JP2007530708A - フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを処理するイオン交換方法 - Google Patents

フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを処理するイオン交換方法 Download PDF

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Abstract

フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームをイオン交換媒体で処理する新規な方法を開示する。かかる方法は、引き続く水素化処理ステップの触媒床のプラッギングを実質上回避するように、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去する能力を有する。

Description

本出願は、以下の全体を参照により本明細書に援用する。Richard O.Moore、Jr.、Donald L. Kuehne、及びRichard E.Hofferによる米国特許出願第10/613,423号、表題「フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームの蒸留(Distillation of a Fischer−Tropsch Derived Hydrocarbon Stream)」、Lucy M.bull、William Schinski、Donald L.Kuehne、Rudi Heydenrich、及びRichard O.Moore、Jr.、による米国特許出願第10/613,422号、表題「フィッシャー−トロプシュ炭化水素ストリームの酸処理(Acid Treatment of a Fischer−Tropsch Hydrocarbon Stream)」、Jerome F.Mayer、Andrew Rainis、及びRichard O.Moore、Jr.、による米国特許出願第10/613,058号、表題「フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームの触媒的濾過(Catalytic Filtering of a Fischer−Tropsch Derived Hydrocarbon Stream)」。
本発明は、一般にフィッシャー−トロプシュ合成反応からの生成物の処理に関する。さらに詳しくは、本発明の実施形態は、炭化水素ストリームを次の処理へ通過させる前にフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから、汚染物質を除去するイオン交換方法を対象とする。
現在使用されている大部分の燃料は、原油から得られており、原油は供給に限度がある。しかし、炭化水素燃料、潤滑油、化学品、及び化学原料を生成することができる代替原料がある。この原料が天然ガスである。燃料などを生成するための天然ガスの1つの利用方法は、先ず天然ガスを合成ガスとして知られる「中間体」(合成ガスとしても知られる)、一酸化炭素(CO)と水素(H)の混合物、に転化させ、次いでその合成ガスをフィッシャー−トロプシュ(FT)合成として知られるプロセスを使用して、所望の液体燃料に転化させるものである。フィッシャー−トロプシュ合成は、天然ガスを液体燃料に転化させるのであるから、いわゆる気体−液体(GTL)プロセスの一例である。一般に、フィッシャー−トロプシュ合成は、スラリ床又は液体床反応器中で実施され、炭化水素生成物は、メタン(C)からワックス(C20+)の範囲の広範囲の分子量を有する。
一般にフィッシャー−トロプシュ生成物は、特にワックスは、次いで、化学中間体及び化学原料、ナフサ、ジェット燃料、ディーゼル燃料、及び、潤滑油原料に転化させることができる。例えば、フィッシャー−トロプシュ生成物の水素化処理は、細流式固定触媒床反応器中で実施することができ、反応器中では、水素(H)又は水素濃縮ガス、及びフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームが、水素化処理反応器への供給原料を構成する。次いで、水素化処理ステップは、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを、水素濃縮ガスのストリームと一緒に水素化処理反応器内の1つ又は複数の触媒床を通過させることによって達成される。
いくつかの場合において、水素化処理されるべき供給原料は、上流側処理から発生する汚染物質を含む。これら汚染物質は、可溶性又は微粒子形態をとることがあり、触媒微粉、触媒支持材料など、及び上流側処理装置からの錆及びスケールを含む。特に、スラリ及び流動床プロセスからのフィッシャー−トロプシュワックス及び重質生成物は、除去目的で備えたフィルターによって十分に除去されない微粒子汚染物質(触媒微粉などの)を含むことがある。水素化処理の前に、それらの微粒子を除去することは、フィッシャー−トロプシュ反応器を離れるワックスストリームの潜在的高粘度及び高温によって複雑なものになる場合がある。
水素化処理反応器において使用される典型的な触媒は、有限のサイクルタイム(すなわち、新しい触媒の充填が必要となるまでの限られた時間(又は量))を示す。通常、このサイクルタイムの持続時間は、約6カ月から4年、又はそれ以上である。水素化処理触媒のサイクルタイムが長いほど、設備の経済性がより良好になることは、当業者には明らかであろう。
可溶性及び/又は微粒子汚染物質は、それらが供給原料と共に水素化処理反応器中に導入された場合には、深刻な問題を生じる可能性がある。可溶性汚染物質は、ある種の水素化処理条件下で、溶液から沈殿して微粒子となる場合に問題となる。汚染物質は、触媒の表面及び細隙に蓄積するので、触媒床を通る流路を部分的又は完全にプラッギング(plugging)させることがある。事実上、触媒ペレットは、供給原料から微粒子の汚染物質を濾過して除去する。また、供給原料中に同伴する屑を捕捉することに加えて、触媒床は、水素化処理反応それ自体からの反応副生物も捕捉し、かかる反応副生物の例は、コークスである。プラッギングは、触媒床を通る材料の流れの障害となり、反応器を横切る液の圧力低下を引き続き増大させることがある(入口及び出口がそれぞれ位置する反応器の端部間の圧力差を意味する)。圧力低下のかかる増大は、水素化処理反応器内部の機械的な結合性を脅かす恐れがある。
触媒床プラッギングは、少なくとも2つの望ましくない結果をもたらす。1つは、反応器処理能力の減少である。さらに重大な結果は、触媒充填の部分又は全てを交換するために反応器を完全に運転停止する必要がある恐れがあることである。これらの結果は、いずれも稼動している工場設備の経済性に否定的効果をもたらすことになる。
