(発明の詳細な説明)
本発明はポリヌクレオチドの合成、特に、固相法によりポリヌクレオチドを合成する工程;に関する。本発明を詳述する前に、本発明の概説および本発明の説明に使用した用語の一部の解説を行う。
(A.定義および慣例)
本明細書においては、「ポリヌクレオチド」および「遺伝子」という用語は単複とも互換的に使用する。即ち「遺伝子」という用語は自然界に存在するヌクレオチド配列の意味も有すものの必ずしもそれを指すものではないが、より一般的には何れかの塩基配列のポリヌクレオチドをさす。後に詳述する通り、本発明はオリゴを共に連結するために固相化学を使用し、これにより遺伝子を組立てる。最終的に望まれる遺伝子が例えば2000塩基対を有する場合、本発明の1つの特徴において、この2000bpの二本鎖フラグメントは固体支持体上にオリゴを組立てる工程;により製造し、そして次にこれ等の遺伝子フラグメントを組立てて最終的な(2000bp)遺伝子を形成する。後に説明する理由により、オリゴを300〜500bpのオーダーの遺伝子フラグメントにまで組立て、そして次にこれ等の遺伝子フラグメントの複数を組立てて最終的な遺伝子とする工程;が好ましい場合がある。明確化の目的のために、オリゴの直接の固相組立により製造された生成物は本明細書においては、「遺伝子フラグメント」または「第1のポリヌクレオチド」と称する。2個以上の「遺伝子フラグメント」または第1および第2等のポリヌクレオチドの組立により製造された生成物は「遺伝子」と称する。
本発明は二本鎖形態の遺伝子フラグメントを製造し、ここで第1のポリヌクレオチド分子(場合によりポリヌクレオチド鎖と称する)におけるヌクレオチド(nt)塩基は第2の(隣接する)ポリヌクレオチド分子における相当するヌクレオチド塩基に水素結合している。適切な条件下、例えば高温においては、遺伝子フラグメントの二本鎖形(ds)態は2つの一本鎖(ss)分子に変換できる。従って、「遺伝子」、「遺伝子フラグメント」および「ポリヌクレオチド」という用語は各々、二本鎖および一本鎖の形態の両方を指すために使用できる。「ポリヌクレオチド分子」という用語はヌクレオチドの1つの特定の鎖を指し、これは一本鎖または二本鎖の形態であってよい。
遺伝子フラグメントが二本鎖形態である場合は、それは多くの塩基対(bp)を有する工程;になる。本発明は何れかの数量の塩基対を有する遺伝子フラグメントを提供する。本発明は短い遺伝子フラグメント、即ち100bp未満を有する遺伝子フラグメントも製造できるが、短い遺伝子フラグメントの製造のためには別の技術も当該分野で知られている。本発明の利点は長い遺伝子および長い遺伝子フラグメント、即ち100bp超を有する遺伝子および遺伝子フラグメントの製造も可能とする点である。本発明の種々の実施形態において、約100bp超、または約200bp超、または約300bp超、または約400bp超、または約500bp超、または約600bp超、または約700bp超、または約800bp超、または約900bp超、または約1000bp超の遺伝子および遺伝子フラグメントを製造できる。大部分の遺伝子は約5000bp未満を有し、従って典型的には本発明は約100〜1000bpを有する遺伝子フラグメントから約100〜5000bpを有する遺伝子を製造する際に有用である。
本発明により製造される遺伝子フラグメントは塩基対形態において幾つかのヌクレオチドを有するが、遺伝子フラグメント(または遺伝子)に存在するヌクレオチドの全てが必ずしも塩基対形態にあるわけではない。実際、多くの(全てではないが)場合において、特定のポリヌクレオチド分子の片側または両側の末端におけるヌクレオチドの一部は、その分子の内部に位置するヌクレオチドが塩基対形態にあるとしても、何れかの他の塩基と対にならない場合がある。ポリヌクレオチド分子の末端における非塩基対ヌクレオチドの1つ以上の配列は本明細書においては「粘性末端」を形成するものと称する。このような1つ以上の非塩基対ヌクレオチドは、それらが別の一本鎖ポリヌクレオチド分子とハイブリダイズできるために「粘性」とみなされ、それは既に二本鎖形態にあってもはや「粘性」ではないヌクレオチドとは対照的である。
二本鎖ポリヌクレオチドは本明細書においては、「二本鎖」と称し、ここで二本鎖は2つ(第1および第2の)ポリヌクレオチド分子を含む必要があり、ここで第1のポリヌクレオチド分子内のヌクレオチドの隣接する配列は第2のポリヌクレオチド分子内のヌクレオチドの隣接する配列にハイブリダイズする。「ハイブリダイズする」および「アニーリングする」という用語は、本明細書においては互換的に使用し、2つの一本鎖ポリヌクレオチド分子を共に結合させて二本鎖を形成する方法をさす。即ち、「二本鎖」という用語は遺伝子および遺伝子フラグメントの両方を包含する。
2つのssポリヌクレオチドから二本鎖を形成するためには、第1のポリヌクレオチド分子内のヌクレオチドの配列は第2のポリヌクレオチド分子内のヌクレオチドの配列に相補的でなければならない。アデニン(A)およびグアニン(G)から誘導したヌクレオチドは相補的であり、即ちチミン(T)およびシトシン(C)から誘導したヌクレオチドと塩基対を形成するという事実は当該分野で知られている。後に詳述する通り、本発明はポリヌクレオチド2つが適切な条件下に混合されれば自発的にハイブリダイズして二本鎖を形成するという現象に依存している。この自発的ハイブリダイゼーションが起こるためには、第1のポリヌクレオチド分子内の十分な数量のヌクレオチドがそれが第2の鎖内の相補ヌクレオチドと塩基対を形成できるような態様において整列していなければならない。換言すれば、ポリヌクレオチド分子2つは相補配列を有していなければならない。
多くの目的のために、本発明により製造された遺伝子または遺伝子フラグメント内の塩基対の多くがA/TまたはG/Cの何れかである工程;が望ましく、そしてミスマッチ(例えばA/A、T/T、G/G、C/C、A/C、A/G、T/CおよびT/G塩基対)は望ましくない。しかしながら、本発明は生成物の遺伝子または遺伝子フラグメントに一部のミスマッチ塩基を意図的に作成する工程;ができるという柔軟性を有する。即ち、「二本鎖」という用語は本明細書においてはミスマッチ塩基の完全な非存在を必要とせず、そして実際、一部のミスマッチは二本鎖内に存在してよい。しかしながら、これ等のミスマッチの数が増大するに従い、二本鎖は安定性を消失し、最終的には二本鎖は室温で安定ではなくなる。従って本発明により製造される二本鎖はミスマッチ塩基1つ以上を有していてよいが、ミスマッチ塩基の数は二本鎖が室温で安定でなくなるほど大きくてはならない。
本発明はオリゴヌクレオチド(オリゴまたはODN)を共に結合させて遺伝子または遺伝子フラグメントを形成する。本明細書においては、「オリゴヌクレオチド」(オリゴ、ODN)という用語はヌクレオチドの短鎖を指す。既存の技術を用いて約100nt未満のポリヌクレオチド分子を製造する工程;ができ、ここでこの技術は鎖を「成長させる」工程;によりこれ等の分子を作成する。本質的には、この「成長させる」方法は固体支持体に第1のヌクレオチドを結合させる工程、第1のヌクレオチドを活性化する工程、反応性の第2のヌクレオチドを活性化された第1のヌクレオチドに添加する工程、第2のヌクレオチドを第1のヌクレオチドと反応させてジヌクレオチドを形成する工程、未反応の物質および反応副生成物がある場合はそれらを洗浄除去する工程、第2のヌクレオチドから誘導された部分が反応性となるようにジヌクレオチドを活性化する工程、そして次に、方法を反復する工程;(即ち反応性の第3のヌクレオチドを活性化されたジヌクレオチドに添加する工程、第3のヌクレオチドをジヌクレオチドと反応させてトリヌクレオチドを形成する工程;等々)を包含する。方法により形成されたオリゴヌクレオチドは次に固体支持体から遊離させる。
「成長させる」方法は短いポリヌクレオチドを製造するために極めて良好に機能する。しかしながらヌクレオチドを鎖に付加するたびにあるエラーが導入され、例えば1つではなく2つのヌクレオチドが鎖に付加されたり、または、ヌクレオチドが鎖に付加されなかったりする。従って、所望の生成物の収率はポリヌクレオチド長が増大するに従い急速に低下する。部分的にはこのエラー率が原因となり、さらにこの方法の緩徐さおよび他の理由が原因となって、「成長させる」方法は長い遺伝子、即ち100ntを遥かに超える遺伝子の製造には、不適、または使用不能である。
本発明のオリゴは少なくとも10ntを有する。好ましくは、オリゴは少なくとも20、または少なくとも30、または少なくとも40、または少なくとも50、または少なくとも60、または少なくとも70、または少なくとも80、または少なくとも90、または少なくとも100ntを有する。実際、より長いオリゴが一般的に好ましい。より長いオリゴを使用する工程;の問題点はそれらが標準的な市販の技術を用いて作成された場合、例えば50塩基オリゴ(50mer)の試料は90(重量)%の50merおよび一部の非50mer、例えば一部の48mer、49mer、51mer、52mer等を有する場合があるという点において低純度である場合が多いという事である。さらにまた、50merの僅か約90%が所望のヌクレオチドを有するのみである。一般的に所望のオリゴより短いまたは長いオリゴを除去するためにクロマトグラフィーを使用する場合、望ましくないnt配列を有する50merを除去するために50merを精製する工程;は極めて困難である。従ってこの工程、即ち遺伝子を製造するための成長方法は商業的には成功していない。
本発明のオリゴはヌクレオチド(nt)の鎖を含む合成分子である。オリゴは少なくとも10ntを有する。オリゴにおけるntの数の上限は重要ではない。しかしながら、オリゴ自身が長く(例えば300nt以上)、そして所望の遺伝子または遺伝子フラグメントが短い(例えば僅か約300nt)の場合、オリゴ(およびその相補体)を作成するための方法を用いて遺伝子を作成する工程;ができ、そして本発明は遺伝子を作成するために必要ではない。本発明はオリゴを共に結合させてより長いポリヌクレオチドを形成する工程;に関するものであり、ここで一部の理由により、オリゴを合成するために使用される技術は不十分であるか、または所望の数量のヌクレオチドを有する長いポリヌクレオチドを形成するには適していない。商業規模においてオリゴを作成する現在の技術は約100ntまでのオリゴを作成するために十分である。従って、1つの特徴において、本発明のオリゴは10〜約100ntを有する。
本明細書においては、単数も複数も同義である。例えば「ポンプ」とは1つ以上のポンプをさす。ある場合においては、明確化の目的のために「1つ以上」という表現を使用するが、単数も複数も一般的には互換である。
(B.遺伝子または遺伝子フラグメントを合成するための方法)
(1.方法の概説)
本発明は以下の3つの主要な工程により遺伝子を形成するためにオリゴを組立てる。工程1ではオリゴを組立てて遺伝子フラグメントを形成する。反復すれば、遺伝子フラグメントが所望の長さを有する場合、遺伝子および遺伝子フラグメントは同じものである。しかしながら、所望の遺伝子が遺伝子フラグメントより多いbpを有する場合、第2の工程において、遺伝子フラグメントをクローニングおよび配列決定する工程;により高純度の形態の遺伝子フラグメントを得る工程;ができる。第3の工程においては、精製された遺伝子フラグメントを組立てて最終的な大きいポリヌクレオチドとする。
工程1、即ち中間体遺伝子フラグメントの組立は図1に示す通りである。要約すると、3つの要素、即ち1)ユニバーサルオリゴを担持している固体支持体、2)成長中のフラグメントに支持体を連結するために使用するフラグメント特異的架橋オリゴ、および3)遺伝子フラグメントをビルドするために使用されるオリゴのセットをこの工程において使用する。架橋オリゴは2つのセクション、即ち1つは固体支持体に結合したユニバーサルオリゴに相補的なもの、そして2つ目は「第1のオリゴ」に相補的なものよりなる。第1のオリゴは一本鎖または二本鎖の形態であってよい。二本鎖形態の場合は、第1のオリゴは「粘性末端」を与え、これによりそれは架橋オリゴにアニーリングできる。図1は二本鎖形態、即ち第2のオリゴと予備アニーリングしている形態の第1のオリゴの使用を示す。架橋は支持体および成長中のフラグメントの間の可逆の連結を与え、そして固体支持体からのフラグメントの放出後には除去される。架橋オリゴはフラグメントクローンまたは最終遺伝子内には含まれない。
