本発明に係る便器洗浄装置は、便器と、この便器へ洗浄水を供給する給水バルブと、便器へ排泄される尿流を検出するためのドップラセンサと、このドップラセンサのセンサ出力に基づいて尿流を検出して、給水バルブの開閉制御を行う制御部とを備えている。
ドップラセンサとしては、マイクロ波を用いたマイクロ波ドップラセンサのほか、超音波を用いた超音波ドップラセンサなどがある。本実施形態においては、マイクロ波ドップラセンサを例に挙げて以下説明する。
マイクロ波ドップラセンサは、送信波としてマイクロ波を送信する送信手段と、その反射波を受信する受信手段と、送信波と反射波とを混合(ミキシング)するミキサ手段とを備えている。
ミキサ手段は、送信信号と受信信号とを合成してセンサ出力とするものである。このセンサ出力には、後述する定在波信号とドップラ信号とが含まれている。定在波信号は、対象物との距離(対象物の位置)を表すものであり、ドップラ信号は対象物の動きを表すものである。
便器洗浄装置の制御部は、ドップラセンサのセンサ出力に含まれるドップラ信号を用いて尿流を検出すると共に、尿流を検出した後に、所定時間間隔を開けて間欠的に尿流の検出動作(以下、「尿流検出動作」という。)を行う尿流検出手段を備えている。
また、この制御部は、尿流検出手段による尿流検出結果に基づいて尿流の有無や尿流が継続している時間を含む尿流の継続状態を検出する尿流時間検出手段と、この尿流時間検出手段により検出した尿流の継続状態に応じた洗浄水の水量を設定する洗浄水量設定手段とを備えている。なお、この洗浄水量設定手段は、設定する洗浄水量に関する情報を記憶可能な記憶手段を備えている。
さらに、この制御部は、便器の使用者が排尿を終了して便器から離反した後に、洗浄水量設定手段によって設定された量の洗浄水を便器に供給する制御を行う洗浄制御手段を備えている。
このように便器洗浄装置が構成されているため、便器洗浄装置の消費電力を低減することができる。すなわち、この便器洗浄装置の制御部が備える尿流検出手段は、尿流を検出すると、その尿流検出動作を停止して、所定時間が経過した後に、再度尿流検出動作を所定時間に限り再開するという間欠的な尿流検出動作を尿流が検出されている間繰り返すように構成している。
そのため、この便器洗浄装置は、常時尿流検出動作を継続して行う従来の便器洗浄装置と比較して、制御部が尿流検出のための演算処理を行う時間を短縮することができ、これにより、制御部で消費される電力を低減することができるので、便器洗浄装置の消費電力を低減することができるのである。
また、制御部は、洗浄制御手段による便器内への洗浄水の供給頻度を検出する洗浄水供給頻度検出手段を備えている。
この洗浄水供給頻度検出手段は、使用者が排尿した後に洗浄水による便器洗浄を行ってから、次の使用者の排尿後に便器洗浄を行うまでの時間を計測することにより、洗浄水の供給頻度を検出する。
また、この洗浄水供給頻度検出手段は、後述の人体検出手段により、使用者が排尿後に便器から離反したことを検出してから、次の使用者が排尿のために便器へ近付いたことを検出するまでの時間を計測することにより、便器の使用頻度を検出し、この使用頻度に基づいて、洗浄水の供給頻度を間接的に検出するように構成することもできる。
そして、洗浄水量設定手段は、上記した尿流の継続状態に加え、洗浄水供給頻度検出手段により検出した洗浄水の供給頻度を考慮して洗浄水の量を設定することもできる。
このように洗浄水の量を設定することにより、尿流の継続状態に基づいて便器に排泄される尿量を推測し、洗浄水の供給頻度に基づいて便器の汚れ具合を推測することができるので、最適な量の洗浄水により便器を洗浄することができ、便器を清潔に保ちながら洗浄水を効果的に節水することができる。
すなわち、尿量の推測結果だけに基づいて便器の汚れ度合いを推測したとしても、便器が汚れる要因は尿量だけに依存するものではないので、他の要因についても考慮することが望まれるが、本実施形態の便器洗浄装置では、上記のように、尿流の継続状態から尿量を検出するだけでなく、洗浄水の供給頻度から便器の使用頻度を検出し、これらの両者を考慮して洗浄水の量を設定するため、便器を清潔に保ちながら洗浄水を効果的に節水することができるのである
ここで、尿流検出手段は、尿流の継続状態と洗浄水の供給頻度との両方を考慮して間欠的に尿流検出動作を実施するように構成している。
すなわち、この尿流検出手段は、尿流検出動作により尿流を最初に検出した後に前記尿流検出動作を一度停止させ、尿流の継続時間が洗浄水量の設定を切り替える時間に達した時に、再度一定時間の尿流検出動作を行い、尿流の検出が継続しているかどうかの確認を行う。
