図3は、蒸気タービン及びこれに駆動される発電機(以下タービン発電機という)の1例を示す概略側面図である。
図3に示すタービン発電機は、タンデム型低圧4フロー再熱タービンであり、図3において、2は高圧タービン、3は中圧タービン、4は第1低圧タービン、5は第2低圧タービン、6は発電機、10は復水器である。また61は高圧タービン2の回転軸である高圧タービン軸、62は中圧タービン3の回転軸である中圧タービン軸、63a及び63bは第1低圧タービン4及び第2低圧タービン5の回転軸である低圧タービン軸、64は発電機6の回転軸である発電機軸であり、これらの各軸を串状に連結して、タンデム型タービン発電機を構成し、タービン架台51上に取付けている。
21及び22は上記高圧タービン軸61を支持する No.1(#1)軸受及び No.2(#2)軸受、23及び24は上記中圧タービン軸62を支持する No.3(#3)軸受及び No.4(#4)軸受、25及び26は上記低圧タービン軸63aを支持する No.5(#5)軸受及び No.6(#6)軸受、27及び28は上記低圧タービン軸63bを支持する No.7(#7)軸受及び No.8(#8)軸受、29a及び29bは上記発電機軸64を支持する No.9(#10)軸受及び No.10(#10)軸受である。
そして、上記タービン発電機の各軸受21〜28,29a,29bは、高圧タービン2、中圧タービン3、第1低圧タービン4、第2低圧タービン5及び発電機6の重量が、これら各軸受にその軸受容量に応じて負荷されるように、各軸受の上下方向位置をシム等を介して調整されて、つまりアライメントを施されて上記タービン架台51に固定されている。
図17は従来のタービン発電機における低圧タービン及び復水器を軸直角方向に視たる図(図3のA−A矢視図)である。図17に示すように、上記復水器10は第1,第2低圧タービン4,5の下部に伸縮継手71を介して取付けられている。そして上記復水器10はその下面を基礎架台50に固定され、上記のようにタービン架台511に取付けられた第1,第2低圧タービン4,5との熱膨張差は上記伸縮継手71によって吸収するようになっている。
また、図7は鋼製の共通架台(鋼製架台1)上に取付けたタービン発電機の1例を示す。図7におけるタービン発電機の構成及び軸受の配置は図3と同様であり、図3と同一の部材は同一の符号にて示す。尚、11はタービン発電機用の計器である。
図7に示すように、タービン発電機を共通の鋼製架台1に取付けて据付けるようにした据付装置にあっては、基礎架台50上に弾性支持した鋼製架台1上にタービン発電機を固定していることから、後述する理由により、図17に示すような伸縮継手71を設けていない。
しかしながら、図4あるいは図6に示されるような従来の復水器の取付構造及びかかる取付構造に基づく軸受のアライメント方法による場合は次のような問題点がある。
上記タービン発電機の運転時において、復水器10内の真空による下向きの真空荷重が第1,第2低圧タービン4,5及び復水器10に作用する。図6に示す従来のものにおいては、低圧タービン4,5と復水器10との間に伸縮継手71が介装されているため、低圧タービン側に掛かる上記真空荷重は低圧タービン4,5が固定されたタービン架台511で受けている。従って、タービン架台511に鋼製架台1を用いる場合には、鋼製架台1の剛性がコンクリート架台等よりも小さく、変形能が大きいことから、鋼製架台1のみで上記真空荷重を受けるのが強度上困難である。このため、上記鋼製架台1を用いる場合には、上記伸縮継手71を設けずに、低圧タービン4,5と復水器10とを直結することにより上記真空荷重は鋼製架台1及び復水器10のいずれにも作用しない。
然るに、上記のように、鋼製架台1にタービン発電機を据付け、伸縮継手71を用いない据付構造にあっては、上記タービン発電機の運転中において、上記復水器10は上方に熱膨張するとともに、タービン発電機が固定される鋼製架台1も鋼材からなるため、コンクリート架台に較べて架台1自体の熱変形が大きくなる。このため、従来の方法のように、タービン発電機の冷態時における軸受荷重をベースとしてアライメントを行なう場合は、タービン発電機の運転中においては、上記復水器10の熱膨張や鋼製架台の熱変形及び上記真空荷重による変形によって、架台1の上記各軸受21〜28,29a,29b取付部が上下に変位して、各軸受の軸受荷重が、当初のアライメント時から変化し、軸受荷重の不均一が生じて軸受の摩耗や焼付きを引き起こすこととなる。
従って本発明に係る他の第1検討課題は、鋼製架台によりタービン発電機を支持するようにした蒸気タービンプラントにおいて、復水器の真空荷重を鋼製架台の過大な変形を伴うことなく支持可能とするとともに、復水器の熱膨張や鋼製架台の熱変形による軸受荷重の過大化及びこれに伴う軸受の摩耗焼付き等の不具合の発生を防止することにある。