即ち、遺伝子をビルドする場合の第1工程は配列を遺伝子フラグメントに分解し、その後フラグメントの配列をオーバーラップしているオリゴのセットに分解する工程;である。次にこれ等のオリゴを当該分野で知られた方法で合成する。各オリゴは10ヌクレオチドほどの短さから100ヌクレオチドまたはそれ以上の長さであってよいが、本発明の種々の特徴において各オリゴは20〜100nt、または20〜80nt、または20〜60nt、または20〜40nt、または30〜100nt、または30〜80nt、または30〜60nt、または30〜40ntである。好ましい特徴において、各オリゴは約30〜60ヌクレオチド長であり、そして対向する鎖における2オリゴとオーバーラップしている。2オリゴ間の各オーバーラップ領域を共にアニーリングして室温で各結合部において安定な二本鎖を形成できる。オリゴは成長中の鎖に順次添加してよいが、1つの特徴においては、2つ以上のオリゴを予備アニーリングして二本鎖(粘性末端を有するもの)を形成し、そして、二本鎖を成長中の鎖の粘性末端にアニーリングする。
組立方法はユニバーサルオリゴで誘導化した固体支持体に架橋オリゴをアニーリングする工程;により開始する。アニーリング工程の後、過剰の未結合の架橋オリゴを固体支持体から洗浄除去する。次に、第1のオリゴ、場合により二本鎖形態のものを、架橋オリゴにアニーリングする。過剰の未結合二本鎖を固体支持体から洗浄除去する。アニーリングおよび洗浄のサイクルを各隣接オリゴまたは二本鎖に付き、全オリゴが共にアニーリングするまで反復する。単一の酵素的連結反応で末端における遺伝子の全結合部が共有結合される。最終的に、二本鎖遺伝子フラグメントを固体支持体から遊離させる。
即ち、本発明は下記工程:
(a)固体支持体に結合したユニバーサルオリゴを提供する工程;
(b)ユニバーサルオリゴに架橋オリゴをアニーリングする工程;により粘性末端を含む開始二本鎖を形成する工程;
(c)第1のオリゴまたは第1の二本鎖を粘性末端にアニーリングして第1の中間体二本鎖を形成する工程;
(d)第2のオリゴまたは第2の二本鎖を第1の中間体二本鎖にアニーリングして第2の中間体二本鎖を形成する工程;;
(e)必要に応じて工程(d)を反復して最終二本鎖を形成する工程;
(f)ユニバーサルオリゴおよび架橋オリゴが相互に、または何れかの他のオリゴまたは二本鎖に連結しない条件下でオリゴおよび最終二本鎖の二本鎖を共に連結する工程、を含む遺伝子組立のための方法を提供する。
(2.固体支持体)
本明細書においては、「固体支持体」という用語は固相支持体上で行われる有機合成の分野における当業者の知るその通常の意味を有する。本発明において有用であるためには、固体支持体は固体、即ち液体および気体ではないものであり、そして室温およびpH7において水に不溶である。本発明の固体支持体は水の存在下で安定であり、即ち、固体支持体は長時間、例えば24時間、水に曝露されてもその化学組成および形状を保持する。本発明において有用な固体支持体は、水への初回曝露により幾分の変化を起こしてよく、例えばそれは膨潤してよいが、この初回の変化の後は固体支持体は水中で安定、即ち化学構造に関して不変である。固体支持体の表面は、固体支持体が水中に入れられた場合、水に溶解した溶質が接触できるものである。
固体支持体は表面の体積に対する比を有している。表面の体積に対する比を測定する方法は当該分野で知られており、有機合成のための固体支持体の販売元は固体支持体の表面の体積に対する比を報告している場合が多い。典型的には、より高い表面の体積に対する比が本発明の固体支持体のためには好ましい。その理由は、本発明のポリヌクレオチドの製造は固体支持体の表面に初期から連結しているポリヌクレオチドを伸長する工程;に依存しているためである。固体支持体の体積を固定して固体支持体の表面積を増大させれば、典型的には表面により多くの初期ポリヌクレオチドを連結する工程;が可能となり、これにより本発明の望ましい生成物である伸長されたポリヌクレオチドのより多くを製造できるようになる。従って、多孔性の固体支持体が本発明においては好ましい。
固体支持体は好ましくは1つ以上の以下の特徴を有し、即ち(a)支持体は大分子の捕獲を回避するため溶液中で非膨潤性でなければならず;(b)支持体は重合体鎖の余分な成長を遮蔽するほど小さい細孔または空隙を含有してはならず;(c)官能基は支持体表面で接触可能でなければならず;(d)支持体は方法において使用される試薬および条件に対して不活性であり、そして組立方法を妨害してはならず;(e)官能基の表面の密度は遺伝子組立のために適切でなければならず;そして(f)表面結合化学は再現性があり、効率的であり、経済的でなければならない。
固相遺伝子組立のための好ましい固体支持体材料は多孔性のポリエチレンまたはポリプロピレンである。これ等の表面はプラズマ処理(R.Matson,J.Rampal and P.Coassin,Analytical Biochemistry,(1994),vol.217,306−310)、次いで、カルボジイミド化学によるユニバーサルリンカーオリゴへのプラズマ処理により導入された反応性の基の共有結合により誘導してよい。非緊密な樹脂ビーズの集積物とは異なり1ピース、即ちモノリシックな多孔性のフリットを使用する工程;の利点は、アニーリングおよび連結反応の間に固体表面周囲の試薬の小容量を循環させる反復前方/逆方流動方法をフリットが可能にする点である。この混合様式は200bp遺伝子長を超える大分子の固相反応に特に有利である。この理論に制約されないが、流動が長コイルdsポリヌクレオチド分子の伸長を補助し、その拡張末端を溶液標的がより接触し易いようにしていると考えられる(T.Perkins,D.Smith and S.Chu,Science,(1997) vol.276,2016−2021;D.Smith,H.Babcock and S.Chu,Science,(1999)vol.283,1724−1727;C.Haber and D.Wirtz,Biophysical Journal,(2000) vol.79,1530−1536)。結合工程の効率を上昇させるためには、支持体は好ましくは非緊密なビーズではなく固定された支持体である。
本発明の装置および方法において使用するための好ましい固体支持体材料は5〜35μmの細孔を有する多孔性ポリエチレンである。この材料は数社、例えばPorex Technologies(Fairburn,GA)およびPorvair Advaced Materials(Hendersonville,NC)より製造販売されている。両社ともフリットを直接鋳造できる。或いは、これ等の会社および他の供給元はバルク材料のシートまたはロッドから注文どおりのフリット形状を打ち抜く工程;ができる。
別の固体支持体材料は上記した同じカラムで使用できるポリスチレン樹脂である。この材料を使用する工程;の利点は、従来のバッチ様式において固体支持体を製造し、それにオリゴを結合するために使用できる点である。樹脂は上記した同様の反応カラム内にポリエチレンフリットの2ピースの間に緊密に充填されて含有されている。固体支持体の製造は、カラムの充填により時間がかかるものの、個々のフリットを製造するよりも簡素でより経済的である。
本発明において使用してよい他の有機固体支持体は例えばポリプロピレン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートを包含する。有機固体支持体の代わりに、無機材料も使用してよく、例示される無機材料は金属酸化物、例えばシリカまたはアルミナを包含する。
固体支持体は何れかの従来の形態であってよく、ここで適当な形態は例えばモノリシック多孔性材料およびメンブレンである。固体支持体は非多孔性の材料、例えばビーズ、繊維または他の粒状物質の集積物である工程;により多孔性となってもよい。
(3.ユニバーサルオリゴ)
本発明の組立方法は固体支持体に連結したオリゴヌクレオチドを用いて開始され、この場合、この特定のオリゴヌクレオチドは本明細書においてはユニバーサルオリゴヌクレオチドまたはユニバーサルオリゴと称する。ユニバーサルオリゴは後述する態様において場合により二本鎖形態において別の(第2、第3の等々)オリゴとの接触により伸長され、二本鎖ポリヌクレオチド(ds−ポリヌクレオチド)を与える。次にds−ポリヌクレオチドの部分を固体支持体から分離して所望のds−ポリヌクレオチドおよびユニバーサルオリゴをなお固体表面上に結合している状態で得る。本発明の多くの利点の1つは原料、即ち固体表面上に結合しているユニバーサルオリゴヌクレオチドがポリヌクレオチド合成の終了時に再生され、そして別のポリペプチドの作成のために使用できる点である。固体支持体に連結しているオリゴヌクレオチドは本明細書においてはユニバーサルオリゴヌクレオチドと称するが、その理由はユニバーサルオリゴのヌクレオチド配列は第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列とは独立しており、即ち、ユニバーサルオリゴは「普遍的(ユニバーサル)に」、即ち、第1のポリヌクレオチドの何れの配列に対しても使用できるためである。
ユニバーサルオリゴヌクレオチドが固体支持体に連結する態様は、ユニバーサルオリゴヌクレオチドが(i)第2のオリゴヌクレオチド(本明細書においては架橋オリゴヌクレオチドと称する)とのハイブリダイゼーション反応のために接触可能な態様で連結しており、そして(ii)伸長反応の過程において固体支持体に連結した状態で残存する限り本発明においては重要ではない。オリゴヌクレオチドおよび固体支持体の両方とも当該分野で知られている。さらにまた固体支持体にオリゴヌクレオチドを連結させる方法も当該分野で知られている。さらにまた本発明により必要とされる態様において固体支持体に連結したオリゴヌクレオチドも当該分野でよく知られている。
1つの共通する手法はカルボン酸官能基を有する固体支持体を使用し、次にこれ等のカルボキシル基をアミン末端オリゴヌクレオチドと反応させる工程;である。逆の手法、即ちその表面にアミン官能基を有する固体支持体を使用し、支持体とカルボン酸末端オリゴヌクレオチドと反応させる手法も、共通して用いられている。いずれの場合においても、アミド基は固体支持体のオリゴヌクレオチドに連結する。
従来どおり、オリゴヌクレオチドは3’および5’末端の両方を有するものとして認識される。ユニバーサルオリゴの3’末端または5’末端の何かを本発明の固体支持体に連結させてよい。しかしながら支持体結合ユニバーサルオリゴヌクレオチドの特別な条件は固体支持体に連結していないオリゴヌクレオチドの末端、即ち本発明において遊離末端と称するものは、非反応性であると同時に、天然のヌクレオチドと空間的に同様または同一でなければならないというものである。非反応性の遊離末端を得るための選択肢は後に記載する。
ユニバーサルオリゴに存在するヌクレオチドの数およびこれ等のヌクレオチドの塩基配列は重要ではない。好ましくは、ユニバーサルオリゴは5〜50ヌクレオチドを有する。ユニバーサルオリゴが5ヌクレオチド未満を有する場合、それは架橋オリゴと極めて安定なハイブリッドを形成しない。合理的に安定なハイブリッドを形成するためには、ユニバーサルオリゴは好ましくは10〜30ヌクレオチド、例えば約20ヌクレオチドを有する。30ヌクレオチド超を有するユニバーサルオリゴを本発明の実施において使用してもよいが、これ等の比較的長いユニバーサルオリゴは特に好都合ではなく(特にリンカー基がユニバーサルオリゴと固体支持体の間に位置する場合)、そして、一般的に作成により経費を要する。
ユニバーサルオリゴの塩基配列は重要ではない。好ましくはユニバーサルオリゴがヘアピンを形成しないように配列を選択する。さらにまた、配列のハイブリッドが反応のワーキング温度より高値、即ち概ね室温より高値のTm(二本鎖50%の融点)を有するように配列を選択しなければならない。さらにまた、ユニバーサル配列はAのみ、またはTのみ、またはGのみ、またはCのみを有さない工程;が好ましい。
(4.リンカー基)
ユニバーサルオリゴは固体支持体に直接連結してよいが、本発明の1つの特徴においては、リンカー基はユニバーサルオリゴと固体支持体の間に位置させる。リンカー基は部分的には都合上存在する。即ち、一部の固体支持体はユニバーサルオリゴに容易に、または経済的に存在する反応性の基と反応しない反応性の基を有する。この場合、リンカー基は2官能性であり、固体支持体およびユニバーサルオリゴの両方と反応する官能基を有する。しかしながら、リンカー基はまたユニバーサルオリゴを溶液中にさらに進展させる目的のためにも寄与し、そしてこのため、架橋オリゴとの反応により使用し易くなっている。従って、本発明の1つの特徴において、リンカー基は固体支持体とユニバーサルオリゴの間に位置する。
