JP2008002300A - 水平作動エンジン - Google Patents

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光雄 篠崎
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Abstract

【課題】同一シリンダー内に水平方向に対向するピストンを有し、膨張行程末期に該ピストンを衝突させることにより、該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用することで、低燃費・高出力・低公害な内燃機関の提供を図る。
【解決手段】左右に燃焼室を有する密閉されたシリンダーと、該シリンダー内を水平方向に対向するピストンと、該ピストンの衝撃力を伝達するためのコネクティングロッドと、該コネクティングロッドを介して回転運動に変換するために設けられる二本のクランクシャフトと、からなり、膨張行程末期に、該ピストンの衝撃側端部が衝突することによる該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用する構造を採用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、同一シリンダー内に水平方向に対向するピストンを有し、膨張行程末期に該ピストンを衝突させることにより、該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用することを特徴とする水平作動エンジンに関するものである。
現在、自動車等の原動機は主として内燃機関であり、その代表はガソリンエンジンである。しかし、近年においては、化石燃料資源の消費・環境問題等の種々の事情から、電気や水素等へのエネルギー代替技術の開発が進められるようになった。一方、現存する自動車の全てを電気自動車等へ移行するには相当の期間を要することから、その間の内燃機関の更なる低燃費・低公害性の向上が必要不可欠である。
また、自動車等の内燃機関の構造については、一部のロータリエンジンを除けば、そのほとんどはレシプロである。レシプロエンジンの完成度は高く、燃費効率やコスト低減などの改良要素も限界に近づいているといえる。しかしながら、従来のレシプロエンジンでは、燃料の燃焼による熱エネルギーを作動流体の圧力としてまず往復運動に変換し、ついで回転運動の力学的エネルギーとして取り出す原動機であるため、膨張行程末期の下死点相当位相における出力変換効率においては、必ずしも満足できるものではない。
さらに、エンジン高を抑え、左右バランスの優れた内燃機関として、シリンダー配列を水平に配置した構成の水平対向エンジンがある。該水平対向エンジンは、左右に配列されたピストンがお互いの振動を打ち消し合う事で、直列型やV型に比べると低振動で、バランサーシャフトなしでもスムーズに回転する事ができ、相対的に全長、全高がコンパクトに抑えられるという利点がある。しかし、前記同様に、レシプロ特有の、膨張行程末期における下死点相当位相における出力変換効率の向上には貢献するものでない。
そこで、従来より、このような問題点を解決すべく、種々の技術が提案されている。例えば、垂直線に対して傾斜した二つのシリンダー配列を有する内燃機関がある(特許文献1参照)。しかし、かかる技術は、水平対向エンジン特有の問題点である、運転中のオイル液面変化を小さくするものであって、上記問題を解決するものではない。また、膨張行程において左右のピストンがクランクシャフトから離反する方向に移動するように、左右各々の燃焼室を左右のシリンダーの間に設けた水平対向型内燃機関も提案されている(特許文献2参照)。しかし、かかる技術は、混合気の燃焼時の等容度を高めて熱効率を高めるとともに、吸気系や動弁機構の構造を簡素化することを目的とし、燃焼効率や機械的損失に着目しつつ、特に自動二輪車におけるバンク角確保のためのものである。したがって、前記いずれの技術も、従来のレシプロエンジンの基本的構成に変更はなく、上述した問題点の解決には至っていない。
