本発明は様々な変更や代替をすることができるが、それらの詳細は図面で例示され、また詳細に記述される。しかし、本発明は記述された特定の実施形態に限定されるものではないことを理解する必要がある。本発明は、添付の請求項に定義される本発明の精神と範囲内にある全ての変更物、同等物、代替物に及ぶ。
本発明は、別の部材に対して少なくとも一つの部材の位置を保持するエレクトレットを使用するMEMSアクチュエータデバイスに応用可能である。特に、エレクトレットを制御するMEMSデバイスは、長時間に渡って、かつ、外部電圧源を必要とせずに、MEMSデバイスの異なる部材の相対的位置を一定に保つのに特に有用である。
エレクトレットは磁石の電気的なアナログ体であって、静電気的にバイアスをかけられた多種のMEMSデバイス中のアクチュエータを設計するのに使用されることができる。大半のMEMSデバイスは精密な許容誤差内に加工される。しかし、プロセス制御では、調整あるいは特性化(characterization)を行わないと所望の性能レベルを達成するには十分でない。加えて、あるアナログ回路の応用技術は適切に作動するためにバイアスをかけるかあるいは特性化を行うことを必要とする。このタイプの従来の回路では、前記特性化は、D/A(デジタル−アナログ)変換器を使用して適切なアナログ設定を変換することによりデジタルで行われる。もう一つの方法として、レーザートリミングは回路では頻繁に使用されるが、MEMSデバイスでは直接的には使用されないオプションである。
本発明では、エレクトレットを使用するMEMSデバイスの調整を行うことができるいくつかの実施例が提供される。これらの実施例により、安定化された外部バイアス回路の必要性と、デジタル特性化及びレーザートリミングの必要性が低減する。
図1は、エレクトレットを有するMEMSデバイス100の一部分を概略的に示す。ベース部102は固定され、絶縁層104を有している。エレクトレットはその絶縁層104の内部に配置された浮遊電極106を含む。可動部材108はその外面上に電極110を備え、浮遊電極106に近接して配置される。例えば、絶縁層104は二酸化ケイ素や窒化ケイ素などの層であってもよく、一方ベース部102及び可動部材108はMEMSのマイクロマシニング技術を用いてシリコンで形成されることができる。浮遊電極106は、絶縁体104の内部に配置される導電性材料で形成される。例えば、その導電性材料は金属あるいは導電性半導体材料であってもよい。これらの材料は、単なる例示であり、本発明は、これらの材料を使用することに限定されるものではない。例えば、ベース部及び可動部材もしくはその一方は石英かあるいはサファイアで作られてもよい。
電荷111が浮遊電極106上に捕捉される場合、反対の極性の電荷112は可動部材108の電極110上に誘起される。電極110は接地されてもよい。誘起された電荷112の結果、ベース部102と可動部材108との間に引力114が生じる。また一般的には、引力に反した動作を行う復元力も生じる。その復元力は、可動部材108の移動によって生じるせん断力あるいは弾性力に起因する場合もある。復元力が引力を相殺する場合には、ベース部102に対する可動部材108の位置が固定される。電荷111は、長期間、すなわち数年間は、浮遊電極に捕捉されたままであるので、ベース部102に対する可動部材108の位置は長期間一定のまま保たれることができる。
様々なMEMSを基礎とするアクチュエータはエレクトレットを使用して制御されることができる。エレクトレットが異なる部材の相対位置を制御するのに役立つ場合のあるタイプのアクチュエータは、光学MEMSデバイス上にある。例えば、MEMSを基礎とするアクチュエータは、少なくとも一つの第1撓み部材と少なくとも一つの第2部材を有していてもよく、それらは固定されていてもよい。第1撓み部材か第2部材のどちらかの上に少なくとも一つの第1浮遊電極が配置される。第1撓み部材か第2部材のもう一方は一つの第2電極、例えば、接地された電極又は第2浮遊電極を備えている。第1浮遊電極上の電荷は、第2部材から所望の距離だけ離れたところに撓み部材を位置づけるように選定される。第1光学素子は、撓み部材と第2部材の一方を備えている。第2光学素子に対する第1光学素子のバイアス位置は、少なくとも部分的には撓み部材の位置により決定される。
