以下、本発明による燃料電池システム(本発明による流体供給量推定装置を適用した燃料電池システム)の一実施形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは燃料電池10とこの燃料電池10に必要な水素ガスを含む燃料ガスである改質ガスを生成する改質器20を備えている。
燃料電池10は、燃料極11と酸化剤極である空気極12と両極11,12間に介在された電解質13を備えており、燃料極11に供給された改質ガスおよび空気極12に供給された酸化剤ガスである空気(カソードエア)を用いて発電するものである。なお、空気の代わりに空気の酸素富化したガスを供給するようにしてもよい。また、燃料電池10内には燃料電池10の温度を検出する温度センサ10aが設けられている。温度センサ10aの検出信号は制御装置30に出力されるようになっている。
改質器20は、改質用燃料を水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを燃料電池10に供給するものであり、改質部21、冷却部22、一酸化炭素シフト反応部(以下、COシフト部という)23、一酸化炭素選択酸化反応部(以下、CO選択酸化部という)24、燃焼部25、および蒸発部26から構成されている。改質用燃料としては天然ガス、LPGなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
改質部21は、改質用燃料に水蒸気が混合された改質用原料である混合ガスから改質ガスを生成して導出するものである。この改質部21は有底円筒状に形成されており、環状筒部内に軸線に沿って延在する環状の折り返し流路21aを備えている。
改質部21の折り返し流路21a内には、触媒21b(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、冷却部22から導入された改質用燃料と水蒸気供給管51から導入された水蒸気との混合ガスが触媒21bによって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)は冷却部(熱交換部)22に導出されるようになっている。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。
冷却部22は、改質部21から導出された改質ガスと、改質用燃料と改質水(水蒸気)との混合ガスとの間で熱交換が行われる熱交換器(熱交換部)であって、高温である改質ガスを低温である混合ガスによって降温してCOシフト部23に導出するとともに混合ガスを改質ガスによって昇温して改質部21に導出するようになっている。
具体的には、冷却部22には燃料供給源Sf(例えば都市ガス管)に接続された燃料供給管41が接続されている。燃料供給管41には、上流から順番に第1燃料バルブ42、改質用燃料ポンプ43、脱硫器44および第2燃料バルブ45が設けられている。第1および第2燃料バルブ42,45は制御装置30の指令によって燃料供給管41を開閉するものである。改質用燃料ポンプ43は、制御装置30の指令に応じて改質部21に改質用燃料を供給し、その供給量を調整するものである。脱硫器44は改質用燃料中の硫黄分(例えば、硫黄化合物)を除去するものである。
改質用燃料ポンプ43は、ポンプの回転数(駆動量)を検出する駆動量検出手段である回転数センサ43aを備えている。回転数センサ43aが検出した検出信号は制御装置30に出力されるようになっている。改質用燃料ポンプ43の吐出口には、圧力センサ43bおよび温度センサ43cが設けられている。圧力センサ43bは、改質用燃料ポンプ43の出口側(吐出側)の流体(空気)の圧力を検出する吐出圧力検出手段であり、その検出信号を制御装置30に出力するようになっている。温度センサ43bは、改質用燃料ポンプ43の出口側(吐出側)の流体(空気)の温度を検出する吐出温度検出手段であり、その検出信号を制御装置30に出力するようになっている。
また、燃料供給管41の第2燃料バルブ45と冷却部22との間には蒸発部26に接続された水蒸気供給管51が接続されている。蒸発部26から供給された水蒸気が改質用燃料に混合され、その混合ガスが冷却部22を通って改質部21に供給されている。
COシフト部23は、改質部21から冷却部22を通って供給された改質ガス(燃料ガス)中の一酸化炭素を低減するものすなわち一酸化炭素低減部である。供給された改質ガスに含まれる一酸化炭素が、COシフト部23内に充填された触媒23a(例えば、Cu−Zn系の触媒)により水蒸気と反応して水素ガスと二酸化炭素ガスとに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これにより、改質ガスは前述した一酸化炭素シフト反応によって一酸化炭素濃度が低減されて導出される。
CO選択酸化部24は、COシフト部23から供給された改質ガス中の一酸化炭素をさらに低減して燃料電池10に供給するものでありすなわち一酸化炭素低減部である。CO選択酸化部24は、円筒状に形成されて、蒸発部26の外周壁を覆って当接して設けられている。CO選択酸化部24の内部には、触媒24a(例えば、RuまたはPt系の触媒)が充填されている。
このCO選択酸化部24の側壁面下部および側壁面上部には、COシフト部23に接続された接続管93および燃料電池10の燃料極11に接続された改質ガス供給管71がそれぞれ接続されている。接続管93には、酸化用空気を供給する酸化用空気供給管61が接続されている。これにより、CO選択酸化部24には、COシフト部23からの改質ガスと酸化用空気とが導入されるようになっている。なお、酸化用空気供給管61には、上流から順番に酸化用空気ブロア63および酸化用空気バルブ64が設けられている。酸化用空気ブロア63は酸化用空気を供給しその供給量を調整するものである。酸化用空気バルブ64は酸化用空気供給管61を開閉するものである。
したがって、CO選択酸化部24内に導入された改質ガス中の一酸化炭素は、酸化用空気中の酸素と反応(酸化)して二酸化炭素になる。この反応は発熱反応であり、触媒24aによって促進される。これにより、改質ガスは酸化反応によって一酸化炭素濃度がさらに低減されて(10ppm以下)導出され、燃料電池10の燃料極11に供給されるようになっている。
