発明の属する分野
米国女性に関して、乳癌は最も頻繁に診断される癌であり、癌による死亡の第2の主要原因である。40〜55歳の女性では、乳癌は第1の死因である(Greenlee et al., 2000)。2002年、米国では204,000件の乳癌の新規患者が認められ(American Society of Clinical Oncologyのデータ)、欧州でも同等数の患者が認められた。
乳癌とは、乳房組織内の細胞の無制御な増殖であると定義される。乳房は、導管(乳管)によってともに結び付けられている15〜20個の葉から構成される。癌は通常この管で発生するが、炎症性乳癌と称される最もまれな種類の癌では、葉にも癌が認められる。当業者は、乳癌の早期検出、分類および処置方法を改善する継続的必要性が存在することを認識する。いくつかの他の一般的な癌、例えば子宮頸癌および皮膚癌の検出とは対照的に、乳癌の分類および検出には特有の難しさがある。
現行のスクリーニングプログラムおよびこの癌が自己検査しやすいことから、乳癌は比較的早期に診断される:全新規診断症例の約93%では、癌はまだ転移しておらず、65%の症例では、まだリンパ節さえ無影響である。
すべての処置の第一段階は、本疾患の確定分類と比較して患者の症状を評価することである。しかし、前記方式の価値は本質的に分類の質に依存する。乳癌は、その大きさ、位置および転移の有無に応じて病期が決定される。処置方法には、外科手術、放射線療法、化学療法および内分泌療法の使用が含まれ、これらは、外科手術の補助療法としても使用される。
圧倒的多数の早期癌は手術可能であり、すなわち外科手術によって腫瘍を完全に除去することができるが、リンパ節陰性疾患を有する患者の約3分の1およびリンパ節陽性疾患を有する患者の約50〜60%は継続管理中に転移を発症する。
この観察に基づいて、リンパ節陽性およびリンパ節陰性乳癌の両者に関して全身性補助処置が導入されている。全身性補助療法は腫瘍の外科的除去後に施され、この療法によって再発の危険性が有意に減少することが示されている(Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group, 1998)。数種類の補助処置が利用可能である:内分泌治療(ホルモン受容体陽性腫瘍用)、種々の化学療法方式、およびハーセプチンのような新規物質。
大多数の乳癌(約70〜80%)の成長はエストロゲンの存在に依存する。したがって、補助療法の重要な標的の1つはエストロゲンの除去(例えば卵巣切除による)または腫瘍細胞に対するその作用のブロック(例えばタモキシフェン)である。内分泌治療は、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、ER、および/またはプロゲステロン受容体、PR)を発現する腫瘍でのみ有効であると考えられる。現在、ホルモン受容体陽性乳癌を有する圧倒的多数の女性はそのリンパ節の状態とは無関係に何らかの形式の内分泌治療を受けている。最もよく使用される薬物はタモキシフェンである。しかし、ホルモン受容体陽性患者でさえ、すべての患者が内分泌治療の恩恵を受けるわけではない。補助内分泌療法は死亡率を22%減少させるが、進行型設定での内分泌治療に対する有効率は50〜60%である(Jordan et al., 2002, Jordan et al., 1999, Osborne et al., 1998, European Breast Cancer Cooperative Group, 1998)。
タモキシフェンは比較的副作用が少ないため、恩恵の見込みが低い患者に関しても処置は妥当であろう。しかしこれらの患者は、追加の、より攻撃的な補助処置を必要とするであろう。この点は、最も早期の最も攻撃性の低い腫瘍、例えばリンパ節陰性、ホルモン受容体陽性腫瘍の場合でさえ、補助処置としてタモキシフェン単独療法を受けた患者の約21%が、初期診断後10年以内に再発する事実によって支持される(Early Breast Cancer Trialists Collaborative Group. Lancet, 1998)。
いくつかの細胞障害性療法は、乳癌の再発の危険性を減少させるのに有効であることが示されている(Mansour et al., 1998)。現行の処置ガイドラインにしたがって、米国および欧州の両方でほとんどのリンパ節陽性患者は補助化学療法を受けている。その理由は再発の危険性が高いからである。しかし、すべての患者が実際に再発するわけではなく、化学療法を行わなくても決して再発しなかった一定の割合の患者が存在するが、それにもかかわらず現在使用される基準のせいで彼らは化学療法を受ける。ホルモン受容体陽性患者では、通常、化学療法が施された後に内分泌治療が施されるが、ホルモン受容体陰性患者は化学療法のみを受ける。
リンパ節陰性患者に関する状況は特に複雑である。米国では、腫瘍が1cmより大きい場合、リンパ節陰性患者に関して細胞障害性化学療法が推奨される。欧州では、2cmを超える腫瘍サイズ、ホルモン受容体陰性状態、または腫瘍の悪性度分類(grading)IIIまたは年齢<35のような1つまたはそれ以上の危険因子が存在する場合に、リンパ節陰性の症例に関して化学療法が検討される。一般に、追加の化学療法に関して閉経前女性を選択する傾向があり、閉経後女性では、化学療法を除外することが多い。内分泌治療、特にタモキシフェンと比べて、化学療法は非常に有毒であり、短期副作用、例えば吐き気、嘔吐、骨髄抑制、および長期作用、例えば心臓毒性および二次発癌の高い危険性を伴う。
臨床家は一部の患者に関して必要性が存在することを認めるが、どの乳癌患者をさらに攻撃的な治療に関して選択すべきかは現在不明である。化学療法に関して正しい患者を選択する難しさ、および適切な基準の欠如は、最近の研究にも反映されている。この研究では、New Mexico Tumor registryのデータに基づいて、化学療法の使用頻度が、推奨されるよりもずっと低いことを示したものである(Du et al., 2003)。この研究は、化学療法または他のさらに攻撃的な形式の乳癌治療に関して、首尾良く患者を選択する必要性が存在することの実質的な証拠を提供する。
分子生物学分野での近年の方法論的開発によって研究されている観察レベルは、遺伝子そのもの、これらの遺伝子のRNAへの翻訳、および結果として生じるタンパク質である。個体発生の経過中のどの時点でどの遺伝子のスイッチがオンになるか、および特定細胞および組織中の特定遺伝子の活性化および阻害がどのように制御されるかについての論点は、遺伝子またはゲノムのメチル化の程度および性質に関連付けることができる。この点に関して、ゲノム又は個別遺伝子についてのメチル化パターンの変化に病原性症状が現れるであろう。
DNAメチル化は、例えば転写調節、遺伝子刷り込み、および腫瘍形成において役割を担う。したがって、遺伝情報の一要素としての5−メチルシトシンの同定は非常に興味深い。しかし、5−メチルシトシンの位置はシークエンシングでは同定できない。その理由は、5−メチルシトシンがシトシンと同一の塩基対合挙動を有するからである。さらに、5−メチルシトシンが保持する後成的情報はPCR増幅時に完全に失われる。
現在最もよく使用される5−メチルシトシンに関するDNA解析法は、ビサルファイト(bisulphite(亜硫酸水素塩))とシトシンの特異的反応に基づく方法である。このシトシンは、その後のアルカリ加水分解時にウラシルに変換され、ウラシルはその塩基対合挙動に関してチミンに対応する。しかし、5−メチルシトシンは前記条件下で未修飾のままである。その結果、元のDNAが変換されて、本来ハイブリダイゼーション挙動によってシトシンと区別できなかったメチルシトシンが、「通常の」分子生物学的技術の使用、例えば増幅およびハイブリダイゼーションまたはシークエンシングによって、唯一残存するシトシンとして検出できるようになる。前記すべての技術は塩基対合に基づき、今や、この性質は完全に利用可能である。感度に関して、先行技術は、分析対象のDNAをアガロースマトリックス中に封入してDNAの拡散および再生を防止する(ビサルファイトは一本鎖DNAとしか反応しない)方法であって、すべての沈降および精製工程を高速透析で代用する方法(Olek A, Oswald J, Walter J.「ビサルファイトベースのシトシンメチル化解析の修飾改良された方法(A modified and improved method for bisulphite based cytosine methylation analysis.)」Nucleic Acids Res. 1996 Dec 15; 24(24): 5064-6)によって限定される。この方法を使用すると、個別の細胞を分析することが可能であり、これは該方法の潜在能力を示している。しかし、現在、約3000塩基対までの長さの個別領域しか分析されておらず、予想される数千のメチル化イベントに関して細胞を総合的に分析することは不可能である。さらに前記方法では、少量のサンプル由来の非常に小さい断片を確実に分析することができない。拡散が防止されているにもかかわらず、前記断片はマトリックスから失われる。
別の既知の5−メチルシトシン検出法の概要については下記総論から情報が得られるであろう:Rein, T., DePamphilis, M. L., Zorbas, H., Nucleic Acids Res. 1998, 26, 2255。
現在に至るまで、少数の例外(例えばZeschnigk M, Lich C, Buiting K, Doerfler W, and Horsthemke B.「SNRPN座での対立遺伝子のメチル化の差異に基づくアンジェルマンおよびプラダー・ウィリ症候群診断用の単一試験管PCR検査(A single-tube PCR test for the diagnosis of Angelman and Prader-Willi syndrome based on allelic methylation differences at the SNRPN locus.)」Eur J Hum Genet. 1997 Mar-Apr;5(2):94-8)を除いて、ビサルファイト技術は研究でしか使用されていない。しかしいずれの場合も、既知遺伝子の短い特定断片をビサルファイト(bisulfite)処理後に増幅し、完全にシークエンシングする(Olek A, Walter J.「H19メチル化刷り込みの着床前個体発生(The pre-implantation ontogeny of the H19 methylation imprint.)」Nat Genet. 1997 Nov;17(3):275-6)か、あるいは個別のシトシン位置をプライマー伸長反応(Gonzalgo ML, Jones PA.「メチル化感受性1ヌクレオチドプライマー伸長(Ms−SNuPE)を使用する指定部位でのメチル化差異の高速定量(Rapid quantitation of methylation differences at specific sites using methylation-sensitive single nucleotide primer extension (Ms-SNuPE).)」Nucleic Acids Res. 1997 Jun 15;25(12):2529-31, WO 95/00669)または酵素消化(Xiong Z, Laird PW.「COBRA:高感度定量的DNAメチル化アッセイ(COBRA: a sensitive and quantitative DNA methylation assay.)」Nucleic Acids Res. 1997 Jun 15;25(12):2532-4)によって検出する。さらに、ハイブリダイゼーションによる検出も報告されている(Olek et al., WO 99/28498)。
個別遺伝子中のメチル化検出に関するビサルファイト技術の使用を取り扱う別の刊行物は下記のものである:Grigg G, Clark S.「ゲノムDNA中の5−メチルシトシン残基のシークエンシング(Sequencing 5-methylcytosine residues in genomic DNA.)」Bioessays. 1994 Jun;16(6):431-6, 431; Zeschnigk M, Schmitz B, Dittrich B, Buiting K, Horsthemke B, Doerfler W.「ヒトゲノム中の刷り込みセグメント:ゲノムシークエンシング法によって測定されたプラダー・ウィリ/アンジェルマン症候群領域中の種々のDNAメチル化パターン(Imprinted segments in the human genome: different DNA methylation patterns in the Prader-Willi/Angelman syndrome region as determined by the genomic sequencing method.)」Hum Mol Genet. 1997 Mar;6(3):387-95; Feil R, Charlton J, Bird AP, Walter J, Reik W.「個別染色体に関するメチル化解析:ビサルファイトゲノムシークエンシングの改良型プロトコル(Methylation analysis on individual chromosomes: improved protocol for bisulphite genomic sequencing.)」Nucleic Acids Res. 1994 Feb 25;22(4):695-6; Martin V, Ribieras S, Song-Wang X, Rio MC, Dante R.「ゲノムシークエンシングによって、ヒト乳癌セルラインにおけるpS2遺伝子の5'領域のDNA低メチル化とその発現の相関が示される(Genomic sequencing indicates a correlation between DNA hypomethylation in the 5' region of the pS2 gene and its expression in human breast cancer cell lines.)」Gene. 1995 May 19;157(1-2):261-4; WO 97/46705, WO 95/15373, およびWO 97/45560。
オリゴマーアレイの製造に関する先行技術の概要については、1999年1月発行のNature Genetics特集号(Nature Genetics Supplement, Volume 21, January 1999)およびその引用文献から情報を得ることができる。
固定DNAアレイのスキャニングには、蛍光標識プローブが使用されることが多い。蛍光ラベルに特に適しているのは、特定プローブの5'−OHにCy3およびCy5色素を単に結合させたものである。ハイブリダイズ済みプローブの蛍光の検出は、例えば共焦点顕微鏡によって実行してよい。Cy3およびCy5色素は多数の別の色素とともに市販されている。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF)は、生体分子の分析に非常に有効な開発技術である(Karas M, Hillenkamp F.「10,000ダルトンを超える分子量を有するタンパク質のレーザー脱離イオン化(Laser desorption ionisation of proteins with molecular masses exceeding 10,000 Daltons.)」Anal Chem. 1988 Oct 15;60(20):2299-301)。検体を光吸収マトリックスに包埋する。このマトリックスを短いレーザーパルスによって蒸発させると、検体分子は切断されない状態で蒸気相内に運ばれる。検体はマトリックス分子との衝突によってイオン化される。電圧を加えてイオンを加速させ、無電界飛行管内へ送る。質量に差があるため、イオンは種々の速度で加速される。小さいイオンほど、大きいイオンよりも早く検出器に到達する。
MALDI−TOFスペクトロメトリーは、ペプチドおよびタンパクの分析に極めて適している。核酸の分析の方が若干困難である(Gut I G, Beck S.「DNAとマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(DNA and Matrix Assisted Laser Desorption Ionization Mass Spectrometry.)」Current Innovations and Future Trends. 1995, 1; 147-57)。核酸に対する感度は、ペプチドに対する感度の約1/100であり、断片サイズの増加に反比例して減少する。主鎖が多数の負電荷を伴う核酸の場合、マトリックスを経由するイオン化プロセスはかなり効率が低い。MALDI−TOFスペクトロメトリーでは、マトリックスの選択が極めて重要な役割を果たす。ペプチドの脱離の場合、非常に微細な結晶化を生じさせる非常に効果的なマトリックスがいくつか確認されている。現在、DNA応答マトリックスはいくつかあるが、感度差は減少していない。この感度差は、よりペプチドに類似するようになる様式でDNAを化学修飾することによって減少させることができる。主鎖の通常のリン酸基がチオリン酸基で置換されているホスホロチオアート核酸は、単純なアルキル化化学を使用して無電荷DNAに変換できる(Gut IG, Beck S.「選択的DNAアルキル化および質量分析による検出の手順(A procedure for selective DNA alkylation and detection by mass spectrometry.)」Nucleic Acids Res. 1995 Apr 25; 23(8): 1367-73)。この修飾型DNAに荷電タグをカップリングすると、ペプチドに関して認められる感度と同一レベルまで感度が向上する。不純物は未修飾基質の検出をより一層困難にする。荷電タグ付加の別の利点は、不純物に対する分析の安定性が向上することである。
ゲノムDNAは、標準的方法を使用して、細胞、組織または他の試験サンプルのDNAから取得される。前記標準的方法論は参考文献、例えばSambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, 2nd edition, 1989:「哺乳類細胞からのゲノムDNAの単離(Isolation of genomic DNA from mammalian cells)」, Protocol I, p. 9.16 - 9.19中に見出せる。また、いくつかのDNA抽出キット、例えばQIAamp DNA mini kitのマニュアルは、ゲノムDNA単離の手引きに関する良好なガイダンスを提供する。
現在、複数の予測マーカーが評価段階である。現在までにほとんどの患者が内分泌治療としてタモキシフェンを服用してきたので、ほとんどのマーカーはタモキシフェンに対する応答または耐性に関連していることが示されている。しかし、1種またはその他の内分泌治療に対する応答者間には大きな重複が存在することが一般に想定される。実際、いずれの内分泌治療に関しても、ERおよびPR発現を使用して患者が選択される。TAM応答に関連付けられているマーカーにはbcl−2がある。高いbcl−2レベルは、転移性疾患を有する患者のTAM治療応答および生存延長に有望な相関を示し、ER陰性患者亜群に有益な情報が追加された(J Clin Oncology, 1997, 15 5: 1916-1922; Endocrine, 2000, 13(1):1-10)。進行型乳癌患者でのc−erbB2(Her2/neu)過剰発現の独立予測値に関して対立する証拠が存在し、これについてはさらに評価および検証を必要とする(British J of Cancer, 1999, 79 (7/8):1220-1226; J Natl Cancer Inst, 1998, 90 (21): 1601-1608)。
他の予測マーカーには、SRC−1(ステロイド受容体活性化補助因子−1)、CGA遺伝子過剰発現、細胞動態およびS期フラクションアッセイ(Breast Cancer Res and Treat, 1998, 48:87-92; Oncogene, 2001, 20:6955-6959)が含まれる。最近、uPA(ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子)およびPAI−1(1型プラスミノーゲンアクチベータインヒビター)はともに、補助全身療法の恩恵を受けるであろう不良な予後を有する亜群の患者を規定するのに有用であることが示された(J Clinical Oncology, 2002, 20 n°4)。しかし、すべての前記マーカーは将来の試行でさらに評価する必要がある。いずれも応答が未確証のマーカーであるからである。
いくつかの癌関連遺伝子は乳房腫瘍形成時のCpG島の高メチル化によって不活性化されることが示されている。カルシウム結合タンパク質S100A2(アクセッション番号NM_005978)の発現低下は乳癌の発症に関連付けられている。新生物細胞でこの遺伝子のプロモーター領域の高メチル化が観察されており、腫瘍細胞でのS100A2抑制が部位特異的メチル化によって媒介される証拠を提供する。
遺伝子SYK(アクセッション番号NM_003177)はタンパク質チロシンキナーゼSyk(脾臓チロシンキナーゼ)をエンコードする。このキナーゼは造血細胞で高度に発現される。Sykは正常な乳房の乳管上皮細胞において発現されるが、一部の浸潤性乳癌では発現されない。また、Syk発現の喪失は悪性表現型、例えば運動性の増加および浸潤に関連すると考えられる。発現の喪失はDNA高メチル化に起因して転写レベルで生じる。これはYuan Y, Mendez R, Sahin A and Dai JL(「ヒト乳癌において高メチル化はSYK遺伝子のサイレンシングをもたらす(Hypermethylation leads to silencing of the SYK gene in human breast cancer.)」Cancer Res. 2001 Jul 15;61(14):5558-61.)によって指摘される通りである。
TGF−β2型受容体(TGFBR2遺伝子(NM_003242)によってエンコードされる)は、セリン/スレオニンキナーゼ複合体が媒介するトランスメンブレンシグナル伝達経路において役割を担う。乳房を含む一部の原発性腫瘍および数種類の腫瘍派生セルラインにおいて、この遺伝子中の変異が検出されている(Lucke CD, Philpott A, Metcalfe JC, Thompson AM, Hughes-Davies L, Kemp PR, Hesketh R.「再発型ヒト乳癌におけるトランスフォーミング成長因子ベータ2型受容体の変異の阻害(Inhibiting mutations in the transforming growth factor beta type 2 receptor in recurrent human breast cancer.)」Cancer Res. 2001 Jan 15;61(2):482-5.)。
遺伝子COX7A2LおよびGRIN2Dはともに新規エストロゲン応答エレメントとして同定された。この同定は、Watanabe et. al.(「CpG島ライブラリーを用いるエストロゲン応答遺伝子の単離(Isolation of estrogen-responsive genes with a CpG island library.)」Molec. Cell. Biol. 18: 442-449, 1998.)によって、CpG−GBS(ゲノム結合部位)法を使用して行われた。遺伝子COX7A2L(アクセッション番号NM_004718)はポリペプチド2様シトクロムCオキシダーゼサブユニットVIIAをエンコードする。ノーザンブロット分析では、乳癌セルラインのエストロゲン処置後にCOX7A2Lの上方制御が検出された。遺伝子GRIN2D(アクセッション番号NM_000836)はN−メチル−D−アスパラギン酸、イオンチャネル型、サブユニット2Dグルタミン酸受容体をエンコードし、これはニューロンのシグナル伝達に関連するNMDA受容体チャネルのサブユニットである。さらにまた、骨肉腫セルラインでcDNAの発現が観察されている。遺伝子VTN(ビトロネクチンとしても知られる(アクセッション番号NM_000638))は75−kD糖タンパク質(血清拡散因子または補体S−タンパク質とも称される)をエンコードし、このタンパク質はインビトロでの動物細胞の付着および拡散を促進し、補体C5b−9複合体によって細胞溶解を阻害し、血液凝固における抗トロンビンIII−トロンビン作用を調節する。さらにまた、この遺伝子の発現は癌細胞の進行および浸潤度と関連付けられている。
遺伝子SFN(Stratifinとしても知られる)は14−3−3ファミリーのポリペプチド、14−3−3シグマをエンコードする。14−3−3ファミリーのタンパク質はホスホセリン含有タンパク質に結合することによってシグナル伝達を媒介する。乳癌ではSFN遺伝子の発現が失われ、これは新生物性形質転換の初期における高メチル化に起因する可能性が高い(Umbricht CB, Evron E, Gabrielson E, Ferguson A, Marks J, Sukumar S.「14−3−3シグマ(stratifin)の高メチル化は乳癌の初期イベントである(Hypermethylation of 14-3-3 sigma (stratifin) is an early event in breast cancer.)」Oncogene. 2001 Jun 7; 20(26):3348-53を参照のこと)。
遺伝子PSAT1(アクセッション番号NM_021154)は、一般にPxySAと称される遺伝子(アクセッション番号NM_001648)と混同されるべきでなく、これは前立腺特異的抗原をエンコードし、その正確な技術的名称はカリクレイン3である。遺伝子PSAT1はタンパク質ホスホセリンアミノトランスフェラーゼをエンコードする。この酵素はセリン生合成経路の第二段階を触媒する酵素である。遺伝子発現レベルの変化はmRNA発現解析によってモニターされ、該遺伝子の上方制御は6サンプルの研究において結腸癌で同定されている(Electrophoresis 2002 Jun;23(11):1667-76「結腸癌における遺伝子発現のmRNAディファレンシャルディスプレイ(mRNA differential display of gene expression in colonic carcinoma.)」Ojala P, Sundstrom J, Gronroos JM, Virtanen E, Talvinen K, Nevalainen TJ)。
遺伝子スタスミン(NM_005563)は腫瘍性タンパク質18をコードする。このタンパク質はスタスミンとしても知られ、微小管動態を調節するサイトゾルの保存型リンタンパク質である。このタンパク質は種々のヒト悪性腫瘍で高度に発現される。ヒト乳癌では、一部の腫瘍でスタスミン遺伝子が上方制御されることが示されている。
遺伝子PRKCDはプロテインキナーゼC酵素ファミリーのメンバーをエンコードし、B細胞シグナル伝達および種々の細胞型の成長、アポトーシス、および分化の調節に関与する。
前記分子のいくつかはカスケード様の様式で相互作用する。STMN1を標的にするPRKCD活性はSFN結合およびSYKリン酸化によって調節される。総合して、これは細胞分裂に必要とされるチューブリン重合に影響する。
遺伝子MSMB(アクセッション番号NM_002443)は10q11.2に配置されている。この遺伝子はベータ−ミクロセミノプロテイン(microseminoprotein)(MSP)をエンコードする。このタンパク質は前立腺によって分泌される主要タンパク質の1つである。さらにまた、この遺伝子は前立腺癌の診断マーカーとして有用であろう。mRNA分析を使用して、低レベルのベータ−MSP mRNA発現およびタンパク質は内分泌療法中の進行に関連付けられており、また潜在的な攻撃的前立腺癌の徴候であろうとみなされている(Sakai H, Tsurusaki T, Kanda S, Koji T, Xuan JW, Saito Y「前立腺癌におけるベータ−ミクロセミノプロテインmRNA発現の予後的意義(Prognostic significance of beta-microseminoprotein mRNA expression in prostate cancer.)」Prostate. 1999 Mar 1;38(4):278-84.を参照のこと)。
遺伝子TP53(アクセッション番号NM_000546)はタンパク質p53をエンコードする。このタンパク質は最もよく特徴付けされている腫瘍抑制タンパク質の1つである。p53タンパク質は転写因子として作用し、細胞周期の重要な調節因子として働く。この遺伝子が変異によって不活性化されると、細胞周期が乱れ、そして腫瘍形成が支援される。この遺伝子に関連するメチル化の変化は乳癌で顕著であることが報告されている。Saraswati et. al. (Nature 405, 974 - 978 (22 Jun 2000)「HOXA5の機能低下はヒト乳房腫瘍のp53発現を制限する可能性がある(Compromised HOXA5 function can limit p53 expression in human breast tumours)」では、乳房腫瘍中の低レベルのp53 mRNAがHOXA5遺伝子のメチル化と相関していることが報告された。HOX5A遺伝子の産物はp53のプロモーター領域に結合し、該遺伝子の発現を仲介する。p53遺伝子そのもののプロモーター領域のメチル化も報告されている(Kang JH, Kim SJ, Noh DY, Park IA, Choe KJ, Yoo OJ, Kang HS.「p53プロモーターのメチル化は乳癌発生への補助的な経路である:非浸潤性乳管癌から浸潤性乳管癌への進行におけるp53プロモーターのCpGメチル化とp53遺伝子の変異の相関(Methylation in the p53 promoter is a supplementary route to breast carcinogenesis: correlation between CpG methylation in the p53 promoter and the mutation of the p53 gene in the progression from ductal carcinoma in situ to invasive ductal carcinoma.)」Lab Invest. 2001 Apr;81(4):573-9.)。前記報告では、p53プロモーター領域のCpGメチル化が乳癌において認められることが実証され、p53プロモーター領域のメチル化が乳房腫瘍における新生物の進行への副経路であるかもしれないことが仮定された。タモキシフェンでの処置によってp53遺伝子の発現レベルが減少することが観察されている(Farczadi E, Kaszas I, Baki M, Szende B.「短期タモキシフェン処置後の乳癌におけるアポトーシス、有糸分裂、Her−2、p53およびBcl2発現の変化(Changes in apoptosis, mitosis, Her-2, p53 and Bcl2 expression in breast carcinomas after short-term tamoxifen treatment.)」Neoplasma. 2002;49(2):101-3.)。
遺伝子CYP2D6(アクセッション番号:NM_000106)はヒトシトクロムP450(CYP)スーパーファミリーのメンバーである。このファミリーの多数のメンバーは薬物代謝に関与し(例えばCurr Drug Metab. 2002 Jun;3(3):289-309. Rodrigues AD, Rushmore TH.を参照のこと)、これらのシトクロムP450のうちCYP2D6は最もよく特徴付けされている1つである。この遺伝子は非常に多型性であり(70を超える遺伝子の変種が報告されている)、対立遺伝子の変異によって酵素活性が向上することも低下することもあり得る。CYP2D6酵素は、多数の臨床的に重要な薬物、例えば抗うつ薬、神経遮断薬、いくつかの抗不整脈薬の代謝を触媒する(Nature 1990 Oct 25;347(6295):773-6「シトクロムP450CYP2D座での主要遺伝子欠損の同定(Identification of the primary gene defect at the cytochrome P450 CYP2D locus.)」Gough AC, Miles JS, Spurr NK, Moss JE, Gaedigk A, Eichelbaum M, Wolf CR.)。
遺伝子PTGS2(アクセッション番号NM_000963)はプロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼの誘導性アイソザイム(プロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼ2)をエンコードする。この酵素はCOX2(シクロオキシゲナーゼ2)としても知られる。この遺伝子の異常メチル化が肺癌で同定されている(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2002 Mar;11(3):291-7「DNAメチル化マーカーを使用する肺癌セルラインの階層的クラスター分析(Hierarchical clustering of lung cancer cell lines using DNA methylation markers.)」Virmani AK, Tsou JA, Siegmund KD, Shen LY, Long TI, Laird PW, Gazdar AF, Laird-Offringa IA.)。
