特許文献1に記載の方法は、CCDカメラによって一度に全体の画像を取り込むようにして形状測定を行う場合には適用できる。しかし、二次元的な測定を繰り返し行うことによって全体の外形形状を測定する方法、例えば、測定対象物に対して光をスリット状に照射したり、あるいはレーザー光などを直線的に走査したりして、照射部分における位置情報から形状を測定する方法、により形状測定を行う場合には、一回の走査で基準位置を把握することが困難である。よって、特許文献1に記載の方法は、この種の形状測定法を行うものに対するキャリブレーションとしては不向きである。
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、測定対象物に対して光を直線状に照射することにより測定対象物の外形形状を測定する形状測定方法を行う場合における効率的な基準座標系に対するカメラ座標系のずれ量を取得する方法、前記方法を実現するためのずれ量取得用プログラム、ならびに斯かるずれ量取得を実行する際に必要とされるずれ量取得用基準ワーク(ずれ量取得用物体)を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、測定対象物に対して直線状に光を照射するとともに照射光の反射光を受光して、受光した反射光の座標点を算出することにより測定対象物の三次元形状を計測する形状測定器の測定対象物に対するずれ量を取得する形状測定器のずれ量取得方法であって、法線方向が一つの座標軸であるz軸を定義する第一平面部と、前記第一平面部との交線が前記z軸と直交する座標軸であるx軸を定義する第二平面部と、前記z軸に直交する平面であって前記第一平面部とは異なる平面上に交線が形成される第三平面部および第四平面部とを有し、前記z軸、前記x軸および、前記z軸および前記x軸の双方に直交する座標軸であるy軸によって基準となる座標系(基準座標系)を定義する基準ワークに対して、前記第一平面部、前記第二平面部、前記第三平面部および前記第四平面部を通過するように直線状に光を照射する照射ステップと、前記照射ステップにて基準ワークに照射した光の反射光から得られる情報により、形状測定器に定義される座標系(カメラ座標系)における、基準ワークに照射した照射点の座標点の点群データを取得する点群データ取得ステップと、前記点群データ取得ステップにて取得した点群データに基づいて、前記基準となる座標系(基準座標系)に対する前記形状測定器に定義される座標系(カメラ座標系)のずれ量を検出するずれ量検出ステップと、を含む形状測定器のずれ量取得方法とすることにある。
上記した本発明の方法によれば、基準ワークの第一平面部、第二平面部、第三平面部および第四平面部を通過するように光を直線的に基準ワークに照射することにより、それぞれの平面部に照射された光の位置に関する情報を取得することができる。ここで、基準ワークは、第一平面部、第二平面部、第三平面部および第四平面部によって、基準となる座標系を定義し得るものであるから、上記各平面部に照射された光の位置に関する情報から、基準ワークが定義する基準となる座標系に対する形状測定器に定義される座標系のずれ量を検出することができる。このようにして形状測定器のずれ量を取得することができる。
この場合、前記交線は、前記y軸に平行であるのが良い。また、前記ずれ量検出ステップは、前記点群データ取得ステップにて取得された点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第一平面部、前記第二平面部、前記第三平面部、前記第四平面部のいずれか2つ以上の平面部に照射した光の切断線を示す直線の方程式を計算する直線計算ステップと、前記直線計算ステップにて計算された2つ以上の直線の方程式に基づいて前記ずれ量を計算するずれ量計算ステップとを有するものであると良い。各平面部に照射した光の切断線から、幾何学的関係によって、上記ずれ量を導き出すことができる。なお、点群データから直線の方程式を求めるには、各平面部にて取得した点群データの座標点に基づき最小二乗法などで計算することができる。
上記ずれ量は、ずれ角度およびずれ位置を含むものである。ずれ角度は、基準となる座標系の座標軸に対する形状測定器に定義される座標系の座標軸のなす角のことであり、具体的には、基準ワークが定義するx軸、y軸およびz軸回りに、形状測定器に定義される座標系の座標軸が傾いている角度であるずれ角度θx、θyおよびθzが挙げられる。ずれ位置は、基準となる座標系の座標軸に対する形状測定器に定義される座標系の座標軸の位置ずれ量であり、具体的には、基準ワークが定義するx軸、y軸およびz軸方向への形状測定器に定義される座標系の座標軸の位置ずれ量であるずれ位置Δx、ΔyおよびΔzが挙げられる。
そして、上記ずれ角度θxを算出するに当たっては、前記直線計算ステップにおいて、前記第一平面部における照射点の点群データ、前記第三平面部における照射点の点群データおよび前記第四平面部における照射点の点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第一平面部に照射した光の切断線を示す第一直線の方程式、前記第三平面部に照射した光の切断線を示す第三直線の方程式および、前記第四平面部に照射した光の切断線を示す第四直線の方程式を計算し、前記ずれ量計算ステップにおいて、計算された前記第一直線の方程式、前記第三直線の方程式および前記第四直線の方程式に基づいて、前記ずれ角度θxを演算することにより、ずれ角度θxを算出することができる。
また、上記ずれ角度θzを算出するに当たっては、前記直線計算ステップにおいて、前記第一平面部における照射点の点群データおよび前記第二平面部における照射点の点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第一平面部に照射した光の切断線を示す第一直線の方程式および前記第二平面部に照射した光の切断線を示す第二直線の方程式を計算し、前記ずれ量計算ステップにおいて、計算された前記第一直線の方程式および前記第二直線の方程式に基づいて、前記ずれ角度θzを演算することにより、ずれ角度θzを算出することができる。