こうすることによって、尿流検出動作を停止している時間が長くなり、その分、制御部が尿流検出動作を行うために消費する電力を低減することができる。なお、尿流検出手段の尿流検出動作に関して、尿流の継続状態又は洗浄水の供給頻度のいずれか一方だけを考慮して、間欠的な尿流検出動作を行わせるように構成してもよい。
また、洗浄水量設定手段は、尿流時間検出手段により検出した尿量の継続状態(尿流の継続時間)が長くなるにつれて、排泄された尿量が多いと推測し、洗浄水の量を段階的に増量させる設定変更を行うようにしている。
これにより、排泄された尿量に応じた最適な量の洗浄水により便器を洗浄することができるので、尿量が少ない場合には、洗浄水を節水することができ、尿量が多い場合であっても、便器内の尿を確実に洗浄することができる。
特に、この設定変更は、尿流検出手段による間欠的な尿流検出動作の動作タイミング毎に行うようにしている。すなわち、この洗浄水量設定手段は、尿流検出手段による前回の尿流検出動作によって尿流が検出された後、排尿が継続していて、次回の尿流検出動作によっても再度尿流が検出されると、この再度尿流が検出されたタイミングで、洗浄水の量を増量させる設定変更を行うのである。
洗浄水量設定手段がこのような洗浄水量の設定変更を行うため、尿流検出手段による尿流検出動作を間欠的にしか行わないにもかかわらず、排泄される尿量に応じて適切な洗浄水の量を設定することができるので、低消費電力でありながら、常に便器を衛生的に保つことができる。
しかも、この洗浄水量設定手段は、尿流時間検出手段によって、尿流が所定時間以上継続状態となったことを検出すると、洗浄水の水量を最大値に設定するようにしている。
すなわち、尿流時間検出手段による尿流検出時間が、予め設定された最大時間を超えると、洗浄水量設定手段が、予め用意している複数段階の洗浄水量のうちの最大水量を設定し、その後は、尿流検出時間がさらに延びても、洗浄水の量を増量させる設定変更は行わない。
これにより、尿量が多い場合であっても、便器内の尿を確実に洗浄することができ、しかも、一回の便器洗浄で使用する洗浄水の量に上限を設けているので、無駄に大量の洗浄水を使用して便器洗浄することがなく、節水に効果的である。
また、この便器洗浄装置の制御部は、ドップラセンサのセンサ出力に含まれる定在波信号を用いて、便器の使用者の有無を検出する人体検出手段を備えている。
そして、尿流検出手段は、この人体検出手段が使用者の存在を検出するまでの間、尿流検出動作を停止し、人体検出手段が使用者の存在を検出したことを契機として、上記した間欠的な尿流検出動作を開始するようにしている。
これにより、制御部で消費される電力をさらに低減することができる。すなわち、定在波の検出は、ドップラ信号の検出に比べてその処理負荷が小さいため、所定の範囲内に使用者が入るまでは、使用者の検出を定在波信号に基づいて行うことによって、便器洗浄装置の消費電力を低減するのである。
また、定在波信号に基づいて使用者を検出したとき、すなわちドップラセンサから所定の範囲内に使用者が入った後は、ドップラ信号に基づいて尿流の検出を行うので、従来の便器洗浄装置が持つ尿流検出精度を保つことができるのである。
以下、本発明に係る便器洗浄装置の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明では、便器洗浄装置の一例として小便器洗浄装置を例に挙げて説明する。
図1は、小便器洗浄装置の外観斜視図であり、図2は、小便器洗浄装置の電気的構成を示す機能ブロック図であり、図3は、小便器洗浄装置による人体検出及び尿流検出を示すタイミングチャートであり、図4は、小便器の使用頻度と尿流検出時間と洗浄水量との関係を示す説明図であり、図5〜図7は、小便器洗浄装置の制御部が行う処理を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態の小便器洗浄装置1は、小便器2と、給水管3の中途部に設けられ、小便器2へ洗浄水を供給する給水バルブ4と、小便器のボール部内の汚水を排水する排水管(図示略)と、小便器2周辺の対象物を検出するマイクロ波ドップラセンサ(以下、「ドップラセンサ5」という。)と、ドップラセンサ5からのセンサ出力に基づいて、給水バルブ4を開閉して小便器2の自動洗浄を行う制御部とを備えている。