次に、図7に示されるような、鋼製架台1上に蒸気タービンプラントの各機器を固定した型式の蒸気タービンプラントにあっては、鋼製架台1がコンクリート架台等に較べて熱伝導率が格段に大きく、熱によって変形し易い。
このため、上記蒸気タービンプラントにおいては、蒸気配管や各軸受部7,89,211等を潤滑して昇温された潤滑油が通流する排油管からの熱が鋼製架台1に伝達され、これによって鋼製架台1が熱変形を起こし易くなる。
然るに、上記蒸気タービンプラントにおいては、従来、蒸気配管はタービンの回転中心に関して左、右方向にほぼ対称に配置されている一方で、上記排油管は各軸受部から出された枝管を上記架台1の1側に取付けられ、前後に延設された排油主管を通して油タンクに戻される構造となっている。
このため、上記従来の蒸気タービンプラントにあっては、排油主管が鋼製架台1の片側に配設されているため、鋼製架台1は、同排油主管が取付けられた側の熱変形がこれと反対側よりも大きくなって、タービン回転軸心に関して非対称に変形することとなり、軸受のアライメントの変動や軸振動の増大等の不具合を誘発する。
従って本発明に係る他の第2検討課題は、鋼製架台上に蒸気タービン及び発電機を取付けてなる蒸気タービンプラントにおいて、鋼製架台周りの配管の不均一による鋼製架台の片寄った熱変形及びこれによって引き起される軸受アライメントの変動や軸振動の増大等の不具合の発生を防止することにある。
次に、ガスタービンあるいは蒸気タービン(以下タービンという)で発電機を駆動するタービン発電プラントにおいては、タービンと発電機とを連結した据付状態における全長が長く、かつ大重量であるため、発電所の据付構造は高剛性の据付構造となっている。
図18は上記タービン発電プラントの据付構造の1例を示す概略正面図(回転軸心に直角方向に観たる図)であり、図18において110は発電所の建屋、111は同建屋内の機器操作用床部、112はコンクリート架台である。113は上記タービンと発電機とを直結してなるタービン発電機であり、同タービン発電機113は上記コンクリート架台112上に固定されている。
上記タービン発電機113を製作工場にて製作し、船舶車両等の輸送機関で発電所まで運搬して、建屋110内の据付場所に据付けるにあたっては、従来は製作工場内でタービン及び発電機を製作し、両者を工場内の運転架台上にて連結して所定の性能及び強度確認試験運転を行った後、上記運転架台からタービン及び発電機を取外し上記輸送機関に搭載して上記据付場所まで運搬し、図18に示すように、タービン及び発電機をコンクリート架台112上においてアライメント調整等の所定の調整を行って連結し、上記架台112上に固定していた。
しかしながら、上記従来の方法にあっては、製作工場内の運転架台上でタービンと発電機とをアライメント調整等の所定の調整を行なって連結して各種試験運転を行なった後、両者を切り離して輸送機関に搭載、運搬し、据付場所(発電所の建屋110内)のコンクリート架台112において再度タービン及び発電機を上記所定の調整を行って据付けるため、据付場所での据付工事及び製作工場から据付場所までの輸送に多大な工数を要するとともに、他の関連機器の据付工事と錯綜して据付作業能率が低下するという問題点を有している。
また上記従来の方法にあっては、タービン発電機113をコンクリート架台112上に固定するため、地震時の発生荷重が大きくなり、地震の影響を直接受け易い。
そこで本発明の発明者らは特願平10−176163号にて上記複数の機器を単一の鋼製架台に取付け、固定して双方が一体化されたモジュール体となし、同モジュール体を据付場所の建屋等の据付用構造物に固定する方法を提案した。
しかしながら上記方法は複数の機器を単一の鋼製架台に取付けて、輸送し据付ける方法であるため、低圧4フローの再熱蒸気タービン等の軸方向に連結される機器の数が多く、全長の長いプラントの場合には適用困難なことがある。
従って、本発明に係る他の第3検討課題は、軸方向に連結される機器の数が多く、全長の長いプラントであっても、上記機器を鋼製架台に取付けての輸送及び据付工事の工数を従来方法よりも大幅に低減するとともに、他の工事との錯綜等を回避して据付作業能率を向上し、輸送、据付コストを低減することにある。
次に、近年、火力プラントにおいては、蒸気タービン及び発電機を1個の鋼製架台上に固定し、同鋼製架台を複数のばね機構及び粘性摩擦ダンパからなる制振ダンパを介して基礎架台上に据付ける据付方法が採用されてきている。
かかる鋼製架台を用いた蒸気タービン及び発電機(以下タービン発電機と称する)の一例としては、図7に示すように、多数の鋼板を溶接して構成された鋼製架台1上に、高圧タービン2、中圧タービン3、2組の低圧タービン4,5及び発電機6を直列に配置して、これらを上記架台1に固定してなるものがある。尚、10は上記2組の低圧タービン4,5の下部に連結された復水器である。
