図1は、本発明の実施の一形態である円偏波アレーアンテナ11の構成を示す斜視図である。図1では、理解を容易にするために、円偏波アレーアンテナ11を部分的に切欠いて示している。本実施の形態の円偏波アレーアンテナ11は、無線LAN(Local Area
Network)システムおよび映像伝送システムなどの無線システムにおいて、送信アンテナおよび受信アンテナとして用いられる。円偏波アレーアンテナ11は、電磁波を放射することができ、また電磁波を捕捉することができる。円偏波アレーアンテナ11によって放射および捕捉される電磁波は、準ミリ波帯およびミリ波帯などの電磁波である。
円偏波アレーアンテナ11は、向きを揃えて仮想一平面に沿って配置され、給電されると同一方向に旋回する円偏波を放射する複数対の放射素子12と、各放射素子12に接続され、給電されると各放射素子12に並列給電する給電線路形成体13(後述の図2参照)とを含む。
各放射素子12は、マトリクス状に配置される。ここで、前記仮想一平面内で互いに直交する2方向を想定し、これらの2方向のうち、一方をX方向とし、他方をY方向とする。行方向であるX方向には、2以上の偶数個、本実施の形態では16個の放射素子12が間隔をあけて整列され、列方向であるY方向には、2以上の偶数または奇数個、本実施の形態では16個の放射素子12が間隔をあけて整列される。本実施の形態では、iを1以上の奇数とするとき、X方向に一列に整列される各放射素子12のうち、X方向の上流からi番目の放射素子12と(i+1)番目の放射素子12とが対を成す。
図2は、一対の放射素子12の付近を模式的に示す斜視図である。図3は、給電線路形成体13の一部を模式的に示す斜視図である。図3では、理解を容易にするために、給電線路形成体13を、部分的に切欠いて示している。
放射素子12は、誘電体共振器によって実現される。放射素子12は、円柱状に形成される円柱部16と、円柱部16の周面に沿って円筒状に形成される周壁部17とを有する。円柱部16は、誘電体から成る。周壁部17は、導体から成り、このような周壁部17は、電磁波遮蔽体となる。円柱部16の軸線方向一端面には、空間に電磁波を放射する開口面18が形成される。
給電線路形成体13は、給電線路に沿って形成される導波管である方形導波管によって構成される。給電線路形成体13は、空洞導波管によって構成されてもよく、あるいは誘電体導波管によって構成されてもよい。本実施の形態では、給電線路形成体13は、誘電体導波管によって構成される。
給電線路形成体13は、延在して形成され、その延在方向Cに一対の放射素子12が離間して設けられる線路部分(以下、「第1線路部分」という)21を複数、有し、また各第1線路部分21に接続される第2線路部分22をさらに有する。一対の放射素子12は、円柱部16の軸線方向他端面が第1線路部分21の一方側のH面23に対向するように、第1線路部分21に設けられる。第2線路部分22は、第1線路部分21の他方側のH面24に連なる。H面とは、第1線路部分21における伝送波の磁界に平行な面をいう。
第1線路部分21は、一対の放射素子12間の位置であって一対の放射素子12から円偏波を同位相で放射可能となるような位置に給電される。具体的には、第1線路部分21と第2線路部分22との間には、結合スロット25が形成される。この結合スロット25によって、第1線路部分21と第2線路部分22とが結合される。結合スロット25は、第1線路部分21の延在方向Cにおいて一対の放射素子12のそれぞれに等間隔をあけた位置に配置される。したがって第1線路部分21は、その延在方向Cにおいて一対の放射素子12のそれぞれに等間隔をあけた位置に給電される。しかも各第1線路部分21には同位相で給電される。このように各第1線路部分21が給電されるので、前記複数対の放射素子12は全て、円偏波を同位相で放射することができる。
第2線路部分22は、外部から給電するためのポート部26と、ポート部26に接続され、各第1線路部分21の個数に応じた回数だけ分岐して、各第1線路部分21に接続される分岐線路部27とを有する。本実施の形態では、分岐線路部27は7回分岐しており、各放射素子に供給される電力は、この分岐線路部27で調整される。分岐線路部27は、前記結合スロット25の位置から距離Sだけ延びた位置で終端される。この距離Sは、分岐線路部27における伝送波の波長の2分の1、程度に選ばれる。分岐線路部27は、一層で形成されてもよく、あるいは複数層で形成されてもよい。分岐線路部27が複数層で形成される場合、各層は、小孔28によって結合される。
各放射素子12に供給される電力は、給電線路形成体13の前段である分岐線路部27で調整された後、並列給電により各放射素子12に供給されるので、直列給電のように各放射素子ごとに結合量を調整することなく、放射パターンを制御することができる。このように各結合量の調整が不要であるので、放射パターンを制御するための設計を容易化することができる。
図4は、放射素子12の付近を示す正面図である。放射素子12と第1線路部分21との間には、放射素子12と同軸の結合孔31が形成される。この結合孔31によって、放射素子12と第1線路部分21とが結合される。結合孔31は、略円形または多角形状に形成される。本実施の形態では、結合孔31は、長方形状に形成され、その長手方向が第1線路部分21の延在方向Cと平行になるように設けられる。結合孔31は、正面から見たとき、第1線路部分21の中心軸線L1からずれた位置に配置される。このように結合孔31が配置されることによって、放射素子12から円偏波を放射することができる。
一対の放射素子12に対する各結合孔31は、正面から見たとき、前記中心軸線L1に関して互いに反対側にずれる。このように各結合孔31がずれるので、一対の放射素子12から、同一方向に旋回する円偏波を放射することができる。本実施の形態では、図4に示すように、結合孔31は、第1線路部分21の中心軸線L1から、第1線路部分21における伝送波の進行方向Gに対して、左側にずれた位置に形成される。
