JP2008031107A - アセチルカルバゾール誘導体を有効成分とするstat6活性化阻害剤 - Google Patents
アセチルカルバゾール誘導体を有効成分とするstat6活性化阻害剤 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明は、STAT6活性化阻害剤、およびSTAT6が関与する疾患の予防・治療剤、詳細には喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬に関する。
転写因子のSTATファミリー(signal transducer and activator of transcription Family)は、サイトカインなどの刺激に応答して遺伝子の発現を誘導する転写因子であり、STAT1からSTAT6までのサブタイプが知られている。STATは約750〜850個のアミノ酸からなるタンパク質であり、コイルドコイルドメイン、DNA結合ドメイン、リンカードメイン及びSH2ドメインを有している。これらはいずれも約700番目付近にリン酸化されるチロシンを含有しており、当該チロシンのリン酸化により活性化し、リン酸化チロシンとSH2ドメインにより二量化して安定な複合体となる。
STAT6(signal transducer and activator of transcription 6)はインターロイキン‐4(IL-4)及びインターロイキン‐13(IL-13)のシグナル伝達に重要な役割を演じている転写因子である。IL-4又はIL-13がIL-4受容体又はIL-13受容体に結合すると、細胞内で受容体にアソシエートした蛋白質キナーゼJAK1とJAK3が活性化され、STAT6の641Tyr残基をリン酸化する。リン酸化されたSTAT6はそれ自身の持つSH2ドメインを介してホモ二量体を形成し、核内に移行して、種々の遺伝子のプロモーター領域に存在する特異的なDNA認識配列に結合する。STAT6の至適塩基配列はTTCNNNNGAA(Nは任意の塩基を示す。)であり、この認識配列が約10塩基対の間隔で直列に存在する場合には、各々の認識配列に結合した二量体が高い親和性で結合するとされている。STAT6認識配列をプロモーター領域に有する遺伝子として、アレルギー炎症への関与が知られているイムノグロブリン−E(IgE) ジャームラインCεトランスクリプトやCD23、エオタキシン等が報告されている。
ヒトにおけるIL‐4のシグナル伝達の異常と喘息の発症について、光安ら(非特許文献1)により、1)アトピー性喘息患者にIL-4受容体α鎖における50番目のアミノ酸の点突然変異(Val50Ile)が正常人と比較して高率に認められること、2)この点突然変異によりT細胞及びB細胞のシグナル伝達が亢進していること、3)従って、アトピー性喘息におけるIL-4シグナル伝達異常がひとつの発生因子であることが示唆されている。さらに、STAT6欠損マウスを用いて抗原の感作及び吸入誘発を行ったところ(マウス喘息モデル)、(1)野生型マウスと比較して気道炎症及び気道過敏性が抑制されていること、(2)IgE産生及び好酸球の気道内への浸潤は認められなかったこと、から喘息の発症にSTAT6が必須であることが直接証明された(非特許文献2)。また、感染防御を担うTh1細胞の分化、活性化は正常であり、個体の異常は何も観察されなかった。
これらのことから、STAT6の活性化阻害剤は、アレルギー性疾患の病態に関与するSTAT6の活性化を阻害することによる全く新しいタイプの薬剤として期待でき、しかも、本メカニズムに基づく副作用発現の可能性は極めて低いと考えられ、STAT6の活性化阻害作用に基づく薬剤の開発研究が進められている。STAT6の活性化阻害剤としては、最近、複素環化合物(特許文献1、特許文献2)、三環性化合物(非特許文献3)、キノリン系化合物(特許文献3)、アミノイソオキサゾール誘導体(特許文献4参照)、テトラヒドロベンズイソオキサゾール誘導体(特許文献5参照)、イミノチアゾール誘導体(特許文献6参照)、イミダゾ[2,1−b]チアゾール誘導体(特許文献7参照)、ジヒドロチアジアゾール誘導体(特許文献8参照)等の化合物が報告されている。また、STAT6のデコイ(転写因子が結合する塩基配列を有する部位又はそれを含有してなるオリゴヌクレオチド)を用いる方法も報告されている(特許文献9及び10参照)。
さらに、STAT6デコイ核酸をアトピー性皮膚炎モデルマウスや接触性皮膚炎モデルマウスに投与することによってアレルギー症状が改善されることが報告されたが(非特許文献4、非特許文献5)、核酸医薬は生体内で分解されやすいことや経口投与ができない等の問題がある。
US2005227959公報
WO200238107パンフレット
WO200279165パンフレット
特開平10−175964号公報
特開平10−175965号公報
特開平11−29475号公報
特開平11−106340号公報
特開2000−229959号公報
特開2005−306877号公報
特表2005−523703号公報
H Mitsuyasuら J.Immunol.(1999)162(3) 1227-1231
T Akimotoら J.Exp.Med.(1998)187(9) 1537-1542
J.Antibiot.,56,No.6,513-519(2003)
K Sumiら Gene Ther. (2004) 1763-1771
H Yokozekiら Gene Ther. (2004) 11(4)1753-1762
従って、本発明の目的は、STAT6の活性化を的確に阻害する、STAT6活性化阻害剤を提供することにある。また、STAT6が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬を提供することにある。
本発明者らは喘息や各種のアレルギー疾患に対し有効で副作用の少ない治療・予防剤を開発するために、STAT6に着目し、STAT6の活性化を阻害できる薬剤について鋭意検討した結果、下記の一般式(1)で表されるアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物がSTAT6活性化を阻害する作用を有することを見出し、本発明を完成した。