好ましい特徴において、ポリオキシアルキレンのセグメントを固体支持体とユニバーサルオリゴのヌクレオチド配列の間に位置させる。ポリオキシアルキレンのこのセグメントは好ましくはポリオキシエチレンである。1つの特徴において、ポリオキシアルキレンのセグメント内には2〜50のオキシアルキレン単位が有るが、種々の他の特徴においては、ポリオキシアルキレン内には2〜40、4〜40、6〜40、2〜30、4〜30、6〜30のオキシアルキレン単位が有る。ポリオキシアルキレン単位は30より多いオキシアルキレン基を含有してよいが、これはユニバーサルオリゴ/固体支持体製品の経費を増大させる傾向がある。このポリオキシアルキレンセグメントはリン酸基を含有してよい。リン酸基は好都合にはポリオキシアルキレンセグメント内部に位置づけられるが、これは、例えばポリヌクレオチドセグメントの内部またはこれに隣接してポリオキシアルキレンセグメントを含むためにオリゴ製造のための固相合成の手法を容易に使用する工程;ができ、このような場合、ポリオキシアルキレンセグメントはリン酸基を含むためである。
(5.架橋オリゴおよび開始二本鎖)
図2に示す通り、架橋オリゴは固体支持体上のユニバーサルリンカーオリゴおよび標的遺伝子の1末端の両方にアニーリングする。この架橋オリゴは連結に関与せず、従って、穏やかな変性条件下で除去できる。この方法には幾つかの利点がある。ユニバーサルオリゴヌクレオチドを有する単一の固体支持体は製造、品質管理および在庫を単純化させる。連結の選択的な可逆性により、正しい緩衝液および熱条件の下で容易に生成物遺伝子または遺伝子フラグメントを固体支持体から遊離させる工程;ができ、そしてこのため、標的への制限部位配列の付加を回避できる。この可逆的連結の重要な利点は、固体支持体を 再使用できる工程;であり、この工程;は新しい遺伝子の製造が新しい固体支持体を手作業によりロードする過程を含まない工程;を意味する。
本発明の第1工程において、架橋オリゴヌクレオチドはユニバーサルオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。何れかの所望のヌクレオチド配列の架橋オリゴヌクレオチドを得るための方法は当該分野で知られている。実際、このようなオリゴヌクレオチドは多くの製造元より市販されている。この第1工程の生成物を原料(初期)二本鎖と称する。
開始二本鎖の条件は架橋オリゴヌクレオチドの部分がユニバーサルオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしない工程;である。好ましくは、ユニバーサルODNにハイブリダイズしない架橋ODNの部分は隣接するヌクレオチドの配列よりなり、ここで、配列は少なくとも5、または6、または7、または8、または9、または10、または11、または12、または13、または14、または15、または16、または17、または18、または19、または20ヌクレオチド長以上である。ユニバーサル(支持体結合)オリゴヌクレオチドと架橋(溶液相)オリゴヌクレオチドの間に適当なハイブリッドを形成するための方法も同様に当該分野で知られている。
ユニバーサルおよび架橋オリゴヌクレオチドの間のハイブリッドは、架橋ODNおよび第1のポリヌクレオチドの部分を形成する第1のODNの間に形成されるハイブリッドと少なくとも相対比較した場合に強力でなければならない。別の特徴において、ユニバーサルODNはG/C結合がA/T結合より強力であるため、少なくとも50%GC含量である。ハイブリダイズして第1のハイブリッドを形成する塩基の典型的な数は17である。このハイブリッド中のハイブリダイズした塩基の数が減少するに従い、ハイブリッドは典型的には、ハイブリッドの強度を維持するためにはより高値の比率のG/C塩基対を含有しなければならなくなる。典型的には、ハイブリッドに十分な強度を与えるためには、第1のハイブリッドはハイブリダイズした形態にある少なくとも約10塩基を有さなければならない。ハイブリッドは17個より多いハイブリダイズした塩基を含有できるが、約25塩基より多くがハイブリダイズした形態にある場合は所望の塩基対を有さないハイブリッドが形成される可能性が高くなる。しかしなお、第1のハイブリッド中のハイブリダイズした塩基の数の上限は25超、むしろ30超である。
(6.第1の中間体二本鎖)
第1の工程の前、同時または後におこなってよい第2の工程において、第1のODNを架橋ODNと接触させる。第1のODNはそれが第1のポリヌクレオチドの部分となる上記ODNの一番目のものであるため、「第1のODN」と称する。第1のODNは少なくとも部分的には相補であり、従って、非相補である架橋ODNの部分にはハイブリダイズし、そしてユニバーサルODNにはハイブリダイズしない。第1のODNが架橋ONDにハイブリダイズする場合、第2のハイブリッドがこれにより形成され、ここで、第2のハイブリッドは架橋ODNの第1のヌクレオチド領域にハイブリダイズしたユニバーサルODNおよび架橋ODNの第2のヌクレオチド領域にハイブリダイズした第1のODNを含み、ここで第1のODNはさらにユニバーサルまたは架橋ODNの何れにもハイブリダイズしないヌクレオチド領域を含む。
第2の工程を第1の工程と同時に行う場合、架橋および第1のODNを同時にユニバーサルオリゴヌクレオチドに接触させる。この「同時」手法の1つの実施形態において、架橋および第1のODNを相互にアニーリングした後にそれらをユニバーサルODNに接触させる。第2の工程を第1の工程の後に行う場合は、第1のODNを第1のハイブリッドにハイブリダイズさせる。第2の工程を第1の工程よりも前に行う場合は、ユニバーサルおよび第1のODNを相互に接触させるがハイブリダイズさせず、そして架橋オリゴヌクレオチドを添加した時点でそれをユニバーサルおよび架橋ODNにハイブリダイズさせる。
この第1の中間体ハイブリッドは、本発明において有用であるためには、多くの基準に合致しなければならない。第1に、ユニバーサルODNの遊離末端、即ち固体支持体に直接結合していない末端は、オリゴヌクレオチド連結反応の過程を通じて如何なる他のオリゴヌクレオチドとも共有結合してはならない。この目標を達成するための1つの方法はユニバーサルODNの遊離末端がヒドロキシル基を含まないようにする工程;である。固体支持体をユニバーサルODNの3’末端に結合させる場合は、5’末端は、それが他のODNとの連結反応に参加しないようにするためにはリン酸基を保有しなくてよい。さらにまた本発明の好ましい実施形態においては、架橋ODNは、ユニバーサルODNにハイブリダイズするヌクレオチド配列と第1のODNにハイブリダイズするヌクレオチド配列の間に存在する本明細書においてはギャップ配列と称するヌクレオチドの配列が存在するように設計する。このギャップ配列は、ユニバーサルODNの遊離末端に最も近接している第1のODNの末端からユニバーサルODNの遊離末端を、これ等の末端が第2のハイブリッド内に存在する工程;からギャップ配列の長さと等しい距離で、効果的に分離する。
別の基準として、ユニバーサルおよび架橋ODNの間に形成されたハイブリッドのTm(融点)は好ましくは架橋および第1のODNの間に形成されたハイブリッドのTmより高値である。この態様において、架橋およびユニバーサルODNは架橋および第1のODNを融解(脱ハイブリダイズ)する条件下でハイブリダイズしたまま残存している。
(7.洗浄工程)
方法の各工程の間、所望の生成物は精製された形態、即ち望ましくないODNを含有しない状態で存在しなければならない。例えば、ユニバーサルODNを固体支持体に連結した後、これを何れの非連結(溶液相)ユニバーサルODNも除去されるように洗浄する工程;が望ましい。同様に、第1の中間体ハイブリッドを形成する工程;が望ましい場合は、架橋ODNを好ましくは第1のハイブリッドから洗浄除去した後に、オリゴヌクレオチド伸長反応を継続する。同様に、第2の中間体ハイブリッドを形成した後に、第2のハイブリッドの部分ではない何れかのユニバーサル、架橋または第1のODNは好ましくはそれらが第2のハイブリッドとそれ以上接触できないように洗浄除去する。そのようにする工程;により、表面結合ユニバーサルODNのモル量に基づいた場合の所望のポリヌクレオチドの収率が上昇する傾向がある。
(8.第1のオリゴvs第2の二本鎖)
第1のODNは、第1のODNが架橋ODNにハイブリダイズする時点において第2のODNにハイブリダイズしてもしなくてもよい。しかしながら、第1のODNの必要な特徴はそれが架橋ODNにハイブリダイズした後であっても、第2の部分的に相補のODNにハイブリダイズするために使用できるヌクレオチド配列がある工程;である。第3のODNおよび第4のODN等々についても、第1のポリヌクレオチドまたはその所望の部分を製造するために必要であれば同様の工程;が言える。即ち、第1、第2、第3、第4、第5等々のODNを含む各ODNは、本発明により製造された二本鎖ポリヌクレオチドの相補鎖中に存在する2つのODNにハイブリダイズする。換言すれば、第1、第2等々のODNの各々は2つのODNに部分的にハイブリダイズする。ODN、例えば第2のODNが2つの相補ODN、例えば第1および第3のODNにハイブリダイズする場合、2つの相補ODNの間、例えば共に第2のODNにハイブリダイズする場合の第1および第3のODNの間には、ヌクレオチドギャップが無い工程;が好ましい。こうする工程;により、リガーゼは第1および第3のODNを共に結合する工程;ができるようになる。換言すれば、全体で、第1、第2、第3等々のODNは第1のポリヌクレオチドまたはその所望の部分に存在するヌクレオチドの各々を含む。
本発明の任意の実施形態において、2つ以上のODNを共に連結した後に、第1のポリヌクレオチドを形成する最終連結反応を行ってよい。例えば、第1、第2および第3のODNが共にアニーリングして第1の中間体二本鎖を形成した後、得られたコンストラクトを連結条件に付してよい。この連結生成物を次に第4等々のODNおよび/または二本鎖に曝露する工程;により第1のポリヌクレオチドを製造する工程;を目標にしてビルドしてよい。最終連結反応の前の、特に部分的または非連結型の表面結合ODNを本明細書においてはODNコンストラクトと称する。
(9.連結)
ODNの各々が所望の順序において相互にハイブリダイズした後、完全ハイブリダイズコンストラクトを連結条件に付す工程;により、第1、第3、第5等々のODNを順次相互に共有結合させ、そして、第2、第4、第6等々のODNを順次相互に共有結合させる。この連結反応の後、別のODNに連結していないODNはユニバーサルおよび架橋ODNのみである。
(10.遺伝子フラグメント単離)
連結反応が終了した後、連結フラグメントが架橋ODNから変性し、そして架橋ODNがユニバーサルODNから変性するように、生成物を変性条件に曝露する。この反応順序による最終生成物はユニバーサルODNに連結した固体支持体、架橋ODN、および、第1、第2、第3、第4等々のODNの生成物である第1のオリゴヌクレオチドである。この時点でユニバーサルオリゴは別の遺伝子または遺伝子フラグメントの製造のために使用してよい。
(C.遺伝子フラグメントから遺伝子へ)
(1.遺伝子フラグメントの組立)
本発明の1つの特徴において、オリゴを共に連結する工程;により製造したポリヌクレオチドは最終的な所望のポリヌクレオチド(遺伝子)のフラグメントである。共に連結するオリゴの数が増大するに従って、特定のポリヌクレオチドが所望の配列を有する可能性は低下する。これは大部分はオリゴが100%純度でないという事実に起因する。従って、約800塩基対超の所望のポリヌクレオチドを製造するための本発明の好ましい特徴においては、本明細書に記載した固相合成の操作法を用いて2つ以上の遺伝子フラグメントを製造し、そして次に、これ等の2つの遺伝子フラグメントを好ましくは連結条件下に共に結合させて、最終的な所望のポリヌクレオチドを作成する。
即ち、第1のポリヌクレオチドは最終的な所望の標的ポリヌクレオチドであっても無くてもよい。本発明の1つの特徴において、第1のポリヌクレオチドは最終的な所望の標的であり、そしてそれは、第1のポリヌクレオチドが利用される工程、例えばmRNA合成のための鋳型として機能する工程;を可能にするベクターまたは他のコンストラクト内にそれ挿入する工程;を可能にする末端基を有する。しかしながら、本発明の別の特徴においては、第1のポリヌクレオチドは最終的な所望の標的ではない。最終的な所望の標的を製造するためには、第2のポリヌクレオチドを、好ましくは第1のポリヌクレオチドを製造した場合と同様の態様において製造する。これ等の第1および第2のポリヌクレオチドは、それらが各々オーバーハングヌクレオチド配列を有するように設計し、ここで第1のポリヌクレオチドにおけるオーバーハングヌクレオチド配列は第2のポリヌクレオチドにおけるオーバーハングヌクレオチド配列に相補である。最終的な標的ポリヌクレオチドを製造するためには、第1および第2のポリヌクレオチドは、溶液中において、第1および第2のポリヌクレオチドを共に結合させるリガーゼの存在下に接触させる。前述したとおり、標的ポリヌクレオチドは、標的がmRNA合成のための鋳型として機能できるようにするベクターまたは他のコンストラクト内にそれを挿入できるように設計してよい。