遺伝子CGA(アクセッション番号NM_000735)は糖タンパク質ホルモンのアルファポリペプチドをエンコードする。さらに、この遺伝子はエストロゲン受容体アルファ(ERアルファ)応答遺伝子として同定されていて、該遺伝子の過剰発現は乳房腫瘍のER陽性に関連付けられている。Biecheらは、初期外科手術、その後の補助タモキシフェン療法で処置された125ERアルファ陽性閉経後乳癌患者における該遺伝子のmRNAレベルを調査した。初期結果では、CGA遺伝子の過剰発現およびScarff-Bloom-Richardson組織病理学的グレードI+IIおよびプロゲステロンおよびエストロゲン受容体陽性の有意な相関が示された。したがってCGAが低い腫瘍攻撃性のマーカーであることが示唆された(「乳癌における新規エストロゲン受容体応答遺伝子としてのCGAの同定:内分泌療法に対する応答を予測するための優れたマーカー候補(Identification of CGA as a Novel Estrogen Receptor-responsive Gene in Breast Cancer: An Outstanding Candidate Marker to predict the Response to Endocrine Therapy)」Cancer Research' 61, 1652-1658, February 15, 2001. Ivan Bieche, Beatrice Parfait, Vivianne Le Doussal, Martine Olivi, Marie-Christine Rio, Rosette Lidereau and Michel Vidaud)。さらに、CGA発現レベルをタモキシフェン応答に関連付けるmRNA発現解析では、マーカーERBB2(応答不良マーカー)の分析と組み合わせた場合に、該遺伝子が乳癌におけるタモキシフェン応答性の予測マーカーとして有用であろうと推論された(Oncogene 2001 Oct 18;20(47):6955-9「ERアルファ陽性閉経後乳癌患者の内分泌療法に対する応答の新規予測因子としてのCGA遺伝子(The CGA gene as new predictor of the response to endocrine therapy in ER alpha-positive postmenopausal breast cancer patients.)」Bieche I, Parfait B, Nogues C, Andrieu C, Vidaud D, Spyratos F, Lidereau R, Vidaud M.)。著者は、遺伝子CGAの発現をタモキシフェン処置応答と関連付ける有意なデータを提供した。しかし、前記分析はいずれもmRNA発現の相対レベルの分析を重点的に取り扱っている。これは中または高処理量に適した方法論ではなく、臨床アッセイの開発に適した原理ではない。
遺伝子PITX2(NM_000325)はpaired様ホメオドメイン転写因子2をエンコードする。この遺伝子は腹側構造(anterior structures)、例えば眼、歯、および下垂体前葉の発生時に発現されることが知られる。この遺伝子の発現は細胞分化および増殖と関連付けられるが、発癌または内分泌治療への応答性に関する役割は従来認識されていない。Toyotaら(2001. Blood. 97:2823-9.)は大部分の急性骨髄球性白血病においてPITX2遺伝子の高メチル化を見出した。さらにまた、この高メチル化はER遺伝子のメチル化に正の相関を有する。
RASSF1A(Ras結合ドメインファミリー1A)遺伝子は3p21.3位置の腫瘍抑制遺伝子候補である。Ras GTPアーゼは、細胞外シグナルに応答する細胞増殖およびアポトーシスを調節する分子スイッチのスーパーファミリーである。RASSF1Aは腫瘍抑制遺伝子であるとされており、この遺伝子の後成的変化が種々の癌で観察されている。RASSF1Aのメチル化は原発性非小細胞肺癌の不良な予後と関連付けられている(Kim DH, Kim JS, Ji YI, Shim YM, Kim H, Han J, Park J.,「RASSF1Aプロモーターの高メチル化は喫煙を開始した年齢および原発性非小細胞肺癌の不良な予後と関連する(Hypermethylation of RASSF1A promoter is associated with the age at starting smoking and a poor prognosis in primary non-small cell lung cancer.)」Cancer Res. 2003 Jul 1;63(13):3743-6.)。また、膵癌の発生(Kuzmin I, Liu L, Dammann R, Geil L, Stanbridge EJ, Wilczynski SP, Lerman MI, Pfeifer GP.「子宮頸癌におけるRAS結合ドメインファミリー1A遺伝子の不活性化およびヒトパピローマウイルス感染の役割(Inactivation of RAS association domain family 1A gene in cervical carcinomas and the role of human papillomavirus infection.)」Cancer Res. 2003 Apr 15;63(8):1888-93.)、ならびに特に精巣腫瘍および前立腺癌の発生とも関連付けられている。この遺伝子のメチル化を癌の診断マーカーとする適用は米国特許第6,596,488号に報告されているが、患者に関する適切な処置方式の選択に関するその適用は記載されていない。
また3p21内には、ジストログリカン前駆体遺伝子(ジストロフィン関連糖タンパク質1)(NM_ 004393)が位置する。ジストログリカン(DG(DAG1としても知られる))は、2つのサブユニット、すなわちアルファ−DGおよびベータ−DGを含む接着分子である。この分子は細胞外基質と細胞質区画間の重要な相互作用を担い、したがって転移性疾患への進行に寄与するであろうことが想定されている。この遺伝子の発現低下は、結腸、前立腺および乳房腫瘍の高い腫瘍悪性度および進行した病期と関連付けられている。
onecut−2転写因子遺伝子(NM_004852)は18q21.31に位置し、成体および発生中の肝臓遺伝子発現についてのホメオドメイン転写因子調節因子である。
トレフォイルファクター1(TFF1)遺伝子(NM_ 003225)はトレフォイルファミリーのタンパク質のメンバーをエンコードする。この遺伝子はpS2としても知られる。これらの遺伝子は、通常、消化管の粘膜において最高レベルで発現されるが、他の組織、例えば乳房の原発腫瘍で異所発現されることがよくある。培養中のエストロゲン応答性乳癌細胞ではエストロゲンによってTFF1の発現が調節され、その発現はエストロゲン受容体の発現と関連している。したがって、TFF1は腫瘍におけるホルモン応答性についてのマーカーである(Schwartz et al., 1991.「進行型乳癌患者におけるpS2発現とホルモン療法への応答(pS2 expression and response to hormonal therapy in patients with advanced breast cancer.)」Cancer Res. 51:624-8)。TFF1プロモーターのメチル化は非発現性胃癌派生セルラインおよび組織において観察されている。
TMEFF2(NM_016192)は、上皮細胞成長因子(EGF)様モチーフおよび2つのフォリスタチンドメインを含有する膜貫通タンパク質をエンコードする。この遺伝子は前立腺および脳組織において過剰発現されることが示されている。また、この遺伝子は、前立腺癌細胞の抗増殖効果を示すアンドロゲン調節型遺伝子であることが示唆されている。
エストロゲン受容体をエンコードする遺伝子ESR1(NM_000125)のメチル化は、数種類の癌、例えば肺、食道、脳および結腸直腸癌に関連付けられている。エストロゲン受容体(ESR)は、ホルモン結合、DNA結合、および転写活性化に重要な複数ドメインから構成されるリガンド活性化型転写因子である。さらにまた、この受容体は、抗エストロゲン性化合物であるタモキシフェンの直接標的である。エストロゲン受容体を発現する腫瘍(ER+)のみがタモキシフェン処置に応答能を有する。
PCAF(NM_003884)遺伝子はp300/CBP関連因子(PCAF)をエンコードする。CBPおよびp300は、細胞増殖および/または分化に関与する多数の配列特異的因子に結合する大きい核タンパク質である。このp300/CBP関連因子はCBPおよびp300とのインビボ結合活性を示す。このタンパク質はコアヒストンおよびヌクレオソームコア粒子に対するヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する。このことは転写調節において直接的な役割を果たすことを示す。またp300/CBP関連因子はNF−カッパ−B p65と関連する。このタンパク質はp53のC末端部分のLys320のアセチル化によって遺伝子p53の発現を調節することが示されている。
WBP11(NM_016312)遺伝子は、mRNAスプライシング因子および中間径フィラメント含有核周囲ネットワークとともに局在化する核タンパク質をエンコードする。このタンパク質は、核タンパク質Npw38のWWドメインに結合する2つのプロリンリッチ領域を含有し、ゆえにこのタンパク質はNpw38結合タンパク質NpwBPとも称される。
TBC1ドメインファミリー、メンバー3遺伝子(TBC1D3、NM_032258)は本来発癌遺伝子として発見されたものであり、PRC17としても知られる。この遺伝子の産物はGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)触媒性コアモチーフを含有し、Rab5と直接相互作用して、そのGTP加水分解を刺激する。TBC1D3は15%の前立腺癌において増幅され、約半分の転移性前立腺腫瘍において高度に過剰発現される(Pei et al., 2002; Cancer Res. 62:5420-4)。
CDK6遺伝子は、真核細胞の主要な細胞周期遷移を調節するサイクリン依存性プロテインキナーゼをエンコードする。cdk6キナーゼはサイクリンD1、D2、およびD3と関連し、網膜芽細胞腫癌抑制遺伝子の産物であるpRBをリン酸化する能力を有する。cdk6キナーゼの活性化はG1中期(mid-G1)に生じる(Meyerson and Harlow, 1994; Mol Cell Biol. 14:2077-86)。
説明
以下、特定の遺伝子領域を記載するが、この遺伝子領域に関して、現在利用可能な遺伝子命名法はない。各事例では、括弧(parentetheses)内に遺伝子配列の染色体上の位置を示し、表1に記載のその配列によって遺伝子配列をさらに説明する。
本発明は、乳房組織の細胞増殖性障害を有する患者の改良された処置計画のための方法および核酸を提供する。本発明の目的は、患者の処置計画に特に関連する2つのファクターの一方または両方を評価することによって達成できる。第一のファクターは、乳房組織の細胞増殖性障害および/またはその転移の攻撃性(aggresivity)に関する特徴付けであり、第二のファクターは、該障害を有する対象者の無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置を含む治療に対する応答の予測である。該処置には、非限定的に、エストロゲン受容体モジュレーター、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター、アロマターゼ阻害剤、卵巣切除、LHRHアナログおよび、エストロゲン生産に影響する他の中枢作用薬が含まれる。
エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置(副作用が制限されている場合の現在の選択処置)を含む治療方式に対する応答の予測により、本処置に加えてあるいは本処置の代わりに追加処置が必要とされるかどうかを医師が決定することがさらに可能になる。該処置に加えてあるいは該処置の代わりに使用してよい処置には、非限定的に、化学療法、放射線療法、外科手術、生物学的治療、免疫療法、抗体および分子的に標的化された薬物が含まれる。
予測される攻撃性に関して乳癌を特徴付けすることにより、医師は、患者に対して、適切な危険および利点の妥協点を有する治療方式に関してインフォームドディシジョンを行うことが可能になる。攻撃性とは、1種またはそれ以上の、患者の生存または無病生存または無再発生存の低下、腫瘍関連合併症の増加および腫瘍または転移の高速進行を意味するものとする。疾患の攻撃性にしたがって、下記からなる群から適切な処置または処置群を選択してよい:化学療法、放射線療法、外科手術、生物学的治療、免疫療法、抗体処置、分子的に標的化された薬物を使用する処置、エストロゲン受容体モジュレーターでの処置、エストロゲン受容体ダウンレギュレーターでの処置、アロマターゼ阻害剤での処置、卵巣切除、LHRHアナログまたは、エストロゲン生産に影響する他の中枢作用薬を提供する処置。癌が「攻撃的」であると特徴付けされた場合、内分泌を標的にする治療に加えてあるいはその代わりに、非限定的に化学療法のような処置を提供するのが特に好ましい。
本明細書中に記載の方法および核酸を使用して、患者の無病生存および/または処置に対する応答性および/または疾患進行についての統計学的に重要なモデルを開発し、それを利用して、治療方式に含まれるべきであろう適切な処置選択肢の決定に関して患者および臨床家を支援することができる。一側面では、上記方法は、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置を含む治療方式の有用性を評価するために使用されるべきであろう。この有用性は、乳房組織の細胞増殖性障害を患う患者に関する治療としての有用性である。特に本方法のこの側面にしたがって、医師は、該処置に加えてあるいはその代わりにどの処置を使用してよいかを決定することが可能になる。別の側面では、上記方法にしたがって、細胞増殖性障害の攻撃性に関する特徴付けが可能になり、それによって医師は適切な処置を推奨することが可能になる。ゆえに、本発明は、現在の乳房細胞増殖性障害の処置応答予測法に関連する問題を減少させると理解される。
本明細書中に記載の方法および核酸を使用して、乳房組織の細胞増殖性障害に関する処置前または処置中に患者の応答性を評価することができる。その目的は、疾患の進行可能性に関して患者および臨床家に重要な情報を提供することである。したがって、本明細書中で例証する方法および核酸は、患者の生活の質および処置成功の可能性を向上させるのに有益であり得ることが理解されよう。この利点は、該方法および核酸によって、患者および臨床家の両者が患者の処置選択肢をより正確に評価することが可能になることに基づく。
この規定に基づく方法は、すべての乳房細胞増殖性障害患者の改良された処置に使用してよい。該患者は閉経前および閉経後の両患者であり、そのリンパ節またはエストロゲン受容体状態とは無関係である。しかし、該患者はリンパ節陰性およびエストロゲン受容体陽性であることが特に好ましい。
本発明の目的は、EGR4、APC、CDKN2A、CSPG2、ERBB2、STMN1、STK11、CA9、PAX6、SFN、S100A2、TFF1、TGFBR2、TP53、TP73、PLAU、TMEFF2、ESR1、SYK、HSPB1、RASSF1、TES、GRIN2D、PSAT1、CGA、CYP2D6、COX7A2L、ESR2、PLAU、VTN、SULT1A1、PCAF、PRKCD、ONECUT2、BCL6、WBP11、(MX1)MX1、APP、ORC4L、NETO1、TBC1D3、GRB7、CDK6、配列番号47、配列番号48、ABCA8、配列番号50、配列番号51、MARK2、ELK1、Q8WUT3、CGB、BSG、BCKDK、SOX8、DAG1、SEMA4B、およびESR1(エキソン8)(表1を参照のこと)および/またはその調節領域の群から選択される遺伝子の1種または組み合わせについてのメチル化パターンを解析することによって最も好ましく達成できる。
本発明は、EGR4、APC、CDKN2A、CSPG2、ERBB2、STMN1、STK11、CA9、PAX6、SFN、S100A2、TFF1、TGFBR2、TP53、TP73、PLAU、TMEFF2、ESR1、SYK、HSPB1、RASSF1、TES、GRIN2D、PSAT1、CGA、CYP2D6、COX7A2L、ESR2、PLAU、VTN、SULT1A1、PCAF、PRKCD、ONECUT2、BCL6、WBP11、(MX1)MX1、APP、ORC4L、NETO1、TBC1D3、GRB7、CDK6、配列番号47、配列番号48、ABCA8、配列番号50、配列番号51、MARK2、ELK1、Q8WUT3、CGB、BSG、BCKDK、SOX8、DAG1、SEMA4B、およびESR1(エキソン8)の群から選択される遺伝子の1種または組み合わせの核酸を、目的のゲノム配列内のメチル化および非メチル化CpGジヌクレオチドを識別可能な試薬または一連の試薬と接触させることを特徴とする。
本発明は、患者の無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産、または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置を含む治療での処置に対する応答を正確に予測することを可能にすることによって、乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリング方法を利用可能にする。
特に好ましい実施態様では、本発明の方法は、該治療に応答する可能性が高い患者と該治療に応答する可能性が低い患者の識別またはメチル化特性による無病生存期間予測、さらに腫瘍の攻撃性に関する特徴付けを可能にする。
本発明の方法を使用して、乳房組織の多種多様な細胞増殖性障害を分析してよい。この障害には、非限定的に、非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ)、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、面疱癌、炎症性乳癌(inflammatory carcinoma)、粘液癌、スキルス癌、膠様癌、管状癌、髄様癌、化生性癌、および乳頭状癌および非浸潤性乳頭状癌(papillary carcinoma in situ)、未分化または退形成癌および乳房パジェット病が含まれる。
本発明の方法は、2つの処置設定での上述の治療に対する応答の予測に特に適している。一実施態様では、化学療法ではない初期治療、例えば外科手術に続く二次処置として内分泌経路を標的にする処置を受ける患者(以後、補助設定と称される)に本方法を適用する。これは図1に示される通りである。前記処置は、病期1〜3の乳癌を患う患者に処方されることが多い。この実施態様では、患者の無病生存期間を予測し、それにしたがって不良な無病生存期間を有する患者を検出することによって、医師は、内分泌を標的にする治療(群)の代わりにあるいはそれに加えてさらなる処置、特に非限定的に化学療法を患者に推奨することを選択してよい。さらに好ましい実施態様では、初期手段(好ましくは外科手術)による処置、その後の無病期間後に乳癌の再発を患う患者であって、癌の再発の検出に応じて内分泌経路を標的にする処置が処方された患者に該方法を適用する。前記処置は、後期の癌、特に転移が生じている癌を患う患者に処方されることが多い。したがって、この臨床設定は以後「転移設定」とも称されるものとする。この実施態様では、疾患がさらに転移し、あるいは依然として検出可能なレベルを超えている者とは対照的に、応答者は部分的または完全な寛解に入る者、すなわち癌が検出不可能なレベルに退行している対象者である。癌が転移する可能性が高い患者を検出することによって、医師は、内分泌を標的にする治療(群)の代わりにあるいはそれに加えてさらなる処置、特に非限定的に化学療法を患者に推奨することを選択してよい。この方法論は、エストロゲンおよび/またはプロゲステロン受容体状態とは無関係に本方法を任意の対象者に適用してよい点において、最新技術をさらに超える改良を提供する。したがって好ましい実施態様では、対象者はエストロゲンまたはプロゲステロン受容体状態に関する検査を受けている必要がない。
本発明の目的は、遺伝子EGR4、APC、CDKN2A、CSPG2、ERBB2、STMN1、STK11、CA9、PAX6、SFN、S100A2、TFF1、TGFBR2、TP53、TP73、PLAU、TMEFF2、ESR1、SYK、HSPB1、RASSF1、TES、GRIN2D、PSAT1、CGA、CYP2D6、COX7A2L、ESR2、PLAU、VTN、SULT1A1、PCAF、PRKCD、ONECUT2、BCL6、WBP11、(MX1)MX1、APP、ORC4L、NETO1、TBC1D3、GRB7、CDK6、配列番号47、配列番号48、ABCA8、配列番号50、配列番号51、MARK2、ELK1、Q8WUT3、CGB、BSG、BCKDK、SOX8、DAG1、SEMA4B、ESR1(エキソン8)および/またはその調節領域の1種またはそれ以上についてのメチル化パターンを解析することによって達成できる。特に好ましい実施態様では、該遺伝子の配列は配列番号1〜61およびその相補配列を含む。
本発明の目的は、上述の遺伝子群の下記亜群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子のメチル化パターンを解析することによって達成してもよい。一実施態様では、本発明の目的は、無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置に対する応答の可能性の予測である。この目的は、ERBB2、STMN1、TFF1、TMEFF2、ESR1、HSPB1、PITX2、COX7A2L、PLAU、VTN、PCAF、ONECUT2、BCL6、WBP11、TBC1D3、GRB7、CDK6、配列番号47、ABCA8および配列番号51からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子のメチル化パターンを解析することによって達成でき、この場合、該遺伝子の配列が、それぞれ、表1に記載の、配列番号5、6、12、17、18、20、23、28、16、31、33、35、36、37、43、44、46、47、49および51を含むことがさらに好ましい。該遺伝子はPITX2であるのが好ましい。
本発明の目的は、複数の遺伝子のメチル化パターンの解析によって達成されることが好ましい。以後、この複数の遺伝子を遺伝子パネルとも称する。該複数とは2〜4遺伝子の範囲であるのがさらに好ましい。PITX2の一実施態様では、該遺伝子パネル(gne panle)はPITX2、TBC1D3およびCDK6からなる。該遺伝子パネルの遺伝子は、TFF1およびPLAU;TFF1およびPLAUおよびPITX2;PITX2およびTFF1;PITX2およびPLAUからなる群から選択されることが特に好ましい。処置患者における無病生存または転移を予測するためのTFF1およびPITX2の遺伝子パネルがさらに好ましい。
別の実施態様では、本発明の目的は腫瘍の攻撃性に関する特徴付けである。この目的は、APC、CSPG2、ERBB2、STK11、S100A2、TFF1、TGFBR2、TP53、TMEFF2、SYK、HSPB1、RASSF1、PSAT1、CGA、ESR2、ONECUT2、WBP11、CYP2D6、CDK6、ELK1、CGBおよびDAG1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子についてのメチル化パターンの解析によって達成でき、この場合、該遺伝子の配列は、それぞれ、表1に記載の、配列番号2、4、5、7、11、12、13、14、17、19、20、21、25、26、29、35、37、45、46、53、55および59を含むことがさらに好ましい。
好ましい実施態様では、対象者から取得される生体サンプル中の該核酸配列を少なくとも1種の試薬または一連の試薬と接触させることによって該方法を達成し、この場合、該試薬または一連の試薬は、標的核酸内のメチル化および非メチル化CpGジヌクレオチドを識別する。
好ましい実施態様では、本方法は下記段階を含む:好ましくは、該方法は下記段階を含む:第一段階では、分析対象である組織のサンプルを取得する。供給源は、任意の適切な供給源、例えばセルライン、組織学的スライド、パラフィン包埋組織、生体組織検査、パラフィンに包埋された組織、体液、尿、血液およびそのすべての可能な組み合わせであってよい。本方法の特に好ましい実施態様では、該供給源は体液、尿、または血液である。次いでサンプルからDNAを単離する。当業者に標準的な手段、例えば市販のキット、界面活性剤ライセート、超音波処理(sonification)およびガラスビーズを用いるボルテックス処理の使用によって抽出を行ってよい。簡単には、目的のDNAが細胞膜に封入されている場合、酵素的、化学的または機械的手段によって生体サンプルを破壊および溶解しなければならない。次いでDNA溶液からタンパク質および他の混入物を除去してよい。この作業は、例えばプロテイナーゼKを用いる消化によって行う。次いで溶液からゲノムDNAを回収する。この作業は、種々の方法、例えば塩析、有機的抽出または固相支持体へのDNAの結合を用いて実行してよい。方法の選択は、いくつかの要因、例えば時間、費用および必要なDNA量によって影響を受ける。核酸を抽出した後、二本鎖ゲノムDNAを分析に使用する。
本方法の第二段階では、ゲノムDNAサンプルを処理して、5'位置でメチル化されていないシトシン塩基をウラシル、チミン、またはハイブリダイゼーション挙動に関してシトシンと異なる別の塩基に変換する。この作業は、本明細書中で「前処理」として理解される。
上記ゲノムDNAの処理は、好ましくは、ビサルファイト(亜硫酸水素(塩)、ジサルファイト(disulfite))およびその後のアルカリ加水分解を用いて実行し、その結果、非メチル化シトシン核酸塩基がウラシルまたは、塩基対合挙動に関してシトシンと異なる別の塩基に変換される。
本方法の第三段階では、本発明のプライマーオリゴヌクレオチドセットおよび増幅用酵素を使用して、前処理済みDNAの断片を増幅する。1つの同一反応容器中で複数のDNAセグメントの増幅を同時に実行することができる。典型的に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅を実行する。プライマーオリゴヌクレオチドセットには、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドであって、その配列が、それぞれ、配列番号206〜449およびその相補配列の1つまたはそれ以上の塩基配列の少なくとも16塩基対長のセグメントに逆相補的、同一であるか、あるいはストリンジェントまたは高度にストリンジェントな条件下でそのセグメントにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが含まれる。
本方法の代替の実施態様では、配列番号1〜61の1つまたはそれ以上を含む核酸配列内のあらかじめ選択されたCpG位置のメチル化状態を、メチル化特異的プライマーオリゴヌクレオチドの使用によって検出してよい。この技術(MSP)は、Hermanに付与された米国特許第6,265,171号に記載されている。ビサルファイト処理DNAの増幅にメチル化状態特異的プライマーを使用することによって、メチル化核酸と非メチル化核酸の識別が可能になる。MSPプライマーペアは、ビサルファイト処理CpGジヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも1種のプライマーを含有する。したがって、前記プライマーの配列は少なくとも1個のCpGジヌクレオチドを含む。非メチル化DNAに特異的なMSPプライマーはCpG中のC位置の3'位置に「T」を含有する。したがって、好ましくは、前記プライマーの塩基配列は、配列番号206〜449およびその相補配列の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含むことが必要であり、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpGジヌクレオチドを含む。
本方法が、無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置に対する応答の可能性を予測するための方法である場合、前記ヌクレオチド配列(群)は、配列番号70、71、192、193、72、73、194、195、84、85、206、207、94、95、216、217、96、97、218、219、100、101、222、223、106、107、228、229、116、117、238、239、92、93、214、215、122、123、244、245、126、127、248、249、130、131、252、253、132、133、254、255、134、135、256、257、146、147、268、269、148、149、270、271、152、153、274、275、154、155、276、277、158、159、280、281、162、163、284および285の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本方法が、乳房細胞増殖性障害を攻撃性に関して特徴付けするための方法である場合、前記ヌクレオチド配列(群)は、配列番号64、65、186、187、68、69、190、191、70、71、192、193、74、75、196、197、82、83、204、205、84、85、206、207、86、87、208、209、88、89、210、211、94、95、216、217、98、99、220、221、100、101、222、223、102、103、224、225、110、111、232、233、112、113、234、235、118、119、240、241、130、131、252、253、134、135、256、257、150、151、272、273、152、153、274、275、166、167、288、289、170、171、292、293、178、179、300、301、148、149、270、271、150、151、272、273、152、153、274、275、154、155、276、277、156、157、278、279、158、159、280、281、160、161、282、283、162、163、284、285、164、165、286、287、166、167、288、289、168、169、290、291、170、171、292、293、172、173、294、295、174、175、296、297、176、177、298、299、178、179、300、301、180、181、302、303、182、183、304および305の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本方法のさらに好ましい実施態様では、ブロッカーオリゴヌクレオチドの使用を含む。このようなブロッカーオリゴヌクレオチドの使用は、Yu et al., BioTechniques 23:714-720, 1997に報告されている。ブロッキングプローブオリゴヌクレオチドは、PCRプライマーと同時にビサルファイト処理核酸にハイブリダイズさせる。核酸のPCR増幅はブロッキングプローブの5'位置で終結し、ブロッキングプローブに相補的な配列が存在する場所で核酸の増幅が抑制されるようになる。このプローブはメチル化状態特異的様式でビサルファイト処理核酸にハイブリダイズするように設計してよい。例えば、非メチル化核酸集団内のメチル化核酸の検出では、メチル化されていない核酸の増幅を問題の位置で抑制するプロセスは、メチル化核酸の増幅抑制が所望である場合の「CpG」とは対照的に、問題の位置で「CpA」または「TpA」を含むブロッキングプローブを使用することによって実行される。
ブロッカーオリゴヌクレオチドを使用するPCR法では、ポリメラーゼ媒介性増幅の有効な中断のために、ブロッカーオリゴヌクレオチドが該ポリメラーゼによって伸長されないことが必要である。好ましくは、3'−デオキシオリゴヌクレオチド、または「遊離」ヒドロキシル基以外を用いて3'位置で誘導体化されているオリゴヌクレオチドであるブロッカーの使用によって前記必要性を達成する。例えば、3'−O−アセチルオリゴヌクレオチドは好ましいクラスのブロッカー分子の代表例である。
さらに、ブロッカーオリゴヌクレオチドのポリメラーゼ媒介性分解が排除されるべきであろう。好ましくは、このような排除には、5'−3'エキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの使用、または、例えば5'末端にチオアート架橋を有するような修飾型ブロッカーオリゴヌクレオチドの使用が含まれる。このチオアート架橋はブロッカー分子をヌクレアーゼ耐性にする。特定の適用では、ブロッカーの前記5'修飾が必要とされないことがある。例えば、ブロッカー結合部位とプライマー結合部位が重複する場合、それによってプライマーの結合が排除され(例えば過剰のブロッカーを用いて)、ブロッカーオリゴヌクレオチドの分解は実質的に排除される。その理由は、ポリメラーゼがブロッカーに向けて、ならびにブロッカーを通過して(5'−3'方向で)プライマーを伸長しないからである。この伸長は、ハイブリダイズ済みブロッカーオリゴヌクレオチドの分解を通常生じさせるプロセスである。
本発明の目的のために本明細書中で実現される特に好ましいブロッカー/PCRの実施態様では、ブロッキングオリゴヌクレオチドとしてペプチド核酸(PNA)オリゴマーの使用を含む。このようなPNAブロッカーオリゴマーは理想的に適している。その理由は、それらがポリメラーゼによって分解も伸長もされないからである。したがって、好ましくは、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドの塩基配列は、配列番号206〜449、およびその相補配列、の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含むことが必要であり、この場合、前記オリゴヌクレオチドの塩基配列は、少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。
本方法が、無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置に対する応答の可能性を予測するための方法である場合、前記ヌクレオチド配列(群)は、配列番号70、71、192、193、72、73、194、195、84、85、206、207、94、95、216、217、96、97、218、219、100、101、222、223、106、107、228、229、116、117、238、239、92、93、214、215、122、123、244、245、126、127、248、249、130、131、252、253、132、133、254、255、134、135、256、257、146、147、268、269、148、149、270、271、152、153、274、275、154、155、276、277、158、159、280、281、162、163、284および285の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本方法が、乳房細胞増殖性障害を攻撃性に関して特徴付けするための方法である場合、前記ヌクレオチド配列(群)は、配列番号64、65、186、187、68、69、190、191、70、71、192、193、74、75、196、197、82、83、204、205、84、85、206、207、86、87、208、209、88、89、210、211、94、95、216、217、98、99、220、221、100、101、222、223、102、103、224、225、110、111、232、233、112、113、234、235、118、119、240、241、130、131、252、253、134、135、256、257、150、151、272、273、152、153、274、275、166、167、288、289、170、171、292、293、178、179、300、301、148、149、270、271、150、151、272、273、152、153、274、275、154、155、276、277、156、157、278、279、158、159、280、281、160、161、282、283、162、163、284、285、164、165、286、287、166、167、288、289、168、169、290、291、170、171、292、293、172、173、294、295、174、175、296、297、176、177、298、299、178、179、300、301、180、181、302、303、182、183、304および305の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
