JP2008021514A - 燃料電池用の水素ガス発生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水素発生剤収容室内に水素発生剤を高い充填率で収容した場合にも水素ガスを排出口から確実に排出させることが可能な水素ガス発生装置を提供する。
【解決手段】反応液収容室から反応液が供給される供給口12dと、反応液と反応して水素ガスを発生させる水素発生剤が収容される水素発生剤収容室12cと、発生した水素ガスが排出される排出口12eとを備えた燃料電池用の水素ガス発生装置であって、水素発生剤収容室12c内に、水素ガスを通過させるが反応液を通過させないメンブレンフィルター15を、供給口12dから排出口12eの方向にわたって配置した。好ましくは、メンブレンフィルター15は、水素発生剤収容室12c内の内壁面に沿うように配置する。好ましくは、反応液を通過可能な濾紙16を、供給口12dから排出口12eの方向にわたって配置する。
【選択図】図2

Description

本発明は、反応液収容室から反応液が供給される供給口と、反応液と反応して水素ガスを発生させる水素発生剤が収容される水素発生剤収容室と、発生した水素ガスが排出される排出口と、を備えた燃料電池用の水素ガス発生装置に関するものである。
燃料電池は、他の発電システムに比べると発電効率が高く、大気を汚染する物質を生成しないという点で注目されているエネルギー源である。水素ガス供給型の燃料電池では、発電を行なわせるために、カソードへ空気(酸素)を供給し、アノードへ水素を供給する。水素はアノードでの触媒反応によって水素イオン及び電子となり、水素イオンは電解質内を移動し、カソードの触媒反応により酸素と反応して水になる。一方、電子は外部回路を伝わってカソードに移動する。この電子の移動により電気エネルギーが発生することになる。
以上のように、燃料電池には燃料としての水素ガスを供給する必要がある。そこで水素ガスを発生するための装置が種々知られており、例えば、下記特許文献1に開示される水素ガス発生装置が知られている。この水素ガス発生装置は、水(反応液に相当)を収容するためのタンクと、水との化学反応により水素を生成する金属(水素発生剤に相当)を収容する反応容器と、この反応容器に近接配置される加熱手段と、タンクに収容された水を反応容器(水素発生剤収容室に相当)に導入するための導入管と、反応容器で生成した水素及び未反応の水をタンク内に導入する戻り管と、タンク内の水素及び水を排出する排出管とを備えている。そしてタンクの水を反応容器に導入するためにポンプを使用しており、これにより、水を反応容器に供給する量を制御している。反応容器は、装置本体内に収容され、加熱手段により密着保持される。これにより、反応容器内に導入された水が加熱されて水蒸気になるとともに、反応容器内の水素ガスを発生させるための反応を促進させることができる。
特開2004−149394号公報
かかる水素ガス発生装置において、水素発生剤収容室内にはできるだけ多くの水素発生剤を充填させておくことが好ましい。これにより、水素ガスの総発生量が増えるからである。例えば、水素発生剤を微細に粉末化させて充填させる。しかし、水素発生剤の充填密度を高めると、発生した水素ガスが排出口から排出しにくくなり、収容室内に水素ガスが溜まったままになることがある。そうすると、水素発生剤収容室内の圧力が高まり、容器の破損などの問題が生じるため、容器の強度を確保するなどの措置を講じる必要が出てくる。また、予定された量の水素ガスが燃料電池へ供給されないと発電効率が低下するという問題も生じる。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、水素発生剤収容室内に水素発生剤を高い充填率で収容した場合にも水素ガスを排出口から確実に排出させることが可能な水素ガス発生装置を提供することである。
上記課題を解決するため本発明に係る水素ガス発生装置は、
反応液収容室から反応液が供給される供給口と、
反応液と反応して水素ガスを発生させる水素発生剤が収容される水素発生剤収容室と、
発生した水素ガスが排出される排出口と、を備えた燃料電池用の水素ガス発生装置であって、
水素発生剤収容室内に、水素ガスを通過させるが反応液を通過させない第1フィルターを、供給口から排出口の方向にわたって配置したことを特徴とするものである。