水素化処理反応器における触媒床プラッギングの問題を扱うために、従来技術は、水素化処理反応器に導入する前に供給原料を濾過することによって、供給原料中の微粒子汚染物質の少なくとも一部分を除去することを対象としてきた。通例、かかる通常の濾過方法は、直径が1ミクロンより大きい微粒子を除去することができる。他の従来技術方法は、水素化処理触媒上のコーキングの速度を制御すること、コークスを生成し難い供給原料を選択すること、又は、コークスの形成に影響する水素化処理条件(水素部分圧、反応器温度、及び触媒タイプなどの条件)を適正に選ぶことに向けられてきた。
しかし、本発明者等は、上記公開技術方法では、この供給原料ストリームがフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを含む場合、水素化処理反応器への供給原料ストリームから非常に小さいサイズの粒子(又は、可溶性)の汚染物質、ファウリング薬品、及び/又はプラッギング前駆物質(以下、「汚染物質」と言う)を、除去するのに効果的ではないことを見出した。特に、これは、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームが、スラリ床又は流動床によって生成されたワックスである場合に当てはまる。したがって、典型的な公開技術方法は、水素化処理、水素異性化、又は水素処理反応器における圧力低下の増大を、その増大が微粒子汚染物質によって又は溶液から沈殿する可溶性汚染物質によって生じる場合には、回避するのに効果的ではないことが分かった。
典型的公開技術方法の明らかな障害は、水素化処理反応器供給原料中に微細な直径約1ミクロン未満の固体微粒子の存在及び/又は恐らく金属性成分を有し、水素化処理反応器触媒床に隣接して又はその内部に、溶液から沈殿する能力のある可溶性汚染物質に起因している。必要なことは、水素化処理反応器内の圧力低下の増大が実質上回避されるように、微粒子、汚染物質、可溶性汚染物質、ファウリング薬品、及びプラッギング前駆物質を、水素化処理反応器への供給原料ストリームから除去する方法である。
フィッシャー−トロプシュ合成は、いわゆる気体−液体(GTL)プロセスの一例であり、先ず、天然ガスを合成ガス(実質的に、一酸化炭素と水素とを含む混合物)に転化し、次いで、合成ガスを所望の液体燃料に転化させる。一般に、フィッシャー−トロプシュ合成は、スラリ床又は流動床反応器において実施され、炭化水素生成物は、メタン(C)からワックス(C20+)の範囲の広範囲の分子量を有する。一般に、フィッシャー−トロプシュ生成物、特にワックスは、次いで、水素化処理して、留出物燃料及び潤滑油の範囲の生成物を形成する。本発明の実施形態によれば、水素化処理は、逆流又は順流法において行われる。本発明のプロセスは、特に順流法において操作される。
いくつかの場合には、水素化処理されるべき供給原料は、上流処理から発生する汚染物質を含む。この汚染物質は、触媒微粉、触媒支持材料など、及び上流処理装置からの錆及びスケール含むことがある。特にスラリ及び流動床プロセスからの、フィッシャー−トロプシュワックス及び重質生成物は、除去目的のために備えたフィルターによって適切に除去されない汚染物質(触媒微粉など)を含むことがある。汚染物質は、それが供給原料と共に水素化処理反応器中に導入される場合、重大な問題を生み出す。汚染物質が、触媒の表面及び細隙に蓄積するので、触媒床を通して流路の部分的又は完全なプラッギングさえも生じる可能性がある。
本発明者等は、汚染物質を除去する効果的な新規な方法を見出し、供給原料が、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを含む場合には、これら汚染には、供給原料ストリームから水素化処理反応器への微粒子、固体化した汚染物質、可溶性汚染物質、ファウリング薬品、及び/又はプラッギング前駆物質が含まれる。フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームにおける汚染物質の結果として、一般に、水素化処理反応器における圧力低下の増大がある。
本発明の1つの実施形態において、次のステップを使用してフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去する:
a)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを処理ゾーンに通過させること;
b)処理ゾーン内にイオン交換媒体を供給すること;
c)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームをイオン交換媒体に接触させて、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去すること、及び
d)精製されたストリームを処理ゾーンから除去すること。
別の実施形態は、次のステップを含む:
a)合成ガスをフィッシャー−トロプシュ反応器に通過させて、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを生成すること;
b)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを濾過して、濾過された炭化水素ストリームを生成すること;
c)濾過された炭化水素ストリームを処理ゾーンに通過させること;
d)処理ゾーン内にイオン交換媒体を供給すること;
e)濾過された炭化水素ストリームを処理ゾーン内のイオン交換媒体と接触させて、濾過された炭化水素ストリームから汚染物質を除去すること;
f)精製されたストリームを処理ゾーンから除去すること;及び
g)精製されたストリームを水素化処理反応器に通過させること。
本発明の方法は、イオン交換ステップに加えて、濾過された炭化水素ストリームを水性酸性ストリームに接触させることを含む酸処理ステップ、濾過された炭化水素ストリームを少なくとも1つの蒸留ステップに通過させることを含む蒸留ステップ、及び濾過された炭化水素ストリームを活性触媒と接触させる触媒的濾過ステップをさらに含む。
本発明の方法の利点は、精製された炭化水素ストリームを水素化処理ゾーンに通過させることによって、さもなければ、通常に濾過されたフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームにおける汚染物質によって生じるであろう触媒床のプラッギングが実質上回避されることである。
