JP2008001619A - シクロヘプタトリエニルパラジウム化合物及びその製造法 - Google Patents

シクロヘプタトリエニルパラジウム化合物及びその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】サンドイッチ型の新規パラジウム化合物、その製造法並びに該化合物からなる触媒を提供すること。
【解決手段】一般式
Figure 2008001619

[式中、R及びR2は水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、m及びnは1〜7の整数を表し、Lは配位子を表す。]で表されるパラジウム化合物又はその塩、その製造法、並びに当該化合物又はその塩からなる触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規パラジウム化合物、その製造法、及び当該パラジウム化合物からなる触媒に主に関する。
パラジウム化合物は、触媒として広範な有機合成反応に利用可能であることが知られている。
従来のパラジウム触媒としては、ホスフィン類、ハライド類、アセテート等の配位子を含有し、平面4配位型の構造を有する分子性パラジウム化合物が知られている。またハライド類やアセテート類が架橋配位することにより、多量化体としたパラジウム化合物も知られている(非特許文献1参照)。また、パラジウムブラック、担持型パラジウム、パラジウムクラスターや有機高分子類とパラジウムからなる化合物が触媒活性を有することも知られている(非特許文献2及び3参照)。
一方、メタロセンとして、2個のシクロペンタジエニル環に金属原子が挟まれた、サンドイッチ型の化合物が知られている。この化合物を利用したメタロセン触媒は、オレフィン重合などに広く使用されている。これまで、鉄、チタンなどを中心金属として、同様のサンドイッチ型の化合物が多数作られているが、パラジウムを中心金属とし、かつ安定な化合物として取り扱えるものは知られていない。
Palladium Reagents and Catalysts, J. Tsuji, John Wiley & Sons, 1995, p1-5. Coordination Chemistry Reviews, 2002, 231, 207-228 J.Am.Chem.Soc.,2005,127,2125-2135
本発明は、サンドイッチ型のパラジウム化合物、その製造法及び当該化合物からなる触媒を提供することを主な課題とする。
本発明者は、シクロヘプタトリエニル類が3つのパラジウム原子と結合することにより、安定なサンドイッチ型の化合物が形成されることを見出した。更に、その化合物が、既知のパラジウム化合物から、1段階で、温和な反応条件で製造し得ること、また触媒として使用し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明は、以下の化合物、製造法、及び触媒に関するものである。
項1:一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい;
Lは配位子を表す。]
で表されるパラジウム化合物又はその塩。
項2:一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい;
Lは配位子を表す。]
で表されるパラジウム化合物又はその塩の製造方法であって、
パラジウムゼロ価化合物と、
一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びmは前記に同じ;Xは対イオンを表す]
で表される化合物と、
一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びnは前記に同じ;Xは対イオンを表す]
で表される化合物を、塩の存在下、有機溶媒中で反応させる工程を含む方法。
項3:一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい;
Lは配位子を表す。]
で表されるパラジウム化合物又はその塩からなる触媒。
以下、本発明をより詳細に説明する。
1.パラジウム化合物
本発明は、下記一般式(1)で表されるパラジウム化合物又はその塩(以下、本発明のパラジウム化合物ともいう。)を提供する;
一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい;
Lは配位子を表す。]
一般式(1)における化合物において、シクロヘプタトリエニル類とパラジウムとの間には結合相互作用が存在する。
換言すると、一般式(1)における化合物は、シクロヘプタトリエニル類とパラジウムとが種々の形式で結合する場合を含む。
一般式(1)において示される各基は、具体的には次のとおりである。
置換基を有してもよいアルキル基には、置換基を有しないアルキル基(以下、単に「アルキル基」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアルキル基が含まれる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数が1〜20程度、好ましくは1〜10程度の直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を挙げることができる。