この構成による水素ガス発生装置の作用・効果を説明する。この装置は、水素発生剤が収容される水素発生剤収容室を備えており、供給口から反応液の供給を受ける。供給された反応液は水素発生剤と反応して、水素ガスを発生し、発生した水素ガスは排出口を介して排出される。また、水素発生剤収容室内には第1フィルターが、供給口から排出口の方向にわたって配置される。この第1フィルターは、反応液は通さないが水素ガスは通すという特性を有している。すなわち、発生した水素ガスは、この第1フィルター内を通過することが可能である。従って、排出口から比較的遠い場所で発生した水素ガスも、第1フィルターを介して排出口へ到達することができる。これにより、水素発生剤収容室内に水素ガスが蓄積し圧力が必要以上に高まることを抑制することができる。その結果、水素発生剤収容室内に水素発生剤を高い充填率で収容した場合にも水素ガスを排出口から確実に排出させることが可能な水素ガス発生装置を提供することができる。
本発明に係る第1フィルターは、水素発生剤収容室内の内壁面に沿うように配置することが好ましい。
この構成によると、第1フィルターは充填されている水素発生剤を囲むような位置に配置される。内壁面に沿うように配置することで、内壁面と第1フィルターとの間に空間を形成し、水素ガスを排出口へ導くための通路として機能させることができる。あるいは、内壁面に第1フィルターを密着させてもよい。この場合、発生した水素ガスは第1フィルター内を通って排出させることができる。これにより、水素発生剤を充填するための空間を可能な限り確保すると共に、水素ガスを排出させるための通路も確保することができる。
本発明において、反応液を通過可能な第2フィルターを、供給口から排出口の方向にわたって配置したことが好ましい。
かかる第2フィルターを供給口から排出口の方向にわたって配置することで、第2フィルターを介して反応液を収容室内の各部に供給することができる。これにより、水素発生剤収容室内に満遍なく反応液を行き渡らせるようにすることができる。
本発明において、第1フィルターと第2フィルターを共に水素発生剤収容室内の内壁面に沿うように配置し、かつ、第1フィルターを内壁面に近い側に配置することが好ましい。
かかる構成によると、第1フィルター及び第2フィルターは充填されている水素発生剤を囲むような位置に配置される。内壁面に沿うように配置することで、内壁面と第1フィルターとの間に空間を形成し、水素ガスを排出口へ導くための通路として機能させることができる。あるいは、内壁面に第1フィルターを密着させてもよい。この場合、発生した水素ガスは第1フィルター内を通って排出させることができる。第2フィルターは水素ガスを通すこともでき、発生した水素ガスの通路の邪魔になることはない。
本発明において、供給口の近傍に水素ガス発生のための反応開始を促進させる反応起爆剤を収容することが好ましい。
例えば、反応起爆剤により積極的に発熱させることで、水素発生剤と反応液との反応を促進させるようにすることができる。
本発明において、水素発生剤収容室と隣接して中間室を配置し、排出口から排出される水素ガスを中間室を経て排出させることが好ましい。
水素ガスを排出する場合には、水素ガスと共に反応液の蒸気も排出されることがある。この蒸気を中間室で凝集させて集めるようにすることで、燃料電池には水素ガスのみを供給できる。回収した反応液は、反応液収容室へ戻すようにすれば、反応液を再利用できて効率がよい。
本発明において、反応液収容室から前記供給口への反応液通路に逆止弁を設けたことが好ましい。
これにより、水素発生剤収容室内で発生した水素ガスが反応液収容室のほうへ逆流することを防止することができる。
次に、本発明に係る水素ガス発生装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、水素ガス発生装置を用いた燃料電池システムの構成を示す模式図である。このシステムは、好適には、携帯電話に内蔵される二次電池の充電用として使用される。
<燃料電池システムの構成>
図1において、燃料電池システムは、セルユニットAと水素ガス発生装置Bにより構成される。セルユニットAは、4つの燃料電池セル(単位セルS)により構成される。4つの単位セルSは、カソード側を外向きに枠状に結合されている。単位セルSとしては、例えば、特開2006−66339号公報や特開2006−86042号公報に開示される構造のものを使用することができる。
上記先行技術に開示されるように、各単位セルSは、カソード側金属板1とアノード側金属板2により固体高分子電解質を有する膜・電極接合体(MEA)を挟持した構造を備えている。カソード側には、空気(酸化ガス)を取り込むための小孔1aが多数形成されている。4つの単位セルSは、接続用の端子3により電気的に直列接続されている。