本発明の実施形態は、フィッシャー−トロプシュ合成反応からの生成物の水素化処理を対象とする。本発明者等は、一定の条件下で、水素化処理反応器中の触媒床が、微粒子汚染物質により、又は、触媒床に隣接して又は内部において溶液から沈殿する可溶性汚染物質により詰まる(plug)傾向があり、かくして水素化処理反応器を通る材料の流れを阻害することを観察した。汚染物質は、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを濾過して、約0.1ミクロンより大きい微粒子屑を除去した場合でも依然として存在しうる(依然として問題が存在することを意味する)。
いかなる特別の理論によっても制約されることを望むものではないが、本発明者等は、汚染物質はフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム中に可溶性の形態において存在する(少なくとも部分的には)恐れがあり、次いで、汚染物質は、例えばストリームが水素化処理反応器に充填された後に溶液から沈殿して固体微粒子を形成するであろうと信じる。一般に、沈殿後、汚染物質は、水素化処理反応器中において固体プラグを形成する。一定の条件下で、プラッギングは、反応器の中心部分で生じる。プラッギングの空間的程度は、水素化処理条件及び触媒タイプに依存し、例えば空間速度を変化させると、反応器の異なる領域を覆って、及び/又は中にプラッギングを圧縮したり、拡大したりすることがある。
本発明者等は、汚染物質(またこれは、「ファウリング薬剤」、又は「プラッギング前駆体」として記載することもできる)は、可溶性並びに微粒子形態において、水素化処理ゾーンの上流側に位置するイオン交換を使用して、通常濾過されたフィッシャー−トロプシュ誘導生成物ストリームから除去することができることを発見した。本発明の実施形態は、水素化処理反応ゾーンの上流側に位置するイオン交換ゾーンの設置を含む。イオン交換ゾーンは、濾過されたフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから、汚染物質を除去するために設計されたイオン交換媒体を含む。イオン交換の操作は、イオン交換ゾーンから下流側に位置する水素化処理触媒の細孔及び流路に、得られた固体汚染物質が入り込む(したがって詰まる)機会が少ないように行う。水素化処理ゾーンの上流側でイオン交換操作をすることは、明らかに有利であり、というのも、次に水素化処理触媒の細孔内で汚染物質の沈殿が生じず、水素化処理床を通る流路が開口してままであり、水素化処理反応器における圧力低下の増大を実質上回避できるからである。
したがって、本発明の実施形態は、触媒水素化処理ゾーンの上流側にイオン交換ゾーンの設置を含む。イオン交換ゾーンは、濾過されたフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから可溶性並びに不溶性汚染物質を除去する。可溶性汚染物質は、下流側水素化処理触媒床内で固化する機会が生じる前に、溶液から取り去られる。この実施形態においては、活性濾過触媒は、所望の速度で、汚染物質が溶液から沈殿する条件で維持される。
汚染物質が、フィッシャー−トロプシュ誘導供給原料中で、可溶性種として存在するか、超微細な微粒子(おそらく、大きさが約0.1ミクロン未満を意味する)として存在するかは明確ではないが、一般に汚染物質は、その水素化処理供給原料ストリームから、通常の濾過によっては除去されないことが知られている。
フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを精製するためにイオン交換システムを利用するプロセスの概要を図1に示す。図1において、天然ガス10などの炭素源を合成ガス11に転化させ、これが、フィッシャー−トロプシュ反応器13への供給原料12となる。一般に、合成ガス11は、水素及び一酸化炭素を含むが、少量の二酸化炭素及び/又は水を含むことがある。フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14を、ステップ15において、従来法で濾過して、大きさが約10ミクロンより大きい微粒子汚染物質を除去し、従来法で濾過した炭化水素ストリーム16を生成することができる。従来法で濾過した炭化水素ストリーム16を、次いで、場合によって酸化物処理ステップ17を通過させ、このステップで濾過した炭化水素ストリーム16を希釈水性酸と接触させて、酸処理した炭化水素ストリーム18、及び使用済み酸性水相(示されていない)を生成する。
任意の酸処理ステップ17を実施してもしなくても、炭化水素供給原料19(これは、従来法で濾過した生成物ストリーム16、酸処理ストリーム18、又はその組合せであってよい)をイオン交換ゾーン25を通過させ、ここで、イオン交換媒体の存在下で、従来法で濾過したストリーム16、19から汚染物質を除去する。従来法で濾過した炭化水素ストリーム16、19を、イオン交換媒体25で処理すると水素化処理に適する精製された炭化水素ストリーム22が生成される。次いで、価値のある燃料生成物24を供給するために、精製された炭化水素ストリーム22を水素化処理ゾーン23に通過させることができる。除去された(又はイオン交換された)汚染物質を参照数字9で図1に示す。
以下の開示は、先ずフィッシャー−トロプシュプロセスそれ自体に焦点を当て、次いで、水素化処理反応器及び状件の議論に進みたい。次に、一般に汚染物質の性質、及び水素化処理触媒床プラッギングに伴う特定の問題を扱ってから、本発明のイオン交換方法の別の実施形態にもどる。
フィッシャー−トロプシュ合成
フィッシャー−トロプシュプロセスは、図1に参照番号13で図式的に示したフィッシャー−トロプシュ反応器中で実施することができる。フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14は、約C20より大きい鎖長を有する線状炭化水素を含むワックス状留分を含む。フィッシャー−トロプシュ生成物が、留出燃料組成物において使用される場合には、燃料の燃焼特性(しばしば、セタン価によって定量化される)並びに燃料の低温特性(例えば、流動点、くもり点、及び冷フィルタープラッギング点)の向上用の適切な量のイソパラフィンを含ませるために、しばしばさらに処理がなされる。
フィッシャー−トロプシュプロセスにおいて、H及びCOの混合物を含む合成ガス11(時には「合成ガス」と呼ばれる)を適切な反応条件下で、フィッシャー−トロプシュ触媒と接触させることによって液体及び気体状炭化水素が形成される。フィッシャー−トロプシュ反応は、一般に約300〜700°F(149〜371℃)、好ましい温度範囲は約400〜550°F(204〜288℃)である;圧力は、約10〜600psia、(0.7〜41bars)、好ましい圧力範囲は30〜300psia、(2〜21bars)である;及び触媒空間速度は、約100〜10,000cc/g/hrの範囲、好ましい空間速度は約300〜3,000cc/g/hrの範囲である。
フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14は、C〜C200+の範囲の炭素数を有する生成物を含むことができ、大部分の生成物は、C〜C100の範囲である。フィッシャー−トロプシュ反応は、1つ又は複数の触媒床を含む固定床反応器、スラリ反応器、流動床反応器、又はこれら反応器タイプの組合せを含む種々の反応器タイプにおいて実施することができる。かかる反応プロセス及び反応器は、文献においてよく知られ、記録されている。
本発明の1つの実施形態において、フィッシャー−トロプシュ反応器13は、スラリタイプ反応器を具備する。このタイプの反応器(及びプロセス)は、向上した熱及び物質移動特性を示し、したがってフィッシャー−トロプシュ反応の強い発熱特徴を利用することができる。コバルト触媒を使用した場合、スラリ反応器は、比較的高分子量のパラフィン系炭化水素を生成する。操作的には、水素(H)及び一酸化炭素(CO)の混合物を含む合成ガスを、反応器中のスラリを通して第3相としてバブルさせ、触媒(微粒子形態において)を液体中に分散及び懸濁させる。一酸化炭素反応物に対する水素反応物のモル比は、約0.5〜4の範囲であってよいが、さらに一般にはこの比は、約0.7〜2.75の範囲内である。スラリ液体は、合成のための反応物ばかりでなく、反応による炭化水素生成物も含み、これら生成物は、反応条件で液体状態にある。
適切なフィッシャー−トロプシュ触媒は、Fe、Ni、Co、Ru、及びReなどの1つ又は複数の第VIII族触媒的金属を含む。触媒は、促進剤を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態において、フィッシャー−トロプシュ触媒は、適切な無機支持材料上の、有効量のコバルト及び1つ又は複数の元素Re、Ru、Fe、Ti、Ni、Th、Zr、Hf、U、Mg及びLaを含む。一般に、触媒中に存在するコバルトの量は、触媒組成物の総重量に基づいて約1から50重量%である。支持材料の例には、アルミナ、シリカ、マグネシア、及びチタニア、又はその混合物などの耐熱性金属酸化物が含まれる。本発明の1つの実施形態において、コバルト含有触媒のための支持材料は、チタニアを含む。触媒促進剤は、ThO、La、MgO、及びTiOであってよいが、促進剤は、Zr0、Pt、Pd、Ru、Rh、Os、及びIrなどの貴金属;Cu、Ag、及びAuなどの貨幣金属;Fe、Mn、Ni、及びReなどの他の遷移金属であってもよい。
有用な触媒及びその調製は、知られており、実例があり、例えば限定しない例は、米国特許第4,568,663号に見出すことができる。
フィッシャー−トロプシュプロセスから得られた任意のC5+炭化水素ストリームは、本発明方法を使用して適切に処理することができる。典型的炭化水素ストリームは、フィッシャー−トロプシュ反応器の構造によって、C−700°Fストリーム及び約550°Fをこえて沸騰するワックス状ストリームを含む。本発明の1つの実施形態において、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14は、分留なしで反応器13から直接回収される。分留ステップ(図1に示されていない)が、フィッシャー−トロプシュ反応器13を出て行く生成物に実施される場合、分留ステップの好ましい生成物は、底部留分である。
イオン交換したフィッシャー−トロプシュ反応生成物の水素化処理
フィッシャー−トロプシュ反応器13からの生成物ストリーム14は、水素化処理ステップにかけられる。このステップは、図1に参照番号23で図式的に示した水素化処理反応器中で実施することができる。本明細書では、用語「水素化処理」は、反応器13によって生成されたフィッシャー−トロプシュ反応生成物を水素含有ガスで処理する多数のプロセスの何れかを言う;かかるプロセスには、水素ワックス化、水素化分解、水素異性化、水素処理、及び水素仕上げ(hydrofinishing)が含まれる。
本明細書では、用語「水素化処理」、「水素処理」、及び「水素異性化」は、その通常の意味であり、当業者には知られているプロセスを記載する。水素処理は、遊離水素の存在下で、通常実施される触媒的プロセスのことをいい、主たる目的は、オレフィンの飽和、及び水素化処理反応器への供給原料からの酸素化物の除去である。酸素化物には、アルコール、酸、及びエステルが含まれる。さらに、炭化水素ストリームがスルフィド化触媒と接触した場合に導入される可能性のある硫黄も除去される。
一般に、水素化処理反応は、水素化処理される供給原料中の個々の炭化水素分子の鎖長を減少させ(「分解」と呼ばれる)、及び/又は供給原料中における初期値を基準にしてイソパラフィン含量を増大することができる(「異性化と呼ばれる」)。本発明の実施形態において、水素化処理ステップ23において使用される水素化処理条件は、C〜C20炭化水素に富む生成物ストリーム24を生成し、所望の低温特性(例えば流動点、くもり点、及び冷フィルタープラッギング点)を得るために選択された反応条件を伴う。比較的多量のC1−4生成物を形成する傾向にあるゾーン23における水素化処理条件は、一般に好ましくない。また、ワックス及び/又は重質留分(10ミクロンより大きい微粒子が従来法の濾過により、より容易に除去されるような)の融点を低下させるのに十分なイソパラフィン含量を有するC20+生成物を形成する条件が好ましい。
本発明のいくつかの実施形態において、より大きい炭化水素分子の分解の量を最小に保つことが望ましい場合があり、これらの実施形態において、水素化処理ステップ23の目的は、不飽和炭化水素を完全に、又は部分的に水素化された形態に転化することである。これらの実施形態における水素化処理ステップ23のさらなる目的は、供給原料の出発値を基準にして、ストリームのイソパラフィン含量を増加させることである。
水素化処理生成物ストリーム24は、場合によって、ガス油、潤滑油原料、高流動点ポリアルファオレフィン、フットオイル(オイル及びワックス混合物から分離されたオイル)などの他の原料源からの炭化水素、標準的アルファ−オレフィンワックス、スラックワックス、脱油ワックス、などの合成ワックス、及びミクロワックスと混ぜ合わせることができる。
水素化処理触媒は、当技術分野でよく知られている。水素化処理、水素異性化、水素化分解、水素処理など、及びかかるプロセスにおいて使用される典型的触媒の一般的記載については、例えば、米国特許第4,347,121号、米国特許第4,810,357号、及び米国特許第6,359,018号を参照されたい。
汚染物質及び水素化処理触媒床プラッギング