特に、この制御部は、ドップラセンサ5からのセンサ出力に基づいて、使用者の有無を検出する人体検出、や使用者による排尿を検出する尿流検出を行い、この人体検出や尿流検出の結果に基づいて、小便器2の使用頻度及び小便器2に排泄された尿量を判別し、この判別結果に応じて洗浄水の量を設定する。なお、図中の符号Mはドップラセンサ5から出力される電波によるマイクロ波(以下、「送信波M」という。)であり、給水バルブ4は、電磁弁などから構成される。
ここで、小便器洗浄装置1の電気的構成について、図2を参照して説明する。
まず、小便器洗浄装置1が備えるドップラセンサ5について説明する。図2に示すように、ドップラセンサ5は、検出対象である人体や尿流へ向けて送信波Mを出力する送信手段7と、送信波Mが検出対象に反射した反射波mを受信する受信手段8と、送信手段7により送信した送信波Mと受信手段により受信した反射波mとを混合(ミキシング)するミキサ手段9とを備えている。
そして、このドップラセンサ5は、図1に示したように、小便器2の上部背面側に配置され、送信手段7から小便器2のボール部を含む斜め下前方へ向けて送信波Mを出力すると共に、この送信波Mの反射波mを受信手段8により受信する。
その後、このドップラセンサ5は、これら送信波Mと反射波mとをミキサ手段9によりミキシングしたセンサ出力を制御部6へ出力する。
そして、このドップラセンサ5は、小便器2に人体が近づいてきたこと(人体近接)や小便器2から人体が遠ざかったこと(人体離反)のほか、小便器2のボール部へ排尿されていること(尿流)を検出するために用いられる。
ここでは、送信手段7から出力する送信波Mとして、10.525GHzの電波信号を用いている。
次に、小便器洗浄装置1の制御部6について具体的に説明する。この制御部6は、ドップラセンサ5から入力されるセンサ出力から定在波信号を検出する定在波検出手段10と、定在波検出手段により検出した定在波信号を用いて人体を検出する人体検出手段11と、ドップラセンサ5から入力されるセンサ出力からドップラー信号を検出する周波数フィルタ手段12と、周波数フィルタ手段12により検出したドップラ信号を用いて尿流を検出する尿流検出手段13とを備えてる。
また、この制御部6は、人体検出手段11により人体が検出されなくなってから次に人体が検出されるまでの時間を計測することにより、小便器2の使用頻度を検出し、この使用頻度により間接的に洗浄水の供給頻度を検出する使用頻度検出手段14と、尿流検出手段13により尿流を検出している時間(以下、「尿流検出時間」という。)を計測する尿流時間検出手段15とを備えている。
さらに、制御部6は、人体検出手段11による人体の検出結果と、使用頻度検出手段14による小便器2の使用頻度の検出結果と、尿流検出手段13による尿流の検出結果と、尿流時間検出手段15による尿流検出時間の検出結果とに基づいて、小便器2の洗浄に用いる洗浄水の量を設定する洗浄水量設定手段16と、洗浄水量設定手段16により設定された量の洗浄水を小便器2へ供給するように給水バルブ4の開閉制御を行う洗浄制御手段17とを備えている。なお、本実施形態において、これら定在波検出手段10、人体検出手段11、フィルタ手段12、尿流検出手段13、使用頻度検出手段14、尿流時間検出手段15、洗浄水量設定手段16、洗浄制御手段17は、マイクロコンピュータにより構成されている。
定在波検出手段10は、ドップラセンサ5から入力されるセンサ出力から定在波信号を演出するものであり、ローパスフィルタ回路(交流成分除去回路)、位相シフト回路、全波整流回路、加算回路などから構成される。
センサ出力は、定在波信号である直流成分とドップラ信号である交流成分から構成されており、定在波検出手段10のローパスフィルタ回路によってドップラ信号成分を除去することによって定在波信号が抽出される。すなわち、センサ出力から交流成分を除去するのである。
この定在波信号は、ドップラセンサ5と検出対象物(人体又は尿流)との距離に応じてそのレベルが変化する。すなわち、定在波信号の電圧レベルは、ドップラセンサ5から検出対象物までの距離が近いほど大きくなっていく。
そして、この定在波検出手段10は、人体検出用の定在波信号を生成する際に、まず、定在波検出手段10のローパスフィルタ回路から出力される定在波信号の位相をシフトした信号をシフト回路によって生成する。
次に、定在波検出手段10は、このように位相がシフトされた定在波信号を全波整流回路によって全波整流すると共に、定在波検出手段10のローパスフィルタ回路からを出力される位相シフトされていない定在波信号を全波整流回路で全波整流する。