〔式中、Rは水素原子、又は直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキル基を示し、R’は水素原子、又はハロゲン原子を示す。〕
で表わされるアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤に関する。
で表わされるアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤に関する。
また、本発明は、前記した一般式(1)で表されるアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物、より詳細にはSTAT6活性化阻害作用を有する医薬組成物に関する。
さらに、本発明は、前記した本発明の化合物を含有してなる喘息などの呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤、アレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤、並びに炎症性疾患の予防及び/又は治療剤に関する。
また、本発明は、STAT6活性化阻害剤、呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤、アレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤、及び/又は炎症性疾患の予防及び/又は治療剤のための製剤を製造するための本発明の化合物の使用(use)に関する。
また、本発明は、STAT6活性化阻害剤の有効量を投与して、呼吸器疾患、アレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患を、予防及び/又は治療する方法(method)に関する。
本発明をより具体的に説明すれば以下のとおりとなる。
<1> 一般式(1)で表されるアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなるSTAT6活性化阻害剤。
<2> 一般式(1)におけるRが、直鎖のC2〜C6アルキル基である前記<1>に記載のSTAT6活性阻害剤。
<3> 一般式(1)において、Rが直鎖のC2〜C3アルキル基である前記<1>又は<2>に記載のSTAT6活性化阻害剤。
<4> 3−アセチル−9−エチル−9H−カルバゾール、及び3−アセチル−9−(n−プロピル)−9H−カルバゾール、並びにそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤。
<5> STAT6活性化阻害が、IL−4刺激に基づくSTAT6の活性化の阻害である前記<1>〜<4>に記載のSTAT6活性化阻害剤。
<6>前記<1>に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる医薬組成物。
<7> 医薬組成物が、STAT6の活性化に起因する疾患を治療又は予防するためのものである前記<6>に記載の医薬組成物。
<8> 前記<1>に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤。
<9> 前記<1>に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなるアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤。
<10> 前記<1>に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
<11> 一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物が、3−アセチル−9−エチル−9H−カルバゾール、及び3−アセチル−9−(n−プロピル)−9H−カルバゾール、並びにそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である前記<8>〜<10>のいずれかに記載の予防及び/又は治療剤。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするSTAT6活性化阻害剤は、優れたSTAT6活性化阻害作用を有する。また、本発明のアセチルカルバゾール誘導体、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬は、STAT6の活性化が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用である。
一般式(1)中、Rで表される直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。本発明においては、STAT6活性化阻害活性の観点から、Rとして直鎖のC2〜C6アルキル基が好ましく、直鎖のC2〜C3アルキル基(例えば、エチル基、n−プロピル基)がさらに好ましい。
一般式(1)中、R´で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子が特に好ましい。
一般式(1)中、アセチル基の置換位置は1〜4位のいずれでもよいが、好ましくは1〜3位がよく、3位がさらに好ましい。