本発明の別の特徴において、複数のポリヌクレオチド、即ち、第1、第2等々のポリヌクレオチドを前述した固相法により製造し、ここでこれ等の複数のポリヌクレオチドは例えば連結反応を介して共に結合でき、標的ポリヌクレオチドを形成できる。換言すれば、本発明は2つ以上のポリヌクレオチドを提供し、ここでこれ等のポリヌクレオチドの少なくとも1つは本発明の固相合成法により製造され、共に連結して標的ポリヌクレオチドを形成してよい。
即ち、本発明の1つの特徴は固体支持体上に遺伝子またはその部分を組立するための方法を提供し、方法は下記工程:
(a)固体支持体上に第1の遺伝子フラグメントを組立てる工程、ここで第1のフラグメントは少なくとも50塩基対を有する工程;
(b)第1のフラグメントを固体支持体から分離して溶液中の第1のフラグメントを得る工程;
(c)固体支持体上に第2の遺伝子フラグメントを組立てる工程、ここで第2のフラグメントは少なくとも50塩基対を有し、そして第1のフラグメントと非同一である工程;
(d)第1のフラグメントを支持体結合の第2の遺伝子フラグメントと結合させて最終遺伝子を得る工程;および、
(e)(d)の遺伝子を固体支持体から分離する工程;
を含む。
明確化のため、この場合および記載した方法における遺伝子フラグメントは二本鎖または部分二本鎖の形態内の2核酸分子であり、それらは共にハイブリダイズする個々のオリゴのセットではない工程;に注目されたい。僅か2つの遺伝子フラグメントを共に組み合わせる代わりに、2つより多い遺伝子フラグメントを組み合わせて所望の遺伝子を製造する。例えば本発明は下記工程:
(a)固体支持体上に第1の遺伝子フラグメントを組立てる工程、ここで第1のフラグメントは少なくとも50塩基対を有する工程;
(b)第1のフラグメントを固体支持体から分離して溶液中の第1のフラグメントを得る工程;
(c)固体支持体上に第2の遺伝子フラグメントを組立てる工程、ここで第2のフラグメントは少なくとも50塩基対を有し、そして第1のフラグメントと非同一である工程;
(d)固体支持体から第2のフラグメントを分離して溶液中の第2のフラグメントを得る工程;
(e)固体支持体上に第3の遺伝子フラグメントを組立てる工程;
(f)第1のフラグメントを支持体結合の第3の遺伝子フラグメントに結合させてより長い遺伝子フラグメントとし、そして第2の遺伝子フラグメントをより長い遺伝子フラグメントに結合させて最終遺伝子とする工程;および、
(g)最終遺伝子を固体支持体から分離する工程;
を含む3つの遺伝子フラグメントが組み合わせられる方法を提供する。
この方法を拡張する工程;により、4、5、6、7またはこれより多くの遺伝子フラグメントを組み合わせて最終遺伝子が得られるようになる。これ等の方法は、部分的には遺伝子フラグメントの1つを固体支持体に結合させたままとし、そして次に溶液相の遺伝子フラグメントを固体支持体結合遺伝子フラグメントに添加する工程;に依存している。しかしながら、本発明の別の特徴においては、遺伝子フラグメントの全てを溶液中で共に組み合わせる。例えば、本発明は溶液中で最終遺伝子を組立てるための方法を提供し、方法は下記工程:
(a)固体支持体上に第1の遺伝子フラグメントを組立てる工程、ここで第1のフラグメントは少なくとも50塩基対を有する工程;
(b)第1のフラグメントを固体支持体から分離して溶液中の第1のフラグメントを得る工程;
(c)固体支持体上に第2の遺伝子フラグメントを組立てる工程、ここで第2のフラグメントは少なくとも50塩基対を有し、そして第1のフラグメントと非同一である工程;
(d)固体支持体から第2のフラグメントを分離して溶液中の第2のフラグメントを得る工程;
(e)第1のフラグメントおよび第2のフラグメントを単一の溶液中で組み合わせる工程;および、
(f)工程(e)の第1および第2のフラグメントを共有結合させて溶液中の最終遺伝子を得る工程;
を含む。
この方法は、3、4、5等々の遺伝子フラグメントを製造し、そしてこれ等のフラグメントを溶液中に組み合わせる工程;により最終的な所望の遺伝子を得る工程;にも拡張してよい。
(D.ユニバーサルオリゴに結合させた固体支持体を含む製品)
(1.固体支持体+リンカー基+ユニバーサルオリゴ)
本発明の別の特徴において、固体支持体、ポリヌクレオチド(例えば前述したユニバーサルオリゴ)および支持体とポリヌクレオチドとの間に位置する連結基を含む製品が提供される。連結基は固体支持体およびポリヌクレオチドの両方に共有結合しており、従って本発明のこの特徴は式SS)−L−PNにより示してよい製品を提供し、ここで「SS)」とは固体支持体を示し、「L」は連結基を示し、そして「PN」はポリヌクレオチドを示す。PNの5’末端はLに直接結合してよく、この場合、製品は式SS)−L−PN(5’)と示してよく、或いは、PNの3’末端がLに直接結合してよく、この場合、製品は式SS)−L−PN(3’)と示してよく、ここでこれ等は本発明の2つの個別の特徴である。
連結基は(1つ以上の)ポリオキシアルキレン基であるか、これを包含する。種々の実施形態において、以下の基準の1つまたは何れかの2つ以上を用いて製品を説明する:即ち、ポリオキシアルキレン基はポリオキシエチレン基であり;2つのポリオキシアルキレン基が連結基中に存在し、ここでこれ等の2つのポリオキシアルキレン基はリン酸基により分離され、これによりPOA−PH−POAで示される構造を与え、ここで「POA」はポリオキシアルキレン基を示し、そして「PH」はリン酸基を示し;3つのポリオキシアルキレン基が連結基中に存在し、ここでそれらはリン酸基により相互に分離され、即ちリンカーは構造POA−PH−POA−PH−POAを包含し;リンカーはさらに炭化水素基(HC)を含み、ここで炭化水素基は固体支持体とポリオキシアルキレン基の間に位置し、これによりHC−POA−(場合によりPH−POA等)で示される構造を与え、ここで「HC」は炭化水素基を示し;炭化水素基は分子式重量50〜500g/モルを有し;ポリヌクレオチド基は5〜50ヌクレオチドよりなり;ポリヌクレオチドの5’末端はリンカー基に結合され、そしてポリヌクレオチドの3’末端はリン酸基または別のオリゴまたは二本鎖の5’ホスホリル化末端に連結できない他の基を含有し;ポリヌクレオチドの5’末端はリンカー基に結合され、そして、ポリヌクレオチドの3’末端はヒドロキシル基で終結している。即ち、1つの特徴において、本発明は式SS)−(POA−PH)n−POA−HC−PN(3’)により示される製品を提供し、ここでnは1〜10から選択される整数である。
(2.固体支持体+リンカー基+ユニバーサルオリゴ+架橋オリゴ)
別の特徴において、本発明は架橋オリゴにアニーリングする上記製品(即ち式SS)−L−PNの製品)を提供する。架橋オリゴは「P」基中に存在するヌクレオチドの一部または全部にアニーリングするリンカーポリヌクレオチド領域を包含する。好ましくは、リンカーポリヌクレオチド領域は5〜50の隣接ヌクレオチドよりなる。架橋オリゴはさらに5〜50隣接ヌクレオチドよりなる架橋ポリヌクレオチド領域を包含し、ここで架橋ポリヌクレオチド領域はPNのポリヌクレオチド基にアニーリングしない。PNとのアニーリング形態の架橋オリゴは本明細書においては初期または開始二本鎖と称し、ここでこの開始二本鎖は本発明の1つの特徴である。1つの特徴において、製品は式SS)−L−PN(3’)により示され、そしてPNにアニーリングする架橋オリゴは架橋オリゴの3’末端においてリン酸基を有さない。
(3.固体支持体+リンカー基+ユニバーサルオリゴ+架橋オリゴ+第1のオリゴ)
別の特徴において、架橋ODNの架橋ポリヌクレオチド領域は第1のオリゴ(A)または第1の二本鎖(A+B)にアニーリングし、ここでは簡便のため、この説明を第1の二本鎖に関して行う。この状況は図3に示す通りであり、ここで
は固体支持体を示し、そして
および
は各々ポリヌクレオチドを示す。
この配置において、図3に示す通り、Aの3’末端および5’末端の両方が連結反応を起こす工程;ができ、そしてBの3’末端および5’末端の両方が連結反応を起こす工程;ができる工程;が望ましい。しかしながら、PNの3’末端とBOの5’末端の何れも、図3に示すコンストラクトがリガーゼと接触する場合に連結反応を起こさない工程;が必要である。この目標を達成するために2つの方法を用いてよい。第1のものはギャップ法と称されるものであり、これによればPNおよびAの両方がBOにアニーリングするが、それらはヌクレオチドギャップまたはスペーサー領域がPNの3’末端とAの5’末端の間に形成されるような態様でアニーリングする。これは図3においてGap1として示す。このギャップは少なくとも1ヌクレオチド長であり、そして本発明の種々の特徴においてギャップは2、または3、または4、または5、または6ヌクレオチド長である。この同様の手法、即ちギャップを形成する工程;は、BOの5’末端がBの3’末端と連結しない工程;を確保するために使用する工程;ができ、この場合、この手法はこれ等の2末端の間に図3においてGap2として示すギャップを形成する工程;を包含する。
代替的な手法はPNの3’末端を「連結不可能」、即ち、リガーゼの作用に対し構造的に不適合とする工程;である。Aの5’末端はリン酸基で終結しているため、PNの3’末端をAの5’末端と連結不可能とするためには、PNの3’末端がヒドロキシル基を欠失していなければならない。例えば、PNの3’末端はリン酸基を有してよく、これによりPNの3’末端とAの5’末端の両方がリン酸基を有し、この場合、2つのリン酸基はリガーゼの作用下に共に連結する工程;はない。この場合、Gap1は0ヌクレオチド長であってよい。場合により、Gap1は1ヌクレオチド長以上であり、PNの3’末端はAの5’リン酸基と連結不可能となる。この手法によりPNの3’末端がAと連結反応する工程;に2重に対抗できる。
本発明の種々の特徴において、Gap1は約5ヌクレオチド長であり、PNが3’ヒドロキシル基を有し、Gap2は0ヌクレオチド長であり、そしてBOは5’リン酸基を欠失しており;Gap1は1〜約5ヌクレオチド長であり、PNが3’ヒドロキシル基を有し、Gap2は1〜5ヌクレオチド長であり、BOは5’リン酸基を有し;Gap1は0ヌクレオチド長であり、PNが3’ヒドロキシル基を欠失しており、Gap2は0ヌクレオチド長であり、そしてBOは5’リン酸基を欠失しており;Gap1は0ヌクレオチド長であり、PNが3’ヒドロキシル基を欠失しており、Gap2は1〜約5ヌクレオチド長であり、そしてBOは5’リン酸基を有する。
(4.製品を使用する方法)
別の特徴において、本発明は上記した製品を利用するポリヌクレオチド組立の方法を提供する。即ち、本発明は下記工程:
(a)固体支持体、リンカー基、ユニバーサルオリゴおよび架橋オリゴを含む上記した製品を提供する工程;
(b)オリゴまたは二本鎖を(a)の製品にアニーリングする工程;および、
(c)リガーゼを用いてオリゴ2つ以上を共に結合させて第1の標的ポリヌクレオチドを形成する工程;
を包含するポリヌクレオチド合成の方法を提供する。
任意の実施形態において、方法はさらに下記工程:
(d)ユニバーサルオリゴから架橋オリゴを分離する工程;
を包含する。
別の任意の実施形態において、架橋オリゴをユニバーサルオリゴから分離した後、ユニバーサルオリゴを別の架橋オリゴにアニーリングして第2の標的ポリヌクレオチドの形成を可能にする。換言すれば、固体支持体結合ユニバーサルオリゴは再使用され、別の遺伝子または遺伝子フラグメントが形成される。