上記に言及したように、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14、16は、ストリーム14、16中の汚染物質、微粒子汚染物質、可溶性汚染物質、ファウリング薬剤、及び/又はプラッギング前駆体のため、水素化処理反応器中の触媒床のプラッギングを起こすことがある。用語、微粒子、微粒子汚染物質、可溶性汚染物質、ファウリング薬剤、及びプラッギング前駆体は、本発明の開示において、互いに互換性があるように使用されるが、一般に、この現象は、「汚染物質」と呼ばれている。なお、水素化処理触媒床を最終的に詰まらせる実体は、プラッギング事象のいくぶん前に、供給原料中の可溶物であろうことを念頭におかれたい。プラッギング事象は、汚染物質(これは最終的に微粒子形態をとる)の結果であり、汚染物質は水素化処理反応器の触媒床によって水素化処理供給原料から濾過される。本発明の実施形態によれば、触媒的濾過ステップ20は、水素化処理反応器23の触媒床のプラッギングを実質上回避するように、可溶性汚染物質、ファウリング薬剤、及びプラッギング前駆体を、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14、16から除去するために使用される。
本発明の濾過プロセスの詳細を議論する前に、汚染物質一般について述べることは、有益であろう。フィッシャー−トロプシュパラフィン系生成物ストリーム14、16の汚染物質は、種々の原料供給源から発生しうるし、一般に、汚染物質の少なくともいくつかの形態に対処する方法が、当技術分野で知られている。これら方法には、例えば分離、単離、非触媒的(従来法の)濾過、及び遠心分離が含まれる。窒素及びヘリウムなどの不活性不純物は、通常許容することができ、特別の処理は必要としない。
しかし、一般に、天然ガス10又は合成ガス11中のメルカプタン及び他の硫黄含有化合物、ハロゲン、セレン、リン及び砒素汚染物質、二酸化炭素、水、及び/又は非炭化水素系酸ガスは、望ましくなく、このために、フィッシャー−トロプシュ反応器13中で合成反応を実施する前に、これらを合成ガス供給原料から除去するのが好ましい。当技術分野で知られている1つの方法は、脱メタン機における天然ガス10中のメタン(及び/又はエタン、及びより重質の炭化水素)成分を単離すること、次いで、合成ガス11を供給するために、メタンを合成ガス発生機に送る前にメタンを脱硫することを含む。別の従来技術の方法においては、ZnOガード(guard)床を使用することができ、硫黄不純物を除去するための好ましい方法でもある。
微粒子汚染物質は、通常の濾過によって対処される。フィッシャー−トロプシュスラリ又は流動床反応器において生成される触媒微粉などの微粒子は、いくつかの手順において粒子が約10ミクロンより大きく、及び他の手順において約1ミクロンより大きい場合には、市販の濾過システム(任意の濾過ステップ15において)で濾過することができる。フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14、16(及び、特にそのワックス性留分)の微粒子含量は、一般に少なく、通常質量ベースで約500ppm未満であり、及びしばしば質量ベースで約200ppm未満であろう。一般に、微粒子の大きさは、直径で約500ミクロン未満であり、及びしばしば直径で約250ミクロン未満である。本発明の開示の文脈では、粒子が直径で約500ミクロン未満であるということは、粒子が、500ミクロンメッシュの大きさのスクリーンを通過することになることを意味する。
しかし、本発明者等は、かなりの水準の汚染物質が、通常の濾過の後でも、フィッシャー−トロプシュパラフィン系生成物ストリーム中に残留することがあることを見出した。かかる汚染物質は、一般に高い金属含量を有する。前に開示したように、この汚染物質は、抑制しないでおくと、通常、プラッギング問題をまねく。プラッギングの結果、水素化処理触媒の寿命が低下する。
本発明の実施形態によれば、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム14、16から抽出された汚染物質(金属酸化物を含む)は、有機成分及び無機成分の双方を有する場合がある。有機成分は、炭素、水素、窒素、酸素、及び硫黄(それぞれC、H、N、O、及びS)元素の少なくとも1つを含む元素含量を有することができる。無機成分は、アルミニウム、コバルト、チタン、鉄、モリブデン、ナトリウム、亜鉛、錫、及びケイ素(それぞれAl、Co、Ti、Fe、Mo、Na、Zn、Sn、及びSi)元素の少なくとも1つを含むことができる。
フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームのイオン交換処理
本発明者等の知識では、フィッシャー−トロプシュワックス状生成物ストリームから汚染物質を精製及び/又は除去するために、イオン交換技法が使用されたことは、今までなかった。本発明の実施形態において使用に適当であると見なされるイオン交換技法は、イオン交換重合体樹脂及びイオン交換粘土を含む。
イオン交換プロセスを、概念上、図2A−2Bに示す。図2Aにおいて、イオン交換は、溶液から荷電した種26を除去するプロセスであり、この溶液中では、荷電した種26が、樹脂ビーズ、即ち、固定相29上に位置する反対荷電を有する部位28(結合部位と呼ばれる)に対して、同じ荷電のイオン27と競合することによって溶解している。反対荷電を有する部位28は、官能基と呼ぶことができる。本発明のイオン交換プロセスにおいて、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから荷電した種26を除去することが望ましく、これは、荷電した種26を同じ荷電のイオン27と交換することによって行われ、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリーム中の同じ荷電のイオン27の存在は、無害であるか、後の処理ステップで容易に除去される。図2A−Bに描いた例において、荷電した種26は正に荷電した種であり、官能基28は負に荷電した種であるが、これら荷電は、荷電した種26が負に荷電し、官能基28が正に荷電するように、逆にすることができる。
本明細書において適切に使用されるイオン交換樹脂29は、複数の活性イオン交換部位28が結合している水溶性、共重合体マトリックスを含むことができる。イオン交換部位(又は官能基28)は、カチオン交換部分又はアニオン交換部分であってよい。一般に、カチオン基は、スルホン酸、カルボン酸、リン酸、又は同様な基などの強酸基又は弱酸基である。一般に、アニオン交換基は、第三級アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及び同様な基などの強い又は弱い塩基性の基である。一般に、樹脂は、イオン交換部位の濃度を賦与するために、約0.5〜約12meq/グラム乾燥樹脂、いくつかの場合には、約4〜約5.5meq/グラム乾燥樹脂の範囲において十分な数のイオン交換基を含む。カチオン交換部位は、キレート部位であってよく、このキレート部位は、フィッシャー−トロプシュ炭化水素ストリームから除去されるべき汚染物質のイオン交換部位と結合するか、配位錯体を形成する能力がある。
