JP2007535977A - 改善された火炎抑制エアロゾル発生剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、迅速に且つ低温で燃焼する火工品エアロゾル火炎抑制組成物を対象とする。本発明の組成物の迅速な燃焼は、小さい火および大きい火の両方を抑制および/または消火するのに有用な、容積の大きい火炎抑制剤エアロゾルを生成する。本発明の組成物は、少なくとも一つの酸化剤と、少なくとも一つの有機酸塩を含む燃料成分とを含んでおり、この組合せは少しの火炎しか伴わずに、または全く火炎を伴わずに低温で燃焼する、迅速に燃焼する組成物を生じる。

Description

発明の技術分野
本発明は、改善された火炎抑制エアロゾル発生剤(generant)に関し、特に、カリウム塩酸化剤および有機酸カリウム塩の混合物を含む組成物に関する。
発明の背景
火炎抑制剤は、能動的(化学的)または受動的(物理的)な抑制剤に分類される。能動的抑制剤は、火炎の中の遊離基と化学的に反応してこれを破壊する。遊離基は、火炎反応を触媒する非常に短寿命の化学種である。カリウム塩、特にハロゲン化物の作用によるその除去は、火炎を消火するために、更には銃の二次的銃口閃光を低下させるために使用されてよい。
能動的抑制剤の一つの形態は、ハロン(Halon;商標)と称する種類の材料であり、これは臭素化または塩素化されたフッ化炭素化合物、例えばブロモクロロジフルオロメタン(CF2BrCl)、およびトリフルオロブロモメタン(CF3Br)で構成されている。ハロン(商標)材料は、典型的には電気装置を保護するための火炎抑制剤として、長年に亘って効果的に使用されてきているが、これは清掃すべき残渣が非常に僅かしか存在しないからである。ハロン(商標)火炎抑制剤は、典型的には、燃料が燃焼するときに生じる化学反応を中断し、また化学的効果(例えば遊離基のクエンチング)および幾つかの物理的効果(例えば燃焼の冷却および燃焼成分の希釈)の組み合わせに依存する。しかし、CF3Brのような一定のハロゲン含有火炎抑制剤は、成層圏オゾンの破壊に寄与する。ハロン(商標)材料は、本質的には無毒であるが、火炎を通過しまたは熱表面上を通過すると、幾らかの非常に有毒なフッ素化合物を生じる。
ハロン(商標名)に伴う環境的影響を低減するために、今日設計されている商業的に最も入手し易い火炎抑制剤は、受動的、即ち、物理的に作用する抑制剤である。受動的抑制剤は、火炎と化学的に反応することはない。これらの火炎抑制剤は、燃焼物質を覆って酸素を奪うか、または環境中の酸素を希釈して火炎を維持できる点未満にし、または燃焼表面をその発火温度未満に冷却する。
物理的に作用する火炎抑制剤の例には、炭酸水素ナトリウムおよび砂、並びに不活性ガス、例えば二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)および窒素(N2)が含まれる。火に適用されるとき、不活性ガスは燃焼領域から酸素を物理的に排除すると同時に、火炎の温度を低下させるためのヒートシンクとして働く。この二つの物理的作用の組合せが、火炎の抑制をもたらす。ガス状の受動的抑制剤は、生命維持量未満にまで酸素含量を低下させるであろうから、占有空間における全体の充満剤として使用することはできない。これは、特に二酸化炭素について当てはまるものであるが、それは高濃度において人間の呼吸を妨げるからである。
不運なことに、物理的に作用する火炎抑制剤は、化学的に作用する火炎抑制剤よりも効率が低い傾向にある。従って、火炎を抑制するためには大量の物理的作用性火炎抑制剤が必要とされ、その結果として、大量の薬剤を収容するために装置および倉庫も大きくしなければならない。このような大きな装置は、制限された空間においては欠点である。空間および重量が制限される応用には、軍用または民間用の航空機または地上車両のエンジン室、自動車、宇宙船、または軍用もしくは民間用の航空機のドライベイが含まれる。乾燥した物理的抑制剤のもう一つの欠点は、それらを設置するために、物理的吹付けまたはシャベルでの取扱いを必要とするそれらの粒子サイズにある。また、これら粒子の大きなサイズは、隠れたまたは比較的アクセスし難い燃焼領域への該火炎抑制剤の侵入を妨げる。
その結果、比較的小さい領域には、典型的には、人間が操作することを必要とする手持ち型の消化器が備えられる。航空機の貨物室、並びに船舶および列車の貨物コンテナは、一般にはモニターされないままなので、これら領域における火は、誰かがその存在に気付く前に大事に至る可能性がある。これら比較的小さい領域からの火の広がりは、車両全体の喪失を生じる可能性がある。このような領域における現在の火炎抑制方法は、人間の介入に依存するものであり、このような介入が、火が広がって大規模な損害を生じるのを防止するために充分に迅速に生じることを条件とするものである。
上記抑制剤システムに対する有利な代替法は、火工技術により発生された(pyrotechnically-generated)エアロゾル火炎遊離基抑制剤を使用することである。この生成法は、それらの自由落下速度が閉じ込められた空間における空気流の速度よりも小さくなる程度にまで微小な粒子を提供する。該粒子自身は、火工化学発生器の排気ガス中に懸濁されたまま残り、航空機貨物のサブコンテナ(例えば商業的航空機に使用されるLD−3コンテナ)の内部に見られるような隠れた火さえも探し出す。エアロゾルの煙霧状懸濁物の特徴は長い「空中浮遊時間」を提供し、該用語は単回の発生器作動によって、火炎の再発を抑制し続けることができる時間の長さを意味する。このような火工化学的に発生したエアロゾルのもう一つの利点は、それらのオゾン剥奪能力がゼロに近づき得ること、それらの吸入毒性が不活性ガスの場合よりも遥かに低くなり得ること、および火炎を通過しまたは熱表面と接触したときに毒性の刺激性ガスが発生しないことである。
現在知られている火工品火炎抑制エアロゾル発生組成物の使用には、問題が多い。例えば、このようなエアロゾル発生組成物は幾つかの熱安定性の問題を有しており、また機械的衝撃または摩擦による偶然の発火に対して顕著に敏感である。この敏感さは、その製造、保存および使用における安全性の問題を提起する。
従来技術のエアロゾル発生性の火炎抑制剤は、典型的には、過度に熱く且つ破壊性のガスを生じる。このようなガスは、永久ガスおよび抑制剤蒸気を、それがエアロゾル(火炎抑制剤が送達される形態である)へ凝集される前に、含み得る。これらのガスが冷却されないと、構造物、機械、貨物および生物が損傷を受ける可能性がある。閉じ込められた空間における火災では、熱ガスが迅速に上昇して、底部にある火の上にまでエアロゾル火炎抑制剤を運ぶため、そこでは該抑制剤は火を消すことができない。
しかし、固体冷却剤の使用は、エアロゾル発生火炎抑制剤の少なくとも一部を凝集およびトラップし、火炎の消化においてそれを無効にする。その結果、より多量のエアロゾル発生火炎抑制剤を使用することが必要とされ、不利益なことに、追加の熱および破壊性ガスを生じる。更に、固体冷却剤は重くかつ嵩張り、多くの場合、エアロゾル発生火炎抑制剤の2倍または6倍の重量および容積である。加えて、冷却剤は一酸化炭素のような有毒ガスを発生し、近くにいる人に危害を与えることが多い。
このように、当該技術においては、クリーンで、効果的で、毒性がなく、オゾンを剥奪せず、且つ安価な火炎消化剤が必要とされている。
発明の概要
本発明は、式M(XOxy(式中、MはIA族原子、IIA族原子およびIIIA族原子から選択され、XはCl、BrおよびIからなる群から選択され、xは1〜4であり、yは1〜3である)で表される酸化剤;および、シアヌル酸メラミン、有機酸のIA族塩もしくはIIA族塩、またはそれらの混合物を含有する燃料成分を含む火工品(pyrotechnic)エアロゾル火炎抑制剤組成物であって、前記有機酸は、シアヌル酸、イソシアヌル酸、バルビツール酸、ヒドロキシ酢酸、
Figure 2007535977
(式中、nは0〜4である)
およびそれらの混合物からなる群から選択され、かつ、
前記酸化剤は、前記燃料成分よりも大きい重量パーセントの量で存在する火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物に関する。
好ましい実施形態において、酸化剤M(XOxyのMは、カリウムおよびナトリウムからなる群から選択される。もう一つの好ましい実施形態において、酸化剤式M(XOxyのXOxは、クロレート、ブロメート、イオデート、パークロレートおよびクロライトからなる群から選択される。より好ましい実施形態において、XOxはブロメートである。従って、M(XOxyは、好ましくは、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される。一つの実施形態において、前記酸化剤は全組成物の約70重量%以下の量で存在する。