増幅によって取得される断片は、直接または間接的に検出可能なラベルを保持できる。蛍光ラベル、放射性核種、または質量分析計で検出可能な典型的質量を有する分離可能な分子断片の形式のラベルが好ましい。前記ラベルが質量ラベルである場合、標識された増幅産物(amplificates)が単一の正または負の正味電荷を有し、質量分析計で良好な検出能を提供することが好ましい。例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI)によって、あるいは電子スプレー質量分析(ESI)を使用して検出を実行し、可視化してよい。
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI−TOF)は生体分子の分析に非常に有効な開発技術である(Karas and Hillenkamp, Anal Chem., 60:2299-301, 1988)。検体を光吸収マトリックスに包埋する。このマトリックスを短いレーザーパルスによって蒸発させると、検体分子は切断されない状態で蒸気相内に運ばれる。検体はマトリックス分子との衝突によってイオン化される。電圧を加えてイオンを加速させ、無電界飛行管内へ送る。質量に差があるため、イオンは種々の速度で加速される。小さいイオンほど、大きいイオンよりも早く検出器に到達する。MALDI−TOFスペクトロメトリーは、ペプチドおよびタンパクの分析によく適している。核酸の分析の方がいくらか困難である(Gut and Beck, Current Innovations and Future Trends, 1:147-57, 1995)。核酸の分析に関する感度は、ペプチドの分析に関する感度の約1/100であり、断片サイズの増加に反比例して減少する。さらに、主鎖が多数の負電荷を伴う核酸の場合、マトリックスを経由するイオン化プロセスはかなり効率が低い。MALDI−TOFスペクトロメトリーでは、マトリックスの選択が極めて重要な役割を果たす。ペプチドの脱離の場合、非常に微細な結晶化を生じさせる非常に効果的なマトリックスがいくつか確認されている。現在、DNA応答マトリックスはいくつかあるが、ペプチドと核酸の感度差は減少していない。しかし、この感度差は、よりペプチドに類似するようになる様式でDNAを化学修飾することによって減少させることができる。例えば、主鎖の通常のリン酸基がチオリン酸基で置き換えられているホスホロチオアート核酸は、単純なアルキル化化学を使用して無電荷DNAに変換できる(Gut and Beck, Nucleic Acids Res. 23: 1367-73, 1995)。この修飾型DNAに荷電タグをカップリングすると、ペプチドに関して認められる感度と同一レベルまでMALDI−TOF感度が向上する。不純物は未修飾基質の検出をより一層困難にする。荷電タグ付加の別の利点は、不純物に対する分析の安定性が向上することである。
本方法の第四段階では、本方法の第三段階で取得される増幅産物を分析して、処理前のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を確認する。
MSP増幅を用いて増幅産物を取得した実施態様では、増幅産物の有無自体が、プライマーによってカバーされるCpG位置のメチル化状態を示す。これは前記プライマーの塩基配列に基づく。
標準およびメチル化特異的PCRの両者によって取得される増幅産物は、非限定的に、アレイ技術およびプローブベースの技術のようなハイブリダイゼーションベースの方法によって、ならびにシークエンシングおよび鋳型特異的伸長(template directed extension)のような技術によってさらに分析してよい。
本方法の一実施態様では、段階3で合成された増幅産物を、その後、オリゴヌクレオチドおよび/またはPNAプローブのアレイまたはセットにハイブリダイズさせる。これに関連して、ハイブリダイゼーションは下記様式で行われる:ハイブリダイゼーション中に使用されるプローブセットは、好ましくは、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドまたはPNAオリゴマーから構成される;その過程で、増幅産物は、あらかじめ固相に結合されているオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするプローブとして働く;その後、未ハイブリダイズ断片を除去する;前記オリゴヌクレオチドは、本配列表において指定される塩基配列のセグメントに逆相補的(reverse complementary)または同一である少なくとも9ヌクレオチド長を有する少なくとも1個の塩基配列を含有し;ならびに、該セグメントは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。
好ましい実施態様では、前記ジヌクレオチドは、オリゴマーを三等分した中央部分に存在する。例えば、オリゴマーが1個のCpGジヌクレオチドを含む場合、該ジヌクレオチドは13量体の5'末端から5〜9番目のヌクレオチドであるのが好ましい。配列番号1〜61に記載の配列内の各CpGジヌクレオチド、および配列番号206〜449内の等価な位置の分析用に、1個のオリゴヌクレオチドが存在する(配列番号は表1に基づく)。前記オリゴヌクレオチドはペプチド核酸の形式で存在してもよい。次いで、未ハイブリダイズ増幅産物を除去する。次いで、ハイブリダイズ済み増幅産物を検出する。これに関連して、増幅産物に結合しているラベルは、オリゴヌクレオチド配列が配置されている固相の各位置で同定可能であることが好ましい。
さらに別の本方法の実施態様では、ゲノムのCpG位置のメチル化状態は、PCR増幅プライマーと同時にビサルファイト処理DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用いて確認してもよい(この場合、該プライマーはメチル化特異的または標準のプライマーであってよい)。
本方法の特に好ましい実施態様では、二重標識蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(TaqManTM PCR、ABI Prism 7700 Sequence Detection Systemを使用, Perkin Elmer Applied Biosystems, Foster City, California)を利用する蛍光ベースのリアルタイム定量的PCR(Heid et al., Genome Res. 6:986-994, 1996;また米国特許第6,331,393号を参照のこと)を使用する。TaqManTM PCR反応は、TaqManTMプローブと称される非伸長性のインターロゲート用(interrogating)オリゴヌクレオチドの使用を採用し、好ましい実施態様では、該プローブは、フォワードおよびリバース増幅プライマー間に位置するGpCリッチ配列にハイブリダイズするように設計されている。TaqManTMプローブは蛍光「レポーター部分」および「クエンチャー部分」をさらに含み、これはTaqManTMオリゴヌクレオチドのヌクレオチドに結合しているリンカー部分(例えばホスホルアミダイト)に共有結合している。ビサルファイト処理後に核酸内のメチル化を解析するためには、このプローブがメチル化特異的であることが必要である。これは米国特許第6,331,393号(この文献は参照によりその全体が本明細書に包含される)に記載される通りである。この方法はMethylLightTMアッセイとしても知られる。前記発明とともに使用するのに別途適しているTaqManTM検出方法論のバリエーションには、二重プローブ技術(LightcyclerTM)または蛍光増幅プライマー(SunriseTM技術)の使用が含まれる。これらの両技術は、ビサルファイト処理DNAとともに使用するのに、さらにはCpGジヌクレオチド内のメチル化解析に適するように改良してよい。
ビサルファイト処理核酸の分析によってメチル化を評価するためのプローブオリゴヌクレオチドの使用にさらに適している方法。本方法のさらに好ましい実施態様では、本方法の第五段階は、Gonzalgo and Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997に記載のMS−SNuPEのような鋳型特異的オリゴヌクレオチド伸長の使用を含む。
本方法のさらに別の実施態様では、本方法の第五段階は、本方法の第三段階で生成した増幅産物のシークエンシングおよびその後の配列解析を含む(Sanger F., et al., Proc Natl Acad Sci USA 74:5463-5467, 1977)。
本方法の好ましい一実施態様では、上に概説される方法の最初の3段階にしたがって配列番号1〜61に記載の核酸を単離および処理する。最初の3段階とは、すなわち:
a)対象ゲノムDNAを有する生体サンプルを対象者から取得する段階;
b)ゲノムDNAを抽出または別の様式で単離する段階;および
c)段階b)のゲノムDNA、またはその断片、を1種またはそれ以上の試薬で処理して、5位置でメチル化されていないシトシン塩基をウラシルまたは、ハイブリダイゼーション特性に関して検出可能な程度にシトシンと異なる別の塩基に変換する段階である。
この場合、メチル化特異的様式で、すなわちメチル化特異的プライマーまたはブロッキングオリゴヌクレオチドを使用してその後の段階d)の増幅を実行し、さらにこの場合、上記の通りリアルタイム検出プローブを用いて増幅産物の検出を実行する。
上記のようにメチル化特異的プライマーを用いて、後の段階d)の増幅を実行する場合、該メチル化特異的プライマーは、配列番号206〜449、およびその相補配列、の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpGジヌクレオチドを含む。
本方法が、無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置に対する応答の可能性を予測するための方法である場合、該ブロッキングオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列(群)は、配列番号70、71、192、193、72、73、194、195、84、85、206、207、94、95、216、217、96、97、218、219、100、101、222、223、106、107、228、229、116、117、238、239、92、93、214、215、122、123、244、245、126、127、248、249、130、131、252、253、132、133、254、255、134、135、256、257、146、147、268、269、148、149、270、271、152、153、274、275、154、155、276、277、158、159、280、281、162、163、284および285の1つの配列に記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本方法が、乳房細胞増殖性障害を攻撃性に関して特徴付けするための方法である場合、該ブロッキングオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列(群)は、配列番号64、65、186、187、68、69、190、191、70、71、192、193、74、75、196、197、82、83、204、205、84、85、206、207、86、87、208、209、88、89、210、211、94、95、216、217、98、99、220、221、100、101、222、223、102、103、224、225、110、111、232、233、112、113、234、235、118、119、240、241、130、131、252、253、134、135、256、257、150、151、272、273、152、153、274、275、166、167、288、289、170、171、292、293、178、179、300、301、148、149、270、271、150、151、272、273、152、153、274、275、154、155、276、277、156、157、278、279、158、159、280、281、160、161、282、283、162、163、284、285、164、165、286、287、166、167、288、289、168、169、290、291、170、171、292、293、172、173、294、295、174、175、296、297、176、177、298、299、178、179、300、301、180、181、302、303、182、183、304および305の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本方法の段階e)、すなわち配列番号1〜61に記載の1個またはそれ以上のCpG位置のメチル化状態を示す特定増幅産物の検出は、上記リアルタイム検出法を用いて実行する。代替の最も好ましい本方法の実施態様では、上記のようにブロッキングオリゴヌクレオチドの存在下で後の段階d)の増幅を実行する。該ブロッキングオリゴヌクレオチドは、配列番号206〜449およびその相補配列の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。本方法の段階e)、すなわち配列番号206〜449に記載の1個またはそれ以上のCpG位置のメチル化状態を示す特定増幅産物の検出は、上記リアルタイム検出法を用いて実行する。
本方法のさらに好ましい実施態様では、上に概説される方法の最初の3段階にしたがって配列番号1〜61に記載の核酸を単離および処理する。最初の3段階とは、すなわち:
a)対象ゲノムDNAを有する生体サンプルを対象者から取得する段階;
b)ゲノムDNAを抽出または別の様式で単離する段階;
c)段階b)のゲノムDNA、またはその断片、を1種またはそれ以上の試薬で処理して、5位置でメチル化されていないシトシン塩基をウラシルまたは、ハイブリダイゼーション特性に関して検出可能な程度にシトシンと異なる別の塩基に変換する段階であり、ならびにこの場合、
d)段階c)での処理後に、メチル化特異的様式で、すなわちメチル化特異的プライマーまたはブロッキングオリゴヌクレオチドを使用して増幅を実行し、さらにこの場合、
e)上記の通りリアルタイム検出プローブを用いて増幅産物の検出を実行する。
上記のようにメチル化特異的プライマーを用いて、後の段階c)の増幅を実行する場合、該メチル化特異的プライマーは、配列番号206〜449およびその相補配列の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpGジヌクレオチドを含む。本方法が、無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置に対する応答の可能性を予測するための方法である場合、該メチル化特異的プライマーは、配列番号70、71、192、193、72、73、194、195、84、85、206、207、94、95、216、217、96、97、218、219、100、101、222、223、106、107、228、229、116、117、238、239、92、93、214、215、122、123、244、245、126、127、248、249、130、131、252、253、132、133、254、255、134、135、256、257、146、147、268、269、148、149、270、271、152、153、274、275、154、155、276、277、158、159、280、281、162、163、284および285の1つの配列に記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本方法が、乳房細胞増殖性障害を攻撃性に関して特徴付けするための方法である場合、該メチル化特異的プライマーは、配列番号64、65、186、187、68、69、190、191、70、71、192、193、74、75、196、197、82、83、204、205、84、85、206、207、86、87、208、209、88、89、210、211、94、95、216、217、98、99、220、221、100、101、222、223、102、103、224、225、110、111、232、233、112、113、234、235、118、119、240、241、130、131、252、253、134、135、256、257、150、151、272、273、152、153、274、275、166、167、288、289、170、171、292、293、178、179、300、301、148、149、270、271、150、151、272、273、152、153、274、275、154、155、276、277、156、157、278、279、158、159、280、281、160、161、282、283、162、163、284、285、164、165、286、287、166、167、288、289、168、169、290、291、170、171、292、293、172、173、294、295、174、175、296、297、176、177、298、299、178、179、300、301、180、181、302、303、182、183、304および305の1つに記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズし、該連続ヌクレオチドは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチド配列を含むことが特に好ましい。
本発明の追加実施態様では、前処理を必要とせずに、本発明のゲノムDNA(配列番号1〜61)、およびその相補物のメチル化状態を解析するための方法を提供する。
本方法が、無病生存および/または、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置に対する応答の可能性を予測するための方法である場合、該ゲノム配列は、配列番号5、6、12、17、18、20、23、28、16、31、33、35、36、37、43、44、46、47、49および51から選択されることが特に好ましい。
本方法が、乳房細胞増殖性障害を攻撃性に関して特徴付けするための方法である場合、該ゲノム配列は、配列番号2、4、5、7、11、12、13、14、17、19、20、21、25、26、29、35、37、45、46、53、55および59から選択されることが特に好ましい。
前記追加実施態様の第一段階では、組織または細胞性供給源からゲノムDNAサンプルを単離する。好ましくは、前記供給源には、セルライン、組織学的スライド、パラフィン包埋組織、体液、またはパラフィンに包埋された組織が含まれる。第二段階では、ゲノムDNAを抽出する。抽出は当業者に標準的な手段によって行ってよい。この手段には、非限定的に、界面活性剤ライセート、超音波処理およびガラスビーズを用いるボルテックス処理の使用が含まれる。核酸を抽出した後、二本鎖ゲノムDNAを分析に使用する。
好ましい実施態様では、処理前にDNAを切断してよい。この切断は、最新技術において標準的な任意の手段、特にメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを用いて行ってよい。
次いで第三段階では、1種またはそれ以上のメチル化感受性制限酵素でDNAを消化する。消化を実行すると、制限部位でDNAが加水分解されることによって特定CpGジヌクレオチドのメチル化状態が検知される。
任意であるが好ましい実施態様である第四段階では、制限断片を増幅する。この増幅はポリメラーゼ連鎖反応を使用して実行するのが好ましく、該増幅産物は、上記考察のように検出可能な適切なラベル、すなわちフルオロフォアラベル、放射性ヌクレオチド(radionucleotides)および質量ラベルを保持してよい。
第五段階では、増幅産物を検出する。検出は、技術上標準の任意の手段、例えば、非限定的に、ゲル電気泳動分析、ハイブリダイゼーション分析、PCR産物内への検出可能タグの組み込み、DNAアレイ分析、MALDIまたはESI分析によって行ってよい。
選択CpG位置のメチル化状態が確認された場合、患者の処置関連パラメータであって、遺伝子の高メチル化が、該対象者の不良な予後、該細胞増殖性障害の攻撃的特性、不良な無病生存および/または、低メチル化を有する個体と比べて該処置に対する該対象者の応答の可能性が低いことに関連しているパラメータを確認することができる。
用語「高メチル化」とは、平均のメチル化状態であって、コントロールDNAサンプル内の対応するCpGジヌクレオチド位置で認められる5−mCytの量と比較した場合の、試験DNAサンプルのDNA配列内の1個または複数のCpGジヌクレオチド位置に存在する5−mCytの(平均または中央値を超える)増加に相当する状態を表す。
用語「低メチル化」とは、平均のメチル化状態であって、コントロールDNAサンプル内の対応するCpGジヌクレオチド位置で認められる5−mCytの量と比較した場合の、試験DNAサンプルのDNA配列内の1個または複数のCpGジヌクレオチド位置に存在する5−mCytの(平均または中央値未満の)減少に相当する状態を表す。
キット
さらに本発明の追加の側面は、例えば下記物質を含むようなキットである:ビサルファイト含有試薬;少なくとも2種のオリゴヌクレオチドであって、その配列が、各事例で、配列番号1〜61および206〜449の配列の16塩基長セグメントと一致するか、そのセグメントと相補的であるか、あるいはストリンジェントまたは高度にストリンジェントな条件下でそのセグメントにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するプライマーオリゴヌクレオチドセット;オリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマー;ならびに上記方法を実行および評価するための指示書。さらに好ましい実施態様では、該キットは、CpG位置特異的メチル化解析を実施するための標準的試薬をさらに含んでよく、この場合、該解析は1種またはそれ以上の下記技術を含む:MS−SNuPE、MSP、MethyLightTM、HeavyMethylTM、COBRA、および核酸シークエンシング。しかし、本発明のキットは上述のコンポーネントの部分のみを含有してもよい。
MethyLight(登録商標)分析用の典型的試薬(例えば、典型的なMethyLight(登録商標)ベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のPCRプライマー;TaqMan(登録商標)プローブ;最適化PCRバッファーおよびデオキシヌクレオチド;およびTaqポリメラーゼ。
Ms−SNuPE分析用の典型的試薬(例えば、典型的なMs−SNuPEベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のPCRプライマー;最適化PCRバッファーおよびデオキシヌクレオチド;ゲル抽出キット;ポジティブコントロールプライマー;特定遺伝子用のMs−SNuPEプライマー;反応バッファー(Ms−SNuPE反応用);および放射性ヌクレオチド。さらに、ビサルファイト変換試薬には下記物質が含まれるであろう:DNA変性バッファー;スルホン化バッファー;DNA回収試薬またはキット(例えば、沈降、限外濾過、アフィニティーカラム);脱スルホン化バッファー;およびDNA回収コンポーネント。
MSP分析用の典型的試薬(例えば、典型的なMSPベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のメチル化および非メチル化PCRプライマー、最適化PCRバッファーおよびデオキシヌクレオチド、および特異的プローブ。
開示されている方法を可能にするために、本発明は、EGR4、APC、CDKN2A、CSPG2、ERBB2、STMN1、STK11、CA9、PAX6、SFN、S100A2、TFF1、TGFBR2、TP53、TP73、PLAU、TMEFF2、ESR1、SYK、HSPB1、RASSF1、TES、GRIN2D、PSAT1、CGA、CYP2D6、COX7A2L、ESR2、PLAU、VTN、SULT1A1、PCAF、PRKCD、ONECUT2、BCL6、WBP11、(MX1)MX1、APP、ORC4L、NETO1、TBC1D3、GRB7、CDK6、配列番号47、配列番号48、ABCA8、配列番号50、配列番号51、MARK2、ELK1、Q8WUT3、CGB、BSG、BCKDK、SOX8、DAG1、SEMA4BおよびESR1(エキソン8)の群から選択される1種または組み合わせの遺伝子の修飾型DNA、ならびにオリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマーをさらに提供する。これらは該遺伝子内のシトシンのメチル化を検出するためのものである。本発明は、遺伝的および後成的パラメータおよび、特に、前記ゲノムDNAのシトシンのメチル化パターンが、乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングに特に適しているという発見に基づく。
本発明の核酸を使用して、ゲノムDNAの遺伝的および/または後成的パラメータを解析することができる。
本発明のこの目的は、配列番号206〜配列番号449およびその相補配列の1つに記載の前処理済みゲノムDNAの少なくとも16塩基長の配列を含有する核酸を使用して達成できる。
従来、前記修飾型核酸を、無病生存および/または処置に対する応答の可能性の予測および/または疾患の攻撃性に関する特徴付けに基づく、乳房細胞増殖性障害の改良された処置と関連付けることはできなかった。
本発明の目的は、さらに、ゲノムのシトシンのメチル化状態を検出するための前処理済みDNAの解析用のオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーによって達成することができ、該オリゴヌクレオチドは、配列番号206〜配列番号449に記載の前処理済みゲノムDNAにハイブリダイズする少なくとも10ヌクレオチド長を有する少なくとも1個の塩基配列を含有する。本発明のオリゴマープローブは重要かつ有効なツールを構成する。このツールは、患者の無病生存および/または内分泌治療に対する応答に関連する特徴に関して生体サンプルを分析する際に特定の遺伝的および後成的パラメータを確認することを可能にする最初のツールである。前記オリゴヌクレオチドは乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングを可能にする。該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpGまたはTpGジヌクレオチドを含有することが好ましい。前記プローブは、特に好ましい対合特性を有するPNA(ペプチド核酸)の形式で存在してもよい。CpGジヌクレオチドのシトシンが該オリゴヌクレオチドを三等分した中央部分の範囲内、例えば13量体のオリゴヌクレオチドの5'末端から5番目〜9番目のヌクレオチドである本発明のオリゴヌクレオチドが特に好ましく;あるいはPNAオリゴマーの場合、CpGジヌクレオチドのシトシンが9量体の5'末端から4番目〜6番目のヌクレオチドであることが好ましい。
本発明のオリゴマーは、通常、配列番号206〜配列番号449内の各CpGジヌクレオチドに関して2種までのオリゴマーおよび1種までのオリゴマーを含有する、いわゆる「セット」で使用する。
本発明のオリゴヌクレオチドセットの場合、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを固相に結合させることが好ましい。1セットのすべてのオリゴヌクレオチドを固相に結合させることがさらに好ましい。
さらに本発明は、少なくとも2n(オリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマー)のセットであって、前記配列(配列表および表1に詳細が記載される遺伝子EGR4、APC、CDKN2A、CSPG2、ERBB2、STMN1、STK11、CA9、PAX6、SFN、S100A2、TFF1、TGFBR2、TP53、TP73、PLAU、TMEFF2、ESR1、SYK、HSPB1、RASSF1、TES、GRIN2D、PSAT1、CGA、CYP2D6、COX7A2L、ESR2、PLAU、VTN、SULT1A1、PCAF、PRKCD、ONECUT2、BCL6、WBP11、(MX1)MX1、APP、ORC4L、NETO1、TBC1D3、GRB7、CDK6、配列番号47、配列番号48、ABCA8、配列番号50、配列番号51、MARK2、ELK1、Q8WUT3、CGB、BSG、BCKDK、SOX8、DAG1、SEMA4B、ESR1(エキソン8)の配列およびその相補配列)または処理済み型の前記配列の分析によって、ゲノムDNAのシトシンのメチル化状態を検出するために使用されるセットに関する。これらのプローブは乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングを可能にする。
当業者には自明であるように、最新技術において既知の、内分泌または内分泌関連経路を標的にする治療の転帰の予測として現在使用されているマーカーおよび臨床指標を組み入れることによって本発明の方法は改良され、補足される。より好ましくは、該マーカーには、リンパ節状態、年齢、閉経期の状態、悪性度(grade)、エストロゲンおよびプロゲステロン受容体が含まれる。
本発明の基礎を構成する遺伝子を使用して、「遺伝子パネル」、すなわち本発明の特定の遺伝子配列および/または情報価値のあるその各メチル化部位を含むコレクションを作成してよい。遺伝子パネルを作成することにより、乳癌処置の特定側面を迅速かつ特異的に分析することが可能になる。本発明で採用される上記遺伝子パネル(群)は、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産、または分泌に関与する1種またはそれ以上の薬物を含む治療での処置の転帰を予測することに基づく乳房細胞増殖性障害の処置に関して、驚くほど高い効率で使用することができる。パネルの各遺伝子の分析は患者の応答性の評価に貢献するが、好ましくない実施態様では、患者の評価は単一遺伝子のみの分析によって達成してよい。「遺伝子パネル」の単一メンバーの分析によって、患者の応答性を評価する、安価であるが精度の低い手段が提供され、パネルの複数メンバーの分析によって、やや高価であるが、より精度の高い方法の実行手段(技術上好ましい解決策)が提供される。
化学療法で処置されていない患者に本発明の方法を適用する場合、本方法の効率は向上する。したがって、化学療法を受けていない対象者の評価に本方法を使用することが本方法の特に好ましい実施態様である。
本発明では、本発明によって利用可能になる種々のオリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマーの配置物(いわゆる「アレイ」)が、固相に同様に結合している様式で存在することが好ましい。種々のオリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマー配列のこのアレイは、長方形または六角形の格子状に固相上に配置されていることを特徴としてよい。固相表面は、好ましくはケイ素、ガラス、ポリスチレン、アルミニウム、鋼、鉄、銅、ニッケル、銀、または金から構成される。しかし、ペレット状または樹脂マトリックスとしても存在できるニトロセルロースならびにプラスチック、例えばナイロンは適切な代替物である。
したがって本発明の別の対象は、乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングのための、担体材料に固定されたアレイの製造方法である。該方法では、少なくとも1個の本発明のオリゴマーが固相にカップリングされている。このようなアレイの製造方法は既知であり、例えば米国特許第5,744,305号に記載されている。これは固相化学および感光性保護基を用いる方法である。
本発明の別の対象は、乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリング用のDNAチップに関する。このDNAチップは少なくとも1種の本発明の核酸を含有する。DNAチップは既知であり、例えば米国特許第5,837,832号に記載されている。
本発明のオリゴマーまたはそのアレイならびに本発明のキットは、乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングのための使用が意図される。本発明にしたがって、特に乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングでの使用に関して、ゲノムDNA内の重要な遺伝的および/または後成的パラメータの解析に本方法が好ましく使用される。
本発明の方法によって、より情報が得られた上での治療方式が可能になることに基づき、乳房細胞増殖性障害の改良された処置およびモニタリングに本方法が使用される。
本発明は、さらに、患者または個体に不利であるか、あるいは価値がある事象の診断および/または予後に関する。この場合、ゲノムDNA内の重要な遺伝的および/または後成的パラメータ、本発明を用いて取得された該パラメータを、別の遺伝的および/または後成的パラメータセットと比較してよく、その差は、患者または個体に不利であるか、あるいは価値がある事象の診断および/または予後に関する基礎として役立つ。
本発明の関連での用語「ハイブリダイゼーション」とは、サンプルDNA中の、ワトソン・クリック塩基対合系にしたがうオリゴヌクレオチドと完全相補配列の結合であって、二重らせん構造を形成する結合であると理解される。
本発明の関連での「遺伝的パラメータ」とは、ゲノムDNAおよびその調節に別途必要とされる配列の変異および多型である。変異として指定されるのは、特に挿入、欠失、点変異、逆位および多型であり、特に好ましくはSNP(一塩基多型)である。
本発明の関連での用語「メチル化状態」とは、目的の核酸中に存在するメチル化の程度を意味するものとし、これは絶対的または相対的用語として、すなわちパーセンテージまたは他の数値として、あるいは別の組織との比較によって記載してよく、その場合、「高メチル化」、「低メチル化」として、あるいは非常に類似または同一のメチル化状態を有すると記載される。
本発明の関連での用語、遺伝子の「調節領域」とは、遺伝子の発現に影響するヌクレオチド配列を意味するものとする。該調節領域は、該遺伝子内、その近傍または遠隔の位置に存在してよい。該調節領域には、非限定的に、構成性プロモーター、組織特異的プロモーター、発生特異的プロモーター、誘導性プロモーター等が含まれる。プロモーター調節エレメントは、遺伝子の転写または翻訳効率を制御する特定のエンハンサー配列エレメントを含んでもよい。