その後、定在波検出手段10は、このように全波整流した2つの定在波信号を加算回路によって加算して定在波合成信号を生成し、この定在波合成信号を人体検出用の定在波信号として人体検出手段11へ出力する。
人体検出手段11は、定在波検出手段10から入力される人体検出用の定在波信号を用いて、小便器2を使用する使用者(人体)の有無を検出するものである。
すなわち、この定在波検出手段10によって生成された定在波信号は、ドップラセンサ5と検出対象物である人体との距離に応じた電圧レベルの信号となることから、人体検出手段11は、この電圧レベルを検出することにより、ドップラセンサ5と人体との距離を検出することができる。
そのため、人体検出手段11は、定在波検出手段10から入力される定在波信号の電圧レベルと、予め設定した所定の閾値とを比較する演算処理を行い、定在波信号の電圧レベルが設定した閾値よりも大きい場合に、使用者が存在すると判断することができる。
そして、この人体検出手段11は、使用者の存在を検出すると、その旨を示す人体検出信号を洗浄水量設定手段16と使用頻度検出手段14とへ出力する。
このように、人体検出手段11は、人体検出用の定在波信号の電圧レベルと閾値とを比較する演算処理を行うだけで、人体の有無を検出することができるので、人体検出を行うための処理が短くて済む。
従って、ドップラ信号に基づいて人体検出を行うことに比べ、人体検出を行うための処理が軽減され、その分、小便器洗浄装置1の消費電力を低減することができる。
すなわち、ドップラ信号に基づく人体検出では、ドップラ信号が周波数50Hz以下の交流信号であることを検出する必要があるため、その尿流検出処理には必然的に時間を要してしまう。例えば、50Hzのドップラ信号を検出するためには、少なくとも20msを越える時間を要してしまう。
しかし、定在波信号に基づく人体検出では、人体検出用の定在波信号の電圧レベルを検出するだけでよいため、短時間(例えば、1ms)で人体検出が可能となる。
そのため、人体検出手段11により所定間隔(例えば、1sec)で人体検出を行い、人体が検出されていないとき、すなわち、排尿が行われることのない間、ドップラセンサ5の尿流検出動作を停止させておくことにより、小便器洗浄装置1の消費電力を低減することができる。
使用頻度検出手段14は、人体検出手段11から入力される人体検出信号に基づいて、小便器2の使用頻度を検出するタイマ(以下、「使用頻度計測タイマ」という。)である。
すなわち、この使用頻度検出手段14は、人体検出信号が入力されなくなった時点から、次に人体検出信号が入力されるまでの時間を計測するものであり、この小便器2が使用されていない時間を計測することによって、小便器2の使用頻度を検出すると共に、検出した使用頻度により、小便器2へ洗浄水を供給する頻度(洗浄水の供給頻度)を間接的に検出する洗浄水供給頻度検出手段として機能するものである。
そして、この使用頻度検出手段14は、検出した小便器2の使用頻度を示す信号を洗浄水量設定手段16へ出力する。
周波数フィルタ手段12は、ドップラセンサ5から入力されるセンサ出力の周波数成分のうち、尿流検出に不要な周波数帯域(100Hz〜180Hz以外の周波数帯域)を除去するバンドパスフィルタであり、この周波数フィルタ手段12により尿流検出用のドップラ信号を抽出する。
ここで、周波数フィルタ手段12は、ドップラセンサ5から入力されるセンサ出力をA/D変換してデジタル信号とした後、マイクロコンピュータによるデジタルフィルタ処理を行うことによって、尿流検出用のドップラ信号を抽出する。そして、このように検出された尿流件検出用のドップラ信号は、尿流検出手段13に入力される。
尿流検出手段13は、フィルタ手段12から入力されるドップラ信号を用いて小便器2へ排泄される尿流を検出するものである。
ここで、ドップラセンサ5のセンサ出力に含まれるドップラ信号による検出対象物(尿流)の動き検出について、説明する。検出対象物の動きは、以下の式(1)の関係からその検出を行うものである。
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c ・・・(1)
ΔF:ドップラ 周波数(センサ出力Sig3に含まれるドップラ信号の周波数)
FS:送信周波数(送信信号Sig1の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号Sig2の周波数)
ν:検出対象物の移動速度
c:光速(300×106 m/s)