また、7は中圧タービンと第1段低圧タービン4との間の軸受部、8は第1段低圧タービン4と第2段低圧タービン5との間の軸受部、9は第2段低圧タービン5と発電機6との間の軸受部である。さらに、111は上記タービン発電機の各種計測用の計器で、同計器111は上記鋼製架台1の上記高圧タービン2近傍の位置に固定されている。
図19〜図20には上記鋼製架台201の従来の1例が示されており、図19は平面視図(図20のB−B矢視図)、図20は図19のA−A矢視図である。図19〜図20において、211はタービン2〜5を取付けるためのスペースであるタービン取付用空間、221は発電機6を取付けるためのスペースである発電機取付用空間である。
71は床板、72は底板、73は前面板、74は後面板、75,76は側面板であり、この鋼製架台20は、上記各板を鋼板で構成し、この鋼板をそのまま直接にあるいは所定の形状に折り曲げて溶接し、内部に強度部材としての複数の鋼板製リブ77を適宜設けて上記各板に溶接することによって箱状に形成されている。
しかしながら図19〜図20に示されるような従来の鋼製架台を用いるタービン発電機の据付構造には次のような問題点がある。
鋼製架台201は、上記のように多数の鋼板を溶接して成り、コンクリート架台等に較べて軽量でかつ所要の剛性を備えているが、鋼板の溶接構造であるため、同鋼製架台201自体の固有振動数が高くなり、タービン発電機の定格回転数に近い値になる。
このため、上記従来の鋼製架台201を用いた据付構造にあっては、鋼製架台201の固有振動数とタービン発電機の軸回転数とが同期することがあり、かかる現象が発生すると、タービン発電機の軸振動と鋼製架台201の固有振動との共振が発生し、軸受の摩耗あるいは焼付きや、回転軸の破損等を引き起す。
従って本発明の目的は、鋼製架台を用いた機器の据付装置において、鋼製架台の剛性を上げて固有振動数を上昇させ、鋼製架台の固有運動数が軸回転数と同期するのを回避して共振の発生を防止し、軸受の摩耗、焼付きや軸の損傷の発生を防止することにある。
特開2000−009293号(特願平10−176163号)公報
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図3は本発明が適用される蒸気タービン発電機の1例を示す概略側面図である。
図3において、2は高圧タービン、3は中圧タービン、4は第1低圧タービン、5は第2低圧タービン、6は発電機、10は復水器である。また61は高圧タービン2の回転軸である高圧タービン軸、62は3の回転軸である中圧タービン軸、63a及び63bは第1低圧タービン4及び第2低圧タービン5の回転軸である低圧タービン軸、64は発電機6の回転軸である発電機軸であり、これらの各軸を串状に連結して、タンデム型タービン発電機を構成している。
21及び22は上記高圧タービン軸61を支持する No.1(#1)軸受及び No.2(#2)軸受、23及び24は上記中圧タービン軸62を支持する No.3(#3)軸受及び No.4(#4)軸受、25及び26は上記低圧タービン軸63aを支持する No.5(#5)軸受及び No.6(#6)軸受、27及び28は上記低圧タービン軸63bを支持する No.7(#7)軸受及び No.8(#8)軸受、29a及び29bは上記発電機軸64を支持する No.9(#9)軸受及び No.10(#10)軸受である。
上記タービン発電機の各軸受21,22,23,24,25,26,27,28,29a,29bは後述するようなアライメント方法によって、鋼製架台1上に取付けられている。
図7は上記タービン発電機を鋼製架台1上への取付状態を示す外観斜視図である。図7におけるタービン発電機の構成及び軸受の配置は図3と同様であり、図3と同一の部材は同一の符号にて示す。尚、11はタービン発電機用の計器である。
図1〜図2は本発明に係り本発明者が検討した第1検討例の蒸気タービンプラントの据付構造を示し、図1は図3のA−A線矢視図、図2は図1のZ部及びY部、つまりばね機構及び制振ダンパの構造図である。
図1において、第1低圧タービン4及び第2低圧タービン5は、上記のように、鋼製架台1上に固定されている。そして上記第1,第2低圧タービン4,5の下端には上記復水器10が、図6に示すような伸縮継手71を介することなく、直接固定されている。
また、上記鋼製架台1は、並列に配置された複数のばね機構40及び複数の制振ダンパ30を介して基礎架台50に弾性及び防振支持されている。さらに、上記復水器10は、その下端と基礎架台50との間に、複数のばね機構40及び制振ダンパ30を並列に配置して、これらばね機構40及び制振ダンパ30により弾性及び防振支持されている。
