JP2008022738A - マツノマダラカミキリ由来の新規キチナーゼ - Google Patents

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芳彦 岩崎
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Abstract

【課題】
本発明は、病害虫に対して有効で、かつ植物体の外部から与えることが可能な殺生物剤の成分として、新規なキチナーゼ遺伝子、その遺伝子のコードするタンパク質、並びにキチナーゼの生産方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
上記課題の解決のため、本発明は、松食い虫の媒介昆虫であるマツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)に由来する新規なキチナーゼ遺伝子、その遺伝子のコードするタンパク質、並びにキチナーゼの生産方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、病害虫駆除用に用いられる殺生物剤の新規成分として有用なキチナーゼに関するものであり、詳しくは、松食い虫の媒介昆虫として知られるマツノマダラカミキリに由来する新規なキチナーゼ遺伝子及び該遺伝子がコードするキチナーゼに関する。
キチナーゼは、N−アセチルグルコサミンを構成単位とする多糖類の一種キチンの加水分解反応を触媒する酵素である。キチンは甲殻類の殻や真菌類の細胞壁を構成する成分であり、その分解産物であるアセチルグルコサミンや脱アセチル化で得られるキトサン等がいわゆる健康食品の素材として高い利用価値を持つことから、これを加水分解するキチナーゼ生産微生物の利用法や、種々の生物から単離されたキチナーゼ遺伝子などが提示されている(特許文献1−5)。
一方で、キチンが作物の病害虫や病原性微生物の構成成分であり、植物の生体防御機構がこのキチナーゼを含むことから、キチナーゼを組み込んだ「トランスジェニック植物」の形での利用方法も提示されている(特許文献6−9)。これらの試みは、種々の生物、例えば真菌類や耐病性のある植物からキチナーゼ遺伝子を単離して植物細胞に組み込み、遺伝子組み換え植物体内でキチナーゼを発現させることで、植物に耐病性や耐害虫性を持たせようとするものであった。しかしながら、遺伝子組み換え植物に対しては依然として社会的な抵抗感が根強くあり、また全ての植物に遺伝子組み換え技術を適用するのは困難であることから、対象となる生物自体への遺伝子の組み込みなど細胞の形質転換を伴わず、しかもヒトをはじめとする哺乳動物に無害であり、かつ効果の高い殺生物剤(殺菌・殺虫剤等)の開発が待たれていた。
特開2006−025701 高活性耐熱性キチナーゼ及びそれをコードする遺伝子 特開2004−041035 N‐アセチルグルコサミンの製造方法 特開2004−298127 キチナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、プラスミド、それを含む微生物及びそれを用いたキチナーゼの製造方法 特開2002−272452 バークホルデリア・セパシア、キチナーゼ、キチナーゼの製法及びキチンオリゴ糖の製法 特開平9−299091 キチナーゼをコードするDNA及びキチナーゼの製造方法 特開2006−075125 キチナーゼ遺伝子が導入されたシクラメン属植物の形質転換体 特開2003−250370 病害抵抗性イネ科植物 特開2000−93028 ブドウ類の菌類病抵抗性を増強する方法 特開平5−84087 アズキのエチレンで誘導される酸性キチナーゼ WO2003/072609 ダニのキチナーゼ Koga et al.2006.Biosci.Biotechnol.Biochem.70(1):219−229.