カチオン交換樹脂は、カチオンを交換する能力がある。この能力は、イオン交換樹脂の重合体主鎖上の官能性ペンダント酸基によって可能になる。カチオン交換樹脂中の典型的官能基は、カルボン酸及び/又はスルホ基である。アニオン交換樹脂は、アニオン交換能力があるものであり、樹脂重合体の主鎖上のアンモニウム又はアミン官能性ペンダント酸基によって与えられた能力である。両方のタイプの基を有する重合体(これは、また「樹脂」と呼ばれる)は、本発明の実施形態の範囲内である。かかる樹脂は、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームからカチオン性若しくはアニオン性汚染物質を交換、したがって除去する能力がある。
得られた重合体が、水不溶である限り、重合体履歴の性質は、イオン交換プロセスに対して特に重要ではない。したがって、重合体は、活性イオン交換部位を保持するか、保持するようにできるフェノール系、ポリエチレン系、スチレン系、又はアクリル系重合体、又は任意の他のタイプであってよい。例えば、ポリ(フェノール−ホルムアルデヒド)、ポリアクリル、又はポリメタアクリル酸又はポリメタアクリルニトリル、アミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレン又はポリプロピレンにスチレンをグラフトした重合体、ポリ(2−クロロメチル−1,3−ブタジエン)などの合成イオン交換樹脂、及びスチレン、アルファ−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、又はビニルピリジンから得られるものなどの特にポリ(ビニル芳香族)樹脂(これら全ての樹脂は、接触することになる溶媒媒体に不溶性にするために適切に架橋されていて、所望のイオン交換部位を担持する)が、本発明の実施形態のイオン交換樹脂の重合体骨格に対する適切な合成樹脂である。知られている重合性モノエチレン性不飽和モノマーのなかで、スチレンなどのモノビニリデン芳香族、モノビニルトルエン、エチルビニルベンゼン及びビニルナフタレンなどのモノアルキル置換スチレンが、重合体の例である。
本発明の実施形態の重合体は、重合性モノエチレン性不飽和モノマー又はかかるモノマーの混合物と架橋剤との付加共重合によって形成することができる架橋された重合体である。一般に、架橋剤は、ジビニルベンゼンなどのポリエチレン性不飽和モノマーである。架橋剤の例には、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルジフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルホン、及びジイソプロペニルベンゼンなどのポリビニリデン芳香族、エチレングリコールジメタクリレート及びジビニルスルフィド、ポリビニリデン芳香族では特にジビニルベンゼンが、含まれる。
本発明の実施形態における使用に適するイオン交換樹脂は、当技術分野で知られているマクロ多孔性タイプ又はゲルタイプであってよい。例えば、ゲルタイプ樹脂のビーズは、ビーズの外部表面積に実質上等しい、イオン交換部位のために利用できる表面積を有する。しかし、マクロ多孔性タイプ樹脂のビーズは、その樹脂ビーズの外部表面並びに樹脂ビーズの構造に透過している微細なチャネルによって生み出された別の表面積を含む、利用可能な表面積を有する。樹脂ビーズ内のチャネルの網目は、ビーズの多孔性に寄与し、又はビーズの多孔性を特定する。用語「マクロ多孔性」は、樹脂ビーズが、フィッシャー−トロプシュ炭化水素ストリーム中に含まれる汚染物質が入るために十分大きい、樹脂構造中に存在する細孔又は空隙有することを意味するものである。いわゆる「ゲル−タイプ」樹脂は、通常、細孔又は空隙を含まない。
本発明の実施形態によれば、樹脂ビーズは、任意の形状をとることができるが、一般には、球状、円板形状、中空円筒を含む円筒形、又は一般に繊維などの伸ばされた形状である。本発明の1つの実施形態において、樹脂ビーズは球状であり、直径約35〜75ミクロンである。
適切な重合性モノエチレン性不飽和モノマー、架橋剤、触媒、重合媒体、及び、適切な微粒子形態における架橋された付加共重合体を調製する方法は、当技術分野でよく知られている。マクロ多孔性強酸交換樹脂の例は、商標AMBERLYST 15、AMBERLYST XN1005、AMBERLYST XN1010、及びDOWEX MSC−1の下で商業的に出されているスルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。また、官能性ホスホン又はアルソン基を含むものなどの、中間強度の酸樹脂も報告されている。
市販のカチオン交換樹脂には、さらにDOWEX 50WX2、50WX4、DOWEX HGR、DOWEX HCR、DOWEX MWC−1、及びDOWEX CCR−2が含まれる。
マクロ多孔性弱酸樹脂には、フェノール、亜ホスホン、又はカルボキシルであってよい官能基を有するものが含まれる。いくつかの通常の弱酸樹脂は、エチレンジメタクリレート又はジビニルベンゼンなどの架橋剤を使用することによる、架橋しているアクリル、メタクリル、又はマレイン酸基によって得られたものである。DUOLITE C−464は、官能性カルボキシル基を有する樹脂に付けられた商標である。
マクロ多孔性強塩基樹脂の中に、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)マトリックスから懸垂している第四級アンモニウム基を含むものがある。AMBERLYST A26、AMBERLYST 27、及びDOWEX MSA−1は、報告によるとトリメチルアミンから得られるアミン官能性を有する強塩基樹脂の商標である。DOWEX MSA−2は、ジメチルエタノールアミンから得られるアミン官能性を有すると報告されているマクロ多孔性強塩基樹脂の商標である。
一般に、マクロ多孔性弱塩基アニオン交換樹脂は、第一級、第二級、若しくは第三級アミン又はかかる官能性の混合物から得られる官能基を含む。官能性アミン基は、商標DOWEX WGR及びDOWEX WGR−2などの脂肪族ポリアミンとホルムアルデヒド又はアルキルジハライド又はエピクロルヒドリンとの縮合生成物から得られる。他のマクロ多孔性弱塩基樹脂は、DOWEX MWA−1、DOWEX 66、及びAMBERLYST A21など、アミン又はポリアミンとクロロメチル化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体との反応によって調製される。
市販のアニオン交換樹脂には、さらにDOWEX SBR、DOWEX SBRP、DOWEX SAR、及びDOWEX MWA−1が含まれる。