上記ばね機構40及び制振ダンパ30の詳細を示す図2において、上記ばね機構40は、上部ばね受40a、下部ばね受40b、上部ばね受40aと下部ばね受40bとの間に複数個並列に設けられたばね(圧縮ばね)40g、及び同ばね40gの取付荷重を調整するための調整ボルト40eからなる。そして、同ばね機構40は上部ばね受40bと鋼製架台1あるいは復水器10との間に粘着ばね受シート40cを介装するとともに、下部ばね受40aと基礎架台50との間に粘着シート40dを介装して、上記鋼製架台1あるいは復水器10と基礎架台50との間に挿入されている。
一方、上記制振ダンパ30は、上部ケース30aと下部ケース30bとの間に形成される密閉空間内にシリコン油等の粘性流体30cを封入してなる。そして、上記上部ケース30aは上記鋼製架台1あるいは復水器10の下面に溶接され(ボルト締めでも可)、下部ケース30bは複数のボルト30eにより上記基礎架台50に固定されている。
上記のように構成されたタービン発電機の据付構造において、タービン発電機の運転中、鋼製架台1には、タービン発電機を構成する各機器の重量のみが下向きに作用し、真空荷重を受けることはない。
これによって、従来のもののような鋼製架台1に上記真空荷重による過大な荷重が作用するのを防止できる。
上記のようにタービン発電機の運転中、復水器10の熱膨張によって、復水器10及びこれが固定された第1低圧タービン4及び第2低圧タービン5に上下方向の変位が生ずるが、鋼製架台1及び復水器10をばね機構40及び制振ダンパ30を介して基礎架台50に支持しているので、上記ばね機構40及び制振ダンパ30からなる弾性、防振支持機構によって上記のような上下方向の変位は吸収され、この上下方向変位により、鋼製架台1に過大荷重が掛かることは無い。
次に上記第1検討例に係るタービン発電機の軸受のアライメント方法について説明する。上記復水器10は、上記のように、その熱膨張により上方に変位する。また上記鋼製架台1は鋼材を溶接してなるため、同架台1自体が温度上昇によって熱変形を起こすとともに、上記のように真空荷重F等の力による変形も生ずる。従って、上記鋼製架台1は上記復水器10の熱膨張による変形及び同架台1自体の変形によって、全体として上方に変位することとなる。
図4は上記鋼製架台1の軸方向における上記変位の状況を示す。図4においてAは変位0(ゼロ)の基準となるアライメント、Bは運転中における架台1の実際の変位量、#1〜#10は No.1軸受21〜 No.10軸受29bの位置を夫々示す。
図4に明らかなように、上記鋼製架台1は、運転中全体として上方に変位し、その変位量は、復水器10の熱膨張の影響を受ける第1,第2低圧タービン4,5(LP1,LP2)近傍が最も大きくなる。
このため本検討例においては、タービン発電機の冷態時、つまり据付時における各軸受21〜29bのアライメントつまり、軸受の上下方向位置を図4のA線に示す基準アライメントから、B線に示す変位量Sだけ低い位置に設定し、これにより、各軸受21〜29bのアライメントは図4のB線に対称なC線となる。
上記検討例によれば、タービン発電機の各軸受のアライメントを鋼製架台1の運転中における変位量に相当する量だけ、基準アライメントAに対して低い位置に設定しているので、タービン発電機の運転中には、図4のB線に示すような鋼製架台1の上方への変位によって各軸受21〜29bのアライメントは上記基準アライメントAの位置となる。
これにより、タービン発電機の各軸受21〜29bの軸受荷重は上記基準アライメントA線にて設定された正規の軸受荷重に維持され、特定の軸受の軸受荷重が過大化してその軸受の摩耗や焼付きを誘発するのが回避される。
次に図5〜図6は本発明に係り本発明者が検討した第2検討例の蒸気タービンプラントの配管構造を示し、図5はその平面図、図6は図5のA矢視図である。また図7は上記配管構造が用いられる蒸気タービンプラントの外観斜視図である。
図7において、1は鋼材を溶接してなる鋼製架台、2は高圧タービン、3は中圧タービン、4は第1低圧タービン、5は第2低圧タービン、6は発電機、10は復水器、111は計器である。
また211は高圧タービン2の前側の軸受部、7は中圧タービン3と第1低圧タービン4との間の軸受部、8は第1低圧タービン4と第2低圧タービン5との間の軸受部、9は第2低圧タービン5と発電機6との間の軸受部である。上記のような蒸気タービンプラントの各機器が固定された鋼製架台1は、複数のばね機構及び制振ダンパ(何れも図示省略)を介して基礎架台(図示省略)に取付けられている。以上の基本とする構成は従来のものと同様である。
この検討例おいては図7に示す蒸気タービンプラントの配管構造を改良している。