図5は、第1線路部分21における伝送波の磁界分布を示す図であり、図5(1)は基準の状態を示し、図5(2)は基準の状態から90°位相が進んだ状態を示し、図5(3)は基準の状態から180°位相が進んだ状態を示し、図5(4)は基準の状態から270°位相が進んだ状態を示す。図5において、矢印32は、第1線路部分21における伝送波の磁界分布を示し、矢印33a〜33dは、結合孔31と結合する磁界成分を示す。
基準の状態では、図5(1)に示すように、結合孔31は、第1線路部分21における伝送波の進行方向Gとは反対方向の磁界成分33aと結合する。基準の状態から90°位相が進むと、図5(2)に示すように、結合孔31は、第1線路部分21における伝送波の進行方向Gに対して右の磁界成分33bと結合する。基準の状態から180°位相が進むと、図5(3)に示すように、結合孔31は、第1線路部分21における伝送波の進行方向Gと同一方向の磁界成分33cと結合する。基準の状態から270°位相が進むと、図5(4)に示すように、結合孔31は、第1線路部分21における伝送波の進行方向Gに対して左の磁界成分33dと結合する。このようにして、放射素子12から左旋円偏波が放射される。
放射素子12から右旋円偏波を放射させる場合は、結合孔31を、第1線路部分21の中心軸線L1から、第1線路部分21における伝送波の進行方向Gに対して、右側にずらせばよい。
図6は、第1線路部分21およびこの第1線路部分21に設けられる一対の放射素子12を模式的に示す断面図である。第1線路部分21では、伝送波が、第1線路部分21の給電点36から第1線路部分21の延在方向Cの両端(以下、「第1線路部分21の両端」という)21a,21bに向かって進む。この伝送波の電力は、一対の放射素子12に供給され、これによって一対の放射素子12から円偏波が放射される。
円偏波アレーアンテナ11の中心周波数(たとえば63GHz用の円偏波アレーアンテナでは、中心周波数は63GHz)と同一の周波数では、伝送波の電力は全て、一対の放射素子12に供給され、したがって伝送波が第1線路部分21の両端21a,21bに到達することはない。しかしながら、円偏波アレーアンテナ11の中心周波数からずれた周波数(たとえば64GHz)では、伝送波の電力は一部、一対の放射素子に供給されず、したがって伝送波の一部が第1線路部分21の両端21a,21bに到達する。
伝送波の一部は、第1線路部分21の両端21a,21bに到達し、第1線路部分21の両端21a,21bで反射される。反射された伝送波(以下、「反射波」という)は、第1線路部分21の給電点36に向かって進む。この反射波の電力は、一対の放射素子12に供給され、これによって一対の放射素子12から円偏波が放射される。
反射波による円偏波の旋回方向は、第1線路部分21の給電点36から第1線路部分21の両端21a,21bに向かって進む伝送波による円偏波(以下、「正円偏波」という)の旋回方向とは逆の方向である。このような反射波による円偏波(以下、「逆円偏波」という)によって、全体として円偏波の軸比が上昇してしまい、また全体としてサイドローブが上昇してしまう。
このような点を考慮して、本実施の形態では、前記複数対の放射素子12は、複数の放射素子12から成る第1〜第m(mは、2以上の自然数)放射素子群を含む。放射素子12からこの放射素子12が設けられる第1線路部分21の延在方向Cの両端21a,21bのうち前記放射素子12に最寄りの端までの距離をDで表すとき、第i(iは、1以上m以下の自然数)放射素子群は、前記距離Dが式(1)を満足するように配置される第1の放射素子と、前記距離Dが式(2)を満足するように配置される第2の放射素子とを含む。換言すれば、第i放射素子群には、第1の放射素子と第2の放射素子との両者が存在する。
D=Li+n・(λ/2) …(1)
D=Li+{n+(1/2)}・(λ/2) …(2)
式(1)および式(2)においては、第1線路部分21における伝送波の波長をλで表し、0以上であり前記伝送波の波長の2分の1未満である定数をLiで表し、0以上の整数をnで表す。しかも前記iが、i=j(jは、1以上m以下の自然数)のときの定数をLjで表し、前記iが、i=k(kは、1以上m以下のうちjとは異なる自然数)のときの定数をLkで表すとき、LjおよびLkは、Lj≠Lkを満足する。
第i放射素子群において、第1の放射素子および第2の放射素子は、前述の各式を満足するように配置されるので、第1線路部分21の給電点36から第1線路部分21の一端21aまたは他端21bを介して第1の放射素子に到達するまでの距離と第1線路部分21の給電点36から第1線路部分21の一端21aまたは他端21bを介して第2の放射素子に到達するまでの距離との差の絶対値は、λ/2の奇数倍となる。このように各距離の差の絶対値がλ/2の奇数倍となるので、第1の放射素子から放射される逆円偏波の位相と第2の放射素子から放射される逆円偏波の位相とが180°ずれ、これによって第1の放射素子から放射される逆円偏波と第2の放射素子から放射される逆円偏波とが互いに打消し合う。したがって全体として円偏波の軸比の上昇を抑えることができる。
また前記複数対の放射素子12は、前述のような第1〜第m放射素子群を含むので、各放射素子12から放射される逆円偏波が特定の方向で互いに強め合うという状態を回避することができる。したがって全体として、サイドローブの上昇を抑えることができる。
距離Dは、前述の各式を正確に満足する必要はない。距離Dの値が前述の各式を満足する値の近傍であれば、円偏波の軸比の上昇を抑えるという効果を達成することができる。
また本実施の形態では、第i放射素子群において、第1の放射素子と第2の放射素子とが同数、存在する。これによって全体として、円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。
さらに本実施の形態では、各放射素子群に含まれる放射素子12の数は、同数または略同数である。これによって全体として、サイドローブの上昇を好適に抑えることができる。ある放射素子群に含まれる放射素子12の数が、他の放射素子群に含まれる放射素子12の数に比べて、極端に多い場合、サイドローブの上昇を抑えるという効果が小さくなってしまう。