好ましい実施形態において、前記燃料成分は、シアヌル酸メラミンン、またはシアヌル酸、イソシアヌル酸、バルビツール酸、ヒドロキシ酢酸もしくは酒石酸のIA族塩もしくはIIA族塩である。もう一つの好ましい実施形態において、前記燃料成分は、シアヌル酸カリウム、酒石酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、酒石酸マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。該燃料成分は、全組成物の約40重量%以下の量で存在する。
一つの実施形態において、酸化剤:燃料成分の重量比は、約3:2〜約4:1である。更にもう一つの実施形態において、本発明の組成物は更に、珪酸塩、セルロース誘導体、セルロースエーテル、アルギン酸バインダ、ガム、ゲル、ペクチン、澱粉、ポリビニル化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択されるバインダ、並びに任意に、グリセロールまたはグリコールからなる群から選択されるポリオールを含有してもよい。
本発明はまた、式M(XOxy(式中、MはIA族原子、IIA族原子およびIIIA族原子から選択され、XはCl、BrおよびIからなる群から選択され、xは1〜4であり、yは1〜3である)で表される酸化剤と;シアヌル酸メラミン、有機酸のIA族もしくはIIA族塩、またはそれらの混合物を含有する燃料成分とを組合せることにより、火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を提供する工程、
ここで、前記有機酸は、シアヌル酸、イソシアヌル酸、バルビツール酸、ヒドロキシ酢酸、
Figure 2007535977
(式中、nは0〜4である)
からなる群から選択され、かつ、前記酸化剤は、前記燃料成分よりも大きい重量パーセントの量で存在する;
前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を点火し、複数の燃焼生成物を含有するエアロゾルを発生させる工程、ここで前記アエロゾルは速度(velocity)を有する;および、
該エアロゾルを、前記火炎を抑制するのに十分な量で火炎に適用する工程
を含む、火炎を抑制する方法に関する。
好ましい実施形態において、前記酸化剤は、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、およびその混合物からなる群から選択され、また前記燃料成分は、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸カリウム、イソシアヌル酸カリウム、バルビツール酸カリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、酒石酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、イソシアヌル酸マグネシウム、バルビツール酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、酒石酸マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。各々の場合に、水性溶液中での酸性燃料のpHを6.5超、好ましくは7.0超で、且つpH11未満に上昇させるために、酸性燃料部分に結合した充分な金属が存在する。もう一つの実施形態において、火工品エアロゾル火炎抑制組成物は、燃焼して、H2O、CO2、窒素、ハロゲン化物塩、炭酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される燃焼生成物を形成する。一つの実施形態において、火工品エアロゾル火炎抑制組成物の燃焼熱は約250カロリー/グラム〜約600カロリー/グラムである。
好ましい実施形態において、当該方法は、約3:2〜約4:1の酸化剤:燃料の重量比を利用する。更にもう一つの実施形態において、火工品エアロゾル火炎抑制組成物は、約1.97〜約23.6秒/cm(約5〜約60秒/インチ)の燃焼速度を有する。
好ましい実施形態において、火工品エアロゾル火炎抑制組成物は、更に、バインダを含有する。もう一つの実施形態において、当該方法は、少なくとも一つの整形された固体ユニットにプレス加工される火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を利用し、該少なくとも一つの整形された固体ユニットはシリンダ、スラブ、ブロック、または円錐体である。好ましくは、少なくとも一つの整形された固体ユニットは、少なくとも一つの開口部または通気孔、および点火アセンブリーを有する容器またはケーシング内に配置される。もう一つの実施形態において、前記点火アセンブリーの少なくとも一部は、前記少なくとも一つの整形された固体ユニットの点火を開始させる。
本発明はまた、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化剤と、シアヌル酸カリウム、イソシアヌル酸カリウム、バルビツール酸カリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、酒石酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、イソシアヌル酸マグネシウム、バルビツール酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、酒石酸マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される燃料成分とを、約3:2〜約4:1の酸化剤:燃料の重量比で組合せることによって、火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を準備する工程;この火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を点火して、複数の燃焼生成物を含有するエアロゾルを発生させる工程、ここで前記アエロゾルは速度を有する;および、該エアロゾルを、火炎を抑制するのに充分な量で前記火炎に適用する工程を含む、火炎を抑制する方法に関する。
好ましい実施形態において、前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、約1.97〜約23.6秒/cm(約5〜約60秒/インチ)の燃焼速度を有する。
発明の詳細な説明
本発明は、迅速にかつ比較的低温で燃焼する火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を対象とする。本発明の組成物の迅速な燃焼は、小さい火および大きい火の両方を抑制すること、および/または消火することにおいて有用な、多量の火炎抑制剤エアロゾルを生じる。これらの組成物は閉じ込められた空間、例えば部屋、エンジン区画、航空機または他の船におけるドライベイスペース、火事になり易い電子ボリューム、または何らかの他の閉じられた空間において特に有用である。本発明の組成物は、少なくとも一つの酸化剤、および少なくとも一つの有機酸塩を含有する燃料成分を含んでおり、この組合せは火炎を少ししか伴わず、または全く伴わずに低温で燃焼する迅速燃焼性組成物を生じる。ここで使用する「火」および「火炎」の用語は、全ての酸化的燃焼および他の燃焼プロセスを含むように使用される。
組成物
本発明の組成物は、好ましくは低圧で迅速に燃焼し、非毒性の生成物を生じ、機械的衝撃または摩擦による偶然の発火に対して安定であり、迅速に煙が立たず、無臭で、認識可能な火炎を伴わずに燃焼する。典型的には、本発明の組成物は、低い燃焼熱を有する物質を含み、有毒且つ破壊的な副生成物を最小限にするようにクリーンに燃焼する。これらの燃焼特性を達成するために、当該火工品エアロゾル火炎抑制組成物は、酸化剤としての少なくとも一つの無機ハロゲンもしくは硝酸塩成分またはその混合物、および燃料成分としての少なくとも一つの有機塩を含み、ここで、前記少なくとも一つの無機ハロゲンもしくは硝酸塩酸化剤またはその混合物は、前記少なくとも一つの有機塩よりも大きな重量パーセント量で存在する。ここで使用する「無機ハロゲン」の用語は、無機ハロゲン酸塩、無機過ハロゲン酸塩、および無機ハロゲン化物を含むものである。酸化剤が無機ハロゲンおよび無機硝酸塩の混合物である他の実施形態においては、燃焼速度、コストまたは組成物の感受性を低下させるために、無機硝酸塩成分は、典型的にはハロゲン含量の約1〜約50重量%である