また、上記ずれ位置Δyを算出するに当たっては、前記直線計算ステップにおいて、前記第一平面部における照射点の点群データおよび前記第二平面部における照射点の点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第一平面部に照射した光の切断線を示す第一直線の方程式および前記第二平面部に照射した光の切断線を示す第二直線の方程式を計算し、前記ずれ量計算ステップにおいて、計算された前記第一直線の方程式および前記第二直線の方程式に基づいて、前記ずれ位置Δyを演算することにより、ずれ位置Δyを算出することができる。
また、上記ずれ角度θyを算出するに当たっては、前記直線計算ステップにおいて、前記第一平面部における照射点の点群データ、前記第三平面部における照射点の点群データおよび前記第四平面部における照射点の点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第一平面部に照射した光の切断線を示す第一直線の方程式、前記第三平面部に照射した光の切断線を示す第三直線の方程式および、前記第四平面部に照射した光の切断線を示す第四直線の方程式を計算し、前記ずれ量計算ステップにおいて、計算された前記第一直線の方程式、前記第三直線の方程式および前記第四直線の方程式に基づいて、前記ずれ角度θyを演算することにより、ずれ角度θyを算出することができる。
また、上記ずれ位置Δxを算出するに当たっては、前記直線計算ステップにおいて、前記第三平面部における照射点の点群データおよび前記第四平面部における照射点の点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第三平面部に照射した光の切断線を示す第三直線の方程式および前記第四平面部に照射した光の切断線を示す第四直線の方程式を計算し、ずれ量計算ステップにおいて、計算された前記第三直線の方程式および前記第四直線の方程式に基づいて、前記ずれ位置Δxを演算することにより、ずれ位置Δxを算出することができる。
また、上記ずれ位置Δzを算出するに当たっては、前記直線計算ステップにおいて、前記第三平面部における照射点の点群データおよび前記第四平面部における照射点の点群データから、前記形状測定器に定義される座標系における前記第三平面部に照射した光の切断線を示す第三直線の方程式および前記第四平面部に照射した光の切断線を示す第四直線の方程式を計算し、ずれ量計算ステップにおいて、計算された前記第三直線の方程式および前記第四直線の方程式に基づいて、前記ずれ位置Δzを演算することにより、ずれ位置Δzを算出することができる。
この場合、上記ずれ角度θx、θy、θz、ずれ位置Δx、Δy、Δzの計算をそれぞれ上記方法により逐次的に行い、全ての角度および位置におけるずれ量を算出するのがよい。このとき、各ずれ量の算出が終わった後に、算出されたずれ量を0にするように、自動または手動で形状測定器の姿勢を補正すると良い。また、前記補正した場合には、そのたびに照射ステップおよび点群データ取得ステップを行い、点群データを再取得するのが良い。このようにすれば、測定対象物に対する形状測定器の位置および傾きを精度良く補正することができる。また、ずれ位置を取得する前にずれ角度を取得して、形状測定器の傾きを補正しておくのが良い。このような順序でずれ量の取得および補正を行えば、補正することによるずれ量の変化に悪影響を及ぼすことが防止される。
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る形状測定システムの全体概略図を示す。図1に示すように、本実施形態の形状測定システムは、形状測定器10と、姿勢制御装置20を備える。形状測定器10は、その正面側に位置する物体の三次元表面形状を測定するとともに同測定した三次元表面形状を表す情報を出力するものであり、例えば、レーザー光を用いて三角測量法に従って物体の三次元表面形状を測定するものである。
形状測定器10は、方形のハウジング11によってその外郭が構成されている。このハウジング11内には、レーザー光源と、照射方向変更装置と、受光装置が収納されている。レーザー光源はレーザー光を外部に放出するものであり、誘導放出が可能であればどのような種類のレーザー光源を用いることもできるが、レーザーダイオードを用いれば小型化を図ることができる。照射方向変更装置は、レーザー光源から出射するレーザー光の出射方向を水平方向に変更するものであり、このような機能を有するものであればどのような構造でもよい。例えば、レーザー光源自体を水平方向に揺動する機構を用いることもできる。あるいは、ガルバノミラーおよびそのガルバノミラーを鉛直軸周りに揺動させる電動モータなどで照射方向変更装置を構成し、ガルバノミラーの揺動によってレーザー光の光路が水平方向に変更するように構成することもできる。受光装置は、レーザー光が測定対象物に照射されたときに測定対象物表面で散乱する散乱光を受光して電気信号を発生するものであり、CCD(電荷結合素子)などが一列に配列したラインセンサなどが用いられる。その他、ハウジング内には、受光精度を良好にするための光学装置、例えば測定対象物からの散乱光を受光装置へ結像させるための結像レンズなどが、適宜配置される。
姿勢制御装置20は、支柱ユニット21と、この支柱ユニット21の上端に取り付けられた位置調整器22と、位置調整器22の上面に配置された角度調整器23とを備えている。支柱ユニット21は、外筒211およびこの外筒211内に軸方向移動可能に挿通された内筒212を備える。また、内筒212は、外筒211内で軸周り方向に回転可能とされている。外筒211の側周にはネジ孔211aが形成されており、このネジ孔211aにはボルト211bが取り付けられている。したがって、ボルト211bを回転させてボルト211bの先端を内筒212の外周に当接することによって、外筒211内での内筒212の軸方向移動および回転を規制することができる。
位置調整器22は図に示すように直方体状に構成されているとともに、四方側面のうちの二つの側面に第一スリット221、第二スリット222がそれぞれ形成されている。また、位置調整器22には第一レバー223および第二レバー224が取り付けられていて、第一レバー223は第一スリット221を通じて位置調整器22の内部に組み込まれた図示しないリンク機構に連結され、第二レバー224は第二スリット222を通じて上記リンク機構に連結されている。また、上記リンク機構は、角度調整器23を前後左右方向に移動し得るように角度調整器23の下面に接続されている。したがって、第一レバー223を第一スリット221に沿って水平方向に移動させることによって、リンク機構に連結された角度調整器23が形状測定器10の正面に対面している測定対象物に対して左右方向に移動する。また、第二レバー224を第二スリット222に沿って水平方向に移動させることによって、角度調整器23が測定対象物に対して前後方向に移動する。