別の特徴において、本発明は水性環境中の固体支持体上のポリヌクレオチド組立のための方法を提供し、これは当該分野で知られる通りのポリヌクレオチド組立のための方法を利用でき、発明的な進歩点は固体支持体にユニバーサルオリゴを共有結合的に結合する工程、架橋オリゴをユニバーサルODNにアニーリングして開始二本鎖を形成する工程、開始二本鎖が一本鎖形態の架橋ODNの部分を有する工程;により粘性末端を与える工程、および、開始二本鎖の粘性末端に第1のオリゴまたは第1の二本鎖をハイブリダイズする工程;を包含し、ここで、第1のオリゴ/二本鎖は後に操作して標的ポリヌクレオチドを形成する。任意の実施形態において、本発明の方法をさらに定義するために以下の基準の1つ以上を使用してよく、即ち、ユニバーサルオリゴはポリオキシアルキレン基およびポリヌクレオチド基を含み、ここでポリオキシアルキレン基は固体支持体とポリヌクレオチド基の間に位置し;ポリオキシアルキレン基はポリオキシエチレン基であり;リン酸基により分離されている2つのポリオキシアルキレン基が固体支持体とユニバーサルオリゴの間に存在し;リン酸基により分離されている複数のポリオキシアルキレン基が固体支持体とユニバーサルオリゴの間に存在し;炭化水素基がユニバーサルオリゴとポリオキシアルキレン基との間に位置し、ここで炭化水素基は分子式重量50〜500g/モルを有し;ユニバーサルオリゴは5〜50ヌクレオチドよりなり;ユニバーサルオリゴは末端リン酸基を欠失しており;ユニバーサルオリゴは末端リン酸基を有し;架橋オリゴはユニバーサルオリゴを形成するヌクレオチドの一部または全部にアニーリングするリンカーポリヌクレオチド領域を含み;架橋オリゴのリンカーポリヌクレオチド領域は5〜50隣接ヌクレオチドよりなり;架橋オリゴはさらに5〜50隣接ヌクレオチドよりなる架橋ポリヌクレオチド領域を含み、ここで架橋ポリヌクレオチド領域はユニバーサルオリゴのヌクレオチドにアニーリングせず;架橋ポリヌクレオチド領域はスペーサー基によりユニバーサルポリヌクレオチド領域から分離され、ここでスペーサー基は1〜約ヌクレオチドの隣接シリーズであり;そして、方法はさらに架橋オリゴの架橋ポリヌクレオチド領域を第1のオリゴまたは第1の二本鎖の粘性末端にアニーリングする工程;を包含し、ここで第1のオリゴ/二本鎖は架橋ODNにアニーリングするポリヌクレオチド領域を含み、第1のオリゴ/二本鎖はさらに一本鎖であるが架橋オリゴにアニーリングしないポリヌクレオチド領域を含み;架橋オリゴにアニーリングしない第1のオリゴ/二本鎖の一本鎖領域は5〜50ヌクレオチドを有し;この方法により作成された第1の標的ポリヌクレオチドは、少なくとも100、または少なくとも200、または少なくとも300、または少なくとも400、または少なくとも500塩基対を含む。
(E.混合条件)
1つの特徴において、本発明は溶液中のポリヌクレオチドに固体支持体結合ポリヌクレオチド(その何れかが部分二本鎖形態であってよい)を接触させる工程;により溶液ポリヌクレオチドを支持体結合ポリヌクレオチドにアニーリングするための方法を提供する。支持体結合ポリヌクレオチドは好ましくは前記した本発明の特徴によるユニバーサルオリゴおよび架橋オリゴを取り込むが、本発明のこの特徴においては、支持体結合ポリヌクレオチドはこの特定の配置を有する必要はない。換言すれば、溶液中のポリヌクレオチドに固体支持体結合ポリヌクレオチドを接触させる工程;により支持体結合ポリヌクレオチドに溶液ポリヌクレオチドをアニーリングさせる本発明の方法は一般的に何れの支持体結合ポリヌクレオチドにも適用される。
本発明のポリヌクレオチドを製造するためには、表面結合部分二本鎖オリゴヌクレオチド(開始二本鎖)を新規オリゴまたは二本鎖にアニーリングさせる。表面結合オリゴヌクレオチドの長さの伸長を継続するためには、各新規オリゴ/二本鎖の部分を支持体結合部分二本鎖ODNコンストラクトにアニーリングし、新規ODNの残余部分を一本鎖のままとする工程;によりその後の伸長のための部位を与える。新規オリゴまたは二本鎖を表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトに接触させる反応条件はアニーリング生成物の高収率を達成するために極めて重要である。アニーリング生成物の収率は新規ODNにアニーリングする表面結合部分二本鎖ODNの比率である。
本発明の1つの特徴において、部分二本鎖ODNコンストラクトが伸長されたコンホーメーションにある時点において固体支持体の表面に新規ODNを含む溶液を接触させる。この理論に制約されないが、本発明者等はODNコンストラクトが特定の長さに到達した時点でそれが自身上でコイルまたは折りたたみ構造となる時点でODNコンストラクトが熱力学的に安定な形態となる工程;を示唆する。即ち、コンストラクトの熱力学的に安定な形態はODNコンストラクト内に埋没するか、または、ODNコンストラクトの残余または隣接するODNコンストラクト内に埋没するか、これ等により別の態様で遮蔽される工程;により、溶液との接触から遮断されている、成長中の末端を有してよく、そして実際に有している場合が多い。この成長中の末端を新規ODNに接触させるためには、成長中の末端を他の固体支持体結合ODNと相互させるよりはむしろ溶液中で伸長させる工程;が有益である。この伸長を達成するために、本発明では、ODNコンストラクトおよび/またはODNコンストラクトを支持している表面に新規ODNの溶液を好ましくは猛烈な態様において強制的に通過させる。この強制により成長中の末端は他のODN分子から遮断されつつ伸長して溶液中に至り、これにより成長中の末端は新規ODNに対してより接触容易となる。
即ち、好ましい特徴において、この伸長されたコンホーメーションは、溶液を固体支持体に強制通過させる場合に達成される。例えば、表面は管の内部であってよく、そして溶液はODNコンストラクトのコンホーメーションを伸長させるために十分の速度で管を通過して流動する。別の例として、表面は反応チャンバーを2つのサブチャンバーに分割するフリットであってよく、そして溶液はODNコンストラクトのコンホーメーションを伸長させるのに十分な速度で、一方のサブチャンバーから他方に通過する。別の代替例としては、ODNコンストラクトをチャンバーの内表面に結合させ、新規ODNを含む溶液をチャンバーに注ぎ込み、そして、攪拌により溶液が表面結合ODNコンストラクトを通過して成長中の末端がODNコンストラクトとの緊密な接触から遮断されるように、攪拌装置、例えばメカニカルスターラーを溶液中に入れる。この方法は、新規ODNの溶液を固定相ODNコンストラクトを強制通過させる場合には静的表面法と称する。
代替法として、新規ODNの溶液は静的なものであり、そしてODNコンストラクトを連結している表面を溶液中に没入または牽引させてよい。例えば新規ODNの溶液をチャンバー内に位置させ、ODNコンストラクトを結合している表面は攪拌装置、例えばメカニカルスターラーのフィンである工程;ができる。攪拌装置作動時には、フィン表面は溶液中に没入され、部分二本鎖ODNコンストラクトは強制的に伸長コンホーメーションとされる。フィンが回転する方向を交互に変える工程;により洗濯機型の動きを達成してよい。一般的に手法はポリヌクレオチドに結合した表面を強制的に溶液通過させるこの手法は、本明細書においては、静的溶液法と称する。静的溶液法は反復フロースルー手法の一例である。
本発明者等の理論の正誤に関わらず、新規ODNの溶液を表面結合ODNコンストラクトを強制通過させる工程、および/または、表面結合ODNコンストラクトを新規ODNの溶液に強制的に通す工程;は、何れも強制的に相互通過させない状況と相対比較して第1のポリヌクレオチドの収率の望ましい上昇をもたらす工程;が実験的に観察されている。
アニーリング生成物の高収率を達成するためには、表面結合ODNコンストラクトは溶液中の新規オリゴヌクレオチドと接触する複数の機会を有する工程;が好ましい。本発明の1つの特徴において、この目標は部分二本鎖ODNコンストラクトに結合する表面を経由して固定量のオリゴヌクレオチド含有溶液を反復して(例えば2回、3回、4階)通過させる工程;により達成される。例えば表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトが2つのサブチャンバーを分離するフリットに結合している場合は、新規ODN溶液はそれが一方のチャンバーから他方に移行する際にフリットを通過して複数回移行させる工程;ができる。表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトが管の内部に結合している場合は、管でループを形成し、新規ODNの溶液をループを通過させて反復して送液してよい。固定容量のオリゴヌクレオチド含有溶液が部分二本鎖ODNコンストラクトに結合している表面上の位置を反復通過するこの手法は、本明細書においては、連続フロースルー接触または再使用手法と称する。
或いは、十分なオリゴヌクレオチド含有溶液が使用できる場合は、この目標は漸増量のオリゴヌクレオチド含有溶液が部分二本鎖ODNコンストラクト結合表面を経由して通過する工程;により達成してもよい。例えば新規ODNに表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトの所望量がアニーリングするのに十分な時間、部分二本鎖ODNコンストラクトに結合した内表面を有する管を通してレザバからオリゴヌクレオチド含有溶液を送液してよい。非循環法と称されるこの手法は典型的には、アニーリング生成物の同じ収率を達成するために再循環法の場合よりも多くの溶液オリゴヌクレオチドを必要とし、そしてこの理由のため、非再循環手法は好適度が低い手法である。
上記した方法において、同じ機械的強制力を用いて部分二本鎖ODNコンストラクトの伸長と部分二本鎖コンストラクトと溶液中新規ODNとの間の複数回の接触の両方を達成する。これは本発明の好ましい特徴である。しかしながら、この手法は部分二本鎖コンストラクトと溶液中新規ODNとの間の複数回の接触を達成するために使用される強制力が、部分二本鎖ODNコンストラクトの伸長を達成するためにも十分である工程;を必要とする。例えばポリヌクレオチドをメカニカルスターラーのフィンに結合させる場合は、スターラーは結合したODNコンストラクトが伸長されるのに十分な回転速度において操作しなければならない。同様に、ODNコンストラクトをフリット表面に結合させる場合は、新規ODN溶液は溶液内へのODNコンストラクトの成長中の末端の伸長を起こすのに十分な速度でフリットを経由して一方のチャンバーから他方に通過しなければならない。本明細書においては、「機械的強制力」とは溶液および/または表面の移動を達成するための系内に導入されるエネルギーの量をさす。
機械的強制力が表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトの伸長をもたらすのに十分であるかどうかは溶液の粘度および反応容器の厳密な形状に依存している。例えば、カラムの長さおよび内径またはフリットの孔径および厚みが挙げられる。何れかの特定の形状に対してODNコンストラクトの伸長を達成するために必要な条件は数種の探索的反応を実施する工程;により容易に決定してよい。例えば、形状が確立された後、一連の反応条件をランダムに選択し、そしてこれ等の条件下に達成されたアニーリングの収率を測定する。次に機械的強制力を選択された値、例えば50%だけ増大させ、そしてこれ等の新しい条件下にアニーリング収率を測定する。例えば部分二本鎖ODNコンストラクトが結合している表面の上の特定の固定された点を通過する流量を約50%増大させてよい。これ等の新しい反応条件がより高いアニーリング収率を達成すれば、機械的強制力を例えば50%だけさらに増大させ、そしてアニーリングの収率を再度測定する。これ等の新しい反応条件がより高いアニーリング収率を達成しなければ、第1の反応に過剰な機械的強制力が使用されており、そして第2の反応はより低値、例えば50%低値の機械的強制力を用いて実施しなければならない。このようにして、機械的強制力vsアニーリング収率のプロットを容易に得る工程;ができる。典型的には、閾値の機械的強制力未満においては、機械的強制力を変化させてもアニーリングの収率は増大しない。やはり典型的には、特定の機械的強制力を超えている場合、機械的強制力を増大させてもアニーリング収率がさらに上昇する工程;は無く、むしろDNA鎖/ODNコンストラクトの破壊をもたらす場合がある。当業者等は特定の制約事項および目標に基づいて適当な機械的強制力および形状を選択できる。
本明細書においては、より高いアニーリング収率は表面結合部分二本鎖ポリヌクレオチドの伸長によりもたらされると推定され、そして伸長は機械的強制力によりもたらされると推定される。この工程;は観察された結果を説明する本発明者等の理論である。実際に観察された結果は、アニーリング収率はアニーリング反応中に十分な機械的強制力が使用されなければ極めて高値にはならないという工程;である。即ち、ある機械的強制力が使用される工程;により溶液および表面が相互に強制通過されない限り、比較的長い表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトについてはアニーリング収率は極めて低値である工程;が実験的に観察されている。
本発明の好ましい特徴において、ある容量の溶液を固体支持体の表面領域に反復して通過させ、ここで表面領域は部分二本鎖ODNコンストラクトに結合しており、そして、その容量の溶液は表面結合ODNコンストラクトの一本鎖部分に相補であるオリゴヌクレオチドを含有している。好ましくは、圧力の低下が表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトにアニーリングしているODNの低収率をもたらすような圧力下にその容量の溶液は固体支持体の表面領域を繰り返し通過し、その際、全ての因子、例えば、時間、オリゴヌクレオチド濃度および温度は一定に保持する。