置換基としては、例えば、アリール基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基には、置換基を有しないアリール基(以下、単に「アリール基」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアリール基が含まれる。
アリール基としては、フェニル基等の単環又は多環式アリール基を挙げることができる。
置換基としては、例えば、炭素数1〜20程度のアルキル基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
具体的に置換基を有するアリール基としては、トリル基が挙げられる。
置換基を有してもよいアルコキシ基には、置換基を有しないアルコキシ基(以下、単に「アルコキシ基」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアルコキシ基が含まれる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数が1〜20程度、好ましくは1〜20程度の直鎖状、又は分枝鎖又は環状アルコキシ基を挙げることができる。
置換基としては、例えば、アリール基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリールオキシ基には、置換基を有しないアリールオキシ基(以下、単に「アリールオキシ基」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアリールオキシ基が含まれる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基等の単環又は多環式アリールと酸素とからなる基が挙げられる。
置換基としては、例えば、炭素数1〜20程度のアルキル基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
シリル基としては、一般式−SiR3 3(式中、各R3は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、2以上のR3が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表される基などが挙げられる。具体的には、トリメチルシリル基、ジメチル(tert-ブチル)シリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。
シロキシ基としては、一般式−OSiR4 3(式中、各R4は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、2以上のR4が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表される基が挙げられる。具体的には、トリメチルシロキシ基、ジメチル(tert-ブチル)シロキシ基、トリフェニルシロキシ基などが挙げられる。
また、RとR2が連結して形成する橋架け基としては、例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアリールアルキレン基、置換基を有してもよいシリレン(−SiH2−)基などが挙げられる。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
具体的には、エチレン基、ジメチルシリレン基などが挙げられる。
一般式(1)において、R1が水素原子でm=7、かつ、R2が水素原子でn=7である場合、パラジウム核を挟む上下のシクロヘプタトリエニル類は、共にシクロヘプタトリエニル(C7H7)となる。
配位子Lは、パラジウムの配位子として一般に用いられているものから適宜選択することができる。
具体的には、各Lが同一又は異なって、ハライド類、置換基を有してもよいアルキル類、置換基を有してもよいアリール類、置換基を有してもよいアルキニル類、置換基を有してもよいアルケニル類、ヒドリド類、ヒドロキシ類、置換基を有してもよいアルコキシ類、置換基を有してもよいアリールオキシ類、チオラート類、カルボキシラート類、ホスフィン類、水、アミン類、ピリジン類、ニトリル類、カルベン類、CO及びイソシアニド類からなる群から選択される場合が挙げられる。
また2以上のLが連結して環を形成する場合が挙げられる。
ハライド類としては、クロライド、ブロマイド、ヨード等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキル類には、置換基を有しないアルキル類(以下、単に「アルキル類」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアルキル類が含まれる。
アルキル類としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキルが挙げられる。具体的には、メチル、ベンジル、ネオペンチル等が挙げられる。
置換基としては、例えば、アリール基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール類には、置換基を有しないアリール類(以下、単に「アリール類」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアリール類が含まれる。
アリール類としては、単環又は多環式アリールを挙げることができる。