そのような光学MEMSを基礎とするデバイスの一例は、可変光減衰器(VOA)200であり、それは終端間を光結合した2つの光ファイバを使用している。これは図2および図3に概略的に図示される。第1及び第2のファイバ202、204はマウント206の中に保持され、ファイバ202、204の少なくとも一つの終端は自由に移動できる。ファイバ202,204のファイバコアを互いに一列に並べると、良好な光結合(すなわち、低挿入損失)が行われる。VOA200の損失あるいは減衰を増加することが望まれる場合、ファイバ202、204の少なくとも一つの終端は低損失位置から撓まされる。減衰量は撓みの度合いに依存しており、撓みが大きいほど減衰も大きくなる。
図示された実施形態では、マウント206は、ファイバ202、204を支持する支持用溝部208と、撓み可能なファイバ202、204の終端を収容する、空洞とも称される開領域210と、を含む。VOAは、2003年5月6日に出願された米国出願番号10/430,845号にさらに記載され、本願全体に参照として反映されている。
操舵電極(steering electrodes)212は、ファイバ202、204を移動させるために空洞210内に設けられている。VOA200の一つの特別な実施形態では、ファイバ202、204毎に4つの操舵電極212が設けられる。ファイバコアを整列させて最低の光挿入損失を得るために、適切なバイアス電圧が異なる電極212上に与えられる。この光挿入損失をゼロにするゼロ化操作が一旦行われると、片方あるいは両方のファイバ202、204を低損失整列位置から離れて撓ませ、ファイバ202、204間を通る光信号を減衰させるために、追加電圧が、1又は複数の電極に印加される。
バイアス電圧を確立させた後にもなお連続的に電極に電荷を供給しなければならないことを避けるために、バイアス電圧の印加中に帯電された電荷が電極上に残るようにするのが好ましい。バイアス電圧が確立された後に電極を切断するために、電界効果トランジスタ(FETs)などのアクティブなスイッチを用いた仕組みは、アクティブスイッチによる電荷漏洩が起こることにより、長期に渡る電極の絶縁を提供するのに効果的ではない。漏洩はバイアス電圧を短期間に、一般的にはおよそ数分で変化させVOA200を低性能化させる。
VOAで使用されるエレクトレットを基礎とする試みの一実施形態は、図4に概略的に示されている。エレクトレットは浮遊電極402を使用してもよい。浮遊電極402上に配置された電荷404は安定しており、直接の電気接続がないから、電極402から漏洩することはない。電荷404は、いくつかの異なる方法を使用して浮遊電極402上に帯電されてもよい。一つの通常の試みは、「ホットエレクトロン(hot electron)」注入と呼ばれる方法であり、電子は電界の印加により浮遊電極402上に注入され、ダイオード408はアバランシュモードに保持される。ホットエレクトロン充電は通常非揮発性メモリデバイスに使用される。
ファイバ406は導電性第2電極410を備えており、一般的には薄い金属フィルムである。第2電極410は接地されてもよい。一旦永久電荷404が浮遊電極402上に捕捉されると、仮想的電荷が電極410上に誘起されるので、金属電極で覆われたファイバ406と浮遊電極402との間に引力が働く。捕捉電荷の数を変化させることにより、引力を変化させることができる。
VOA200の制作中には、低損失状態を達成するために、ファイバ202、204はどの方向にバイアスをかけられる必要があるかは一般的にわかっていない。従って、VOA構造は4つの操舵方向のそれぞれに沿ってエレクトレットにバイアスをかけることができるようになっている。2つのファイバ202、204は少なくとも十分な浮遊電極を備えており、直交する方向の移動を可能にして、それによって低損失位置が達成されることを保証する。浮遊電極は一つだけのファイバ202あるいは204に対して設けられていてもよいし、又はその両方に対して設けられていてもよい。しかし、VOAにおける減衰を変化させるために、ファイバの一つを一方向に撓ませる一つの調整可能な電極を設けることが少なくとも必要である。しかし、複数の調整可能な電極をファイバ202、204の一つあるいは両方に対して設けてもよいことは明らかである。
浮遊電極と調整可能な電極の両方を提供する実施例が図5に概略的に示される。ベース部502は絶縁体504の層内部に配置される二つの電極を備えている。浮遊電極506は長期の安定化のためにエレクトレットとして使用される。一旦初期のゼロ化操作が完了すると、捕捉された電荷は浮遊電極506上に残存する。減衰量を変化させるために使用される場合を除いて、さらなる電気的動作は必要ない。