本発明の組成物に使用される酸化剤は、典型的には強い酸化剤であり、硝酸、XO3(即ちハロゲン酸)、XO4(即ち過ハロゲン酸)、XO2(即ち亜ハロゲン酸)のIA族、IIA族、IIIA族の塩を含むが、これらに限定されず、ここでのXは、F,Cl、BrおよびIからなる群から選択される。従って、一つの実施形態において、酸化剤は式M(XOxyで表され、ここでのMはIA族原子、IIA族原子、IIIA族原子から選択され、xは1〜4であり、yは1〜3である。抑制性のハロゲン化物塩、例えばIA族、IIA族、またはIIIA族のハロゲン化物塩が、当該組成物に添加されてよく、これらの塩は反応の冷却領域において蒸発および再凝集し、それによって当該エアロゾルの抑制力を増大し、また当該組成物の燃焼温度および速度を低下させることができる。典型的には、抑制剤のハロゲン化物塩は、約0.1〜約20重量%、好ましくは約1〜約15重量%で存在する。もう一つの実施形態において、該抑制剤のハロゲン化物塩は、約3〜約10重量%で存在する。アンモニウムまたはアルキルアミン塩を含有する組成物は、当該組成物の取扱い感受性を過度に増大させる可能性があるので、あまり望ましくはない。
XOxは、好ましくは、過ハロゲン酸イオン(perhalate)(xは4);亜ハロゲン酸イオン(halite)(xは3);亜ハロゲン酸イオンまたは過ハロゲン酸イオン(xは2)である。特に好ましいXOxには、クロレート、ブロメート、イオデート、パークロレート、パーイオデート、クロライト、またはそれらの混合物が含まれる。最も好ましいXOxは、ブロメートである。
一つの実施形態において、Mは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択されるIA族原子である。もう一つの実施形態において、Mは、ストロンチウムおよびマグネシウムからなる群から選択されるIIA族原子である。更にもう一つの実施形態において、MはIIIA族原子、特にアルミニウムである。好ましいMは、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される。カリウム種は、顕著なレベルの火炎抑制活性を有することが示されているので、化学的に作用する火炎抑制剤として特に有用である。従って、最も好ましい実施形態において、Mはカリウムである。
従って、本発明の組成物に使用される酸化剤の例には、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、臭素酸リチウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、ヨウ素酸リチウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸アルミニウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アルミニウム、過ヨウ素酸リチウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸アルミニウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸アルミニウム、亜臭素酸リチウム、亜臭素酸ナトリウム、またはそれらの混合物が含まれる。本発明の組成物に使用される特に好ましい酸化剤には、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、またはそれらの混合物が含まれる。更に好ましくは、前記酸化剤には、臭素酸カリウムまたは臭素酸ナトリウムが含まれる。これら酸化剤の混合物を使用して、燃焼の速度を制御することができる。例えば、燃焼速度およびコストを低下させるために、臭素酸カリウムの一部を、硝酸カリウムまたは硝酸ナトリウムで置換えてもよい。
一つの実施形態において、前記酸化剤は、全組成物の約70重量%以下の量で当該組成物中に存在する。もう一つの実施形態において、前記酸化剤は、全組成物の約60重量%以下の量で存在する。他の実施形態において、前記酸化剤は、全組成物の約50重量%以下の量、全組成物の約40重量%以下の量、更には全組成物の約35重量%以下の量で存在する。
一つの実施形態において、本発明の組成物は、主酸化剤として、臭素酸カリウムまたは臭素酸ナトリウムを含有する。もう一つの実施形態では、燃焼速度を最適化するために、臭素酸カリウムまたは臭素酸ナトリウムが、もっと遅い燃焼剤、例えばヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸アンモニウム、硝酸カリウムと組み合わされる。更にもう一つの実施形態において、炭酸マグネシウムのような炭酸塩の添加は、燃焼反応を遅くすると同時に、より多くの二酸化炭素ガスを供給する。二酸化炭素ガスの生成は、任意の容積の酸素を排除し、これはいずれの火炎または火が燃焼し続けるのを防止する。追加の燃焼遅延剤を、全酸化剤の25重量%以下の量で添加することができる。燃焼速度およびその最適化の測定は、それぞれ当業者によって容易に理解される。
前記燃料成分には、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、バルビツール酸、ヒドロキシ酢酸の有機塩、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。該燃料成分はまた、他の有機酸の塩であってよく、これには次式のヒドロキシアルカン二酸、例えば酒石酸の塩が含まれる。
Figure 2007535977
(式中、nは0〜4である。)
燃料成分における有機塩は、好ましくはIA族またはIIA族の塩である。従って、本発明の組成物における有機塩の使用の好ましい例には、シアヌル酸リチウム、シアヌル酸ナトリウム、シアヌル酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、イソシアヌル酸リチウム、シアヌル酸ナトリウム、シアヌル酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、バルビツール酸リチウム、バルビツール酸ナトリウム、バルビツール酸カリウム、バルビツール酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸リチウム、ヒドロキシ酢酸ナトリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸マグネシウム、またはこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。燃料成分における特に好ましい有機塩は、シアヌル酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、酒石酸カリウム、酒石酸マグネシウム、またはそれらの混合物である。
一つの実施形態において、前記有機塩は、全組成物の約50重量%以下の量で当該組成物中に存在する。もう一つの実施形態において、前記有機塩は全組成物の約40重量%以下の量で存在する。更にもう一つの実施形態において、前記有機塩は全組成物の約25重量%以下の量で存在する。
例えば、臭素酸カリウムおよび酒石酸マグネシウムのような、酸化剤:燃料成分を1:1の重量比で含む組成物は、迅速に燃焼するが、多量の残渣を生じる。有機塩成分に比較して高い重量の酸化剤を含有する組成物は、迅速に、且つ少量の無機残渣しか伴わずにクリーンに燃焼することが発見されている。本発明の組成物において、酸化剤は有機塩よりも大きな量で存在する。従って、酸化剤:有機塩の重量比は、典型的には約1:1よりも大きく、よりクリーンな燃焼組成物を可能にする。一つの実施形態において、酸化剤:有機塩の重量比は、約3:2〜約4:1である。もう一つの実施形態において、酸化剤:有機塩の重量比は、約11:9〜約3:1である。好ましい実施形態において、酸化剤:有機塩の重量比は、約3:2の比率である。驚くべきことに、有機塩に対する酸化剤の高い量、特に、酸化剤:有機塩の比が約3:2であるときには、当該混合物はより迅速且つクリーンに燃焼することが見出された。ここに記載する範囲の全ての上限および下限は、新しい限界を形成するように交換することができる。従って、本発明はまた、約11:9〜約3:1、約11:9〜3:2、更には約4:1〜約3:1の酸化剤:有機塩の重量比を包含するものである。
一つの実施形態では、約15重量%未満の酸化剤/有機酸が、燃焼後の残渣として残留する。もう一つの実施形態では、約10重量%未満の酸化剤/有機酸が、燃焼後の残渣として残留する。
本発明の火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、広範な冷却が必要とされない程の低温において本質的に無毒の燃焼生成物を生じるため、閉じ込められた空間における使用のために特に有利である。この反応生成物は、H2O、CO2、窒素、臭化物のようなハロゲン含有副生成物、および炭酸塩、例えばKBR、K2CO3、MgBr2またはMgCO3を含む可能性がある。 ハロゲン含有副生成物中に存在するハロゲンの種類は、当該火炎抑制組成物中に存在する無機ハロゲン含有成分に依存する。本発明の組成物は、一酸化炭素のような有毒な生成物の有意な量での形成を回避する。