本発明の関連での用語「化学療法」とは、癌を処置するための薬物または化学物質の使用を意味するものとする。この定義は、放射線療法(高エネルギー光線または粒子での処置)、ホルモン療法(ホルモンまたはホルモンアナログ(合成代用物)での処置)および外科的処置を除外する。
本発明の関連での「後成的パラメータ」とは、特にシトシンのメチル化および、ゲノムDNAおよびその調節に別途必要とされる配列のDNA塩基の別の修飾である。別の後成的パラメーターには、例えばヒストンのアセチル化が含まれる。ヒストンのアセチル化は上記方法を使用して直接分析できないが、やはりDNAのメチル化と相関するものである。
本発明の関連での用語「補助処置(adjuvant treatment)」とは、化学療法でない初期治療、例えば外科手術の直後の癌患者の治療を意味するものとする。概して補助療法の目的は、補助療法を行わない場合と比較して再発の危険性についての有意な低下を提供することである。
本発明の関連での用語「エストロゲン受容体陽性」および/または「プロゲステロン受容体陽性」とは、乳房細胞増殖性障害の説明に使用される場合、増殖性細胞が該ホルモン受容体を発現することを意味するものとする。
最良の形態
予後および/または処置の転帰に関して乳癌を特徴付けすることにより、医師は、患者に対して、適切な危険および利点の妥協点を有する治療方式に関してインフォームドディシジョンを行うことが可能になる。
本形態の発明の関連で、用語「エストロゲン受容体陽性」および/または「プロゲステロン受容体陽性」とは、乳房細胞増殖性障害の説明に使用される場合、増殖性細胞が該ホルモン受容体を発現することを意味するものとする。
本形態の発明の関連で、用語「攻撃性(aggressiveness(侵襲性))」とは、外科手術後に再発する高い可能性;平均未満または中央値未満の患者生存;平均未満または中央値未満の無病生存;平均未満または中央値未満の無再発生存;平均を超える腫瘍関連合併症;腫瘍または転移の高速進行の1つまたはそれ以上を意味するものとする。疾患の攻撃性にしたがって、下記からなる群から適切な処置または処置群を選択してよい:化学療法、放射線療法、外科手術、生物学的治療、免疫療法、抗体処置、分子的に標的化された薬物を使用する処置、エストロゲン受容体モジュレーターでの処置、エストロゲン受容体ダウンレギュレーターでの処置、アロマターゼ阻害剤での処置、卵巣切除、LHRHアナログまたは、エストロゲン生産に影響する他の中枢作用薬を提供する処置。癌が「攻撃的」であると特徴付けされた場合、内分泌を標的にする治療に加えてあるいはその代わりに、非限定的に化学療法のような処置を提供することが特に好ましい。技術上標準の腫瘍攻撃性の指標には、非限定的に、腫瘍段階、腫瘍悪性度、リンパ節状態および生存(率)が含まれる。
特に記載しない限り、本明細書中で使用される用語「生存(率)(survival)」とは、下記のすべてを含むものとする:死亡までの生存、これは全生存としても既知である(この場合、該死亡は原因に無関係であるか、あるいは乳房腫瘍関連であってよい);「無再発生存」(この場合、再発という用語には限局性および遠隔性の再発の両者が含まれるものとする);無転移生存;無病生存(この場合、病という用語には乳癌およびその関連疾患が含まれるものとする)。該生存の期間は、規定の始点(例えば診断または処置開始時)および終点(例えば死、再発または転移)を参照して算出してよい。
本明細書中で使用される用語「予後マーカー」とは、疾患進行の可能性、特に乳房腫瘍の攻撃性および転移能の指標を意味するものとする。
本明細書中で使用される用語「予測マーカー」とは、治療に対する応答の指標を意味するものとし、好ましくは該応答は患者の生存にしたがって規定される。その好ましい使用により、処置後に高、低および中間レベルの生存期間または再発を伴う患者が規定される。この生存期間または再発は疾患過程の本来の不均一性に起因するものである。
本明細書中で定義される予測マーカーという用語は、時として本明細書中に記載の「予後マーカー」の意義範囲内に含まれることがある。例えば、処置後に種々の生存の転帰を有する患者を予後マーカーが識別する場合、該マーカーは該処置の予測マーカーでもある。したがって特に記載しない限り、この2つの用語は相互に排他的であると解釈されないものとする。
本明細書中で使用される用語「発現」とは、遺伝子の転写および翻訳、ならびにマーカー遺伝子(marker gene)および/またはその調節またはプロモーター領域に関連するゲノムDNAの遺伝的または後成的修飾を意味するものとする。遺伝的修飾には、SNP、点変異、欠失、挿入、反復長、再配置および他の多型が含まれる。本明細書中では、タンパク質の発現レベル、またはmRNAの分析、または患者の個別のマーカー遺伝子の遺伝的または後成的修飾の解析を遺伝子発現の解析(分析)としてまとめる。
遺伝子の発現レベルは、遺伝子の転写および翻訳レベルに関連するか、あるいはその指標である任意のファクターを分析することによって測定してよい。このようなファクターには、非限定的に、メチル化解析、異型接合性の消失(以後LOHとも称される)、RNA発現レベルおよびタンパク質発現レベルが含まれる。
さらにまた、転写される遺伝子の活性は、遺伝的変異、例えば非限定的に遺伝的修飾(非限定的にSNP、点変異、欠失、挿入、反復長、再配置および他の多型が含まれる)によって影響を受けるであろう。
用語「内分泌療法(endocrine therapy)」または「内分泌治療(endocrine treatment)」とは、エストロゲン受容体経路またはエストロゲン合成経路またはエストロゲン変換経路を標的にする任意の治療、処置または処置群であって、エストロゲン代謝、生産または分泌に関与する治療、処置または処置群を含むことを意図する。該処置には、非限定的にエストロゲン受容体モジュレーター、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター、アロマターゼ阻害剤、卵巣切除、LHRHアナログおよび、エストロゲン生産に影響する他の中枢作用薬が含まれる。
用語「単独療法」とは、単一の薬物または他の治療の使用を意味するものとする。
本形態の発明の関連で、用語「化学療法」とは、癌を処置するための医薬品または化学物質の使用を意味するものとする。この定義は、放射線療法(高エネルギー光線または粒子での処置)、ホルモン療法(ホルモンまたはホルモンアナログでの処置)および外科的処置を除外する。
本形態の発明の関連で、用語「補助処置」とは、化学療法でない初期治療、例えば外科手術を受けた直後の癌患者の治療を意味するものとする。概して、補助療法の目的は再発の危険性を減少させることである。
本形態の発明の関連で、用語「対象者に適切な処置方式を決定」とは、患者に関する処置方式(すなわち、患者の癌の予防および/または処置に使用される単一の治療または種々の治療の組み合わせ)を決定することを意味するものとし、この決定は、本形態の発明に基づく分析の結果に基づき、あるいは本質的に基づき、あるいは少なくとも部分的に基づいて、着手、修正および/または帰結される。一例は、外科手術後に補助内分泌療法を開始することであり、別の例を挙げれば、特定の化学療法の用量を修正することである。前記決定は、本形態の発明に基づく分析の結果に加え、処置対象者の個人的特徴に基づいて行うことができる。ほとんどの場合、対象者に適切な処置方式を実際に決定する行為は担当の医師またはドクターが実施する。
本形態の発明の関連で、用語「生体サンプルを取得」または「対象者からサンプルを取得」とは、個体からの能動的なサンプルの回収、例えば生体組織検査の実施を含まないものとする。該用語は、個体からあらかじめ単離されたサンプルの取得を意味するものとする。技術上標準の任意の手段によって該サンプルを単離してよい。この手段には、非限定的に生体組織検査、外科的除去、吸引によって単離される体液が含まれる。さらにまた、該サンプルは第三者によって提供されるものであってよい。第三者には、非限定的に臨床家、仲介者(couriers)、市販のサンプル提供者およびサンプルコレクションが含まれる。
本形態の発明の関連で、用語「CpG島」とは、(1)「実測/予測比」>0.6に相当するCpGジヌクレオチドの頻度を有し、かつ(2)「GC含量」>0.5を有するという基準を満たすゲノムDNAの連続領域を表す。常にではないが、典型的に、CpG島の長さは約0.2〜約1kbの範囲である。
本形態の発明の関連で、遺伝子の「調節領域」という用語は、遺伝子の発現に影響するヌクレオチド配列を意味するものとする。該調節領域は、該遺伝子内、その近傍または遠隔の位置に存在してよい。該調節領域には、非限定的に構成性プロモーター、組織特異的プロモーター、発生特異的プロモーター、誘導性プロモーター等が含まれる。プロモーター調節エレメントは、遺伝子の転写または翻訳効率を制御する特定のエンハンサー配列エレメントを含んでもよい。
本形態の発明の関連で、用語「メチル化」とは、DNA配列内の1個または複数のCpGジヌクレオチド位置での5−メチルシトシン(「5−mCyt」)の有無を表す。
本形態の発明の関連で、用語「メチル化状態」とは、目的の核酸中に存在するメチル化の程度を意味するものとし、この用語は、絶対的または相対的用語として、すなわちパーセンテージまたは他の数値として、あるいは別の組織との比較によって記載してよく、その場合、高メチル化、低メチル化として、あるいは非常に類似または同一のメチル化状態を有すると記載される。
本形態の発明の関連で、用語「半メチル化("hemi-methylation" or "hemimethylation")」とは、二本鎖CpGメチル化部位の2個のCpGジヌクレオチド配列の一方の単一シトシンのみがメチル化されている、CpGメチル化部位のメチル化状態(例えば、5'−NNCMGNN−3'(上側鎖):3'−NNGCNN−5'(下側鎖))を表す。
本形態の発明の関連で、用語「高メチル化」とは、平均のメチル化状態であって、正常コントロールDNAサンプル内の対応するCpGジヌクレオチド位置で認められる5−mCytの量と比較した場合の、試験DNAサンプルのDNA配列内の1個または複数のCpGジヌクレオチド位置に存在する5−mCytの増加に相当する状態を表す。
本形態の発明の関連で、用語「低メチル化」とは、平均のメチル化状態であって、正常コントロールDNAサンプル内の対応するCpGジヌクレオチド位置で認められる5−mCytの量と比較した場合の、試験DNAサンプルのDNA配列内の1個または複数のCpGジヌクレオチド位置に存在する5−mCytの減少に相当する状態を表す。
本形態の発明の関連で、用語「マイクロアレイ」とは、技術上公認の「DNAマイクロアレイ」、および「DNAチップ(群)」の両者を広義に表し、すべての技術上公認の固形支持体を包含し、ならびにそれに核酸分子を取り付け、あるいはその上で核酸を合成するためのすべての方法を包含する。
「遺伝的パラメータ」は、遺伝子およびその調節に別途必要とされる配列の変異および多型である。遺伝的修飾または変異として指定されるのは、特に挿入、欠失、点変異、逆位および多型であり、特に好ましくはSNP(一塩基多型)である。
「後成的修飾」または「後成的パラメータ」とは、ゲノムDNAおよびその調節に別途必要とされる配列のDNA塩基の修飾、特に、そのシトシンのメチル化である。別の後成的パラメータには、例えばヒストンのアセチル化が含まれる。なお、ヒストンのアセチル化は上記方法を使用して直接分析できないが、やはりDNAのメチル化と相関するものである。
本形態の発明の関連で、用語「ビサルファイト試薬」とは、ビサルファイト、ジサルファイト、亜硫酸水素(塩)またはその組み合わせを含む試薬を表す。本明細書中に開示されるように、この試薬はメチル化および非メチル化CpGジヌクレオチド配列を識別するのに有用である。
本形態の発明の関連で、用語「メチル化アッセイ」とは、DNAの配列内の1個またはそれ以上のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を決定するための任意のアッセイを表す。
本形態の発明の関連で、用語「MS.AP−PCR」(メチル化感受性任意プライマー駆動ポリメラーゼ連鎖反応(Methylation-Sensitive Arbitrarily-Primed Polymerase Chain Reaction))とは、CGリッチプライマーを使用してCpGジヌクレオチドを含有する可能性が最も高い領域に集中してゲノムの一括走査を可能にする技術上公認の技術を表す。この技術はGonzalgo et al., Cancer Research 57:594-599, 1997に記載されている。
本形態の発明の関連で、用語「MethyLight」とは、技術上公認の蛍光ベースのリアルタイムPCR技術を表す。この技術はEads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999に記載されている。
本形態の発明の関連で、用語「HeavyMethylTM」アッセイとは、本明細書中で実現されるその実施態様において、増幅プライマー間のCpG位置をカバーするメチル化特異的ブロッキングプローブを含むメチル化アッセイを表す。
用語「Ms−SNuPE」(メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長(Methylation-sensitive Single Nucleotide Primer Extension))とは、Gonzalgo and Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997に記載されている技術上公認のアッセイを表す。
本形態の発明の関連で、用語「MSP」(メチル化特異的PCR)とは、Herman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996および米国特許第5,786,146号に記載されている技術上公認のメチル化アッセイを表す。
本形態の発明の関連で、用語「COBRA」(混合ビサルファイト制限分析(Combined Bisulfite Restriction Analysis))とは、Xiong and Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997に記載されている技術上公認のメチル化アッセイを表す。
本形態の発明の関連で、用語「ハイブリダイゼーション」とは、サンプルDNA中の、ワトソン・クリック塩基対合系にしたがうオリゴヌクレオチドと相補配列の結合であって、二重らせん構造を形成する結合であると理解される。
本明細書で定義される「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、5x SSC/5xデンハート溶液/1.0%SDS中の68℃でのハイブリダイゼーション、および0.2x SSC/0.1%SDS中の室温での洗浄を含む。あるいは、前者に同等の技術上公認の条件(例えば、2.5x SSCバッファー中で60℃でハイブリダイゼーションを実行した後、37℃の低バッファー濃度中で数回洗浄する工程に付し、安定を保つ条件)を含む。本明細書中で定義される中程度にストリンジェントな条件とは、42℃の3x SSC中での洗浄を含む条件、またはそれに同等の技術上公認の条件である。塩濃度および温度のパラメータを変更して、プローブと標的核酸間で最適レベルの同一性を達成することができる。当技術分野では、前記条件に関する指針が入手可能であり、例えばSambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y.;およびAusubel et al. (eds.), 1995, Current Protocols in Molecular Biology, (John Wiley and Sons, N.Y.)単元2.10によって指針が提供されている。
本明細書中で使用される「バックグラウンドDNA」とは、乳房細胞以外の供給源由来の任意の核酸を表す。
本明細書中に記載の方法および核酸を使用して、患者の再発、無病生存、無転移生存、全生存および/または疾患進行についての統計学的に重要なモデルを開発し、それを利用して、治療方式に含まれるべきであろう適切な処置選択肢の決定に関して患者および臨床家を支援することができる。
本方法の一側面では、乳房組織の細胞増殖性障害に関する予後マーカーを提供する。好ましくは、この予後は、再発の可能性;患者の全生存;無転移生存;無病生存または疾患進行からなる群から選択される転帰の観点から提供される。
本発明の別の側面では、前記マーカーが、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する処置の転帰についての予測マーカーとして使用される。この処置は、乳房組織の細胞増殖性障害を患う患者に関する治療としての処置である。本方法のこの側面にしたがって、医師は、前記内分泌治療に加えてあるいはその代わりにどの処置を使用してよいかを決定することが可能になる。該追加処置は、より攻撃的な治療、例えば、非限定的に化学療法であることが好ましい。ゆえに、本発明は、現在の乳房細胞増殖性障害の予後、予測および処置応答予測法に関連する問題を減少させると理解される。
本明細書中に記載の方法および核酸を使用して、乳房組織の細胞増殖性障害に関する処置前または処置中に患者の生存を評価することができる。その目的は、疾患の進行の可能性に関して患者および臨床家に重要な情報を提供することである。したがって、本明細書中で例証される方法および核酸は、患者の生活の質および処置成功の可能性を向上させるのに有益であり得ることが理解されよう。この利点は、該方法および核酸によって、患者および臨床家の両者が患者の処置選択肢をより正確に評価することが可能になることに基づく。
本明細書中で開示される方法は、すべての乳房細胞増殖性障害の患者の改良された処置に使用してよい。該患者は閉経前および閉経後の両患者であり、そのリンパ節またはエストロゲン受容体状態とは無関係である。しかし、該患者はリンパ節陰性およびエストロゲン受容体陽性であることが特に好ましい。
本発明は、患者の生存についての改良された予測を可能にすることによって、乳房細胞増殖性障害の改良された処置方法を利用可能にする。この予測は、特に、補助内分泌治療を行うか、あるいは行わない両場合の、外科手術後の再発の可能性を予測することに基づく。さらにまた本発明は、内分泌療法を用いる処置の転帰についての改良された予測手段を提供する。この場合、該療法は、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産、または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置を含む。
本発明の方法を使用して、乳房組織の多種多様な細胞増殖性障害を分析してよい。この障害には、非限定的に、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、面疱癌、炎症性乳癌、粘液癌、スキルス癌、膠様癌、管状癌、髄様癌、化生性癌、および乳頭状癌および非浸潤性乳頭状癌、未分化または退形成癌および乳房パジェット病が含まれる。
本発明の方法を使用して、乳房細胞増殖性障害の患者の予後を提供してよい。さらにまた該方法を使用して、内分泌療法による処置後の患者の生存および/または再発の予測を提供してよい。
本明細書中で開示されるマーカー、方法および核酸を予後マーカーとして使用する場合、該予後は患者の生存および/または再発の観点から規定されることが特に好ましい。本実施態様では、患者の生存期間および/または再発を、その遺伝子発現またはその遺伝的または後成的修飾にしたがって予測する。発明の本側面では、いかなる補助内分泌治療も受けていない段階で該患者を検査することが特に好ましい。
本明細書中で開示されるマーカー、方法および核酸を予測マーカーとして使用する場合、本方法を適用して、化学療法でない初期治療、例えば外科手術に続く二次処置として内分泌治療を受ける患者の転帰を予測すること(以後「補助設定」と称される)が特に好ましい。これは図1に示される通りである。前記処置は、病期1〜3の乳癌を患う患者に処方されることが多い。また、該「転帰」は患者の生存および/または再発の観点から規定されることが好ましい。
本実施態様では、患者の生存期間および/または再発を、その遺伝子発現またはその遺伝的または後成的修飾にしたがって予測する。平均未満または中央値未満の無転移生存または無病生存期間および/または再発の高い可能性を有する患者を検出することによって、医師は、内分泌を標的にする治療(群)の代わりにあるいはそれに加えてさらなる処置、特に非限定的に化学療法を患者に推奨することを選択してよい。
本明細書中に記載の発明は、新規の乳房細胞増殖性障害の予後および予測バイオマーカーを提供する。
遺伝子PITX2および/またはその調節またはプロモーター領域の異常発現を、乳房細胞増殖性障害、特に乳癌患者の予後および/または該患者のエストロゲン処置の転帰についての予測に関連付けることを、本明細書中で説明する。
したがってこのマーカーは、乳房細胞増殖性障害を特徴付けするための新規手段を提供する。本明細書中で記載される通り、遺伝子PITX2および/またはその調節またはプロモーター領域の発現を測定することによって、乳房組織の増殖性障害を有する患者の予後の予測が可能になる。代替の実施態様では、遺伝子PITX2および/またはその調節またはプロモーター領域の発現にしたがって、エストロゲン受容体、合成または変換経路を標的にするか、あるいは別の様式でエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置を用いて処置される患者の処置応答の予測が可能になる。
したがって本明細書中に記載の発明は、エストロゲン受容体経路を標的にするか、あるいはエストロゲン代謝、生産または分泌に関与する1種またはそれ以上の処置を用いて適切に処置されるであろう個体を、該処置に加えて他の処置を用いると最も適切に処置されるであろう個体から識別するのに有用である。好ましい「他の処置」には、非限定的に化学療法または放射線療法が含まれる。前記予後および/または処置応答は、再発の可能性、生存または転帰の観点から指定されることが特に好ましい。
本発明の別の実施態様では、遺伝子PITX2を含む複数の遺伝子および/またはその調節またはプロモーター領域の異常発現を分析する。該複数の遺伝子は、以後「遺伝子パネル」とも称される。複数の遺伝子を分析すると、得られる予後および/またはエストロゲン処置の転帰の予測の精度が向上する。この遺伝子パネルは、乳癌患者の予後および/または処置応答の予測に関連する7種までの遺伝子および/またはそのプロモーター領域からなることが好ましい。該パネルは、遺伝子PITX2および、ABCA8、CDK6、ERBB2、ONECUT2、PLAU、TBC1D3およびTFF1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子および/またはその調節領域からなることがさらに好ましい。この遺伝子パネルは、下記からなる遺伝子パネルの群から選択されることが特に好ましい:
PITX2、PLAUおよびTFF1
PITX2およびPLAU
PITX2およびTFF1。
内分泌治療を用いる患者の処置の転帰を予測するには、PITX2およびTFF1からなる遺伝子パネルを使用することが特に好ましい。患者の予後を提供するには、PITX2およびPLAUからなる遺伝子パネルを使用することが特に好ましい。いかなる内分泌治療も受けないうちに該患者を分析することが好ましい。
別の実施態様では、本発明は、乳房細胞増殖性疾患と診断される患者の予後に関する新規方法および配列に関する。別の側面では、本発明は、乳房細胞増殖性疾患と診断される患者に適切な処置を選択するためのツールとして使用してよい新規方法および配列に関する。この選択は、再発の可能性、生存または転帰の予測に基づく。
より詳細には、本発明は、乳房細胞増殖性疾患と診断される患者に関する新規方法および配列であって、適切な補助療法の改良された選択を許容する方法および配列を提供する。さらにまた、内分泌単独療法を受けた後に不良な予後を有する患者には、内分泌療法に加えてあるいはその代わりに化学療法を提供することが好ましい。
本発明の一側面は、乳房組織の細胞増殖性障害を有する患者の予後および/またはその患者の内分泌治療の転帰についての予測を提供するための方法を提供することである。好ましくは、該予後および/または予測は該患者の再発の可能性または生存の観点から提供される。該生存は無病生存または無転移生存であることがさらに好ましい。また、該疾患は乳癌であることが好ましい。これらの方法は、遺伝子PITX2および/またはその調節領域の発現レベルの分析を含む。
別の実施態様では、本方法は、遺伝子PITX2および、ABCA8、CDK6、ERBB2、ONECUT2、PLAU、TBC1D3およびTFF1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子および/またはその調節領域を含む「遺伝子パネル」の発現の解析を含む。該遺伝子パネルは、下記からなる遺伝子パネルの群から選択されることが特に好ましい:
PITX2、PLAUおよびTFF1
PITX2およびPLAU
PITX2およびTFF1。
内分泌治療を用いる患者の処置の転帰を予測するには、PITX2およびTFF1からなる遺伝子パネルの発現を測定することが特に好ましい。また、患者の予後を提供するには、PITX2およびPLAUからなる遺伝子パネルの発現を測定することが特に好ましい。いかなる内分泌治療も受けないうちに該患者を分析することが好ましい。
発現の測定は技術上標準の任意の手段によって達成してよいが、LOH、メチル化、タンパク質発現、mRNA発現、ゲノム配列の遺伝的または他の後成的修飾を解析することによって最も好ましく達成できる。
配列番号1130に記載の遺伝子PITX2および/またはその調節またはプロモーター領域のゲノム配列のDNAメチル化プロファイルを解析することが特に好ましい。配列番号1130の下記セクション内のCpG位置のメチル化状態を解析することがさらに好ましい:ヌクレオチド2,700〜ヌクレオチド3,000;ヌクレオチド3,900〜ヌクレオチド4,200;ヌクレオチド5,500〜ヌクレオチド8,000;ヌクレオチド13,500〜ヌクレオチド14,500;ヌクレオチド16,500〜ヌクレオチド18,000;ヌクレオチド18,500〜ヌクレオチド19,000;ヌクレオチド21,000〜ヌクレオチド22,500。配列番号23、1140〜1142に記載の前記配列番号1130の4個の部分配列に含まれる8個の特定のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を解析することが特に好ましい。本方法が、PITX2および、ABCA8、CDK6、ERBB2、ONECUT2、PLAU、TBC1D3およびTFF1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子および/またはその調節またはプロモーター領域を含む遺伝子パネルの分析を含む場合、該遺伝子の配列は、表1に記載の配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12および配列番号1131からなる群から選択されることが好ましい。
この方法論は、エストロゲンおよび/またはプロゲステロン受容体状態とは無関係に、本方法を任意の対象者に適用してよい点において、最新技術をさらに超える改良を提供する。したがって好ましい実施態様では、対象者はエストロゲンまたはプロゲステロン受容体状態に関する検査を受けている必要がない。
本発明の別の側面では、本開示内容は、前記遺伝子内のメチル化の解析に有用な新規核酸配列を提供し、他の側面では、乳房細胞増殖性疾患と診断される患者の予後および/またはその患者の内分泌治療の転帰についての予測を提供するための該遺伝子および遺伝子産物の新規使用ならびに方法、アッセイおよびキットを提供する。
一実施態様では、本発明は、乳房細胞増殖性疾患を患う患者の予後および/またはその患者の内分泌治療の転帰についての予測を提供するための方法であって、遺伝子PITX2および/またはその調節領域の発現の解析に基づく方法を開示する。好ましくは、該内分泌治療は補助内分泌単独療法である。遺伝子発現の任意の解析手段によって前記方法を実現してよい。この手段には、非限定的にmRNA発現解析またはタンパク質発現解析が含まれる。あるいは、発現の変化をもたらすその遺伝的修飾(例えばLOH)の分析によって前記方法を実現してよい。しかし、最も好ましい本発明の実施態様では、遺伝子PITX2およびそのプロモーターまたは調節エレメント内のCpG部位のメチル化状態を解析することによって該発現を測定する。
本方法の一実施態様では、遺伝子の異型接合性の消失を分析することによって遺伝子PITX2および/またはそのパネルの異常発現を検出してよい。第一段階では、患者の腫瘍の生体サンプルからゲノムDNAを単離する。次いで、単離されたDNAをLOHに関して分析する。この分析は技術上標準の任意の手段によって行う。該手段には、非限定的に遺伝子座または関連ミクロサテライトマーカーの増幅が含まれる。該増幅は技術上標準の任意の手段によって実行してよい。この技術には、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、鎖置換増幅法(SDA)および等温増幅法が含まれる。
次いで、技術上公知の任意の手段によって増幅産物のレベルを検出する。この技術には、非限定的にゲル電気泳動およびプローブによる検出(例えばリアルタイムPCR)が含まれる。さらにまた、前記検出を支援するために増幅産物を標識してよい。適切な検出可能なラベルには、非限定的に蛍光ラベル、放射性ラベルおよび質量ラベルが含まれ、その適切な使用法は本明細書中に記載される。
異型接合性コントロールサンプルの増幅産物の量と比較して、試験サンプル中の増幅対象の対立遺伝子の1つに対応する増幅産物の量の減少を検出することがLOHの指標である。
乳癌再発の検出系においてPITX2および/または該遺伝子を含むパネルをエンコードするmRNAのレベルを検出するために、患者からサンプルを取得する。該サンプルの取得とは、好ましくは、生体組織検査の実施等のサンプルの回収を意図しない。というよりは、目的の用途に関連する特定組織を代表する単離された生物学的材料の利用可能性を対象にする。サンプルは、外科手術によって取り出された腫瘍由来の腫瘍組織サンプル、外科医によって採取され、分析者に提供された生体組織検査サンプルまたは血液、血漿、血清等のサンプルであってよい。サンプルを処理して、それに含有される核酸を抽出してよい。サンプルから取得された核酸をゲル電気泳動または他の分離技術に付する。検出段階は、サンプルの核酸および特にmRNAを、プローブとして働くDNA配列と接触させて、ハイブリッド二重鎖を形成させることを含む。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション中および洗浄手順中のいくつかの要因によって決定される。その要因には、温度、イオン強度、時間の長さおよびホルムアミドの濃度が含まれる。これらの要因は、例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., 1989)に概説されている。形成された二重鎖の検出は、通常、標識されたプローブの使用によって達成される。別法では、プローブを標識しなくてよく、とはいえこのプローブは、直接または間接的に、標識されたリガンドと特異的に結合することによって検出可能であろう。プローブおよびリガンドを標識するのに適切なラベルおよび方法は技術上公知であり、例えば、既知の方法(例えばニックトランスレーションまたはキナーゼ処理(kinasing))によって組み込んでよい放射性ラベル、ビオチン、蛍光基、化学発光基(例えばジオキセタン、特に誘発型ジオキセタン(triggered dioxetanes))、酵素、抗体、等が含まれる。
PITX2および/または該遺伝子を含むパネルをエンコードするmRNAについてのサンプル中での検出感度を高めるために、逆転写/重合連鎖反応の技術を使用して、PITX2および/または該遺伝子を含むパネルをエンコードするmRNAから転写されたcDNAを増幅することができる。逆転写/PCR法は技術上周知である(例えば、上記のWatson and Flemingを参照のこと)。
逆転写/PCR法は下記のように実施することができる。例えば標準のイソチオシアン酸グアニジウム法(guanidium isothiocyanate method)によってトータル細胞RNAを単離し、このトータルRNAを逆転写する。逆転写法は、逆転写酵素および3'末端プライマーを使用して鋳型RNAに沿ってDNAを合成することを含む。典型的に、前記プライマーはオリゴ(dT)配列を含有する。次いで、PCR法およびPITX2および/または該遺伝子を含むパネル特異的プライマーを使用して、前記のように生産されたcDNAを増幅する。(Belyavsky et al, Nucl Acid Res 17:2919-2932, 1989; Krug and Berger, Methods in Enzymology, Academic Press,N.Y., Vol.152, pp. 316-325, 1987(これらの文献は参照により包含される))
また、特定の実施態様では、生体サンプルの検査を通じて、補助内分泌単独療法状態を伴うか、あるいは伴わない、外科的腫瘍除去前またはその後の乳癌患者の再発および/または生存の可能性を予測することに関して使用するためのキットとして、本発明を説明してもよい。代表的なキットは、PITX2 mRNAおよび/または該PITX2遺伝子を含むパネルの遺伝子由来のmRNAに選択的にハイブリダイズする1種またはそれ以上の上記核酸セグメント、および1種またはそれ以上の各核酸セグメント用の容器を含んでよい。特定の実施態様では、核酸セグメントを単一チューブ中で組み合わせてよい。別の実施態様では、核酸セグメントは標的mRNA増幅用のプライマーペアを含んでもよい。このようなキットには、任意のバッファー、溶液、溶媒、酵素、ヌクレオチド、またはハイブリダイゼーション、増幅または検出反応用の他のコンポーネントを含ませてもよい。好ましいキットコンポーネントには、逆転写−PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、ノーザン分析および/またはRPA用の試薬が含まれる。
さらに本発明は、患者から取得されたサンプル中の、PITX2および/または該タンパク質を含むパネルのポリペプチド(群)の存在を検出する方法を提供する。該配列は図107に記載の配列と本質的に同一であることが好ましい。技術上公知の任意のタンパク質検出方法を使用することができる。このような方法には、非限定的に免疫拡散法、免疫電気泳動法、免疫化学的方法、バインダー−リガンドアッセイ、免疫組織化学的技術、凝集および補体アッセイが含まれる。(例えばBasic and Clinical Immunology, Sites and Terr, eds., Appleton and Lange, Norwalk, Conn. pp 217-262, 1991(この文献は参照により包含される)を参照のこと)。バインダー−リガンド免疫測定法が好ましい。この方法は、PITX2および/またはそのパネルのエピトープまたはエピトープ群と抗体を反応させ、標識されたPITX2タンパク質および/またはそのパネルまたはその誘導体を競合的に置換することを含む。