また、能動電極と呼ばれる調整可能な電極508は、減衰量を変化させるために設けられている。調整可能な電極508は、電圧源510と電気的に接続されている。調整可能な電極は、浮遊電極506と同じ絶縁体504内に設けられてもよい。
ベース部502とファイバ512との間には2つの静電力が存在する。一つは浮遊電極506とファイバ512上の誘起電荷との間の静電力によるものである。もう一つはファイバ512と調整可能な電極508との間の静電力によるものである。調整可能な電極508上の電圧は、電圧源510を介して印加される電圧を変化させることにより容易に変化されるので、ファイバ512に印加されるトータルの正味静電力は変化し、それ故にその位置は変化する。
浮遊電極技術を使用することによって、複数の能動電極が使用されてもよいが、一つだけの能動電極でVOA操作ができるようになる。これは、VOA毎の制御可能電圧の数を4つから1つに減らすことによって制御回路を単純化する。また、それは電力損失時に電圧妨害回路構成を無負荷にするのに役立つ。最適電極構成に関しては、より複雑なパターンを使用することができる。例えば、浮遊電極506と調整可能な電極508は交互に配置されてもよく、またファイバ512の自由な長さ全体に渡って延長してもよい。
次に、光学的に活性化されたもう一つのタイプのMEMSデバイスである、調整可能なファブリー・ペローフィルタ(TFPF)について図6Aを参照して説明する。図6AはTFPF600の一実施形態を示す。この特別な実施形態では、TFPF600は2つの光学ファイバの対向する終端上の反射面間に形成される。第1光ファイバ602はアクチュエータ装置604の第1の側に取り付けられる。第1ファイバ602は、安定性と強度を増大させるために、第1継ぎ手606で終端処理されている。第2ファイバ608はアクチュエータ装置604のもう一方の側に取り付けられる。また、第2ファイバ608は、終端処理用継ぎ手610を備えていてもよい。反射面は軸611上にある共鳴器あるいは空洞と称される、ファブリー・ペローフィルタを形成する。ファイバ602、608はコアがファイバ終端に向けて拡大している、拡大コアファイバでもよく、コアが拡大されていないものに比べて、ファイバから出る光は発散しない。制御装置601は、TFPF600の操作を制御するために、TFPF600と接続されている。
この特定の実施形態では、図6B〜6Eに概略的に図示されているように、アクチュエータ装置604は中央素子612、第2素子614、第3素子616の3つの素子からなる。デバイス600を通る横断面図を図6Fに示す。中央素子612は固定ベースとして使用され、固定部材とも称される。その上に第2素子614と第3素子616が設けられる。中央素子612は、第2素子614上に設けられる整列機構と第3素子616に設けられる移動機構を駆動するのに使用される電気素子を提供する。
さて、中央素子612の一方の側を示す図6Bを参照すると、中央素子612には、光がファイバ602と608との間で通る開口618が存在する。第1表面620は浮遊電極622あるいはエレクトレットのパターンを含む。浮遊電極622のパターンはx−z面内でファイバ602の回転整列を提供する一組のx電極624と、y−z面内でファイバ602の回転整列を提供する一組のy電極626を含む。第1表面620の裏側の面にある中央素子612の第2表面628は、図6Cに示されているように、第2ファイバ608の終端と第1ファイバ602の終端との間の間隔を制御するために1つ以上の移動電極630の組を備えている。図では、1つ以上の移動電極630の組は1つの電極として図示されているが、複数の電極が使用されてもよい。
ところで、図6Dを参照すると、中央素子612の第1表面620と対向する第2の素子614は、回転整列機構632を含んでいる。この特定の実施形態では、回転整列機構632は、カラー638内に含まれた2つの同心円状に取り付けられたセクション634および636からなる。外側セクション634は、材料の薄いセクション付近に形成された2つのヒンジ640によってカラー638に取り付けられている。内側リング636は、これもまた材料の薄いセクションで形成された2つのヒンジ642によって外側リングに取り付けられている。内側セクション636にある開口644は2つの光ファイバ602、608間を光が通ることを可能にする。第2素子は、例えばシリコンを用いて形成されてもよい。整列機構はファイバの一方の終端をもう一方のファイバの終端にそろえるために使用され、ファブリー・ペロー空洞(Fabry−Perot cavity)を一列にする。
