JP2008035918A - 血糖値測定装置および血糖値測定方法 - Google Patents

血糖値測定装置および血糖値測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】血糖値(グルコース濃度)を測定する方法として、光学式な測定方法が知られている。しかし、測定精度の向上や装置の小型化が進まない問題があった。
【解決手段】3種類の単一波長のレーザ光(3波長のレーザ光)を被測定部位に照射し、それぞれの波長に対する吸収率を測定する。離散的な3つの吸収率から2次微分値を求め、2次微分値と血糖値の変換関数より血糖値を算出する。高精度、小型化、非侵襲の血糖値測定装置および血糖値測定方法を提供できる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、血糖値測定装置および血糖値測定方法に係り、特に小型化、高精度化を実現した非侵襲の血糖値測定装置および血糖値測定方法に関する。
血糖値の測定方法としては、採血法(侵襲法)と無採血法(非侵襲法)がある。採血法は、採血した血液を通常はグルコース酸化酵素法により、簡便法としては試薬と反応させ、その反応色から比色を用いて血糖値を求める方法が行われている。無採血法は、さまざまな手法が報告されているが、例えば以下のように光学的に測定する方法が知られている。
グルコース濃度(血糖値)を測定する方法として、近赤外光(800nm〜2500nm)を照射し、透過光から特定波長における吸光率を求めて血糖値を算出する方法がある(例えば特許文献1参照。)。また、分光分析による方法や、フーリエ変換によるスペクトル分析(Fourier Transform infrared Spectrometer:FTIR)を行い、そのスペクトルの変化及び、統計的手法から求める方法が提案されている。FTIR分析装置の光学系は、例えばマイケルソン型の干渉計を構成するものである(例えば特許文献2参照。)。
特許公開2002−202258 特許公表2006−512979
しかし、採血法による血糖値の測定の場合、採血のための苦痛など非常に大きいものになっている。また穿刺針は消耗品であるため、例えば糖尿病患者の金銭的負担が大きい等の問題がある。
また、例えば特許文献1の如く近赤外光を照射し、特定波長における吸光率から血糖値を求める方法においては、被測定部位として血管が利用されており、精度よく測定することが非常に難しい問題がある。すなわち、透過光は血中成分としてグルコース以外の成分(具体的にはヘモグロビン)の影響を強く受ける上、グルコースの吸光率は非常に小さいため、高精度化を図るための大きな課題となっている。
一方スペクトル分析を使用する方法は、ある程度の測定精度が確保できるとされている。しかし、スペクトル分析に使用する分光器はある程度の光路長を確保する必要があり、測定装置の小型化には限界がある。また、特許文献2の如くFTIR分析装置による方法も、光路及び、ミラーなどの可動部の存在から小型化は不可能といえる。
またスペクトル分析手法は元来、血糖値を測定するための方法ではなく、材料に物性分析を行うための手法である。そのため、その分析スペクトル範囲は非常に広いものである。しかし、血糖値の測定だけを考えた場合、グルコースの吸光特性は既知とされていることから、その部分だけのスペクトルに対する吸光特性のみが測定できればよい。
すなわち分光分析法やFTIR分析法などのスペクトル分析法では、余分な領域を測定している時間が長く、また、可動部を実際に駆動するため、測定にはある程度の(無駄な)時間を必要とする。
更に、血糖値測定の使用環境を考えた場合、測定装置の小型化による携帯性の向上は市場要求であり、光路および可動部が存在する測定装置では携帯性の点においても大きな問題がある。
本発明は上述した諸々の事情に鑑み成されたもので、第1に、発光部と受光部と制御部を有し、生体の被測定部位における血糖値を測定する光学測定部と、前記血糖値を表示する表示部とを有する血糖値測定装置であって、前記発光部は、前記被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に出力し、前記受光部は、前記被測定部位で反射した前記レーザ光の反射光をそれぞれ検出し、前記制御部は演算処理部を備え、該演算処理部は前記反射光を前記第1波長、第2波長、第3波長の前記レーザ光が前記被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率に換算し、該第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算し、前記2次微分値および、前記第1、第2、第3吸光率に基づく値により前記被測定部位における血糖値データを算出し、前記表示部に前記血糖値データを出力することにより解決するものである。
第2に、発光部と受光部と制御部を有し、生体の被測定部位における血糖値を測定する光学測定部と、前記血糖値を表示する表示部とを有する血糖値測定装置であって、前記発光部は、前記被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に出力し、前記受光部は、前記被測定部位で反射した前記レーザ光の反射光をそれぞれ検出し、前記制御部は演算処理部を備え、該演算処理部は前記反射光を前記第1波長、第2波長、第3波長の前記レーザ光が前記被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率に換算し、該第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算し、前記第1、第2吸光率を前記第3吸光率および所定の基準値により補正した第1補正吸光率、第2補正吸光率を算出し、前記2次微分値および、前記第1、第2補正吸光率、および前記第3吸光率に基づき前記被測定部位における血糖値データを算出し、前記表示部に前記血糖値データを出力することにより解決するものである。
また、前記第1波長、第2波長、第3波長はそれぞれ近傍の波長であり、この順で波長が長くなり、前記第3波長は純水による吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長であり、前記第2波長はグルコースによる吸光率が大きい波長であり、前記第1波長は、グルコースによる吸光率が小さい波長であることを特徴とするものである。