即ち、図5〜図6において、1は鋼製架台で、同鋼製架台1上には図7と同様に、高圧タービン2、中圧タービン3、第1低圧タービン4、第2低圧タービン5及び発電機6が串状に連結されて固定されている。17は油タンクで、基礎架台53上に固定されている。
11及び12は、上記鋼製架台1の左側部及び右側部に夫々取付けられた左列排油管及び右列排油管である。上記左列排油管11及び右列排油管12には、上記高圧タービン2、中圧タービン3、第1低圧タービン4、第2低圧タービン5、及び発電機6の各軸受部21,7,8,9等の潤滑部から排出された潤滑油が左列及び右列の各枝管14及び15を通って流入するようになっている。
上記右列排油管12は、連通管13を介して左列排油管11と連通され、同連通管13による合流部の下流には集合管16が設けられ、同集合管16の出口は上記油タンク17に接続されている。
そして、上記左列排油管11と右列排油管12とは、図2に示すように、これらの中心線31,32が蒸気タービンプラントの回転軸心301に対して同一距離S(ほぼ同一距離であればよい)になるように、また、好ましくは管径や管長も左、右方向(上記回転軸心301に直角な水平方向)に対称に設置されている。また上記左側の枝管14及び右側の枝管15についても、その数、管長、管径ともに上記回転軸心301に対して対称に設けられている。
上記のように構成された蒸気タービンプラントにおいて、上記各タービンの軸受部21,7,8,9(図3参照)等の潤滑部を潤滑して昇温された潤滑油(排油)は、左右の各枝管14,15を通って左列排油管11及び右列排油管12に流入する。そして右列排油管12を流れた潤滑油は連通管13を通り、その下流部で左列排油管11からの潤滑油と合流し、集合管16を経て油タンク17に戻される。
上記排油時において、蒸気タービンプラント各部を潤滑した後の潤滑油即ち排油の温度が上昇するため、左列及び右列排油管11及び12、並びに左側及び右側の枝管14及び15の温度が上昇し、これらの配管が取付けられている鋼製架台1の温度も上昇する。
然るに本検討例においては、上記のように鋼製架台1の回転軸心301に対称に、左列排油管11及び右列排油管12を設けるとともに、左側の枝管14及び右側の枝管15を設けているので、これらの配管が取付けられている鋼製架台1の温度も、上記回転軸心30に対して左側と右側とで略同一温度となる。
これによって上記鋼製架台1の上記排油管系の温度上昇による熱変形も回転軸心30に対して左、右で略同一となり、従来のもののような非対称な熱変形による軸アライメントの変動や軸振動の増大等の不具合の発生が回避される。
尚、この検討例では、排油管系を、鋼製架台1の上記回転軸心301に対して対称に設けたが、これに加えて蒸気管や鋼製架台1の加熱源となる他の配管類も上記回転軸心301に対して対称に設けることができる。
さらに、本検討例はここに示すようなタンデム型低圧4フロー再熱タービンに限らず、蒸気タービンを鋼製架台に支持するようにしたあらゆる蒸気タービンプラントに適用できる。
次に図8〜図13は本発明に係り本発明者が検討した第3検討例の蒸気タービンプラントの据付構造及び輸送手段を示し、図8は蒸気タービンプラントの据付状態を示す要部側面図、図9は上記据付状態を示す外観斜視構成図、図10は鋼製架台の連結部を示す拡大側面図、図11は図10のA−A矢視図、図12はモジュール体の船舶での輸送時を示す概略斜視図、図13は上記輸送時におけるモジュール体の固定手段を示す側面図である。
図8〜図9において、2は高圧タービン、3は中圧タービン、4は第1低圧タービン、5は第2低圧タービン、6は発電機、10は復水器である。また61は高圧タービン2の回転軸である高圧タービン軸、62は中圧タービン3の回転軸である中圧タービン軸、63a及び63bは第1低圧タービン4及び第2低圧タービン5の回転軸である低圧タービン軸、64は発電機6の回転軸である発電機軸であり、これらの各軸を串状に連結して、タンデム型蒸気タービン発電機を構成している。
21及び22は上記高圧タービン軸61を支持する No.1(#1)軸受及び No.2(#2)軸受、23及び24は上記中圧タービン軸62を支持する No.3(#3)軸受及び No.4(#4)軸受、25及び26は上記低圧タービン軸63aを支持する No.5(#5)軸受及び No.6(#6)軸受、27及び28は上記低圧タービン軸63bを支持する No.7(#7)軸受及び No.8(#8)軸受、29a及び29bは上記発電機軸64を支持する No.9(#9)軸受及び No.10(#10)軸受である。
また、図9において、211は上記高圧タービン2の前部の軸受部、7は中圧タービン3と第1低圧タービン4との間の軸受部、8は第1低圧タービン4と第2低圧タービン5との間の軸受部、9は第2低圧タービン5と発電機6との間の軸受部、45は発電機6の後部の軸受部である。