置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
具体的に、置換基を有してもよいアリール類としては、フェニル、トリル等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキニル類には、置換基を有しないアルキニル類(以下、単に「アルキニル類」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアルキニル類が含まれる。
アルキニル類としては、炭素−炭素三重結合を1個有する炭素数2〜20程度、好ましくは2〜10程度の直鎖又は分枝鎖状アルキニルが挙げられる。具体的には、エチニル、プロピニル等が挙げられる。
置換基としては、例えば、アリール基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルケニル類には、置換基を有しないアルケニル類(以下、単に「アルケニル類」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアルケニル類が含まれる。
アルケニル類としては、炭素−炭素二重結合を1個有する炭素数2〜20程度、好ましくは2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルケニルが挙げられる。具体的には、ビニル、プロペニル等が挙げられる。
置換基としては、例えば、アリール基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
ヒドリド類としては、化学式Hで表されるヒドリドが挙げられる。
ヒドロキシ類としては、化学式OHで表されるヒドロキシが挙げられる。
置換基を有してもよいアルコキシ類には、置換基を有しないアルコキシ類(以下、単に「アルコキシ類」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアルコキシ類が含まれる。
アルコキシ類としては炭素数が1〜20程度、好ましくは1〜10程度の直鎖状、分枝鎖状または環状アルコキシを挙げることができる。具体的には、メトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
置換基としては、例えば、アリール基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリールオキシ類には、置換基を有しないアリールオキシ類(以下、単に「アリールオキシ類」ともいう。)及び1又は複数の置換基を有するアリールオキシ類が含まれる。
アリールオキシ類としては、単環又は多環式アリールと酸素とからなるアリールオキシを挙げることができる。具体的には、フェノキシ等が挙げられる。
置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基や、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含む官能基等が挙げられる。
チオラート類としては、一般式SR5(式中、R5は、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるチオラートを挙げることができる。具体的には、メチルチオラート、フェニルチオラート等が挙げられる。
カルボキシラート類としては、アセテートやベンゾエート等が挙げられる。
ホスフィン類としては、一般式PR6 3(式中、各R6はアルキル基又はアリール基を表し、2以上のR6が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるホスフィンを挙げることができる。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン等が挙げられる。
アミン類としては、一般式NR7 3(式中、各R7は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、2以上のR7が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるアミンや、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン等のアルキレンジアミンが挙げられる。
ピリジン類としては、一般式C5(R85-nHnN(式中、nは1〜5の整数を示す。各R8は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、2以上のR8が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるピリジンや、2,2'-ビピリジン等のビピリジンが挙げられる。
ニトリル類としては、一般式R9CN(式中、R9はアルキル基又はアリール基を表す。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるニトリルを挙げることができる。具体的には、アセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
カルベン類としては、炭素環又は複素環を有するカルベン、例えば、N-ヘテロサイクリックカルベン等が挙げられる。
イソシアニド類としては、一般式R10NC(式中、R10はアルキル基又はアリール基を表す。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるイソシアニドを挙げることができる。具体的には、メチルイソシアニド、フェニルイソシアニド等が挙げられる。