関連する特徴においては、表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトを新規ODN含有溶液を通して強制的に移動させ、ここで新規ODNは表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトの一本鎖部分に少なくとも部分的に相補である。好ましくは、表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトは、強制力の低減が表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトにアニーリングしている新規ODNの低収率をもたらすような強制力により溶液を通過して強制的に移動させ、その際、全ての因子、例えば、時間、オリゴヌクレオチド濃度および温度は一定に保持する。
1つの特徴においては、本発明は、表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトの全てではないが殆どが新規オリゴヌクレオチドにアニーリングする工程;を提供し、そして従って種々の特徴において、本発明は表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトの少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%が新規オリゴヌクレオチドにアニーリングする工程;を提供し、ここで%値は固体支持体に結合している部分二本鎖ODNコンストラクトのモル量に基づいたモル%である。
アニーリング収率に対する流動混合によるODNコンストラクトの成長中の末端を伸長させる工程;の影響はODNコンストラクトが比較的短い場合、例えば約200ヌクレオチド未満である場合には特に顕著ではない。しかしながら、ODNコンストラクトが長くなるに従って、溶液への成長中の末端の曝露は高いアニーリング収率を達成する工程;においてより重要な要因となる。従って、本発明の種々の特徴において、成長中末端伸長条件に曝露された表面結合部分二本鎖ODNコンストラクトは200ヌクレオチド超、または300ヌクレオチド超、または400ヌクレオチド超、または500ヌクレオチド超、または600ヌクレオチド超、または700ヌクレオチド超、または800ヌクレオチド超、または900ヌクレオチド超、または1000ヌクレオチド超、または1200ヌクレオチド超、または1400ヌクレオチド超、または1600ヌクレオチド超、または1800ヌクレオチド超、または2000ヌクレオチド超、または2500ヌクレオチド超、または3000ヌクレオチド超、または3500ヌクレオチド超、または4000ヌクレオチド超、または5000ヌクレオチド超であり、これ等の数値の各々は場合により約6000ヌクレオチド、または7000ヌクレオチド、または8000ヌクレオチド、または9000ヌクレオチド、または10000ヌクレオチドの上限を設けられる。
表面結合部分二本鎖オリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチド溶液の間の混合を達成するための本発明による「強制力」の使用は一般的にこれ等の2成分を有する如何なる系に対しても適用される。即ち、表面結合部分二本鎖オリゴヌクレオチドは必ずしもではないが好ましくは、ユニバーサルオリゴおよび架橋オリゴから形成された上記定義された「開始二本鎖」である。
即ち、1つの特徴において、本発明は下記工程:
(a)固体支持体に結合した部分二本鎖核酸(ds−NA)を提供する工程;
(b)ds−NAの一本鎖部分に少なくとも部分的に相補的な一本鎖核酸(ss−NA)の溶液を提供する工程;
(c)工程(a)のds−NAを、溶液の少なくとも一部がある方向において及ぼされる力の影響下にds−NAを通過するような条件下で工程(b)の溶液に接触させ、この場合、(i)ss−NAはds−NAの一本鎖部分にアニーリングし、そして(ii)溶液の少なくとも部分が少なくとも2回ds−NAを通過するように少なくとも1回方向を反転させる工程;
を含む遺伝子組立のための方法を提供する。
別の特徴において、本発明は下記工程:
(a)固体支持体に結合した部分二本鎖核酸(ds−NA)を提供する工程;
(b)ds−NAの一本鎖部分に少なくとも部分的に相補的な一本鎖核酸(ss−NA)の溶液を提供する工程;
(c)工程(a)のds−NAを、溶液の少なくとも一部がある強制力の影響下にds−NAを通過するような条件下で工程(b)の溶液に接触させ、この場合、(i)ss−NAはds−NAの一本鎖部分にアニーリングし、そして(ii)他の条件は一定であるが力が低下すればds−NAの一本鎖部分にアニーリングするss−NAの量が低減する工程;
を含む遺伝子組立のための方法を提供する。
別の特徴において、本発明は下記工程:
(a)固体支持体に結合された部分二本鎖ポリヌクレオチドを提供する工程;
(b)工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドの一本鎖部分に少なくとも部分的に相補的な一本鎖または部分二本鎖ポリヌクレオチドの溶液を提供する工程;
(c)工程(b)の溶液の少なくとも一部が工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドを通過するある1つの方向に及ぼされる力の影響下に工程(b)の溶液に工程(a)の固体支持体を接触させる工程;
を含む遺伝子または遺伝子フラグメントの組立のための方法であって、
工程(b)の一本鎖または部分二本鎖ポリヌクレオチドが工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドの一本鎖部分にアニーリングする上記方法を提供する。好ましくは工程(b)の一本鎖または部分二本鎖ポリヌクレオチドは部分二本鎖である。
好ましい特徴において、本発明は下記工程:
(a)固体支持体に結合された部分二本鎖ポリヌクレオチドを提供する工程;
(b)工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドの一本鎖部分に少なくとも部分的に相補的な一本鎖または部分二本鎖ポリヌクレオチドの溶液を提供する工程;
(c)工程(b)の溶液の少なくとも一部が工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドを通過するある1つの方向に及ぼされる力の影響下に工程(b)の溶液に工程(a)の固体支持体を接触させる工程;および、
(d)工程(b)の溶液の少なくとも一部が少なくとも2回工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドを通過するように少なくとも1回工程(c)において及ぼされる力の方向を反転させる工程;
を含む遺伝子または遺伝子フラグメントの組立のための方法であって、
工程(b)の一本鎖または部分二本鎖ポリヌクレオチドが工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドの一本鎖部分にアニーリングする上記方法を提供する。
好ましくは、工程(a)の部分二本鎖ポリヌクレオチドが工程(b)の溶液に繰り返し接触するように、工程(c)で及ぼされる力の方向を複数回反転させ、そして、工程(b)の一本鎖または部分二本鎖ポリヌクレオチドは部分二本鎖である。溶液を固体支持体の前を通過させる強制力は一定であってよく、それが好ましいが、或いは可変であってもよい。これ等の特徴の好ましい実施形態においては、固体支持体は多孔性であり、そして工程(b)の溶液は複数回細孔を通過する工程;が必要である。
(F.合成方法を評価するための定量試験)
2つの試験方法が固相遺伝子合成プロセスにおける重要な2つの工程を定量するのに用いられる:即ち、(1)固体支持体結合容量、および(2)固相連結効率の推定、である。これらの試験を次に説明する。
(1.固体支持体結合容量の試験)
本発明の遺伝子組立において使用される固体支持体は好ましくは約17ヌクレオチドを有するユニバーサルリンカーオリゴヌクレオチドに共有結合している。固体支持体表面の結合容量は以下の蛍光系試験法により測定される。リンカーオリゴを有する固体支持体をまず蛍光標識相補オリゴにハイブリダイズさせる。未ハイブリダイズの標識オリゴは過剰な洗浄により除去し、洗浄液を蛍光によりモニタリングする。次にハイブリダイズした標識オリゴを高温で変性する工程;により遊離させ、そしてその量を蛍光計で測定する。固体支持体は典型的には表面上で約1〜3pmol/cm2の結合容量を有する。
(2.固相の段階的連結効率を推定するための試験)
他の固相系の反応と同様、固相上の酵素的連結は溶液系の反応よりも低効率で緩徐である(V.Chan,D.Graves,P.Fortina and S.McKenzie, Langmuir,(1997)vol.13,320−329;M.Shchepinov,S.Case−Green and E.Southern, Nucleic Acid Research,(1997)vol.25,1155−1161;H.Hakala,E.Maki and H.Lonnberg, Bioconjugation Chem.(1998) vol.9 316−321;およびP.Stevens, M.Henry and D.Kelso, Nucleic Acid Research, (1999) vol.27,1719−1727)。試薬の1つが拡散しなくなり、立体障害が増大すると、反応部位の近接部における試薬濃度が大きく低下する。さらに、固相連結効率はまたDNA鎖の全体的長さにも依存する場合がある。従って、DNAが短い場合の組立の早期の段階における連結効率はDNAが長くなった時点での組立の後期の段階における連結効率を示さない場合がある。
本明細書に記載した試験法を用いて、連結効率に対する幾つかのパラメーターの影響を評価した。以下のパラメーターが固相連結効率に直接の影響を有する工程;がわかった。その相対的重要度は、各要因が反応の種々の段階において役割を果たしているため、単純な順序で一般化されなかった。
・リガーゼ濃度
・連結時間および温度
・溶液目標濃度
・オリゴ二本鎖オーバーハング長さ
・固体支持体物質
・進展中の末端と固体表面の間の距離
・緩衝液中のイオン濃度
・インキュベーション中の混合
固相連結の効率を評価するために図4に示すモデル系を使用し、これを蛍光標識およびゲル画像分析と組み合わせる。
第1に蛍光標識オリゴを固体支持体上のリンカーオリゴにハイブリダイズして「粘性末端」を形成する(図4A)。何れかの未ハイブリダイズの標識オリゴをアニーリング緩衝液で固体支持体を洗浄する工程;により除去する。次に相補「粘性末端」を有する第1の二本鎖をリガーゼおよび連結緩衝液の存在下にアニーリングし固体支持体係留オリゴに連結する(図4B)。何れかの未連結の二本鎖1を洗浄除去する。サイクルを反復して第2の連結サイクルとする(図4C)。次に二本鎖連結生成物を変性し、そして底部の鎖を固体支持体から溶出させる(図4D)。次に底部の鎖を含む溶液をアクリルアミド変性ゲル上で分析し、各蛍光標識画分の強度をKodak Digital Science(登録商標)1D画像分析ソフトウエアにより定量する。この方法により固相遺伝子組立における種々のサイクルにおける連結効率が推定できる。
固体支持体としてフロースルー多孔性材料を使用する本発明は10〜30%の全体的累積収率において12サイクル中35塩基オリゴを用いて400bp遺伝子フラグメントの合成を可能にしている。これによれば、理論的なサイクル当たり収率は85〜90%と計算される。
(G.遺伝子フラグメントおよび遺伝子の合成のための装置)
(1.概説)
種々の特徴において、本発明は自動化固相遺伝子または遺伝子フラグメント組立を可能にする装置を含む遺伝子または遺伝子フラグメント合成のための装置、並びに、遺伝子合成においてこれ等の装置を使用するための方法を提供する。1つの特徴において、本発明は下記要素:
i)反応チャンバー複数、ここで複数の各メンバーは、下記要素:
(a)チャンバー内部に亘って位置する固体支持体、ここで固体支持体は多孔性の領域を有するもの;
(b)第1のオリフィスから第2のオリフィスに至る直接の経路が固体支持体に沿って、またはその内部を通過するように位置する第1および第2のオリフィス;
(c)第1のオリフィスと固体支持体の間に位置するチャンバーの第1の容量;および、