外側セクション634は2つのy−第2電極646を備え、内側セクション636は2つのx−第2電極648を備える。第2素子614は、その表面647を中央素子612の取り付け面650に取り付けることによって搭載され、中央素子612のx−浮遊電極624は第2素子614のx−第2電極648と対向し、中央素子612のy−浮遊電極626は第2素子614のy−第2電極646と対向する。第2及び第3素子614、616は、適切な技術で、例えば半田付け、融着、あるいは接着剤を用いて、中央素子612に取り付けられることができる。x−z面及びy−z面での最高の整列は、およそ1又は2度の回転あるいはそれ以上の回転で行うことができる。
整列機構632は以下のように動作する。様々な制御電圧をx−浮遊電極624と648に印加して、x−z面内で第1ファイバ602の配向を制御することができる。内側セクション636は、x−浮遊電極624に印加された制御電圧を調整することによって、2つのヒンジ642により形成された軸654の周りで回転して軸654の周りで静電力を提供することができる。同様に、y−浮遊電極626に制御電圧を印加して、y−z面内で第1ファイバ602の配向を制御することができる。軸652の周りに静電力を提供するように、外側セクション634は、y−電極626に印加された制御電圧を調整することによって、2つのヒンジ640で形成された軸652の周りに回転することができる。
次に、図6Eを参照すると、第3素子616はz方向の平行移動を可能にする可撓部材656を備えており、2つのファイバ602、608間に形成されるファブリー・ペロー空洞を調整する。図示された実施形態では、可撓部材656はビーム部材であり、第3素子616内で2つの平行なスロット658を切削することによって形成される。ビーム部材656内に備えられた開口659によって、第1ファイバ602と第2ファイバ608との間に光が通ることが可能になる。ビーム部材656は、中央素子612上に設けられた電極630の組に対応する1つ以上の電極660を備えている。電極630の組に対向する電極660を有する第3素子の表面662は、中央素子612の取り付け面631に取り付けられる。
ファイバ602、608の終端662、664間の間隔は、電極630、660に印加される制御電圧を調整することによって変化させることができる。ファイバ602、608の終端662、664間のz方向の間隔は、電極630、660に異なる極性の電圧を印加することによって縮められて、ビーム部材656を中央素子612の方向へ曲げさせることができる。
異なる素子612、614、616は適切なタイプの材料で形成されてもよい。1つの特別に適切なタイプの材料はシリコンであり、素子上の様々な特徴は基準のリソグラフィーとエッチング技術を用いて形成されることができる。シリコンを用いる一つの利点は、ビーム部材が、単結晶で形成され、単結晶特有の物理的特性を有することである。
TFPF600は以下の方法で一列に並べられ、作動されることができる。一旦アクチュエータ装置604が第1及び第2ファイバ602、608で組み立てられると、光試験信号はファイバの一方から他方へ通される。光信号はTFPFの作動に好ましい波長範囲の外側にあるので、TFPFの反射面の反射率は低減される。さらに、試験信号はTFPFのFSRより幅広い帯域幅を有していてもよい。ファイバ602、608間を通る光の量を最大にするように、ファイバ602、608間の回転整列は、中央素子612上のx−浮遊電極624とy−浮遊電極626上の電圧を制御することによって調整される。一旦最適な配向が第1ファイバ602に対して見つけられると、x−浮遊電極624とy−浮遊電極626は一定の電荷を維持し、それによってファイバ602、608間の固定整列を維持する。
一旦ファイバ602、608が整列したら、所望の共鳴伝送周波数を得るために、移動電極630、660に印加した電圧を制御することによって、ファイバ終端662、664間の距離を調整する。ファイバ602、608間の間隔を所望の間隔に維持するために、印加電圧を固定したままに保持してもよい。