また、前記演算処理部は前記第1、第2、第3吸光率のそれぞれに対する第1、第2、第3基準吸光率を保持し、前記第3吸光率と前記第3基準吸光率により基準シフト量を算出し、該基準シフト量により、前記第1、第2吸光率をそれぞれ補正して第1基準補正吸光率、第2基準補正吸光率を算出し、前記第1および第2基準補正吸光率をそれぞれ前記第1、第2基準吸光率により補正して前記第1補正吸光率および第2補正吸光率を算出することを特徴とするものである。
また、前記第1、第2、第3基準吸光率は予め測定された純水による前記第1、第2、第3波長の前記レーザ光の吸光率であることを特徴とするものである。
また、前記光学測定部は温度検知部を有し、該温度検知部により前記第1波長、第2波長および第3波長の温度補正を行うことを特徴とするものである。
また、前記光学測定部は、前記温度検知部により前記被測定部位の体温を測定し、グルコースの吸光特性の温度依存特性に基づき、前記レーザ光の温度または駆動電流を変化させ、該レーザ光の出射波長を制御することを特徴とするものである。
また、前記発光部は、前記被測定部位の表皮から入射した前記レーザ光が真皮層にて拡散反射する照射角度で前記レーザ光を出力することを特徴とするものである。
また、前記発光部および前記受光部は、遮光板を介して隣接して配置されることを特徴とするものである。
第3に、生体の被測定部位における血糖値を光学的に測定する血糖値測定方法であって、前記被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に照射する工程と、前記被測定部位で反射した前記レーザ光の反射光をそれぞれ検出する工程と、前記反射光から前記第1波長、第2波長、第3波長の前記各レーザ光が前記被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率を算出する工程と、前記第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算する工程と、前記第1吸光率、第2吸光率を前記第3吸光率と所定の基準値に基づき補正し、第1補正吸光率、第2補正吸光率を算出する工程と、前記第1、第2補正吸光率と、前記第3吸光率、および前記2次微分値を用いて血糖値を演算する工程と、を具備することにより解決するものである。
また、前記第1波長、第2波長、第3波長はそれぞれ近傍の波長であり、この順で波長が長くなり、前記第3波長は純水に対する吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長であり、前記第2波長はグルコースによる吸光率が大きい波長であり、前記第1波長は、グルコースによる吸光率が小さい波長であることを特徴とするものである。
また、前記第1、第2、第3吸光率のそれぞれに対する第1、第2、第3基準吸光率を予め測定し、前記第3吸光率と前記第3基準吸光率により基準シフト量を算出し、該基準シフト量により、前記第1、第2吸光率をそれぞれ補正して第1基準補正吸光率、第2基準補正吸光率を算出し、前記第1および第2基準補正吸光率をそれぞれ前記第1、第2基準吸光率により補正して前記第1補正吸光率および第2補正吸光率を算出することを特徴とするものである。
また、前記第1、第2、第3基準吸光率は予め測定された純水による前記第1、第2、第3波長の前記レーザ光の吸光率であることを特徴とするものである。
また、前記被測定部位の温度を検知し、前記第1波長、第2波長および第3波長の温度補正を行うことを特徴とするものである。
また、前記レーザ光の出射波長は、前記被測定部位の体温と、グルコースの温度依存特性に基づき前記レーザ光の温度または駆動電流を変化させて制御することを特徴とするものである。
また、前記レーザ光は、前記被測定部位の表皮から入射し、真皮層にて拡散反射する照射角度で出力されることを特徴とするものである。
本実施形態によれば、血糖値の測定精度が高く、小型化で非侵襲の血糖値測定装置および血糖値測定方法を提供できる。
すなわち第1に、レーザ光を測定部位に照射しその反射光を測定して吸光率を求めることにより、透過光を用いる場合と比較して高精度で利便性を向上させることができる。被測定部位である血管に近赤外光を照射して透過光を測定する方法では、血中成分(ヘモグロビン)の影響を強く受け、透過光が変化する上、グルコースの特性として吸光率が非常に小さいため、正確な測定が困難である。
本実施形態は、被測定部位として真皮層を利用し、真皮層での反射光から真皮層中のグルコース濃度を測定するものであり、これによりグルコース以外の血中成分の影響を殆ど受けない測定が可能となる。
また、血糖値を測定する行為は血圧を測定するような場合とは異なり、食事の後などで測定する場所は一定でない可能性が高い。そのため、血糖値計は小型であり、携帯性が要求される。同様な理由から測定する場所も直ぐに測定できるような部位でなくてはならず、通常の生活をあまり制限しないことが望ましい。つまり、本実施形態では、このような血糖値の測定装置の使用状態を考慮すると透過光を使用する場合と比較して、携帯性が向上できる。
また、照射するレーザ光として3つの単一波長を利用する。これにより、スペクトル分析手法と比較して装置の小型化、測定時間の短縮が図れる。スペクトル分析に使用する分光器はある程度の光路長を確保する必要があり、またFTIR分析装置も光路およびミラーなどの可動部の存在から小型化は不可能である。
しかし、本実施形態によれば、分光器ほどの光路長は不要であり、また可動部も不要であるため、装置の小型化が実現する。具体的には例えば片手での取扱いおよび携帯が可能な程度まで小型化できる。
更に、3つの波長のレーザ光について吸光率を求め、これらの2次微分値を算出するため中心波長を頂点としてその前後の2点からの変化率(変化量)として測定値を求めることができる。既述の如くグルコースの吸光率は非常に小さいため、実際に血糖値が高い場合と測定誤差の場合の区別がつきにくいが、本実施形態によれば、受光(反射光または透過光)の実測値を採用する場合と比較して演算が容易であり、また誤差を少なくすることができる。
また、2次微分値により変化量として演算を行うため、基準量(通常測定される値に対するずれ量)の大きさは無関係となり、揺らぎ(Fluctuation)等の変動を吸収することができ、測定誤差を小さくできる。
第2に、第1波長はグルコースによる吸光率が小さく、第2波長はグルコースによる吸光率が大きく、第3波長は純水による吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長を選択し、基準値となる純水による各波長の吸光率を予め測定しデータとして保持することにより、物理的な補正用の参照体を用いることなく定量的な数値を求めることができる。