枠状に形成されたセルユニットAの上部には回路基板4が取り付けられる。回路基板4には、接続端子5が取り付けられると共に、携帯電話に適切な充電電圧が供給できるように昇圧回路などが搭載されている。セルユニットAと回路基板4とは、端子6により電気的に接続されており、セルユニットAによって発生した電圧は、昇圧回路により適切な電圧に昇圧されてから携帯電話側に供給される。
水素ガス発生装置Bは、大きく分けて圧縮気体収容部10と、反応液収容部11と、水素発生剤収容部12とを備えている。圧縮気体収容部10は、反応液を押し出すための圧縮気体が収容されている。反応液収容部11は、反応液収容室を内部に備えており、水素発生剤と反応させるための反応液が収容される。水素発生剤収容部12は、水素発生剤収容室を内部に備えており、反応液と反応して水素ガスを発生する水素発生剤が収容される。発生した水素ガスは、排出口12aを介して適宜のパイプ(不図示)によりセルユニットA側に供給される。
セルユニットAの各単位セルSは、燃料ガスである水素ガスを流通させるためのガス流路が形成されており、各単位セルSのガス流路は、直列接続されている。従って、水素ガス発生装置Bから供給される水素ガスは、4つの単位セルSのうちのある1つの単位セルSに対して供給され、順次直列接続されたガス流路を通って、各単位セルSに順番に供給される。
枠状に組み立てられたセルユニットAの内部には空間部が形成されており、水素ガス発生装置Bの圧縮気体収容部10と反応液収容部11が挿入される。圧縮気体収容部10及び反応液収容部11は、断面略正方形の直方体状に形成される。水素発生剤収容部12も断面略正方形の直方体状に形成される。図1において、水素ガス発生装置Bの反応液収容部11をセルユニットA内に挿入した時、セルユニットAの下部に水素発生剤収容部12が位置する。
<水素ガス発生装置の構成>
次に、水素ガス発生装置Bの構成について図2及び図3により詳細に説明する。便宜上、図の上下方向を水素ガス発生装置Bの上下方向であるとして説明する。ただし、実際に水素ガス発生装置Bが使用される場合の姿勢については、かかる上下方向のみに限定されるものではない。
圧縮気体収容部10の内部には、数気圧の圧縮気体が収容される。圧縮気体は、空気や窒素などを用いることができる。圧縮気体収容部10は、本体容器10aと本体容器10aの下部周囲に形成される雄ねじ10bを有している。本体容器10aの内部には弁13が取り付けられており、図2に示す状態は、弁13を閉じた状態である。従って、圧縮気体は本体容器10aの外部に出て行くことはできない。
反応液収容部11は、内部に反応液収容室11bを形成するための本体容器11aを備えている。本体容器11aの上部には雌ねじ11cが形成されており、圧縮気体収容部11の雄ねじ10bと螺合することができる。図3は、螺合させた状態を図示している。本体容器11aの上部中央には、作用部11dが設けられており、この作用部11dは、弁13の端部13aを押すことができる。従って、図3に示すように螺合した状態では、作用部11dにより弁13が上方に押し上げられる。作用部11dには、流通孔11eが形成されており、図3に示す状態では、流通孔11eを介して圧縮気体が反応液収容室11b内に送り込まれる。圧縮気体が反応液収容室11b内に送り込まれると、その圧力により反応液が反応液収容室11b外へ排出されることになる。
反応液収容室11bには、反応液としての水が収容される。反応液収容室11bの下部には、部屋を仕切るための仕切り部11fが設けられており、その中央部に反応液の排出口11gが設けられる。排出される反応液は、逆止弁14を介して水素発生剤収容部12へと供給される。
水素発生剤収容部12は、本体容器12bを備え、その内部に水素発生剤収容室12cが形成される。水素発生剤収容室12cの上部中央には供給口12dが設けられており、この供給口12dを介して反応液収容部11から反応液が供給される。反応液は圧縮気体の作用により、水素発生剤収容室12c内へ定量供給される。水素発生剤収容室12cには、反応液である水と反応して水素ガスを発生する水素発生剤が収容されている。水素発生剤としては、水素化マグネシウム(MgH2)の微粉末が使用される。発生した水素ガスは、水素発生剤収容室12cの下部中央に設けられた排出口12dから排出される。