上記の現状に鑑み、本発明者らは、松食い虫の媒介昆虫であるマツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)をモデル生物とし、いわゆる農薬や抗真菌剤などとして外部から与えることが可能な殺生物剤の検討を行った。その中でカイコ(Bombyx mori)由来のキチナーゼ遺伝子から合成したキチナーゼをマツノマダラカミキリに投与して良好な結果を得ている(非特許文献1)。しかし本発明者らが過去において昆虫から見いだしたキチナーゼ(キチナーゼA,B)は、その構造中にキチン結合領域(Chitin−binding domain,CBD)を持っておらず、そのために殺虫効果が不十分なケースも観察された。そこで、更に効果の高い殺生物剤の開発のためにはCBDを持ったキチナーゼが不可欠であるとの推測から、CBDを含んだ昆虫のキチナーゼに着目した。本発明者らは種々の昆虫からキチナーゼ遺伝子を探索し、その結果マツノマダラカミキリ自身からCBDを含んだ形のキチナーゼ遺伝子を単離する事に初めて成功し、これが殺生物剤として極めて有効であることを見いだして、本発明を完成した。
従来、マツノマダラカミキリのCBDを含んだキチナーゼ遺伝子は知られておらず、本発明者らによって初めて解明された新規な遺伝子である。また昆虫由来のキチナーゼとしても、本発明者が明らかにした以外ではダニのキチナーゼ(特許文献10)などが提示されるにとどまっており、作物などに害を与える昆虫由来のキチナーゼの利用は知られていない。本発明は、マツノマダラカミキリに由来する新規なキチナーゼ遺伝子、その遺伝子のコードするタンパク質すなわちキチナーゼ、並びに該キチナーゼの生産方法を提供することをその課題とする。
すなわち本発明の第1の態様は、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)由来のキチナーゼ遺伝子に係る配列番号1で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子を提供する。
本発明の第2の態様は、配列番号2で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子を提供する。
本発明の第3の態様は、配列番号3で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子を提供する。
本発明の第4の態様は、配列番号4で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子を提供する。
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のうちいずれか1つに記載の遺伝子を組み込んだベクターを提供する。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載のベクターを含んだ形質転換細胞を提供する。
本発明の第7の態様は、宿主がPichia pastorisである、第6の態様に記載の形質転換細胞を提供する。
本発明の第8の態様は、第1から第4のうちいずれか1つの態様に記載の遺伝子がコードする、マツノマダラカミキリのキチナーゼを提供する。
本発明の第9の態様は、配列番号5で示されるアミノ酸配列、または配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質を提供する。
本発明の第10の態様は、配列番号6で示されるアミノ酸配列、または配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質を提供する。
本発明の第11の態様は、配列番号7で示されるアミノ酸配列、または配列番号7で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質を提供する。
本発明の第12の態様は、配列番号8で示されるアミノ酸配列、または配列番号8で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質を提供する。
本発明の第13の態様は、第6または第7の態様に記載の形質転換細胞を用いた、キチナーゼの生産方法を提供する。
本発明の第14の態様は、第9から第12の態様のうちいずれか1つに記載のタンパク質を有効成分とする、殺生物剤を提供する。
本発明の提供する新規キチナーゼ遺伝子、その遺伝子を含むベクターやベクターを導入した形質転換細胞、並びに新規キチナーゼ遺伝子がコードするタンパク質を用いることにより、病害虫に対する新規な殺生物剤として利用可能な新規加水分解酵素を製造することが可能となる。本発明が提供する遺伝子のコードするタンパク質は、昆虫類のキチン質を特異的に分解可能な酵素であり、ヒトを初めとする哺乳動物やマツなどの高等植物はキチンを体内に持っていないため、その効果は極めて特異的である事が期待される。すなわち本発明の提供する遺伝子及びタンパク質は、これまで用いられてきた化学農薬に替わりうる新たな殺生物剤として利用可能である。
