30の出力P1及びP2を加算、および減算し、いずれかの応答振幅の大きい方をFBG22が受けたAE・超音波として表示・記録する。
<FBGの反射特性について>
図13は、AE・超音波検出に理想的なFBGの反射特性を示している。上述の第1及び第2の実施形態におけるシステムで、FBGの特性を図13に示すような三角形状の反射特性にすることにより、FBGのブラッグ波長に依存せず一定のAE・超音波検出感度を実現できると推察される。しかしながら、三角形状の反射特性を有するFBGの作成は現実的には不可能である。
そこで、図14(a)のように反射率が最大になる波長域においても飽和しない反射特性を有するFBGを用いることがAE・超音波検出には望ましい。一方、反射率が最大になる波長域において飽和する同図(b)のような反射率を有するFBGはAE・超音波検出において検出感度がゼロになる場合があるため望ましくない。
<その他の実施形態>
(1)上述の第1及び第2の実施形態では、FBGからの反射光をファブリ・ペローフィルタに入射しているが、図15のようにFBGの透過光をファブリ・ペローフィルタに入射しても同様の条件下でAE・超音波検出が可能であると考えられる。
(2)第1及び第2の実施形態においては、周期的な透過特性を有する光フィルタとしてファブリ・ペローフィルタを用いているが、同様に周期的な透過特性を有するAWG(Arrayed−Waveguide Grating)を用いて図16のようなシステムを構成しても同様にAE・超音波検出が可能であると考えられる。この場合のAWGの透過特性はファブリ・ペローフィルタを用いたシステムの場合と同様にする。
以上説明したようなFBGによるAE・超音波計測技術を利用して、FBGを検査対象の構造物に取り付けて、材料の微視破壊時に発生するAEを検出して構造物の健全性を監視することや超音波を利用した欠陥検出への適用などが考えられる。
<実施形態の効果>
本実施形態では、被検体に取り付けられたFBGに広帯域波長光を入射させ、FBGからの反射光(或いは透過光)を周期的な透過特性を有するファブリ・ペローフィルタ(或いはAWGフィルタ)によって、その一部を透過させ、フィルタの透過光の強度を電気信号に変換するようにしているので、FBGが温度及び歪によってブラッグ波長が変動してもFBGの受けるAE・超音波を検出することができる。
ファブリ・ペローフィルタは、FBGの反射波長幅或いは透過波長幅以上のFSRを有するので、より確実にAE・超音波検出が可能となる。
また、フィルタの透過率ピーク波長は、FBGの反射率或いは透過率が半減する波長に等しくなるように制御(温調器を用いて)しているので、AE・超音波を高感度で検出することができるようになる。
本実施形態では、被検体に取り付けられたFGBに広帯域波長光を入射させ、FBGセンサからの反射光(或いは透過光)を分岐して、2つの反射光を生成し、2つの周期的な透過特性を有するファブリ・ペローフィルタ(AWGフィルタでもよい。2つのフィルタは互いに透過率ピーク波長がFSR/4離れている)によって、反射光の一部を透過させ、2つのフィルタそれぞれの透過光の強度を電気信号に変換するので、FBGが温度及び歪によってブラッグ波長が変動してもFBGの受けるAE・超音波を検出することができる。また、それぞれのフィルタの透過光の強度に対応する電気信号を加算及び減算処理するので、AE・超音波に応じた応答変化が同相であろうと逆相であろうと確実に大きな応答信号が得られ、確実にAE・超音波検出ができるようになる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の本質的な範囲を逸脱しない限り、構成の変形・追加・代用が可能であることはもちろんである。
本発明の実施形態に係るAE・超音波検出システムの概略構成を示す図である。 AE・超音波計測実験(1)に用いたシステムの概略構成を示す図である。 FBG12とファブリ・ペローフィルタの光学特性を示す図である。 ファブリ・ペローフィルタの透過特性を示す図である。 FBG反射光強度とファブリ・ペローフィルタ透過光強度との関係を示す図であり、図5(a)はフィルタ透過率ピーク波長とFBGの反射率が半減する波長が一致するときの関係、図5(b)はFBGのブラッグ波長が隣り合うフィルタ透過率ピーク波長の中央に位置するときの関係、図5(c)はFBGのブラッグ波長がフィルタ透過率ピーク波長と一致するときの関係をそれぞれ示している。 FBGのブラッグ波長とフィルタ透過率ピーク波長との関係を変化させたときの超音波応答信号を示す図である。 本発明による第2の実施形態に係るAE・超音波検出システムの概略構成を示す図である。 AE・超音波計測実験(2)に用いたシステムの概略構成を示す図である。 2つのファブリ・ペローフィルタの透過率ピーク波長の関係とFBG反射率との関係を示す図である。 