角度調整器23は、本実施形態では2枚の円板状の部材(下側円板部材231および上側円板部材232)が所定間隔を置いて重ね合わされたもので形成されている。下側円板部材231および上側円板部材232はともに同一の円板形状とされている。下側円板部材231には、周方向に等間隔で3つの有底穴231aが形成されている。この有底穴231aは、下側円板部材231の上面にて開口し、下面にて閉塞している。上側円板部材232には、周方向に等間隔で3つのネジ孔232aが貫通して形成されている。これらの有底穴231aおよびネジ孔232aは、下側円板部材231と上側円板部材232とを上下に重ね合わせた場合に各有底穴231aと各ネジ孔232aとの上下方向位置が一致する状態を採り得るように、下側円板部材231および上側円板部材232にそれぞれ形成されている。そして、両円板部材231,232が上記の状態となるように重ね合わせられている。また、上下方向に軸心が一致した有底穴231aおよびネジ孔232aにボルト233が取り付けられている。
このボルト233が回転することによって、ボルト233とネジ孔232aとの螺合状態が変化し、下側円板部材231に対する上側円板部材232の相対的な高さ位置が変更される。したがって、各有底穴231aおよびネジ孔232aに取り付けられたボルト233を独立に回転操作することによって、上側円板部材232の傾きが調整される。図に示すように上側円板部材232の上面には形状測定器10が載置されているため、各ボルト233の回転操作によって、形状測定器10の測定対象物に対する傾きを調整することができる。
測定対象物は、形状測定器10の正面に対面して配置される。本実施形態では、測定対象物は、車両に用いられるクランクシャフトなどの、軸を持った回転物である。本実施形態の形状測定システムを用いて実際にこのような測定対象物の外形形状を測定する際には、形状測定器10は測定対象物の持つ軸に沿った方向にレーザー光を直線的に照射して、測定対象物の軸を通る断面外形を測定する。これとともに測定対象物が自身の軸を中心に回転する。このように測定することにより、測定対象物の全周における断面外形を測定することができる。斯かる形状測定を行うに当たり、測定対象物の軸を水平状態で支える支持機構が必要である。本実施形態では支持機構30は所定の間隔を隔てて対面して立設された2つの長板状部材31,31から構成される。この長板状部材31の上面には、図2に示すように断面半円形状に切り欠かれた窪み部31aが形成されている。測定対象物はその軸の両端部分が2つの長板状部材31に形成された窪み部31aにそれぞれ載置されて、軸が水平となるように支持される。
上述したように、測定対象物の外形形状を測定するときには、形状測定器10から出射されるレーザー光は測定対象物の持つ軸に沿って測定対象物に直線的に照射される。このとき、レーザー光の照射方向が軸に沿った位置からずれていたり、または傾いていたりすると、精度の良い外形形状を測定することができず、適正な外形形状の評価を行うことができない。このため、実際に測定対象物の形状測定を行う前に、まず基準ワークの外形形状を測定して、測定対象物が持つ基準となる座標系(基準座標系)に対する形状測定器に定義される座標系(カメラ座標系)のずれ量を取得する必要がある。ずれ量の取得を行うときには、図1に示すような基準ワーク(ずれ量取得用物体)40を支持機構30に載置する。
基準ワーク40は、軸部41と、位置決め部42と、測定部43とを有する。軸部41は長尺状の棒形状を呈しており、両端側が支持機構30の上面に形成された窪み部31aに嵌め込まれてその位置が固定される。位置決め部42は、内部が中空の円筒状の部材を半分に割った半円筒形状に形成されており、内周にて軸部41の外周を半周だけ覆うようにして、軸部41の両端にそれぞれ取り付けられている。また、軸部41の両端に取り付けられる位置決め部42間の距離は、支持機構30を構成する2つの長板状部材31,31の対面間隔に等しくされている。したがって、軸部41の位置決め部42が取り付けられた部分を支持機構30の窪み部31aに載置することにより、図2に示すように位置決め部42の平面部分が長板状部材31の上端面に当接する。この当接によって、軸部41の軸周り方向への回転が規制される。
測定部43は、図1に示すように平板状に形成されており、形状測定器10に向き合った面以外の面はフラットに形成されているが、形状測定器10に向き合った側の面には6つの平面部が形成されている。これらの面は、図において左から第一平面部43a、第二平面部43b、第三平面部43c、第四平面部43d、第五平面部43eおよび第六平面部43fであり、形状測定器10側から見てこれらの面が水平方向に一列に並んだように配置される。図3(a)に測定部43の正面図、図3(b)に平面図、図3(c)に側面図を示す。
図3(a)において、図示左端に形成される第一平面部43aおよび、図示右端に形成される第六平面部43fは、同一平面上に形成されている。また、第一平面部43aおよび第六平面部43fは、図1に示すように基準ワーク40が支持機構30に支持された状態において、法線ベクトルn1の向きが形状測定器10に向かうような水平方向となるように、鉛直状に配置されている。ここで、法線ベクトルn1の向きが、基準ワーク40におけるz軸の向きを定義する。なお、第六平面部43fは、後述する第一直線L1を精度良く算出するために設けてあり、第一平面部43aのみで第一直線L1を精度良く算出することができるのであれば、省略してもよい。
図3(a)において第一平面部43aの右隣に形成される第二平面部43bおよび、第六平面部43fの左隣に形成される第五平面部43eは、同一平面上に形成されている。また、第二平面部43bおよび第五平面部43eは、図1に示すように、図示上端から下端にかけて、基準ワーク40が定義するz軸方向に傾斜している。本実施形態では図1に示すように、第二平面部43bおよび第五平面部43eの図示下端側が上端側よりも形状測定器10に対して突き出るように傾斜しているが、この関係は逆でも良い。