また、CO選択酸化部24内には触媒24aの温度を検出する温度センサ24bが設けられている。温度センサ24bの検出信号は制御装置30に出力されるようになっている。
燃焼部25は、燃焼用燃料を燃焼用酸化剤ガスにより燃焼してその燃焼ガスによって改質部21を加熱するもの、すなわち改質部21を加熱して水蒸気改質反応に必要な熱を供給するための燃焼ガスを生成するものであり、改質部21の内周壁内に下端部が挿入されて空間をおいて配置されている。
燃焼部25には、改質用燃料ポンプ43の上流にて燃料供給管41から分岐した燃焼用燃料供給管47が接続されるとともに、燃料極11の導出口に一端が接続されているオフガス供給管72の他端が接続されている。燃料電池10の起動当初(暖機モード)、燃焼用燃料が燃焼部25に供給され、燃料電池10の起動運転中(暖機モード)、CO選択酸化部24からの改質ガスが燃料電池10を経由しないで燃焼部25に供給され、燃料電池10の定常運転中(発電モード)、燃料電池10から排出されるアノードオフガス(燃料極11にて未使用な水素を含んだ改質ガス)が燃焼部25に供給されるようになっている。また、改質ガスやオフガスの不足分を燃焼用燃料で補っている。
また、燃焼部25には、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給管65が接続されており、燃焼用燃料、アノードオフガス、改質ガスなどの可燃ガス、および可燃ガスを燃焼(酸化)させるための燃焼用空気などの酸化剤ガスが供給されるようになっている。
なお、燃焼用燃料供給管47には燃焼用燃料ポンプ48が設けられている。燃焼用燃料ポンプ48は燃焼用燃料を供給しその供給量を調整するものである。また、燃焼用空気供給管65には燃焼用空気ブロア66が設けられている。燃焼用空気ブロア66は燃焼用空気を供給しその供給量を調整するものである。
燃焼用空気ブロア66は、ブロアの回転数(駆動量)を検出する駆動量検出手段である回転数センサ66aを備えている。回転数センサ66aが検出した検出信号は制御装置30に出力されるようになっている。燃焼用空気ブロア66の吐出口には、圧力センサ66bおよび温度センサ66cが設けられている。圧力センサ66bは、燃焼用空気ブロア66の出口側(吐出側)の流体(空気)の圧力を検出する吐出圧力検出手段であり、その検出信号を制御装置30に出力するようになっている。温度センサ66bは、燃焼用空気ブロア66の出口側(吐出側)の流体(空気)の温度を検出する吐出温度検出手段であり、その検出信号を制御装置30に出力するようになっている。
上述した燃焼部25は着火されると、供給されている燃焼用燃料、改質ガスまたはアノードオフガスが燃焼用空気によって燃焼されて高温の燃焼ガスが発生する。燃焼ガスは、燃焼ガス流路27を流通し、排気管91を通って燃焼排ガスとして排気される。これにより、燃焼ガスは改質部21および蒸発部26を加熱する。燃焼ガス流路27は、改質部21の内周壁に沿って当接して配設され、折り返されて改質部21の外周壁と断熱部28との間に当接して配設され、折り返されて断熱部28と蒸発部26の間に当接して配設された流路である。
蒸発部26は、改質水を加熱して沸騰させて水蒸気を生成して冷却部22を介して改質部21に供給するものである。蒸発部26は、円筒状に形成されて燃焼ガス流路27の最も外側の流路の外周壁を覆って当接して設けられている。
この蒸発部26の下部(例えば側壁面下部、底面)には改質水タンクSwに接続された給水管52が接続されている。蒸発部26の上部(例えば側壁面上部)には水蒸気供給管51が接続されている。改質水タンクSwから導入された改質水は、蒸発部26内を流通する途中にて燃焼ガスからの熱およびCO選択酸化部24からの熱によって加熱されて、水蒸気となって水蒸気供給管51および冷却部22を介して改質部22へ導出するようになっている。なお、給水管52には、上流から順番に改質水ポンプ53および改質水バルブ54が設けられている。改質水ポンプ53は、蒸発部26に改質水を供給するとともにその改質水供給量を調整するものである。改質水バルブ54は給水管52を開閉するものである。
燃料電池10の燃料極11の導入口には改質ガス供給管71を介してCO選択酸化部24が接続されるとともに、燃料極11の導出口にはオフガス供給管72を介して燃焼部25が接続されている。バイパス管73は燃料電池10をバイパスして改質ガス供給管71およびオフガス供給管72を直結するものである。改質ガス供給管71にはバイパス管73との分岐点と燃料電池10との間に第1改質ガスバルブ74が設けられている。オフガス供給管72にはバイパス管73との合流点と燃料電池10との間にオフガスバルブ75が設けられている。バイパス管73には第2改質ガスバルブ76が設けられている。
暖機モード(起動運転中)には、CO選択酸化部24から一酸化炭素濃度の高い改質ガスを燃料電池10に供給するのを回避するため、第1改質ガスバルブ74およびオフガスバルブ75を閉じ第2改質ガスバルブ76を開き、発電モード(定常運転中)には、CO選択酸化部24からの改質ガスを燃料電池10に供給するため、第1改質ガスバルブ74およびオフガスバルブ75を開き第2改質ガスバルブ76を閉じている。
暖機モードは改質器20を暖機するモードであり、すなわち生成する改質ガス中の一酸化炭素濃度が燃料電池10の触媒13を被毒しない低濃度となるまでの運転モード(運転状況)である。発電モードは改質器20の暖機が完了し燃料電池10が発電する運転モード(運転状況)である。
第1流路L1は、上述したCO選択酸化部24から燃焼部25までの改質ガスまたはオフガスの流路のことである。この第1流路L1は、暖機モードでは改質ガスが通る改質ガス供給管71、バイパス管73,オフガス供給管72から構成される経路であり、また発電モードでは改質ガスが改質ガス供給管71を通り燃料電池10の燃料極11を通過し、燃料電池10にて改質ガス中の水素が消費されて未使用の水素を含むオフガスが通るオフガス供給管72から構成される経路である。このように第1流路L1の経路の形態は、運転状況(暖機モードか或いは発電モード)に応じて変更されるものである。
また、バイパス管73と燃料電池10の燃料極11の流路を比較した場合,燃料極11の流路は例えば幅広で薄いセパレータの表面に折り返し形成された幅の狭い浅い溝であるので(一般的にバイパス管73の内径より小径であるので)、流路断面は燃料極11の流路の方が小さく、また流路長は燃料極11経由の流路の方が長い。すなわち、第1流路L1は、流路断面または流路長が運転状況(暖機モードか或いは発電モード)に応じて変更されるものである。