(d)第2のオリフィスと固体支持体の間に位置するチャンバーの第2の容量;
を含むもの;
を含む固相遺伝子または遺伝子フラグメント組立のための装置を提供する。
装置はさらに好ましくはバルブと配管の系を含み、これにより第1のオリフィスと第1のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を有する第2のオリゴヌクレオチドの溶液を保持するレザバとの間の流体連絡を与える。操作においては、第2のオリゴヌクレオチドの溶液は好ましくは反復的または連続的に固体支持体に沿って、またはその内部を通過する。即ち本発明は下記工程:
i)下記要素:
(a)チャンバー内部に位置する固体支持体、ここで固体支持体は第1のオリゴヌクレオチドに結合されているもの;および、
(b)第1から第2のオリフィスに至る直接の経路が固体支持体に沿って、またはその内部を通過するように位置する第1および第2のオリフィス;
を含む反応チャンバーを提供する工程;
ii)第1のオリフィスを通過して第2のオリゴヌクレオチドの溶液を送達する工程、および、第2のオリフィスの方向に固体支持体に沿って、またはその内部を通過して第2のオリゴヌクレオチドの溶液を輸送する工程;
iii)固体支持体に沿って、またはその内部を通過して第2のオリゴヌクレオチドの溶液を反復的または継続的に通す工程;
を含む固相遺伝子組立のための方法を提供する。
本発明の別の特徴において、本発明は下記要素:
(a)複数の反応容器を保持するように適合された複数のキャビティーを含む反応ブロック、ここで各反応容器はキャビティー内に存在する場合は、第1のオリフィス、第2のオリフィスおよび第1および第2のオリフィスの間の反応容器内部に位置する固体支持体を含むもの;および、
(b)存在する場合は複数の反応容器と流体連絡している試薬送達混合ユニット;
を含む自動化固相遺伝子または遺伝子フラグメント組立のための装置を提供する。
本装置の反応ブロックはさらに反応ブロックの温度を制御またはモニタリングするための1つ以上の手段;および/または存在する場合に反応容器内の流体のレベルをモニタリングするための1つ以上の手段を包含してよい。試薬送達混合ユニットは1つ以上のバルブと流体連絡した1つ以上のポンプを含む。特に、試薬送達混合ユニットのバルブは、液体保存容器の1つの中の液体がポンプの作用により反応容器内にバルブを介して液体保存容器から輸送されるように、存在する場合の反応容器の第1のオリフィスと試薬送達混合ユニットのポンプとの間に位置し、バルブがポンプ、反応容器および1つ以上の液体保存容器と流体連絡している。
自動化装置はさらに、反応ブロックの複数のキャビティーの内部に複数の反応容器を固定するための1つ以上の手段を包含してよい。
好ましくは、自動化装置は温度モニタリング制御手段を含んでいてよいマイクロプレート保持器具を包含する。装置はさらに、温度モニタリング制御手段を含有してよいマルチマイクロプレート保存システム、および/または、マイクロプレート保持器具にマルチマイクロプレート保存システムからマイクロプレートを輸送するための手段を含んでよい。
装置はさらにマイクロプレートウェルシールピアシング手段を含んでよい。
装置はさらに装置の操作の間に使用される試薬(例えばオリゴ)および溶液を同定するためのバーコードリーダー、および/または、装置により実施される方法の生成物を分析するための1つ以上の手段、例えば分光光度計または蛍光プレートリーダーを含んでよい。
好ましくは、装置はコンピューター制御ユニットを含み、ここでコンピューター制御ユニットは装置の種々の要素、例えば種々の温度および制御手段、反応容器内の流体のレベルをモニタリングする手段、試薬送達混合ユニット、マルチマイクロプレート保存システム、マイクロプレート保持器具にマルチマイクロプレート保存システムからマイクロプレートを輸送するための手段、マイクロプレートウェルシールピアシング手段、および/または、装置により実施される方法の生成物を分析するための手段を操作するための予備プログラミングされたコマンドを実行する。
好ましい実施形態においては、本発明の自動化遺伝子フラグメントまたは遺伝子組立のための装置は下記要素:
(a)複数の反応容器を保持するように適合された複数のキャビティーを含む反応ブロック、ここで各反応容器はキャビティー内に存在する場合は、第1のオリフィス、第2のオリフィスおよび第1および第2のオリフィスの間の反応容器内部に位置する固体支持体を含むもの;
(b)存在する場合は複数の反応容器と流体連絡している試薬送達混合ユニット;
(c)マイクロプレート保持器具;
(d)反応ブロックの複数のキャビティー内に存在する場合は複数の反応容器を固定するための1つ以上の手段;
(e)反応ブロック、マルチマイクロプレート保存システムまたはマイクロプレート保持器具の温度をモニタリングまたは制御するための1つ以上の手段;
(f)装置の種々の要素を操作するための予備プログラミングされたコマンドを実行するコンピューター制御ユニット;
(g)場合により、マルチマイクロプレート保存システム;
(h)場合により、マイクロプレート保持領域にマルチマイクロプレート保存システムからマイクロプレートを輸送する手段;および、
(i)場合により、マイクロプレートウェルシールピアシング手段;
を含む。
(2.反応容器)
1つの特徴において、本発明の遺伝子または遺伝子フラグメント合成は反応容器内で実施される。各反応容器は、キャビティー内に存在する場合は、オリゴヌクレオチドを結合する内部固体表面を有する。図5A、5B、5C、5Dおよび5Eは固体表面の5種類の形状を示す。図5Aにおいて、固体表面は容器の内壁から伸長する繊維である。図5Bにおいて、固体表面は容器の内壁に隣接するスリーブである。図5Cにおいて、固体表面は容器の幅全体に亘る多孔性の充填物であり、容器の内部を効率的に2つのサブチャンバーに分割している。図5Dにおいて、2つの硬い多孔性障壁が反応容器の幅全体に亘っており、そしてビーズで充填された障壁の間に位置する空間を定義している。ビーズはオリゴヌクレオチドを結合する固体支持体である。図5Eにおいて、固体支持体は反応容器内に懸垂するブラシであり、この場合、ブラシはモーターの操作により溶液を通って回転させてよい。他の表面の形状を代替として利用してもよい。
固体支持体に結合されたオリゴヌクレオチドを含む工程;に加えて、各反応容器は2つのオリフィスを有する。各オリフィスは溶液および試薬を反応容器に出し入れするために使用できる。オリフィスは一方のオリフィスから他方への直接の経路が固体支持体に沿って、またはその内部を通過するように位置させなければならない。例として固体支持体として多孔性充填物を有する図5Cの反応容器を用いながら、図6A、6Bおよび6Cは2つの孔部(オリフィス)に関する3通りの可能な配置を示している。図6Aにおいては、孔部は反応容器の上および下に位置し、多孔性充填物が中央にある。図6Bにおいては孔部は反応容器の同一面において一方が他方の上になるようにする。図6Cにおいては孔部は反応容器の対向する面に位置する。各々の場合において、一方の孔部を多孔性充填物の上方に位置させ、他方の孔部を多孔性充填物の下方に位置させる工程;により、2つの孔部の間の直接の経路が多孔性充填物を通過するようにする。「フロースルー反応器」という用語は一方の孔部から他方の孔部への直接の経路が固体支持体に沿って、またはその内部を通過して進行するように位置づけられた2つの孔部を有する反応容器を指す。
別の特徴において、固体支持体は反応容器の末端、即ち、オリフィスの一方またはその近傍に位置する。これは図7A、7Bおよび7Cに示す通りであり、ここで固体支持体は多孔性充填物である。図7Aにおいて、多孔性充填物は反応容器の内部の端部に位置する。図7Bにおいて、多孔性充填物は反応容器の外部の端部に位置する。図7Cにおいて、反応容器は先端を有し、そして多孔性充填物はこの先端の内部に位置する。
同様の系が本発明の方法を実施するために利用してよい米国特許5,437,979に記載されている。’979特許の系はレセプタクルから引き出された液体を保持するためにピペット先端を利用しており、ここで先端は固体支持体上に固定された化学物質種を保持している。本発明に適用される通り、第1のオリゴヌクレオチドはピペット先端に固定してよく、そして第2のオリゴヌクレオチドの溶液をレセプタクルに入れてよい。第2のオリゴヌクレオチドの溶液をピペット先端内に導入し、次に吐出し、そしてこの操作を少なくとも1回、好ましくは複数回、反復する。’979特許は固体支持体を定位置に維持するために多孔性フリット1つまたは2つを使用する工程;を開示している。本発明における使用に適合させる場合、ビーズを固定するために2つの多孔性フリットが必要になる。
ピペット先端を使用する工程;は、’979特許に開示されているもののような摩擦力フィットにより定位置に固定されたピペット先端は先端が装置の残余と結合している接合点において漏出する場合が多いため、本発明の方法の好ましい実施形態ではない。僅かな漏出であっても、(1)第2のオリゴヌクレオチドの溶液の固体支持体を経由する通過が複数回である工程、および(2)オリゴヌクレオチドの新しい溶液および洗浄溶液が反応容器への導入が複数回である工程;から、本発明の方法に対して困難を呈する場合がある。ピペット先端は延長された使用ではなく1回または2回の使用のために設計されている。薄壁ピペット先端は延長された使用のもとでは変形する場合が多く、そしてピペットと共に保有する工程;を意図される摩擦力フィットが消失する。
上記した通り、本発明の装置および方法において使用するための好ましい固体支持体材料は5〜35μm孔径の多孔性ポリエチレンである。この材料はPorex Technologies(Fairburn,GA)およびPorvair Advanced Materials (Hendersonville,NC)のような数種の製造元から市販されている。両社とも直接フリットを鋳造できる。生原料の多孔性ポリエチレンフリットをプラズマ処理に付す工程;により表面にアミン基を導入してよい。4thState,Inc.,Belmont,CAはプラズマ処理業務を広告している数種の供給元の1つである。プラズマ処理の後、支持体を反応容器内部に圧着調整する。
好ましくは、固体支持体はリンカー基を通ってユニバーサルオリゴに結合される。例えば、5’−カルボキシル末端ペギル化リンカーオリゴを上記した通り固体支持体に結合してよい。オリゴ結合および試験反応は全てカラム全体を通して同様の試薬を用いながら室温において実施する。以下に記載する遺伝子フラグメントおよび遺伝子の固相組立ステーションを使用してユニバーサルオリゴ(および所望によりリンカー)を固体支持体に結合する工程;ができる。
本発明の装置の反応容器と共にユニバーサルオリゴおよび架橋オリゴを使用する工程;は、それにより反応容器を反復使用して新しい遺伝子または遺伝子フラグメントを製造でき、そしてこの再使用可能な特性がロボット的に達成できる工程;から、極めて有用である。即ち、遺伝子フラグメント1つが終了し、別の遺伝子フラグメントの組立が開始した時点で本発明の装置の反応容器内において固体支持体を新しい固体支持体と置き換える必要が無くなる。遺伝子フラグメントは単に固体支持体から洗い出し、支持体にユニバーサルオリゴを結合させたまま残存させ、そして固体支持体/ユニバーサルオリゴに適切な架橋オリゴを添加する工程;により遺伝子組立の方法を開始する工程;ができる。即ち、1つの特徴において、本発明は同じ反応容器から複数の遺伝子フラグメントの逐次的製造を提供し、この場合、遺伝子フラグメントは反応容器内の固体支持体から洗浄され、次に新しい架橋オリゴをその固体支持体に導入して遺伝子フラグメント組立を再開する。
好ましい実施形態においては、本発明の装置は各反応容器内の流体のレベルをモニタリングするための手段を組み込んでいる。このような手段は当該分野で知られており(例えば米国特許5,539,386参照)、そして、本発明の装置の反応ブロック内に組み込んでよい。
(3.試薬送達混合ユニット)
本発明の反応容器の各々は1つ以上のポンプと流体連絡している。同じポンプが反応容器の複数の全てまたは一部と流体連絡していてよい。1つの特徴において、単一のポンプが反応容器の複数の全てと流体連絡している。この特徴は複数のポンプを購入して維持する経費が低減される点において有利である。別の特徴において、各反応容器は個別の独自のポンプと流体連絡している。この特徴は、それが操作の最大の柔軟度を与える工程;から有利であり、即ち、各反応容器を独立して制御でき、そして全ての反応容器を同じ操作条件に付す必要がない。独自のポンプと流体連絡した各反応容器を有する工程;はまた、1つの反応容器の誤操作が他の反応容器の操作に殆ど、または全く影響しない工程;から有利である。各反応容器に存在する2つのオリフィスの一方はポンプと流体連絡している。