2以上のLが連結して環を形成する場合としては、Lが連結して多座配位子を表す場合が挙げられる。多座配位子としては、例えば、前記ジアミン、前記ビピリジン、又はPh2P(CH2)nPPh2(式中、Phはフェニル基を表す。nは1以上の整数を表す)等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の塩とは、一般式(1)で表される構造が電荷を有し塩を形成したパラジウム化合物塩をいう。
換言すると、下記一般式(4)で表される化合物をいう。
一般式
Figure 2008001619
[式中、R、R、m、n及びLは、前記に同じ;
Zは一般式(1)で表される化合物が帯びる電荷数を表す;
X3は対イオンを表す]
電荷Zは、+2、+1、−1をとりうる。なお、Zが0の場合は、一般式(1)で示した化合物と同一であり、この場合、対イオン(X3)は含まない。
対イオン(X3)の種類及び個数は、一般式(1)で表される化合物と塩を形成するものであれば、特に限定はない。具体例にはBF4 -、PF6 -、PPh4 +、K+、Na+、Li+ 等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の塩の具体例としては、
[Pd3(C7H72Cl3][PPh4]
[Pd3(C7H72(CHCN)3][BF4]2
[Pd3(C7H72(PPh33][BF4]2
などを挙げることができる。
本発明のパラジウム化合物は、シクロヘプタトリエニル類の間に3つのパラジウム原子が集合して、安定なサンドイッチ型(メタロセン型)の化合物を形成している。
本発明のパラジウム化合物は、有機溶媒中に溶解し、多くの場合、固体状態および溶液中で安定である。また、このような場合、室温において空気中で安定である。このような性質により、単離操作が容易で高純度の物質が得られやすく、保存も容易であって、工業的な使用においても取り扱い易いという特徴を有する。
また、本発明のパラジウム化合物は、3つのパラジウム中心を有する複核錯体であり、シクロヘプタトリエニル類との配位部以外に複数の配位座を有し、それらの配位座に多様な配位子が結合可能という特徴も有する。
このような特徴を有する、本発明のパラジウム化合物は、均一系触媒として、広範な有機合成反応に利用することができる。また、各種高分子類や活性炭、酸化物などと結び付けて、再使用可能な不均一系触媒として利用することも可能である。
また、本発明のパラジウム化合物は、触媒として利用できる他、異なる配位子を有するパラジウム化合物を調製するための中間体や、分子集合物質の分子素子材料としても利用できる。
2.製造法
本発明は、更に、上記一般式(1)で表されるパラジウム化合物又はその塩の製造法を提供する。
即ち、上記一般式(1)で表されるパラジウム化合物又はその塩の製造法であって、
パラジウムゼロ価化合物と、
一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びmは前記に同じ。Xは対イオンを表す。]
で表される化合物、及び
一般式
Figure 2008001619
[式中、R及びnは前記に同じ。Xは対イオンを表す。]
で表される化合物を、塩の存在下、有機溶媒中で反応させる工程を含む方法を提供する。
パラジウムゼロ価化合物には、パラジウムゼロ価錯体及び他のパラジウム原料から生じさせたパラジウムゼロ価化合物が含まれる。
パラジウムゼロ価錯体は、ゼロ価のパラジウム(Pd(0))に、適当な配位子が結合して形成される錯体であれば、特に限定はない。具体的には、[Pd(1,5-diphenyl-1,4-pentadien-3-one)] (以下、[Pd(dba)] とも示す。)、Pd(PPh3)4などが挙げられる。
パラジウムゼロ価化合物を生じさせることができるパラジウム原料としては、金属パラジウム、パラジウムブラック、パラジウム二価錯体などが挙げられる。パラジウム二価錯体の具体例としては、Pd(OAc)2などが挙げられる。これらのパラジウム原料から、パラジウムゼロ価化合物を生じさせる方法は、適宜公知の方法に従って行うことができる。
一般式(2)又は(3)で表される化合物は、上記パラジウムゼロ価化合物と反応して、一般式(1)におけるシクロヘプタトリエニル類からなる配位子となる化合物である。
対イオンX及びXの種類は、シクロヘプタトリエニル類と塩を形成するものであれば、特に限定はなく、例えば、BF4 -、PF6 -等が挙げられる。
X及びXは、同一でもあってもよく、異なっていてもよい。換言すると、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
パラジウムゼロ価化合物に対する、一般式(2)及び(3)で表される化合物の割合は、合計で、2〜10当量、好ましくは2〜3当量程度である。
また、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物との割合は、モル比で1:1程度である。
塩は、それ自体が塩を形成できるものであれば、特に限定されない。例えば、ハライド類やカルボキシラート類などのアニオンがカチオンと形成する塩などを用いることができる。
ハライド類としては、クロライド、ブロマイド、ヨード等が挙げられる。
カルボキシラート類としては、アセテートやベンゾエート等が挙げられる。