水素発生剤収容室12cの内壁面に沿ってメンブレンフィルター15(第1フィルターに相当、以下、MFと略す)が配置され、更に、このMF15の内側に沿うように濾紙16(第2フィルターに相当)が配置される。MF15は、水素ガスは通過させるが水は通過させないという特性を有する。濾紙16は、水素ガスも水も通過させるという特性を有する。MF15と濾紙16は、供給口12dから排出口12eにわたって配置されている。水素発生剤収容室12cの内壁面と、MF15と、濾紙16は、相互に密着させてもよいし、若干の隙間を空けて配置してもよい。MF15としては、例えば、テフロン(登録商標)シートを用いることができ、濾紙16としては、例えば、東洋濾紙株式会社製の標準用濾紙No.2を用いることができる。
水素発生剤収容室12c内には、できるだけ多くの水素発生剤を充填させることで、できるだけ多くの水素ガスを発生させることができる。ただし、充填率を高めた場合、発生した水素ガスを排出口12eから排出しにくくなるという問題がある。発生した水素ガスが予定通り排出されないと、水素発生剤収容部12内の圧力が高くなる恐れがあり、本体容器12bの強度も高めておかなければならなくなる。あるいは、別途安全弁を取り付けるなどの対処をしなければならない。このような対処を行なうことで装置全体が大型化したり、コスト上昇の原因となるため、発生した水素ガスは、できるだけスムーズに排出させることが好ましい。
そこで、MF15を配置することで水素ガスを排出しやすくしている。すなわち、MF15は水素ガスを通過させる性質があるため。MF15自身で水素ガスを排出口12eの方向に導くことができるし、MF15と収容室内壁面の間に形成される空間部を介して、水素ガスを排出口12eの方向に導くことができる。特に、排出口12aから離れた場所で発生した水素ガスは、MF15がなければ、排出口12eから排出されにくいが、MF15を配置することで、スムーズな排出が可能になる。
排出口12eには綿17が配置されており、粉末の水素発生剤が排出口12eから落下することを防止する。なお、発生した水素ガスは綿17を通過するので問題ない。水素発生剤収容室12cの下部に隣接して中間室18が配置されており、水素ガスは中間室18を通って、排出口12aから燃料電池セルAへ供給される。排出口12eから排出される水素ガスには水蒸気(反応液が蒸発したもの)が含まれることがあり、この水蒸気は中間室18に凝集させることができる。すなわち、中間室18において冷却させることで、水として回収することができる。その結果、排出口12aからは水素ガスのみが排出される。中間室18に水が徐々に溜まってくると、排出口12eから排出される水素ガスは、水の中を通過していくことになり、水素ガスの温度を低下させることができる。なお、排出口12eには逆止弁を設けておき、中間室18に溜まった水が逆流しないようにすることができる。
図4は、水素発生剤収容部12の横断面図を示す。MF15及び濾紙16は、内壁面の全周にわたって配置されている。ただし、本発明として、必ずしも全周に配置する必要はない。例えば、4つの内面のうち、2つもしくは3つの内面に対して配置してもよく、種々の変形例が考えられる。また、水素発生剤の充填密度であるが、四隅の領域は他の領域に比べて充填密度が低くなっている。水素発生剤収容室12cは断面が略正方形であるから、四隅に充填密度が低い領域が生じやすい。断面が円形の場合は、通常の方法で充填すると、全域が均等な充填密度になりやすい。密度の低い領域を形成することで、目詰まりを防止し、反応液が通りやすくすることができる。従って、水素発生剤収容室12cは、断面円形よりも断面矩形の方が好ましい。
<水素発生剤>
次に、好ましい水素発生剤について説明する。水素発生剤としては、水素化マグネシウムの粒子を含有する水素発生剤を使用することができ、必要に応じて、アルミニウム等の金属、アルカリ性無機化合物、凝集抑制粒子を更に含有することができる。
水素化マグネシウムは、水との反応によって水素ガスを発生させるが、次のような反応が生じると考えられる。
MgH+2HO → Mg(OH)+2H ・・・(1)
この反応は発熱反応であり、系の保温を行うことによって、昇温した状態で反応を進めることができる。
本実施形態における水素化マグネシウムの粒子の表面には、水酸化マグネシウムの表面層を有することが好ましい。一般的な保管方法では、空気中の水分との反応によって(上記反応式(1)と同じ)、水酸化マグネシウムの表面層が水素化マグネシウムの粒子表面に生成しており、室温で水と反応させても水素の発生が起らない。また、市販の水素化マグネシウムについて分析した結果、約50nmの厚みの水酸化マグネシウムの表面層が形成されていることが判明した。