制御装置601を使用して、x−浮遊電極624とy−浮遊電極626及び移動電極630、660もしくはその一方に特定の電圧を印加するようにしてもよい。また、制御装置を使用して、エレクトレット間の電気容量値を測定してもよい。例えば、x−エレクトレット624、648がコンデンサを形成して、x−電気容量と称されるそのコンデンサの値を制御装置で測定して保存してもよい。電荷漏洩がある場合には、x−エレクトレット624、648上の電荷を制御して、制御装置がx−電気容量値を安定させるようにしてもよい。電気容量を安定させることにより、x−エレクトレットを一定の物理的間隔に維持することが保証され、それによってx−z面でファイバ602の整列を一定に保たれる。従って、一定のx−電気容量と一定のy−電気容量を維持することにより、光フィードバックを使用することなく、ファイバ602の配向を一定に保つことが可能となる。さらに、移動電極630、660を測定して安定化することにより、TFPFは選択された伝送周波数のピーク値で安定化することが可能になる。
一つ以上のx−エレクトレットとy−エレクトレットを従来の電極により置き換えたり、それら電極で補ったりしてもよい。さらに、ファイバ602、608間の距離を長期間にわたって一定に保つべきである場合、エレクトレットを使用してファイバ602、608間のz方向間隔を安定させてもよい。
TFPFの実施形態と他の実施形態は、2003年4月29日に登録された米国特許出願番号10/425,509号にさらに詳細に記載されているので、本願ではこれを参照し、説明を省略する。
光デバイスで使用される他方のタイプのMEMSアクチュエータは、ホログラフィー光学素子(HOE)を基礎とする光学スイッチであり、図7及び図8に示されている。また、2001年7月13日に登録された米国特許出願番号109/905,736号及び09/905,769号に記載されているので、本願ではこれを参照する。
スイッチ700は基板702を備えており、2つの基板表面706、707に内面反射することによって光704が該基板に沿って進む。HOE709は、基板702の一方の表面706の上に配置される。HOE709は多くの材料ストリップ708からなる。図示された実施形態では、各ストリップ708は幅bを有し、間隔cと中心間間隔aを有する。HOE709は基板の上面706に対して垂直方向に移動可能である。HOE709を表面706に近接してあるいは接触して移動させる場合、表面706に当たった光704はHOE709との物理的あるいは一過性の相互作用によって、通路716に沿って回折する。HOE709が表面706から離れるように移動する場合、光704とHOE706との間に光結合はなくなり、そのため光704は通路714に沿って内面反射する。
ストリップ708は回折位置にある場合には表面706と接触している必要はなく、表面706から離れるように間隔をあけることができる。実際、ある状況下では、HOE709と表面706との間におよそ100nmのギャップがある場合、方向716に沿った回折効率を最大にすることができる。
光704は基板702内で内面反射し、その形状と平行している伝播面内で伝播する。光716がその形状の平面から回折するように、ストリップ708は伝播面に非垂直に設定されることができる。また、基板表面706、707上の回折光716の入射角が臨界角より大きい場合、回折光716は基板内で内面反射することができる。表面706と接触する場合に、ストリップ708が表面706に突き当たる恐れを低減するために、ストリップ708はその下部表面上に小さい隆起718を備えることができる。
典型的なHOE800は図8に概略的に図示されている。ストリップの支えを提供するために、HOE800はストリップ802と交差部803を含んでいる。側部804、806はHOE800のさらなる支えを提供する。ストリップ802、交差部803、側部804、806は全て同じ材料で形成されてもよく、リソグラフィー技術を用いて形成されてもよい。
HOE800を動作させる一つの実施例は図9に概略的に示されている。取り付け構造は、基板911上に形成された2つの取り付けベース部908、910と、ベース部908、910上に形成された取り付け面912を備えている。HOE800は可撓連結部914を介して取り付けベース部908、910と連結されている。また、可撓連結部914は、少なくとも垂直方向に曲げることができる適切なMEMS処理されたばねあるいは構造であってもよい。また、可撓連結部914は、2方向、すなわち上方向と下方向に曲げることができるものがよい。電極構造916は取り付け面912に取り付けられ、この実施形態では、ストリップを横切って横方向と縦方向に延長しており、接地されていてもよい。そのような構成では、HOE800は「ON」位置でバイアスをかけられており、電極916からの電場により、基板911からさらに離れている「OFF」位置に移動できるようにしてもよい。あるいは、HOE800は「OFF」位置でバイアスをかけられており、基板911により近接した「ON」位置に移動されるようにしてもよい。