すなわち、送信手段7から出力された周波数FSの送信波Mは、速度νで移動している検出対象物に反射する。この反射波mは、相対運動によるドップラ周波数シフトを受けているためその周波数はFbとなり、受信手段8によって受信される。
そして、送信波と受信波とをミキシングした信号から周波数フィルタ手段12によって高周波成分を除去することによってセンサ出力からドップラ周波数ΔFを抽出する。
そして、周波数フィルタ手段12によって尿流検出のための周波数帯域(100Hz〜180Hz)を持つドップラ信号抽出し、このドップラ信号を用いて尿流検出手段13が尿流の検出を行う。
尿流検出手段13は、周波数フィルタ手段12から入力されるドップラ信号を所定のサンプリング周期によりサンプリングすることによって、ドップラ信号の周波数を解析する周波数演算処理を行う。
そして、この尿流検出手段13は、周波数演算処理により得た周波数が尿流特有の周波数である場合に、尿流を検出したことを示す尿流検出信号を洗浄水量設定手段16と尿流時間検出手段15とへ出力するものであり、尿流検出手段として機能するものである。
ところで、尿流検出手段13により常時尿流の検出を行うと、制御部6での電力の消費が大きくなってしまう。これは、上記したように、ドップラ信号の周波数演算処理が、定在波信号を用いた人体検出のための処理よりも長い時間と大きな電力を要するためである。
そこで、本実施形態の小便器洗浄装置1が備える尿流検出手段13は、周波数演算処理という尿流検出動作を常時行うのではなく、間欠的に行うことにより、制御部6によって消費する電力を低減させるようにしている。
すなわち、この小便器洗浄装置1では、図3に示すように、比較的に消費電力の小さい人体検出手段11により、定在波信号を用いて常時小便器2の使用者を検出する人体検出を行っておき、人体検出手段11により人体の存在が検出されるまでの間、尿流検出手段13は尿流検出動作を行わないようにしている。
ここでは、定在波信号による人体検出が常にON状態となっているが、これは、人体検出手段11が定在波信号の信号レベルと所定の閾値とを比較する演算所を1秒間に1度間欠的に行っていることを示している。
そして、この人体検出中に人体検出手段11が使用者の存在を検出すると、尿流検出手段13は、ドップラ信号を用いた尿流検出動作を開始し、この尿流検出動作により尿流の検出が確定すると、尿流検出動作を所定時間停止する。
ここで、尿流検出手段13は、尿流検出動作により、尿流検知が確定してから時間T1の間尿流検出動作を停止する。なお、この時間T1は、後述の尿流時間検出手段15により計測する。
その後、尿流検出手段13は、尿流検出動作を停止してから時間T1が経過すると、尿流検出動作を停止していた時間に比べて非常に短い一定時間のみ再度尿流検出動作を行う。このとき、尿流検出手段13により、依然排尿が継続していることが検出されると、後述の洗浄水量設定手段が洗浄水の量を増量する設定変更を行う。
そして、尿流検出手段13は、この一定時間のみの尿流検出動作を行った後、尿流検出動作を停止し、尿流検知が確定した時点から時間T2が経過すると、上記一定時間のみの尿流検出動作を行う。このとき、尿流検出手段13により、依然排尿が継続していることが検出されると、洗浄水量設定手段が洗浄水の量をさらに増量する設定変更を行う。
そして、尿流検出手段13は、その後、この一定時間のみの尿流検出動作を尿流が検出されなくなるまで、所定時間間隔を開けて間欠的に行うようにしている。
そのため、この小便器洗浄装置1では、ドップラ信号を用いた尿流検出動作という制御部6に大きな処理負荷がかかる演算処理の時間を大幅に短縮することができ、これにより小便器洗浄装置1の消費電力を低減することができる。
尿流時間検出手段15は、尿流検出手段13から入力される尿流検出信号に基づいて、使用者の排尿時間を検出するタイマ(以下、「尿流時間計測タイマ」という。)である。
すなわち、この尿流時間検出手段15は、尿流検出手段13が尿流を検出した時点から尿流を検出しなくなるまでの時間(尿流検出時間)を計測することによって、尿流の継続状態を検出するものである。
そして、この尿流時間検出手段15は、検出した尿流の継続状態を示す信号を洗浄水量設定手段16へ出力する。
洗浄水量設定手段16は、便器洗浄を行う際に小便器2へ供給する洗浄水量の設定情報を記憶する記憶手段(図示略)を備えている。