本発明の特定の実施態様は、遺伝子PITX2および/または該遺伝子を含むパネルによってエンコードされるポリペプチドに特異的な抗体の使用を含む。このような抗体は、好ましくは補助内分泌単独療法中の、乳癌患者の再発および/または生存の可能性の予後を提供するのに有用であろう。この予後の提供は、患者のPITX2マーカー発現および/またはPITX2を含むパネルの発現のレベルを、正常個体の同一マーカー(群)の発現と比較することによって行う。特定の実施態様では、PITX2および/またはパネルの他のポリペプチドを抗原(antigene)として使用して、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の生産を誘発することができる。その後、この抗体を使用して、補助内分泌単独療法中の乳癌患者についての再発の予後に関するマーカーとして、発現されたタンパク質を検出してよい。患者の末梢血中に存在する前記タンパク質のレベルは慣用の方法によって定量してよい。抗体−タンパク質結合は、技術上公知の種々の手段、例えば蛍光性または放射性リガンドでの標識化によって検出および定量してよい。本発明は、前述の手順を実施するためのキットをさらに含む。この場合、該キットはPITX2および/またはそのパネルのポリペプチドに特異的な抗体を含有する。
多数の競合的および非競合的タンパク質結合免疫測定法が技術上周知である。このようなアッセイで使用される抗体は、例えば凝集検査で使用される抗体のように無標識であってよく、あるいは多種多様な検定法を使用するために標識してもよい。使用可能なラベルには、放射性核種、酵素、蛍光物質(fluorescers)、化学発光物質(chemiluminescers)、酵素基質または補助因子、酵素阻害剤、粒子、色素等が含まれる。これらのラベルは、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、蛍光免疫測定法等で使用するためのものである。免疫測定で使用するためのPITX2および/またはそのパネルまたはそのエピトープに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体は、技術上公知のいくつかの方法のいずれかによって作成することができる。タンパク質に対する抗体を調製する1アプローチでは、タンパク質の全体または部分のアミノ酸配列を選択および調製し、その配列を化学的に合成し、適切な動物、通常はウサギまたはマウス内にそれを注入する(Milstein and Kohler Nature 256:495-497, 1975; Gulfre and Milstein, Methods in Enzymology: Immunochemical Techniques 73:1-46, Langone and Banatis eds., Academic Press, 1981(これらの文献は参照により包含される))。PITX2および/またはそのパネルまたはそのエピトープの調製方法には、非限定的に化学合成、組換えDNA技術または生体サンプルからの単離が含まれる。
一側面では、本発明は、補助内分泌単独療法中の乳癌患者についての再発または生存の可能性を予測するために使用することができる最初の単一マーカーである点において、最新技術を超える顕著な改良を提供する。
最も好ましい本発明の実施態様では、メチル化解析によって発現の解析を実行する。配列番号1130、およびその相補配列、に記載のゲノム配列内のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を解析することがさらに好ましい。配列番号1130は遺伝子PITX2およびそのプロモーターおよびその調節エレメントを開示し、この場合、該断片は、予後を示し、ならびに/あるいは内分泌治療特異的メチル化パターンの転帰の予測を提供するCpGジヌクレオチドを含む。配列番号1130の下記セクション内のCpG位置のメチル化状態を解析することがさらに好ましい:ヌクレオチド2,700〜ヌクレオチド3,000;ヌクレオチド3,900〜ヌクレオチド4,200;ヌクレオチド5,500〜ヌクレオチド8,000;ヌクレオチド13,500〜ヌクレオチド14,500;ヌクレオチド16,500〜ヌクレオチド18,000;ヌクレオチド18,500〜ヌクレオチド19,000;ヌクレオチド21,000〜ヌクレオチド22,500。また、配列番号23に記載の遺伝子PITX2の部分配列を分析することが好ましい。
本方法が、遺伝子および/またはその調節またはプロモーター領域および、ABCA8、CDK6、ERBB2、ONECUT2、PLAU、TBC1D3およびTFF1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子を含む「遺伝子パネル」の発現を解析することを含む場合、メチル化解析によって該発現の解析を実行することが特に好ましい。下記からなる遺伝子パネルの群から選択される遺伝子パネルのCpGメチル化を解析することが特に好ましい:
PITX2、PLAUおよびTFF1
PITX2およびPLAU
PITX2およびTFF1。
内分泌治療を用いる患者の処置の転帰を予測するには、PITX2およびTFF1からなる遺伝子パネルのメチル化を測定することが特に好ましい。また、患者の予後を提供するには、PITX2およびPLAUからなる遺伝子パネルのメチル化を測定することが特に好ましい。いかなる内分泌治療も受けないうちに該患者を分析することが好ましい。
PITX2および本明細書中の他の選択遺伝子および/またはその配列の高メチル化は、乳房細胞増殖性障害、最も好ましくは乳癌の不良な予後および/または内分泌治療の転帰に関連している。
従来、乳房細胞増殖性障害と診断される患者の予後またはその患者の内分泌治療の転帰の予測に関して、遺伝子PITX2およびそのプロモーターおよび調節エレメントのメチル化パターンが分析されたことはない。遺伝暗号の縮重の理由から、配列番号1130で特定される配列は、すべての実質的に同類および等価な配列を含むように解釈されるべきであろう。該同類および等価な配列は、PITX2によってエンコードされるポリペプチドの生物学的活性を有するポリペプチドをエンコードする遺伝子のプロモーター領域の上流に存在する。
最も好ましくは、下記方法を使用して、遺伝子PITX2および/またはその調節またはプロモーター領域内のメチル化を検出する。この場合、該メチル化核酸は過剰のバックグラウンドDNA中に存在し、バックグラウンドDNAは検出対象のDNAの100〜1000倍の濃度で存在する。
メチル化の解析方法は、対象者から取得される核酸サンプルを少なくとも1種の試薬または一連の試薬と接触させることを含み、この場合、該試薬または一連の試薬は、標的核酸内のメチル化および非メチル化CpGジヌクレオチドを識別する。
好ましくは、前記方法は下記段階を含む:第一段階では、分析対象である組織のサンプルを取得する。供給源は任意の適切な供給源であってよく、好ましくは、サンプルの供給源は、組織学的スライド、生体組織検査、パラフィン包埋組織、体液、血漿、血清、便、尿、血液、乳頭吸引液およびその組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、供給源は、腫瘍組織、生体組織検査、血清、尿、血液または乳頭吸引液である。最も好ましい供給源は、患者から外科手術によって取り出された腫瘍サンプルまたは該患者の生体組織検査サンプルである。
次いでサンプルからDNAを単離する。技術上標準の任意の手段によってゲノムDNAを単離してよい。この手段には、市販のキットの使用が含まれる。簡単には、目的のDNAが細胞膜中/内に封入されている場合、酵素的、化学的または機械的手段によって生体サンプルを破壊および溶解しなければならない。次いでDNA溶液からタンパク質および他の混入物を除去してよい。この作業は例えばプロテイナーゼKでの消化によって行う。次いで溶液からゲノムDNAを回収する。この作業は、種々の方法、例えば塩析、有機物抽出または固相支持体へのDNAの結合によって実行してよい。方法の選択は、いくつかの要因、例えば時間、費用および必要とされるDNA量によって影響を受ける。
次いで、ゲノムDNAサンプルを処理して、5'位置のメチル化されていないシトシン塩基をウラシル、チミン、またはハイブリダイゼーション挙動に関してシトシンと異なる別の塩基に変換する。この作業は本明細書中では「処理」または「前処理」として理解される。
上記ゲノムDNAの前処理は、好ましくはビサルファイト(亜硫酸水素(塩)、ジサルファイト)およびその後のアルカリ加水分解を用いて実行し、その結果、非メチル化シトシン核酸塩基がウラシルまたは、塩基対合挙動に関してシトシンと異なる別の塩基に変換される。分析対象のDNAをアガロースマトリックス中に封入して、DNAの拡散および再生を防止し(ビサルファイトは一本鎖DNAとしか反応しない)、ならびにすべての沈降および精製工程を高速透析で代用する方法(Olek A, et al.,「ビサルファイトベースのシトシンメチル化解析の修飾改良された方法(A modified and improved method for bisulfite based cytosine methylation analysis)」, Nucleic Acids Res. 24:5064-6, 1996)は、前記前処理の実施方法の好ましい一例である。ラジカルスカベンジャーまたはDNA変性剤の存在下でビサルファイト処理を実行することがさらに好ましい。
次いで、処理済みDNAを分析して、予後および/または内分泌治療の転帰に関連する(処理前の)遺伝子PITX2および/またはその調節領域のメチル化状態を決定する。本方法の別の実施態様では、遺伝子PITX2および/またはその調節領域のメチル化状態およびABCA8、CDK6、ERBB2、ONECUT2、PLAU、TBC1D3およびTFF1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子および/またはその調節またはプロモーター領域のメチル化状態を決定する。PITX2、PLAUおよびTFF1;PITX2およびPLAU;PITX2およびTFF1からなる遺伝子パネルの群から選択される遺伝子パネルのメチル化状態を決定することが特に好ましい。添付の配列表に記載の該遺伝子の配列(表3を参照のこと)を分析することがさらに好ましい。
本方法の第三段階では、前処理済みDNAの断片を増幅する。DNAの供給源が、血清由来の遊離DNA、またはパラフィンから抽出されるDNAである場合、増幅断片のサイズは100〜200塩基対長の範囲であることが特に好ましく、該DNA供給源が細胞性供給源(例えば組織、生体組織検査、セルライン)から抽出される場合、増幅産物は100〜350塩基対長の範囲であることが好ましい。該増幅産物は、少なくとも3個のCpGジヌクレオチドを含む少なくとも1個の20塩基対配列を含むことが特に好ましい。該増幅段階は、本発明のプライマーオリゴヌクレオチドセット、および好ましくは熱安定性ポリメラーゼを使用して実行する。1つの同一反応容器中で同時に複数のDNAセグメントの増幅を実行することができ、本方法の一実施態様では、好ましくは6種またはそれ以上の断片を同時に増幅する。典型的に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅を実行する。プライマーオリゴヌクレオチドセットは、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドであって、その配列が、それぞれ、配列番号250〜251、372〜373、配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351および配列番号1132〜配列番号1139の塩基配列およびその相補配列の少なくとも18塩基対長のセグメントに逆相補的、同一であるか、あるいはストリンジェントまたは高度にストリンジェントな条件下でそのセグメントにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。
本方法の好ましい実施態様では、配列番号1143〜配列番号1147からなる群からプライマーを選択してよい。
本方法の代替の実施態様では、メチル化特異的プライマーオリゴヌクレオチドを使用して、配列番号23、配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12、配列番号1130および配列番号1131を含む核酸配列内のあらかじめ選択されたCpG位置のメチル化状態を検出してよい。この技術(MSP)は、Hermanに付与された米国特許第6,265,171号に記載されている。ビサルファイト処理DNAの増幅にメチル化状態特異的プライマーを使用することによって、メチル化核酸と非メチル化核酸の識別が可能になる。MSPプライマーペアは、ビサルファイト処理CpGジヌクレオチドにハイブリダイズする少なくとも1種のプライマーを含有する。したがって、前記プライマーの配列は少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。非メチル化DNAに特異的なMSPプライマーはCpG中のC位置の3'位置に「T」を含有する。したがって、好ましくは、前記プライマーの塩基配列は、配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137、およびその相補配列、に記載の前処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも18ヌクレオチド長を有する配列を含むことが必要であり、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpG、tpGまたはCpaジヌクレオチドを含む。この本発明の方法の実施態様では、MSPプライマーは2〜4個の範囲のCpG、tpGまたはCpaジヌクレオチドを含むことが特に好ましい。該ジヌクレオチドはプライマーの3'側の半分以内に位置することがさらに好ましく、例えばプライマーが18塩基長である場合、指定のジヌクレオチドは分子の3'末端から最初の9塩基以内に位置することが好ましい。さらに好ましくは、該プライマーは、CpG、tpGまたはCpaジヌクレオチドに加えて、いくつかのビサルファイトによって変換される塩基(すなわちチミンに変換されるシトシン、またはハイブリダイズ鎖上の、アデノシンに変換されるグアニン)をさらに含むべきであろう。さらに好ましい実施態様では、2個までのシトシンまたはグアニン塩基しか含まないように該プライマーを設計する。
増幅によって取得される断片は、直接または間接的に検出可能なラベルを保持できる。蛍光ラベル、放射性核種、または質量分析計で検出可能な典型的質量を有する分離可能な分子断片の形式のラベルが好ましい。前記ラベルが質量ラベルである場合、標識された増幅産物が単一の正または負の正味電荷を有し、質量分析計で良好な検出能を提供することが好ましい。例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI)によって、あるいは電子スプレー質量分析(ESI)を使用して検出を実行し、可視化してよい。
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI−TOF)は生体分子の分析に非常に有効な開発技術である(Karas and Hillenkamp, Anal Chem., 60:2299-301, 1988)。検体を光吸収マトリックスに包埋する。このマトリックスを短いレーザーパルスによって蒸発させると、検体分子は切断されない状態で蒸気相内に運ばれる。検体はマトリックス分子との衝突によってイオン化される。電圧を加えてイオンを加速させ、無電界飛行管内へ送る。質量に差があるため、イオンは種々の速度で加速される。小さいイオンほど、大きいイオンよりも早く検出器に到達する。MALDI−TOFスペクトロメトリーは、ペプチドおよびタンパクの分析によく適している。核酸の分析の方がいくらか困難である(Gut and Beck, Current Innovations and Future Trends, 1:147-57, 1995)。核酸の分析に関する感度は、ペプチドの分析に関する感度の約1/100であり、断片サイズの増加に反比例して減少する。さらに、主鎖が多数の負電荷を伴う核酸の場合、マトリックスを経由するイオン化プロセスはかなり効率が低い。MALDI−TOFスペクトロメトリーでは、マトリックスの選択が極めて重要な役割を果たす。ペプチドの脱離の場合、非常に微細な結晶化を生じさせる非常に効果的なマトリックスがいくつか確認されている。現在、DNA応答マトリックスはいくつかあるが、ペプチドと核酸の感度差は減少していない。しかし、この感度差は、よりペプチドに類似するようになる様式でDNAを化学修飾することによって減少させることができる。例えば、主鎖の通常のリン酸基がチオリン酸基で置き換えられているホスホロチオアート核酸は、単純なアルキル化化学を使用して無電荷DNAに変換できる(Gut and Beck, Nucleic Acids Res. 23: 1367-73, 1995)。この修飾型DNAに荷電タグをカップリングすると、ペプチドに関して認められる感度と同一レベルまでMALDI−TOF感度が向上する。不純物は未修飾基質の検出をより一層困難にする。荷電タグ付加の別の利点は、不純物に対する分析の安定性が向上することである。
特に好ましい本方法の実施態様では、少なくとも1種のブロッカーオリゴヌクレオチドの存在下で段階3の増幅を実行する。このようなブロッカーオリゴヌクレオチドの使用は、Yu et al., BioTechniques 23:714-720, 1997に報告されている。ブロッキングオリゴヌクレオチドの使用によって、亜集団の核酸の増幅についての特異性を向上させることが可能になる。核酸にハイブリダイズしたブロッキングプローブは、ポリメラーゼ媒介性の該核酸の増幅を抑制、または妨害する。本方法の一実施態様では、バックグラウンドDNAにハイブリダイズするようにブロッキングオリゴヌクレオチドを設計する。本方法の別の実施態様では、メチル化されている核酸とは異なり、メチル化されていない核酸の増幅を妨害または抑制するか、あるいはその逆であるように該オリゴヌクレオチドを設計する。
ブロッキングプローブオリゴヌクレオチドは、PCRプライマーと同時にビサルファイト処理核酸にハイブリダイズさせる。核酸のPCR増幅はブロッキングプローブの5'位置で終結し、ブロッキングプローブに相補的な配列が存在する場所で核酸の増幅が抑制されるようになる。このプローブはメチル化状態特異的様式でビサルファイト処理核酸にハイブリダイズするように設計してよい。例えば、非メチル化核酸集団内のメチル化核酸の検出では、メチル化されていない核酸の増幅を問題の位置で抑制するプロセスは、「CpG」ではなく、問題の位置で「TpG」を含むブロッキングプローブを使用することによって実行される。本方法の一実施態様では、該ブロッキングオリゴヌクレオチドの配列は、好ましくは1個またはそれ以上のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む、配列番号250〜251、372〜373、1132、1133、1136および1137からなる群から選択される少なくとも18塩基対長の配列に相補的または同一である分子に同一または相補的であるべきであろう。本方法の一実施態様では、該オリゴヌクレオチドの配列は配列番号1148および配列番号1149およびその相補配列からなる群から選択される。
ブロッカーオリゴヌクレオチドを使用するPCR法では、ポリメラーゼ媒介性増幅の有効な中断のために、ブロッカーオリゴヌクレオチドが該ポリメラーゼによって伸長されないことが必要である。好ましくは、3'−デオキシオリゴヌクレオチド、または「遊離」ヒドロキシル基以外を用いて3'位置で誘導体化されているオリゴヌクレオチドであるブロッカーの使用によって前記必要性を達成する。例えば、3'−O−アセチルオリゴヌクレオチドは好ましいクラスのブロッカー分子の代表例である。
さらに、ブロッカーオリゴヌクレオチドのポリメラーゼ媒介性分解が排除されるべきであろう。好ましくは、このような排除には、5'−3'エキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼの使用、または、例えば5'末端にチオアート架橋を有するような修飾型ブロッカーオリゴヌクレオチドの使用が含まれる。このチオアート架橋はブロッカー分子をヌクレアーゼ耐性にする。特定の適用では、ブロッカーの前記5'修飾が必要とされないことがある。例えば、ブロッカー結合部位とプライマー結合部位が重複する場合、それによってプライマーの結合が排除され(例えば過剰のブロッカーを用いて)、ブロッカーオリゴヌクレオチドの分解は実質的に排除される。その理由は、ポリメラーゼがブロッカーに向けて、ならびにブロッカーを通過して(5'−3'方向で)プライマーを伸長しないからである。この伸長は、ハイブリダイズ済みブロッカーオリゴヌクレオチドの分解を通常生じさせるプロセスである。
本発明の目的のために本明細書中で実現される特に好ましいブロッカー/PCRの実施態様では、ブロッキングオリゴヌクレオチドとしてペプチド核酸(PNA)オリゴマーの使用を含む。このようなPNAブロッカーオリゴマーは理想的に適している。その理由は、それらがポリメラーゼによって分解も伸長もされないからである。
本方法の一実施態様では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの結合部位は、プライマーの結合部位と同一であるか、あるいはそれと重複し、それによってプライマーがその結合部位にハイブリダイズすることが妨害される。さらに好ましい本方法の実施態様では、2種またはそれ以上のこのようなブロッキングオリゴヌクレオチドを使用する。特に好ましい実施態様では、一方のブロッキングオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションがフォワードプライマーのハイブリダイゼーションを妨害し、もう一方のプローブ(ブロッカー)オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、該フォワードプライマーの増幅産物に結合するリバースプライマーのハイブリダイゼーションを妨害する。
本方法の代替の実施態様では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、処理済みバックグラウンドDNAのリバースプライマー位置とフォワードプライマー位置の間の位置にハイブリダイズし、それによってプライマーオリゴヌクレオチドの伸長を妨害する。
ブロッキングオリゴヌクレオチドはプライマーの少なくとも5倍の濃度で存在することが特に好ましい。
本方法の第四段階では、本方法の第三段階で取得される増幅産物を分析して、処理前のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を確認する。
MSP増幅および/またはブロッキングオリゴヌクレオチドを用いて増幅産物を取得する実施態様では、増幅産物の有無自体が、プライマーおよびまたはブロッキングオリゴヌクレオチドによってカバーされるCpG位置のメチル化状態を示し、これはプライマーおよびまたはブロッキングオリゴヌクレオチドの塩基配列に基づく。この検出には、利用可能なすべての既知の分子生物学的方法を使用してよい。この方法には、非限定的にゲル電気泳動、シークエンシング、液体クロマトグラフィー、ハイブリダイゼーション、リアルタイムPCR解析またはその組み合わせが含まれる。さらに本方法のこの段階は先行する段階の定性的コントロールとして働く。
本方法の第四段階では、標準およびメチル化特異的PCRの両手段によって取得された増幅産物をさらに分析して、本方法の第一段階で単離されたゲノムDNAのCpGメチル化状態を決定する。ハイブリダイゼーションベースの方法、例えば、非限定的に、アレイ技術およびプローブベースの技術を用いて、ならびにシークエンシングおよび鋳型特異的伸長のような技術を用いて、この作業を実行してよい。
本方法の一実施態様では、段階3で合成された増幅産物を、その後、オリゴヌクレオチドおよび/またはPNAプローブのアレイまたはセットにハイブリダイズさせる。これに関連して、ハイブリダイゼーションは下記様式で行われる:ハイブリダイゼーション中に使用されるプローブセットは、好ましくは、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドまたはPNAオリゴマーから構成される;その過程で、増幅産物は、あらかじめ固相に結合されているオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするプローブとして働く;その後、未ハイブリダイズ断片を除去する;前記オリゴヌクレオチドは、配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137で指定される塩基配列のセグメントと逆相補的または同一である少なくとも9ヌクレオチド長を有する少なくとも1個の塩基配列を含有し、該セグメントは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。別の実施態様では、前記オリゴヌクレオチドは、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351で指定される塩基配列のセグメントと逆相補的または同一である少なくとも9ヌクレオチド長を有する少なくとも1個の塩基配列を含有し;ならびに該セグメントは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。
好ましい実施態様では、前記ジヌクレオチドは、オリゴマーを三等分した中央部分に存在する。例えば、オリゴマーが1個のCpGジヌクレオチドを含む場合、該ジヌクレオチドは13量体の5'末端から5〜9番目のヌクレオチドであるのが好ましい。別の実施態様では、配列番号23および1130に記載の配列内の各CpGジヌクレオチドの分析、および配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137内の等価な位置の分析用に1オリゴヌクレオチドが存在する。配列番号23、配列番号1130、1131、および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12に記載の配列内の各CpGジヌクレオチドの分析、および配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139、および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351内の等価な位置の分析用に1オリゴヌクレオチドが存在する。前記オリゴヌクレオチドはペプチド核酸の形式で存在してもよい。次いで、未ハイブリダイズ増幅産物を除去する。ハイブリダイズ済み増幅産物を検出する。これに関連して、増幅産物に結合しているラベルは、オリゴヌクレオチド配列が配置されている固相の各位置で同定可能であることが好ましい。
さらに別の本方法の実施態様では、ゲノムのCpG位置のメチル化状態は、PCR増幅プライマーと同時にビサルファイト処理DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用いて確認してもよい(この場合、該プライマーはメチル化特異的または標準のプライマーであってよい)。
本方法の特に好ましい実施態様では、蛍光ベースのリアルタイム定量的PCRを使用する(Heid et al., Genome Res. 6:986-994, 1996;さらに米国特許第6,331,393号を参照のこと)。本方法の利用について好ましい実施態様が2つ存在する。TaqManTMアッセイとして知られる一実施態様では、二重標識蛍光オリゴヌクレオチドプローブを使用する。TaqManTM PCR反応は、TaqManTMプローブと称される非伸長性のインターロゲート用オリゴヌクレオチドの使用を採用し、該プローブは、フォワードおよびリバース増幅プライマー間に位置するCpGリッチ配列にハイブリダイズするように設計されている。TaqManTMプローブは蛍光「レポーター部分」および「クエンチャー部分」をさらに含み、これはTaqManTMオリゴヌクレオチドのヌクレオチドに結合しているリンカー部分(例えばホスホルアミダイト)に共有結合している。ハイブリダイズ済みプローブは増幅反応のポリメラーゼによって取り除かれて分解され、それによって蛍光の増加が生じる。ビサルファイト処理後に核酸内のメチル化を解析するためには、このプローブがメチル化特異的であることが必要である。これは米国特許第6,331,393号(この文献は参照によりその全体が本明細書に包含される)に記載される通りである。この方法はMethyLightアッセイとしても知られる。このMethyLight技術の好ましい第二の実施態様では、二重プローブ技術(Lightcycler(登録商標))を使用し、この場合、各プローブはドナーまたはレシピエント蛍光部分を保持し、2種のプローブが互いに近接してハイブリダイズしたことが増加によって示される。あるいは蛍光増幅プライマーを使用する。これらの両技術は、ビサルファイト処理DNAとともに使用するのに、さらにはCpGジヌクレオチド内のメチル化解析に適するように改良してよい。
また、前記プローブの任意の組み合わせまたは前記プローブと他の既知のプローブの組み合わせを使用してよい。
本方法のさらに好ましい実施態様では、本方法の第四段階は、Gonzalgo and Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997に記載のMS−SNuPEのような鋳型特異的オリゴヌクレオチド伸長の使用を含む。該実施態様では、メチル化特異的単一ヌクレオチド伸長プライマー(MS−SNuPEプライマー)は、配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137の群から選択される1つまたはそれ以上の配列の、長さが少なくとも9ヌクレオチドで、好ましくは25ヌクレオチドを超えない配列と同一または相補的であることが好ましい。ただし、放射性標識ヌクレオチドの代わりに蛍光標識ヌクレオチドを使用することが好ましい。
本方法のさらに別の実施態様では、本方法の第四段階は、本方法の第三段階で生成した増幅産物のシークエンシングおよびその後の配列解析を含む(Sanger F., et al., Proc Natl Acad Sci USA 74:5463-5467, 1977)。
メチル化解析方法の最も好ましい実施態様では、上に概説される方法の最初の3段階にしたがって、ゲノム核酸を単離し、処理する。最初の3段階とは、すなわち:
a)対象ゲノムDNAを有する生体サンプルを対象者から取得する段階;
b)ゲノムDNAを抽出または別の様式で単離する段階;
c)段階b)のゲノムDNA、またはその断片、を1種またはそれ以上の試薬で処理して、5位置でメチル化されていないシトシン塩基をウラシルまたは、ハイブリダイゼーション特性に関して検出可能な程度にシトシンと異なる別の塩基に変換する段階であり、ならびにこの場合、
d)段階c)での処理後に、メチル化特異的様式で、すなわちメチル化特異的プライマーまたはブロッキングオリゴヌクレオチドを使用して増幅を実行し、さらにこの場合、
e)上記の通りリアルタイム検出プローブを用いて増幅産物の検出を実行する。
好ましくは、上記のようにメチル化特異的プライマーを用いて、後の段階d)の増幅を実行する場合、該メチル化特異的プライマーは、配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137、およびその相補配列、の1つに記載の処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpGジヌクレオチドを含む。さらに、別のメチル化特異的プライマーを使用して上記遺伝子パネルを分析してもよい。この場合、該プライマーは、配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351および配列番号1134、1135、1138および1139、およびその相補配列、の1つに記載の処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpGジヌクレオチドを含む。
代替の最も好ましい本方法の実施態様では、上記のようにブロッキングオリゴヌクレオチドの存在下で後の段階d)の増幅を実行する。特に好ましくは、該ブロッキングオリゴヌクレオチドは、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132、1133、1136および1137、およびその相補配列、の1つに記載の処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、この場合、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。
さらに、別のブロッキングオリゴヌクレオチドを使用して上記遺伝子パネルを分析してもよい。この場合、該ブロッキングオリゴヌクレオチドは、配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351および配列番号1134、1135、1138および1139、およびその相補配列、の1つに記載の処理済み核酸配列にハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する配列を含み、該オリゴマーの塩基配列は少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。
本方法の段階e)、すなわち配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139、および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351、最も好ましくは配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137に記載の1個またはそれ以上のCpG位置のメチル化状態を示す特定増幅産物の検出は、上記リアルタイム検出方法を用いて実行する。
本発明の追加実施態様では、前処理を必要としない、遺伝子PITX2および/またはその調節領域のメチル化状態の解析方法を提供する。さらにまた該方法を使用して、遺伝子PITX2および/またはその調節領域のメチル化解析を行ってもよく、ABCA8、CDK6、ERBB2、ONECUT2、PLAU、TBC1D3、TFF1からなる群から選択される1種またはそれ以上の遺伝子および/またはその調節またはプロモーター領域のメチル化状態を決定してもよい。PITX2、PLAUおよびTFF1;PITX2およびPLAU;PITX2およびTFF1からなる遺伝子パネルの群から選択される遺伝子パネルのメチル化状態を決定することが特に好ましい。