また、燃料電池10の空気極12の導入口には、カソード用空気を供給するカソード用空気供給管67が接続されるとともに、空気極12の導出口には、排気管92が接続されている。空気極12に空気が供給され、オフガスが排気されるようになっている。なお、カソード用空気供給管67には上流から順にカソード用空気ブロア68およびカソード用空気バルブ69が設けられている。カソード用空気ブロア68はカソード用空気を供給しその供給量を調整するものである。カソード用空気バルブ69はカソード用空気供給管67を開閉するものである。
上述した改質用燃料ポンプ43、燃焼用燃料ポンプ48、酸化用空気ブロア63、燃焼用空気ブロア66は、改質器20に燃料や空気である流体を送出(圧送)する流体送出装置であり、また燃料や空気を高圧にして出力するという意味では圧縮機でもある。
また、燃料電池システムは制御装置30を備えており、この制御装置30には、上述した各温度センサ10a,24b,43c,66c、回転数センサ43a,66a、圧力センサ43b,66b、各ポンプ43,48,53、各ブロア63,66,68、各バルブ42,45,54,64,69,74,75,76、および燃焼部25が接続されている(図2参照)。なお、制御装置30が各ポンプ43,48,53、各ブロア63,66,68、に接続されているとは、それらの各駆動源(例えばモータ)に接続されているということである。
制御装置30はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、各温度センサ10a,24b,43c(66c)、回転数センサ43a(66a)、圧力センサ43b(66b)からの入力信号に基づいて、各ポンプ43,48,53、各ブロア63,66,68、各バルブ42,45,54,64,69,74,75,76、および燃焼部25を制御している。これにより、燃料電池システムの起動運転(暖機モード)および発電運転(発電モード)を実施するとともに、所望の出力電流(負荷装置で消費される電流・電力)となるように改質用燃料、燃焼用燃料、燃焼用空気、改質水およびカソード用空気の各供給量を制御している。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
制御装置30は、流体送出装置である例えば改質用燃料ポンプ43(または燃焼用空気ブロア66)から供給される流量(送出量)を推定する流体供給量推定装置であり、図3に示すように、制御ロジック部31と流量推定ロジック部(推定送出量導出手段)32とを備えている。制御ロジック部31は、設定流量rfluxと流量推定ロジック部32からの推定流量estfluxとを入力してそれらに基づいて改質用燃料ポンプ43のモータ43dのデューティ比dutyを演算し、その演算結果をモータ43dのドライバ回路43eへ出力するものである。これにより、モータ43dは演算結果に基づいたデューティ比dutyでPWM制御される(パルスの大きさは一定で,パルス幅をデューティ比に応じて変化させて制御する)。設定流量rfluxが目標送出量であり、推定流量estfluxが推定送出量であり、デューティ比dutyが操作量である。設定流量rfluxは、燃料電池システムの電力供給先に設置された負荷装置で消費される電流・電力と、予め記憶されている燃料供給マップとに基づいて導出されるものである。燃料供給マップは、負荷装置で消費される電流・電力と改質用燃料、燃焼用燃料、燃焼用空気、改質水およびカソード用空気の各供給量(供給指示値)との相関関係を示すものである。
流量推定ロジック部32は、モータ43dの回転数rev、改質用燃料ポンプ43の吐出圧力pressおよび吐出温度tempを入力してそれらに基づいて推定流量estfluxを導出して、その推定流量estfluxを制御ロジック部31に出力するものである。吐出圧力pressは、改質用燃料ポンプ43から吐出された流体(改質用燃料)の圧力である。吐出温度tempは、改質用燃料ポンプ43から吐出された流体(改質用燃料)の圧力である。吐出温度tempは改質用燃料ポンプ43の雰囲気温度と相関があるので、吐出温度tempの代用として雰囲気温度を使用するようにしてもよい。
図4に示すように、流量推定ロジック部32は、暖機モード流量推定ロジック部(第1推定送出量導出手段)32a、発電モード流量推定ロジック部(第2推定送出量導出手段)32b、移行モード流量推定ロジック部32c、および流量推定ロジック切替部32dを備えている。
暖機モード流量推定ロジック部32aは、暖機モードにおいて、改質用燃料ポンプ43のモータ43dの回転数rev、改質用燃料ポンプ43の吐出圧力pressおよび吐出温度tempを入力し、それらと下記数1に示す第1関数に基づいて第1推定流量を導出する。この第1推定流量を推定流量(推定送出量)estfluxとする。推定流量estfluxは、改質用燃料ポンプ43の吐出量(供給量)である。なお、推定流量estfluxの体積はノルマル基準である。
発電モード流量推定ロジック部32bは、発電モードにおいて、改質用燃料ポンプ43のモータ43dの回転数rev、改質用燃料ポンプ43の吐出圧力pressおよび吐出温度tempを入力し、それらと下記数2に示す第1関数と異なる第2関数に基づいて第2推定流量を導出する。この第2推定流量を推定流量(推定送出量)estfluxとする。
移行モード流量推定ロジック部32cは、暖機モードが終了し発電モードに切り替わる移行モードにおいて、上述した暖機モード流量推定ロジック部32aおよび発電モード流量推定ロジック部32bと同様に第1および第2関数を使用して第1および第2推定流量の両方を導出する。そして、導出された第1および第2推定流量と下記数3とに基づいて第3推定流量を導出する。この第3推定流量を推定流量(推定送出量)estfluxとする。移行モードは所定時間Ta(例えば10sec)内に切替が完了するようになっている。
(数3)
第3推定流量=第1推定流量×(1−α)+第2推定流量×α
ただし、α=Telp/Taであり、Telpは移行モードが開始された時点からの経過時間である。第3推定流量の導出は所定の短時間(例えば1sec)毎に実施される。