また、第一平面部43aおよび第六平面部43fが形成される平面を仮想平面Aと、第二平面部43bおよび第五平面部43eが形成される平面を仮想平面Bとしたときに、仮想平面Aと仮想平面Bは異なる平面であり、両平面A,Bの交線の方向ベクトルn2は、第一平面部43aおよび第六平面部43fの法線ベクトルn1と直交する関係にある。つまり、第二平面部43bおよび第五平面部43eは、z軸と直交する軸周りに第一平面部43aおよび第六平面部43fを所定角度φ(図3(c)参照)だけ回転させた関係にある。このため、方向ベクトルn2の向きが、上記z軸に直交するx軸の向きを定義する。このようにしてx軸およびz軸の向きが定義されるので、これらの軸に直交するy軸の向きも定義される。なお、第五平面部43eは、後述する第二直線L2を精度良く算出するために設けてあり、第二平面部43bのみで第二直線L2を精度良く算出することができるのであれば、省略してもよい。
第三平面部43cは、図3(a)において第二平面部43bの右隣に形成される面であり、図1および図3(b)に示すように、図示左端から右端にかけてz軸方向に傾斜している。また、第四平面部43dは、図3(a)において第三平面部43cの右隣に形成される面であり、第三平面部43cと同様に、図示左端から右端にかけてz軸方向に傾斜している。本実施形態では、図1に示すように、第三平面部43cの右端が左端に対して形状測定器10に向かって突き出るように傾斜しており、第四平面部43dの左端が右端に対して形状測定器10に向かって突き出るように傾斜している。したがって、第三平面部43cと第四平面部43dとの交線43gが、形状測定器10に対してz軸方向に突き出るように形成される。この交線43gは、z軸に直交する平面であり、且つ、上記仮想平面Aとは異なる平面内に形成されていれば良い。
なお、法線ベクトルn1および方向ベクトルn2は基準座標系におけるx軸、y軸およびz軸の向きを定義するが、基準座標系におけるx軸、y軸およびz軸の位置は基準座標系における座標軸原点を次のように定義することにより定義される。基準座標系における座標軸原点は、法線ベクトルn1と平行であり、図17に示される基準ワーク40の中心線lxを含む平面と交線43gとの交点を通る法線ベクトルn1に平行な直線において、前記交点からの距離が形状測定器側にZ0の距離にある点として定義される。距離Z0は、基準ワーク40の軸部41の中心線から形状測定器までの距離(正確には形容測定器に定義される座標系の座標軸原点までの距離)を設定すれば、この設定値から基準ワーク40の軸部41の半径と第一平面部43aおよび第六平面部43fが形成される平面から交線43gまでの距離を減じた値である。
本実施形態においては、第三平面部43cは、第一平面部43aおよび第六平面部43fに対してy軸周りに所定角度ψ(図3(b)参照)だけ回転した平面とされる。また、第四平面部43dは、第一平面部43aおよび第六平面部43fに対してy軸周りに所定角度ψだけ、第三平面部43cとは反対側に回転した平面である。したがって、第三平面部43cと第四平面部43dとの交線43gは、y軸に平行な直線となる。しかし、交線43gは、必ずしもy軸に平行である必要はない。
図1に示すように、形状測定器10には、コンピュータ装置51が電気的に接続されている。このコンピュータ装置51は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなり、作業者からの入力指示に従い後述するずれ量取得プログラムを実行するとともに、同ずれ量取得プログラムの実行により検出したずれ量(角度、長さ)を表示装置52に出力する。表示装置52はディスプレイまたはプリンタなどから構成され、コンピュータ装置51から入力されたずれ量をディスプレイ上に表示し、あるいは印刷する。
次に、上記のように構成した基準ワーク40を用いて、形状測定器10のずれ量を取得するときの制御について説明する。まず、作業者がコンピュータ装置51に形状測定器10のずれ量の取得を実行する指示を入力すると、コンピュータ装置51は、図4のずれ量取得プログラムを実行する。この場合において、実行するずれ量取得プログラムは、コンピュータ装置51のROM内に予め記憶されているものでも良いし、あるいは、CD−ROMやフレキシブルディスクなどの記録媒体に記録されていて、コンピュータ装置51がこれらの記録媒体に記録された情報を読み込んで実行するものであっても良い。
ずれ量取得プログラムは図4のステップS10にて開始され、ステップS11にてずれ角度θxの計算処理プログラムを実行する。ずれ角度θxは、図12に示すように、基準ワーク40が定義するy−z平面における、形状測定器10から基準ワーク40へのレーザー光の入射方向を示す線分LS1とz軸とのなす角であり、このずれ角度θxは、基準ワーク40が定義するx軸回りに形状測定器10が傾斜している角度を示す。このθxの計算処理プログラムは、図5のフローチャートに示されている。
θx計算処理プログラムは図5のステップS110にて開始され、ステップS111にてコンピュータ装置51が形状測定器10に対してレーザー光を照射するように指示する。これにより、形状測定器10が作動して、ハウジング11の内部に収納されているレーザー光源からレーザー光が出射される。また、レーザー光源から出射されたレーザー光は照射方向変更装置によってその出射方向が水平方向に沿って変化する。このため、レーザー光は基準ワーク40のx軸方向にほぼ沿って直線的に出射される。レーザー光源から出射されたレーザー光は形状測定器10に向き合っている基準ワーク40の第一平面部43a、第二平面部43b、第三平面部43c、第四平面部43d、第五平面部43eおよび第六平面部43fにそれぞれ照射される。
上記各平面部にレーザー光が照射された場合、レーザー光はその照射部分で乱反射する。この反射光が形状測定器10内の結像レンズを通過し、さらに結像レンズにより結像された反射光が受光装置に受光される。また、受光装置は、レーザー光源から基準ワーク40における照射スポットまでの距離に応じて受光位置が変化するような姿勢で形状測定器10内に配設されている。さらに、照射方向変換装置によるレーザー光の照射角度ξは、例えばガルバノミラーを駆動する電動モータの回転角度を検出または演算することなどにより取得することができる。したがって、コンピュータ装置51は、ステップS112にて、これらの距離情報および角度情報を基に、三角測量の原理によって、レーザー光源から基準ワーク40の照射スポットまでの距離lnを計算する。