以下に本発明を利用するための最良の形態を述べる。本発明の第1の態様は、配列番号1で示される塩基配列、または配列番号1で示される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなる事を特徴とする、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)由来の新規キチナーゼ遺伝子を提供する。本発明は山口県において甚大な被害を出している松食い虫の媒介昆虫であるマツノマダラカミキリに着目し、この生物が持っている(脱皮などの際に働く)キチナーゼをコードする遺伝子をクローニングして利用可能としたものである。キチンは昆虫類など節足動物の体構造構成成分であり、加水分解によってこれを選択的に切断するキチナーゼは他種生物に害を与えることなく、標的とする病害虫、一般には甲虫類、好適にはマツノマダラカミキリを選択的に除去可能な新規殺生物剤の成分として利用可能な酵素である。塩基配列には個体差もあり、配列番号1で示した配列において1または数個の塩基が欠失、置換もしくは付加されることも考えられるが、これらの場合にあってもコドンの読み枠をずらさない変異(置換)であって、更にアミノ酸配列の置換につながらない変異、あるいはアミノ酸配列が置換されても酵素活性に影響を与えない変異であれば、キチナーゼをコードする遺伝子としての利用には問題なく、またコドンの読み枠をずらす変異(欠失、付加)であってもそのコードするタンパク質が酵素活性を保持していれば上記同様問題なく利用することが可能である。おおよその目安として、配列番号1の塩基配列と90%以上の相同性を有する遺伝子であれば、本発明の目的に利用可能である。
下記実施例に述べるとおり、本発明者らが明らかにしたマツノマダラカミキリキチナーゼ遺伝子(配列番号1、概要は図2に記載)は、3つのCatalytic Domain(Unit3,4,5)と1つのChitin−binding Domainを有するという極めて特徴的な構造を有していることが明らかとなった。すなわち配列番号1で示した遺伝子の一部、例えば配列番号2,3及び4(図2B,C,D)で示した、CBDとCatalytic Domainを少なくとも1つ有する部分配列もまた、キチナーゼ遺伝子として働く単位として捉える事が可能であり、これもまた本発明に含まれるべきものである。
本発明の実施の態様としては、上述の遺伝子を適当なベクターに組み込んで、更にこのベクターを宿主となる細胞に導入して形質転換細胞を作成し、この形質転換細胞に遺伝子のコードするタンパク質を発現させて利用することが好ましい。この場合においてベクターとはプラスミドベクターやウィルスベクターなど、遺伝子導入のために分子生物学において用いられているものであれば特にその種類は問わず、何ら本発明を限定するものでは無いが、例えば複製起点と抗生物質耐性遺伝子とインサートチェック(Blue/White selection)のためのLacZ遺伝子と、インサート切り出しのための複数制限酵素サイトを有したpBluescriptなどはその一例である。また形質転換に用いる細胞も、分子生物学で通常用いられているものであればどの様なものでも良く、特に本発明を限定するものでは無いが、例としては大腸菌(Escherichia coli)、酵母(Saccharomyces cerebisiae)、昆虫細胞−バキュロウィルス系、メタノール資化性酵母(Pichia pastoris)などの系が利用可である。中でもメタノール資化性酵母の系は、異種タンパク質の分泌生産において、生産性の高さと制御の容易さから特に好ましく、本発明の実施においても非常に好適である。また本発明の遺伝子は、大量発現させて産物そのものを殺生物剤の有効成分として利用しようとするものであるが、勿論植物細胞に導入し、いわゆる遺伝子組み換えによって「病気に強い植物」を作出するためにも利用可能であり、その場合は宿主となる植物の細胞を培養してこれに分子生物学で通常用いられている手法により遺伝子を導入し、導入細胞から植物体を形成させれば良い。
本発明の遺伝子がコードするタンパク質、好適には配列番号5で示したアミノ酸配列、または配列番号5で示したアミノ酸配列と90%以上の相同性を持つタンパク質も、本発明に含まれるべきものである。遺伝子に変異がある場合と同様に、配列番号5に記載のアミノ酸配列に1個または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは挿入されたものも、本発明の範囲内である。実質的に酵素活性を保持しているならば、アミノ酸変異の数や場所は問わず、本発明を限定するものではない。
また上記の通り、本発明は複数のユニットからなるポリペプチドをコードしているのであるから、配列番号5で示したアミノ酸配列の一部、好適には配列番号5から8のうちいずれか1つに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質またはこれと90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質(図2B〜D参照)もまた、キチナーゼとして作用する最小の単位としてCBDとCatalytic Domainを少なくとも1つ有しており、本発明の範囲内に含まれるべきものである。