ファブリ・ペローフィルタ(1)25の透過率ピーク波長とブラッグ波長との差が応答振幅強度に及ぼす影響を示す図である。 相対波長が−0.15mm(−3FSR/8)のときに検出された応答波形と合成信号を示す図である。 FBG反射光強度と2つのフィルタ透過率ピーク波長との関係を示し、図12(a)は相対波長が−3FSR/8のときのFBG反射光強度分布と2つのフィルタの透過率ピーク波長の位置関係を、図12(b)は相対波長が−FSR/8のときのFBG反射光強度分布と2つのフィルタの透過率ピーク波長の位置関係を、それぞれ示している。 AE・超音波検出にとって理想的なFBGの反射特性を示す図である。 AE・超音波検出によって好ましい反射特性の形状と好ましくない反射特性の形状を示す図である。 FBGの透過光を利用したAE・超音波検出システムの概略構成を示す図である。 ファブリ・ペローフィルタの代わりに、N本の出力端子を持つAWGを利用したAE・超音波検出システムの概略構成を示す図である。 FBGの反射波長幅とファブリ・ペローフィルタのFSRとの関係を説明するための図である。
符号の説明
1,2・・・AE・超音波検出システム
10,20・・・広帯域光源
11,21・・・光サーキュレータ
12,22・・・FBG
13,23・・・被検体
14,25,26・・・ファブリ・ペローフィルタ
15,29,30・・・光電変換器
16,31・・・データ収録装置

Claims (11)

  1. 広帯域波長光を発する広帯域光源と、
    被検体に取り付けられ、前記広帯域波長光が入射するFBGセンサと、
    周期的な透過特性を有し、前記FBGセンサからの反射光或いは透過光の一部を透過させるフィルタと、
    前記フィルタの透過光の強度を電気信号に変換する光電変換手段と、
    を備えることを特徴とするAE・超音波検出システム。
  2. 前記広帯域光源は、FBGのブラッグ波長を含む広帯域光を発し、
    前記フィルタは、前記FBGの反射波長幅或いは透過波長幅以上のFSRを有することを特徴とする請求項1に記載のAE・超音波検出システム。
  3. 前記フィルタの透過率ピーク波長は、前記FBGの反射率或いは透過率が半減する波長に等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のAE・超音波検出システム。
  4. 広帯域波長光を発する広帯域光源と、
    被検体に取り付けられ、前記広帯域波長光が入射するFBGセンサと、
    前記FBGセンサからの反射光或いは透過光を分岐して、第1の反射光或いは透過光、第2の反射光或いは透過光を生成する光分岐手段と、
    周期的な透過特性を有し、前記第1の反射光或いは透過光の一部を透過させる第1のフィルタと、
    周期的な透過特性を有し、前記第1のフィルタとは透過率ピーク波長がFSR/4離れ、
    前記第2の反射光或いは透過光の一部を透過させる第2のフィルタと、
    前記第1及び第2のフィルタそれぞれの透過光の強度を電気信号に変換する光電変換手段と、
    を備えることを特徴とするAE・超音波検出システム。
  5. さらに、前記変換手段で得られた、それぞれのフィルタの透過光の強度に対応する電気信号を加算及び減算処理する処理手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のAE・超音波検出システム。
  6. 前記広帯域光源は、FBGのブラッグ波長を含む広帯域光を発し、
    前記第1及び第2のフィルタは、前記FBGの反射波長幅或いは透過波長幅以上のFSRを有することを特徴とする請求項1に記載のAE・超音波検出システム。
  7. 前記FBGセンサはアポダイズ処理され、その反射光或いは透過光の特性はサイドローブが存在せず、かつ反射率が最大となる波長域において飽和していないことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のAE・超音波検出システム。
  8. 前記フィルタは、ファブリ・ペローフィルタであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のAE・超音波検出システム。
  9. 前記フィルタは、AWGフィルタであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のAE・超音波検出システム。
  10. 請求項1乃至9の何れか1項に記載のAE・超音波検出システムを備え、材料破壊時に生じるアコースティック・エミッションを検出することにより材料微視破壊を発見する材料監視装置。
  11. 請求項1乃至9の何れか1項に記載のAE・超音波検出システムを備え、超音波を利用して材料・構造物非破壊検査を行うための非破壊検査装置。
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