さらに本実施の形態では、各第1線路部分21には、一対の放射素子12として、同一の放射素子群に含まれる第1の放射素子と第2の放射素子とが設けられる。このような本実施の形態では、第1線路部分21の延在方向Cの一端21aからこの一端21a側に配置される放射素子12の配置位置までの第1距離Aおよび第1線路部分21の延在方向Cの他端21bからこの他端21b側に配置される放射素子12の配置位置までの第2距離Bは、以下の式(3)を満足する。式(3)においては、第1線路部分21における伝送波の波長をλで表し、0以上の整数をnで表す。
|A−B|=λ/4+λ・n/2 …(3)
このように各距離A,Bが式(3)を満足するので、一対の放射素子12から放射される逆円偏波の位相が180°ずれ、これによって一対の放射素子12から放射される逆円偏波が互いに打消し合う。したがって一対の放射素子12から放射される円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。その結果、全体としても、円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。
表1は、各放射素子12から放射される逆円偏波の位相のずれの一例を示す。表1において、横方向はX方向に対応し、縦方向はY方向に対応する。逆円偏波の位相を表す各数値の配置関係は、各放射素子12の配置関係と対応する。表1の最上部に記載される1〜16の数値は、X方向の上流からの順番を示し、表1の最左部に記載される1〜16の数値は、Y方向の下流からの順番を示す。逆円偏波の位相の単位は、「°」である。
表1に示す一例では、前記複数対の放射素子12は、第1および第2放射素子群を含み、L1およびL2は、L2−L1=λ/8を満足する。L1+n・(λ/2)をLとする。このとき、第1放射素子群は、前記距離Dが、D=Lを満足するように配置される第1の放射素子と、前記距離Dが、D=L+λ/4を満足するように配置される第2の放射素子とを含む。また第2放射素子群は、前記距離Dが、D=L+λ/8を満足するように配置される第1の放射素子と、前記距離Dが、D=L+3・λ/8を満足するように配置される第2の放射素子とを含む。
この例では、各放射素子群において、第1の放射素子からの逆円偏波の位相と第2の放射素子からの逆円偏波の位相との間の位相差は、180°である。また第1放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相と第2放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相との間の位相差は、90°である。第1放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相を0°とするとき、第1放射素子群に含まれる第2の放射素子からの逆円偏波の位相は180°であり、第2放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相は90°であり、第2放射素子群に含まれる第2の放射素子からの逆円偏波の位相は270°である。
このような例では、第1放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相と第2放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相との間の位相差を十分に確保することができる。したがって前記サイドローブの上昇を好適に抑えることができる。
また、他の例では、前記複数対の放射素子12は、第1〜第3放射素子群を含み、L1およびL2は、L2−L1=λ/12を満足し、L1およびL3は、L3−L1=2・λ/12を満足する。L1+n・(λ/2)をLとする。このとき、第1放射素子群は、前記距離Dが、D=Lを満足するように配置される第1の放射素子と、前記距離Dが、D=L+λ/4を満足するように配置される第2の放射素子とを含む。また第2放射素子群は、前記距離Dが、D=L+λ/12を満足するように配置される第1の放射素子と、前記距離Dが、D=L+4・λ/12を満足するように配置される第2の放射素子とを含む。さらに第3放射素子群は、前記距離Dが、D=L+2・λ/12を満足するように配置される第1の放射素子と、前記距離Dが、D=L+5・λ/12を満足するように配置される第2の放射素子とを含む。
この例では、各放射素子群において、第1の放射素子からの逆円偏波の位相と第2の放射素子からの逆円偏波の位相との間の位相差は、180°である。また第1放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相と第2放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相との間の位相差は、60°である。さらに第1放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相と第3放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相との間の位相差は、120°である。第1放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相を0°とするとき、第1放射素子群に含まれる第2の放射素子からの逆円偏波の位相は180°であり、第2放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相は60°であり、第2放射素子群に含まれる第2の放射素子からの逆円偏波の位相は240°であり、第3放射素子群に含まれる第1の放射素子からの逆円偏波の位相は120°であり、第3放射素子群に含まれる第2の放射素子からの逆円偏波の位相は300°である。