カチオンとしては、Na+、Li+、K+等のアルカリ金属イオン、一般式R11 4N+(式中、R11はアルキル基又はアリール基を表し、2以上のR11が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるアンモニウムイオン、一般式R12 4P+(式中、R12はアルキル基又はアリール基を表し、2以上のR12が同一であってもよい。アルキル基及びアリール基は前記に同じ。)で表されるホスホニウムイオンなどが挙げられる。
具体的な塩の例としては、Ph4PCl、CH3COONa (以下「NaOAc」とも示す。)などが挙げられる。
これらの塩の一部は、配位子Lとして、一般式(1)に取り込まれてもよい。例えば、塩中のアニオンが一般式(1)で表される配位子Lとなってもよい。
塩の割合は、その種類に応じて適宜設定し得るが、パラジウムゼロ価化合物に対して、0.1〜100程度、好ましくは1〜10当量程度用いられる。
有機溶媒は、原料のパラジウムゼロ価錯体と一般式(2)及び(3)で表される化合物をある程度溶解させるものであれば、特に限定されない。
例えば、メチレンクロライド(CH2Cl2)、アセトニトリル(CH3CN)、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル又はこれらの混合溶媒等を用いることができる。
これらの有機溶媒の一部は、配位子Lとして、一般式(1)に取り込まれてもよい。例えば、有機溶媒として用いたCH3CNが一般式(1)で表される配位子Lとなってもよい。
有機溶媒の量は、適宜設定し得るが、パラジウムゼロ価化合物1gに対して、通常0.1〜1L程度、好ましくは0.2〜0.5L程度である。
反応温度は、適宜設定し得るが、通常10〜40℃、好ましくは20〜30℃程度にて行われる。
また反応時間も、特に限定されないが、一般に5分〜12時間程度である。
この反応の反応系内には、必要に応じて他の成分を適宜添加することもできる。
上記反応で得られた反応物は、常法に従って、適宜単離精製することができる。例えば、反応後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作によって粗反応生成物を分離して、再結晶等の通常の精製操作によって、精製することができる。
上記製造法の具体例としては、下記反応式1で表される工程を含む製造法を挙げることができる。
反応式1
Figure 2008001619
[式中、L、Z、X3は前記に同じ;X4は前記X1及びX2を表す;MX’は塩を表す]。
反応式1において、生成物におけるX3は、原料のX4、即ち前記X1及びX2と同一になる場合もあるが、塩(MX’)のX’と同一になる場合や、塩(MX’)のMと同一になる場合もある。
生成物における配位子Lは、塩から取り込まれる場合もあり、有機溶媒から取り込まれる場合もある。
配位子Lが塩から取り込まれる場合の例としては、塩(MX’)が、ML又はLX’で表される場合が挙げられる。この場合、M及びX’は、それぞれLの対イオンを表す。
また、配位子Lが有機溶媒から取り込まれる場合の例としては、反応式1において、有機溶媒が化合物Lを含む溶媒である場合が挙げられる。
具体的に、配位子Lが塩から取り込まれる場合の例としては、下記反応式2で表される工程を含む方法が挙げられる。
反応式2
Figure 2008001619
[式中、L、X3、X4及びZは前記に同じ。M1はLの対イオンを表す]。
また、配位子Lが有機溶媒から取り込まれる場合の例としては、下記反応式3で表される工程を含む方法が挙げられる。
反応式3
Figure 2008001619
[式中、L、X3、X4、MX’及びZは前記に同じ]。
上記反応式で表される工程を含む製造法によれば、一般式(1)で表される化合物又はその塩を、既知のパラジウム化合物から1段階で、温和な条件で、かつ高収率で製造することができる。
また、本発明の製造法には、上記工程に加え、得られたパラジウム化合物の配位子の全部又は一部を置換する工程、他の化合物と結合させる工程、及びパラジウム原料からパラジウムゼロ価化合物を発生させる工程からなる群から選ばれる1以上の工程を含めることができる。
例えば、配位子を置換する工程の具体例としては、下記の反応式4で表される反応を示すことができる。
反応式4
Figure 2008001619
[式中、L1及びL2は、それぞれ配位子又は配位子となる化合物を表す;n及びXは前記に同じ]。
3.触媒
更に、本発明は、一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる触媒(以下、「本発明のパラジウム触媒」ともいう。)を提供する。
本発明の触媒が利用可能な反応としては、酸化反応、還元反応、各種結合形成反応、重合反応等が挙げられる。
具体的には、アルコールの酸化反応や、二重結合または三重結合の水素化反応、鈴木・宮浦カップリング反応、Heck反応、オレフィン重合反応、およびそのほかの炭素―炭素結合形成反応、炭素−窒素結合形成反応、炭素―酸素結合形成反応などが挙げられる。
例えば、鈴木・宮浦カップリング触媒反応の例としては、下記の反応式を挙げることができる。
反応式5
Figure 2008001619
[式中、Ar及びArは、1又は複数の置換基(−R13)を有してもよいアリール基を表す。R13は、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。複数の置換基が有る場合、R13は同一でもよく、異なってもよい;