本発明の1つの実施形態において、フィッシャー−トロプシュ炭化水素ストリームから除去されるべき荷電した種26は、アルミニウムカチオンであり、同じ荷電27は、H又はNaカチオンであり、官能基28は、SO イオンである。合成樹脂の構造中にSO 官能基を導入するプロセスであるスルホン化プロセスは、当技術分野においてよく知られている。
本発明の実施形態によれば、粘土材料もまた、イオン交換ゾーン25内に配置されるイオン交換媒体として使用することができる。当技術分野において、よく知られているように粘土材料は、約0.002mm未満の粒径を有する材料と定義することができる。粘土は、特定の特性及び特徴をもつ鉱物タイプである。本発明の実施形態の実施において有用な1つのタイプの粘土は、結晶性シリケート粘土の分類に入る。これらタイプの粘土の2つの基本的構成単位は、シリカ四面体及びアルミニウム八面体である。これら構成単位は、「シリケート層粘土」と名づけられるシートを形成する。ケイ素四面体シートは、四面体形状単位が水平に結合したシートによって規定されていて、この四面体形状単位では、四配位の中心ケイ素原子に、四面体アレーに配置された取り囲む4個の酸素原子が共有結合されている。取り囲んでいる酸素原子は、隣りのケイ素原子に、次々に、結合していて、シートを一緒に保持する単位間の結合として作用する。八面体シートは、六配位の中心アルミニウム原子が、八面体アレーに配置された取り囲む6個の酸素原子又は水酸イオンに結合した単位によって規定されている。
本発明の実施形態の粘土材料は、同形置換することができ、同形置換では、1つのシート中のイオンが、同じ大きさであるが恐らく異なる原子価の他のイオンによって置換される。例えば、ケイ素四面体シート中のケイ素原子は、アルミニウム原子によって置換されてもよい。化学量論的には、置換前のSiは、置換後SiAlOになり、中性に荷電した種が陰性に荷電した種になる効果を有する。同様に、アルミニウム八面体シート中のアルミニウムは、マグネシウム原子で置換されてもよい。化学量論的には、(OH)Alは、(OH)AlMgOになる。つまり、中性に荷電した種が陰性に荷電した種になる。
粘土材料は構成構造単位の数及び組合せによって分類され、構成構造単位の数及び組合せは、四面体及び八面体シート、それぞれのシート中のカチオン置換の数(同形置換)、層荷電の大きさ及び位置、及び層間カチオンが存在するか又は存在しないかである。粘土材料の2つの一般的区分は、1:1又は2:1と定義される。1:1の粘土は、それぞれの八面体シートに対して1つの四面体シートからなり、2:1の粘土は、それぞれの八面体シートに対して2つの四面体シートからなる。1:1の粘土の例は、カオリナイトであり、2:1の粘土の例は、スメクタイト、マイカ、及びバーミキュライトである。マイカの例は、イライトであり、スメクタイトの例は、モンモリロナイトである。カオリナイトの構造、1:1の粘土の例、及びモンモリロナイトの構造、2:1の粘土の例を、図3A−Bにそれぞれ示す。
モンモリロナイトは、カチオンを交換するその能力のために、本発明の実施形態にとって特に重要である。それは、P.Bala等による「Ca−モンモリロナイトにおける脱水転位(Dehydration Transformation in Ca−montmorillonite)」(Bull.Mater.Sci.、23巻、1号(2000年2月)、61−67頁)と題する記事において議論されている。上記に議論したように、モンモリロナイトは、粘土材料のスメクタイト群に属し、2:1タイプの層構造を有する。それは、陰性に荷電したシリカシートから構成されており、Mg2+、Na、及びCa2+などの荷電をバランスさせる対イオンにより一緒に保持されている。モンモリロナイトの一般化学式は、(M ・nHO)(Al4−yMg)Si20(OH)、式中、Mは、層間カチオン(Mg2+、Na、及びCa2+)である。これら層間カチオンは、八面体シート中のAl3+に対するMg2+及びFe2+の同形置換、及び、四面体シート中のSi4+に対するAl3+の同形置換によって生じる陰性荷電をバランスさせる。層間カチオンに加えて、粘土材料のスメクタイト群の層間空間は、多量の水分子を含み、これが水性環境においてこの材料が膨潤する能力をもたらす。
本発明の実施形態によれば、粘土材料は、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去するために使用することができる。特に、スメクタイト群からの粘土を使用することができる。さらに特に、スメクタイトモンモリロナイトを使用することができる。
以下の実施例は、炭化水素ストリームを水素化処理に通す前に、イオン交換プロセスを使用してフィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを処理する種々の方法を示す。以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提供するものであり、本発明の範囲又は精神を制限するものと見なされるべきではない。
(実施例1)
イオン交換樹脂を使用したフィッシャー−トロプシュ炭化水素ストリームのイオン抽出
この実施例は、フィッシャー−トロプシュ誘導パラフィン系炭化水素ストリームに関して行われたイオン交換プロセスの結果を提供し、このプロセスは、市販のイオン交換樹脂を使用して実施する。酸抽出ステップの前に、フィッシャー−トロプシュ生成物ストリームを当業者には知られている従来法の濾過技法を使用して濾過した。次いで、フィッシャー−トロプシュ生成物ストリームを、還流濃縮器を備えた丸底フラスコ中で市販のイオン交換樹脂Dowex HCR−S(Dow Chemical)と混合した。イオン交換樹脂に対してフィッシャー−トロプシュ誘導ワックスのいくつかの異なる比で実験を実施した。それぞれの混合物をワックスが溶融状態にあるように、100℃で1時間撹拌した。
フィッシャー−トロプシュワックス中の汚染物質の水準を、イオン交換処理後再び測定したパラフィン相中の水準と比較した。分析を行った汚染物質を含む元素には、アルミニウム、コバルト、鉄、ケイ素、錫、及び亜鉛が含まれていた。表1にフィッシャー−トロプシュワックスをイオン交換樹脂で処理した後、パラフィン相中に存在する汚染物質の量を示す。
Figure 2007530708
表の本体中の数は、抽出後パラフィン相中に存在する元素の量を表す。元素分析をするために使用された技法は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)であった。この技法においては、試料を石英容器(超高純度品)に入れ、これに硫酸を添加し、次いで、試料を制御可能なマッフル炉中で3日間灰化した。次いで、ICP−AES分析の前に、灰化された試料をHClで溶かして、水溶液に転化した。