上述の形質転換細胞を大量培養し、全タンパク質中から本発明に係るキチナーゼを精製し、これを適切な緩衝液や展着剤などと混合することによって、病害虫に効果のある殺生物剤を製造することも可能となる。対象となる生物は特に限定は無いが、主に作物に害を与える昆虫のうち甲虫類が対象としては挙げられ、個々の酵素の反応特異性などを考慮すれば、マツノマダラカミキリが好適である。タンパク質の精製については、分子生物学で通常用いられている手法の中から適宜選択すれば良く、殺生物剤における緩衝液や展着剤などの補助成分についても目的に合わせて適宜組み合わせれば良く、どちらも本発明を限定するものではない。また、本発明のキチナーゼを殺生物剤として用いる方法も特に限定は無いが、一般に松などの被害を防止する目的で植物に噴霧する方法や、害虫が好む餌に混合して散布する方法、さらには、展着剤と混合して植物の幹などに塗布する方法などが考えられる。以下、本発明を実施例により更に詳しく述べるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(材料及びRNAの抽出) 本実施例においては、松食い虫の媒介昆虫であるマツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)の前蛹をRNA抽出のために用いた。液体窒素で凍らせたマツノマダラカミキリ前蛹20mgを乳鉢ですり潰し、RNeasy Mini kit(Qiagen)を用いて全mRNAを抽出した。
(3’−RACEによるcDNAの塩基配列決定)マツノマダラカミキリが発現しているキチナーゼのmRNAの3’側配列を明らかにするため、3’−RACE(3’ Rapid Amplification of cDNA ends)法を用いた解析を行った。前述のmRNAを鋳型とし、3’側のプライマーとしてはPoly A tailに相補的なOligo dTにアダプター配列を付加したもの(配列番号9)を用いて、Omniscript RT Kit(Qiagen)を用いたRT−PCRを行い、最初のcDNAを合成した。このcDNAを鋳型とし、5’側のプライマーとして、Family 18キチナーゼに共通のアミノ酸配列から作成したプライマー(配列番号10)を、3’側のプライマーとして前記アダプター配列に相補的な配列(配列番号11)を用い、PCR(2.5U Taq polymerase,10mM Tris−HCl pH8.3,1.5mM MgCl,50mM KCl,0.2mM dNTPs,100pmol each primer)を行った。PCR産物をTOPO CA Cloning Kit(Invitrogen)を用いてサブクローニングし、塩基配列を決定した。本実施例で用いたプライマーの一覧を表1に示す。
Figure 2008022738
(5’−RACEによるcDNAの塩基配列決定)mRNAの5’側の塩基配列を明らかにするために、前述の全mRNAを鋳型とし、3’−RACEで明らかにした配列中からプライマー(配列番号12)を設計して、Omniscript RT Kit(Qiagen)を用いてRT−PCRを行い、5’側のcDNAを合成した。このcDNAを鋳型として、5’側のプライマーとしてはCBDにおける保存領域から設計したプライマー(配列番号13)、3’側のプライマーとしては配列番号12のプライマーを用いてPCRを行った。PCR産物は3’−RACE同様サブクローニング後にシークエンスを行い、塩基配列を決定した。塩基配列と他種生物の遺伝子との比較から、この配列がCBDである事が示された。
上記で明らかになった配列の更に5’上流の配列を明らかにするために、5’側のプライマーとして他種生物のキチナーゼで共通の5’側配列を用い(配列番号10)、3’側のプライマーとして3’−RACEで明らかになった配列より設計したプライマー(配列番号12)を用いたPCRを行った。PCRには、長い遺伝子断片を高い信頼性で増幅させるためにElongase Enzyme Mixture(Gibco BRL.)を用いた。以後のPCRは全てこのElongaseを用いて行っている。PCRの結果、通常予想される単一の産物では無く、分子量の異なる3つの産物が増幅された。アガロースゲル電気泳動により分離した写真を図1に示す。図中レーンMは分子量マーカー(λ−HindIIIandφ×174HaeIII)を表し、レーン1がPCRにより増幅したキチナーゼ遺伝子を泳動したものである。PCR産物は4800bp、2500bp、1200bpの3つであり、特にバンドがはっきりと確認された2500bpと1200bpの2つについてサブクローニングを行い、シークエンスを行った。この情報に基づき、cDNAを鋳型にして、以下プライマーの組み合わせとして(配列番号10、配列番号14)、(配列番号15、配列番号16)、(配列番号17、配列番号18)で各々PCRを行って解析を進めた結果、マツノマダラカミキリのキチナーゼmRNAは複数ユニットからなるアミノ酸配列をコードしており、図2に示す構造を持っている事が明らかとなった。