特開平8−109813号公報 特開特開2003−20990号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、同一シリンダー内に水平方向に対向するピストンを有し、膨張行程末期に該ピストンを衝突させることにより、該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用することで、低燃費・高出力・低公害な内燃機関を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、左右に燃焼室を有する密閉されたシリンダーと、該シリンダー内を水平方向に対向するピストンと、該ピストンの衝撃力を伝達するためのコネクティングロッドと、該コネクティングロッドを介して回転運動に変換するために設けられる二本のクランクシャフトと、からなり、膨張行程末期に、該ピストンの衝撃側端部が衝突することによる該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用する構造となっている。
また、本発明は、前記衝撃側端部に貼着される衝撃緩衝部材を動物皮とすることもできる。
本発明にかかる水平作動エンジンによれば、圧縮工程におけるピストンスピードが速くなるため、早期着火によるノッキングが起きにくくなり、希薄燃焼化及び高圧縮化を図ることができるという有利な効果を発揮する。
従来のレシプロエンジンでは、膨張行程におけるピストンの慣性力方向が180度変換されることによるエネルギー損失があった。しかし、本発明にかかる水平作動エンジンによれば、燃焼によって得られた運動エネルギーの残存慣性力を有効に活用することによって、機械効率に優れ、高出力・低燃費で環境にも優しい内燃機関の提供を図ることができるという効果を奏する。
従来のレシプロエンジンに用いられるピストンでは、熱膨張による影響を考慮しなければならないため、燃焼室付近のトップ部がピストンスカート部よりも僅かに小径としたり、肉厚を変化させるなどの構造を採用する必要性がある。しかし、本発明にかかる水平作動エンジンによれば、下死点付近においても衝突による熱膨張があるので、ピストン壁の厚みを均等にすることが可能となり、加工効率の向上及び製作コストも軽減できる。また、同一肉厚ピストンとすることによって、高回転付近によるピストンバランスを考慮する必要性も少なくなるので、ピストン自体が、ピストンピンを中心に振れてしまうことによるシリンダー内壁への接触を防止でき、エンジン自体の耐久性も向上する。
本発明にかかる水平作動エンジンによれば、シリンダー配置が水平であるため、エンジン高さを抑えることができ、また、クランクシャフト及び弁機構等の重量物がすべてエンジンの左右に分配されるので、自動車用エンジンとして、極めて高い左右バランスが得ることができ、これによって旋回性能の優れた自動車の提供に資する。
本発明にかかる水平作動エンジンは、膨張行程末期に対向するピストン同士を衝突させることにより、該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用することを最大の特徴とするものである。以下、本発明にかかる水平作動エンジンの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる水平作動エンジンの構造を示す断面図である。左右に燃焼室を有する密閉されたシリンダー1と、該シリンダー1内を水平方向に対向するピストン2と、該ピストン2の衝撃力を伝達するためのコネクティングロッド3と、該コネクティングロッド3を介して回転運動に変換するために設けられる二本のクランクシャフト4とから構成されている。
シリンダー1は、略円筒形状に密閉されており、素材にはアルミ合金と鋳鉄製シリンダライナとの組合せ等の一般的な構造が考えられる。また、通常のV型及び水平対向型のレシプロエンジンでは、左右別個にシリンダーが配置されるが、本発明にかかる水平作動エンジンでは、同一シリンダー1内にピストン2が2個配置されることとなる。該シリンダー1の両端は燃焼により、中心部はピストン2の衝撃により、それぞれ温度が上昇するため、水冷又は油冷等のためのウォータージャケットを有し、エンジン全体の冷却を図る構造となっている。
ピストン2は、混合気の燃焼により、ガス膨張圧を受け止め、燃焼室内の体積を増やす方向に移動する点においては従来の内燃機関用ピストンと変わらないが、双方のピストン2がシリンダー1の中心部において衝突するため、通常の内燃機関用ピストンと異なり、両側に端面部を有している。また、衝突側端面部8には、衝撃緩和のための緩衝材として動物皮等が貼着することもできる。素材としては従来と同様の、アルミ合金等が考えられるが、衝突による衝撃に耐え得るよう、鍛造品等の高強度のものであることが望ましい。さらに、ピストンピン5はピストン2の外周方向へ突出するように設けられ、コネクティングロッド3及びクランクシャフト4によってシリンダー1内を往復する。