前記追加実施態様の第一段階では、組織または細胞性供給源からゲノムDNAサンプルを単離する。好ましくは、前記供給源には、セルライン、組織学的スライド、生検組織、体液、またはパラフィンに包埋された乳房腫瘍組織が含まれる。抽出は当業者に標準的な手段によって行ってよい。この手段には、非限定的に、界面活性剤ライセート、超音波処理およびガラスビーズを用いるボルテックス処理の使用が含まれる。核酸を抽出した後、二本鎖ゲノムDNAを分析に使用する。
好ましい実施態様では、処理前にDNAを切断してよい。この切断は、最新技術において標準的な任意の手段によって行ってよいが、好ましくはメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを用いて行う。
次いで第二段階では、1種またはそれ以上のメチル化感受性制限酵素でDNAを消化する。消化を実行すると、制限部位でDNAが加水分解されることによって特定CpGジヌクレオチドのメチル化状態が検知される。
任意であるが好ましい実施態様である第三段階では、制限断片を増幅する。この増幅はポリメラーゼ連鎖反応を使用して実行するのが好ましく、該増幅産物は、上記考察のように検出可能な適切なラベル、すなわちフルオロフォアラベル、放射性核種および質量ラベルを保持してよい。
第四段階では、増幅産物を検出する。検出は、技術上標準の任意の手段、例えば、非限定的に、ゲル電気泳動分析、ハイブリダイゼーション分析、PCR産物内への検出可能タグの組み込み、DNAアレイ分析、MALDIまたはESI分析によって行ってよい。
本方法の最終段階では、予後および/または内分泌治療の転帰の予測を決定する。好ましくは、遺伝子の発現レベルと予後および/または内分泌治療の転帰の予測の関連付けは実質的に人為的介入なしで行う。異常レベルのmRNAおよび/またはタンパク質、および高メチル化によって、不良な予後および/または内分泌治療の転帰の予測を決定する。該高メチル化は、前記特定の設定において前記疾患の平均を超えるか、あるいは中央値を超えるメチル化であることが特に好ましい。
アルゴリズム的方法によってサンプルの分類を実行することが特に好ましい。
一実施態様では、既知の状態を有するサンプルの調査対象CpG部位でのメチル化パターンに関して機械学習予測装置(machine learning predictors)を訓練する。機械学習予測装置が判別可能なCpG位置を選択し、パネルにおいて使用する。本方法の特に好ましい実施態様では、両方法を組み合わせる;すなわち、統計解析にしたがってクラス間でメチル化の有意差を示す選択CpG位置に関してのみ、機械学習分類装置を訓練する。
パネル内のCpG位置のメチル化状態に基づいてサンプルを分類するためのアルゴリズム的方法の開発については実施例で実証する。
開示されている発明は、ゲノムの配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12由来の処理済み核酸を提供し、この場合、該処理は、ゲノムDNA配列の少なくとも1個の非メチル化シトシン塩基をウラシルまたは、ハイブリダイゼーションに関して検出可能な程度にシトシンと異なる別の塩基に変換するのに適切な処理である。問題のゲノム配列は、1個、またはそれ以上、連続またはランダムのメチル化CpG位置を含んでよい。該処理は、好ましくは、ビサルファイト、亜硫酸水素(塩)、ジサルファイト、およびその組み合わせからなる群から選択される試薬の使用を含む。本発明の好ましい実施態様では、その目的は、天然に存在しない修飾型核酸の分析を含み、この場合、該核酸は、配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12からなる群から選択される配列の少なくとも16個の連続ヌクレオチド塩基の長さの配列を含み、該配列は少なくとも1個のCpG、TpAまたはCpAジヌクレオチドおよびその相補配列を含む。配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351の配列は、配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12に記載の核酸の天然に存在しない修飾型を提供し、この場合、各ゲノム配列の修飾によって、該ゲノム配列と異なる固有の配列を有する核酸が合成される。これは下記の通りである。各センス鎖ゲノムDNA、例えば配列番号23に関して、4種の変換型が開示される。「C」が「T」になるが、「CpG」が「CpG」のままである第一の変換型(すなわち、ゲノム配列に関して、CpGジヌクレオチド配列のすべての「C」残基がメチル化されていて、ゆえに変換されない事例に相当する);第二の変換型では、開示ゲノムDNA配列の相補物(すなわちアンチセンス鎖)が開示され、この場合、「C」は「T」になるが、「CpG」は「CpG」のままである(すなわち、CpGジヌクレオチド配列のすべての「C」残基に関してメチル化されていて、ゆえに変換されない事例に相当する)。配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12の「上方メチル化型(upmethylated)」変換配列は、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351に対応する。「CpG」ジヌクレオチド配列の「C」残基を含むすべての「C」残基に関して「C」が「T」になる、各ゲノム配列の第三の化学変換型(すなわち、ゲノム配列に関して、CpGジヌクレオチド配列のすべての「C」残基がメチル化されていない事例に相当する)が提供され;各配列の最後の化学変換型では、開示ゲノムDNA配列の相補物(すなわちアンチセンス鎖)が開示され、この場合、「CpG」ジヌクレオチド配列の「C」残基を含むすべての「C」残基に関して「C」は「T」になる(すなわち、各ゲノム配列の相補物(アンチセンス鎖)に関して、CpGジヌクレオチド配列のすべての「C」残基がメチル化されていない事例に相当する)。配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12の「下方メチル化型(downmethylated)」変換配列は、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351に対応する。
さらに本発明は、配列番号23、配列番号1130〜配列番号1139および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12に記載のゲノムまたは前処理済みDNA内のシトシンのメチル化状態を検出するためのオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーを開示する。該オリゴヌクレオチドまたはオリゴマーは、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351、および/またはその相補配列、に記載の処理済み核酸配列に、あるいは配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12、および/またはその相補配列、に記載のゲノム配列に、中程度にストリンジェントまたはストリンジェントな条件(上記本明細書中で規定)下でハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長を有する核酸配列を含む。
ゆえに本発明は、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351の配列のすべてまたは部分に、あるいはその相補物に、中程度にストリンジェントおよび/またはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸分子(例えばオリゴヌクレオチドおよびペプチド核酸(PNA)分子(PNAオリゴマー))を含む。ハイブリダイゼーション用核酸のハイブリダイゼーション用部分は、典型的に、少なくとも9、15、20、25、30または35ヌクレオチド長である。しかし、さらに長い分子も発明上の有用性を有し、ゆえに本発明の範囲内である。
好ましくは、本発明のハイブリダイゼーション用核酸のハイブリダイゼーション用部分は、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351の配列と、あるいはその部分と、あるいはその相補物と、少なくとも95%、または少なくとも98%、または100%同一である。
本明細書中に記載の種類のハイブリダイゼーション用核酸は、例えばプライマー(例えばPCRプライマー)、または診断および/または予後用プローブまたはプライマーとして使用することができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブと核酸サンプルのハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で実施され、そのプローブは標的配列と100%同一である。核酸二重鎖またはハイブリッドの安定性は融解温度またはTmとして表される。これはプローブが標的DNAから解離する温度である。この融解温度を使用して、ストリンジェンシーについての必要条件を規定する。
同一ではなくて、配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12の対応する配列に関連し、それと実質的に同一の標的配列(例えば対立遺伝子多型(allelic variants)およびSNP)では、特定の塩(例えばSSCまたはSSPE)濃度で相同的ハイブリダイゼーションしか生じない最低温度を最初に確立することが有用である。次いで、1%のミスマッチによってTmが1℃低下すると仮定し、それに応じてハイブリダイゼーション反応の最終洗浄の温度を下げる(例えば、プローブと>95%同一性を有する配列を得ようとする場合、最終洗浄温度を5℃下げる)。実際には、Tmの変化は1%ミスマッチ当たり0.5℃〜1.5℃の範囲であってよい。
例えば配列番号23に関するポリヌクレオチドの位置によって示せば、本発明の長さX(ヌクレオチド単位)のオリゴヌクレオチドの例には、長さXの連続して重複するオリゴヌクレオチドのセット(センスおよびアンチセンスセット)に対応するオリゴヌクレオチドが含まれ、この場合、(既定のX値に対応する)各連続重複セット内のオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド位置:n〜(n+(X−1))からオリゴヌクレオチドZ個の有限なセットとして規定され;
この場合、n=1、2、3、...(Y−(X−1))であり;
この場合、Yは配列番号23の長さ(ヌクレオチドまたは塩基対)(9001)に等しく;
この場合、Xはセット中の各オリゴヌクレオチドの共通の長さ(ヌクレオチド単位)に等しく(例えば、連続して重複する20量体のセットではX=20);ならびに
この場合、長さYの既定の配列番号に関する長さXの連続重複オリゴマー数(Z)はY−(X−1)に等しい。例えば、配列番号23のセンスまたはアンチセンスセットでは、Z=9001−19=8,982であり、この場合、X=20である。
好ましいセットは、少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む上記オリゴマーに限定されているセットである。
本発明の20量体オリゴヌクレオチドの例には、下記オリゴマーセット(およびそれに相補的なアンチセンスセット)が含まれ、これは、配列番号23に関するポリヌクレオチド位置:1〜20、2〜21、3〜22、4〜23、5〜24、......および8,982〜9,001によって示される。
好ましいセットは、少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む上記オリゴマーに限定されているセットである。
同様に、本発明の25量体オリゴヌクレオチドの例には、下記オリゴマーセット(およびそれに相補的なアンチセンスセット)が含まれ、これは、配列番号23に関するポリヌクレオチド位置:1〜25、2〜26、3〜27、4〜28、5〜29、............および8,977〜9,001によって示される。
好ましいセットは、少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む上記オリゴマーに限定されているセットである。
本発明は、配列番号23、−250〜251、372〜373、配列番号1130〜および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12(センスおよびアンチセンス)のそれぞれに関して、長さXのオリゴヌクレオチドまたは修飾型オリゴヌクレオチドの複数(多数)の連続重複セットを包含し、この場合、例えばX=9、10、17、20、22、23、25、27、30または35ヌクレオチドである。
本発明のオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーは、配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12に対応するゲノム配列の遺伝的および後成的パラメータを確認するのに有用な効果的ツールを構成する。長さXの前記オリゴヌクレオチドまたは修飾型オリゴヌクレオチドの好ましいセットは、配列番号23、250〜251、372〜373、配列番号1130および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12に(ならびにその相補物に)対応するオリゴマーの上記連続重複セットである。好ましくは、該オリゴマーは少なくとも1個のCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドを含む。
特に好ましい本発明のオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーは、CpGジヌクレオチド(または対応する変換型TpGまたはCpAジヌクレオチド)配列のシトシンがオリゴヌクレオチドを三等分した中央部分内に存在し;すなわち、例えばオリゴヌクレオチドが13塩基長である場合、CpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドが5'末端から5〜9番目のヌクレオチド内に位置する、オリゴヌクレオチドまたはオリゴマーである。
また、本発明のオリゴヌクレオチドは、それを1つまたはそれ以上の部分またはコンジュゲートに化学的に連結することによって修飾して、該オリゴヌクレオチドの活性、安定性または検出性を向上させることができる。このような部分またはコンジュゲートには、発色団、フルオロフォア、脂質、例えばコレステロール、コール酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、および、例えば米国特許第5,514,758号、第5,574,142号、第5,585,481号、第5,587,371号、第5,597,696号および第5,958,773号に開示されている他の部分またはコンジュゲートが含まれる。前記プローブは、特に好ましい対合特性を有するPNA(ペプチド核酸)の形式で存在してもよい。ゆえに、本オリゴヌクレオチドは他の付加基、例えばペプチドを含んでよく、ハイブリダイゼーション誘発型切断剤(Krol et al., BioTechniques 6:958-976, 1988)またはインターカレート剤(Zon, Pharm. Res. 5:539-549, 1988)を含んでよい。この目的で、本オリゴヌクレオチドを別の分子、例えば発色団、フルオロフォア(fluorophor)、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発型架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発型切断剤、等にコンジュゲートしてよい。
本オリゴヌクレオチドは、少なくとも1個の技術上公認の修飾型糖および/または塩基部分を含んでもよく、あるいは修飾型主鎖または非天然のヌクレオシド間結合を含んでよい。
本発明の特定の実施態様のオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーは、典型的に、ゲノム配列、配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12およびその相補配列の各CpGジヌクレオチドを分析するための少なくとも1種のオリゴマー、または配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351、およびその相補配列、に記載の処理済み核酸の配列内の対応するCpG、TpGまたはCpAジヌクレオチドに対する少なくとも1種のオリゴマーを含有する「セット」として使用する。しかし、経済的または他の要因のために、該配列内の限定された選択CpGジヌクレオチドを分析することが好ましいことがあり、それに応じてオリゴヌクレオチドセットの内容を変更することが想定される。
したがって、特定の実施態様では、本発明は、処理済みゲノムDNA(配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351)の、あるいはゲノムDNA(配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12およびその相補配列)中のシトシンのメチル化状態を検出するのに有用な少なくとも2種の(オリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマー)のセットを提供する。これらのプローブは、肺細胞増殖性障害の診断、および/またはその障害の遺伝的および後成的パラメータの分類を可能にする。このオリゴマーセットを使用して、処理済みゲノムDNA(配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351)またはゲノムDNA(配列番号23、配列番号1130、配列番号1131および配列番号49、配列番号46、配列番号5、配列番号35、配列番号16、配列番号43、配列番号12およびその相補配列)中の一塩基多型(SNP)を検出してもよい。
好ましい実施態様では、オリゴヌクレオチドセットの少なくとも1種、より好ましくは全メンバーを固相に結合する。
別の実施態様では、本発明は、配列番号250〜251、372〜373、配列番号1132〜配列番号1139および配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351およびその相補配列、またはそのセグメントの1つのDNA配列を増幅するための「プライマー」オリゴヌクレオチドとして使用される少なくとも2種のオリゴヌクレオチドのセットを提供する。
本オリゴヌクレオチドは「アレイ」または「DNAチップ」(すなわち、固相に結合している種々のオリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマーの配置物)の全体または部分を構成してよいことが想定される。種々のオリゴヌクレオチドおよび/またはPNAオリゴマー配列のこのようなアレイは、例えば長方形または六角形の格子状に固相上に配置されていることを特徴としてよい。固相表面は、ケイ素、ガラス、ポリスチレン、アルミニウム、鋼、鉄、銅、ニッケル、銀、または金から構成されていてよい。ペレット状または樹脂マトリックスとしても存在できるニトロセルロースならびにプラスチック、例えばナイロンを使用してもよい。オリゴマーアレイの製造に関する先行技術の概要については、Nature Genetics特集号(Nature Genetics Supplement, Volume 21, January 1999およびその引用文献)から情報を得ることができる。固定DNAアレイのスキャニングには、蛍光標識プローブが使用されることが多い。蛍光ラベルに特に適しているのは、特定プローブの5'−OHにCy3およびCy5色素を単に結合させたものである。ハイブリダイズ済みプローブの蛍光の検出は、例えば共焦点顕微鏡によって実行してよい。Cy3およびCy5色素は多数の別の色素とともに市販されている。
また、本オリゴヌクレオチド、またはその特定配列、は「仮想アレイ(virtual array)」の全体または部分を構成してよいことが想定される。この場合、例えば、多様な固有標識プローブ集団の部分としての、あるいはその集団との組み合わせでの「指定子(specifiers)」として、本オリゴヌクレオチド、またはその特定配列、を使用して、複合混合物の検体を分析する。このような方法は、例えばUS2003/0013091(米国第09/898,743号、16 January 2003発行)に記載されている。このような方法では、必要なラベルを創出して、複合混合物中の各核酸(すなわち各検体)が固有のラベルによって一義的に拘束されて、ゆえに検出できるようにする(各ラベルを直接カウントすることによって、混合物中の各分子種が数値で読み出される)。
さらに上記発明は、乳癌患者の予後および/またはその患者の内分泌治療の転帰の予測を提供するのに有用な組成物(composition of matter)を提供する。該組成物は、配列番号250〜251、372〜373、1132、1133、1136および1137に開示される核酸配列のセグメントである18塩基対長の少なくとも1種の核酸、および下記物質を含む群から選択される1種またはそれ以上の物質を含む:塩化マグネシウム、dNTP、taqポリメラーゼ、ウシ血清アルブミン、オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドまたはペプチド核酸(PNA)オリゴマー、該オリゴマーは、各事例で、配列番号250〜251、372〜373および配列番号1132、1133、1136および1137、およびその相補配列、の1つに記載の前処理済みゲノムDNAに相補的であるか、あるいは中程度にストリンジェントまたはストリンジェントな条件下で該前処理済みゲノムDNAにハイブリダイズする、少なくとも9ヌクレオチド長を有する少なくとも1個の塩基配列を含む。該組成物は、水性溶液中での該核酸の安定化に適切で、該溶液内のポリメラーゼベースの反応を可能にする緩衝液を含むことが好ましい。適切なバッファーは技術上公知であり、市販されている。
さらに本発明の追加の側面は、例えば下記物質を含むようなキットである:ビサルファイト含有試薬ならびに少なくとも1種のオリゴヌクレオチドであって、その配列が、各事例で、配列番号250〜251、372〜373、1132、1133、1136および1137の配列の18塩基長セグメントと一致するか、それと相補的であるか、あるいはストリンジェントまたは高度にストリンジェントな条件下でそのセグメントにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。該キットは、少なくとも1種のオリゴヌクレオチドであって、その配列が、各事例で、配列番号302〜303、296〜297、214〜215、274〜275、236〜237、290〜291、228〜229、250〜251、424〜425、418〜419、336〜337、396〜397、358〜359、412〜413、350〜351の配列の18塩基長セグメントと一致するか、それと相補的であるか、あるいはストリンジェントまたは高度にストリンジェントな条件下でそのセグメントにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをさらに含んでよい。該キットは、上記方法を実行し、評価するための指示書をさらに含んでよい。さらに好ましい実施態様では、該キットは、CpG位置特異的メチル化解析を実施するための標準的試薬をさらに含んでよく、この場合、該解析は1種またはそれ以上の下記技術を含む:MS−SNuPE、MSP、MethyLight(登録商標)、HeavyMethyl(登録商標)、COBRA、および核酸シークエンシング。しかし、本発明のキットは上述のコンポーネントの部分のみを含有してもよい。
COBRA分析用の典型的試薬(例えば、典型的なCOBRAベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のPCRプライマー;制限酵素および適切なバッファー;遺伝子ハイブリダイゼーションオリゴ;コントロールハイブリダイゼーションオリゴ;オリゴヌクレオチドプローブのキナーゼ標識用キット;および放射性ヌクレオチド。さらに、ビサルファイト変換試薬には下記物質が含まれるであろう:DNA変性バッファー;スルホン化バッファー;DNA回収試薬またはキット(例えば、沈降、限外濾過、アフィニティーカラム);脱スルホン化バッファー;およびDNA回収コンポーネント。
MethyLight(登録商標)分析用の典型的試薬(例えば、典型的なMethyLight(登録商標)ベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のPCRプライマー;TaqMan(登録商標)プローブ;最適化PCRバッファーおよびデオキシヌクレオチド;およびTaqポリメラーゼ。
Ms−SNuPE分析用の典型的試薬(例えば、典型的なMs−SNuPEベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のPCRプライマー;最適化PCRバッファーおよびデオキシヌクレオチド;ゲル抽出キット;ポジティブコントロールプライマー;特定遺伝子用のMs−SNuPEプライマー;反応バッファー(Ms−SNuPE反応用);および放射性ヌクレオチド。さらに、ビサルファイト変換試薬には下記物質が含まれるであろう:DNA変性バッファー;スルホン化バッファー;DNA回収試薬またはキット(例えば、沈降、限外濾過、アフィニティーカラム);脱スルホン化バッファー;およびDNA回収コンポーネント。
MSP分析用の典型的試薬(例えば、典型的なMSPベースのキット中に認められるような試薬)には、非限定的に下記物質が含まれるであろう:特定遺伝子(またはメチル化改変型DNA配列またはCpG島)用のメチル化および非メチル化PCRプライマー、最適化PCRバッファーおよびデオキシヌクレオチド、および特異的プローブ。
特定の好ましい実施態様にしたがって本発明を具体的に説明してきたが、下記に挙げる実施例および図面は本発明を例示するためだけのものであり、その最も広範な解釈および等価な構成の原理および範囲内に本発明を限定することを意図するものではない。
特定の好ましい実施態様にしたがって本発明を具体的に説明してきたが、下記に挙げる実施例および図面は本発明を例示するためだけのものであり、その最も広範な解釈および等価な構成の原理および範囲内に本発明を限定することを意図するものではない。
図1は、本発明方法の好ましい適用例を示す。X軸は腫瘍の重量を示し、線「3」は検出可能な限界を示す。Y軸は時間を示す。当該図は第1〜3期の乳房腫瘍の内分泌治療を単純化したモデルの図示であり、手術(時点1)による最初の処置の後にタモキシフェン(Tamoxifen)による補助療法が行われる。当初の予定では処置が有効な人(4)は観察継続中は検出可能限界の下方に留まるように示される。処置が無効な人(5)は無病生存期間(2)の後に再発し腫瘍重量が検出可能なレベルに達する。
図2は、本発明方法の別の好ましい適用例を示す。X軸は腫瘍の重量を示し、線「3」は検出可能な限界を示す。Y軸は時間を示す。当該図は末期の乳房腫瘍の内分泌治療を単純化したモデルの図示であり、手術(時点1)による最初の処置の後に再発(2)しタモキシフェンによる処置が行われる。当初の予定では処置が有効な人(4)は観察継続中は検出可能限界の下方に留まるように示される。処置が無効(5)となれば再発から回復することはない。
図3〜45は、単独の遺伝子またはオリゴヌクレオチドの位置に対してカプランマイヤー(Kaplan-Meier)法で推定した無病生存曲線を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが中央値の上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが中央値の下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図46は、実施例1によるCpG島のメチル化解析を示す。遺伝子単位でCpG島をグループ化し、客観的な有効性との相互関連をホテリングのT2(Hotelling's T2)統計によって測定した。黒点は指示してある遺伝子のp値を示す。最も情報量の多い遺伝子20個が示してあり、p値の増加に合わせて左から右に並べてある。上方の点線は未補正の有意値(p < 0.05)を示し、下方の点線は25%の偽ディスカバリ率(FDR)の補正をした後の有意値である。p値がこの下方線より下にありしかも最大である遺伝子(この場合はCOX7A2L)と同等または小さいp値の遺伝子は全て有意と考えられる。上記FDR補正を採択しているので、同定した遺伝子が真のディスカバリである確率は75%と保証される。
図48は、実施例1(転移設定、限られた標本セット)により得られたデータが最良の11個の増幅産物のマトリックスをランク付けしたもの示す。p値は多変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。図は灰色の程度によって示されていて、最も有意なCpGはマトリックスの底部の方に位置しており、有意値は上方に向かう程減少する。黒色はCpGの問題の位置でメチル化が完全に行われたことを示し、白色はその特定位置でメチル化が行われなかったことを表し、メチル化の程度は灰色の薄い(メチル化比率の低い)ものから濃い(メチル化比率の高い)ものへの順によって表されている。各列は遺伝子内の或る特定のCpGの位置を表し、各カラムは或る標本の別々のCpGに対するメチル化のプロファイルを示している。個々のCpG位置に対するp値を右側に示す。p値は観測した分布がデータセット中に偶然に生起した確率である。
図49は、実施例1(転移設定、限られた標本セット)により得られた数個の最良のマーカーのマトリックスをランク付けしたものを示す。P値は単変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。図は灰色の程度によって示されていて、最も有意なCpGはマトリックスの底の方に位置しており、有意値は上方に向かう程減少する。黒色はCpGの問題の位置でメチル化が完全に行われたことを示し、白色はその特定位置でメチル化が行われなかったことを表し、メチル化の程度は灰色の薄い(メチル化比率の低い)ものから濃い(メチル化比率の高い)ものへの順によって表されている。各列は遺伝子内の或る特定のCpGの位置を表し、各カラムは或る標本の別々のCpGに対するメチル化のプロファイルを示している。個々のCpG位置に対するp値を右側に示す。p値は観測した分布がデータセット中に偶然に生起した確率である。
図47と50は、対数尺度による未補正のp値を示す。p値は実施例1(転移設定)の多変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。問題となる個々のゲノム領域はそれぞれ個別に点で表してあり、上方の点線は25%の偽ディスカバリ率に対するカットオフ点を表し、下方の点線はボンフェロニ(Bonferroni)により補正される5%限界を示す。
図51は、実施例1(転移設定、全標本)により得られたデータが最良の11個の増幅産物のマトリックスをランク付けしたものを示す。p値は多変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。図は灰色の程度によって示されていて、最も有意なCpGはマトリックスの底部に位置しており、有意値は上方に向かう程減少する。黒色はCpGの問題の位置でメチル化が完全に行われたことを示し、白色はその特定位置でメチル化が行われなかったことを表し、メチル化の程度は灰色の薄い(メチル化比率の低い)ものから濃い(メチル化比率の高い)ものへの順によって表されている。各列は遺伝子内の或る特定のCpGの位置を表し、各カラムは或る標本の別々のCpGに対するメチル化のプロファイルを示している。個々のCpG位置に対するp値を右側に示す。p値は観測した分布がデータセット中に偶然に生起した確率である。
図52は、遺伝子TBC1D3およびCDK6にそれぞれ由来する2個のオリゴヌクレオチドの組合せ、および遺伝子PITX2に由来する1個のオリゴヌクレオチドに対する無病生存曲線を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが中央値より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが中央値より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図53は、図52のプロットおよびセントガレン(St. Gallen)法による標本セットの分類を示す。実線はメチル化解析を表し、その中で黒色のプロットはメチル化レベルが中央値より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが中央値より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。破線は標本セットのセントガレン分類を表し、その中で黒色のプロットは危険度の高い群の無病生存時間を示し、灰色のプロットは危険度の低い群の無病生存(時間)を示す。
図54は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段はリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。下方のプロットはメチル化レベルが中央値より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、上方のプロットはメチル化レベルが中央値より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。X軸は患者の無病生存時間を月数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。
図55は、ERBB2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図56は、ERBB2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図57は、TFF1遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図58は、TFF1遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無転移患者の母集団中の比率を示す。
図59は、PLAU遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図60は、PLAU遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無転移患者の母集団中の比率を示す。