図2において、Unit3,4…は便宜上名付けた領域名であり、CBDはキチン結合領域(Chitin−binding Domain)を表す。NCBI Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)による相同性検索の結果、各ユニットはキチナーゼのCatalytic Domainであり、CBDを2つのCatalytic Domain(4,5)が挟み、更に上流にもう一つのCatalytic Domain(3)があるという極めて特徴的な構造を有している事が明らかとなった。この中で特に、CBDを挟んだUnit4とUnit5について解析を行った結果を表2に示す。表中Chitinase A,Bはそれぞれ、本発明者らが過去に単離したマツノマダラカミキリキチナーゼA,B遺伝子(CBDを持たない)との比較結果を示すが、塩基配列レベルで相同性が50%前後であることから、本発明におけるキチナーゼ遺伝子が全く新規な遺伝子である事が示された。Unit4と5の間の相同性は遺伝子で66.52%、アミノ酸で69.05%であった。またCBDについては、塩基数144bp、推定される分子量は5.6kDaと算定された。
Figure 2008022738
本発明の提供する新規キチナーゼ遺伝子及びこの遺伝子がコードするタンパク質は、病害虫に対して特異的に作用する殺生物剤の製造を可能にするものであり、農業分野においてこれまでの化学農薬に替わる新たな農薬の有効成分として利用可能である。また本発明の遺伝子は、遺伝子組み換えによって植物に病害虫に対する抵抗性を付与するのにも利用可能である。
マツノマダラカミキリキチナーゼの5’−RACE PCRの結果を示す。図中レーンMは分子量マーカー(λ−HindIIIandφ×174HaeIII)を表し、レーン1がPCR産物を泳動したものである。PCRにより、4800bp、2400bp、1200bpの3つの遺伝子断片が増幅された。 3’−RACE,5’−RACEによって明らかとなった、本発明のマツノマダラカミキリキチナーゼの遺伝子(mRNA)の構造を模式的に表す。今回明らかになったマツノマダラカミキリキチナーゼのmRNAは、3つのCatalytic domain(Unit3,4,5と便宜上命名)と1つのキチン結合領域(Chitin−binding Domain,CBD)からなるタンパク質をコードしていることが明らかとなった(A)。B,C,Dはそれぞれ、本発明の応用時において取り得る「キチナーゼとして機能するタンパク質をコードする遺伝子」の分子デザインを表す。最小の単位として、C,Dの様にCBDとCatalytic domainを1つ持っていれば、キチナーゼとしての機能は保持されると考えられる。また図中AA…AはPoly A tailを示す。

Claims (14)

  1. マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus)由来のキチナーゼ遺伝子に係る配列番号1で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子。
  2. 配列番号2で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子。
  3. 配列番号3で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子。
  4. 配列番号4で示される塩基配列、または該塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなることを特徴とする、キチナーゼ遺伝子。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の遺伝子を組み込んだベクター。
  6. 請求項5に記載のベクターを含んだ形質転換細胞。
  7. 宿主がPichia pastorisである、請求項6に記載の形質転換細胞。
  8. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の遺伝子がコードする、マツノマダラカミキリのキチナーゼ。
  9. 配列番号5で示されるアミノ酸配列、または配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質。
  10. 配列番号6で示されるアミノ酸配列、または配列番号6で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質。
  11. 配列番号7で示されるアミノ酸配列、または配列番号7で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質。
  12. 配列番号8で示されるアミノ酸配列、または配列番号8で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、キチン結合能を有しかつキチナーゼ活性を有するタンパク質。
  13. 請求項6または請求項7に記載の形質転換細胞を用いた、キチナーゼの生産方法。
  14. 請求項9から請求項12のうちいずれか1項に記載のタンパク質を有効成分とする、殺生物剤。
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