電極構造916は、HOE800と基板911との間に所望の離隔距離をあけるために、ある特定の量の電荷を注入することによってHOE800にバイアスをかけるために使用される浮遊電極916aを含む。調整可能な電極916bは、「ON」と「OFF」の位置間でHOEが急速な動作をするように使用される。HOE800にバイアス力と調整力がより均一になるように、浮遊電極916aと調整可能な電極916bは交互に配置されている。従って、デバイス900はエレクトレットを使用して所望のバイアス位置にバイアスをかけてもよく、能動電極を使用して動作させてもよい。この構成は長期間のバイアス安定性を提供し、長期間の位置制御のための能動電圧制御の必要性を低減する。
光を基礎とするMEMSデバイスに加えて、エレクトレットは電気MEMSデバイスでの可撓部材の長期間の位置決めに使用されることができる。そのようなデバイスは少なくとも一つの第1撓み部材と少なくとも一つの第2部材を有するMEMSを基礎とするアクチュエータを含んでもよい。第1浮遊電極は第1撓み部材と第2部材の一方に配置される。第2電極は第1撓み部材と第2部材の他方の上に設けられる。第1浮遊電極上に蓄えられた電荷は、第2部材から所望の距離だけ離れたところに撓み部材を位置付けるように選択される。撓み部材あるいは第2部材のどちらか又は両方は、第2部材に対する第1撓み部材の位置に依存した電気的特徴を有する電気素子からなる。
MEMSを基礎とする調整可能コンデンサ1000の一実施形態を示すデバイスの一例を、図10に概略的に図示する。コンデンサ1000はベース部1002と、そのベース部1002上に形成された浮遊電極1004を有する。浮遊電極1004に対向する撓み部材1006があり、その撓み量は浮遊電極1004に蓄えられた電荷1008の量に依存している。少なくとも一つの電極は可撓部材1006上に配置される。図示された実施形態では、撓み部材1006上に2つの電極1010aと1010bがある。第1撓み部材電極1010aは浮遊電極1004と関連した第2電極であり、接地されていてもよい。浮遊電極1004上の電荷は第1撓み部材電極1010a上にミラー電荷を誘起し、浮遊電極1004の方へ撓み部材を撓ませる引力を生ずる。
コンデンサは、第2撓み部材電極1010bとコンデンサ電極1012との間に形成される。コンデンサ1000の電気容量は、少なくとも一部は、第2撓み部材電極1010bとコンデンサ電極1012との間の間隔によって決定される。従って、浮遊電極1004上に置かれた電荷量が変化するので、第2撓み部材電極1010bとコンデンサ電極1012間の間隔が変化し、従って電気容量が変化する。
このタイプのデバイスは、電子回路での調整可能あるいはプログラム可能コンデンサとして有用であり、プログラム可能コンデンサの従来の「デジタル」アプローチの代わりに使用されることができる。このコンデンサは、様々な定格の電気容量値を得るために、並列あるいは直列に切り替えられる一揃いの不連続なコンデンサを使用している。このアプローチは、その不連続な切り替えのせいで、本質的に、高解像度を達成する能力に限界がある。一方、エレクトレット−調整可能なMEMSを基礎とするコンデンサ1000は連続的に可変であり、達成された電気容量値では従来のデジタルアプローチより高い解像度を提供し、解像度の限界は、1個の電子が浮遊電極1004に加えられるときに生じる電気容量での変化である。エレクトレット−調整可能なMEMSを基礎とするコンデンサ1000は、例えばプログラム可能動作増幅器利得段あるいは他の容量調整された回路を調整する際に使用されることができる。
本発明の範囲内で、コンデンサ1000は様々な変更をすることができる。例えば、電極1010aと1010bは単一の接地された電極と置換されてもよい。コンデンサ1000の電気容量はそのような場合接地された電極とコンデンサ電極1012との間の電気的相互作用により生ずる。他の変形も可能である。例えば、浮遊電極は撓み部材1006上に位置してもよく、接地された電極はベース部1002上に配置されてもよい。