Xは、ハロゲン原子を表す]。
反応式5において、アルキル基、アリール基及びアルコキシ基は、前記した通りである。 ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
各反応における触媒量は、反応や基質の種類に応じて、適宜設定し得る。
本発明のパラジウム触媒は、均一系触媒として、各種溶媒に溶解して利用することが可能である。
また、本発明のパラジウム触媒を、各種高分子類や活性炭、或いはシリカ等の酸化物などと結び付けて、不均一系触媒とすることもできる。これにより、回収して再使用可能な触媒として利用することも可能である。
また本発明のパラジウム触媒は、配位子構造を適宜設計することにより、立体選択的な反応に利用することも可能である。
本発明によれば、パラジウムを中心金属とし、シクロヘプタトリエニル類を配位子として有する、安定で取扱いが容易なサンドイッチ型新規パラジウム化合物が提供される。
本発明のパラジウム化合物は、パラジウム分子触媒として、広範な有機合成反応において利用可能であり、また、各種高分子類や活性炭、酸化物などと結びつけて、再利用可能な触媒として利用することも可能である。
また、本発明のパラジウム化合物は、触媒だけでなく、異なる配位子を有するパラジウム化合物を調製するための中間体や、分子集合物質における分子素子材料として利用することも可能である。
更に、本発明によれば、当該パラジウム化合物の製造法が提供される。本発明の製造法によれば、本発明の新規パラジウム化合物を、既知のパラジウム化合物から、1段階で、温和な反応条件で、かつ高収率で得ることができる。
更に、本発明によれば、前記本発明のパラジウム化合物からなる触媒が提供される。本発明の触媒は、各種酸化反応、各種還元反応、各種結合形成反応、重合反応などの触媒として利用し得る。
このように、本発明は、新規パラジウム化合物、その製造法、並びに該化合物からなる触媒を提供するものであり、種々の有機合成反応や高性能触媒又は新たな分子材料の開発等を可能にするものである。
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにするが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
実験条件
特定しない限り、全ての反応は、窒素雰囲気下で行った。しかし、実際には空気中でおこなっても差し支えない場合も多い。
1H、13CNMRスペクトルは、270-(JEOL GSX-270)、400-(JEOL GSX-400, JEOL ECP-400)又は600MHZ(Varian UNITY-INOVA 600)機器を使用して得た。ケミカルシフトは、重水素化溶媒の残余共鳴と照合した。
元素分析は、大阪大学工学部分析センターで行った。
全ての試薬は、特定しない限り、市販の物を購入し、精製せずに用いた。尚、TCIは東京化成工業株式会社、WAKOは和光純薬工業株式会社を示す。
CH2Cl2、CD2Cl2、ClCH2CH2Cl、CH3CN及びCD3CNは使用前に水素化カルシウムを乾燥剤として用いながら蒸留した。
Pd2(dba)3は、文献(J. Organomet. Chem. 1974, 65, 253)に記載の方法に従って、調製した。
X線構造解析は、Rigaku RAXIS-Rapid Imaging Plate diffractometerを用いて測定した。MoKαを用い、−150℃で回折データを収集した。構造解析はPatterson法を用い、full-matrix least square法により精密化した。
なお、以下の実施例及び製造例において、Trはシクロヘプタトリエニル(C7H7)を表す。またPhはフェニル基を表す。
実施例1:[Pd 3 Tr 2 Cl 3 ][PPh 4 ]の合成
[C7H7][BF4](46mg、0.257mmol、TCI)及びPh4PCl(361mg、0.965mmol、TCI)からなる溶液に、CH2Cl2(30mL)中で、Pd2(dba)3(200mg、0.193mmol)を添加し、混合物を10分間室温(25℃程度)で攪拌した。その溶液を濾過し、濾過物を濃縮し、ジエチルエーテルを添加して、濃いピンク色の沈殿物を得た。加熱したCH3CN(60℃)に生成物を溶解させ、これを冷却する方法で再結晶を行い、ワインレッド色の[Pd3Tr2Cl3][PPh4]の微結晶(88mg、収率72%)を得た。
得られた化合物の解析結果は以下のとおりであった。
元素分析
Anal.Calcd.for C38H34Cl8PPd3・H2O:C,47.28;H,3.76.
Found:C,47.42;H,3.84.
NMRスペクトル
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2,25℃):
δ7.93(m,4H,H4)、7.76(m,8H,H3)、7.62(m,8H,H2)、4.60(s,14H,H1).
13C{1H}-NMR(100.5MHz,CD2Cl2,25℃):
δ136.4(d, J=3.0Hz,C5)、135.0(d, J=10.8Hz,C3)、131.2(d, J=13.1Hz,C4)、118.1(d, J=90.1Hz,C2)、75.9(s,C1).
31P{1H}-NMR(CD2Cl2,25℃):
δ23.88(s,P1).