当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の燃焼熱は、約250カロリー/グラム〜約600カロリー/グラムである。もう一つの実施形態において、当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の燃焼熱は、約300カロリー/グラム〜約500カロリー/グラムである。特に好ましい実施形態において、該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の燃焼熱は、約400カロリー/グラム〜約450カロリー/グラムである。本発明の組成物の燃焼熱は、米国特許第5,861,106号および同第6,019,177号に開示されているような(ここに記載されている組成物の燃焼熱は約860カロリー/グラムである)、当該技術における他の組成物の燃焼熱よりも低い。
これらの燃焼生成物は、本発明に従って火炎を抑制および/または消火するために、火炎に適用される。不燃性ガス中に懸濁されているハロゲン化物および炭酸塩は、高比熱の生成物を用いて火炎を物理的に冷却するように作用する。小さな火の場合、この要素は単独でも火炎を消すために充分であろう。ハロゲン化物塩、特に臭化物塩は、その原子ラジカルの安定性の故に、火炎の化学を効果的に妨害する。何等かの特定の理論に拘束されるものではないが、火炎ゾーンに供給されると、上昇した温度がハロゲン化物塩の熱分解、例えば、KBr→K++Br-を生じる。この熱的に発生した原子ラジカルは、次いで燃焼反応に存在するラジカル種と結合し、それによって燃焼プロセスをクエンチまたは終了させる。
上述のように、臭素酸カリウムが主要な酸化剤として使用されるとき、本発明の組成物の燃焼生成物は、KBrのようなハロゲン化物を含む可能性がある。前記エアロゾルの火炎抑制特性を増大させるために、少量の追加の粉末臭化カリウム、塩化カリウム、またはヨウ化カリウムを当該組成物に添加してよい。反応の際に、臭素酸カリウム酸化剤は臭化カリウムに還元され、これはエアロゾル形態で直ちに反応して火炎を抑制する。従って、一つの実施形態において、臭素酸カリウムは主要な酸化剤であり、流出物の約30〜約60%は、活性な火炎抑制剤である臭化カリウムである。もう一つの実施形態において、燃焼生成物の約40〜約60%、好ましくは約45〜55%が臭化カリウムを含んでいる。一つの実施形態において、火炎を抑制した後、実質的に全てのハロゲンが固体の形態である。
加えて、ハロゲンはHBrのような望ましくない化合物を形成する可能性があるから、本発明の組成物の燃焼流出物または生成物はまた、K2CO3のような炭酸塩を含むかもしれない。例えば、臭化カリウムは、当該組成物の約40重量%〜約60重量%の量で流出物中に存在する可能性があり、また炭酸カリウムは、当該組成物の約10重量%〜約30重量%の量で存在する可能性がある。前記流出物はまた、水、二酸化炭素、および窒素のような他のガス状成分を含んでいる。
一つの実施形態において、前記燃焼生成物は、該燃焼生成物の全重量の約40重量%〜約90重量%の臭化カリウム、約10重量〜約30重量%の炭酸カリウム、約5重量%〜約15重量%の水、約10重量%〜約30重量%の二酸化炭素、および約0.5重量%〜約15重量%の窒素を含んでいる。もう一つの実施形態において、前記燃焼生成物は、約40重量%〜約55重量%の臭化カリウム、約18重量%〜約25重量%の炭酸カリウム、約8重量%〜約12重量%の水、約15重量%〜約25重量%の二酸化炭素、および約1重量%〜約10重量%の窒素を含んでいる。更にもう一つの実施形態において、本発明の燃焼生成物は、約45重量%から約50重量%の臭化カリウム、約18重量%〜約22重量%の炭酸カリウム、約9重量%〜約11重量%の水、約18重量%〜約22重量%の二酸化炭素、および約2重量%〜約12重量%の窒素を含んでいる。
反応生成物中の実質的に全てハロゲンがハロゲン含有生成物へと変換され、これは当該火炎の近傍を出て行くときに、好ましくは固体になる。この固化は、反応生成物が反応領域(例えば前記火炎)を出て冷却されるときに生じ、それによって、ハロゲン含有副生成物中のハロゲンの毒性およびオゾン剥奪能は、固化を保証することにより大幅に減少されると思われる。ここで使用する「実質的に全て」の用語は、当該火炎抑制組成物の少なくとも約90重量%、好ましくは約95重量%、最も好ましくは少なくとも約99重量%を意味するように定義される。
本発明の組成物の流出物は、好ましくは、極僅かなオゾン剥奪能(ODP)しか有しない。例えば、本発明の組成物が臭素原子を含むときは、それは、使用する前後の両方において好ましくは固体の形態であり、これはODPをゼロに低減する。
加えて、当該流出物の地球温暖化能力(GWP)は、好ましくは約0.4以下である。一つの実施形態において、GWPは約0.3以下である。更にもう一つの実施形態において、GWPは約0.2以下である。例えば、本発明の組成物が臭素酸カリウムから形成されるとき、流出物流の唯一の地球温暖化物質は二酸化炭素であり、これは1のGWPを有している。二酸化炭素は、流出物の約10重量%〜約40重量%、好ましくは約20重量%〜約30重量%、より好ましくは約22重量%〜約26重量%の量で流出物中に存在するから、該組成物のGWPは約0.2である。
本発明の火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、更にバインダを含んでもよい。本発明によって包含される該バインダ系は、使用する前に無機ハロゲン成分とバインダ系との間で反応が生じないように、化学的に安定であるのが好ましい。従って、バインダ系のために選ばれるバインダは、低い火炎温度および形成熱を有する何れかの樹脂を含んでよい。好ましいバインダは、良好な接着強度を有し、また加圧下で流動可能である。
適切なバインダには、アルカリ珪酸塩を含む珪酸塩、セルロース誘導体、セルロースエーテル、アルギン酸バインダ、ガム、ゲル、ペクチン、澱粉、ポリビニル化合物、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましいバインダには、加水分解された珪酸エチル;珪酸ナトリウム;珪酸カリウム;可塑化されたポリビニルアルコール;ポリビニルブチラール;酢酸ポリビニル;セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース、グリセリン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸アンモニウム;アルギン酸ナトリウム;アルギン酸カリウム;アルギン酸マグネシウム;アルギン酸トリエタノールアミン;アルギン酸プロピレングリコール;アラビアゴム;グハチガム(gum ghatti);トラガカンスガム;カラヤ(Karaya)ガム;イナゴマメビーンガム;アカシアガム;グアーガム;マルメロ種ガム(quince see gum);キサンタンガム;寒天;アガロース;カラギーナン;フコイダン(fucoidan);フレセレラン(furecelleran)、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。他の適切なバインダには、カルボキシ終端ポリブタジエン(CTPB)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ヒドロキシ終端ポリブタジエン(HTPB)、ポリブタジエンアクリロニトリル(PBAN)、ポリブタジエンアクリル酸(PBAA)、ブタセン(HTPB鉄付加物)、グリシジルアジドポリマー(GAP)、ポリアジピン酸グリコール(PGA)、またはこれらの適合性混合物が含まれるが、これらに限定されない。適切なバインダの種類および他のバインダ系成分、およびこれと共に使用するための適切な量の決定は、ここでの技術に従って選択されるときに、当業者によって容易に理解されるであろう。
特に好ましいバインダには、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、グリセリン、およびポリビニルピロリドンが含まれる。このようなバインダ系は、本発明の圧縮された固体組成物の強度を増大させる。
該バインダは、使用される場合、好ましくは当該組成物の約2重量%〜約20重量%の量で存在する。もう一つの実施形態において、該バインダは、当該組成物の約4重量%〜約15重量%の量で存在する。更にもう一つの実施形態において、該バインダは、当該組成物の約8重量%〜約12重量%の量で存在する。