このような例では、第1放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相と第2放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相との間の位相差を十分に確保することができる。また第2放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相と第3放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相との間の位相差も十分に確保することができる。さらに第3放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相と第1放射素子群の各放射素子12からの逆円偏波の位相との間の位相差も十分に確保することができる。したがって前記サイドローブの上昇を好適に抑えることができる。
図7は、図1〜図6に示す円偏波アレーアンテナ11の一部を詳細に示す正面図である。図8は、図7の切断面線S8−S8から見た断面図である。図7および図8では、便宜上、一部を省略して示している。図7では、理解を容易にするために、一部を透過させて示している。
円偏波アレーアンテナ11は、一体に形成され、アンテナ基板として実現される。このような円偏波アレーアンテナ11は、持運びおよび取付けなどの取扱いの容易化を図ることができる。
円偏波アレーアンテナ11は、共振器部誘電体層41が積層されて形成される共振器部誘電体基板42と、共振器部誘電体基板42の下方に設けられ、給電部誘電体層51が積層されて形成される給電部誘電体基板52と、給電部誘電体基板52の下方に設けられ、給電部誘電体基板52と同様な構成の他の給電部誘電体基板とを有する。他の給電部誘電体基板については、説明を省略する。
共振器部誘電体基板42の上面には、共振器部上部主導体層43が形成され、共振器部誘電体基板42の下面には、共振器部下部主導体層44が形成される。共振器部上部主導体層43には、開口部45が形成される。この開口部45の周辺には、所定の間隔をあけて、共振器部上部主導体層43と共振器部下部主導体層44との間を電気的に接続する複数の共振器部貫通導体46が形成される。各共振器部貫通導体46は、高周波信号の信号波長の2分の1未満の間隔で配置される。各共振器部貫通導体46の間の間隔は、必ずしも一定の値である必要はなく、信号波長の2分の1未満で、種々の値を組合せて設定してもよい。また各共振器部貫通導体46は、2重、3重と設けられてもよい。
各共振器部貫通導体46は、共振器部上部主導体層43と共振器部下部主導体層44との間においてこれらの主導体層43,44と平行に設けられる共振器部副導体層47によって電気的に接続される。共振器部副導体層47には、開口部45と相似形状の開口部48が形成される。共振器部副導体層47は、単層または必要に応じて複数層、形成される。各共振器部貫通導体46および共振器部副導体層47によって電磁波遮蔽体が形成され、これが図2に示す放射素子12の周壁部17を形成している。
共振器部誘電体基板42内には、共振器部上部主導体層43、共振器部下部主導体層44、各共振器部貫通導体46および共振器部副導体層47によって囲まれて、誘電体が満たされた空間が形成される。このように誘電体が満たされた空間が、図2に示す放射素子12の円柱部16を形成している。
給電部誘電体基板52の上面には、給電部上部主導体層53が形成され、給電部誘電体基板52の下面には、給電部下部主導体層54が形成される。給電部上部主導体層53は、前記共振器部下部主導体層44と共通に形成される。給電部上部主導体層53(共振器部下部主導体層44)には、開口部45が形成され、これによって前記結合孔31が形成される。
給電部上部主導体層53と給電部下部主導体層54との間には、これらの主導体層53,54の間を電気的に接続する複数の給電部貫通導体56が2列に配列されている。各給電部貫通導体56は、高周波信号の信号波長の2分の1未満の間隔で配置される。各給電部貫通導体56の間の間隔は、必ずしも一定の値である必要はなく、信号波長の2分の1未満で、種々の値を組合せて設定してもよい。また各給電部貫通導体56は、2重、3重と設けられてもよい。
各給電部貫通導体56は、給電部上部主導体層53と給電部下部主導体層54との間においてこれらの主導体層53,54と平行に設けられる給電部副導体層57によって電気的に接続される。給電部副導体層57は、単層または必要に応じて複数層、形成される。各給電部貫通導体56および給電部副導体層57によって電磁波遮蔽体が形成され、これが図2および図3に示す給電線路形成体13のE面導体を形成している。
給電部誘電体基板52内には、給電部上部主導体層53、給電部下部主導体層54、各給電部貫通導体56および給電部副導体層57によって囲まれて、誘電体が満たされた空間が形成される。このように誘電体が満たされた空間が、図2および図3に示す給電線路形成体13の給電線路を形成している。
共振器部誘電体基板42および給電部誘電体基板52としては、誘電体として機能し、高周波信号の伝送を妨げることのない特性を有するものであればとりわけ限定するものではないが、給電線路形成体13を形成する際の精度および製造の容易性の点からは、セラミックスから成ることが望ましい。
共振器部誘電体基板42および給電部誘電体基板52としては、比誘電率εrが4〜100程度のものが好ましく、たとえばアルミナセラミックス、窒化アルミニウムセラミックスおよびガラスセラミックスなどの低温焼成セラミックスなどが好ましい。特に、ガラスセラミックスなどの低温焼成セラミックスが好適に用いられる。共振器部誘電体基板42および給電部誘電体基板52は、たとえばセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒を添加混合して泥漿状になすとともに、これをドクターブレード法およびカレンダーロール法などを採用してシート状となすことによって複数枚のセラミックグリーンシートを得て、これを積層し、焼成することによって製作される。
また各共振器部貫通導体46および各給電部貫通導体56は、ビアホール導体およびスルーホール導体によって形成すればよく、たとえばセラミックグリーンシートに打ち抜き加工をして作製した貫通孔に、導体層と同様の導体ペーストを埋め込み、しかる後、セラミックグリーンシートと同時に焼成して形成する。なお、各共振器部貫通導体46および各給電部貫通導体56は、直径50〜300μmが適当である。