流量推定ロジック切替部32dは、改質ガスの温度すなわち改質器20の所定部位(CO選択酸化部24)の温度に基づいて暖機モード流量推定ロジック部32aから発電モード流量推定ロジック部32bに切り替える。すなわち、改質器20の暖機が開始され、CO選択酸化部24の温度が所定温度以上になると、暖機モード流量推定ロジック部32aを完了し、発電モード流量推定ロジック部32bに切り替える。CO選択酸化部24の温度(改質ガスの温度)が所定温度以上であれば、改質器20から供給される改質ガス中の一酸化炭素濃度が所定濃度より低くなり、一酸化炭素による燃料電池10の触媒の被毒を避けることができる。また、流量推定ロジック切替部32dは、燃料電池10の温度も合わせて考慮して暖機モード流量推定ロジック部32aから発電モード流量推定ロジック部32bに切り替えるようにしてもよい。燃料電池が所定温度以上であれば、触媒の活性温度域内においては効率よく発電することが可能となる。
また、流量推定ロジック切替部32dは、暖機モード流量推定ロジック部32aから発電モード流量推定ロジック部32bに直接切り替えるのではなく、移行モードを経由して切り替えるのが好ましい。この場合、改質ガスの温度に基づいて暖機モード流量推定ロジック部32aから移行モード流量推定ロジック部32cに切り替え、その後所定時間Taが経過した時点に、移行モード流量推定ロジック部32cから発電モード流量推定ロジック部32bに切り替えるようにすればよい。
ここで、上述した第1関数および第2関数の算出方法について説明する。まず、推定流量estfluxが、流体送出装置(改質用燃料ポンプ43)の回転数revおよび吐出圧力pressから演算することができる理由を説明する。本願の発明者は、改質用燃料ポンプ43からの改質用燃料(流体)の送出量を推定する(推定送出量を導出する)にあたって、この送出量(流量)は、改質用燃料ポンプ43の駆動または駆動結果に関係するパラメータ、すなわち回転数revおよび吐出圧力pressと相関があると予想した。
そして、実機を使用して回転数revを変化させて改質用燃料ポンプ43からの改質用燃料(流体)の送出量(流体流量)を測定した。なお、この送出量を測定するために改質用燃料ポンプ43の出口に流量計を設置している。その測定結果、回転数revと流体流量との関係は一義的ではないことを得た。具体的には、回転数revが上がる時と下がる時ではヒステリシスの影響を受けるため、回転数revと流体流量は、回転数revが上がる時と下がる時においてそれぞれ異なる相関関係を示すことになる。
また、実機を使用して吐出圧力pressを変化させて改質用燃料ポンプ43からの改質用燃料(流体)の送出量(流体流量)を測定した。なお、この送出量を測定するために改質用燃料ポンプ43の出口に流量計を設置している。その測定結果、吐出圧力pressと流体流量との関係は一義的ではないことを得た。具体的には、吐出圧力pressが上がる時と下がる時ではヒステリシスの影響を受けるため、吐出圧力pressと流体流量は、吐出圧力pressが上がる時と下がる時においてそれぞれ異なる相関関係を示すことになる。
そこで、発明者は、回転数revと吐出圧力pressを変数とする関数をいろいろ作成しそれぞれにおいて回転数revと吐出圧力pressを変化させて流体流量を実測することにより、回転数revと吐出圧力pressを変数とする関数の中から、ヒステリシスの影響を受けないものを見出した。
すなわち、燃料電池システムの実機を使用して、燃料電池システムの暖機モードおよび発電モードにおけるデータを取得する。取得した実験データの一例を図5に示す。実流量(cm3/min)は、改質用燃料ポンプ43の出口に設置されている実験用の流量計で測定され、図5の実線で示されている。吐出圧力(Pa)は、圧力センサ43bで測定され、図5の四角と実線で示されている。回転数(rpm)は、回転数センサ43aによって測定され、図5の丸で示されている。
この計測されたデータから「回転数、圧力」と「流量」の相関を確認すると、暖機モードと発電モードでは相関が異なることと、暖機モードにおける相関は一次関数近似であり、発電モードにおける相関は二次関数近似であることを見出した。具体的には、暖機モードにおいては、図6に示すように、流体流量は回転数revと吐出圧力pressとの和と一義的な関係であることを見出した。発電モードにおいては、図7に示すように、流体流量は回転数revと吐出圧力pressとの和の二乗と一義的な関係であることを見出した。
このように暖機モードと発電モードで「回転数revと吐出圧力press」と「流体流量」の相関が異なるのは次の理由による。暖機モードと発電モードの経路は異なっている。上述したように、暖機モードにおいては、CO選択酸化部24は燃料電池10を迂回しバイパス管73を介して燃焼部25に接続され、改質器20からの改質ガスは燃料電池10を通らない。また、発電モードにおいては、CO選択酸化部24は燃料電池10を介して燃焼部25に接続され、改質器20からの改質ガスは燃料電池10を通る。
一方、燃料電池10においては、圧損が生じる。この圧損ΔPは下記数4で示される。この数4から明らかなように、圧損ΔPは流速vの二乗に比例する。λは損失係数であり、ρは気体密度であり、vは流速であり流量/管断面積で表されている。これらのうちλ、ρ、管断面積は定数であり、流量が変数である。したがって、流量が大きくなれば圧損ΔPは流量の二乗に比例して大きくなる。すなわち、発電モードにおいては、暖機モードと同じ流量を流そうとしても、燃料電池10でより大きな圧損を受けるため、流量が減じてしまう。このとき、流そうとする流量が大きくなるほどその二乗に比例して圧力・回転数の増加率は減少する。
次に、上記数1および数2でそれぞれ示されている第1および第2関数の各係数A1,B1、A2,B2,C2,D2,E2を決定する。すなわち、先に取得した実測データのうち暖気モードのデータと上記数1とを用いて、係数A1,B1を線形計画問題(例えば最小二乗法)に基づいて算出する。このとき、実測データは基準温度(ノルマル温度)で取得したものである。また、先に取得した実測データのうち発電モードのデータと上記数2とを用いて、係数A2,B2,C2,D2,E2を線形計画問題(例えば最小二乗法)に基づいて算出する。このとき、実測データは基準温度(ノルマル温度)で取得したものである。