第3に、近赤外光としてレーザ光を用いるため、レーザ出力条件を温度補正することができる。すなわち、体温や気温の変動に伴い、被測定部位のグルコース吸光特性が変化した場合であっても、温度検知部によりレーザの波長を制御できるので、正確な血糖値測定が可能となる。
第4に、レーザ光を真皮層にて拡散反射する照射角度で出力するため、被測定部位として真皮層を利用でき、レーザ光の反射光から吸光率を測定できる。真皮層は、近赤外光で血糖値を測定する場合に最も阻害要因となる血中ヘモグロビンの影響が非常に少ない。また、第1、第2基準吸光率が純水による第1、第2波長の吸光率であるため、これらと第1、第2吸光率を比較することでグルコースによる吸光率を定量的に得ることができる。
第5に、光学測定部の発光部および受光部は、隣接して配置するため、測定すべき拡散反射光のみを正確に受光することができる。また遮光板を介して配置されるため、被測定部位の表面での直接反射光が受光部に到達することを防ぐことができる。
更には非侵襲(無採血法)であるので、無痛であり、また穿刺針等の消耗品が不要であるため、被測定者の身体的、金銭的苦痛を伴うことはない。
以下、本発明の実施形態の一例を、図1から図10を参照して詳細に説明する。
本実施形態の血糖値測定装置100は、発光部と受光部と制御部からなる光学測定部1と、表示部2を有する。
図1は、本実施形態の血糖値測定装置の一例を示す図であり、図1(A)が外観図、図1(B)が図1(A)のa−a線断面図、図1(C)(D)が内部の平面図である。
図1(A)(B)の如く血糖値測定装置100の外部筐体8の一主面には、例えば電源スイッチ4、測定開始・停止ボタン5、表示部2等が設けられる。外部筐体8の上部には被測定部位との接触部となるアタッチメント3が設けられる。アタッチメント3は光学測定部1と連続して設けられる。本実施形態では一例としてアタッチメント3は、光学測定部1内の発光部から出力される光、および受光部で受光する光が外部に漏れないような形状(例えば筒状)および材質であり、光学測定部1の外部筐体の一部を構成する。
図1(C)の如く光学測定部1は発光部と受光部(ここでは不図示)および制御部6を有し、生体の被測定部位における血糖値を測定する。制御部6は例えばプリント基板上に集積化された半導体集積回路により構成され、演算処理部を有する。
また図1(D)の如く内部構造において表示部2は、制御部6の一部である表示ドライバに接続する。表示部2は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(Electronic Luminescent)表示パネル等であり、血糖値やその他測定情報(例えば測定エラーの通知、日時等)が測定者に認識可能に表示されるものであればよい。また制御部6に接続する電源部7が設けられる。電源はACアダプターによる充電や電池、あるいはこれらの併用等である。
図2は、血糖値の被測定部位を示す概要図である。図2(A)は血糖値測定装置100と被測定部位を示す図であり、図2(B)は、被測定部位の断面概要図である。
血糖値測定装置100は、図2(A)の如く、腕あるいは手首内側にアタッチメント3を密着させて測定する。
図2(B)の如く血糖値測定装置100は、被測定部位25として生体の真皮層252を利用する。生体の表皮251の下層(内部)には真皮層252があり、その下層に皮下組織253が存在する。
本実施形態では、光学測定部1から出射したレーザ光20を真皮層252にて拡散反射させる。すなわち表皮251から入射したレーザ光20が真皮層252で拡散反射する照射角度θで、レーザ光20が発光部から出力される。
血糖値を測定するには、血中グルコース濃度を検出するのが効率的である。また、血糖値を非侵襲(無採血)で測定する場合、人体に対して透過性を有する波長帯の光を使用することになるが、グルコースの場合、近赤外帯光のいくつかのスペクトルに対して吸光特性を有することが知られている。そこで、従来の光学的な血糖値測定装置では血管に近赤外線を透過して、グルコースによる吸収率を検出することで血糖値を測定している。
しかし、血中にはグルコース以外にも様々な物質が存在する上、グルコースの吸光率は非常に小さいものである。特に透過光の場合、血中成分であるヘモグロビンの影響を強く受けてその光量が変化し、結果的に血糖値を正確に測定できない問題がある。
そこで、本実施形態では、血中成分(ヘモグロビン)の影響を受けないよう、真皮層252のグルコースを測定することとした。真皮層252は生体外部(表皮251)から非常に浅い位置にあるため、レーザ光20のビームの絞り角(レンズ開口径NA)や照射角度を適宜選択することにより、血糖値の算出に十分な反射光を得ることができる。また、反射光による測定は、皮下組織253を透過しないため、グルコース以外の成分による測定誤差も回避できることから、透過光を利用する場合よりも有利である。
図3は、光学測定部1を示す図であり図3(A)が上面図、図3(B)が図3(A)のb−b線断面図である。
光学測定部1は、発光部11と受光部12を有する。発光部11は、被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長λ1、第2波長λ2および第3波長λ3の近赤外レーザ光を個別に出力する半導体レーザである。レーザ光20はレンズ開口径NAの集光レンズ11aで集光され、小さいスポットで被測定部位に照射される(図2(A))。尚、図2(B)では集光レンズ11aを2枚設けているが、この数に限らない。
ここで、第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3はそれぞれ近傍の波長の近赤外光であり、この順で波長が長くなる(λ1<λ2<λ3)。また第3波長λ3は純水による吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長であり、第2波長λ2はグルコースによる吸光率が大きい波長であり、第1波長λ1は、グルコースによる吸光率が小さい波長である。これらの波長を選択する理由は後述する。
受光部(Photo Detector)12は、被測定部位で反射したレーザ光の反射光21をそれぞれ検出する、例えばフォトダイオードである。
反射光21もレンズ開口径NA’の集光レンズ12aにより集光され、受光部12で検知される。尚、受光部12では反射光21をできる限り多く集光することが望ましいので、そのスポット径は発光部11に比べて大きく設定される(図2(A))。