1は鋼製架台であり、軸方向において、前部架台101、中央架台102及び後部架台103に3分割され、これらを後述するように、ボルト34によって連結して構成される。そして上記鋼製架台1を構成する前部架台101には、高圧タービン2及び中圧タービン3が No.1軸受21、 No.2軸受22、 No.3軸受23及び No.4軸受24を介して固定され、中央架台102には第1,第2低圧タービン4,5が No.5軸受25、 No.6軸受26、 No.7軸受27及び No.8軸受28を介して固定され、さらに後部架台103には、発電機6が、 No.9軸受、及び No.10軸受を介して固定されている。
そして、上記前部架台101には上記タービン2、中圧タービン3及びこれらに付属する全ての部材、並びに配管及び配線が、中央架台102には第1,第2低圧タービン4,5及びこれらに付属する全ての部材、並びに配管及び配線が、さらに後部架台103には発電機6及びこれに付属する全ての部材並びに配管及び配線が、これら各架台101,102,103を切り離して運搬可能なように取付けられている。104は前部架台101と中央架台102との結合部、105は中央架台102と後部架台103との結合部である。
尚、上記鋼製架台1の分割態様は、この検討例の態様に限らず、2分割でも、4分割以上でもよく、また分割された各架台には上記検討例の態様に限らず、所要数の機器を固定できる。
上記のようにして3つの架台101,102,103が結合された鋼製架台1は複数のばね機構40及び制振ダンパ30を介して基礎架台13に据付けられる。
上記ばね機構40は、図13あるいは図8に示すように、上部ばね受40a、下部ばね受40b、上部ばね受40aと下部ばね受40bとの間に複数個並列に設けられたばね(圧縮ばね)40g、及び同ばね40gの取付荷重を調整するための調整ボルト40eからなる。そして、同ばね機構40は上部ばね受40bと鋼製架台1との間に粘着ばね受シート40cを介装するとともに、下部ばね受40aと基礎架台13との間に粘着シート40dを介装して、上記鋼製架台1と基礎架台13との間に挿入されている。
一方、上記制振ダンパ30は、図13あるいは図8に示すように、上部ケース30aと下部ケース30bとの間に形成される密閉空間内にシリコン油等の粘性流体30cを封入してなる。そして、上記上部ケース30aは上記鋼製架台1の下面に溶接され(ボルト締めでも可)、下部ケース30bは複数のボルト30eにより上記基礎架台13に固定されている。
上記鋼製架台1における分割された各架台の結合態様の詳細を図10〜図11に示す。図10〜図11は前部架台101と中央架台102との結合部104を示しているが、中央架台102と後部架台103との結合部105もこれと同様な構成である。
図10〜図11において、32,33は前部架台101及び中央架台102の連結板でその連結面は平滑に仕上げられている。31は上記中圧タービン軸62と第1低圧タービン軸63aとを連結するカップリングである。上記連結板32,33には、図4に示すように、それらの周に沿って複数の結合用ボルト34がほぼ等間隔で配設され、上記連結板32,33を締め付けている。35は位置決め用のピンで、上記ボルト34のピッチ線上に2個以上設けられて、前部架台101と中央架台102との上下面を同一面になるように合わせている。
上記のように構成された蒸気タービンプラントの製作工場での組立て、据付場所への輸送、及び据付場所における据付方法について説明する。
先ず製作工場においては、前部架台101、中央架台102、及び後部架台103を別個に製作し、治具等によりその上面及び下面が同一平面になるように合わせ、ピン35にて位置決めしておく。次いで前部架台101には高圧タービン2、中圧タービン3及び配管、配線を含むこれの付属部材を取付けあるいは固定し、中央架台102には第1,第2低圧タービン4,5及び配管、配線を含む付属部材を取付け、あるいは固定し、さらに後部架台103には発電機6及び配管、配線を含む付属部材を固定あるいは取付ける。
そして、図12に示されるような、上記前部架台101、中央架台102及び後部架台103に上記のようにして各機器を配管、配線とともに取付けあるいは固定してなるモジュール体501を、図10に示すように、ボルト34及びピン35によって結合して、工場内の運転設備に取付け、所定の試運転を行なう。
上記試運転後、ボルト34を取外して各架台101,102,103単位のモジュール501に分割し、各モジュール50毎に船舶(輸送機関)に搭載する。