なお、第1および第2関数の温度補正項(=(273/吐出温度+273))は、雰囲気温度を変化させて実機で測定した測定データに基づいて算出されたものである。
上述した燃料電池システムの作動について説明する。制御装置30は、時刻t0にて図示しない起動スイッチがオンされると、燃料電池システムの起動運転を開始する。すなわち燃料電池システムは暖機モードに入る。制御装置30は、第1改質ガスバルブ74およびオフガスバルブ75を閉じ第2改質ガスバルブ76を開いてCO選択酸化部24を燃焼部25に接続し、第1燃料バルブ42を開き第2燃料バルブ45を閉じて燃焼用燃料ポンプ48および燃焼用空気ブロア66を駆動して燃焼用燃料および燃焼用空気を燃焼部25に供給して燃焼部25を着火する。これにより、燃焼用燃料が燃焼され、燃焼ガスにより改質部21および蒸発部26が加熱される。
制御装置30は、蒸発部26が水蒸気を生成するのに十分な温度に達すると、水バルブ54を開き、水ポンプ53を駆動させ水タンクSwの水を所定流量(所定供給量)だけ蒸発部26を介して改質部21に供給を開始する。その後、制御装置30は、第2燃料バルブ45を開いて改質用燃料ポンプ43を駆動させ燃料供給源Sfの燃料を所定流量(所定供給量)だけ改質部21に供給するとともに、酸化用空気バルブ64を開いて酸化用空気ブロア63を駆動させ酸化用空気を所定流量(所定供給量)だけCO選択酸化部24に供給する。これにより、改質部21に改質用燃料と水蒸気の混合ガスが供給され、改質部21では上述した水蒸気改質反応および一酸化炭素シフト反応が生じて改質ガスが生成される。そして、改質部21から導出された改質ガスはCOシフト部23およびCO選択酸化部24により一酸化炭素ガスを低減されてCO選択酸化部24から導出され、燃焼部25に供給され燃焼される。
このような改質ガスの生成中において、制御装置30は、温度センサ24bによりCO選択酸化部24の触媒24aの温度を検出し、この検出した温度が所定温度以上となれば、改質ガス中の一酸化炭素濃度が所定の低濃度以下となったとして、第1改質ガスバルブ74およびオフガスバルブ75を開き第2改質ガスバルブ76を閉じてCO選択酸化部24を燃料電池10の燃料極11の導入口に接続するとともに燃料極11の導出口を燃焼部25に接続する。これにより、燃料電池システムを暖機する起動運転が終了して続いて定常運転が開始される。すなわち燃料電池システムは発電モードに入る。
制御装置30は、発電モードにおいては、所望の出力電流(負荷装置で消費される電流・電力)となるように改質用燃料、燃焼用燃料、燃焼用空気、酸化用空気、カソード用空気および改質水を供給するようになっている。制御装置30は、所望の出力電流となるように改質用燃料の供給量を演算しその供給量となるように改質用燃料ポンプ43を駆動させ、演算した改質用燃料供給量およびS/C(スチームカーボン比)に基づいて改質水の供給量を演算しその供給量となるように水ポンプ53を駆動させ、アノードオフガスの燃焼熱だけでは燃焼部25にて必要な熱エネルギーが不足する場合、起動運転時である場合などに、燃焼部25に供給する燃焼用燃料の供給量を演算しその供給量となるように燃焼用燃料ポンプ48を駆動させ、改質用燃料供給量などに基づいて燃焼用空気の供給量を演算しその供給量となるように燃焼用空気ブロア66を駆動させ、一酸化炭素を所定量以下とするように酸化用空気の供給量を演算しその供給量となるように酸化用空気ブロア63を駆動させ、そして改質器20から供給された改質ガスと反応するに十分なカソード用空気の供給量を演算しその供給量となるようにカソード用空気ブロア68を駆動させている。そして、停止スイッチが押されると、燃料電池システムは停止運転を実施して停止する。
さらに、改質用燃料ポンプ43の推定送出量の算出および算出した推定送出量による改質用燃料ポンプ43の制御について図8〜10に示したフローチャートを参照しながら説明する。制御装置30は、図示しないスタートスイッチがオンされると、上記フローチャートに対応したプログラムの実行を開始する。制御装置30は、図8のステップ100にてプログラムの実行を開始すると、流量推定ロジック切替部32dは暖機モード流量推定ロジック部32aに切り替えて暖機モードの流量推定を実施する(ステップ102)。
制御装置30は、図9に示す暖機モード流量推定サブルーチンに対応したプログラムを実施する。制御装置30は、ステップ200にてプログラムが開始される毎に、回転数センサ43aが検出した改質用燃料ポンプ43の回転数revを入力し、圧力センサ43bが検出した改質用燃料ポンプ43の吐出圧力pressを入力し、温度センサ43cが検出した改質用燃料ポンプ43の吐出温度tempを入力する(ステップ202)。
制御装置30は、ステップ204にて、ステップ202で入力した回転数revおよび吐出圧力pressから上記数1に基づいて基準推定流量fluxを算出する。基準推定流量fluxは雰囲気温度が基準温度(例えば20℃)である場合の推定流量である。また、制御装置30は、ステップ202で入力した吐出温度tempから上述した温度補正項(=(273/吐出温度+273))に基づいて温度補正値を算出し、その温度補正値を先に算出した基準推定流量fluxに乗算することにより、基準推定流量fluxをその雰囲気温度に応じて補正する。この暖機モード流量推定によって導出された基準推定流量fluxは第1推定流量である。
制御装置30は、ステップ206にて、回転数revが所定値(例えば500rpm)以下である場合には、「0」を推定流量estfluxとし、所定値より大きい場合には基準推定流量fluxを推定流量estfluxとして算出する。
そして、制御装置30は、ステップ208にて、別に導出される設定流量rfluxを入力する。ステップ210にて、入力した設定流量rfluxとステップ206で算出した推定流量estfluxとに基づいて、設定流量rfluxに追従する操作量であるモータ43dのデューティ比duty(フィードバック制御量;=f5(rflux,estflux))を算出する。そして、ステップ212にて、先に算出したモータ43dのデューティ比dutyをモータ43dのドライバ回路43eへ出力して、改質用燃料ポンプ43を駆動する。その後プログラムを図8のステップ104に進める。