表1を再び参照して、表1に示す一例では、互いに隣接する2×2の放射素子12によって構成されるユニットが複数個、この例では64個、存在する。各ユニットは、同一の放射素子群に含まれる第1の放射素子と第2の放射素子とを2つずつ含み、第1の放射素子と第2の放射素子とが、X方向に並びかつY方向に並ぶ。この例では、製造工程においてメタライズパターンにずれが発生した場合でも、各ユニットにおいて、円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。
たとえば、X方向の上流から1番目および2番目で、Y方向の下流から1番目および2番目である4つの放射素子によって構成されるユニットに着目する。このユニットでは、Y方向の下流から1番目の2つの放射素子12は、同一の第1線路部分21に設けられて対を成し、その第1線路部分21の給電点36に関して2回回転対称に配置される。またY方向の下流から2番目の2つの放射素子12は、同一の第1線路部分21に設けられて対を成し、その第1線路部分21の給電点36に関して2回回転対称に配置される。
このように各対の放射素子12が2回回転対称に配置されるので、製造工程においてメタライズパターンにずれが発生した場合、一対の放射素子12からの逆円偏波が互いに打消し合わなくなる。一対の放射素子12からの逆円偏波の位相は、たとえば一方が5°ずれれば、他方が−5°ずれる。このとき、たとえばY方向の下流から1番目の一対の放射素子12からの逆円偏波の位相は、0°と180°との組合せが、5°と175°との組合せになる。その結果、前記一対の放射素子12からの逆円偏波が互いに打消し合わなくなる。Y方向の下流から2番目の一対の放射素子12についても同様に、逆円偏波が互いに打消し合わなくなる。
このように一対の放射素子12からの逆円偏波は互いに打消し合わなくなるけれども、Y方向に並ぶ2つの放射素子12からの逆円偏波が互いに打消し合う。Y方向に並ぶ2つの放射素子12からの逆円偏波の位相は、たとえば一方が5°ずれれば、他方も同様に5°ずれる。このとき、たとえばX方向の上流から1番目の2つの放射素子12からの逆円偏波の位相は、0°と180°との組合せが、5°と185°との組合せになる。その結果、前記2つの放射素子12からの逆円偏波が互いに打消し合う。X方向の上流から2番目の2つの放射素子12についても同様に、逆円偏波が互いに打消し合う。
このように製造工程においてメタライズパターンにずれが発生した場合でも、各ユニットにおいて、各放射素子12からの逆円偏波が互いに打消し合うので、各ユニットにおいて、円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。したがって全体として円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。
サイドローブの制御のために、各放射素子12から放射される円偏波の電界強度を異ならせることがある。このような場合でも、隣接する放射素子12間では、放射される円偏波の電界強度の比が1に近い。この点を考慮して、本実施の形態では、前述のように、各ユニットにおいて、各放射素子12間からの逆円偏波が互いに打消し合うように構成されるので、円偏波の軸比の上昇を好適に抑えることができる。
本実施の形態では、前記複数対の放射素子12が第1〜第m放射素子群を含むので、1つの放射素子群だけを含む場合に比べて、設計柔軟性が増し、これによって前述のようなユニットを維持しながらも、サイドローブの上昇を容易に抑えることができる。
図9は、本発明の実施の他の形態である円偏波アレーアンテナ61の構成を示す正面図である。図10は、円偏波アレーアンテナ61を部分的に切欠いて示す正面図である。図11は、一対の放射素子12の付近を模式的に示す斜視図である。本実施の形態の円偏波アレーアンテナ61は、図1〜図8に示す円偏波アレーアンテナ11に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる点についてだけ説明する。
本実施の形態では、第1線路部分21の延在方向Cにおいて隣接する第1線路部分21に設けられる各放射素子12が、一直線上に整列される。前記図1〜図8に示す円偏波アレーアンテナ11のように、第1線路部分21の延在方向Cにおいて隣接する第1線路部分21に設けられる各放射素子12が、いわゆる千鳥状に配置された構成であると、各放射素子12間の間隔の大きな方向において、不要な電磁波が放射されてしまう。この点を考慮して、本実施の形態では、前記各放射素子12を一直線上に整列させることで、各放射素子12間の間隔の差を小さくし、これによって不要な電磁波の放射を抑制することができる。
X方向には、各放射素子12が等間隔をあけて整列され、Y方向には、各放射素子12が等間隔をあけて整列される。X方向に整列される各放射素子12の間隔D1とY方向に整列される各放射素子12の間隔D2とは、同一であってもよく異なっていてもよいが、不要な電磁波の放射を抑制するという観点からは同一であるのが好ましい。
本実施の形態では、同一の放射素子群に含まれる第1の放射素子および第2の放射素子は、前記仮想一平面に直交しかつ互いに直交する2つの対称面に関して面対称にそれぞれ配置される。この場合、前記2つの対称面によって仕切られる4つの領域のうち1つについて各放射素子12の配置を設計するだけで、他の3つの領域について各放射素子12の配置が決定されるので、設計が容易となる。
なお、図9では隣り合う第1線路部分21が連通しているように見える箇所があるが、実際は図10に示すようにビアホール導体の壁で遮断されている。
図12は、本発明の実施のさらに他の形態である円偏波アレーアンテナが備える一対の放射素子12の付近を模式的に示す正面図である。本実施の形態の円偏波アレーアンテナは、図9〜図11に示す円偏波アレーアンテナ61に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる点についてだけ説明する。