上記のような水酸化マグネシウムの表面層の厚みは、保管状態における雰囲気中の水分などにより変化するが、一般に10〜100nmであると考えられる。
本実施形態における水素化マグネシウムの粒子には、表面層を貫通する複数の亀裂を形成してあり、好ましくは、複数の亀裂が粒子の表面から中心付近まで延びるものである。かかる水素発生剤によると、水に不活性な水酸化マグネシウムの表面層に対し、これを貫通する複数の亀裂を形成してあるため、初期に水素化マグネシウムと水との反応が速やかに生じる。その際、水との反応により水酸化マグネシウムが生成すると考えられるが、反応熱による昇温(100℃以上になることを確認ずみ)で、水分の拡散と反応が粒子内部まで進行して、反応率が向上すると考えられる。その結果、室温下でも水素発生反応の立ち上がりが早く、また室温下でも反応率が高い水素発生剤となる。
水素化マグネシウム(亀裂形成後)の平均粒子径については、反応率を高めながら、亀裂を生じさせ易くする観点から、平均粒子径が1〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、5〜20μmが更に好ましい。
水素化マグネシウムの粒子の含有量は、全水素発生剤中に、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましい。水素化マグネシウムの含有量が80重量%未満であると、全体の反応速度が低下すると共に、原料重量当たりの水素発生量が少なくなる傾向がある。
必要に応じて含有される金属としては、アルミニウム粒子、鉄粒子、マグネシウム粒子など、水と反応して水素を発生させる金属が好ましい。なかでも、アルミニウム粒子が好ましい。
アルミニウム等の金属を併用する場合、反応性を高める上で、微粒子状のものが好ましく、平均粒子径が100μm以下のものが好ましく、平均粒子径1〜50μmがより好ましく、平均粒子径1〜10μmがより好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、製造が困難となり、また2次凝集し、シンターリングによって、昇温時に表面積の低下が著しくみられ、水素発生が低下する傾向がある。
アルミニウム粒子としては、アトマイズ法で製造したものが好ましい。また、表面の酸化被膜を除去処理したものが好ましい。このようなアルミニウム粒子としては、各種市販のものが使用可能である。
金属の含有量は、全水素発生剤中に、1〜10重量%であることが好ましい。金属の含有量が10重量%を超えると、全体の反応速度が低下すると共に、原料重量当たりの水素発生量が少なくなる傾向がある。
アルカリ性無機化合物を含有する場合、アルカリ性無機化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩などが挙げられる。アルカリ性無機化合物としては、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ほう砂、炭酸ナトリウム、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、特に酸化カルシウムが好ましい。
アルカリ性無機化合物の含有量は、全水素発生剤中に、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜5重量%であり、より好ましくは0.5〜3重量%である。
アルカリ性無機化合物は、反応液の供給し始めにおいて、反応開始を促進させるための反応起爆剤として機能するものである。この反応起爆剤は反応液である水と反応することで発熱し、水素化マグネシウムと水との反応を促進させることができる。従って、反応起爆剤は、反応液の供給口12dの近傍に充填させておくことが好ましい。
凝集抑制粒子を含有する場合、凝集抑制粒子としては、水素発生反応に不活性な微粒子などを用いることができるが、凝集抑制粒子が、カーボンブラック、シリカ、酸化セリウム、酸化アルミニウム、及び酸化チタンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。なかでも、凝集抑制効果を高める上で、特にカーボンブラックが好ましい。