発光部11および受光部12は、遮光板17を介して隣接して配置される。例えば図2(B)の如く、発光部11と受光部12は同一筐体(本実施形態ではアタッチメント3の一部)内に配置され、中央に遮光板17を配置する。遮光板17は、少なくともアタッチメント3の外周と同一の高さに設けられる。被測定部位25にアタッチメント3を当接し、被測定部位25にレーザ光20を照射した場合、レーザ光20の一部は表皮251で反射する。このような直接反射光が受光部12に到達することを防止するため、遮光板17を設ける。遮光板17により、発光部11および受光部12がそれぞれ分離された空間に配置される。
遮光板17は、例えば、表面が黒色状であり、近赤外を透過、反射しないで吸収する素材である。
より詳細に説明すると、例えば、表面に塗装が施された金属板、具体的には、表面に黒色系の起毛状の塗装物が施された金属板などが挙げられる。また、遮光板17として、例えば、アクリル、ポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の樹脂を含有する樹脂材が用いられて形成された樹脂板などが挙げられる。その場合、遮光性を向上させるために、樹脂材内に、カーボン繊維、グラファイトからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の黒色系充填材などが含有された樹脂板を用いるとよい。また、遮光板17として、例えば、黒色系偏光板が用いられてもよい。その場合、偏光板として、例えばガラスを基材とした基板が用いられることが好ましい。また、遮光板17として、例えば、石材などが用いられてもよい。
また、レーザ光20は、戻り光の影響を受けるが、遮光板17によりその影響を低減できる。従って、レーザ光20を安定して発振させることができ、測定ノイズの低減が図れる。
さらに、受光部12も遮光板17によって区切られた空間で使用することで、電気的ノイズの影響を受けにくくすることができる。
加えて、本実施形態の遮光板17は、接触検知センサとしても機能する。すなわち、遮光板17は、垂直方向に可動式であり非測定時には周囲のアタッチメント3より突出する。一方、測定時にアタッチメント3を被測定部位25に当接させた場合は、遮光板17は有る程度のテンションで被測定部位25に接触すると共に光学測定部1内部に押下され、遮光板17下方のスイッチ18を作用させる。つまりこのスイッチ18によって、制御部6はアタッチメント3が正常に被測定部位に接触したことを検出し、正常な状態で(外光を遮蔽した状態で)測定処理を開始させることができる。
また、遮光板17を接触検知センサとして機能させ、正常な接触を検知したのち測定装置を動作させる場合には、遮光板17はアタッチメント3より低い位置に設けられても良い。例えば、アタッチメント3側を可動式とし、遮光板17の上端に被接触部位との接触センサを設け、遮光板17内の配線を介してスイッチ18と接続する。所定のテンションで被測定部位25に接触させることにより、アタッチメント3が押下され、遮光板17とアタッチメント3の高さが同等となる。この状態で遮光板17上部の接触センサが接触を検知し、測定装置を動作させるスイッチ18が導通すれば、外光を遮蔽した状態で測定装置を動作させることができる。
さらに、遮光板17の上端に接触センサを設ける場合は、遮光板17およびアタッチメント3の高さを同一とし、いずれも固定式としてもよい。
外光の侵入を避けるため、アタッチメント3も遮光性を有する材質が選択される。さらに、発光部11からのレーザスポットは非常に微小であり、また受光部12も大きいとはいえ、拡散反射光の広がりで例えば1mm程度(フォトダイオード面で例えば0.1mm〜0.5mm程度)である。測定精度を向上させるためには外光の侵入を避けることが望ましく、レーザ光20および反射光21が通過するのに十分な開口部を確保すればアタッチメント3の上面は側面から隙間無く連続し、可能な限り内部を覆う形状とする。
発光部11のレーザ光20は適切なレンズ開口径NAによってビームが絞られ、被測定部位25(真皮層252)に対して角度θで照射される。この角度θは、遮光板17の垂直方向(紙面上下)の中心線とレーザ光20の光軸で成す角であり、真皮層252のグルコース濃度の測定に最も適切な角度に設定され、照射されたビームのフォーカス点D、Wは真皮層252のグルコースからの反射光(拡散反射光)を最も効率良く得られる点に設定される。ここでフォーカス点Dは表皮251からの深さでありグルコース測定に適した真皮層252内の一点である。また、フォーカスWは、遮光板17からの距離であり、フォーカス点Dの深さにおいて、遮光板17の中心または端部からどれくらい離間しているかを示す一点である。
レーザ光20のビームを所定の角度θで入射させる他の理由として、レーザの発振点になるべく反射光21が戻らないようにすることがあげられる。
これに対し、受光部12側は、反射光21を効率よく選択するための角度θ’、フォーカス点D’、W’に設定される。角度θ’は遮光板17の垂直方向の中心線と反射光21の光軸で成す角であり、フォーカス点D’、W’はそれぞれ、表皮251からの深さ、遮光板17の中心又は端部からの距離である。
拡散反射されたビームは基本的にあらゆる層からの反射光があるため、角度θ’、フォーカス点D’、W’およびレンズ開口径NA’によって、真皮層252からの反射光を選択的に集光するように設定される。
尚、この光学測定部1は一例である。図示は省略するが、発光部11および受光部12の構成として、それぞれミラーを設け、ミラーにて集光するものであってもよい。上記の如く集光レンズ11a、12aで集光する場合は、レンズの透過率によって光量が減衰する。ミラーで集光することで、光量の減衰は抑えられ、また焦点距離によってはミラーで反射させた方が設計が容易になる場合がある。
本実施形態の光学測定部1は、分光分析装置やFTIR分析装置などで要求される光路長や、ミラーなどの可動部が不要である。また上述のようにミラーを採用した場合でも、稼働させる必要はなく小型化を維持できる。また単一波長のレーザの反射光を受光するので、回折格子などにより分光する必要が無く、受光部12はレンズとPhoto Detectorのみで構成できる。従って、血糖値測定装置100の小型化、軽量化が実現し、携帯性を大幅に向上させることができる。そのサイズは例えば手のひらに収まり、片手での携帯および操作が十分可能な程度である。
次に、図4を参照して本実施形態の血糖値測定装置の原理について説明する。
図4は、横軸がレーザ光の出射波長λ、縦軸が吸光率Iである。また、破線は予め基準となる条件で実測されている(あるいは理論値の)スペクトル分光曲線である。
本実施形態では、レーザ光を使用する。レーザ光のスペクトルは非常に狭く、ほぼ単一波長光である。そして、少なくとも3つの異なる波長(λ1、λ2、λ3)のレーザ光を個別に照射して各波長に対する吸光率Iを測定し、3波長に対応した3つの吸光率からこれらの2次微分値を求める。