一般式(1)中、R’の置換位置は5〜8位いずれでもよく、好ましくは6位が挙げられる。本発明のアセチルカルバゾール誘導体は、水和物などの溶媒和物であってもよい。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体としては、例えば、3−アセチル−9−エチル−9H−カルバゾール、3−アセチル−9−(n−プロピル)−9H−カルバゾール、3−アセチル−9H−カルバゾール、3−アセチル−9−イソプロピル−9H−カルバゾール、3−アセチル−6−クロロ−9−メチル−9H−カルバゾールなどが挙げられる。本発明のアセチルカルバゾール誘導体の好ましい例としては、Rが直鎖のC2〜C6アルキル基であって、R’が水素原子の場合が挙げられ、好ましいアセチルカルバゾール誘導体の例としては、3−アセチル−9−エチル−9H−カルバゾール、3−アセチル−9−(n−プロピル)−9H−カルバゾールなどが挙げられる。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体は、市販品を使用することもできるが、カルバゾール誘導体を製造する各種の公知の方法により製造することができ、例えば、Synthesis (2004), (8), 1269-1273記載の方法、すなわち9−アルキル−9H−カルバゾールをBiCl3触媒、ジクロロメタン溶媒、無水酢酸によるアシル化反応を行って製造することができる(A法)。また、9−アセチル−9H−カルバゾールをニトロベンゼン溶媒中でAlCl3触媒を用いてFries転移反応を行い(J.Amer.Chem.Soc.,2327-2328,(1935)、J.Chem.Soc.,1142-1143,(1934))、1−アセチル−9H−カルバゾール、又は3−アセチル−9H−カルバゾールを得た後、常法(例えばTetrahedron, 46(17), <1990>, 6113-6124、Bull.Chem.Soc.Jpn., 54(6), <1981>, 1897-1898に記載の方法)に従いN−アルキル化反応を行って、製造することもできる(B法)。また、9−アセチル−9H−カルバゾールをCS2溶媒中で、AlCl3触媒を用いてアセチル化反応を行って、ジアセチル化反応を行ったのち、9位のアセチル基を加水分解(Tetraheadron,36,3017-3019,(1980))した後、常法に従いN−アルキル化反応を行って、製造することもできる(C法)。
また、実施例に挙げたアセチルカルバゾール誘導体は市販されており、全て商業的に入手できるもので、例えばChemBridge社から購入できる。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物は、商業的に入手できるもの、製造したものをそのまま利用しても良いが、更に必要に応じて再結晶法、カラムクロマトグラフィーなどの通常の精製手段を用いて精製することができる。また必要に応じて、常法によって前記した所望の溶媒和物にすることもできる。
本発明において「STAT6活性化阻害」とは、転写因子としてのSTAT6の活性化を阻害することができればよく、特にIL−4刺激に基づく活性化を阻害することができるものであればよい。より具体的には、STAT6の関与するシグナル伝達系における活性化を阻害、例えば、リン酸化の阻害、二量化による活性化の阻害、STAT6による転写反応の阻害など、いずれの段階での阻害であってもよい。なお、STAT6の関与するシグナル伝達系としては、例えばIL−4刺激に基づくもの等が挙げられる。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物は、後記試験例に示すように、STAT6活性化阻害作用を有することから、STAT6活性化阻害剤として、及びSTAT6が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用な医薬として有用である。
本発明の医薬は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分とするものであり、この投与形態は、特に限定されず治療目的に応じて適宜選択でき、例えば、経口用固形製剤、経口用液体製剤、注射剤、坐剤、外用剤、点眼剤、吸入剤、エアゾール剤、貼付剤のいずれでもよく、これらの投与形態は、薬学的に許容される担体を配合し、当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。なお、本発明における溶媒和物は、遊離の化合物を有効成分として製剤化する際に、製剤化における取り扱いを容易にするための化合物であり、溶媒和物になって初めて有効性が生じるものではない。
経口用固形製剤を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、微結晶セルロース、珪酸等を、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ゼラチン液、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等を、崩壊剤としてはカンテン末、炭酸水素ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等を、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等を、着色剤としては、β−カロチン、黄色三二酸化鉄、カルメラ等を、矯味剤としては白糖、橙皮等を例示できる。
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば矯味剤としては白糖等が、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント等が、保存剤としてはパラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
注射剤を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物にpH調節剤、安定化剤、等張化剤等を添加し、常法により皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えばpH調節剤としては、リン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム等が、等張化剤としては、塩化ナトリウム等が例示できる。