バインダに加えて、該バインダ材料を可塑化し、且つ生成物の乾燥強度を増大させるために、当業者に既知のポリオールを添加してもよい。このようなポリオールの例には、グリセロールおよびグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、ポリオールは、当該組成物の約0.5重量%〜約20重量%の量で存在する。もう一つの実施形態において、該ポリオールは、当該組成物の約4重量%〜約15重量%の量で存在する。更にもう一つの実施形態において、該ポリオールは、当該組成物の約8重量%〜約12重量%の量で存在する。もう一つの実施形態において、該ポリオールは、約2重量%〜約6重量%の量で存在する。
もう一つの実施形態において、前記バインダ系は本質的に有機物であり、少なくとも一つのバインダまたはバインダ樹脂、および本明細書の一部として援用する米国特許第6,019,177号に記載されたような可塑剤を含んでいる。該バインダ系は、好ましくは、100℃未満の温度で固形である。
前記バインダ樹脂は、少なくとも一つの硬化可能なバインダ、溶融キャストバインダ、または溶媒和されたバインダ、またはそれらの混合物を含んでよい。該バインダ系はまた、1以上の硬化剤または結合剤、抗酸化剤、乳白剤、または炭酸リチウムのようなハロゲンスカベンジャーを含んでよい。これら添加剤の非限定的例を下記に記載する。
本発明と共に使用するために適した硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリメチルキシレンジイソシアネート(TMDI)、ジメチルジイソシアネート(DDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、フェニレンジイソシアネート(PDI)、キシレンジイソシアネート(MXDI)、他のジイソシアネート類、トリイソシアネート類、トリイソシアネートよりも高次のイソシアネート類、多官能イソシアネート、またはその混合物が挙げられる。必要とされる硬化剤の量は、一般には、硬化性バインダと硬化剤との間の望ましい立体化学によって決定される。この硬化剤は、典型的には約5%以下の量で存在する。しかし、もし硬化性バインダが使用されるならば、硬化剤は約0.5%〜約5%で存在する。
硬化剤が使用される場合、好ましくは、硬化可能なバインダと硬化剤との間の硬化反応を促進するために、硬化触媒が含められる。使用される場合、硬化触媒は、一般に約0.1重量%〜約0.3重量%で存在する。適切な硬化触媒には、アルキル錫ジラウレート、金属アセチルアセトネート、トリフェニルビスマス、無水マレイン酸、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物が含まれてよい。一つの実施形態において、硬化触媒は、トリフェニルビスマス、無水マレイン酸、および酸化マグネシウムの各々の等重量%の混合物である。
また、一般には約0.01重量%〜約2重量%の量で、乳白剤を、当該バインダ系の中に使用してもよい。適切な乳白剤の一例は、カーボンブラックである。
加えて、本発明においては抗酸化剤を使用してもよい。適切な抗酸化剤には、2,2’−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。抗酸化剤は、典型的には、約0.1重量%〜約1重量%の量で存在する。
種々の添加剤を伴って、または伴わずに、該バインダ系は、好ましくは約200cal/gを越える形成熱を有する。高い形成熱を有するバインダ系は、1)火炎からより多くの熱を吸収すること、および、2)長期保存を提供するためのより高い熱的安定性を有することによって、火炎抑制を促進することが望まれる。一つの実施形態において、この形成熱は負であり、好ましくは約−200cal/g未満、より好ましくは約−400cal/g未満である。
前記バインダ系は、典型的には、有機バインダ系の約3重量%以下の量で存在する硬化剤(curative)を含んでよく、また一般には、典型的には有機バインダ系の約10重量%以上で存在する可塑剤を含んでいる。一つの実施形態において、前記硬化剤は、約1重量%〜約3重量%の量で存在する。もう一つの実施形態において、前記可塑剤は、約30重量%以下の量で存在する。前記硬化剤および可塑剤についての形成熱もまた、それらが含められるときには、前記バインダ系の形成熱の中に組込まれなければならない。トリアセチンまたはアジピン酸ジオクチル(DOA)のような、適切に低い形成熱を備えた如何なる可塑剤を使用してもよい。
本発明の組成物は、更に、固体冷却剤、金属腐蝕阻害剤、潤滑剤、分散剤のような他の添加剤を含んでよい。このような添加剤は、全組成物の約0.1重量%〜約15重量%で存在してよい。
固体冷却剤は、前記エアロゾル流を更に冷却するために、本発明の組成物に添加するか、または排気経路に配置されてよい。固体冷却剤には、炭酸マグネシウムおよび/または塩基性炭酸マグネシウム(即ち、炭酸マグネシウムおよび水酸化マグネシウムの混合物)、エトリンガイト(ettringite)、式HOOC(CH2nCOOH[nは0〜6である]により表されるジカルボン酸の塩が含まれる。好ましいジカルボン酸の例には、蓚酸、コハク酸、またはそれらの混合物が含まれる。好ましいヒドロキシアルカン二酸の例には、酒石酸(即ち、ジヒドロキシコハク酸)、ジヒドロキシペンタンジカルボン酸、またはそれらの混合物が含まれる。従って、好ましい固体冷却剤には、蓚酸リチウム、蓚酸ナトリウム、蓚酸カリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、蓚酸マグネシウム、水和蓚酸マグネシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸マグネシウム、エトリンガイト(ettringite)、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性酒石酸マグネシウム(即ち、塩基性炭酸マグネシウムおよび酒石酸マグネシウムの混合物)、またはそれらの混合物が含まれる。
金属腐蝕阻害剤には、セバシン酸、安息香酸ナトリウムもしくはカリウム、珪酸ナトリウムもしくはカリウム、モリブデン酸ナトリウム、酸化モリブデン、工業所有権に係る気相腐蝕阻害剤(例えばカルボン酸アミンの錯体混合物、例えばVPCI−307(Cortec, Inc.社から入手可能))またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。珪酸塩、モリブデン酸塩、セバシン酸塩、またはそれらの遊離酸のような腐蝕阻害剤は、発生剤組成物と混合されてよく、またはパッド、パステルまたはコーティングとして、発生したガス生成物の経路に配置されてよい。該活性剤は、パッドまたはコーティングまたはパステルの磨耗の生成物が火炎抑制剤エアロゾルと混合され、それと共に、動作領域を取囲む金属または他の腐食性表面に移動するように、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂のような蒸発可能なバインダと混合されてよい。もう一つの具体例においては、装置が機能している間に遅い発熱反応を受けるように、シリコーン樹脂が、硝酸カリウムおよび/または過塩素酸カリウムのような酸化剤の一部と混合されてよい。
好ましい押出し潤滑剤には、POLYOX(登録商標)凝集剤等級のポリエチレンオキサイド(コネチカット州ダンベリー市のユニオンカーバイドケミカルズ・アンド・プラスチックカンパニー社で入手可能)が含まれ、また好ましい分散剤にはDARVAN(登録商標)811分散剤(コネチカット州ノーウオーク市のR.T.バンデルビルトカンパニー(R.T. Vanderbilt Company)社で入手可能)が含まれる。
本発明の火工品火炎抑制剤組成物は、高い燃焼速度を有する。典型的には、当該火工品火炎抑制剤組成物の大気圧および大気温度での燃焼速度は、米国特許第5,861,106号および同第6,019,177号(約31.5秒/cm(約80秒/インチ)の燃焼速度を有する組成物を開示している)に開示された組成物よりも速く、特に、少なくとも4〜8倍速い可能性がある。典型的には、本発明の組成物の大気圧での燃焼速度は、約1.97〜約23.6秒/cm(約5〜約60秒/インチ)、好ましくは約3.94〜約15.7秒/cm(約10〜約40秒/インチ)、より好ましくは約5.91〜約7.87秒/cm(約15〜約20秒/インチ)である。このような高い燃焼速度は、特に当該組成物が燃焼中に非固体状態であるとき、高い燃焼速度を容易にするために高圧を使用しなければならないのを回避するので有利である。本発明の組成物は、一般に固体状態で残り、これは大気圧のような低圧での高い燃焼速度を可能にする。