続いて、コンピュータ装置51は、ステップS113にて、形状測定器10から見たx−z座標系において、各照射スポットのx−z座標点N(xn,zn)を計算する。このときに用いるx−z座標系は、形状測定器10に定義される座標系であり、具体的には照射スポットまでの距離lnを測定する際の原点位置を座標軸原点とし、レーザー光の照射角度を0°とするときのレーザー光の照射方向をz軸方向とし、このz軸に垂直でレーザー光の照射方向が変化する方向をx軸方向とし、これらz軸、x軸方向に垂直な方向をy軸方向とした座標軸によって座標データが表される座標系のうちの、x−z平面にて表される座標系である(以下、基準ワーク40が定義するx−z座標系と区別するため、形状測定器10に定義されるx−z座標系をカメラx−z座標系という)。この場合において、レーザー光は基準ワーク40をほぼ水平に走査するので、基準ワーク40の水平方向における複数の座標点N(xn,zn)が計算される。なお、座標点N(xn,zn)の計算は、上記距離lnおよび照射角度ξを基に決定することができる。例えば、距離がln、照射角度がξである照射スポット(照射ポイント)の座標点を(ln・cosξ,ln・sinξ)として決定することができる。
次いで、コンピュータ装置51は、ステップS114にて、照射スポットの座標点N(xn,zn)から3つの直線(第一直線L1,第三直線L3,第四直線L4)の方程式を計算する。ここで、ステップS113にて計算した座標点N(xn,zn)は、カメラx−z座標系において図11のように基準ワーク40の第一、第二、第三、第四、第五および第六平面部43a,43b,43c,43d,43e,43fの断面外形が走査された状態となっている。この場合において、第一平面部43aから第二平面部43bに照射スポットが切り換わるときや、第二平面部43bから第三平面部43cに照射スポットが切り換わるときには、その切り換わりのときの座標点に大きなずれが生じる。したがって、このずれ(隣接する座標点間の距離)が所定値未満である場合には同一平面部内における点群データと認識し、ずれが所定値以上である場合には同一平面部内における点群データではないと認識する。このような認識を隣接する座標点ごとに行うことによって、第一平面部43aに属する点群データG1、第二平面部43bに属する点群データG2、第三平面部43cに属する点群データG3、第四平面部43dに属する点群データG4、第五平面部43eに属する点群データG5および第六平面部43fに属する点群データG6を取得することができる。
上記のようにして点群データを各平面部に分けて取得した後に、第一平面部43aに属する点群データG1および第六平面部43fに属する点群データG6を用いて最小二乗法により第一直線L1の方程式を計算する。また、第三平面部43cに属する点群データG3を用いて最小二乗法により第三直線L3の方程式を計算する。さらに、第四平面部43dに属する点群データG4を用いて最小二乗法により第四直線L4の方程式を計算する。なお、本実施形態において、上記第一、第三および第四直線L1,L3およびL4の方程式は、それぞれ下記の式1,3,4のように表すこととする。また、第二平面部43bに属する点群データG2と第五平面部43eに属する点群データG5を用いて最小二乗法により計算される第二直線L2の方程式は、下記の式2のように表すこととする。
次いで、コンピュータ装置51は、ステップS115にて、第三直線L3と第四直線L4との交点の座標点C(x
c,z
c)を計算する。座標点Cは、第三直線L3の方程式(式3)と第四直線L4の方程式(式4)とを連立させることによって解くことができ、その解は、下記式5のようになる。
次いで、コンピュータ装置51は、ステップS116にて、座標点C(x
c,z
c)と第一直線L1との距離Sを計算する。距離Sは、点と直線との距離の公式より求められ、下記式6のようになる。
続いて、コンピュータ装置51は、ステップS117にて距離Sを用いてずれ角度θxを計算する。この場合において、ずれ角度θxは、上述したように図12におけるレーザー光の基準ワーク40への入射方向を示す線分LS1と、基準ワーク40が定義するz軸とのなす角である。また、上記交点の座標点Cは、図において線分LS1と交線43gとの交点の座標点であり、距離Sは、線分LS1における上記座標点Cから第一平面部43aおよび第六平面部43fが形成される平面までの距離を示す。交線43gから第一平面部43aおよび第六平面部43fが形成される平面までの最短距離は、基準ワーク40から測定することができるから、この距離(最短距離)をmとすると、ずれ角度θxの正弦は距離Sと距離mの比で表すことができ、この関係を利用してずれ角度θxを下記式7のようにして計算することができる。
このようにしてずれ角度θxを計算した後に、コンピュータ装置51はステップS118にてこのθx計算処理プログラムの実行を終了する。求められたずれ角度θxは、表示装置52に表示される。作業者は表示されたずれ角度θxが0になるように、角度調整器23に取り付けられたボルト233を回転させて、形状測定器10の傾きを調整する。これによりずれ角度θxの調整が行われる。なお、上記式7は、mならびに第一、第三および第四直線L1,L3およびL4の方程式から直接計算することができるので、各直線の方程式が決定された後に、これらの係数などを用いて式7によりずれ角度θxを直接計算すれば、上記式5および式6の計算を省略することもできる。このように、ずれ角度θxは、第一平面部43aおよび第六平面部43fにおけるレーザー光の切断線である第一直線L1の方程式、第三平面部43cにおけるレーザー光の切断線である第三直線L3の方程式、および、第四平面部43dにおけるレーザー光の切断線である第四直線L4の方程式に基づいて求めることができる。
なお、上記式7において距離Sおよび距離mが正の値しかとらないためθxは常に正の値となり、レーザー光の基準ワーク40への入射方向が基準ワーク40が定義するz軸から上側にθxずれているのか下側にθxずれているのか、計算されたずれ角度θxでは判別することができない。したがって、作業者はずれ角度θxの調整を繰り返しながらθx計算処理プログラムを実行し、ずれ角度θxのずれている方向を把握する必要がある。