坐薬を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物に担体、界面活性剤を加えて常法により製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、担体としてはポリエチレングリコール、ハードファット等を、界面活性剤としてはポリソルベート80等を例示できる。
外用剤を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物に基剤、水溶性高分子、溶媒、界面活性剤、保存剤等を加えて、常法により液剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、精製ラノリン等が、水溶性高分子としてはカルボキシビニルポリマー等が、溶媒としてはグリセリン、水等が、界面活性剤としてはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が、保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
点眼剤を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物にpH調節剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等を加えて常法により製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、pH調節剤としては、リン酸ナトリウム等を、安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA等を、等張化剤としては、塩化ナトリウム等を、保存剤としては、クロロブタノール等を例示できる。
吸入剤、エアゾール剤として使用するには、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を溶液、懸濁液又は微小粉体の形で、気体又は液体噴射剤と共に、且つ所望により湿潤剤又は分散剤のような通常の補薬と共にエアゾール容器内に充填すればよい。
貼付剤を調製する場合は、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物に粘着剤、溶媒、架橋剤、界面活性剤等を加えて常法により含水型貼付剤、プラスター貼付剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されているものでよく、例えば、粘着剤としてはポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等を、溶媒としてはグリセリン、水等を、架橋剤としては、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、乾燥水酸化アルミニウムゲル等を、界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を例示できる。
本発明の医薬の投与量、投与方法は患者の年齢、体重、症状、並びに投与形態及び投与回数などによって異なるが、通常は成人に対して本発明のアセチルカルバゾール誘導体として1日1〜1000mgを1回又は数回に分けて経口投与又は非経口投与するのが好ましい。
以下に試験例、実施例を例示して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物のSTAT6活性化阻害作用を以下の方法で測定した。
(1)測定方法(STAT6活性化阻害試験)
STAT6結合モチーフを4個繰り返した配列を含む次の配列1
配列1: 5‘−TCGACC([AGTCCACTTCCCAAGAACAGA]×4)GGATC−3’ (配列1)
で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含むルシフェラーゼベクターをネオマイシン耐性遺伝子と共に組み込んだヒト肺癌上皮細胞A549(大日本製薬)由来安定形質転換細胞株を樹立し、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物の評価に用いた。細胞を5×104個/0.1ml/ウェルとなるように、96ウェルマイクロプレート(ヌンク製)にまき、一晩培養した。翌日、ジメチルスルホキシドに溶解し、培地で希釈した被検薬物(0.25mg/ml)を0.01ml添加し、その30分後にヒト組換えIL−4を含有するCOS−7細胞培養上清液0.01mlを添加して4時間培養した。培養後、Bright-Glo Luciferase Assay System反応液(プロメガ製)0.08ml/ウェルを加え、ルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Wallac 1420 ARVOsx、パーキンエルマー製)で測定した。被検薬物のSTAT6活性化阻害作用は、IL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性に対する阻害率(%)として下記の(式1)により算出し、結果を表1にまとめた。
STAT6結合モチーフを4個繰り返した配列を含む次の配列1
配列1: 5‘−TCGACC([AGTCCACTTCCCAAGAACAGA]×4)GGATC−3’ (配列1)
で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含むルシフェラーゼベクターをネオマイシン耐性遺伝子と共に組み込んだヒト肺癌上皮細胞A549(大日本製薬)由来安定形質転換細胞株を樹立し、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物の評価に用いた。細胞を5×104個/0.1ml/ウェルとなるように、96ウェルマイクロプレート(ヌンク製)にまき、一晩培養した。翌日、ジメチルスルホキシドに溶解し、培地で希釈した被検薬物(0.25mg/ml)を0.01ml添加し、その30分後にヒト組換えIL−4を含有するCOS−7細胞培養上清液0.01mlを添加して4時間培養した。培養後、Bright-Glo Luciferase Assay System反応液(プロメガ製)0.08ml/ウェルを加え、ルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Wallac 1420 ARVOsx、パーキンエルマー製)で測定した。被検薬物のSTAT6活性化阻害作用は、IL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性に対する阻害率(%)として下記の(式1)により算出し、結果を表1にまとめた。