なお、本発明にかかる水平作動エンジンでは、クランクケースがシリンダー1の左右に配置されるため、スカート部の潤滑を考慮して、ピストンピン5の左右にコンプレッションリング6及びオイルリング7をそれぞれ設ける構造とすることが望ましい。
コネクティングロッド3は、ピストンピン5を介してピストン2の両側から支持され、動力をクランクシャフト4へと伝達する。素材としては一般的なクロムモリブデン(SCM435等)や炭素鋼(S55C等)などが考えられるが、衝突による衝撃に耐え得るよう、チタン合金等の高強度のものであることが望ましい。
クランクシャフト4aは、ピストン2の直線運動を、コネクティングロッド3を介して回転運動に変えるための軸であり、通常のクランクシャフトと同様に、クランクジャーナル、クランクピン17、クランクアーム18、バランスウェイト19等から構成されるが、本発明にかかる水平作動エンジンでは、該クランクシャフト4aはエンジン本体外側に2本設けられており、それぞれのピストン2によって駆動され、これが出力集合装置9によって、出力軸4bに伝達されることとなる。本発明では、2軸間の距離が比較的小さいので、大きな力を確実に伝える方法として、歯車による駆動が適していると考えられる。但し、伝達方法として特に限定されるものではなく、ベルトとプーリ、チェーンとスプロケットを用いる伝達方法なども考えられる。また、ボア×ストローク比を低回転高トルク型のロングストロークとすると、該クランクシャフト4aと出力軸4bの間が長くなるので、かかる場合には、回転軸方向を交差方向変換装置によって変換しつつ、出力軸4bに伝達されることとなる。該交差方向変換装置には、例えば、図に示すような、すぐばかさ歯車等の歯車(ギヤ)によるものが考えられる。
次に、本発明にかかる水平作動エンジンの作動状態を説明する。インテークマニホールド10から、カムシャフト12及びインレットバルブ13を介して混合気が燃焼室14に流入され、該混合気はピストン2によって圧縮される(圧縮工程)。そして、該圧縮された混同気は、上死点付近において、点火プラグ15によって点火され、燃焼ガスが膨張してピストン2をシリンダー1の中心方向に押し戻すことになる(膨張行程)。該ピストン2が下死点まで移動すると、相対する他方のピストン2と衝突し、大きな衝撃エネルギーが発生する(衝撃工程)。該衝撃エネルギーは、コネクティングロッド2を通じて、クランクシャフト4a・4bに伝えられ、大きな動力源を発生する。
その後、ピストン2は、慣性力及び衝撃力により、上死点へと向かうが、このとき、燃焼ガスは、カムシャフト12及びエキゾーストバルブ16を介して、エキゾーストマニホールド11から排出される(排気工程)。
燃焼ガスの膨張によって得られた運動エネルギー及び衝撃エネルギーは、コネクティングロッド2を通じて、クランクピン17へと伝えられ、クランクアーム18を介してピストン2の直線運動が回転運動に変換されて、クランクシャフト4aが回転する。なお、本発明は、該クランクシャフト4aを本体の左右に2本有するため、それぞれの動力を集合して、クランクシャフト4bに伝えられる。
本発明にかかる水平作動エンジンの構造を示す全体断面図である。
符号の説明
1 シリンダ
2 ピストン
3 コネクティングロッド
4 クランクシャフト
5 ピントンピン
6 コンプレッションリング
7 オイルリング
8 衝突部端面部
9 出力集合装置
10 インテークマニホールド
11 エキゾーストマニホールド
12 カム
13 インレットバルブ
14 燃焼室
15 点火プラグ
16 エキゾーストバルブ
17 クランクピン
18 クランクアーム
19 バランスウェイト

Claims (2)

  1. 内燃機関であって、
    左右に燃焼室を有する密閉されたシリンダーと、
    該シリンダー内を水平方向に対向するピストンと、
    該ピストンの衝撃力を伝達するためのコネクティングロッドと、
    該コネクティングロッドを介して回転運動に変換するために設けられる二本のクランクシャフトと、
    からなり、膨張行程末期に、該ピストンの衝撃側端部が衝突することによる該衝撃力を、圧縮工程への運動エネルギー増加に利用することを特徴とする水平作動エンジン。
  2. 前記衝撃側端部に貼着される衝撃緩衝部材を動物皮とすることを特徴とする請求項1に記載の水平作動エンジン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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