θx計算処理プログラムの実行が終了した後は、コンピュータ装置51は、ステップS12にてθz計算処理プログラムを実行する。ずれ角度θzは、図14に示すように、基準ワーク40が定義するx−y平面における、形状測定器10から基準ワーク40へのレーザー光による切断線を示す線分LS2とx軸とのなす角であり、このずれ角度θzは、基準ワーク40が定義するz軸回りに形状測定器10が傾斜している角度を示す。ずれ角度θzの計算処理プログラムは、図6のフローチャートに示されている。このθz計算処理プログラムは図6のステップS120にて開始され、ステップS121にて形状測定器10から基準ワーク40にレーザー光が照射される。次に、ステップS122にて、三角測量の原理によって、レーザー光源から基準ワーク40の照射スポットまでの距離lnを計算する。続いて、ステップS123にて、カメラx−z座標系における照射スポットのx−z座標点N(xn,zn)を計算し、ステップS124にて、第一平面部43aに属する点群データおよび第六平面部43fに属する点群データに基づいて第一直線L1を計算し、第二平面部43bに属する点群データおよび第五平面部43eに属する点群データに基づいて第二直線L2を計算する。第一直線L1,第二直線L2は、上記式1,2のように表すことができる。
次に、コンピュータ装置51は、ステップS125にて、第一直線L1と第二直線L2とのなす角θ
L1-L2を計算する。図13に示すように、角度θ
L1-L2は、カメラx−z座標系において第一直線L1とx軸とのなす角をθ
L1とし、第二直線L2とx軸とのなす角をθ
L2としたときに、角度θ
L1と角度θ
L2との差の角度θ
L1−θ
L2に等しい。したがって、θ
L1-L2は、三角関数の加法定理によって、下記式8のように計算される。
ここで、θ
L1の正接tanθ
L1は第一直線L1の傾き(−a
1/b
1)に等しく、θ
L2の正接tanθ
L2は第二直線L2の傾き(−a
2/b
2)に等しいので、上記式8は第一直線L1および第二直線L2の方程式から計算することができる。なお、θzが0でない場合は、図14に示すようにレーザー光が基準ワーク40に対して斜めに照射していることになるので、第二平面部43bおよび第五平面部43eにおける照射スポットのz軸方向位置がx軸方向に沿って変化し、第一および第六平面部43aおよび43fとの相対距離が変化する。このため第二直線L2が第一直線L1に交差する。
続いて、コンピュータ装置は、ステップS126にて、下記式9の計算の実行によりθzを計算する。
ここで、nは、基準ワーク40のy軸方向長さ、pは、第二平面部43bおよび第五平面部のz軸方向への変化量である(図14参照)。nおよびpは、基準ワーク40から測定することができる。上記式9は、以下のように導出される。
まず、θzが0ではなく、図14に示すように基準ワーク40に対して斜めに傾いてレーザー光が照射されている場合は、第二平面部43bの図示左端の照射スポットHのy軸に沿った高さTHは、第五平面部43eの図示右端の照射スポットJのy軸に沿った高さTJとは異なる。両高さの差をΔT(=TH−TJ)とする。また、第二平面部43bおよび第五平面部43eは、z軸方向に傾いて形成されているために、y軸に沿った高さ位置が異なればz軸に沿った奥行き長さ(第一平面43aおよび第六平面43fが形成される平面までの距離)も異なる。よって、y−z平面から基準ワーク40を見た拡大図である図15に示すように、照射スポットHにおける奥行き長さDHと照射スポットJにおける奥行き長さDJも異なる。両奥行き長さの差をΔDとする。
この場合、レーザー光が、基準ワーク40上を照射スポットHから照射スポットJまで(このHからJまでレーザー光が進んだときの距離をq’とする)進む間に、奥行き長さがΔDだけ変化したということであるので、この変化割合は第一直線L1と第二直線L2との傾きの差、すなわちθ
L1-L2の正接で表される。したがって、下記式10が成立する。
ここで、図14に示すように、第二平面部43bから第五平面部43eまでのx軸方向長さをqとすると、q’はq/cosθzで表されるが、近似的にcosθz=1とすると、上記式10は式11のようになる。
また、相似の関係から、ΔDとΔTについて、式12の関係が成立する。
また、θzの正接tanθzは、図14から明らかなように下記式13のように表すことができる。
したがって、式11を式12に代入してΔDを消去し、さらにその式を式13に代入してΔTを消去することにより、上記式9が導かれる。
このようにしてずれ角度θzを計算した後に、コンピュータ装置51はステップS127にてこのθz計算処理プログラムの実行を終了する。求められたずれ角度θzは、表示装置52に表示される。作業者は表示されたずれ角度θzが0になるように角度調整器23の各ボルト233を回転させて、基準ワーク40に対する形状測定器10の傾きを調整する。これによりずれ角度θzの調整が行われる。なお、上記式9中のtanθL1-L2は、第一直線L1および第二直線L2の方程式から直接求めることもできる。この場合は、上記式8の計算を省略することができる。このように、ずれ角度θzは、第一平面部43aおよび第六平面部43fにおけるレーザー光の切断線である第一直線L1の方程式および、第二平面部43bにおけるレーザー光の切断線である第二直線L2の方程式に基づいて求めることができる。
θz計算処理プログラムの実行が終了した後は、コンピュータ装置51は、ステップS13にてΔy計算処理プログラムを実行する。ずれ位置Δyは、図17に示すように、基準ワーク40のx−y平面におけるx軸方向に沿った中心線lxと、基準ワーク40に照射されるレーザー光の切断線を示す線分LS2とのずれ量であり、このずれ位置Δyは、基準ワーク40に対して形状測定器10がy軸方向にずれている量を示す。このΔy計算処理プログラムは図7のステップS130にて開始され、ステップS131にて形状測定器10から基準ワーク40に向けてレーザー光が照射される。次に、ステップS132にて、三角測量の原理によって、レーザー光源から基準ワーク40の照射スポットまでの距離lnを計算する。続いて、ステップS133にて、カメラx−z座標系における照射スポットのx−z座標点N(xn,zn)を計算し、ステップS134にて第一直線L1,第二直線L2の方程式を計算する。第一直線L1、第二直線L2は、上記式1,2のように表すことができる。
次に、コンピュータ装置51は、ステップS135にて、第一直線L1と第二直線L2との距離tを計算する。ここで、上記θz計算プログラムにおいてθzが補正されており、第一直線L1と第二直線L2とは平行な関係にあるものとする。距離tは、下記式14の計算を実行することにより求めることができる。
続いて、コンピュータ装置51は、ステップS136にて、下記式15の計算の実行によりずれ位置Δyを計算する。