尚、括弧内の各記号は、下記化合物の原子に対応する。:
Figure 2008001619
X線構造解析
結晶の熱振動楕円体(50%)図面を図1に示す。尚、明確に示すため、水の部分は省略している。また、結合長(A(angstrom))と結合角(deg)の一部を下記に示す。尚、括弧内の数値は標準偏差を示す:
Pd1-Pd2, 2.7550(5); Pd2-Pd3, 2.7446(5); Pd3-Pd1, 2.7889 (5); Pd1-Cl1, 2.471(1); Pd2-Cl2, 2.471(1); Pd3-Cl3, 2.442(1); Pd1-C1, 2.155(5); Pd1-C2, 2.279(5); Pd2-C3, 2.194(5); Pd2-C4, 2.195(5); Pd3-C5, 2.342(6); Pd3-C6, 2.149(5); Pd3-C7, 2.610(6); Pd1-C7, 2.760(6); Pd1-C8, 2.145(6); Pd1-C9, 2.465(6); Pd2-C10, 2.176(5); Pd2-C11, 2.229(5); Pd3-C12, 2.246(5); Pd3-C13, 2.150(5); Pd3-C14, 2.794(6); Pd1-C14, 2.530(6); Pd1-Pd2-Pd3, 60.94(1); Pd2-Pd3-Pd1, 59.71(1); and Pd3-Pd1-Pd2, 59.34(1).
結合距離を分析したところ、シクロヘプタトリエニル類の7員環を形成する炭素とパラジウム原子との距離は、2.1オングストロームから2.8オングストローム程度であり、シクロヘプタトリエニル類とパラジウムの間に、配位結合が存在する。
この結果、得られた化合物が下記構造を有することが確認された。
Figure 2008001619
上記反応例を反応式で示すと、以下のようになると考えられる。
反応式6
Figure 2008001619
更に、得られた化合物[Pd3Tr2Cl3][PPh4]の1,2-ジクロロエタン溶液を、空気中、60℃で1週間放置しても、分解物は観察されなかった。
実施例2:[Pd 3 Tr 2 (CH CN) 3 ][BF 4 ] 2 の合成
実施例1で得られた[Pd3Tr2Cl3][PPh4](50mg、0.053mmol)及びAgBF4(31mg、0.159mmol、 Aldrich)の混合物を、CH3CN(20mL)中、室温で10分間攪拌した。濾過後、トルエンを添加し、合成されたオレンジ色の粉末を回収し、トルエンとn-ヘキサンで洗浄し、真空中で揮発物を除去し、分析的に純粋な化合物[Pd3Tr2(CHCN)3][BF4]2を得た(36mg、収率85%)。
得られた化合物の解析結果は以下のとおりであった。
元素分析
Anal.Calcd.for C20H23B2FN3Pd3・H2O:C,29.43;H,3.09;N,5.15. Found:C,29.20;H,2.75;N,4.71.
NMRスペクトル
1H-NMR(400MHz,CD3OD,25℃):
δ4.93(s,14H,H1)、2.21(s,9H,H2).
13C{1H}-NMR(100.5MHz,CD3OD,25℃):
δ120.46(s,C2)、81.67(s, C1)、1.35(s, C3).
尚、括弧内の各記号は、下記に示す化合物の原子に対応する。:
Figure 2008001619
この結果、得られた化合物が下記構造を有することが確認された。
Figure 2008001619
実施例3:[Pd 3 Tr 2 (CH CN) 3 ][BF 4 ] 2 の合成
[C7H7][BF4](46mg、0.257mmol、TCI)及びNaOAc(79mg、0.965mmol、WAKO)からなる溶液に、CH2Cl2(20mL)及びCH3CN(30mL)中で、Pd2(dba)3(200mg、0.193mmol)を添加し、混合物を1時間室温で攪拌した。その溶液を濾過した。濾過物にトルエンを加え、オレンジ色の沈殿物を得た。沈殿物をトルエン及びn-ヘキサンで洗浄し、分析的に純粋な化合物[Pd3Tr2(CHCN)3][BF4]2を得た(91mg、収率89%)。
得られた化合物の解析結果は以下のとおりであった。
元素分析
Anal.Calcd.for C20H23B2FN3Pd3・H2O:C,29.43;H,3.09;N,5.15. Found:C,29.20;H,2.75;N,4.71.
NMRスペクトル
1H-NMR(400MHz,CD3OD,25℃):
δ4.93(s,14H,H1)、2.21(s,9H,H2).
13C{1H}-NMR(100.5MHz,CD3OD,25℃):
δ120.46(s,C2)、81.67(s, C1)、1.35(s, C3).