制御装置30は、暖機モード流量推定を移行モード流量推定に切り替えるか否かを判定する。具体的には、制御装置30は、温度センサ10aが検出した燃料電池温度stack_tを入力し、温度センサ24bが検出したCO選択酸化部の温度すなわち改質ガス温度rich_tを入力する(ステップ104)。制御装置30は、燃料電池温度stack_tおよび改質ガス温度rich_tに基づいて、暖機モードから移行モードに切り替わる条件を満たすか否かを判定する(ステップ106)。その条件は、燃料電池温度stack_tおよび改質ガス温度rich_tがそれぞれ所定温度以上であることである。条件を満たせばフラグFLAG_moveを立てて、そうでなければフラグFLAG_moveを立てない。
制御装置30は、フラグFLAG_moveが立っていない場合、ステップ108にて「NO」と判定し、フラグFLAG_moveが立つまでステップ102〜106の処理を繰り返し実行する。制御装置30は、フラグFLAG_moveが立つと、ステップ108にて「YES」と判定し、暖機モードを終了し発電モードに移行すると同時に暖機モード流量推定を移行モード流量推定に切り替える。
制御装置30においては、流量推定ロジック切替部32dは暖機モード流量推定ロジック部32aから移行モード流量推定ロジック部32bに切り替えて移行モードの流量推定を実施する(ステップ110)。この場合、制御装置30は、ステップ204の処理を除いて上述した暖機モード流量推定と同様な処理を実施する。制御装置30はステップ204の処理に代えて次のような処理を実施する。制御装置30は、ステップ202と同様に入力した回転数rev、吐出圧力pressおよび吐出温度tempから上記数1に基づいて基準推定流量flux(第1推定流量)を導出するとともに、後述するステップ302と同様に入力した回転数rev、吐出圧力pressおよび吐出温度tempから上記数2に基づいて基準推定流量flux(第2推定流量)を導出する。そして、これら導出された第1および第2推定流量と上記数3とに基づいて第3推定流量を導出する。この第3推定流量を推定流量(推定送出量)estfluxとする。
制御装置30は、移行モード流量推定を発電モード流量推定に切り替えるか否かを判定する。具体的には、制御装置30は、燃料電池運転時刻を入力し(ステップ112)、この時刻に基づいて移行モードから発電モードに切り替わる条件を満たすか否かを判定する(ステップ114)。その条件は、移行モードが開始された時点からの経過時間Telpが所定時間Ta(例えば10sec)を経過したことである。条件を満たせばフラグFLAG_geneを立てて、そうでなければフラグFLAG_geneを立てない。
制御装置30は、フラグFLAG_geneが立っていない場合、ステップ116にて「NO」と判定し、フラグFLAG_geneが立つまでステップ110〜114の処理を繰り返し実行する。制御装置30は、フラグFLAG_geneが立つと、ステップ116にて「YES」と判定し、移行モード流量推定を発電モード流量推定に切り替える。
制御装置30においては、流量推定ロジック切替部32dは移行モード流量推定ロジック部32cから発電モード流量推定ロジック部32bに切り替えて発電モードの流量推定を実施する(ステップ118)。
制御装置30は、図10に示す発電モード流量推定サブルーチンに対応したプログラムを実施する。制御装置30は、ステップ300にてプログラムが開始される毎に、回転数センサ43aが検出した改質用燃料ポンプ43の回転数revを入力し、圧力センサ43bが検出した改質用燃料ポンプ43の吐出圧力pressを入力し、温度センサ43cが検出した改質用燃料ポンプ43の吐出温度tempを入力する(ステップ302)。
制御装置30は、ステップ304にて、ステップ302で入力した回転数revおよび吐出圧力pressから上記数2に基づいて基準推定流量fluxを算出する。基準推定流量fluxは雰囲気温度が基準温度(例えば20℃)である場合の推定流量である。また、制御装置30は、ステップ302で入力した吐出温度tempから上述した温度補正項(=(273/吐出温度+273))に基づいて温度補正値を算出し、その温度補正値を先に算出した基準推定流量fluxに乗算することにより、基準推定流量fluxをその雰囲気温度に応じて補正する。この発電モード流量推定によって導出された基準推定流量fluxは第2推定流量である。
制御装置30は、ステップ306にて、回転数revが所定値(例えば500rpm)以下である場合には、「0」を推定流量estfluxとし、所定値より大きい場合には基準推定流量fluxを推定流量estfluxとして算出する。
そして、制御装置30は、ステップ308にて、別に導出される設定流量rfluxを入力する。ステップ310にて、入力した設定流量rfluxとステップ306で算出した推定流量estfluxとに基づいて、設定流量rfluxに追従する操作量であるモータ43dのデューティ比duty(フィードバック制御量;=f5(rflux,estflux))を算出する。そして、ステップ312にて、先に算出したモータ43dのデューティ比dutyをモータ43dのドライバ回路43eへ出力して、改質用燃料ポンプ43を駆動する。その後プログラムを図8のステップ120に進める。
制御装置30は、燃料電池システムの運転が停止されたか否かを判定する。例えば、制御装置30は、停止スイッチが押されれば停止されたと判定する(ステップ120)。制御装置30は、燃料電池システムが停止されない場合、ステップ120にて「NO」と判定し、燃料電池システムが停止されるまでステップ118の処理を繰り返し実行する。制御装置30は、燃料電池システムが停止されると、ステップ120にて「YES」と判定し、本プログラムを停止する。
このようにして推定した改質用燃料ポンプ43の推定送出量を使用して改質用燃料ポンプ43の流量制御を行って実際の流量を測定したものを図11に示す。図11においては、目標値である設定流量rfluxを比較的濃い色の曲線L1で示しており、これに対して実流量を比較的濃い色の実線と四角で表す曲線L2で示している。この推定送出量を実流量とみなすことができる。図11から明らかなように、実流量は非常によく設定流量rfluxに追従しており、したがって、流体の流量を精度よく制御していることがわかる。