図12は上記モジュール体501を船舶の船体51に仮固定して据付場所まで輸送する際の斜視図である。図5において、モジュール体501を構成する前部架台101上に、高圧タービン2及び中圧タービン3、並びに配管、配線を含む付属品を固定してなるモジュール体50は、船体51のフレーム53上にスペーサ52を介して次の手法によって仮固定される。
即ち、上記モジュール体501を船舶の船体51に仮固定する際には、図13に示すように、モジュール体501を構成する鋼製架台1(つまり図12の場合は前部架台101)の下面と船体のフレーム53との間に少なくとも4個の固定用スペーサ52を挿入し、ボルト52aで鋼製架台20及びフレーム53に締め付ける。ばね機構40については、図6に示すように、同ばね機構40に粘着シート40c,40dを挿入した状態で仮固定用ボルト40hを、フレーム53からばね機構40及び鋼製架台20まで挿通して3者を一体に締め付ける。
この際において、上記固定用ボルト40hは専用ボルトを用いて、あるいは、ばね機構40のばね40gのばね荷重を調節する複数のボルトのうち、適当な数本をフレーム53、ばね機構40及びモジュール体501の鋼製架台1に挿通可能なように長尺にして用いても良い。
また制振ダンパ30については、空間30f内の粘性流体30cを抜き出した状態で取付ける。この場合、上記のように同制振ダンパ30の上部ケース30aは鋼製架台1に溶接等によって固定されているので下部ケース30bの下面はフレーム53上に載せるのみでよい。
以上のような仮固定状態にて、上記モジュール体501は据付場所まで輸送される。かかる輸送時において、海面の波浪等により船体51が揺動しても、モジュール体501は上記のようにして船体のフレーム53に堅固に固定されているので、支障無く輸送できる。
次に据付場所(発電所)に上記タービン発電機13を据付けるにあたっては、図12〜図13に示す船舶の船体51への仮固定状態から固定用のスペーサ52を取り外すとともに、ばね機構40を仮固定しているボルト40hを抜き出し、鋼製架台(前部架台101等)上に上記機器を取付けてなる上記各モジュール体501を基礎架台13上に置く。
そして、図8に示すように、各モジュール体501の前部架台101と中央架台102との結合部104、中央架台102と後部架台103との結合部105を図10及び図11に示すようにボルト34及びピン35を介して連結する。そして、上記のように連結された鋼製架台1の下面と基礎架台13との間に上記ばね機構40及び制振ダンパ30を挿入する。
上記ばね機構40は、ばね荷重調整用のボルト40eの長さを調節することによりばね40gの取付荷重を設定し、上部ばね受40aと鋼製架台1との間に粘着シート40cを挿み込むとともに、下部ばね受40bと基礎架台13との間に粘着シート40dを挿み込むことによって、上記鋼製架台1と基礎架台13との間に所要の取付荷重で以って介装される。
また上記制振ダンパ30は、所定の制振性能が得られるようにその量を設定して粘性流体30cを封入し、上記鋼製架台1と基礎架台13との間に介装する。
以上のように、この検討例においては、製作工場内で、蒸気タービンプラントを構成する機器を分割された鋼製架台101,102,103の夫々に分けて取付けてモジュール体501とし、このモジュール体50のまま船舶等の輸送機関のフレーム53上に仮固定して据付場所まで輸送する。
そして据付場所においては、鋼製架台即ち前部架台101、中央架台102、後部架台103及びこれらの架台に取付けられた機器類からなる上記各モジュール体501を連結してばね機構40及び制振ダンパを介して基礎架台13上に据付けるようにしたので、製作工場内で試運転を行った蒸気タービンプラントの構成機器を取外すことなく、鋼製架台101〜103と一本化したモジュール体501として輸送し、据付場所に据付ることができ、製作工場における、輸送のため蒸気タービンプラント機器類の取外し作業が不要となって、製作工場から据付場所までの輸送に要する工数が低減されるとともに、据付時における蒸気タービンプラントの鋼製架台1への再取付け及びアライメント調整が省略され、据付工数が低減される。
また、蒸気タービンプラントを構成する各機器を1台あるいは複数台に分け、軸方向に分割された鋼製架台即ち前部架台101、中央架台102あるいは後部架台103に夫々取付けモジュール体化し、このモジュール体501毎に輸送して、据付場所にて各モジュール体501を連結するので、図1の実施形態に示すようなタービンの数が多く全長の長い蒸気タービンプラントであっても、容易に鋼製架台1を用いたモジュール体化による輸送及び据付けを上記のような少ない作業工数で以って行なうことができる。
次に図14〜図16は請求項1〜3の発明に対応する一実施形態に係る蒸気タービンプラントの据付装置を示し、図14は蒸気タービン発電機の据付装置の要部外観斜視図、図15は鋼製架台の斜視図、図16は上記鋼製架台のコンクリート充填部の概略側面図である。