吸光率Iは、発光部から照射されたレーザ光の照射量と、真皮層で反射された反射光の受光量で求めることができる。すなわち、被測定部位に入射する波長λの光の強度をL0(λ)とし、受光した波長λの反射光の強度をL(λ)とすると、被測定部位25の吸光率I(λ)はln(L(λ)/L0(λ))で求められる(尚、入射光が一定の場合には、受光強度そのものが吸光率と等価である。)。
しかし既述の如くグルコースによる吸光率は非常に小さく、また血糖値は100mg/dl程度のグルコース濃度であるため、実際の血糖値が変動したのか、測定誤差であるのかの違いが分からない場合がある。
そこで、2次微分値を利用する。本実施形態の2次微分値とは、グルコースによる光吸収が光の波長により変動することを利用し、この波長による変動ができるだけ大きく現れる波長域を含む近接した3つの波長を選択して、吸光率Iと波長λの2次導関数の微分係数に相当する値として定義されるものである。
3点のデータの次微分値を求めることは、波長λ1、λ2、λ3の3点のデータから、中心点(2番目のデータ:λ2)に至るデータの変化量を求めることになる。つまり、中心波長λの吸光率Iを頂点として周りの2点(λ1、λ3)の吸光率Iからの変化量として求めることになるため、照射光量対受光量の実測値で算出するより、演算の感度を向上させることができる。
また、2次微分値は変化量として求められるため、基準(実測値)の大きさは無関係となり、揺らぎ(fluctuation)のような変動を吸収することが可能となる。従って、スペクトル分析法で血糖値測定を行った場合(破線)と同様な結果が得られる。
更に、本実施形態ではグルコースの吸光スペクトルのみ測定し、不要なスペクトルの測定をしないため、測定時間を短縮することが可能となる。
図5および図6を参照して、より具体的に説明する。図5、図6はいずれも、横軸がレーザ出射波長λであり、縦軸が吸光率Iである。
まず、第1波長λ1にてレーザを駆動、被測定部位に照射して反射光から第1吸光率I1を測定する(図5(A))。次に、第2波長λ2にてレーザを駆動、被測定部位に照射して反射光から第2吸光率I2を測定し(図5(B))、第3波長λ3についても同様に第3吸光率I3を測定する(図5(C))。ここでレーザの発光出力が一定であれば、第1吸光率I1、第2吸光率I2、第3吸光率I3からこれらの2次微分値は離散的な微分処理として計算できる。
既述の如く、グルコースの場合は近赤外帯光に対して、幾つかのスペクトルに対して吸光特性を有する。また純水の場合、2000nm付近の波長に対して非常に強い吸収があることがわかっている。
図6は、これらの特性を示す図であり、横軸が波長λ、縦軸が吸光率Iである。また実線が、予め測定された純水のスペクトル分光曲線であり、破線が予め測定された、純水とグルコースの混合液のスペクトル分光曲線である。これらの分光曲線により、実線より破線の吸光率Iが大きい波長は、グルコースの吸光率が高い波長であると言える。
波長λが2000nm付近では、純水による吸収が非常に大きく、また、実線と破線が重畳しているため、この波長帯では純水以外に吸光を示す分子、物質が殆どなく、純水による吸光のみが測定できる。また、この波長帯での吸光率が非常に高いことから、他の分子、物質の吸光があったとしても、相対的に非常に小さくなり、無視することが可能となる。
本実施形態では、純水による吸光率が最も高くなる2000nmに最も近い波長で、グルコースによる吸光率が高くなる波長をレーザの発振波長を中心、すなわち第2波長λ2とする。一例として第2波長λ2は、1870nmである。そしてその前後(λ1、λ3)の波長、すなわち図6に示す第1波長λ1、第3波長λは以下の通り選択する。
第3波長λ3はこの純水による吸光が高い領域で、且つグルコースの吸光がなく、第2波長λ2から離れた波長とする。また、第1波長λ1は第2波長λ2よりも下方の波長であり、ほぼグルコースによる吸光がない波長を選択する。
ここで、第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3にて実測された吸光率を、それぞれ吸光率I1、第2吸光率I2、第3吸光率I3とすると、その系列Sは、以下の通りである。
S={I1,I2,I3}
そして、これらの離散的な微分処理による2次微分値iは以下の式で表わされる。
i=ΔS/(ΔΛ)=2×I2−(I1+I3)
2次微分値iの値は変化量に相当するものである。そのためどこからの変化量かを特定する基準値が必要となり、この基準値により定量的な数値を求めることになる。
そこで、第3波長λ3のレーザ光の純水による吸光率を、全体の基準値(第3基準吸光率Ib3)として使用する。また、第1波長λ1および第2波長λ2の各レーザ光の純水による吸光率も、それぞれの波長で実測(血糖値測定)した吸光率を補正する際の基準値(第1基準吸光率Ib1、第2基準吸光率Ib2)として使用する。
第3波長λ3は、純水による吸光率(第3基準吸光率Ib3)が非常に高く、ほぼ純水のみによる吸光率となる波長を選択している。すなわち、実測された第3吸光率I3の、第3基準吸光率Ib3に対する変位を測定すれば、その値は全体的な変位量(基準シフト量Sf)である。従って、第1波長λ1および第2波長λ2で測定された吸光率(第1吸光率λ1、第2吸光率λ2)も基準シフト量Sfによって定量的に補正ができ、第1基準補正吸光率Ibr1、第2基準補正吸光率Ibr2が得られる。
さらに、第1吸光率I1、第2吸光率I2は、グルコースの吸光特性による変動量が含まれる(図6の破線)ため、第1基準補正吸光率Ibr1、第2基準補正吸光率Ibr2を、純水に対する吸光率である第1基準吸光率Ib1、第2基準吸光率Ib2と比較することでグルコースによる吸光率の変位量が特定可能であり、最終的に定量的な第1補正吸光率Ir1および第2補正吸光率Ir2が算出できる。
そして、第1補正吸光率Ir1、第2補正吸光率Ir2、第3吸光率I3を2次微分値iを定量値とするための基準値としてこれらをパラメータとする血糖値変換関数によって、血糖値を求める。
つまり、純水における各波長の吸光率を予め測定して、基準値(データ)として保持することで、血糖値の測定が可能である。従って例えば被測定部位に見立てた物理的な参照体等は不要である。
また、純水による吸収率からの基準シフト量Sfは、第3波長λ3の実測値である第3吸光率I3と、第3基準吸光率Ib3により求められるが、第3吸光率I3は、2次微分値を求める際のデータとしても使用しており、演算処理で取り扱うデータ量の簡素化に寄与している。
図7は、本実施形態の血糖値測定装置100の光学測定部1の概略を示す回路ブロック図の一例である。