そして、この洗浄水量設定手段16は、人体検出手段11から入力される人体検出信号と、使用頻度検出手段14から入力される使用頻度を示す信号と、尿流検出手段13から入力される尿流検出信号と、尿流時間検出手段15から入力される尿流の継続状態を示す信号とに基づいて、洗浄水の量を増減させる設定変更を行うものであり、この設定変更を行う度に、洗浄水量の設定情報を記憶手段に記憶させる。
特に、この洗浄水量設定手段16は、尿流検出手段13が尿流検出動作を行った結果、依然排尿が継続していることが検出されたときに、洗浄水量の設定変更を行うようにしており、尿流検出動作の動作タイミングに従って洗浄水量の設定変更を行う。
洗浄制御手段17は、人体検出手段11により使用者の存在が検出されなくなった後に、給水バルブ4の開閉制御を行うことにより、洗浄水量設定手段16により設定された量の洗浄水を小便器2へ供給するものである。
このように制御部6を構成することにより、本実施形態の小便器洗浄装置1は、尿流の継続状態と小便器2の使用頻度を考慮した最適な量の洗浄水により便器洗浄を行う。
すなわち、この小便器洗浄装置1では、図4に示すように、尿流検出時間が比較的短く、且つ、小便器2の使用頻度が比較的高い場合いは、小便器2の汚れ度合いが低いものとして、比較的少ない1リットルの洗浄水により小便器2を洗浄するようにしている。
そして、尿流検出時間が比較的長く、且つ、小便器2の使用頻度が標準的な場合には、小便器2の汚れ度合いが標準的であるとして、標準的な2.5リットルの洗浄水により小便器2を洗浄するようにしている。
また、尿流検出時間が比較的長く、且つ、小便器2の使用頻度が比較的高い場合には、小便器2の汚れ度合いが高いものとして、最大量である4リットルの洗浄水により小便器2を洗浄するようにしている。
このように、本実施形態の小便器洗浄装置1では、尿流の継続状態と小便器2の使用頻度を考慮した最適な量の洗浄水により便器洗浄を行うので、小便器2の汚れ度合いに応じて洗浄水量の設定を変更することができる。
そのため、小便器2の汚れ度合いが低い場合には、便器洗浄のために必要な最小限の量の洗浄水により便器洗浄を行うことができ、節水に効果的である。
また、小便器2の汚れ度合いが高い場合には、最大量の洗浄水により便器洗浄を行うことができ、いつも小便器を衛生的に保つことができる。
以下、この小便器洗浄装置1の制御部6が最適な量の洗浄水により便器洗浄を行う際に実行する処理について、図5〜図7に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。
制御部6は、電源が投入されると、図5に示すように、まず、人体検出手段11が定在波信号により人体検出したか否かの判断を行う(ステップS1)。
ここで制御部6は、人体検出したと判断した場合に処理をステップS2へ移し、人体検出をしていないと判断した場合に、人体検出をするまでステップS1の処理を繰り返し行う。
次に、ステップS2において制御部6は、小便器2の前回の使用者が小便器2から離反したときにスタートさせた使用頻度計測タイマを停止させる処理を行い、その後、処理をステップS3へ移す。なお、フローチャート中の記号(Tx)は、使用頻度計測タイマのカウント値を示すものである。
次に、ステップS3において制御部6は、尿流検出手段13に尿流検出動作を開始させる処理を行い、その後、処理をステップS4へ移す。
次に、ステップS4において制御部6は、尿流検出手段13がドップラ信号により尿流検出が確定したか否かの判断を行い、尿流検出が確定したと判断した場合に処理をステップS5へ移し、尿流検出が確定していないと判断した場合に処理をステップS6へ移す。
ステップS5において制御部6は、尿流検出手段13による尿流検出動作を停止させる処理を行い、その後、処理を図6に示すステップS7へ移す。
また、ステップS6において制御部6は、人体検出手段11が定在波信号により人体検出したか否かの判断を行い、人体検出したと判断した場合に、処理をステップS4へ移し、人体検出していないと判断した場合に、処理をステップS20へ移す。
ステップS20において制御部6は、ステップS2の処理で停止させた使用頻度計測タイマを再度スタートさせる処理を行い、その後、処理をステップS1へ移す。
次に制御部6は、図7に示すように、尿流検出タイマをスタートさせる処理を行い、その後、処理をステップS8へ移す。なお、フローチャート中の記号(t)は、尿流検出タイマのカウント値を示すものである。
次に、ステップS8において制御部6は、洗浄水量設定手段16による洗浄水量設定処理を行い、その後、処理をステップS9へ移す。この洗浄水量設定処理については、後に図7を参照して具体的に説明する。