図61は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図62は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図63は、TBC1D3遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図64は、TBC1D3遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図65は、ERBB2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図66は、ERBB2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図67は、TFF1遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図68は、TFF1遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無転移患者の母集団中の比率を示す。
図69は、PLAU遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図70は、PLAU遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図71は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図72は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無転移患者の母集団中の比率を示す。
図73は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図74は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図75は、ONECUT2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図76は、ONECUT2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図77は、TBC1D3遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図78は、TBC1D3遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図79は、ABCA8遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図80は、ABCA8遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図81は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図82は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図83は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子とPITX2 (配列番号23)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図84は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子とPITX2 (配列番号23)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図85は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とTFF1 (配列番号12)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図86は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とTFF1 (配列番号12)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図87は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図88は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図89は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図90は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図91は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子とPITX2 (配列番号23)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図92は、TFF1 (配列番号12)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子とPITX2 (配列番号23)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図93は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とTFF1 (配列番号12)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図94は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とTFF1 (配列番号12)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無転移生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図95は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図96は、PITX2 (配列番号23)遺伝子とPLAU (配列番号16)遺伝子との組合せのCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無転移生存曲線を示し、そのための分析手段は実施例2に記載のリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。X軸は患者の無病生存時間を年数により示し、Y軸は無転移生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無転移患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
図97は、実施例2のPITX2遺伝子測定法1を使用して分析したPETと新鮮凍結組織とを対にした組合せの散布プロットを示す。PET標本の定量的メチル化CTのスコアをY軸に示し、新鮮凍結標本の定量的メチル化CTのスコアをX軸に示してある。対になっている標本間の相関は0.81 (Spearman's rho)である。この分析はn=89個の標本に基づく。
図98は、無作為に選択したER+, N0,無処置の患者集団の無病生存率(DFS)を、実施例2のカプランマイヤー法による生存率プロットで示す。無病患者の比率をY軸に示し、月数による経過時間をX軸に示す。139個の事象を観測した(観測事象率=33%)。5年後の無病生存率は74.5% [70.3%、78.9%]、10年後は59.8% [54.2%、66%]であり、95%の信頼区間をプロットしてある。
図99は、実施例2のER+、N0、の無処置集団における追跡時間の分布を示す。度数をY軸に示し、時間を月数によりX軸に示す。左側の図は事象(あらゆる種類の再発)の患者を示す。追跡時間の平均値45.8月(標準偏差=31),中央値=38 (範囲=[2, 123])。
右側の図は打ち切られた患者を示す。追跡時間の平均値93月(標準偏差=35.6),中央値=94 (範囲=[1, 190])。
図100は、ER+, N0, TAM処置した集団の無病生存(DFS)を実施例2のカプランマイヤー法によるプロットで示す。無病患者の比率をY軸に示し、時間を月数によりX軸に示す。56個の事象を観測した(観測事象率=10%)。5年後のDFS:92.4%[90%、94.9%]、10年後:82.1%[77.3%、87.2%]。95%信頼区間をプロットしてある。
図101は、実施例2のER+、N0、の無処置集団における追跡時間の分布を示す。度数をY軸に示し、時間を月数によりX軸に示す。左側の図は全事象(あらゆる種類の再発)の患者を示す。追跡時間の平均値47.9月(標準偏差=24.4),中央値=45 (範囲=[2, 98])。
右側の図は打ち切られた患者を示す。追跡時間の平均値65.3月(標準偏差=31.6),中央値=64 (範囲=[0, 158])。
図102は、実施例2のER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデル3522(測定法1)および2265に対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.32クアンタイル(quantile))をプロットしてある。
図103は、実施例2のER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデル3522 (測定1)のみに対するROCプロットをいろいろな時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.42クアンタイル)をプロットしてある。
図104は、実施例2のER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデル2265に対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はいろいろな閾値(= 5, 6, 7, 8年)に対するKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.78クアンタイル)をプロットしてある。
図105は、実施例2のER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデル2395に対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はいろいろな閾値(= 5, 6, 7, 8年)に対するKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.77クアンタイル)をプロットしてある。
配列番号1〜61および149〜150は、表1に記載の遺伝子の5'領域および/または調節領域および/またはCpGリッチ領域を表す。これらの配列はGenbank由来であり、これら配列には、現在は予想し得ないあらゆるマイナーな配列素材の改変、例えば限定されないが、重要でない欠失とSNPが含まれるものとする。
DNA標本をWizzard Kit (Promega)を使用して抽出した。278人の患者由来の標本を分析し、選択した候補マーカーに基づきデータ解析を行った。
ビサルファイト処理およびmPCR
全標本の総ゲノムDNAをビサルファイト処理して非メチル化シトシンをウラシルに変換した。メチル化シトシンはそのまま保存された。Olek et al. (1996)に記載のプロトコールに小さな改変を加えてビサルファイト処理を行った。ビサルファイト処理後、10 ngの各DNA標本を使用して6〜8個のプライマー対を含む後続のmPCR反応を行った。
各反応には以下が含まれる。
2.5 pmol各プライマー
11.25 ng DNA(ビサルファイト処理済み)
Multiplex PCR Master mix (Qiagen)
プライマーに関する更なる詳細は表2に示してある。
最初の変性を95°Cで15分間行った。以下を40サイクル行った:変性 95°C 30秒間、次にアニーリングを57°Cで90秒間、プライマーの伸長72°Cで90秒間、最終の伸長72°Cで10分間。
ハイブリダイゼーション
分析する各CpG位置に対する一対の固定したオリゴヌクレオチドをガラススライドに担持させ、このスライドに個々の標本に由来するPCR産物の全てをハイブリダイズした。これら検出用オリゴヌクレオチドはそれぞれ、元来非メチル化(TG)またはメチル化(CG)されている或るCpG部位の周辺の配列であってビサルファイトで変換した配列にハイブリダイズするようにデザインしてある。使用したハイブリダイゼーション用オリゴヌクレオチドの更なる詳細は表2を参照のこと。ハイブリダイゼーション条件は、TGとCG変種間のヌクレオチド1個の差異が検出可能となるように選択した。
5μlのマルチプレックスPCR産物を10 x Ssarc緩衝液に希釈した。次に反応混合液を検出用オリゴヌクレオチドに次のようにハイブリダイズした。95°Cで変性し、10°Cに冷却し、42°Cで終夜ハイブリダイズし、次に42°Cで10 x SsarcとdH2Oで洗浄した。ハイブリダイゼーション用オリゴヌクレオチドの更なる詳細は表3に示してある。
各ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの蛍光シグナルをGenepixのスキャナーとソフトウエアを使用して検出した。二つのシグナル(CpGの各位置を分析するために使用したCGオリゴヌクレオチドとTGオリゴヌクレオチドに由来する)の比を蛍光シグナル強度の比較に基づいて計算した。
データ解析の方法
チップデータの解析:生のハイブリダイゼーション強度からメチル化比へ;CpGの位置ごとにlogメチル化比(log(CG/TG))を以下のステップを含む標準化した前処理ルートにより測定する:スポットごとに前景ピクセル強度の中央値から背景ピクセル強度の中央値を差し引く(これによりハイブリダイゼーション強度は背景補正されて値が良くなる);CpGの位置ごとのCGとTGの検出用オリゴヌクレオチドに対して4つの重複したスポット強度の中央値を背景補正して採用する;チップごとにおよびCpGの位置ごとにlog(CG/TG)比を計算する;重複したチップの反復にわたるlog(CG/TG)強度の中央値を標本ごとに採用する;この比の特徴として、ハイブリダイゼーションのノイズの分散が可能なメチル化比率の全範囲にわたってほぼ一定になる(Huber et al., 2002)。
仮説検定
主たる作業は、二つのクラスのメチル化度の平均値の間に有意差が現れるマーカーを認定することである。二つのクラスのメチル化度の平均値を同一とする帰無仮説がp<0.05で棄却可能となった場合には有意差が検出されたことになる。可能なマーカーの全セットに対してこの検定を適用するには多重検定用にp値を補正する必要がある。これを行うにあたり偽ディスカバリ率(FDR)法を適用した(Dudoit et al., 2002)。
二つのクラスのメチル化レベルを同一であるとする帰無仮説を検定するためにロジスティック回帰モデルに対する尤度比検定を使用した(Venables and Ripley, 2002)。1個のマーカーに対するロジスティック回帰モデルは、問題のゲノム領域(ROI)における全てのCpG位置から得たメチル化測定値を線形に結合したものである。あるマーカーに対してp値が有意であれば、このROIは二つのクラスの問題に多少規則的に関連していることを意味する。しかし、少なくともそれによってそのマーカーに実際的な予言力があるとは何の言明も正式にはなされていない。
ロジスティック回帰
ロジスティック回帰モデルは、事象が一以上の変量または因子に依存する確率をモデル化するツールである。例えば、xを特定のメチル化log比とすると、患者が適用治療に応答する確率は次のごとくモデル化される。
x1,...,xkを一つの増幅産物について測定されたk個のメチル化log比とすると、モデルは
となる。尤度比検定を使用して各増幅産物の有意性を測定する。この検定をするとフルモデルと空モデルに対する-2Log(尤度)の差が計算され、これに含まれる切片αがほぼカイ二乗分布をなし、帰無仮説の下でのk個の自由度がβ1 = ... = βk = 0となる。
更に共変量を考慮すれば、共変量ごとに追加のパラメータがモデルに含まれ、検定統計はフルモデルと空モデルの-2Log(尤度)の間の差として計算される。再度、帰無仮説を立てるとこの差はk個の自由度を有するほぼカイ二乗分布になる。
ランク付けしたマトリックス
グラフ表示して全グループを比較するために、ランク付けしたマトリックスを使用した。各列は1個のオリゴ対を表し、マトリックスの各欄は1個の標本(またはPromega DNAの上方メチル化されたものと下方メチル化されたものを比較する場合にはチップ)を表す。オリゴ対をそれらの識別力によってランク付けし(ウィルコクソン検定、フィッシャースコア、またはロジスティック回帰)、最良の「マーカー」を下方の線上に表示する。低メチル化は薄い灰色で、高メチル化は濃い灰色で表示し、データは正規化してから表示する。
コックス回帰
無病生存時間(DFS)のモデル化にはコックス回帰モデルを使用する。これらのモデルはロジスティック回帰モデルに似ているが、確率の代わりにハザードをモデル化する。ハザードによって再発が即座に起こるリスクが示される。そのモデル:
および
を使用して、それぞれ単変量解析および多変量解析を行う。tは手術後の時間を月数で測定したものであり、またh0(t)はベースラインのハザードである。ロジスティック回帰で使用したのと同様な尤度比検定を行う。フルモデルと空モデルの-2Log(尤度)の差はほぼカイ二乗分布をしており、帰無仮説の下でのk個の自由度はβ1 = ... = βk = 0となる。更に共変量をモデルに含めることが可能である。
ステップワイズ回帰分析
多変量のロジスティック回帰モデルおよびコックス回帰モデルに当たり、関連変量のみを含むサブモデルを見出すステップワイズな手順を使用する。通常これらの手順によって二つの効果が達成される。従属変量(応答状態あるいはDFS)に基本的に関係しない変量(メチル化比)を除外する。理由はそれらによって関連情報がモデルに追加されないからである。また、高度に関連する変量の中から従属変量に最もよく関連する変量のみを保存する。これら二つのタイプの変量が両方共含まれると、数量が不安定になり、パワーが失われる恐れがある。更に、適合過剰のために予見特性が低くなる。このアルゴリズムを適用する狙いは、次式で定義される赤池情報量基準(AIC)を最小にすることである。
AIC = -2・log(最大尤度) + 2・#パラメータ
AICは、モデルの予見特性に関連しており、この値が小さい程予見特性が良くなると期待される。追加の変量が含まれるとモデルの適合性は常に向上し尤度は上昇するが、第二項による追加のパラメータの推定が厄介になる。最良のモデルであれば、適合性の良い適当なモデルが与えられ変量は通常少数または程ほどの数となる。
結果
補助設定
手術直後の補助設定としてタモキシフェン処置(図1参照)した患者標本のメチル化パターンを分析した結果を図3〜45のプロットに示す。各増幅産物に対する全てのオリゴ対についてメチル化平均値を計算し、それらメチル化平均値によって母集団を数グループに分割した。一つのグループはメチル化スコアが中央値より高い個体から構成し、第二のグループはメチル化スコアが中央値より低い個体から構成した。
結果は、コックスモデルで推定した無病生存曲線として図3〜9に示す。図10〜34は、1個のオリゴヌクレオチドのみでのメチル化分析による無病生存曲線を示す。
更に、遠隔転移のみによる再発を図35〜46で分析した。
異なる遺伝子に由来する多数のオリゴヌクレオチドを組み合わせることにより、グループ間を区分けする精度が更に増加した。図53は、遺伝子TBC1D3およびCDK6に由来する二つのオリゴヌクレオチドの組み合わせと遺伝子PITX2に由来する一つのオリゴヌクレオチドを示す。点線はセントガレン法(無病生存を推定するために選択した現行法)によって設定した標本を基に患者を分類した結果であり、メチル化解析(実線)によるものと対比してあり、これにより特に80月後においてメチル化解析の有効性が現行法に優ることが示される。セントガレン法は乳癌患者に対する処置選択の指標であり、最も普通に使用される。その指標は、二年ごとに見直され、臨床因子(年齢、癌のタイプ、サイズ、転移等)に基づいており、これを使用する場合には患者は高リスク症例と低リスク症例に別けられ、それぞれ異なる治療ルールに従う。
転移設定
転移設定においてタモキシフェン処置(図2参照)した患者標本のメチル化パターンを分析した結果を図46〜52のマトリックスに示す。この分類において分析した被験者は最初の処置後に再発し、続いて起こる転移をタモキシフェンにより処置した。
各遺伝子プロモータによってタモキシフェン処置の成功または失敗の予見が可能か否かを決定するために、Hotelling's T2統計を使用し、測定した個々のCpGを遺伝子ごとに組み合わせた。25%という適度に控目な偽ディスカバリ率と多重比較するための補正をすると、いくつかの遺伝子はタモキシフェンへの応答と有意に関連していた(図52参照)。その遺伝子とは、ONECUT2, WBP11, CYP2D6, DAG1, ERBB2, S100A2, TFF1, TP53, TMEFF2, ESR1, SYK, RASSF1, PITX2, PSAT1, CGAおよびPCAFであった。
図50は、未補正のp値を対数尺度で示す。p値は多変量ロジスティック回帰モデルから尤度比(LR)検定により計算した。問題のゲノム領域はそれぞれ個別に点で表わされており、上方の点線は25%の偽ディスカバリ率に対するカットオフ点を表し、下方の点線はボンフェロニの補正をした5%限界を示す。
図51は、得られたデータが最良の11個の増幅産物のマトリックスをランク付けしたものを示す。p値は多変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。図は灰色の程度によって示されていて、最も有意なCpGはマトリックスの底部に位置しており、有意値は上方に向かう程減少する。黒色はCpGの問題の位置でメチル化が完全に行われたことを示し、白色はその特定位置でメチル化が行われなかったことを表し、メチル化の程度は灰色の薄い(メチル化比率の低い)ものから濃い(メチル化比率の高い)ものへの順によって表されている。各列は遺伝子内の或る特定のCpGの位置を表し、各カラムは或る標本の別々のCpGに対するメチル化のプロファイルを示している。個々のCpG位置に対するp値を右側に示す。p値は観測した分布がデータセット中に偶然に生起した確率である。
図47は対数尺度による未補正のp値を示す。p値は実施例1(転移設定)の多変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。問題となる個々のゲノム領域はそれぞれ個別に点で表してあり、上方の点線は25%の偽ディスカバリ率に対するカットオフ点を表し、下方の点線はボンフェロニにより補正される5%限界を示す。
図48は、得られたデータが最良の11個の増幅産物のマトリックスをランク付けしたものを示す。p値は多変量ロジスティック回帰モデルを使って尤度比(LR)検定により計算した。図は灰色の程度によって示されていて、最も有意なCpGはマトリックスの底の方に位置しており、有意値は上方に向かう程減少する。黒色はCpGの問題の位置でメチル化が完全に行われたことを示し、白色はその特定位置でメチル化が行われなかったことを表し、メチル化の程度は灰色の薄い(メチル化比率の低い)ものから濃い(メチル化比率の高い)ものへの順によって表されている。各列は遺伝子内の或る特定のCpGの位置を表し、各カラムは或る標本の別々のCpGに対するメチル化のプロファイルを示している。個々のCpG位置に対するp値を右側に示す。p値は観測した分布がデータセット中に偶然に生起した確率である。
リアルタイムな定量的メチル化の分析
ゲノムDNAを、ビサルファイトによる変換の後にリアルタイムなPCR技法を使用して分析した。この分析では反応ごとに四つのオリゴヌクレオチドを使用した。非メチル化に特異的な二つのPCRプライマーを使用することによって、メチル化され易くオリゴヌクレオチドプローブが結合する部位を含む処理済みゲノムDNAのセグメントを増幅した。その結合部位に二つのオリゴヌクレオチドプローブを競合的にハイブリダイズさせた。そのうち一つは結合部位のメチル化された状態に特異的であり、他は結合部位の非メチル化状態に特異的である。したがって、プローブの一つはメチル化され易い位置にCpGを含んでおり(すなわち、ビサルファイト処理したメチル化部位にアニールする)、他はその同じ位置にTpGを含んでいる(すなわち、ビサルファイト処理した非メチル化部位にアニールする)。各プローブ種は5'蛍光レポーター色素および3'クエンチャー色素で標識し、CpGオリゴヌクレオチドおよびTpGオリゴヌクレオチドは別の色素で標識する。
標本内でのメチル化レベルを定量するために、メチル化レベルが判っているDNA標準を参照して反応を検量した。このDNA標準は、ビサルファイト処理しphi29で増幅したゲノムDNA(すなわち非メチル化)および/またはSss1メチラーゼ酵素(これにより標本中の各CpG位置をメチル化する)で処理し次にビサルファイト溶液で処理しphi29で増幅したゲノムDNAから構成した。使用した参照用標準は、0% (すなわちphi29で増幅したゲノムDNAのみ)、5%、10%、25%、50%、75%および100%(すなわちphi29とSss1で処理したゲノムDNAのみ)の七つであった。
増幅した標本DNAを遺伝子(β-actin (ACTB))を参照して定量し、インプットしたDNAを標準化する。標準化に当たり、ACTB遺伝子分析用のプライマーおよびプローブはCpGジヌクレオチドを欠如しているので、メチル化レベルに関係なく増幅が可能である。メチル化され易い位置がないので、プローブのオリゴヌクレオチドが1個必要なだけである。
反応において以下のオリゴヌクレオチドを使用した。
プライマー: TGGTGATGGAGGAGGTTTAGTAAGT (配列番号1088)
プライマー: AACCAATAAAACCTACTCCTCCCTTAA (配列番号1089)
プローブ: 6FAM-ACCACCACCCAACACACAATAACAAACACA-TAMRA or Dabcyl (配列番号1090)
特定の遺伝子座におけるメチル化の程度を次の式によって求めた:
メチル化率= 100 * I CG / (ICG + ITG)
(I = CG-プローブまたはTGプローブの蛍光強度)
遺伝子PITX2
プライマー
PITX2R02: GTAGGGGAGGGAAGTAGATGTT (配列番号1091)
PITX2Q02: TTCTAATCCTCCTTTCCACAATAA (配列番号1092)
増幅産物の長さ:143bp
プローブ
PITX2cg1: FAM-AGTCGGAGTCGGGAGAGCGA-Darquencher (配列番号1093)
PITX2tg1: ヤキマイエロー-AGTTGGAGTTGGGAGAGTGAAAGGAGA-ダルケンチャー(配列番号1094)
PCR成分:3 mM MgCl2緩衝液,10x緩衝液,ホットスタートTAQ
プログラム(45サイクル):95°C,10分;95°C,15秒;62°C,1分
図54は、PITX2遺伝子のCpG位置に対するカプランマイヤー法で推定した無病生存曲線を示し、そのための分析手段はリアルタイムなメチル化に特異的なプローブによる。下方のプロットはメチル化レベルが中央値より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、上方のプロットはメチル化レベルが中央値より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。X軸は患者の無病生存時間を月数により示し、Y軸は無病生存患者の比率を示す。そのp値(観測した分布が偶然に生起する確率)は、0.0031と計算された。したがって、図6のアレイ分析によって得たデータが確認された。
最も有望なマーカーを実施例1のマイクロアレイ検討により確認するために、リアルタイムな測定法をデザインし、最適精度の測定法が得られるように最適化した。この測定法は、パラフィンに包埋した組織(以下、PETとも呼ぶ)と新鮮な凍結組織標本を組み合わせて実施した。PETから誘導したDNAはしばしば「低品質」(例えば、DNAが高度に断片化する、標本からのDNA収量が低い)であるので、PETでの測定結果を確認してその測定法のロバストネスおよびそのマーカーの有用性の増加を証明する。
遺伝子ERBB2 (配列番号5), TFF1 (配列番号12), PLAU (配列番号16), PITX2 (配列番号23), ONECUT2 (配列番号35), TBC1D3 (配列番号43),および ABCA8 (配列番号49)に対して定量的なメチル化測定法をデザインし、エストロゲン受容体陽性、リンパ節陰性、無処置の乳癌患者標本415個およびエストロゲン受容体陽性、リンパ節陰性、タモキシフェン処置の標本541個の標本セットを使用して検定した。これら標本のうち約100個はマイクロアレイ検討で予め分析した。
QM測定法(アッセイ)(= 定量的メチル化測定法)は定量的なDNAメチル化を検出するためのリアルタイムPCRを基礎とする方法である。測定法の原理は、CG状態またはTG状態にそれぞれ特異的な二つの異なるプローブが競合的にハイブリダイゼーションすることにより、非メチル化標的領域が特異的に増幅されてメチル化部分が特異的に検出されることに基づく。本検討では、二つの異なる蛍光色素(CGに特異的なプローブにはFAM、TGに特異的なプローブにはVIC)で標識し更にクエンチャー(消光)分子(TAMRAまたはMinor Groove Binder/非蛍光性消光剤)で修飾したTaqManプローブを使用した。二つの異なる方法でQM測定法による生データの評価が可能である。
1.増幅の対数期に絶対蛍光強度(FI)を測定する
2.CGおよびTGに特異的なプローブの限界サイクル(Ct)における差
本検討の結果はCt法を使用して得られた。
定量的メチル化測定法の以下のシリーズでは、遺伝子GSTP1を参照にして増幅した標本DNAを定量し、インプットしたDNAを標準化する。標準化に当たり、GSTP1遺伝子分析用のプライマーおよびプローブはCpGジヌクレオチドを欠如しているので、メチル化レベルに関係なく増幅は可能である。メチル化され易い位置はないので、プローブのオリゴヌクレオチドが1個必要なだけである。
標本セット
ER+ N0無処置母集団
同定されたマーカーが強力な予見成分を有することを証明するために、補助療法の処置を受けていない患者に由来する腫瘍標本ER+ N0を分析した。この母集団における有意な生存差を示すことができるマーカーは予見性があると考えられる。このセットの508個の全標本は学術協力者から細胞核ペレット(新鮮凍結標本)として得た。標本母集団は二つのサブセットに分けることができる。一つは無作為に選択した415個の標本(打ち切られた患者と再発した患者の両方)であって、これが表す母集団は再発の自然な分布を有する。他の93個の標本は再発した患者のみに由来する。後者の標本は感度/特異性の解析にのみ使用した。
図98は無作為に選択した母集団の無病生存をカプランマイヤー法のプロットで示し、図99は再発した患者および打ち切られた患者に対する追跡時間の分布をヒストグラムで示す。表4は種々の再発によって終了した事象の数を示す。要するに、この母集団の生存は文献から予想されるものに匹敵する。
ER+ N0 TAM処置母集団
本発明が意図している標的集団の一つはホルモン治療の処置をしたER+ N0腫瘍の患者である。この集団におけるマーカー候補の特性をチェックするために、タモキシフェン処置をした患者に由来するER+ N0腫瘍の589個の標本を分析した。全標本をパラフィン包埋組織(PET)の形で受領した。10μmの切片が3〜10個得られた。
更に、89個のPETについて、同じ腫瘍に由来する新鮮凍結標本に匹敵する患者標本を対照コントロールとして検討に含ませた。これらの標本は既に第1相で使用しているので、それらによって二種類の一致性検討が可能であった。
・チップとQM測定
・新鮮凍結標本とPET標本
処置した母集団の標本(ER+,N0,TAM)は八つの異なるプロバイダーから受領した。全部で589個の標本を処理したが、その中の48個は種々の理由(例えば、二つの標本が同一の腫瘍に由来、標本が包含されるための指標を充足しない患者に由来、等)により検討から除外する必要があった。
図100は母集団の無病生存をカプランマイヤー法のプロットで示し、図101は再発した患者および打ち切られた患者に対する追跡時間の分布をヒストグラムで示す。表5は種々の再発によって終了した事象の数を示す。要するに、この母集団の生存(10年後に82.1%)は文献から予想されるもの(79.2%)に匹敵する。
DNA抽出
新鮮凍結標本からのDNA抽出
細胞核ペレットの形で入手可能な全508個の新鮮凍結標本からQIAamp Kit (Qiagen, Hilden, ドイツ)を使用してゲノムDNAを単離した。プロテナーゼKを使用しわずかに改変したCell Cultureプロトコールにより抽出を行った。
PET標本からのDNA抽出
プロバイダーより送達されたチューブの中で、提供された589個のPET標本から直接にパラフィンを除去した。次に組織を溶解し、QIAGEN DNeasy Tissue kitを使用してDNAを抽出した。
ビサルファイト処理
Olek et al(Nucleic Acids Res. 1996 Dec 15;24(24):5064-6)が開示した方法に基づいてビサルファイト処理を行い、発明者らの研究作業フローに対して最適化した。
定量用標準
標本内でのメチル化レベルを定量するために、メチル化レベルが判っているDNA標準を参照して反応を検量した。このDNA標準は、ビサルファイト処理しphi29で増幅したヒトゲノムDNA(Promega)(すなわち、非メチル化)、および/またはSss1メチラーゼ酵素(これにより標本中の各CpG位置をメチル化する)で処理し次にビサルファイト溶液で処理しphi29で増幅したゲノムDNAから構成した。使用した参照用標準は、0%(すなわちphi29で増幅したゲノムDNAのみ)、5%、10%、25%、50%、75%および100%(すなわちphi29とSss1で処理したゲノムDNAのみ)の七つであった。
ヒトゲノムDNA (Promega)の2000 ngバッチをビサルファイトで処理した。メチル化されたMDA DNAを得るために13個のチューブの4.5μg MDA-DNA (700ng/μl)をSss1で処理した。
対照コントロールの測定
GSTP1-C3測定法を、起源の異なるDNA、例えば新鮮/凍結標本、プラズマや血清のような遠隔標本、パラフィン包埋標本のような保管標本から得たDNA、を定量するのに適するようにデザインする。
以下のオリゴヌクレオチドを反応で使用して対照コントロール増幅産物(増幅体)を増幅した。