本実施の形態では、結合スロット25は、その長手方向Eが第1線路部分21の延在方向Cに前記仮想一平面内で直交するように形成される。このように結合スロット25が形成されることによって、結合スロット25を介して第1線路部分21に給電するときに結合スロット25で反射される電力を小さくすることができる。したがって電力損失を抑えることができ、これによって第1線路部分21への給電効率を向上させることができる。
図13は、本発明の実施のさらに他の形態である円偏波アレーアンテナが備える一対の放射素子の付近を模式的に示す斜視図である。図14は、図13に示す一対の放射素子の付近を模式的に示す正面図である。本実施の形態は、前述の実施の各形態に類似するので、異なる点についてだけ説明する。本実施の形態の円偏波アレーアンテナは、パッチアンテナによって実現される。
円偏波アレーアンテナは、第1誘電体層72と、第2誘電体層73と、これらの第1誘電体層72と第2誘電体層73との間に介在する接地導体層74と、第1誘電体層72の接地導体層74とは反対側に形成される第1ストリップ導体層75と、第1誘電体層72の接地導体層74とは反対側に形成され、第1ストリップ導体層75に電気的に接続される一対のパッチ導体層76a,76bと、第2誘電体層73の接地導体層74とは反対側に形成される第2ストリップ導体層77と、第1および第2誘電体層72,73ならびに接地導体層74を貫通し、第1ストリップ導体層75と第2ストリップ導体層77とを電気的に接続する接続部78とを含む。
本実施の形態では、一対のパッチ導体層76a,76bによって、一対の放射素子が構成される。また第1ストリップ導体層75、第1誘電体層72および接地導体層74によって、第1線路部分が構成される。また第2ストリップ導体層77、第2誘電体層73および接地導体層74を含んで、第2線路部分が構成される。
第1ストリップ導体層75は、延在して形成される。一対のパッチ導体層76a,76bのうち、一方76aは、第1ストリップ導体層75の延在方向C1一端75a寄りで第1ストリップ導体層75に接続され、第1ストリップ導体層75の幅方向C2一方側に配置され、他方76bは、第1ストリップ導体層75の延在方向C1他端75b寄りで第1ストリップ導体層75に接続され、第1ストリップ導体層75の幅方向C2他方側に配置される。各パッチ導体層76a,76bは、正方形状に形成される。一方のパッチ導体層76aは、その隣接する2縁辺の各中央に対して90°の位相差で給電され、他方のパッチ導体層76bは、その隣接する2縁辺の各中央に対して90°の位相差で給電される。なお、一対のパッチ導体層76a,76bから放射される円偏波の位相を合わせるために、接続部78の位置を各パッチ導体層76a,76b間の中央からλ/4だけ一方のパッチ導体層76a側にずらしており、接続部78から他方のパッチ導体層76bまでの距離が接続部78から一方のパッチ導体層76aまでの距離よりλ/2長くなっている。
図15は、本発明の実施のさらに他の形態である円偏波アレーアンテナが備える一対の放射素子の付近を模式的に示す斜視図である。図16は、図15に示す一対の放射素子の付近を模式的に示す正面図である。本実施の形態は、前述の実施の各形態に類似するので、異なる点についてだけ説明する。本実施の形態の円偏波アレーアンテナは、スロットアンテナによって実現される。
円偏波アレーアンテナは、第1誘電体層81と、第2誘電体層82と、これらの第1誘電体層81と第2誘電体層82との間に介在する第1ストリップ導体層83と、第1誘電体層81の第1ストリップ導体層83とは反対側に形成される第1接地導体層84と、第2誘電体層82の第1ストリップ導体層83とは反対側に形成される第2接地導体層85と、第2接地導体層85の第2誘電体層82とは反対側に形成される第3誘電体層86と、第3誘電体層86の第2接地導体層85とは反対側に形成される第2ストリップ導体層87とを含む。
本実施の形態では、第1ストリップ導体層83、第1および第2誘電体層81,82ならびに第1および第2接地導体層84,85によって、第1線路部分が構成される。また第2ストリップ導体層87、第3誘電体層86および第2接地導体層85を含んで、第2線路部分が構成される。
第1ストリップ導体層83は、延在して形成される。第1接地導体層84には、第1ストリップ導体層83の延在方向C3一端83a寄りおよび他端83b寄りに、スロット88a,88bが形成される。本実施の形態では、第1接地導体層84のスロット88a,88bが形成される部分89a,89bによって、一対の放射素子が形成される。第2接地導体層84には、結合スロット90が形成される。この結合スロット90によって、第1線路部分と第2線路部分とが結合される。
軸比特性を評価するために、HFSS(High Frequency Structure Simulator)法によってシミュレートした。このシミュレーションでは、前記図1〜図8に示される円偏波アレーアンテナ11と同様な構成で、一対の放射素子12を想定した。
詳しくは、給電線路形成体13の誘電体の比誘電率εrは4.9とした。給電線路形成体13の寸法は、以下のようにした。
・第1線路部分21の幅寸法=1.89mm
・第2線路部分22の幅寸法=1.64mm
・第1および第2線路部分21,22の厚み寸法=0.6mm
・給電部貫通導体56のビア径寸法=0.2mm
・給電部貫通導体56のビア間隔=0.60mm
なお、第1および第2線路部分21,22の両端面および両側面は、ビア中心で示している。このときの伝送波の波長λは2.64mmで、中心周波数は61.5GHz程度とした。
放射素子12の寸法は、以下のようにした。
・結合孔31の寸法=1.12×1.06mm
・開口面18の直径寸法=1.47mm
・放射素子12の厚み寸法=0.6mm
・放射素子12の直径寸法=1.61mm