次に、ステップS9において制御部6は、尿流検出タイマのカウント値(t)が後述する洗浄水量設定処理により設定された値(T)以上であるか否かの判断を行い、(T)以上であると判断した場合に処理をステップS11へ移し、(T)以上でないと判断した場合に処理をステップS10へ移す。
ステップS10において制御部6は、人体検出手段11が定在波信号によりまだ人体検出しているか否かの判断を行い、まだ人体検出していると判断した場合に処理をステップS9へ移し、もう人体検出していないと判断した場合に処理をステップS15へ移す。
次に、ステップS11において制御部6は、尿流検出手段13に所定時間のみの尿流検出動作をさせる処理を行い、その後、処理をステップS12へ移す。
次に、ステップS12において制御部6は、所定時間のみの尿流検知動作中に、ドップラ信号により尿流検出したか否かの判断を行い、尿流検出下と判断した場合に処理をステップS13へ移し、尿流検出していないと判断した場合に処理をステップS14へ移す。
ステップS13において制御部6は、(T)が後述する洗浄水量設定処理により設定された最大値(TMAX)であるか否かの判断を行い、(T)=(TMAX)であると判断した場合に処理をステップS14へ移し、(T)=(TMAX)でないと判断した場合に処理をステップS8へ移す。
次に、ステップS14において制御部6は、人体検出手段11が定在波信号によりまだ人体検出しているか否かの判断を行う。
ここで制御部6は、まだ人体検出していると判断した場合に、人体検出をしなくなるまでの間このステップS14の処理を繰り返し行い、もう人体検出していないと判断した場合に処理をステップS15へ移す。
次に、ステップS15において制御部6は、(t)が3秒間以上であるか否かの判断を行い、3秒間以上であると判断した場合に処理をステップS16へ移し、3秒間以上でないと判断した場合に処理をステップS18へ移す。
次に、ステップS16において制御部6は、洗浄制御手段17に給水バルブ4の開閉制御行わせることにより、小便器2へ洗浄水を供給する便器洗浄処理を行い、その後、処理をステップS17へ移す。
次に、ステップS17において制御部6は、使用頻度計測タイマをリセットする処理を行い、その後、処理をステップS18へ移す。
ステップS18において制御部6は、尿流検出タイマをリセットする処理を行い、その後、再度使用頻度計測タイマをスタートさせる処理を行う(ステップS19)。
そして、小便器洗浄装置1の制御部6は、電源が投入されている間、これらステップS1〜S19の処理を繰り返し実行するようにしている。
次に、図7に示すフローチャートを参照して、制御部6が行う洗浄水量設定処理について具体的に説明する。
この洗浄水量設定処理において制御部6は、図7に示すように、まず、使用頻度検出手段14により使用頻度計測タイマのカウント値(Tx)が、予め定めた使用頻度の閾値(TA)よりも小さいか否かの判断を行う(ステップS21)。
ここで、制御部6は、使用頻度検出手段14により(Tx)<(TA)であると判断した場合に、使用頻度が高いものとして処理をステップS31へ移し、(Tx)<(TA)でないと判断した場合に、使用頻度が低いものとして処理をステップS22へ移す。
ステップS22において制御部6は、(TMAX)として(T2)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS23へ移す。
次に制御部6は、尿流時間検出手段15により(t)が(T2)よりも小さい(T1)という値よりも小さいか否かの判断を行い、(t)<(T1)であると判断した場合に処理をステップS24へ移し、(t)<(T1)でないと判断した場合に処理をステップS26へ移す。
ステップS24において制御部6は、尿流検出動作の動作間隔を決定するための値(T)として(T1)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS25へ移す。
次に、ステップS25において制御部6は、洗浄水量設定手段16により洗浄水の量として最も少量である(b1)という値(ここでは、1リットル)を記憶手段に設定する処理を行い、その後、図6に示す処理をステップS9へ移す。
ここで洗浄水量設定手段16により設定される値は、上記のように、小便器2の使用頻度(洗浄水量の供給頻度)と尿量検出時間(尿流の継続状態)とに基づいて設定されるものである。