本発明の組成物は、予測されなかった高い熱安定性を示す。例えば、臭素酸カリウム、 シアヌル酸カリウム燃料、 ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールを含有する組成物において、DSC(走査型示差熱量計)により測定された発火温度は、約323〜323℃である。これは優れた熱安定性を示しているので、当該組成物は、分解を伴うことなく、保存中または使用中に広範な周囲温度に曝されてもよい。このような組成物はまた、優れた有効設置寿命、即ち、約5〜15年の範囲の寿命を示すことが期待される。
本発明の火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の、迅速な燃焼および低温での実質的に無毒の生成物を生じる能力は、それが他の有用性、例えば催涙弾、着色信号装置、煙トレーサー、薬剤散布組成物、および発火性の低い空気流トレーサー装置における有用性を有することを可能にする。生成された濃い不透明な無毒の煙(赤外線映像装置に対しては透明である)は、群集制御、または法の執行により遭遇する人質状況での有用性を提供する。加えて、当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物はまた、赤外線フレアまたは他の種類のフレアのような項目についての駆逐チャージ(expulsion charge)として使用されてよい。低い反応温度および無閃光は、赤外線誘導ミサイルの観測器および探索回路に誤認させるのを助ける。更に、本発明の組成物は、エアバッグを充填するためのガスを発生させるために、特にエアバッグ自体に対する損傷を回避するために低温が要求される場合に、微細な顆粒形態において使用されてもよい。
組成物を調製する方法
本発明の火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、典型的には、有機塩燃料成分を形成し、次いで、該有機塩に対して少なくとも一つの酸化剤を、当該組成物の燃焼の際に有毒な燃焼反応生成物の生成を回避する充分な燃焼量で混合することによって調製される。
前記有機塩燃料成分は、例えば炭酸塩または水酸化物のようなIA族またはIIA族塩基を準備し、該塩基を有機酸と接触させて、IA族塩またはIIA族塩、並びに副生成物としての水および/または二酸化炭素を形成することによって形成される。好ましくは、この反応は、約25℃〜約100℃の熱をもった水性媒質中において、撹拌または他の機械的掻き混ぜを伴って行われる。この水性媒質は、水および任意に1以上の当業者に既知の水混和性溶媒を含むものである。これらの有機酸およびIA族塩基またはIIA族塩基は、任意の順序で連続的に、または同時に前記水性媒質中に加えられてよい。典型的には、IA族またはIIA族塩基は1:1のモル比で有機酸と反応されるが、その比率は変化されてよい。例えば、IA族またはIIA族の塩基は、当量よりも過剰な有機酸、例えば2モル当量以下の有機酸と反応されてよく、或いは、有機酸は、当量よりも過剰なIA族またはIIA族塩基、例えば3モル当量以下のIA族またはIIA族塩基と反応されてよい。
有機酸の種類に応じて、当該反応は望ましいpH範囲で生じる。典型的には、IA族塩基またはIIA族塩基および有機酸の間の反応は、約5.5〜約10のpHにおいて生じる。より好ましくは、該反応は約6.0〜約9のpHにおいて生じる。最も好ましくは、該反応は約6.5〜約8のpHにおいて生じる。一例において、1/2当量のIA族またはIIA族塩基の有機酸への添加、即ち、有機酸1モル当り半モルのIAまたはIIA族塩基の添加は、pHを約5.5〜7.0に上昇させ、この点において反応混合物はpH緩衝系になる。よって、該発生剤は保存において高度に安定であり、金属表面を含む如何なる可能な腐蝕をも減少させる。
一つの実施形態において、1当量よりも多いIA族またはIIA族塩基を有機酸に添加することは、当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の使用中に生じたIA族もしくはIIA族の炭酸塩および/またはIA族もしくはIIA族の酸化物の量を有利に増大させることができる。典型的には、IA族もしくはIIA族塩基の第一の当量は、選択された塩基および有機酸に依存して、一般には約10℃〜約50℃の低温で有機酸と反応する。例えば、第一の当量の炭酸カリウムとシアヌル酸との反応は、約15℃〜約40℃で生じる。第一の当量を越える何れかのIA族またはIIA族塩基は、約70℃〜約120℃において、有機酸と吸熱的に反応する。上記の例に続き、第二の当量の炭酸カリウムとシアヌル酸との反応が、約85℃〜約94℃で生じる。有機塩燃料成分が形成されたら、それは任意に単離され、精製され、および/または酸化剤と反応させる前に、当業者に既知の方法によって更に微粉末化される。有機塩は、有機酸の酸性部位の1モル当り、典型的には約0.15〜約3モルのIA族原子もしくはIIA族原子を含んでいる。好ましくは、前記有機塩は、有機酸の酸性部位の1モル当り、約0.2〜約2.5モルのIA族原子もしくはIIA族原子を含んでいる。更に好ましくは、前記有機塩は、有機酸の酸性部位の1モル当り、約0.1〜約1.0モルのIA族原子もしくはIIA族原子を含んでいる。もう一つの好ましい実施形態において、前記有機塩は、有機酸の酸性部位の1モル当り、約0.40〜約0.70モルのIA族原子もしくはIIA族原子を含んでいる。上記で述べたように、ここに開示した範囲の全ての上限および下限は、新たな範囲を形成するために置き換えられてよい。
有機塩燃料成分は、得られた火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物が燃焼したときに無毒の反応生成物を生じるように、充分な量の酸化剤と反応または接触される。上記で述べたように、酸化剤:有機塩の重量比は、好ましくは約1:1よりも大きく、よりクリーンな燃焼組成物を可能にする。一つの実施形態において、酸化剤:有機塩の重量比は約11:9〜約4:1である。もう一つの実施形態において、酸化剤:有機塩の重量比は約3:2〜約3:1である。好ましい実施形態において、酸化剤:有機塩の重量比は約3:2の比率である。これらの量は、迅速に燃焼する火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を形成する一方、有毒な燃焼生成物を回避する。更に、このような組成物は比較的低温で燃焼し、かつ機械的衝撃または摩擦による偶発的な発火に対しても安定である。従来技術の火工品エアロゾル発生剤に比較して、生成したエアロゾルは迅速に立ち昇ることはない。
有機塩燃料成分および酸化剤は、追加の液相を使用してまたは使用せずに、機械的混合によりし、濾過し、乾燥して、約1.0〜約3.0g/立方センチメートルの密度を有するペレット、ディスク、顆粒のような固体ユニットに形成してよい。好ましくは、固体ユニットの密度は約1.5〜約2.8グラム/立方センチメートル、より好ましくは約2.0〜約2.5グラム/立方センチメートルである。何れのバインダまたは他の添加剤も、典型的には、有機塩燃料成分および酸化剤を組合せて混合する際に添加され、最終的な火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物が形成される。
一つの実施形態において、有機塩燃料成分および酸化剤の混合物は、排気生成物中に幾らか僅かな容積の酸素を生じるように調合されてよい。酸素含有組成物は、低温ガスおよび増大した濃度の抑制剤エアロゾルを生じる。好ましくは、ガス状酸素含有量は12容量%以下である。12容量%以下の酸素含量は、当該エアロゾルの火炎抑制作用に対して負の影響を生じることはない。より好ましい実施形態において、前記固体ユニットにおける酸素含量は7容量%以下である。これらの場合、金属ハロゲン酸化剤の比率は増大してもよい。
一つの実施形態において、有機塩燃料成分および酸化剤の混合物は、当業者に既知の方法を使用して顆粒化および乾燥される。該乾燥された顆粒は圧縮されて、高密度で強力且つコンパクトな、エアロゾル発生練薬(mass)に形成される。燃焼速度を増大させるためには、前記顆粒が直接使用されてもよく、或いは、前記塊を押し出して小径の円柱または増大した表面積を有する穿孔されまたは多孔質の円柱に形成される。
もう一つの実施形態において、前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、双スクリュー押出し器のようなスクリュー駆動の押出し器において、連続的に製造することができる。 潤滑剤および分散剤は、双スクリュー押出し器の中において、入ってくる粉末化された有機酸、IA族またはIIA族の塩基溶液、バインダおよび酸化剤の流れに加えられる。例えば、潤滑剤および分散剤は、0.1%のPOLYOX(登録商標)凝集剤等級のポリエチレンオキシドおよび0.25%のDARVAN(登録商標)811分散剤を含有する単一溶液として、添加することができる。有機酸、IA族もしくはIIA族の塩基、バインダおよび酸化剤の混合物は、約10〜約25%の水含量、好ましくは約12%〜約20%の水含量で押出すことができ、最終的な火工品エアロゾル用途のために、円柱または他の適切な形状の望ましい固体ユニットに形成することができる。