第1距離Aと第2距離Bとを種々、変化させた。その結果、第1線路部分21の両端21a,21bで反射された伝送波によって放射素子12から正面方向に放射される逆円偏波の位相が0°となるときの第1および第2距離A,Bは、1.32mmであった。説明の便宜上、一対の放射素子12のうち、第1線路部分21の一端21a側に配置される放射素子12を一方の放射素子12aといい、第1線路部分21の他端21b側に配置される放射素子12を他方の放射素子12bということがある。
表2は、一方の放射素子12aからの逆円偏波の位相と第1距離Aとの関係および他方の放射素子12bからの逆円偏波の位相と第2距離Bとの関係を示す。
表3は、一方の放射素子12aからの逆円偏波の位相と他方の放射素子12bからの逆円偏波の位相との間の位相差と、第1距離Aと第2距離Bとの間の差との関係を示す。
表2および表3では、一方の放射素子12aからの逆円偏波の位相と他方の放射素子12bからの逆円偏波の位相との間の位相差は、0°〜180°までとした。表3では、第1距離Aと第2距離Bとの間の差|A−B|を、伝送波の波長λを用いて表した。なお、位相差とは、正面方向における位相差である。
ここで中心周波数61.5GHzのとき、軸比が4.00dB以下において、本発明の円偏波アレーアンテナ特性を満足するとし、また、中心周波数61.5GHzに対して±2.0GHzのとき、軸比が10.00dB以下において、本発明の円偏波アレーアンテナ特性を満足するとする。
表4は、シミュレーション結果を示す。
この表4の結果から、一方の放射素子12aからの逆円偏波と他方の放射素子12bからの逆円偏波との間の位相差が45°で、第1距離Aと第2距離Bとの間の差がλ/16(0.17mm)のとき、軸比が4.00dB以下を満たすことが判る。また、一方の放射素子12aからの逆円偏波と他方の放射素子12bからの逆円偏波との間の位相差が180°で、第1距離Aと第2距離Bとの間の差がλ/4(6.6mm)のとき、最も軸比を低減できることが判る。
この結果を踏まえると、第1距離Aと第2距離Bとの関係は、軸比が4.00dB以下になる、λ/4≧|A−B|≧λ/16が望ましい。第1距離Aと第2距離Bとの関係は、軸比を最も低減できる、|A−B|=λ/4が最も望ましい。
表5は、周波数61.5GHzを中心に±2.0GHzでの軸比に対する周波数特性のシミュレーション結果を示す。
この表5の結果から、一方の放射素子12aからの逆円偏波と他方の放射素子12bからの逆円偏波との間の位相差が135°で、第1距離Aと第2距離Bとの間の差がλ/5.33(0.49mm)のとき、中心周波数61.5GHzで軸比が4.00dB以下を満たし、61.5GHzを中心に±2.0GHzの範囲で、軸比が10.00dB以下を満たしていることが判る。
また、一方の放射素子12aからの逆円偏波と他方の放射素子12bからの逆円偏波との間の位相差が170°で、第1距離Aと第2距離Bとの間の差がλ/4.24(0.62mm)のとき、周波数61.5GHzを中心に±2.0GHzの範囲で、軸比が4.00dB以下を満たしていることが判る。
さらに、一方の放射素子12aからの逆円偏波と他方の放射素子12bからの逆円偏波との間の位相差が180°で、第1距離Aと第2距離Bとの間の差がλ/4(0.66mm)のとき、周波数61.5GHzを中心に±2.0GHzの範囲で、軸比が4.00dB以下を満たし、軸比が最も低減していることが判る。
この結果を踏まえると、第1距離Aと第2距離Bとの関係は、4.0GHzの帯域で軸比が10.00dB以下になる、λ/4≧|A−B|≧λ/5.33が望ましい。第1距離Aと第2距離Bとの関係は、4.0GHzの帯域で軸比が4.00dB以下になる、λ/4≧|A−B|≧λ/4.24がさらに望ましい。第1距離Aと第2距離Bとの関係は、4.0GHzの帯域で軸比が4.00dB以下になり最も低減できる、|A−B|=λ/4が最も望ましい。
第1距離Aは1.32mmとなっているが、第1距離Aと第2距離Bとの差が重要であり、第1距離Aの値を変えても、同様な傾向が見られた。
以下、逆円偏波の放射による正面方向以外のサイドローブ上昇について、放射パターンのシミュレーション結果に基づいて説明する。
このシミュレーションでは、前記図1〜図8に示される円偏波アレーアンテナ1と同様な構成(いわゆる千鳥配置)を想定した。詳しくは、63GHz用の円偏波アレーアンテナ1を想定した。
図17は、各放射素子12の間隔を説明するための正面図である。X方向に整列される各放射素子12の間隔D11は、3.735mmとし、Y方向に整列される各放射素子12の間隔D12は、3.973mmとし、X方向の上流からi番目の放射素子12と(i+1)番目の放射素子12とのY方向のずれD13は、0.722mmとした。
また、各放射素子12から放射される正円偏波の電界強度は、表6のようにした。表6において、横方向はX方向に対応し、縦方向はY方向に対応する。電界強度を表す各数値の配置関係は、各放射素子12の配置関係と対応する。表6の最上部に記載される1〜16の数値は、X方向の上流からの順番を示し、表6の最左部に記載される1〜16の数値は、Y方向の下流からの順番を示す。表6では、各放射素子12から放射される正円偏波の電界強度が比で表される。
図18は、図19、図21、図23〜図31を説明するための図である。前記図17をも参照して、前記仮想一平面内において円偏波アレーアンテナ1の中心を原点Oとし、原点Oから、X方向に延びる軸をX軸とし、Y方向に延びる軸をY軸とし、円偏波アレーアンテナ1の正面方向に延びる軸をZ軸とした。ここで、原点Oを始点とし、極座標(θ,φ)で表される単位ベクトルVを想定する。この単位ベクトルVは、放射方向を表す。図19、図21、図23〜図31では、単位ベクトルVの終点のX座標およびY座標と、単位ベクトルVが表す放射方向の電界強度とを関連付けている。各放射方向の電界強度は、正面方向の電界強度を基準として、デシベル表示している。
このシミュレーションでは、後述の比較例1〜4および実施例1〜7について、シミュレートした。比較例2〜4を示す表7〜表9および実施例1,2,4〜7を示す表10〜表15は、前記表1に類似するので、これらの表7〜表15の説明は省略する。