表1からのデータは、ストリームが濾過された後でも、汚染物質は、従来法で濾過されたフィッシャー−トロプシュ生成物ストリーム中に依然として存在するが、それが希釈水性酸で抽出された後には、これら汚染物質は、パラフィン系ストリームから実質上除去されていることを明瞭に示す。また、データは、汚染物質除去において、Dowex HCR−S 5部に対してワックス3部が、Dowex HCR−S 4部に対してワックス3部よりもより効果的であったことを示している。
(実施例2)
モンモリロナイト粘土を使用したフィッシャー−トロプシュ炭化水素ストリームのイオン抽出
この実験においては、モンモリロナイト粘土をイオン交換媒体として使用した。結果を表2に示す。
Figure 2007530708
表2は、モンモリロナイト粘土が、特に、Sud−ChemieK10及びT.Actisilに関して、フィッシャー−トロプシュ誘導ワックスストリームから汚染物質を除去する能力があることを示す。
本出願において引用した全ての出版物、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の出版物、特許出願又は特許の開示が、具体的に個々に全体を参照により援用しているのと同程度に、全体を参照により本明細書に援用する。
上記に開示した本発明の例示的実施形態の多くの変更形態が、当業者には、容易に思いつくであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての構造及び方法を包含していると見なされるべきである。
フィッシャー−トロプシュ反応の生成物を濾過し、イオン交換プロセスにかけ、次いで、水素化処理に送り出す本発明のプロセスの概要を示す図である。 本発明の実施形態によって使用することができる例示的イオン交換機作を示す図である。 本発明の実施形態によって使用することができる例示的な1:1の粘土材料の構造を示す図である。 本発明の実施形態によって使用することができる例示的な2:1の粘土材料の構造を示す図である。

Claims (23)

  1. フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去する方法であって、
    a)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを処理ゾーンに通過させること;
    b)処理ゾーン内にイオン交換媒体を供給すること;
    c)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを処理ゾーン内のイオン交換媒体と接触させて、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去すること、及び
    d)処理ゾーンから、精製されたストリームを取り出すこと
    を含む方法。
  2. 接触ステップにおけるイオン交換媒体が、架橋されたイオン交換性高分子樹脂を含む請求項1に記載の方法。
  3. 高分子樹脂が、強酸交換樹脂である請求項2に記載の方法。
  4. 高分子樹脂が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である請求項2に記載の方法。
  5. 接触ステップにおけるイオン交換樹脂が、スルホニウム官能基を有する請求項2に記載の方法。
  6. 接触ステップにおけるイオン交換媒体が、粘土材料である請求項1に記載の方法。
  7. 粘土材料が、1:1の粘土材料である請求項6に記載の方法。
  8. 1:1の粘土材料が、カオリナイトである請求項7に記載の方法。
  9. 粘土材料が、2:1の粘土材料である請求項6に記載の方法。
  10. 2:1の粘土材料が、スメクタイト、マイカ及びバーミキュライトからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
  11. スメクタイトが、モンモリロナイトである請求項10に記載の方法。
  12. 汚染物質が、無機成分を含む請求項1に記載の方法。
  13. 無機成分が、Al、Co、Ti、Fe、Mo、Na、Zn、Si、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項12に記載の方法。
  14. 汚染物質が、上流側の処理装置から発生する請求項1に記載の方法。
  15. 汚染物質が、フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを生成するために使用された触媒から発生する請求項1に記載の方法。
  16. 汚染物質は、1.0ミクロンフィルターを通過できるような大きさである請求項1に記載の方法。
  17. 接触ステップが、バッチプロセスとして実施される請求項1に記載の方法。
  18. 接触ステップが、連続プロセスとして実施される請求項1に記載の方法。
  19. フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを濾過するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
  20. フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを蒸留するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
  21. 精製されたストリームを水素化処理ステップに通過させるステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
  22. 接触ステップが、水素化処理反応器中の触媒床のプラッギングを実質上回避する請求項21に記載の方法。
  23. フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームから汚染物質を除去する方法であって、
    a)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを生成するために、フィッシャー−トロプシュ反応器に合成ガスを通過させること;
    b)フィッシャー−トロプシュ誘導炭化水素ストリームを濾過して、濾過された炭化水素ストリームを生成すること;
    c)濾過された炭化水素ストリームを処理ゾーンに通過させること;
    d)処理ゾーン内にイオン交換媒体を供給すること;
    e)濾過された炭化水素ストリームを処理ゾーン内のイオン交換媒体と接触させて、濾過された炭化水素ストリームから汚染物質を除去すること;
    f)処理ゾーンから精製されたストリームを取り出すこと;及び
    g)精製されたストリームを水素化処理反応器に通過させること
    を含む方法。
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