図14において、1は多数の鋼板を溶接してなる鋼製架台で詳細な構成は後述する。上記鋼製架台1上には、高圧タービン2、中圧タービン3、2組の低圧タービン4,5及び発電機6が直列に配置、固定され、タービン発電機を構成している。10は上記2組の低圧タービン4,5の下部に連結された復水器である。
また、7は中圧タービンと第1段低圧タービン4との間の軸受部、8は第1段低圧タービン4と第2段低圧タービン5との間の軸受部、9は第2段低圧タービン5と発電機6との間の軸受部である。さらに、11は上記タービン発電機の各種計測用の計器で、同計器11は上記鋼製架台1の上記高圧タービン2近傍の位置に固定されている。そして上記タービン発電機が固定された鋼製架台1は複数のばね機構及び制振ダンパ(何れも図示省略)を介して基礎架台(図示省略)に防振・耐震支持されている。
上記鋼製架台1の詳細を示す図15〜図16において、1aは上記高圧タービン2及び中圧タービン3を取付けるための高中圧取付用空間、1b及び1cは第1低圧タービン4及び第2低圧タービン5を取付けるための低圧タービン取付用空間、1dは発電機6を取付けるための発電機取付用空間である。
上記鋼製架台1は、上記のように、多数の鋼板を溶接して構成されており、上記タービン発電機が取付けられる上部側の床板211、上記ばね機構や制振ダンパが取付けられる底板221の間に、多数の縦板231及び中板241を結合して、全体として箱形に構成される。21aは上記タービン発電機の取付面となる床面、22aは上記ばね機構及び制振ダンパの取付面となる床面である。
1eは上記中圧タービン3と第1低圧タービン4との間の軸受部7の取付面となる軸受取付面、1fは上記第1低圧タービン4と第2低圧タービン5との間の軸受部8の取付面となる軸受取付面、1gは上記第2低圧タービン5と発電機6との間の軸受部9の取付面となる軸受取付面である。また、1hは上記計器11を取付けるための計器取付面である。
上記鋼製架台1において、上記タービン発電機の重量が集中的に負荷される軸受取付面1e,1f,1gの下側の空間部(タービン発電機の軸線方向の長さが、夫々a1 ,a2 ,a3 )には、コンクリート24a,24b,24cが充填されている。
このコンクリート24a,24b,24cは、図16に示されるように、鋼製架台1の上側の床板211の下面と下側の底板221の上面との間の空間部に、架台の長手方向(軸線方向)には上記のようにa1 ,a2 ,a3 の長さで、幅方向には架台1の全幅に亘って充填され、各鋼板との間に隙間が形成されないよう、密に充填されている。
また上記コンクリート24a〜24cは、上記軸受取付面1e,1f,1gの下側の空間に加えて、夫々の空間から長手方向において前後に所定距離b1 及びc1 ,b2 及びc2 ,b3 及びc3 延長して(幅は適宜設定する)充填され、軸受部近傍の剛性、特にローリング荷重に対する剛性を上昇させている。
さらに、上記鋼製架台1は計器取付面1hの下側空間部にも、その長手方向の一定長さ即ち上記計器111の重量が掛かる部分の長さdと幅eとに亘り、コンクリート24dが上記軸受部と同様な形態で充填されている。
上記のように構成された鋼製架台1において、タービン発電機の重量が集中して負荷される軸受取付面1e,1f,1gの下側の空間部にコンクリート24a,24b,24cが充填されているため、上記軸受部7,8,9を支持する部位の剛性が増大する。
これにより、鋼製架台1は、苛酷な荷重条件下にある軸受部7,8,9を支持する部位の変形が抑制されるとともに、上記剛性の増大によって固有振動数が上昇する。そして、上記コンクリート24a〜24cの充填量及び充填位置を適宜設定することにより、上記固有振動数をタービン発電機の運転軸回転数(定格回転数)よりも常時上位に保持することができ鋼製架台1の固有振動数と軸回転数との同期による共振の発生を防止できる。
また、上記鋼製架台1は、軸受取付面1e,1f,1gの下部空間に連なる長手方向の一定長さ(b1 及びc1 ,b2 及びc2 ,b3 及びc3 )に亘ってコンクリート24a〜24cを充填しているので、各軸受部7,8,9におけるローリング荷重の支持部の剛性が増大し、ローリング荷重に対する鋼製架台1の強度が向上する。
さらに、上記鋼製架台1は計器111の重量が負荷される部位にもコンクリートを充填しているので、この部分の剛性が増大し、計器11の重量による架台1の局部的な変形が回避される。
尚、上記鋼製架台は、この実施形態のように、ばね機構及び制振ダンパを用いた防振・耐震支持方式の他、同鋼製架台1を、上記防振・耐震支持とせずに直接基礎架台に固定するようにした据付方式にも適用できる。