まず、周波数63GHzの場合、したがって逆円偏波が放射されず、正円偏波だけが放射される場合について、比較例1として検証を行った。図19は、この比較例1のシミュレーション結果を示す図である。図20は、比較例1のシミュレーション結果のうち、X軸およびZ軸を含む仮想一平面内の放射方向についてだけ示す図である。図20において、横軸は、仮想一平面内での放射方向を示し、縦軸は、電界強度を示す。放射方向は、正面方向を0°とし、正面方向からX方向下流側に傾斜する場合を正とし、正面方向からX方向上流側に傾斜する場合を負とする。電界強度は、正面方向の電界強度を基準として、デシベル表示している。このような比較例1では、図19に示すような放射パターンとなった。比較例1では、メインローブ以外は放射が抑制されていることが判る。
次に、周波数64GHzの場合、したがって逆円偏波が放射される場合、具体的には各放射素子12から放射される逆円偏波の電界強度が各放射素子12から放射される正円偏波の電界強度の20%である場合について、比較例2〜4および実施例1〜8として検証を行った。
まず、比較例2〜4についてそれぞれ順に説明する。
図21は、比較例2のシミュレーション結果を示す図である。図22は、比較例2のシミュレーション結果のうち、X軸およびZ軸を含む仮想一平面内の放射方向についてだけ示す図である。図22は、前記図20に類似するので、この図22の説明は省略する。比較例2では、表7に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような比較例2では、図21および図22に示すように、正面方向以外の方向、具体的にはX軸およびZ軸を含む仮想一平面内の特定の放射方向に、顕著なサイドローブが見られる。比較例2では、サイドローブレベルは、−14.1dBであった。比較例2では、各放射素子12から放射される逆円偏波によってサイドローブが上昇することが判る。
図23は、比較例3のシミュレーション結果を示す図である。比較例3では、表8に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような比較例3では、図23に示すように、正面方向以外の方向、具体的にはY軸およびZ軸を含む仮想一平面内の特定の放射方向に、顕著なサイドローブが見られる。比較例3では、サイドローブレベルは、−14.5dBであった。比較例3でも、各放射素子12から放射される逆円偏波によってサイドローブが上昇することが判る。
図24は、比較例4のシミュレーション結果を示す図である。比較例4では、表9に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような比較例4では、図24に示すように、正面方向以外の特定の放射方向に、顕著なサイドローブが見られる。比較例4では、サイドローブレベルは、−14.6dBであった。比較例4でも、各放射素子12から放射される逆円偏波によってサイドローブが上昇することが判る。
図25は、実施例1のシミュレーション結果を示す図である。実施例1では、表10に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例1では、図25に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−16.9dBであった。実施例1では、サイドローブの上昇が抑えられていることが判る。
図26は、実施例2のシミュレーション結果を示す図である。実施例2では、表11に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例2では、図26に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−19.7dBであった。実施例2では、サイドローブの上昇が抑えられていることが判る。
図27は、実施例3のシミュレーション結果を示す図である。実施例3では、前記表1に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例3では、図27に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−25.4dBであった。実施例3では、前述のユニットを維持しながらでも、サイドローブの上昇が好適に抑えられていることが判る。
図28は、実施例4のシミュレーション結果を示す図である。実施例4では、表12に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例4では、図28に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−17.6dBであった。実施例4では、サイドローブの上昇が抑えられていることが判る。
図29は、実施例5のシミュレーション結果を示す図である。実施例5では、表13に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例5では、図29に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−20.2dBであった。実施例5では、サイドローブの上昇が好適に抑えられていることが判る。
図30は、実施例6のシミュレーション結果を示す図である。実施例6では、表14に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例6では、図30に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−24.3dBであった。実施例6では、サイドローブの上昇が好適に抑えられていることが判る。
図31は、実施例7のシミュレーション結果を示す図である。実施例7では、表15に示すような位相差で、各放射素子12から逆円偏波が放射されるとした。このような実施例7では、図31に示すような放射パターンとなった。サイドローブレベルは、−25.4dBであった。実施例7では、サイドローブの上昇が好適に抑えられていることが判る。