本発明の火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、発生剤ハウジング内において、圧縮または押出しされたペレット、シリンダ、またはスラブとして使用されてよい。当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の粒子は、厚い断面、即ち、大きな断面を有してよく、更に、比較的高い燃焼速度/短い燃焼時間を提供してよい。従って、一つの実施形態において、該粒子の断面は約0.1cm2〜約1cm2の面積を有する一方、大気圧において少なくとも0.0078秒/cm(0.02秒/インチ)の燃焼速度を維持する。
装置
上記で述べた組成物は、種々の装置を使用することによって、エアロゾルとして散布されてよい。以下の実施形態において、散布装置の非限定的な例を提供する。
一つの実施形態において、当該組成物は容器またはケーシング内に配置され、典型的には、該組成物をエアロゾル中の燃焼生成物として散布するための、少なくとも一つの開口部を有する剛性のチャンバ内に配置される。好ましくは、この容器またはケーシングは円筒であるが、如何なる形状の容器を使用してもよく、それには三角形、正方形、長方形、楕円形等の種々の断面形状を有する細長い容器が含まれる。この容器またはケーシングは、本発明の組成物の燃焼温度がそれを損傷または破壊しないように、好ましくは金属、複合材またはセラミックのような他の無機構造物で構成される。該容器またはケーシングは、好ましくは、少なくとも約50psiの内部加圧に耐えることができる。該容器またはケーシングは、壁に沿って、または壁および天井の交線に沿って装着することを可能にするように、細長い形状を有してよい。当該火工品エアロゾル組成物を燃焼させることによって形成されたエアロゾル流を更に冷却するために、固体冷却剤を、排気通路において該容器またはケーシング内に配置することができる。
好ましくは、当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物は、成形された固体ユニット、例えばシリンダ、スラブ、ブロック、円錐等に圧縮され、種々の形状を有するプレート(例えば円形プレート、正方形プレート、矩形プレート、三角形プレート、楕円形プレート等)のような平坦な表面上に並べられる。この平坦な表面は、不活性で且つ当該火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の燃焼に耐えることができる何れかの材料、例えばラミネート化されたフェノール繊維で構成されてよい。好ましい実施形態において、該平坦な表面の外縁は、リップを形成するように持ち上げられ、そこでは持上げられた外縁を有する第二の類似形状の平坦な表面が、前記成形された固体ユニットの上に取り付けられ、該第二の平坦な表面は、これら二つの平坦な表面からなる容器の周縁回りに環状の通気孔を形成するように配置される。
典型的には、発火アセンブリーが前記容器の外側リップに取付けられ、前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の燃焼を開始させ、ここで説明したような無毒の燃焼生物を含む濃い火炎抑制剤エアロゾルを放出させる。予測せずに発生するエアロゾルは、米国特許第5,861,106号および同第6,019,177号を含む当該技術に記載された組成物が発生した煙柱に比較して、迅速には立ち昇らない。発火は、電気信号、引張り導火線アクチュエータ、パーカッションプライマー、または火工熱センサによって容易化される。
好ましくは、各成形されたユニットは、0.254cm(0.1インチ)〜約7.62cm(3インチ)に亘る直径を有しており、また各成形されたユニットは約1グラム〜約350グラムの重量を有している。一つの実施形態において、前記固体ユニットは前記平坦な表面上に対称に配置され、好ましくは接着剤、例えばシリコーンRTVゴム、エポキシ、またはキャストエトリンガイト(cast ettringite)+少量接着剤等の無機冷却剤材料の複合構造によって、前記プレートに接着される。
一つの実施形態においては、スクリーンまたはメッシュが火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物と環状通気孔の間に配置され、排気流の中に低温を達成するために使用され得る固体冷却剤のための支持体として作用する。エアロゾルのための排出空間は、使用の前に外部の水分および他の元素の侵入を阻止するために、好ましくはアルミニウムのような不透過性の箔、フィルム、または感圧テープでシールされる。発火すると容器内の圧力が増大して、前記不透過性の箔、フィルムまたは感圧テープを破り、それにより火炎抑制剤エアロゾルを放出させる。
実施例
本発明の実施形態は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解することができる。この実施例は、本発明に従って製造された噴射剤組成物を例示することを意味しており、本発明が以下の実施例に限定されることを意味するものではない。
実施例1: 火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の調製
約165グラムの商業的等級のシアヌル酸二水和物をガラスフラスコの中に配置し、92グラムの無水炭酸カリウム粉末を添加する。次いで、この混合物に約75mLの蒸留水を加え、濃厚なスラリーを形成する。シアヌル酸と炭酸カリウムとの間の反応は、二酸化炭素ガスを発生させ、これは、反応混合物を約100℃に加熱する間は二酸化炭素を発生し続けて、シアヌル酸カリウムを形成する。このプロセスの間に、シアヌル酸の顆粒は収縮するように見え、最後には消滅する。反応混合物を室温にまで冷却し、過剰な液体をデカントした後に、約260グラムの粉砕された臭素酸カリウムを添加し、この反応混合物を更に混合する。最終製品中に約1.5%のポリビニルアルコールを与えるために充分な量の、ポリビニルアルコール溶液(ケンタッキー州カルバートシティーのセラネース社で入手可能なCELVOL21205またはその均等物)。最終製品の乾燥強度を増大させるために、追加の1.5%グリセロールを添加して前記ポリビニルアルコールバインダを可塑化する。反応混合物を顆粒化および乾燥させて、火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物として使用するための、シアヌル酸カリウムおよび臭素酸カリウムを含有する組成物を得る。炭酸塩として添加されるカリウムの量は、K:C:H:N:O構成が、約0.5部のK、3部のC、2.5部のH、3部のN、および3部のOの元素分析、即ち、Kの各当量について2つのシアヌル酸塩が存在する燃料を形成するのに充分である。
実施例2: 火工品エアロゾル組成物を含む装置の調製
実施例1で得られたシアヌル酸カリウム/臭素酸カリウムの混合物を、約2.79cm(1.1インチ)および約50gの重量を有する円柱に圧縮した。この圧縮力は、約22,680kg(50,000ポンド)であった。厚さ7mm幅280mmのラミネートされたフェノールファブリック円形プレート上に、47個の円柱を対称に配置した。これらのエアロゾル発生円柱を、接着剤を用いて円形プレートの底に取付けた。該プレートの外側リムは、25mm幅のリップから13mmだけ上昇された。もう一つの類似のプレートを、三つのボルトによって前記円柱の上に結合し、該プレートは、ディスク形状の容器の周縁回りに幅13mmの環状通気孔を形成するように配置された。二つの引張りワイヤ点火器および二つの50mm長の安全フューズの発火アセンブリーを、前記容器の外側リップに取付けた。内側ヒューズの両端および中央の円柱には、火工スラリーで導火線が形成された。環状のガス排出領域は、アルミニウム感圧テープ(ミネソタ州ミネアポリスの3M社で入手可能)でシールされた。寒冷気候での使用をシミュレートするために、当該装置を−43℃(−45F)に冷凍した。ワイヤ引き発火器は、引き綱を用いて活性化された。活性化されると、該装置は30秒未満だけ燃焼し、視認可能な火炎をもたない濃い火炎抑制エアロゾルを放出した。フェノールファブリックのディスクは色が黒くなったが、火炎抑制剤組成物の燃焼によって消費されなかった。煙柱が迅速に立ち昇ることはなかった。
本発明は、ここに例示し且つ説明した正確な構成に限定されるべきでないことが理解されるべきである。発明の詳細な説明の項で述べた実施形態は、本発明を限定しようとするものではない。従って、ここに記載した開示から、または該開示からのルーチンの実験によって当業者が容易に達成可能な全ての好適な変形例は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲の内にあるものとみなされる。