凝集抑制粒子の含有量は、全水素発生剤中に、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。凝集抑制粒子の含有量が、30重量%を超えると、相対的に水素化マグネシウムなどの含有量が少なくなり、水素ガスの総発生量が不十分となる傾向がある。
カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファネスブラックなど、何れのものも使用することもできる。カーボンブラックとしては、親水化処理したものなども存在するが、本発明では凝集抑制効果を高める上で、未処理の疎水性のカーボンブラックが好ましく用いられる。また、これらを用いて、酸化カルシウムを担持することも可能である。カーボンブラックの一次平均粒径は、0.01〜0.5μmが好ましい。
本実施形態では、更に活性炭、ゼオライトなどを添加することも可能である。活性性炭としては、椰子殻炭、木粉炭、ピート炭などが挙げられるが、活性炭は保水剤としても作用する。活性炭としてはヨウ素吸着性能が800〜1200mg/gであるものが好ましい。
また、無機電解質を添加することも可能である。無機電解質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属の塩化物、およびアルカリ金属の硫酸塩などが好ましく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、硫酸ナトリウムなどが用いられる。
以上のような水素発生剤は、次の製造方法により好適に製造することができる。即ち、水酸化マグネシウムの表面層を有する水素化マグネシウムの粒子に対し、前記表面層を貫通する複数の亀裂を形成する工程を含むものである。
亀裂の形成方法としては、水素化マグネシウムの粒子に、圧縮力及び/又は剪断力を生じさせる方法などが挙げられる。具体的には、ボールミル、ローラミル、高速回転ミル、媒体撹拌ミル、気流式粉砕機、圧密剪断ミル等の粉砕装置を用いる方法、各種のプレス装置を用いる方法などが挙げられる。なかでも、粉砕装置を用いる方法が好ましく、特にボールミルを用いる方法が好ましい。
ボールミルを用いる方法は、水素化マグネシウムの粒子のサイズに応じて、均一な圧縮力及び/又は剪断力を生じさせることができ、また、処理時間によって、亀裂形成の成長の程度を容易にコントロールできる点で好ましい。
具体的には、室温下での反応率をより高める観点から、ボールミルを用いて20分間以上処理を行うことが好ましく、室温下(保温なし)での反応率をより高める観点から、30分間以上処理を行うことがより好ましい。
水素発生の際の反応には、特に加熱を行う必要がなく、室温(25℃)下で行うことができる。但し、保温を行うことによって、反応熱による昇温が生じて、反応速度が向上する。
<実験結果1>
次に、MF15および濾紙16の効果について実験を行った。図5は、各条件における水素発生剤収容室12c内の圧力の経時変化を示すグラフである。図6は、各条件下における圧力と発生した水素ガスの流量の経時変化を示すグラフである。
条件は、本体容器12b内に(a)濾紙16のみを配置(b)MF15と濾紙16の順に配置(図2と同じ)(c)MF15も濾紙16もなし(d)MF15のみを配置(e)MF15を3枚配置し、更に濾紙16を配置、以上の5条件である。なお、MF15や濾紙16は、本体容器12bの内壁面に対して密着する形で配置している。また、本体容器12bは保温するようにし、反応液である水の供給速度は3ml/hとした。使用した試料(水素発生剤)は、MgHのみである。30分間ボールミルで粉砕し、本体容器12b内に1.2g充填させた。
グラフからも分かるように、MF15と濾紙16を1枚ずつ使用した条件(b)が最も圧力が低い状態が維持されている。条件(e)はMF15を3枚使用しているが、枚数を増加させても大きな効果は得られていない。
<実験結果2>
図7は、図5とは異なる試料を使用した場合の実験結果を示すグラフである。試料は、MgHに5wt%のカーボンを加えた水素発生剤を使用し、30分間ボールミルで粉砕した。充填した量は1.2gであり、このうち、MgHの量は1.14gである。また、本体容器12bは保温するようにし、反応液である水の供給速度は3ml/hとした。
このグラフからも分かるように、図5の場合と同様に条件(b)が最も圧力が低くなっている。また、カーボンを含有させることで、更に圧力が低下していることが分かる。これは、カーボンにより凝集を抑制することができ、発生した水素ガスの通過をスムーズに行なうことができているためである。
<実験結果3>