上述した説明から明らかなように、本実施形態においては、改質器20を暖機する暖機モードには、第1推定送出量導出手段(暖機モード流量推定ロジック部32a、ステップ102)が、吐出圧力検出手段(圧力センサ43b)および駆動量検出手段(回転数センサ43a)によってそれぞれ検出された吐出圧力および駆動量から第1関数に基づいて流体送出装置(改質用燃料ポンプ43)の吐出量を推定送出量として導出する。改質器20の暖機が完了し燃料電池10が発電する発電モードには、第2推定送出量導出手段(発電モード流量推定ロジック部32c)が、吐出圧力検出手段(圧力センサ43b)および駆動量検出手段(回転数センサ43a)によってそれぞれ検出された吐出圧力および駆動量から第1関数と異なる第2関数に基づいて流体送出装置(改質用燃料ポンプ43)の吐出量を推定送出量として導出する。そして、操作量導出手段(制御ロジック部31)が、推定送出量導出手段(流量推定ロジック部32)によって導出された推定送出量estfluxおよび目標送出量rfluxに基づいて流体送出装置の操作量(デューティ比duty)を導出し、制御手段(制御ロジック部31)が、操作量導出手段によって導出された操作量に基づいて流体送出装置を制御する。これにより、高価で大型な質量流量計を設けることなく、既存のセンサを利用して流体送出装置からの流体の送出量を精度よく推定し、その結果に基づいて流体の流量を精度よく制御できる。また、暖機モードと発電モードにおいて、それぞれのモードに応じて流体送出装置からの流体の送出量を精度よく推定し、その結果に基づいて流体の流量を精度よく制御できる。
すなわち、改質器20に流体である改質用燃料を供給する圧縮機(改質用燃料ポンプ43)であって、流路断面または流路長が運転状況に応じて変更される第1流路L1の上流側流路である燃料供給管41に設置された圧縮機(改質用燃料ポンプ43)から供給される流量を推定する装置(制御装置30)において、改質用燃料ポンプ43の駆動量と、改質用燃料ポンプ43の吐出圧力と、第1流路L1の経路の形態(すなわち運転状況に対応した形態である)とに応じて流量を推定する。これにより、高価で大型な質量流量計を設けることなく、既存のセンサを利用して圧縮機からの流体の流量(供給量)を精度よく推定することができる。また、運転状況すなわち第1流路の経路の形態に応じて圧縮機からの流体の流量(供給量)を精度よく推定することができる。
また、流体送出装置(改質用燃料ポンプ43)の吐出温度を検出する吐出温度検出手段(温度センサ43c)をさらに備え、推定送出量導出手段(流量推定ロジック部32)は、吐出温度検出手段によって検出された吐出温度tempも考慮して推定送出量estfluxを導出する。これにより、流体送出装置の吐出温度に応じて推定送出量を導出することができるので、より正確に推定送出量を導出し、その結果に基づいて流体の流量をより高精度に制御することができる。
また、推定送出量導出手段(流量推定ロジック部32)は、改質器20の所定部位の温度(CO選択酸化部24の温度)に基づいて第1推定送出量導出手段(暖機モード流量推定ロジック部32aから第2推定送出量導出手段(発電モード流量推定ロジック部32c)に切り替えて推定送出量estfluxを導出する。これにより、推定送出量を暖機モードまたは発電モードに応じて的確かつ適切に切り替えることができる。
なお、上述した実施形態においては、流路断面または流路長が運転状況に応じて変更される第1流路L1の上流側流路(燃料供給管41)すなわち暖機モードと発電モードで運転状況に応じて切り替えられる経路の上流に設置された流体送出装置である改質用燃料ポンプ43を例に挙げて説明した。同様の流体送出装置であれば(例えば酸化用空気ブロア63)、本発明を適用することができる。
また、上述した実施形態においては、流路断面または流路長が運転状況に応じて変更される第1流路L1の上流側流路である燃料供給管41に設置された流体送出装置である改質用燃料ポンプ43を本発明の適用対象としたが、流路断面または流路長が運転状況に応じて変更される第1流路L1と共通の流体供給先(燃焼部25)に連通する第2流路L2である燃焼用空気供給管65(または燃焼用燃料供給管47)に設置された流体送出装置(圧縮機)である燃焼用空気ブロア66(または燃焼用燃料ポンプ48)を本発明の適用対象としてもよい。
この場合、上述した実施形態と同様に、燃料電池システムの実機を使用して、燃料電池システムの暖機モードおよび発電モードにおけるデータを取得する。取得した実験データの一例を図12に示す。実流量(cm3/min)は、燃焼用空気ブロア66の出口に設置されている実験用の流量計で測定され、図12の実線で示されている。吐出圧力(Pa)は、圧力センサ66bで測定され、図12の四角と実線で示されている。回転数(rpm)は、回転数センサ66aによって測定され、図12の丸で示されている。
この計測されたデータから「回転数、圧力」と「流量」の相関を確認すると、暖機モードと発電モードでは相関が異なることと、暖機モードにおける相関は一次関数近似であり、発電モードにおける相関は二次関数近似であることを見出した。具体的には、暖機モードにおいては、図13に示すように、流体流量は回転数revと吐出圧力pressとの和と一義的な関係であることを見出した。発電モードにおいては、図14に示すように、流体流量は回転数revと吐出圧力pressとの和の二乗と一義的な関係であることを見出した。
このように暖機モードと発電モードで「回転数revと吐出圧力press」と「流体流量」の相関が異なるのは次の理由による。上述したように、CO選択酸化部24から燃焼部25への経路は暖機モードと発電モードとで異なっている。すなわち、運転状況が暖機モードである場合には、第1流路L1はバイパス管73経由となり、流路断面は比較的広くなり流路長は比較的短くなり、一方運転状況が発電モードである場合には、第1流路L1は燃料電池10経由となり、流路断面は比較的狭くなり流路長は比較的長くなる。換言すると、第1流路L1から供給される流体(オフガス、改質ガス)は、燃料電池10による圧損がないので、発電モードと比較して暖機モードのほうが流れやすい。
また、発電モードにおいては、第1流路L1からの流体と異なる燃焼部25への流体である燃焼用空気(または燃焼用燃料)は燃料電池10の圧損の影響を受けるが、暖機モードにおいては、その圧損の影響を受けない。つまり、暖機モードにおいては、圧損の影響を受けないオフガスや改質ガスの圧力や流量の影響を受けるので、燃焼用空気や燃焼用燃料の流体流量も回転数revと吐出圧力pressとの和と一義的な関係となる。発電モードにおいては、圧損の影響を受けるオフガスや改質ガスの圧力や流量の影響を受けるので、燃焼用空気や燃焼用燃料の流体流量も回転数revと吐出圧力pressとの和の二乗と一義的な関係となる。