発光部(半導体レーザ)11は、制御部6のレーザドライバ63により駆動され、記述の如く第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3の3つのレーザ光20を順次出力する。レーザ光20の一部はミラー15およびFMD(Front Monitor Diode)を介してAPC(Auto Power Control)13に入力される。APC15は、各波長毎にレーザ光20のパワーを一定に維持したり、3波長全体としてレーザ光20のパワーを均一に保つ等の制御を行う。レーザ光20は、被測定部位25に所定の照射角度およびビームの絞り角(レンズ開口径NA)で照射される。
受光部(Photo Detector)12は例えばInGaAsフォトダイオードなどであり、被測定部位25の真皮層252からの反射光21を受光し、電気信号に変換する。電気信号は、受光した光の強度に比例し、増幅器14により増幅され、制御部6のA/D変換器(ここでは不図示)に出力される。
また、光学測定部1は、温度検出部(例えば温度センサ)16を有する。温度センサ16は測定部位25の温度(またはそれに加えて外気温)を測定するものである。グルコースの吸光特性は温度によって変化する。そこで温度センサ16によって血糖値の測定前に温度を測定し、その測定結果からレーザ光20の波長を微小な範囲で補正する。具体的には、レーザ光20は、電流あるいは温度により発振波長が変化する特性を有するので、予め測定したグルコースの吸光特性の温度依存性に基づきレーザ光20の温度、あるいは駆動電流を制御する。例えばレーザ光20の駆動電流で制御する場合にはレーザ駆動量を算出して、レーザドライバ63にフィードバックする。これにより、第1波長λ1〜第3波長λ3は、被測定部位25の温度に応じてそれぞれ本実施形態の波長の条件を満たす範囲で最も効率の良い波長が選択され、例えば数nm程度シフトされる。これにより正確な血糖値が測定可能となる。
図8は、本実施形態の血糖値測定装置100の制御部6の概略を示す回路ブロック図の一例である。
制御部6は、DSP(Digital signal processor)61と、A/D変換回路62、レーザドライバ63、演算処理部65を有する。また、測定結果等のデータを表示部に出力するための表示ドライバ64や、他の制御に必要な所望の回路(不図示)等も有する。
光学測定部1で増幅された受光量に基づく信号(受信信号)は、A/D変換回路62によりディジタル信号に変換され、DSP61内の演算処理部65に入力される。
演算処理部65は、第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3における受信信号を、当該波長のレーザ光が被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率I1、第2吸光率I2、第3吸光率I3に換算する。さらに第1吸光率I1、第2吸光率I2、第3吸光率I3の2次微分値を演算する。
また、実測値である第1吸光率I1、第2吸光率I2を、第3吸光率I3と所定の基準値により補正した第1補正吸光率Ir1、第2補正吸光率Ir2を算出する。
すなわち演算処理部65は、予め測定された第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3における純水による吸光率を、第1基準吸光率Ib1、第2基準吸光率Ib2、第3基準吸光率Ib3として保持しており、実測値である第3吸光率I3と基準値となる第3基準吸光率Ib3により基準シフト量Sfを算出する。第3波長λ3は、純水における吸光率が最も高くなる波長の近傍の波長であり、他の成分がほとんど吸光されないことから、この基準シフト量Sfが全体的な基準値の変動量となる。
従って、この基準シフト量Sfにより第1吸光率I1、第2吸光率I2を補正し、それぞれ第1基準補正吸光率Ibr1、第2基準補正吸光率Ibr2を算出する。
また第1吸光率λ1、第2吸光率λ2には、グルコースによる変動量が含まれるため、第1基準補正吸光率Ibr1、第2基準補正吸光率Ibr2を、それぞれ第1基準吸光率Ib1、第2基準吸光率Ib2により補正して第1補正吸光率Ir1および第2補正吸光率Ir2を算出する。これにより、実測した各波長の吸光率に対して定量的に補正が行える。
そして、演算処理部65は、2次微分値と第1補正吸光率Ir1、第2補正吸光率Ir2、第3吸光率I3をパラメータとする血糖値変換関数により、血糖値データを演算する。
制御部6は、表示ドライバ64によって血糖値データを測定結果として表示部2に表示する。さらに、制御部6は、接触検出センサである光学測定部1の遮光板17によって、光学測定部1内のスイッチ18(図2参照)が押下される等、正常な接触を検知した場合に、測定処理(例えば温度測定、レーザ駆動等)を開始する等、接触状態の検出に関する処理を行う。また、この他にも測定部6は測定開始・停止のボタンの押下や、測定状態の監視等に対応した、既知の各種制御を行う。
次に、図9および図10を参照して、本発明の血糖値測定方法について説明する。
本実施形態の血糖値測定方法は、生体の被測定部位における血糖値を光学的に測定する血糖値測定方法であって、被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に照射する工程と、被測定部位で反射したレーザ光の反射光をそれぞれ検出する工程と、反射光から第1波長、第2波長、第3波長の各レーザ光が被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率を算出する工程と、第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算する工程と、第1吸光率、第2吸光率を第3吸光率と所定の基準値に基づき補正し、第1補正吸光率、第2補正吸光率を算出する工程と、第1、第2補正吸光率と第3吸光率、および2次微分値を用いて血糖値を演算する工程と、から構成される。
図9は、本実施形態の血糖値測定方法の一例を示すフロー図であり、図10は、受光信号のサンプリングを示す図である。以下これらを参照して説明する。
第1工程(ステップS1):被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に照射する工程。
まず被測定部位の体温(および外気温)を測定する(ステップS11)。測定温度とグルコースの温度依存特性に基づき、規定の(本実施形態の)レーザ波長の条件を満たす、あるいは条件に最も近い波長を出射するレーザ駆動量を算出する(ステップS12)。