また、ステップS26において制御部6は、尿流時間検出手段15により(T1)≦(t)<(T2)であるか否かの判断を行い、(T1)≦(t)<(T2)であると判断した場合に処理をステップS27へ移し、(T1)≦(t)<(T2)でないと判断した場合に処理をステップS29へ移す。
ステップS27において制御部6は、(T)として(T2)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS25へ移す。
次に、ステップS28において制御部6は、洗浄水量設定手段16により洗浄水の量として標準的な量である(b2)という値(ここでは、2.5リットル)を記憶手段に設定する処理を行い、その後、図6に示す処理をステップS9へ移す。
また、ステップS29において制御部6は、(T)として最大値である(TMAX)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS30へ移す。
そして、ステップS30において制御部6は、洗浄水量設定手段16により洗浄水の量として最大量である(b3)という値(ここでは、4リットル)を記憶手段に設定する処理を行い、その後、図6に示す処理をステップS9へ移す。
また、ステップS31において制御部6は、(TMAX)として(T2)よりも大きい(T4)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS22へ移す。
次に、ステップS32において制御部6は、尿流時間検出手段15により(t)が(T3)よりも小さいか否かの判断を行う。ここで、(T3)は、(T2)よりも大きく、且つ、(T4)よりも小さい値である。
そして、制御部6は、尿流時間検出手段15により(t)<(T3)であるとであると判断した場合に処理をステップS33へ移し、(t)<(T1)でないと判断した場合に処理をステップS35へ移す。
ステップS33において制御部6は、(T)として(T3)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS34へ移す。
次に、ステップS34において制御部6は、洗浄水量設定手段16により洗浄水の量として最も少量である(b1)という値(ここでは、1リットル)を記憶手段に設定する処理を行い、その後、図6に示す処理をステップS9へ移す。
また、ステップS35において制御部6は、尿流時間検出手段15により(T3)≦(t)<(T4)であるか否かの判断を行い、(T3)≦(t)<(T4)であると判断した場合に処理をステップS36へ移し、(T3)≦(t)<(T4)でないと判断した場合に処理をステップS38へ移す。
ステップS36において制御部6は、(T)として(T4)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS37へ移す。
次に、ステップS37において制御部6は、洗浄水量設定手段16により洗浄水の量として標準的な量である(b2)という値(ここでは、2.5リットル)を記憶手段に設定する処理を行い、その後、図6に示す処理をステップS9へ移す。
また、ステップS38において制御部6は、(T)として最大値である(TMAX)という値を設定する処理を行い、その後、処理をステップS39へ移す。
そして、ステップS39において制御部6は、洗浄水量設定手段16により洗浄水の量として最大量である(b3)という値(ここでは、4リットル)を記憶手段に設定する処理を行い、その後、図6に示す処理をステップS9へ移す。
このような処理を制御部6が行うことにより、本実施形態の小便器洗浄装置1では、図4に示すような、使用頻度と尿流検出時間とに応じた最適な量の洗浄水により便器洗浄を行うことができる。
また、上記実施形態では、使用頻度計測タイマのカウント値(TX)が予め設定した閾値TAよりも小さいか否かによって、小便器2の使用頻度の高低を判断するように構成したが、本発明は、これに限定されるものではなく、段階的に大きくなる複数の閾値を設けてもよく、そうすることにより、使用頻度の高低がさらに細かく分割されることになるので、使用頻度に応じて洗浄水の量をより一層細やかに設定することができる。
また、上記実施形態では、尿流検出動作の動作間隔を決定するための値(T)に関して、(T1)、(T2)、(T3)、(T4)という4段階の値を設け、洗浄水の量に関しても、(b1)、(b2)、(b3)という3段階の設定値を設けるようにしているが、これらの値についても、その種類をさらに増加させてもよく、そうすることにより、尿流検出時間に応じて洗浄水の量をより一層細やかに設定することができる。