図8は、カーボンの含有量を変えた場合の実験結果であり、圧力の経時変化を示すグラフである。図9は、圧力及び水素ガス流量の経時変化を示すグラフである。試料は、(f)MgHのみ(g)MgHに1wt%のカーボン添加(h)MgHに5wt%のカーボン添加、の3条件について実験を行った。本体容器12bは保温するようにし、反応液である水の供給速度は3ml/hとした。試料は、30分間ボールミルで粉砕し、本体容器12b内に1.2g充填させた。また、本体容器12b内にMF15と濾紙16の順に1枚ずつ配置した。
グラフからも分かるように、1wt%の量ではそれほど効果がなく、5wt%添加することで圧力の低下が見られ、大きな効果が得られている。
<別実施形態>
MF15と濾紙16の配置構成の変形例を図10に示す。図10(a)は、水素発生剤収容室12cの底部までMF15と濾紙16を配置させた例である。図10(b)は、内壁面に沿わせるのではなく、内部に配置した例である。このように、MF15と濾紙16の配置構成には種々の変形例が考えられる。
本実施形態に係る燃料電池システムは携帯電話の充電用だけではなく、その他の用途にも用いることができる。例えば、携帯電話以外の携帯機器の充電用、携帯機器の電源用、ノートパソコンの電源用や充電用として用いることができる。
水素ガス発生装置の具体的な構造については、本実施形態のものに限定されるものではなく、種々の変形例が可能である。使用する弁の構造については、適宜の構造のものを使用すればよい。各室の大きさ・形状・材質などについては、適宜決めることができる。
水素発生剤については、本実施形態のものに限定されるものではなく、種々の材料が考えられる。例えば、アルミニウムや鉄の粉末を主体とした水素発生剤を用いてもよい。
燃料電池システムの構成を示す模式図 水素ガス発生装置の構成を示す模式的な断面図 圧縮気体収容部と反応液収容部を結合した状態を示す図 水素発生剤収容室の断面構造を示す図 実験結果を示すグラフ(圧力の経時変化) 実験結果を示すグラフ(圧力及び水素ガス流量の経時変化) 実験結果を示すグラフ(圧力の経時変化) 実験結果を示すグラフ(圧力の経時変化) 実験結果を示すグラフ(圧力及び水素ガス流量の経時変化) MFと濾紙の配置構成の変形例を示す図
符号の説明
10 圧縮気体収容部
11 反応液収容部
11a 本体容器
11b 反応液収容室
12 水素発生剤収容部
12a 排出口
12b 本体容器
12c 水素発生剤収容室
12d 供給口
12e 排出口
15 メンブレンフィルター
16 濾紙
18 中間室
A セルユニット
B 水素ガス発生装置
S 単位セル

Claims (7)

  1. 反応液収容室から反応液が供給される供給口と、
    反応液と反応して水素ガスを発生させる水素発生剤が収容される水素発生剤収容室と、
    発生した水素ガスが排出される排出口と、を備えた燃料電池用の水素ガス発生装置であって、
    水素発生剤収容室内に、水素ガスを通過させるが反応液を通過させない第1フィルターを、供給口から排出口の方向にわたって配置したことを特徴とする水素ガス発生装置。
  2. 第1フィルターは、水素発生剤収容室内の内壁面に沿うように配置したことを特徴とする請求項1に記載の水素ガス発生装置。
  3. 反応液を通過可能な第2フィルターを、供給口から排出口の方向にわたって配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素ガス発生装置。
  4. 第1フィルターと第2フィルターを共に水素発生剤収容室内の内壁面に沿うように配置し、かつ、第1フィルターを内壁面に近い側に配置したことを特徴とする請求項3に記載の水素ガス発生装置。
  5. 供給口の近傍に水素ガス発生のための反応開始を促進させる反応起爆剤を収容したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置。
  6. 水素発生剤収容室と隣接して中間室を配置し、排出口から排出される水素ガスを中間室を経て排出させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置。
  7. 反応液収容室から前記供給口への反応液通路に逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水素ガス発生装置。
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