なお、実施例1〜5で使用した被検薬物のアセチルカルバゾール誘導体は、市販されている化合物(ChemBridge社)を用いた。
阻害率(%)=100−(A−B)/(C−B)×100 (式1)
式中、A:被検薬物の存在下にIL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性
B:被検薬物の非存在下、無刺激時に誘導されるルシフェラーゼ活性
C:被検薬物の非存在下にIL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性
をそれぞれ示す。
式中、A:被検薬物の存在下にIL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性
B:被検薬物の非存在下、無刺激時に誘導されるルシフェラーゼ活性
C:被検薬物の非存在下にIL−4刺激で誘導されるルシフェラーゼ活性
をそれぞれ示す。
上記した薬理試験結果より、実施例1〜5の化合物はSTAT6活性化阻害作用を有しており、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物が、優れたSTAT6活性化阻害剤であることが明らかとなった。特に、アセチルカルバゾール誘導体の9位のアルキル基がそれぞれエチル基、n−プロピル基である実施例1、及び2の化合物はSTAT6活性化阻害作用が75%以上であり、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物が、優れたSTAT6活性化阻害剤であることが明らかとなった。
以上の結果から、本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分とする医薬は、STAT6の活性化が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等に有用であることがわかる。
本発明のアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分とするSTAT6活性化阻害剤は、優れたSTAT6活性化阻害作用を有し、STAT6の活性化が関与する疾患、例えば喘息等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎等の炎症性疾患に対し、その発症・進展の予防、病態改善、治療等のための医薬として使用でき、例えば医薬品産業において利用できる。
配列番号1:STAT6結合モチーフを4回繰り返した配列
Claims (9)
- 一般式(1)におけるRが、直鎖のC2〜C3アルキル基である請求項1記載のSTAT6活性化阻害剤。
- 3−アセチル−9−エチル−9H−カルバゾール、及び3−アセチル−9−(n−プロピル)−9H−カルバゾール、並びにそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする、STAT6活性化阻害剤。
- 請求項1に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる医薬組成物。
- 医薬組成物が、STAT6活性化阻害作用を有するものである請求項4に記載の医薬組成物。
- 請求項1に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる呼吸器疾患の予防及び/又は治療剤。
- 請求項1に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなるアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤。
- 請求項1に記載の一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
- 一般式(1)で表わされるアセチルカルバゾール誘導体又はそれらの溶媒和物が、3−アセチル−9−エチル−9H−カルバゾール、及び3−アセチル−9−(n−プロピル)−9H−カルバゾール、並びにそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる1種又は2種である請求項6〜8のいずれかに記載の予防及び/又は治療剤。
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JP2006207202A JP2008031107A (ja) | 2006-07-28 | 2006-07-28 | アセチルカルバゾール誘導体を有効成分とするstat6活性化阻害剤 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101941939A (zh) * | 2010-07-21 | 2011-01-12 | 深圳市有为化学技术有限公司 | 多官能团咔唑衍生肟酯类化合物、其制造方法及其光聚合引发剂 |
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2006
- 2006-07-28 JP JP2006207202A patent/JP2008031107A/ja active Pending
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