上記式15は、以下のように導出される。まず、図17に示すように、距離tは、y−z平面における、第二平面部43bおよび第五平面部43e上へのレーザー光の照射点Kから、第一平面部43aおよび第六平面部43fが形成される平面までの距離である。一方、Δyは、y−z平面における基準ワーク40の中心線lxが第二平面部43bおよび第五平面部43eを通過する点Lと、上記点Kとの間の距離のy軸方向成分である。したがって、相似の関係から、n:p=(n/2−Δy):tとなる。この関係を変形することにより、上記式15が導かれる。
このようにしてずれ位置Δyを計算した後に、コンピュータ装置51はステップS137にてこのΔy計算処理プログラムの実行を終了する。求められたずれ位置Δyは、表示装置52に表示される。作業者は表示されたずれ位置Δyが0になるように、支柱ユニット21の内筒212を軸方向に移動して、支柱ユニット21の高さを調整する。これによりずれ位置Δyの調整が行われる。なお、ずれ位置Δyは第一直線L1および第二直線L2の方程式から直接計算することもできる、この場合は、上記式14の計算を省略することができる。このように、ずれ位置Δyは、第一平面部43aおよび第六平面部43fにおけるレーザー光の切断線である第一直線L1の方程式および、第二平面部43bにおけるレーザー光の切断線である第二直線L2の方程式に基づいて求めることができる。
Δy計算処理プログラムの実行が終了した後は、コンピュータ装置51は、ステップS15にてθy計算処理プログラムを実行する。ずれ角度θyは、図19に示すように、基準ワーク40のx−z平面における、形状測定器10から基準ワーク40の交線43gへレーザー光が入射するときのレーザー光の入射方向を示す線分LS3と、z軸とのなす角であり、このずれ角度θyは、基準ワーク40が定義するy軸回りに形状測定器10が傾斜している角度を示す。このθy計算処理プログラムは図8のステップS140にて開始され、ステップS141にて形状測定器10から基準ワーク40にレーザー光が照射され、ステップS142にて三角測量の原理によって、レーザー光源から基準ワーク40の照射スポットまでの距離lnを計算し、ステップS143にてカメラx−z座標系における照射スポットのx−z座標点N(xn,zn)を計算し、ステップS144にて第一直線L1,第三直線L3および第四直線L4の方程式を計算する。第一直線L1,第三直線L3,第四直線L4は、上記式1,3,4のように表すことができる。その後、ステップS145にて第三直線L3と第四直線L4との交点C(xc,zc)を計算する。交点Cは、上記式5のように表すことができる。
次に、コンピュータ装置51は、ステップS146にて、交点Cを通り、第一直線L1に垂直な第五直線L5を計算する。第五直線L5は、第一直線L1と直交し、また交点Cを通ることにより、下記式16のように表すことができる。
続いて、コンピュータ装置51は、ステップS147にて、第五直線L5と第一直線L1との交点の座標点Q(x
q,y
q)を計算する。座標点Q(x
q,y
q)は、下記式17の計算の実行により求められる。
上記式17は、上記式16によって表される第五直線L5および上記式1によって表される第一直線L1が共に点Q(x
q,y
q)を通ることに基づいて導かれる。
点Q(x
q,y
q)を求めた後に、コンピュータ装置51はステップS148にて下記式18の実行によりθyを計算する。
上記式18は、以下のようにして導かれる。第一直線L1,第三直線L3,第四直線L4および第五直線L5がカメラx−z座標系において図18に示す状態のように計測された場合、第三直線L3と第四直線L4との交点Cと、第五直線L5と第一直線L1との交点Qとを結ぶ線分CQと、カメラx−z座標系におけるz軸とのなす角がずれ角度θyである。この場合、ずれ角度θyの正弦は、線分CQの長さと、座標点Cと座標点Qとのx軸方向成分の差x
c-x
qとの比によって表される。ここで、線分CQの長さは、基準ワーク40の交線43gから第一平面部43aおよび第六平面部43fが形成される平面までの距離mであり、基準ワーク40から測定することができる。したがって、ずれ角度θyの正弦sinθyは、(x
c−x
q)/mと表すことができる。式18は、この関係に基づき導かれる。
ステップS148にてずれ角度θyを計算した後は、コンピュータ装置51はステップS149にてθy計算処理プログラムの実行を終了する。求められたずれ角度θyは、表示装置52に表示される。作業者は表示されたずれ角度θyが0になるように支柱ユニット21の内筒212を回転する。これによりずれ角度θyの調整が行われる。なお、上記式18中のxc-xqは、第一直線L1、第三直線L3および第四直線L4の方程式から直接求めることもできる。したがって、xc-xqをこれらの第一直線L1,第三直線L3および第四直線L4の方程式から直接計算し、それを基に第五直線L5および交点Qを求めることなしにθyを計算することができる。この場合は、上記式16および上記式17の計算を省略することができる。このように、ずれ角度θyは、第一平面部43aおよび第六平面部43fにおけるレーザー光の切断線である第一直線L1の方程式および、第三平面部43cにおけるレーザー光の切断線である第三直線L3の方程式および、第四平面部43dにおけるレーザー光の切断線である第四直線L4の方程式に基づいて求めることができる。
θy計算処理プログラムの実行が終了した後は、コンピュータ装置51は、ステップS16にてΔx計算処理プログラムを実行する。ずれ位置Δxは、図21に示すように、基準ワーク40のx−z平面における、基準ワーク40の中心線lzからの形状測定器10のx軸方向のずれ量である。Δx計算処理プログラムは図9のステップS150にて開始され、ステップS151にて形状測定器10から基準ワーク40にレーザー光が照射される。次に、ステップS152にて、三角測量の原理によって、レーザー光源から基準ワーク40の照射スポットまでの距離lnを計算する。続いて、ステップS153にて、カメラx−z座標系における照射スポットのx−z座標点N(xn,zn)を計算し、ステップS154にて第三直線L3および第四直線L4の方程式を計算する。第三直線L3,第四直線L4は、上記式3,4のように表すことができる。その後、ステップS155にて第三直線L3と第四直線L4との交点C(xc,zc)の座標点を計算する。交点Cの座標点は、上記式5のように計算することができる。