Claims (24)

  1. 式M(XOxy(式中、MはIA族原子、IIA族原子およびIIIA族原子から選択され、XはCl、BrおよびIからなる群から選択され、xは1〜4であり、yは1〜3である)で表される酸化剤;および、
    シアヌル酸メラミン、有機酸のIA族塩もしくはIIA族塩、またはそれらの混合物を含有する燃料成分を含む、火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物であって、
    前記有機酸は、シアヌル酸、イソシアヌル酸、バルビツール酸、ヒドロキシ酢酸、
    Figure 2007535977
    (式中、nは0〜4である)
    からなる群から選択され、かつ、
    前記酸化剤は、前記燃料成分よりも大きい重量パーセントの量で存在する組成物。
  2. Mが、リチウム、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. XOxが、クロレート、ブロメート、イオデート、パークロレートおよびクロライトからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  4. XOxがブロメートである、請求項3に記載の組成物。
  5. M(XOxyが、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記酸化剤が、全組成物の約70重量%以下の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記燃料成分が、シアヌル酸メラミンン;シアヌル酸、イソシアヌル酸、ヒドロキシ酢酸もしくは酒石酸のIA族塩もしくはIIA族塩;またはそれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記燃料成分が、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸カリウム、イソシアヌル酸カリウム、バルビツール酸カリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、酒石酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、イソシアヌル酸マグネシウム、バルビツール酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、酒石酸マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、組請求項7に記載の組成物。
  9. 前記燃料成分が、全組成物の約40重量%以下の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
  10. 酸化剤:燃料成分の重量比が、約3:2〜約4:1である、請求項1に記載の組成物。
  11. 更に、珪酸塩、セルロース誘導体、セルロースエーテル、アルギン酸バインダ、ガム、ゲル、ペクチン、澱粉、ポリビニル化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択されるバインダを含有し、任意にグリセロールまたはグリコールからなる群から選択されるポリオールを含有してもよい、請求項1に記載の組成物。
  12. i) 式M(XOxy(式中、MはIA族原子、IIA族原子およびIIIA族原子から選択され、XはCl、BrおよびIからなる群から選択され、xは1〜4であり、yは1〜3である)で表される酸化剤と;シアヌル酸メラミン、有機酸のIA族もしくはIIA族塩、またはそれらの混合物を含有する燃料成分とを組合せることにより、火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を提供する工程、
    ここで、前記有機酸は、シアヌル酸、イソシアヌル酸、バルビツール酸、ヒドロキシ酢酸、および
    Figure 2007535977
    (式中、nは0〜4である)
    からなる群から選択され、かつ、
    前記酸化剤は、前記燃料成分よりも大きい重量パーセントの量で存在する;
    ii) 前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を点火し、複数の燃焼生成物を含有するエアロゾルを発生させる工程、ここで前記エアロゾルは速度を有する;および、
    iii) 該エアロゾルを、前記火炎を抑制するのに十分な量で火炎に適用する工程を含む、火炎を抑制する方法。
  13. 前記酸化剤が、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、およびその混合物からなる群から選択され、かつ、前記燃料成分が、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸カリウム、イソシアヌル酸カリウム、バルビツール酸カリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、酒石酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、イソシアヌル酸マグネシウム、バルビツール酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、酒石酸マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記燃焼生成物が、H2O、CO2、窒素、ハロゲン化物塩、炭酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
  15. 前記火工品エアロゾル火炎抑制組成物の燃焼熱が、約250カロリー/グラム〜約600カロリー/グラムである、請求項12に記載の方法。
  16. 前記酸化剤:燃料の重量比が約3:2〜約4:1である、請求項12に記載の方法。
  17. 前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物の約15重量%未満が燃焼後の残渣として残留する、請求項12に記載の方法。
  18. 前記火工品エアロゾル火炎抑制組成物が、約1.97〜約23.6秒/cm(約5〜約60秒/インチ)の燃焼速度を有する、請求項12に記載の方法。
  19. 前記火工品エアロゾル火炎抑制組成物が、更にバインダを含有する、請求項12に記載の方法。
  20. 前記火工品エアロゾル火炎抑制組成物が、少なくとも一つの整形された固体ユニットに圧縮され、該少なくとも一つの成形された固体ユニットはシリンダ、スラブ、ブロック、または円錐体である、請求項12に記載の方法。
  21. 前記少なくとも一つの整形された固体ユニットが、少なくとも一つの開口部または通気孔、および点火アセンブリーを有する容器またはケーシング内に配置される、請求項20に記載の方法。
  22. 前記点火アセンブリーの少なくとも一部が、前記少なくとも一つの整形された固体ユニットの点火を開始させる、請求項21に記載の方法。
  23. i) 臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される酸化剤と、シアヌル酸カリウム、イソシアヌル酸カリウム、バルビツール酸カリウム、ヒドロキシ酢酸カリウム、酒石酸カリウム、シアヌル酸マグネシウム、イソシアヌル酸マグネシウム、バルビツール酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、酒石酸マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される燃料成分とを、約3:2〜約4:1の酸化剤:燃料の重量比で組合せることによって、火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を提供する工程;
    ii) 火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物を点火して、複数の燃焼生成物を含有するエアロゾルを発生させる工程、ここで前記エアロゾルは速度を有する;および、
    iii) 該エアロゾルを、火炎を抑制するのに充分な量で前記火炎に適用する工程を含む、火炎を抑制する方法。
  24. 前記火工品エアロゾル火炎抑制剤組成物が、約1.97〜約23.6秒/cm(約5〜約60秒/インチ)の燃焼速度を有する、請求項23に記載の方法。
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