本実施形態では第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3の3つの単一波長を使用する。そして規定のレーザ波長とは以下の条件を満たす波長である。すなわち、第1波長λ1、第2波長λ2、第3波長λ3がそれぞれ近傍の波長であり、この順で波長が長くなり(λ1<λ2<λ3)、第3波長λ3は純水に対する吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長である。また第2波長λ2はグルコースによる吸光率が大きい波長であり、第1波長λ1は、グルコースによる吸光率が小さい波長である。
算出されたレーザ駆動量に応じて、まず第1波長λ1の半導体レーザをパルス駆動し、温度補正された第1波長λ1を被測定部位に照射する(ステップS13および図10(A))。
第2工程(ステップS2):被測定部位で反射したレーザ光の反射光をそれぞれ検出する工程。
被測定部位に照射された第1波長λ1のレーザ光は、真皮層により拡散反射する。つまりレーザ光は真皮層で拡散反射する照射角度で発光部から出力される。その反射光を受光部にて検出する。受光部は検出した受光量をアナログ受光信号に変換し、増幅器に出力する(ステップS21および図10(B))。増幅器では受光信号をレーザのオン、オフによるAC信号として増幅する(ステップS22および図10(C))。その後、アナログ受光信号はA/D変換器によりディジタルフィルター処理が施され、ディジタル受光信号に変換される。このディジタル受光信号について各パルスの期間毎に所定の回数(例えば数千回)のサンプリングデータSを取得、蓄積する(ステップS23および図10(D))。
第3工程:(ステップS3):反射光から第1波長、第2波長、第3波長の各レーザ光が被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率を算出する工程。
第1波長λ1についてのサンプリングデータSを平均化し、1つのディジタル受光信号を求める(ステップS31)。照射されたレーザ光量が一定とし、ディジタル受光信号から第1波長λ1がグルコースに吸光された割合である第1吸光率I1を算出する(ステップS32)。
第2波長λ2および第3波長λ3についても、同様に第1工程から第3工程を行い、それぞれグルコースに吸光された割合である第2吸光率I2、第3吸光率I3を算出する。
第4工程(ステップS4):第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算する工程。
第1吸光率I1、第2吸光率I2、第3吸光率I3を離散した3点のデータとして、2次微分値iを算出する。これにより、中心波長である第2波長λ2の吸光率(第2吸光率I2)を頂点として周りの2点からの吸光率の変化量を得ることができる。
第5工程(ステップS5):第1吸光率、第2吸光率を第3吸光率および所定の基準値に基づき補正し、第1補正吸光率、第2補正吸光率を算出する工程。
第1、第2、第3吸光率λ1〜λ3のそれぞれに対する第1、第2、第3基準吸光率Ib1〜Ib3は予め測定されている。第1、第2、第3基準吸光率Ib1〜Ib3は、第1波長λ1〜第3波長λ3のそれぞれにおける、純水による吸光率である。第3波長λ3は、純水による吸光率が最も高い波長の近傍が選択されており、その波長における実測の吸光率(第3吸光率I3)はほぼ純水のみの吸光率(第3基準吸光率Ib3)に近い値となる。
そこで、第3吸光率I3と第3基準吸光率Ib3により基準シフト量Sfを算出し(ステップS51)、該基準シフト量Sfにより、第1、第2吸光率をそれぞれ補正して第1基準補正吸光率Ibr1、第2基準補正吸光率Ibr2を算出する(ステップS52)。
第1吸光率I1および第2吸光率I2には、グルコースによる変動量が含まれているため、これらの純水の特性と比較することで定量的な値が得られる。すなわち、第1および第2基準補正吸光率Ib1、Ib2をそれぞれ第1、第2基準吸光率Ib1、Ib2により補正して定量的な値である第1補正吸光率Ir1、および第2補正吸光率Ir2を算出する(ステップS53)。
第6工程(ステップS6):第1、第2補正吸光率と、第3吸光率、および2次微分値を用いて血糖値を演算する工程。
第1補正吸光率Ir1、第2補正吸光率Ir2、第3吸光率I3を2次微分値iを定量化するためのパラメータとし、更にこれらをパラメータとする血糖値変換関数によって、血糖値を求める。

本発明を説明するための(A)外観図、(B)断面図、(C)平面図、(D)平面図である。 本発明を説明するための(A)概要図、(B)断面図である。 本発明を説明するための(A)上面図、(B)断面図である。 本発明を説明するための特性図である。 本発明を説明するための特性図である。 本発明を説明するための特性図である。 本発明を説明するための回路ブロック図である。 本発明を説明するための回路ブロック図である。 本発明を説明するためのフロー図である。 本発明を説明するための信号波形図である。
符号の説明
1 光学測定部
2 表示部
3 アタッチメント
4 電源スイッチ
5 測定開始・停止ボタン
6 制御部
7 電源部
8 外部筐体
11 発光部
11a 集光レンズ
12 受光部
12a 集光レンズ
13 APC
14 増幅器
16 温度センサ
17 遮光板
18 スイッチ
20 レーザ光
21 反射光
25 被測定部位
61 DSP
62 A/D変換回路
63 レーザドライバ
64 表示ドライバ
65 演算処理部
100 血糖値測定装置
251 表皮
252 真皮層
253 皮下組織
λ1 第1波長
λ2 第2波長
λ3 第3波長
I1 第1吸光率
I2 第2吸光率
I3 第3吸光率
Ib1 第1基準吸光率
Ib2 第2基準吸光率
Ib3 第3基準吸光率
Ibr1 第1基準補正吸光率
Ibr2 第2基準補正吸光率
Ir1 第1補正吸光率
Ir2 第2補正吸光率
i 2次微分値

Claims (16)

  1. 発光部と受光部と制御部を有し、生体の被測定部位における血糖値を測定する光学測定部と、
    前記血糖値を表示する表示部とを有する血糖値測定装置であって、
    前記発光部は、前記被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に出力し、
    前記受光部は、前記被測定部位で反射した前記レーザ光の反射光をそれぞれ検出し、