コントロールプライマー1: GGAGTGGAGGAAATTGAGAT (配列番号1095)
コントロールプライマー2: CCACACAACAAATACTCAAAAC (配列番号1096)
コントロールプローブ: FAM-TGGGTGTTTGTAATTTTTGTTTTGTGTTAGGTT-TAMRA (配列番号1097)
サイクルプログラム(40サイクル):95°C,10分;95°C,15秒;58°C,1分
測定法デザインと反応条件
遺伝子PITX2(配列番号23)の分析のために二つの測定法を開発した。
測定法1
プライマー: GTAGGGGAGGGAAGTAGATGTT (配列番号1098)
TTCTAATCCTCCTTTCCACAATAA (配列番号1099)
プローブ:FAM-AGTCGGAGTCGGGAGAGCGA-TAMRA (配列番号1100)
VIC-AGTTGGAGTTGGGAGAGTGAAAGGAGA -TAMRA (配列番号1101)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:143 bp
プライマー、プローブ、およびCpGジヌクレオチドの位置をハイライトしてある。
PCR成分(Eurogentec提供):3 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
サイクルプログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、62°C,1分
測定法2:
プライマー:AACATCTACTTCCCTCCCCTAC (配列番号1102)
GTTAGTAGAGATTTTATTAAATTTTATTGTAT (配列番号1103)
プローブ:FAM-TTCGGTTGCGCGGT-MGBNQF (配列番号1104)
VIC-TTTGGTTGTGTGGTTG- MGBNQF (配列番号1105)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:164 bp
プライマー、プローブ、およびCpGジヌクレオチドの位置をハイライトしてある。
プローブは共メチル化された三つのCpG位置をカバーしている。
PCR成分(Eurogentec提供):2,5 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、60°C,1分
特定の遺伝子座でのメチル化の程度を次の式によって定めた:
絶対蛍光強度を使用:メチル化率= 100 * I (CG) / (I(CG) + I(TG))
(I =プローブまたはプローブの蛍光強度)
限界サイクルCtを使用:メチル化率= 100*CG/(CG+TG)= 100/(1+TG/CG)= 100/(1+2^delta(ct))
(PCR効率E=2と仮定する;delta (Ct)= Ct(メチル化)- Ct(非メチル化))
遺伝子PLAU (配列番号16)
プライマー:GTTAGGTGTATGGGAGGAAGTA (配列番号1106)
TCCCTCCCCTATCTTACAA (配列番号1107)
プローブ: FAM-ACCCGAACCCCGCGTACTTC-TAMRA (配列番号1108)
VIC-ACCCAAACCCCACATACTTCCACA-TAMRA (配列番号1109)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:166 bp
プライマー、プローブの位置およびCpGの位置をハイライトしてある。
PCR成分はEurogentecにより提供された:2,5 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、60°C,1分
遺伝子ONECUT2 (配列番号35)
プライマー:GTAGGAAGAGGTGTTGAGAAATTAA (配列番号1110)
CCACACAAAAAATTTCTATACTCCT (配列番号1111)
プローブ:FAM- ACGGGTAGAGGCGCGGGT -TAMRA (配列番号1112)
VIC- ATGGGTAGAGGTGTGGGTTATATTGTTTTG-TAMRA (配列番号1113)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:266 bp
プライマー、プローブの位置およびCpGの位置をハイライトしてある。
PCR成分はEurogentecにより提供された:3 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、60°C,1分
遺伝子ABCA8 (配列番号49)
プライマー:GTGAGGTATTGGATTTAGTTTATTTG (配列番号1114)
CCCTAAATCTCATCCTAAAAACAC (配列番号1115)
プローブ:FAM- TGAGGTTTCGGTTTTTAACGGTGG -TAMRA (配列番号1116)
VIC- TGAGGTTTTGGTTTTTAATGGTGGGAT -TAMRA (配列番号1117)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:168 bp
プライマー、プローブの位置およびCpGの位置をハイライトしてある。
PCR成分はEurogentecにより提供された:3 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、62°C,1分
遺伝子ERBB2 (配列番号5)
プライマー:GGAGGGGGTAGAGTTATTAGTTTT (配列番号1118)
ACTCCCAACTTCACTTTCTCC (配列番号1119)
プローブ: FAM- TAATTTAGGCGTTTCGGCGTTAGG -TAMRA (配列番号1120)
VIC- TAATTTAGGTGTTTTGGTGTTAGGAGGGA -TAMRA (配列番号1121)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:144 bp
プライマー、プローブの位置およびCpGの位置をハイライトしてある。
PCR成分はEurogentecにより提供された:2.5 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、62°C,1分
遺伝子TFF1 (配列番号12)
プライマー:AGTTGGTGATGTTGATTAGAGTT (配列番号1122)
CCCTCCCAATATACAAATAAAAACTA (配列番号1123)
プローブ:FAM- ACACCGTTCGTAAAA-MGBNFQ (配列番号1124)
VIC- ACACCATTCATAAAAT-MGBNFQ (配列番号1125)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:189 bp
プライマー、プローブの位置およびCpGの位置をハイライトしてある。
PCR成分はEurogentecにより提供された:2.5 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、60°C,1分
遺伝子TBC1D3 (配列番号43)
プライマー:TTTTTAGTTGGTTTTTATTAGGGTTTT (配列番号1126)
CCAACATATCCACCCACTTACT (配列番号1127)
プローブ:FAM- TTTCGACTAATCTCCCGCCGA-TAMRA (配列番号1128)
VIC- TTTCAACTAATCTCCCACCAAATTTACTATCA-TAMRA (配列番号1129)
アンプリコン:
フラグメントの長さ:142 bp
プライマー、プローブの位置およびCpGの位置をハイライトしてある。
PCR成分はEurogentecにより提供された:2.5 mM MgCl2緩衝液、10x緩衝液、Hotstart TAQ、200μM dNTP、625 nM各プライマー、200 nM各プローブ
プログラム(45サイクル):95°C,10分、95°C,15秒、60°C,1分
デザインした各測定法を次の標本セットで検定した。
・タモキシフェン処置の患者で処置中に再発した(再発の全て)
・タモキシフェン処置の患者で処置中に再発したが、遠隔転移のみ
・タモキシフェン無処置の患者で処置中に再発した(再発の全て)
・タモキシフェン無処置の患者で処置中に再発したが、遠隔転移のみ
生データの処理
分析は全てCT評価を基礎とした(蛍光強度による評価は要求すれば入手可能である)。リアルタイムPCRの最適条件は対数増幅期にあると仮定すると、メチル化DNAの濃度(Cmeth)は次によって決定できる。
Cmeth = 100/(1+2(CTCG-CTTG))[%]
ここで、
CTCGはCGレポータ(FAMチャンネル)のサイクル閾値を表し、
CTTGはTGレポータ(VICチャンネル)のサイクル閾値を表す。
サイクルの閾値はAmplification Plots [ABI PRISM 7900 HT Sequence Detection System User Guide]を目視で検査してからヒトのエキスパートにより決定した。サイクルに対する値(CTCGおよびCTTG )はソフトウエアABI 7900によりこれらの閾値で計算した。増幅曲線は常に閾値を超えなかったので、サイクルの値を最大サイクル値、すなわち50に設定した。
統計方法
コックス回帰
無病生存(DFS)(または無転移生存、MFS)と共変量との間の関係をコックス比例ハザードモデルによりモデル化した(Cox and Oates, 1984; Harrel, 2001)。
ハザード、すなわち再発の即座の危険は、単変量解析および重回帰分析に対してそれぞれ次のようにモデル化される。
および
ここで、tは月数によって測定した手術後の時間、h0(t)はベースラインのハザード、xは共変量のベクトル(例えば、この測定法の測定値)、βは回帰係数のベクトル(モデルのパラメータ)である。βはコックス比例ハザードモデルの偏尤度を最大化することによって推定される。尤度比検定を行えば、メチル化がハザードに関連するか否かが検定される。フルモデルと空モデルの-2Log(尤度)の間の差はほぼカイ二乗分布をなし、帰無仮説の下でのk個の自由度はβ1 = ... = βk = 0となる。
比例ハザードの仮定はシェーンフェルト残差によってチェックした(Thernau et al., 2000)。コックス比例ハザードモデルの計算、分析および診断に当たり、「survival」パッケージのR関数coxph、coxph.zphを使用した。
ステップワイズ回帰分析
多変量コックス回帰モデルに当たり、関連変量のみを含むサブモデルを見出すためにステップワイズな手順(Venables et al., 1999; Harrel, 2001)を使用した。通常これらの手順によって二つの効果が達成される。
・ 従属変量(DFS/MFS)に基本的に関係しない変量(メチル化比)は除外される。理由はそれらによって関連情報がモデルに追加されないからである。
・ 高度に関連する変量の中から従属変量に最もよく関連する変量のみが保存される。
これら二つのタイプの変量が両方共含まれると、数量が不安定になり、パワーが失われる恐れがある。更に、適合過剰のために予見特性が低くなる。このアルゴリズムを適用する狙いは、次式で定義される赤池情報量基準(AIC)を最小にすることある。
AIC = -2・log(最大尤度) + 2・#パラメータ
AICは、モデルの予見特性に関連しており、この値が小さい程予見特性が良くなると期待される。追加の変量が含まれるとモデルの適合性は常に向上し尤度は上昇するが、第二項による追加のパラメータの推定が厄介になる。最良のモデルであれば、適合性の良い適当なモデルが与えられ変量は通常少数または程ほどの数でよい。AICでのステップワイズ回帰の計算をR関数「step」で行った。
カプランマイヤー法での生存曲線と対数ランク検定
生存曲線は、カプランマイヤー法(Kaplan and Meier, 1958)を使用してDFS/MFSデータから推定する。対数ランク検定を使用して二つの生存曲線、例えば高メチル化グループと低メチル化グループの差を検定した。この検定については(Cox and Oates, 1984)を参照のこと。カプランマイヤー分析に当たり、「survival」パッケージの関数「survfit」および「survdiff」を使用した。
他の共変量からのマーカーの独立
本発明者のマーカーパネルによって更なる独立情報が得られるかどうかをチェックするために、他の関連する臨床因子をコックス比例ハザードモデルに含ませ、各因子のウエイトに対するp値を計算した(ワルド検定)(Thernau et al., 2000)。コックス比例ハザードモデルにおける追加の因子を分析するに当たり、R関数「coxph」を使用した。
相関分析
ピアソンとスピアマンの相関係数を計算して測定値の間の一致性を推定する(例えば、対になっている新鮮凍結標本とPET標本におけるメチル化)。
密度推定
数量変数に対し、ガウス分布の核と変数のバンド幅にて核密度の推定を行った。バンド幅はシルバーマンの「rule-of-thumb」(Silverman, 1986)を使用して定める。この密度を計算するに当たり、R関数「density」を使用した。
感度と特異性の分析
単独の測定法とマーカーパネルの感度と特異性を分析するに当たり、ROCを計算した。ROCの計算を二つの方法で行った。第一の方法は時間TThresholdに対して与えられる閾値の感度と特異性を計算する。この閾値によって真陽性、偽陽性、真陰性、および偽陰性を定義し、感度と特異性に対する値をそのモデルの種々のカットオフ値に対して計算した。TThreshold前に打ち切られた患者は除外した。そして種々の時間(3年、4年、…、10年)のTThresholdに対してROCを計算した。第二の方法は、マーカー陽性グループおよびマーカー陰性グループの時間TThresholdにおける生存確率のカプランマイヤー法による推定値(Heagerty et al., 2000)を基礎にベイズの式を使用して感度と特異性を計算する。そして種々の時間(3年、4年、…、10年)のTThresholdに対してROCを計算した。
k回クロスバリデーション
モデルの選択およびモデルのロバストネスを分析するに当たり、k回クロスバリデーション(Hastie et al., 2001)を使用した。観測データのセットを無作為にk個の部分に分割した。次に各部分を検定用セットとして使用し、残りのk-1個の部分を学習用セットとして使用した。この手順をn回繰り返した。
母集団チャート
打ち切りと共変量の間の関連を記述するために、母集団チャート(Moecks et al., 2002)を使用した。事象の全ての観測値を含むように共変量のベースラインを計算した。与えられた時間tに対し、リスクセット中の患者であって時間tで打ち切られた全ての患者について平均値(年齢のような実変数の場合)または分数(カテゴリカル変数の場合)を計算し、ベースライン値に加えた。
技術的特性
測定反復値の比較
マーカーごとに少なくとも3個の反復値を測定した。測定反復値の間の変動のし易さは新鮮凍結標本よりもPET標本の方が高く観測された。
新鮮凍結標本とPET標本の一致性の検討
この検討(実施例2)で分析したマーカーは、最初に新鮮凍結標本を使用しチッププラットフォーム(実施例1)で同定した。ER+ N0無処置集団も実施例2の新鮮凍結標本で分析した。一致性の検討の結果、新鮮凍結標本とPET標本とで測定したメチル化比が同等であることが証明されるのが好ましい。この目的のために、三つの異なるプロバイダーから入手しチップの検討で既に使用した89個の新鮮凍結標本を、同じ腫瘍に由来する対応PET標本と並行して再度処理した。
図97は、マーカー候補PITX2の測定法1に対する一致性検討を、新鮮凍結標本とPET標本の間の散布プロットとして示す(QM測定法を使用)。対になっている標本間の相関は0.81 (Spearman's rho)である。この分析はn=89個の標本に基づく。
結果
単独マーカーの評価
八つの確立したQM測定法の各々を使用して、N0, ER+無処置患者集団に由来する508個の標本(無作為選択と追加の再発)を三つの反復値で測定した。品質指標を充足してない測定点を除去しコックス分析を行った後に、単独マーカーごとにカプランマイヤー法の生存曲線とROC曲線を得た。
二つの異なる臨床上のエンドポイントを分析に使用した:
・ 無病生存、すなわち全ての種類の再発(遠隔転移、局所領域の再発、もう一方の乳房での再発)を事象として使用する。
・ 無転移生存、すなわち遠隔転移のみを事象として処置する。
ER+, N0, TAM処置集団を分析するに当たり、N0, ER+無処置患者集団に由来する541個の標本について五つのマーカー候補を解析した。測定値は三つの反復値で測定した。三つの測定値はこの無処置集団(PITX2 -2、ONECUT、および ABCA8)では測定したが、TAM処置集団に対しては入手可能な材料に制約があったので測定しなかった。これらの測定値は棄却した。理由は、無処置集団(ONECUT2およびABCA8)において測定値の特性が悪かったか、またはPITX2-IIの場合に測定値の特性がこのマーカーの他の測定値(PITX2-I)に比べて有意に悪かったからである。品質指標を充足しない測定ポイントを除去した後に、単独マーカーごとにカプランマイヤー法の生存曲線とROC曲線を得た。
二つの異なる臨床上のエンドポイントを分析に使用した:
・ 無病生存、すなわち全ての種類の再発(遠隔転移、局所領域の再発、もう一方の乳房での再発)を事象として使用する。
・ 無転移生存、すなわち遠隔転移のみを事象として処置する。
カプランマイヤー法で推定した無病生存曲線または無転移生存曲線を、各単独測定法については図55〜80に、また組合せ測定法については図81〜96に示してある。X軸は患者の無病生存時間を年数により示しており、Y軸は無病生存患者の比率を示す。黒色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より上方にある無病患者の母集団中の比率を示し、灰色のプロットはメチル化レベルが最適カットオフ点より下方にある無病患者の母集団中の比率を示す。
カットオフ値が最適化された場合に以下のp値(観測した分布が偶然に生起する確率)を計算した。カットオフ値を最適化するために両グループのクアンタイルを0.2と0.8の間に移動し、曲線を分けるp値をクアンタイルごとに計算した。そうするとp値が最も低いクアンタイルが最良のカットオフ値であった。パーセント値はそのカットオフ点でのメチル化比を示している。
単独遺伝子の測定
タモキシフェン処置
TAM処置(全ての再発)ERBB2 (配列番号5)(図55): p-値 0.089;カットオフ点: 1.3%
TAM処置(遠位のみ)ERBB2 (配列番号5)(図56): p-値0.084; カットオフ点: 0.1%
TAM処置(全ての再発)TFF1 (配列番号12)(図57): p-値0.037; カットオフ点: 50.9%
TAM処置(遠位のみ)TFF1 (配列番号12)(図58): p-値0.029; カットオフ点52.9%
TAM処置(全ての再発)PLAU (配列番号16)(図59): p-値0.056; カットオフ点: 4.8%
TAM処置(遠位のみ)PLAU (配列番号16)(図60): p-値0.065; カットオフ点: 4.8%
TAM処置(全ての再発)PITX2(配列番号23)(図61): p-値0.01; カットオフ点t: 13.1%
TAM処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23)(図62): p-値0.0012; カットオフ点: 14.3%
TAM処置(全ての再発)TBC1D3 (配列番号43)(測定II)(図63): p-値0.28; カットオフ点94.6%
TAM処置(遠位のみ)TBC1D3 (配列番号43)(測定II)(図64): p-値0.078; カットオフ点: 97%
図103は、ER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデルPITX2 (測定1)のみに対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.42クアンタイル)をプロットしてある。
AUC 60月:0.6
AUC 72月:0.69
AUC 84月:0.69
AUC 96月:0.67
図104は、ER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデルTFF1に対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はいろいろな閾値(= 5, 6, 7, 8年)に対するKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.78クアンタイル)をプロットしてある。
AUC 60月:0.7
AUC 72月:0.65
AUC 84月:0.61
AUC 96月:0.64
図105は、ER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデルPLAUに対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はいろいろな閾値(= 5, 6, 7, 8年)に対するKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.77クアンタイル)をプロットしてある。
AUC 60月:0.6
AUC 72月:0.63
AUC 84月:0.57
AUC 96月:0.6
タモキシフェン無処置
タモキシフェン無処置(全ての再発)ERBB2 (配列番号5) (図65): p-値0.21; カットオフ点: 0%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)ERBB2 (配列番号5)(図66): p-値0.23; カットオフ点: 0.6%
タモキシフェン無処置(全ての再発)TFF1 (配列番号12)(図67): p-値0.012; カットオフ点: 49.6%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)TFF1 (配列番号12)(図68): p-値0.016; カットオフ点: 45.4%
タモキシフェン無処置(全ての再発)PLAU (配列番号16)(図69): p-値0.011; カットオフ点: 3.2%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)PLAU (配列番号16) (図70): p-値0.0082; カットオフ点: 5.5%
タモキシフェン無処置(全ての再発)PITX2(配列番号23) (I)(図71): p-値1.4e-06; カットオフ点: 35.4%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23) (I)(図72): p-値1.7 e-05; カットオフ点: 41.2%
タモキシフェン無処置(全ての再発)PITX2(配列番号23) (II)(図73): p-値0.00026; カットオフ点: 56.1%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23) (II)(図74): p-値0.0026; カットオフ点: 61.9%
タモキシフェン無処置(全ての再発)ONECUT2 (配列番号35)(図75): p-値0.26; カットオフ点: 0%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)ONECUT2 (配列番号35)(図76): p-値0.77; カットオフ点: 0%
タモキシフェン無処置(全ての再発)TBC1D3 (配列番号43)(図77): p-値0.004; カットオフ点: 98.6%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)TBC1D3 (配列番号43)(図78): p-値0.00022; カットオフ点: 98.6%
タモキシフェン無処置(全ての再発)ABCA8 (配列番号49)(図79): p-値0.0065; カットオフ点: 60.9%
タモキシフェン無処置(遠位のみ)ABCA8 (配列番号49)(図80): p-値0.15; カットオフ点: 49.2%
パネル
単独マーカーの評価結果に基づき、マーカー候補PITX2-測定法I、TFF1、およびPLAUを使用するモデルを構築することを決定した。これらマーカーの可能な組合せ全てを評価した。
タモキシフェン処置
TAM処置(全ての再発)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)(図81): p-値 0.023; カットオフ点: 0.7クアンタイル
TAM処置(遠位のみ)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)(図82): p-値0.00084; カットオフ点: 0.72クアンタイル
TAM処置(全ての再発)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)およびPITX2(配列番号23)(図83): p-値0.037; カットオフ点: 0.72クアンタイル
TAM処置(遠位のみ)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)およびPITX2(配列番号23)(図84): p-値0.0014; カットオフ点: 0.4クアンタイル
TAM処置(全ての再発)PITX2(配列番号23)およびTFF1 (配列番号12)(図85): p-値0.17; カットオフ点: 0.78クアンタイル
TAM処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23)およびTFF1 (配列番号12)(図86): p-値0.0048; カットオフ点: 0.32クアンタイル
TAM処置(全ての再発)PITX2(配列番号23)およびPLAU (配列番号16)(図87): p-値0.1; カットオフ点: 0.74クアンタイル
TAM処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23)およびPLAU (配列番号16)(図88): p-値0.0081; カットオフ点: 0.44クアンタイル
図102は、ER+N0 TAM処置集団でのマーカーモデルPITX2 (測定法1)およびTFF1に対するROCプロットを種々の時間について示す。図Aは60月でのプロットを示し、図Bは72月でのプロットを示し、図Cは84月でのプロットを示し、図Dは96月でのプロットを示す。遠隔転移のみを事象として定義してある。X軸に示してある感度(予後兆候の悪かった群における全再発患者の比率)およびY軸に示してある特異度(予後兆候の良かった群における全無再発患者の比率)はKM推定値から計算し、また推定の曲線下面積(AUC)を計算してある。中央値カットオフに対する値(三角印)および最良カットオフに対する値(菱形印、0.32クアンタイル)をプロットしてある。
AUC 60月:0.62
AUC 72月:0.67
AUC 84月:0.63
AUC 96月:0.65
タモキシフェン無処置
タモキシフェン無処置(全ての再発)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)(図89): p-値 0.0015; カットオフ点: 0.78クアンタイル
タモキシフェン無処置(遠位のみ)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)(図90): p-値0.003; カットオフ点: 0.8クアンタイル
タモキシフェン無処置(全ての再発)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)およびPITX2(配列番号23)(図91): p-値8.9e-07; カットオフ点: 0.64クアンタイル
タモキシフェン無処置(遠位のみ)TFF1 (配列番号12)およびPLAU (配列番号16)およびPITX2(配列番号23)(図92): p-値5.4e-05; カットオフ点: 0.66クアンタイル
タモキシフェン無処置(全ての再発)PITX2(配列番号23)およびTFF1 (配列番号12)(図93): p-値1.9e-06; カットオフ点: 0.72クアンタイル
タモキシフェン無処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23)およびTFF1 (配列番号12)(図94): p-値3.5e-05; カットオフ点: 0.76クアンタイル
タモキシフェン無処置(全ての再発)PITX2(配列番号23)およびPLAU (配列番号16)(図95): p-値1.1e-06; カットオフ点: 0.68クアンタイル
タモキシフェン無処置(遠位のみ)PITX2(配列番号23)およびPLAU (配列番号16)(図96): p-値1.5e-05; カットオフ点: 0.64クアンタイル
マーカーモデルのロバストネス
モデルのロバストネスを評価するために、モデルマーカーパネルPITX2(測定1)プラスTFF1およびマーカーパネルPITX2(測定1)のみについて200個の反復値でクロスバリデーションを行った。或る一人の患者が良い結果のグループまたは悪い結果のグループに安定的に帰属するか否かを図106に示す。左手の図はモデルマーカーパネルPITX2(測定1)プラスTFF1を示し、右手の図はPITX2(測定1)のみを示す。このプロットから、各患者がグループ1(薄い灰色)またはグループ2(濃い灰色)に帰属した場合にその反復値は幾つになるかが示されている。
図107は、遺伝子PITX2がコードするポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
図108は、実施例3で配列決定した増幅産物の位置を示す。「A」は大きなエクソンが注釈されている遺伝子の説明図を示す。「B」は注釈を付けたmRNA転写変異体を示す。「C」は遺伝子中のCpGリッチ領域を示す。増幅産物1〜11の位置は図の右側に示してある。
図109は、実施例3の遺伝子PITX2の11個の増幅産物の配列決定データを示す。欄「A」および「B」のマトリックスの各カラムは1個の増幅産物の配列決定データを示す。増幅産物の番号はマトリックスの左に示してある。マトリックスの各列はフラグメント内の1個のCpG部位を表し、各カラムは個々のDNA標本を表す。[A]のマークを付した欄のマトリックスはQM測定法で測定したメチル化が中央値より下方にあり、[B]のマークを付した欄のマトリックスはQM測定法で測定したメチル化が中央値より下方にあった。左側にあるバーはメチル化パーセントの物差しを表しており、メチル化度はカラム内の各位置における影によって表現されており、黒色の影は100%メチル化、薄い灰色の影は0%メチル化を示す。白色の場所はデータが得られなかった測定を表した。
図110は、PITX2のmRNA転写変異体の模式図を示し、オンラインのEnsemblデータベースの形で注釈されている。
遺伝子PITX2の配列決定
CpG位置の共メチル化が全エクソンを横断して相互関連していることを確認するために、遺伝子PITX2の配列決定を行った。ビサルファイトによる配列決定のために、遺伝子PITX2内の11個の配列をカバーするように増幅用プライマーをデザインした。更なる詳細は図108を参照のこと。実施例4で分析した16個の標本を利用してアンプリコンを製造した。各標本を亜硫酸水素ナトリウムで処理して配列決定した。ABI 3700配列決定法を使用して配列データを得た。得られた配列の微量を均等化し、出願人所有のビサルファイトによる配列決定用微量分析プログラム(更なる情報はWO 2004/000463を参照のこと)を使用してメチル化パーセントを計算した。
標本
実施例2に記載のQM測定法IIを使用する分析において、8個の標本は高メチル化を示し、8個の標本は低メチル化を示した。
増幅
問題のフラグメントを以下の条件で増幅した。
PCR反応溶液:
Taq 5U/μl 0,2
dNTPs 25mM 各0,2
10x緩衝液 2,5
水 10,1
プライマー(6,25μM) 2
DNA (1ng/μl) 10
サイクル条件:
15分95°C
30秒95°C
30秒58°C
1:30分72°C
40サイクル
配列決定(シークエンシング)
Gリッチプライマーのみを使用して配列決定したが、例外として増幅産物番号2はフォワードプライマーとリバースプライマーの両方を使用して配列決定した。
ExoSAP-IT反応溶液:
4μl PCR産物 + 2μl ExoSAP-IT
45分/37°Cおよび15分/95°C
サイクル配列決定:
1μl BigDye v.1.1
1μl水
4μlサンガー緩衝液
4μl dNTPミックス(0,025 mM各)
-----
10μl
+
5μlプライマー(2pmol/μl)
+
6μl ExoSAP-IT産物
サイクリング
2分96°C, 26サイクルa(30秒/96°C、15秒/55°C、4分/60°C)
精製
96ウェルのプレートMultiScreen (Millipore)に適当な計量器を使ってSephadex G50 (Amersham)を充填した。各ウェルに水300μlを加え、4°Cで3時間インキュベートした。910gで5分間回転して水を除去した。サイクル配列決定産物をプレートに負荷し、910gで5分間回転して精製した。各溶出液にホルムアミド10μlを加えた。
結果
全PCRによって生産物を得た。出願人所有のソフトウエア(更なる情報はWO 2004/000463を参照のこと)によって分析したビサルファイトによる配列決定データを基に製作したマトリックスを図109に示す。欄「A」および「B」のマトリックスの各カラムは1個の増幅産物の配列決定データを示している。増幅産物番号はマトリックスの左に示してある。マトリックスの各列はフラグメント内の単独のCpG部位を表し、各カラムは個々のDNA標本を表す。「A」のマークを付した欄のマトリックスはQM測定法(実施例4参照)によって測定したメチル化が中央値より下方にあることを示し、「B」のマークを付した欄のマトリックスはQM測定法によって測定したメチル化が中央値より下方にあることを示した。左側のバーはメチル化パーセントの物差しを表し、メチル化度はカラム内の各位置における影によって表現されており、黒色の影は100%メチル化、薄い灰色の影は0%メチル化を示す。白色の場所はデータが得られなかった測定を表した。
ビサルファイトによる配列決定の結果、二つの選択した標本クラス間でCpG部位のメチル化に差があることが示され、更に遺伝子を横断する共メチル化が観察された。特に増幅産物4〜7では、二つの分析したグループ間のメチル化に高レベルの差があることが示された。
実施例1に記載のプライマーおよび増幅産物
実施例1に記載のハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド
ER+、N0、無処置集団のランダムに選択された標本セットにおける打ち切りおよび再発患者数
ER+、N0、TAM処置集団における打ち切りおよび再発患者数
実施例3に記載のプライマーおよび増幅産物