尚、括弧内の各記号は、下記に示す化合物の原子に対応する。:
Figure 2008001619
この結果、得られた化合物が、下記構造を有することが確認された。
Figure 2008001619
上記反応例を反応式で示すと、以下のようになると考えられる。
反応式7
Figure 2008001619
実施例4:[Pd 3 Tr 2 (PPh 3 3 ][BF 4 ] の合成
PPh3(82.0mg、0.315mmol、WAKO)に、CH2Cl2(20mL)中、実施例2で得られた[Pd3Tr2(CHCN)3][BF4]2(50mg、0.063mmol)を添加し、混合物を室温で10分間攪拌した。濾過後、トルエンを添加し、濾過物に添加し、赤い沈殿物を得た。沈殿物を、トルエンとn-ヘキサンで洗浄し、真空中で揮発物を除去し、分析的に純粋な化合物[Pd3Tr2(PPh33][BF4]を得た(80mg、収率87%)。
得られた化合物の解析結果は、以下の通りであった。
元素分析
Anal.Calcd.for C68H59B2F8P3Pd3・H2O:C,55.18;H,4.15.
Found:C,54.66;H,4.13.
NMRスペクトル
1H-NMR(400MHz,CD2Cl2,25℃):
δ7.60(t,J=7.6Hz,9H,H4)、7.54(t,J=7.6Hz,18H,H3)、7.25(q,J=6.8Hz,18H,H2)、4.03(s,14H,H1)
13C-NMR(100.5MHz,CD2Cl2,25℃):
δ134.0(q, J=3.8Hz,C3)、132.8(s,C5)、130.2(q, J=3.8Hz,C4)、129.4(q, J=11.5Hz,C2)、72.2(s,C1).
31P-NMR(CD2Cl2,25℃):
δ18.34(s,P1)
尚、括弧内の各記号は、下記に示す化合物の原子に対応する。:
Figure 2008001619
この結果、得られた化合物が下記構造を有することが確認された。
Figure 2008001619
試験例1
実施例1で得られた化合物[Pd3Tr2Cl3][PPh4]を触媒量(3mol%)で用い、4−ブロモアセトフェノン(4-bromoacetophenone、TCI)とフェニルボロン酸(phenylboronic acid 、TCI)との鈴木・宮浦反応を、60℃でCs2CO3(WAKO)の存在下に行ったところ、反応が進行し、反応時間3日で、収率75%以上となった。
また、化合物[Pd3Tr2Cl3][PPh4]に代えて実施例2で得られた化合物[Pd3Tr2(CHCN)3][BF4]2を用いる以外は同じとして、同様の反応を行った場合も、同様に反応が進行した。
当該反応を、反応式で示すと以下のようになる。
反応式8
Figure 2008001619
実施例1で得られた化合物[Pd3Tr2Cl3][PPh4]のX線構造解析結果における、熱振動楕円体(50%)図面である。尚、明確に示すため、水の部分は省略している。

Claims (3)

  1. 一般式
    Figure 2008001619
    [式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
    m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、R2は同一でもよく、異なってもよい;
    Lは配位子を表す。]
    で表されるパラジウム化合物又はその塩。
  2. 一般式
    Figure 2008001619
    [式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
    m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、R2は同一でもよく、異なってもよい;
    Lは配位子を表す。]
    で表されるパラジウム化合物又はその塩の製造方法であって、
    パラジウムゼロ価化合物と、
    一般式
    Figure 2008001619
    [式中、R及びmは前記に同じ;Xは対イオンを表す]
    で表される化合物と、
    一般式
    Figure 2008001619
    [式中、R及びnは前記に同じ;Xは対イオンを表す]
    で表される化合物を、塩の存在下、有機溶媒中で反応させる工程を含む方法。
  3. 一般式
    Figure 2008001619
    [式中、R及びR2は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、シリル基又はシロキシ基を表し、或いは、RとR2は連結して橋架け基を形成してもよい;
    m及びnは、同一又は異なって、1〜7の整数を表す。mが2以上である場合、Rは同一でもよく、異なってもよい。nが2以上である場合、R2は同一でもよく、異なってもよい;
    Lは配位子を表す。]
    で表されるパラジウム化合物又はその塩からなる触媒。
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