次に、コンピュータ装置51は、ステップS156にて、ずれ位置Δxを計算する。この場合において、交点Cにおけるx軸方向成分が0であるときが形状測定器10のx軸方向の基準位置とする場合には、ステップS155にて計算した交点Cのx軸方向成分xcがそのままx軸方向のずれ量を示す。したがって、図20に示すようなカメラx−z座標系において取得したxcをずれ位置Δxとする。このようにしてずれ位置Δxを計算した後に、コンピュータ装置51はステップS157にてこのΔx計算処理プログラムの実行を終了する。求められたずれ位置Δxは、表示装置52に表示される。作業者は表示されたずれ位置Δxが0または所定値になるように、位置調整器22の第一レバー223を調整する。これによりずれ位置Δxの調整が行われる。このように、ずれ位置Δxは、第三平面部43cにおけるレーザー光の切断線である第三直線L3の方程式および、第四平面部43dにおけるレーザー光の切断線である第四直線L4の方程式に基づいて求めることができる。
Δx計算処理プログラムの実行が終了した後は、コンピュータ装置51は、ステップS17にてΔz計算処理プログラムを実行する。ずれ位置Δzは、図21に示すように、基準ワーク40のx−z平面における、交線43gから形状測定器10までのz軸方向距離zcと、基準となる距離z0との差である。Δz計算処理プログラムは図10のステップS160にて開始され、ステップS161にて形状測定器10から基準ワーク40にレーザー光が照射される。次に、ステップS162にて、三角測量の原理によって、レーザー光源から基準ワーク40の照射スポットまでの距離lnを計算する。続いて、ステップS163にて、カメラx−z座標系における照射スポットのx−z座標点N(xn,zn)を計算し、ステップS164にて第三直線L3および第四直線L4の方程式を計算する。第三直線L3,第四直線L4は、上記式3,4のように表すことができる。その後、ステップS165にて第三直線L3と第四直線L4との交点C(xc,zc)の座標点を計算する。交点Cの座標点は、上記式5のように計算することができる。
次に、コンピュータ装置51は、ステップS166にて、Δzを計算する。この場合において、図20に示すように、交点Cのz軸方向成分zcは、基準ワーク40の交線43gから形状測定器10までのz軸方向の距離である。よって、この距離zcと基準となるz軸方向の距離z0との差がそのままずれ位置Δzとなる。したがって、ずれ位置Δzは、z0-zcの計算の実行により求めることができる。このようにずれ位置Δzを計算した後に、コンピュータ装置51はステップS167にてこのΔz計算処理プログラムの実行を終了する。求められたずれ位置Δzは、表示装置52に表示される。作業者は表示されたずれ位置Δzが0になるように位置調整器22の第二レバー224を調整する。これによりずれ位置Δzの調整が行われる。このように、ずれ位置Δzは、第三平面部43cにおけるレーザー光の切断線である第三直線L3の方程式および、第四平面部43dにおけるレーザー光の切断線である第四直線L4の方程式に基づいて求めることができる。
以上のように、本実施形態では、θx,θy,θz,Δx,Δy,Δzを検出し、全てのずれ角度およびずれ位置を補正することによって、基準ワーク40が定義する基準座標系に形状測定器10のカメラ座標系を合わせることができる。したがって、極めて精度の高いワークの形状測定を行うことができる。
なお、上記実施形態においては、ずれ角度θx、θy、θzおよびずれ位置Δx、Δy、Δzを1つずつ計算して表示し、作業者は表示されたずれ角度またはずれ位置に基づいて、形状測定器の角度および位置を調整した例を示したが、1つのずれ角度またはずれ位置を調整することにより、それ以外のずれ角度またはずれ位置が変化してしまうことが考えられる。この場合には、基準ワーク40にレーザー光を照射し、カメラx−z座標系における照射ポイントのx−z座標点N(xn,zn)を計算した後、上記の計算方法によりずれ角度θx、θy、θzおよびずれ位置Δx、Δy、Δzをすべて計算して表示してもよい。作業者は先に0になるように調整したずれ角度またはずれ位置が再び0からずれた場合は先の調整作業を再度行うようにすればよい。
以上、本発明の実施の形態につき説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、基準ワーク40の六つの平面部を設けた構成を示したが、第五平面部43eおよび第六平面部43fは省略することができる。また、第一平面部43aと第二平面部43bの位置、あるいは、第五平面部43eと第六平面部43fの位置を入れ替えた構成としても良い。また、第一平面部43aおよび第六平面部43fに対する第二平面部43bおよび第五平面部43eの幾何学的関係は、上述したように第一平面部43aおよび第六平面部43fを含む仮想平面Aに対して、第二平面部43bおよび第五平面部43eを含む仮想平面Bが交わっており、その交線の方向ベクトルn2が仮想平面Aの法線ベクトルでもあるベクトルn1に対して直交する関係にあればよく、このような関係を満たしている限り、第二平面部43bおよび第五平面部43eは第一平面部43aおよび第六平面部43fとは離間した位置に形成されていてもよいし、これらの平面部が基準ワーク40内で交差していてもよい。さらに、交線43gは、法線ベクトルn1に直交する平面であり、且つ仮想平面Aとは異なる位置にある平面内であればどのようなものでもよく(ただし、方向ベクトルn2と平行である場合を除く)、図1に示すようにy軸に平行である必要はない。また、上記実施形態においてはずれ角度θx、θy、θzおよびずれ位置Δx、Δy、Δzをすべて調整したが、重要でないずれ位置の調整は省略してもよい。例えばずれ位置Δxやずれ位置Δzが0より少々ずれている場合であれば測定対象物の形状測定にはほとんど影響しない場合がある。このような場合には、ずれ角度θx、θy、θzおよびずれ位置Δyの調整を行い、ずれ位置ΔxおよびΔzの調整は省略してもよい。
10…形状測定器、20…姿勢制御装置、21…支柱ユニット、22…位置調整器、23…角度調整器、40…基準ワーク、43…測定部、43a…第一平面部、43b…第二平面部、43c…第三平面部、43d…第四平面部、43e…第五平面部、43f…第六平面部、43g…交線、51…コンピュータ装置、52…表示装置、L1…第一直線、L2…第二直線、L3…第三直線、L4…第四直線、L5…第五直線、Δx,Δy,Δz…ずれ位置、θx,θy,θz…ずれ角度