エレクトレットを基礎とするアクチュエータを使用する他のMEMSを基礎とする電気デバイスは、プログラム可能な抵抗器1100であり、図11を参照して説明される。この特定の実施形態では、抵抗器1100はベース部1102上に浮遊電極1104で形成される。対向する浮遊電極1104は、接地されてもよい電極1108を持つ撓み部材1106である。浮遊電極1104上に電荷1110を配置すると、電極1108上にミラー電荷を誘起し、その結果、浮遊電極1104と電極1108間に引力が生じる。その結果、撓み部材1106は浮遊電極1104の方へたわむ。
ひずみに敏感な抵抗器1112は撓み部材1106上に配置される。ひずみに敏感な抵抗器1112に印加されるひずみ量は、撓み部材1106がたわむ量に依存しており、浮遊電極1106上の電荷1110の量はひずみに敏感な抵抗器1112の抵抗を制御する。従って、調整可能な抵抗器1100の抵抗は制御されることができ、所望のレベルに設定されることができる。浮遊電極の長期間の低漏洩特徴により、抵抗値は長期間安定に保たれる。
所望の抵抗値を得るために、複数の抵抗器を直列と並列で切り替える場合、調整可能な抵抗器1100は、調整可能抵抗を与える従来の「デジタル」の方法に代えて使用されることができる。MEMSを基礎とする調整可能な抵抗器1100は、調整された抵抗値で高解像度を与える。理由は解像度は連続的に可変であり、その解像度は、浮遊電極1104に1個の電子を付加することによる抵抗の変化になる。
また、エレクトレットが撓み機構を形成しない場合、エレクトレットはMEMSを基礎とするセンサー中のアクチュエータに使用されてもよいが、デバイスの別の部分に対するデバイスの部分を位置づけるのに使用される。そのようなデバイスの一例を図12に概略的に図示する。図12は、例えば、走査型トンネル効果電子顕微鏡に使用される電子トンネル効果検知デバイス1200を示す。デバイス1200は浮遊電極1204を有する撓みアーム1202を含む。第2電極1206は基板1208上に配置される。第2電極1206は接地されてもよく、その結果、電荷を浮遊電極1204上に置いた場合、仮想的電荷が第2電極1206に誘起され、その結果、撓みアーム1202と基板1208間に引力が生じる。また、トンネルチップ1210は、サンプルからのトンネル電流を検知するために、撓みアーム1202上に配置される。従って、トンネルチップ1210の基板1208に対する位置は、浮遊電極1204上の電荷量により制御される。
エレクトレットは接地された電極と連結して浮遊電極を使用する必要があるだけでなく、他の組み合わせも使用されることができる。例えば、2つの浮遊電極が使用され、引力よりむしろ反発力を生ずるために、2つの浮遊電極に同じタイプの電荷キャリヤが印加される。この一例を図13に概略的に図示する。図13では撓み部材1302が第1浮遊電極1304を含み、基板1306は第2浮遊電極1308を含む。2つの浮遊電極1304、1308上に同じ極性の電荷が置かれると、反発力が生じ、そのために撓み部材1302は基板1306から離れるようにたわむ。もちろん、反対の電荷を対向するエレクトレット上に置いて引力を生じさせてもよい。
印加電力が無い既知の状態にそれらデバイスを置くために、エレクトレットは、他の様々なタイプのMEMSデバイスに予めバイアスをかけて使用されることができる。例えば、上記のVOAを電力が供給されてない状態で大きいオフセット値を持つようにしてもよい。また、光スイッチを通常OFF又はONの状態のどちらかにしておいてもよく、所望の状態は組み立て時に異なる機械構成を必要とすることなくプログラム制御された状態にすることができる。実際、静電変位の形状を有するMEMSデバイスにエレクトレットを使用して、長期間安定である電力が供給されてないバイアス状態を生み出してもよい。
本発明は、上記の特定の例に限定されると考えるべきではなく、本発明の特徴は、添付の請求項に記載されていると理解するべきである。本発明が適用可能である様々な変形、等価なプロセス、数多くの構造が本発明に含まれることは、本発明が対象とする技術分野の人々にとって自明である。請求項はそのような変形と装置を包含するものである。
100…MENSデバイス,102…ベース,104…絶縁層,106…浮遊電極,108…可動部材,110…電極,111…電荷,112…電荷,114…引力,200…VOA,202…ファイバ,204…ファイバ,206…マウント,208…指示用溝部,210…開領域,212…操舵電極,402…浮遊電極,404…電荷,406…ファイバ,408…ダイオード,410…導電性第2電極