また、燃焼用空気ブロア66の推定送出量は、上述した改質用燃料ポンプ43の推定送出量と同様に算出されるとともに、燃焼用空気ブロア66は、上述した改質用燃料ポンプ43と同様に制御される。
また、上述した実施形態と同様に推定した燃焼用空気ブロア66の推定送出量を使用して燃焼用空気ブロア66の流量制御を行って実際の流量を測定したものを図15に示す。図15においては、目標値である設定流量rfluxを比較的濃い色の曲線L3で示しており、これに対して実流量を比較的濃い色の実線と四角で表す曲線L4で示している。この推定送出量を実流量とみなすことができる。図15から明らかなように、実流量は非常によく設定流量rfluxに追従しており、したがって、流体の流量を精度よく制御していることがわかる。
したがって、改質器20を暖機する暖機モードには、暖機モード流量推定ロジック部32aが、圧力センサ66bおよび回転数センサ66aによってそれぞれ検出された吐出圧力および駆動量から第1関数に基づいて燃焼用空気ブロア66の吐出量を推定送出量として導出する。改質器20の暖機が完了し燃料電池10が発電する発電モードには、発電モード流量推定ロジック部32cが、圧力センサ66bおよび回転数センサ66aによってそれぞれ検出された吐出圧力および駆動量から第1関数と異なる第2関数に基づいて燃焼用空気ブロア66の吐出量を推定送出量として導出する。そして、制御ロジック部31が、流量推定ロジック部32によって導出された推定送出量estfluxおよび目標送出量rfluxに基づいて燃焼用空気ブロア66の操作量(デューティ比duty)を導出し、制御ロジック部31が、その導出された操作量に基づいて燃焼用空気ブロア66を制御する。これにより、高価で大型な質量流量計を設けることなく、既存のセンサを利用して流体送出装置からの流体の送出量を精度よく推定し、その結果に基づいて流体の流量を精度よく制御できる。また、暖機モードと発電モードにおいて、それぞれのモードに応じて流体送出装置からの流体の送出量を精度よく推定し、その結果に基づいて流体の流量を精度よく制御できる。
すなわち、改質器20に流体である燃焼用空気を供給する圧縮機(燃焼用空気ブロア66)であって、流路断面または流路長が運転状況に応じて変更される第1流路L1と共通の流体供給先である燃焼部25を有する第2流路L2に設置された圧縮機(燃焼用空気ブロア66)から供給される流量を推定する装置(制御装置30)において、燃焼用空気ブロア66の駆動量と、燃焼用空気ブロア66の吐出圧力と、第1流路L1の経路の形態(すなわち運転状況に対応した形態である)とに応じて流量を推定する。これにより、高価で大型な質量流量計を設けることなく、既存のセンサを利用して圧縮機からの流体の流量(供給量)を精度よく推定することができる。また、運転状況すなわち第1流路L1の経路の形態に応じて圧縮機からの流体の流量(供給量)を精度よく推定することができる。
また、燃焼用空気ブロア66の吐出温度を検出する温度センサ66cをさらに備え、流量推定ロジック部32は、温度センサ66cによって検出された吐出温度tempも考慮して推定送出量estfluxを導出する。これにより、流体送出装置の吐出温度に応じて推定送出量を導出することができるので、より正確に推定送出量を導出し、その結果に基づいて流体の流量をより高精度に制御することができる。
また、上述した実施形態において、空気を送出する流体送出装置(例えば酸化用空気、燃焼用空気をそれぞれ送出する装置63、66)としてブロアを採用したが、これに限らず、流体を送出する装置であればよく、例えばポンプを採用するようにしてもよい。この場合にも、ブロアと同様に制御を行えばよい。
また、上述した実施形態において、燃料を送出する流体送出装置(例えば改質用燃料、燃焼用燃料をそれぞれ送出する装置43、48)としてポンプを採用したが、これに限らず、流体を送出する装置であればよく、例えばブロアを採用するようにしてもよい。この場合にも、ポンプと同様に制御を行えばよい。
また、流体送出装置(圧縮機)は、流路断面または流路長が運転状況に応じて変更される第1流路L1の上流側流路である燃料供給管41(または酸化用空気供給管61)、および第1流路L1と共通の流体供給先(燃焼部25)に連通する第2流路L2(燃焼用空気供給管65または燃焼用燃料供給管47)の少なくとも一方に設置されるようにしてもよい。
また、上述した流体送出装置の回転数はポンプ(またはブロア)の回転数でもそれを駆動させる駆動源(例えばモータ)の回転数でもどちらでもよい。
10…燃料電池、11…燃料極、12…空気極、20…改質器、21…改質部、21a…折り返し流路、21b…改質触媒、22…冷却部、23…COシフト部、23a…触媒、24…CO選択酸化部、24a…触媒、24b…温度センサ、25…燃焼部(流体供給先)、30…制御装置(流体供給量推定装置)、31…制御ロジック部、32…流量推定ロジック部、32a…暖機モード流量推定ロジック部(第1推定送出量導出部)、32b…移行モード流量推定ロジック部、32c…発電モード流量推定ロジック部(第2推定送出量導出部)、32d…流量推定ロジック切替部、41…燃料供給管、42…第1燃料バルブ、43…改質用燃料ポンプ、43a…回転数センサ(駆動量検出手段)、43b…圧力センサ(吐出圧力検出手段)、43c…温度センサ(吐出温度検出手段)、43d…モータ、43e…ドライバ回路、44…脱硫器、45…第2燃料バルブ、47…燃焼用燃料供給管、48…燃焼用燃料ポンプ、52…水蒸気供給管、53…水ポンプ、54…水バルブ、61…酸化用空気供給管、63…酸化用空気ブロア、64…酸化用空気バルブ、65…燃焼用空気供給管、66…燃焼用空気ブロア、66a…回転数センサ(駆動量検出手段)、66b…圧力センサ(吐出圧力検出手段)、66c…温度センサ(吐出温度検出手段)、67…カソード用空気供給管、68…カソード用空気ブロア、69…カソード用空気バルブ、71…改質ガス供給管、72…オフガス供給管、73…バイパス管、74…第1改質ガスバルブ、75…オフガスバルブ、76…第2改質ガスバルブ、Sf…燃料供給源、Sw…改質水供給源、L1…第1流路、L2…第2流路。