    前記制御部は演算処理部を備え、該演算処理部は前記反射光を前記第1波長、第2波長、第3波長の前記レーザ光が前記被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率に換算し、該第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算し、前記2次微分値および、前記第1、第2、第3吸光率に基づく値により前記被測定部位における血糖値データを算出し、前記表示部に前記血糖値データを出力することを特徴とする血糖値測定装置。
  2. 発光部と受光部と制御部を有し、生体の被測定部位における血糖値を測定する光学測定部と、
    前記血糖値を表示する表示部とを有する血糖値測定装置であって、
    前記発光部は、前記被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に出力し、
    前記受光部は、前記被測定部位で反射した前記レーザ光の反射光をそれぞれ検出し、
    前記制御部は演算処理部を備え、該演算処理部は前記反射光を前記第1波長、第2波長、第3波長の前記レーザ光が前記被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率に換算し、該第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算し、前記第1、第2吸光率を前記第3吸光率および所定の基準値により補正した第1補正吸光率、第2補正吸光率を算出し、前記2次微分値および、前記第1、第2補正吸光率、および前記第3吸光率に基づき前記被測定部位における血糖値データを算出し、前記表示部に前記血糖値データを出力することを特徴とする血糖値測定装置。
  3. 前記第1波長、第2波長、第3波長はそれぞれ近傍の波長であり、この順で波長が長くなり、前記第3波長は純水による吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長であり、前記第2波長はグルコースによる吸光率が大きい波長であり、前記第1波長は、グルコースによる吸光率が小さい波長であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血糖値測定装置。
  4. 前記演算処理部は前記第1、第2、第3吸光率のそれぞれに対する第1、第2、第3基準吸光率を保持し、前記第3吸光率と前記第3基準吸光率により基準シフト量を算出し、該基準シフト量により、前記第1、第2吸光率をそれぞれ補正して第1基準補正吸光率、第2基準補正吸光率を算出し、前記第1および第2基準補正吸光率をそれぞれ前記第1、第2基準吸光率により補正して前記第1補正吸光率および第2補正吸光率を算出することを特徴とする請求項2に記載の血糖値測定装置。
  5. 前記第1、第2、第3基準吸光率は予め測定された純水による前記第1、第2、第3波長の前記レーザ光の吸光率であることを特徴とする請求項4に記載の血糖値測定装置。
  6. 前記光学測定部は温度検知部を有し、該温度検知部により前記第1波長、第2波長および第3波長の温度補正を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血糖値測定装置。
  7. 前記光学測定部は、前記温度検知部により前記被測定部位の体温を測定し、グルコースの吸光特性の温度依存特性に基づき、前記レーザ光の温度または駆動電流を変化させ、該レーザ光の出射波長を制御することを特徴とする請求項6に記載の血糖値測定装置。
  8. 前記発光部は、前記被測定部位の表皮から入射した前記レーザ光が真皮層にて拡散反射する照射角度で前記レーザ光を出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血糖値測定装置。
  9. 前記発光部および前記受光部は、遮光板を介して隣接して配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の血糖値測定装置。
  10. 生体の被測定部位における血糖値を光学的に測定する血糖値測定方法であって、
    前記被測定部位に対して出射波長がそれぞれ第1波長、第2波長および第3波長の近赤外レーザ光を個別に照射する工程と、
    前記被測定部位で反射した前記レーザ光の反射光をそれぞれ検出する工程と、
    前記反射光から前記第1波長、第2波長、第3波長の前記各レーザ光が前記被測定部位のグルコースにそれぞれ吸光された割合である第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率を算出する工程と、
    前記第1吸光率、第2吸光率、第3吸光率の2次微分値を演算する工程と、
    前記第1吸光率、第2吸光率を前記第3吸光率と所定の基準値に基づき補正し、第1補正吸光率、第2補正吸光率を算出する工程と、
    前記第1、第2補正吸光率と、前記第3吸光率、および前記2次微分値を用いて血糖値を演算する工程と、
    を具備することを特徴とする血糖値測定方法。
  11. 前記第1波長、第2波長、第3波長はそれぞれ近傍の波長であり、この順で波長が長くなり、前記第3波長は純水に対する吸光率が非常に大きくほぼ純水による吸光のみが測定できる波長であり、前記第2波長はグルコースによる吸光率が大きい波長であり、前記第1波長は、グルコースによる吸光率が小さい波長であることを特徴とする請求項10に記載の血糖値測定方法。
  12. 前記第1、第2、第3吸光率のそれぞれに対する第1、第2、第3基準吸光率を予め測定し、前記第3吸光率と前記第3基準吸光率により基準シフト量を算出し、該基準シフト量により、前記第1、第2吸光率をそれぞれ補正して第1基準補正吸光率、第2基準補正吸光率を算出し、前記第1および第2基準補正吸光率をそれぞれ前記第1、第2基準吸光率により補正して前記第1補正吸光率および第2補正吸光率を算出することを特徴とする請求項10に記載の血糖値測定方法。
  13. 前記第1、第2、第3基準吸光率は予め測定された純水による前記第1、第2、第3波長の前記レーザ光の吸光率であることを特徴とする請求項12に記載の血糖値測定方法。
  14. 前記被測定部位の温度を検知し、前記第1波長、第2波長および第3波長の温度補正を行うことを特徴とする請求項10に記載の血糖値測定方法。
  15. 前記レーザ光の出射波長は、前記被測定部位の体温と、グルコースの温度依存特性に基づき前記レーザ光の温度または駆動電流を変化させて制御することを特徴とする請求項14に記載の血糖値測定方法。
  16. 前記レーザ光は、前記被測定部位の表皮から入射し、真皮層にて拡散反射する照射角度で出力されることを特徴とする請求項10に記載の血糖値測定方法。
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