本発明の遺伝子組立を達成するためには、第2のオリゴヌクレオチドの溶液が必要である。第2のオリゴヌクレオチドのこの溶液は反応容器に添加され、そして固体支持体に結合している第1のオリゴヌクレオチドと接触させる。第2のオリゴヌクレオチドの溶液は容器の2つのオリフィスの一方を経由して反応容器内に進入する。ポンプは第2のオリゴヌクレオチドの溶液を反応容器内に移動させる強制力を与える。
ポンプの作用の下、反応容器内の第2のオリゴヌクレオチドの溶液を反応容器の第2のオリフィスに向けて輸送する。この輸送の過程において、第2のオリゴヌクレオチドの溶液は自身に結合した第1のオリゴヌクレオチドを有する固体支持体と接触し、そして第1および第2のオリゴヌクレオチドはこれにより相互に接触する。
1つの特徴において、本発明の遺伝子フラグメントおよび遺伝子の組立方法の重要な特徴は、第2のオリゴヌクレオチドの溶液が第2のオリフィスに向けて固体支持体を通って、またはそれに沿って、第1のオリフィスから移動させられ、そして、第1および第2のオリゴヌクレオチドを相互に接触させた後、溶液は方向を反転させるという点である。即ち、第1のオリフィスから第2のオリフィスの方向に移動した後、溶液は逆方向、即ち第2のオリフィスから第1のオリフィスに向けて移動させられる。その後、溶液は再度方向を反転させ、そして、第1のオリフィスから第2のオリフィスに向かう方向の移動を反復する。この方向の変化を複数回反復する工程;により、第1のオリゴヌクレオチドを自身に結合して有する固体支持体を通過させて溶液を行き来させる。固体表面を通って行き来させる溶液を通過させるこの工程を、本明細書においては反復フロースルー接触と称する。
本発明者等は意外にも反復フロースルー接触が遺伝子組立の収率を上昇させる工程;を発見した。即ち、反復フロースルー接触は第2のヌクレオチドに結合する第1のオリゴヌクレオチドの数を増大させる。この意外な発見の背後にある作用機序はまだ確実にはわかっておらず、本明細書においては前記の通り考察されている。基本的には本発明の遺伝子組立の機序は標準的なヌクレオチド塩基対形成規則に従って第1のオリゴヌクレオチドが第2のオリゴヌクレオチドにアニーリングさせる工程;を包含する。このアニーリング過程を起こすためには、第1のオリゴヌクレオチドは、そのヌクレオチド塩基が第2のオリゴヌクレオチドの塩基に曝露されてそれと接触できるようになるために十分伸長された形態である必要がある。本発明の反復フロースルー接触の特徴は第1のオリゴヌクレオチドの伸長を促進し、これにより、第1および第2のオリゴヌクレオチドの塩基の間のアニーリングを可能とし、促進すると考えられる。
反復フロースルー接触が第1のオリゴヌクレオチドが多孔性固体支持体の細孔内部に結合している場合に特に重要であると考えられる。多孔性の固体支持体は、それが大きい表面の体積に対する比を与え、これにより第1のオリゴヌクレオチドの比較的多数を固体支持体の比較的小容量に結合できるようにするため、本発明の好ましい固体支持体である。この状況において、固体支持体の細孔内部で溶液の連続的、または少なくとも頻繁な流動を与える工程;が重要であると考えられる。この頻繁な流動は第1のオリゴヌクレオチドが比較的伸長された形態で残存する工程;を促進し、そしてこれにより第2のオリゴヌクレオチドに対して比較的より高い反応性を有するようになると考えられる。
反復フロースルー接触は図8A〜8Eに示すとおりであり、ここでも説明目的のために図5Cの反応容器を用いている。図8Aにおいては、反応容器は伸長されており、そして固体支持体は反応容器に亘って伸び、反応容器の長さに沿ってほぼ中央に位置する多孔性のマトリックスである。この多孔性の固体支持体、またはフリットは反応容器を2つのサブチャンバー、即ち第1および第2のサブチャンバーに分割する。図8Bに示すとおりポンプの作用下に、第2のオリゴヌクレオチドの溶液は反応容器の第1のオリフィスを通過してレザバから反応容器内に引きこまれる。溶液はそれが完全に固体支持体を水没させるまで、そして、第2のオリフィスに向けたそれ以上の移動が固体支持体を第1のチャンバー内の空気に曝露させるようになるまで第1のチャンバー内に引き込まれ、この状態は図8Cに示すとおりである。この特定の実施形態において、第2のオリゴヌクレオチドの溶液はポンプと第2のオリゴヌクレオチドの溶液の間の真空および第1のオリフィスから溶液が逆流するのを抑制する毛管力の1つ以上により定置される。その後、ポンプにより及ぼされる力により第2のオリゴヌクレオチドの溶液は第1のオリフィスに押し戻される。好ましくは、第2のオリゴヌクレオチドの溶液は固体支持体が完全に水没させ続ける。これは図8Dに示す通りである。図8Cおよび8Dは反復フロースルー接触を示している。反復フロースルー接触は図8Eに示す通り継続でき、ここでポンプにより及ぼされる力は反転し、そして第2のオリゴヌクレオチドの溶液を第2のオリフィスに向けて引き戻す。
別の特徴において、本発明の方法は連続フロースルー接触と本明細書において称する反復フロースルー接触の変法を提供する。この様式においては、第2のオリゴヌクレオチドの溶液は、第1のオリフィスから固体支持体を経由して第2のオリフィスを通るように連続的に通過させる。連続フロースルー接触を達成するために必要な第2のオリゴヌクレオチドの溶液の量を最小限にするために、溶液は、説明目的のために図5Cの反応容器を利用している図9に示す通り再循環させてよい。図9に示す通り、反応容器の側面に亘って多孔性の固体支持体またはフリットを有する反応容器を提供する。第2のオリゴヌクレオチドをレザバから反応容器に導入し、次にレザバのバルブを閉じる。次にポンプにより第2のオリゴヌクレオチドの溶液を継続的に時計周りまたは反時計回りに反応容器を循環させる。溶液の流動方向は所望により度々または周期的に反転させてよく、これにより反復フロースルー接触としてよい。
本発明の好ましい装置において、反応容器は多孔性固体支持体またはフリットを有するカラムである(図10A)。この設計においては、反応容器はフリットおよびプログラム可能なシリンジポンプに連結され、そして、3方向切り替えバルブを介して緩衝液レザバに連結している上方のLuerフィッティングを有する。この反応容器およびシリンジポンプの形状の場合は、試薬(オリゴおよびリガーゼ)は、反応容器下方に位置するマイクロプレートから反応容器の底部を通って引き出される。反応容器内部の試薬の混合は、同じシリンジポンプを用いて上方下方に送液する工程、および、溶液を多孔性固体支持体を通るように流動させる工程;により達成される。洗浄緩衝液は切り替えバルブを介して反応容器の上部より送達される。反応容器の下部に位置する廃棄物収集容器内に反応容器を経由して溶液を送液する工程;により反応容器から廃棄物を洗浄除去する。このような設定により、プログラム可能なシリンジポンプは遺伝子フラグメント組立方法における全ての工程を取り扱う工程;ができる。この設計は図10Bに示すとおりマルチカラムの装置にまで拡張してよい。
試薬送達混合ユニットは自動化固相遺伝子および遺伝子フラグメント組立ステーションにおける重要な要素である。これは適切な反応容器に試薬および適切な溶液および緩衝液を送達するために必要なポンプ、配管およびバルブを含む装置の要素である。ユニットの好ましい要素は試薬の送達および混合の両方の操作を制御するプログラム可能なパラレルシリンジポンプユニットである。このユニットは全体の固体支持体表面を均一に通過するオリゴ溶液の少容量を送達するために一貫した圧力差を生じさせる工程;ができる。このユニットはまた装置において反応容器内の固体支持体を通過する試薬の連続した流動をもたらす。このユニットはまた、この連続した流動の方向を反転させる手段を提供する。
本発明の1つの特徴において、各反応容器は反応容器の上面から別のシリンジに連結される。或いは、さらに2つの反応容器を単一のシリンジに連結してよい。各反応サイクルの開始時において、マルチウェルのマイクロプレート中のオリゴは反応ブロック下部に位置し、そして各オリゴ溶液を反応容器の底部にあるオリフィスを通して反応容器内に引き込む。次に溶液が多孔性固体支持体を一定して出入りしながら流動するように特定の速度および容量置換において継続的に上下送液するようにシリンジポンプをプログラミングする。サイクルの終了時に、溶液を反応容器から廃棄物収集器に流し出す。各アニーリング反応の後、シリンジポンプおよび反応容器の間の切り替えバルブを通して反応容器の上面から添加した新しい洗浄緩衝液を用いて反復洗浄サイクルを実施する(図10)。
各反応容器に対して個々のシリンジを使用する工程;により、各反応ブロック内および全体の反応ブロックに亘り溶液および流体の流量および容量を信頼性高く一貫して制御できる。全反応ブロックに対して単一のシリンジポンプまたはバキュームチャンバーに基づいた設計の場合は、各反応容器を均一にする工程;はより困難となるが、この方法も使用してよい。
(4.反応ブロック)
1つの特徴において、本発明の固相遺伝子フラグメントまたは遺伝子組立系は図10Cに示すように複数の反応容器を保持するために適合させられた複数のキャビティーを含む反応ブロックを含む。1つの実施形態において、反応ブロックは各反応容器に対する個別の温度制御を可能にする手段を含む。別の特徴において反応ブロックは全ブロックに亘り均一な温度制御を可能にする手段を含む。別の実施形態においては、反応ブロックは各反応容器内の流体のレベルをモニタリングするための手段を含む。反応ブロックの中心的要素は反応容器(図10Bおよびず10C)であり、各反応容器はその中に固体支持体を含む。この型の反応ブロックは、この目的のための業務において加工業者により本発明の目的のために製造されたものであってよい。反応容器は不活性でオートクレーブ可能であり、十分な熱転移特性および低いDNA吸着性を有する鋳造成型可能なプラスチックから製造してよい。鋳造成型可能な部分は好ましくは寸法安定性を有するものであり、これにより反応容器は反応ブロック内に摩擦力フィットにより定置され、そして固相フリットも容器内に摩擦力フィットにより定置してよい。各反応容器の上面は好ましくは試薬送達混合ユニット配管に容易に接続切断できる結合ジョイントを有する。各反応容器は好ましくは試薬少容量を取り出すための標準的96穴マイクロプレートの底部に到達できるポイント先端を有する。反応容器の容量は好ましくはその内部に装着されている固体支持体のバルク容量の約3倍である。複数の反応容器を保持する反応ブロックは好ましくは96穴マイクロプレートフォーマットに適合する態様で反応容器を配置させる工程;により上流および下流の自動化を容易にできる。反応ブロックは好ましくは温度制御モニタリング手段(例えば±1℃または±2℃、昇温速度10℃/分)を包含する。反応および反応のブロックの模式的ダイアグラムを図10Bおよび図10Cに示す。
反応容器は図10Cに示す固定手段により反応ブロック内に定置してよい。このような手段は、特に反応容器の内部および/または経由で試薬および溶液を送液する場合に、反応容器を反応ブロックのキャビティー内に固定して装置の操作の間にその移動を防止するためのものである。好ましくは固定手段は反応ブロックおよび各反応容器の上面に存在する結合ジョイントにしっかりと結合する。
(5.温度制御)
反応ブロックは±1℃の制度で周囲温度から100℃までの加熱および冷却の能力を有する。温度制御モニタリングユニットは好ましくは中央コンピューター制御ユニットとのインターフェイスによりプログラム可能である。反応ブロックおよび温度制御モニタリングユニットは多くの加工業者の何れか、例えばJ−KEM Scientific(St.Louis,MO)により加工したものであってよい。
(6.マルチマイクロプレート保存システム、ロボット型プレート輸送系、マイクロプレート保持装置およびマイクロプレートウェルシールピアシング手段)
本発明の1つの特徴において、マルチマイクロプレート保存システムおよびロボット型マイクロプレート輸送系が装置の全体的設計内に組み込まれる。この装置は、試薬(オリゴ)を保存し、それを固相アニーリング反応の各サイクルへ送達する機能を有する。ロボット型マイクロプレート輸送系は個々のマクロプレートをマイクロプレート保持装置に出入りさせる機能を有する。マイクロプレート保持装置は、マイクロプレートの個々のウェル内に含有される試薬の反応ブロック内の反応容器への送達を可能にするような態様で装置の反応ブロックの下方にマイクロプレート1つ以上を位置づける機能を有する。好ましくは、マルチマイクロプレート保存システム中にマイクロプレートを保存するよりも前に、個々のマイクロプレートのウェルをシール材によりシールする工程;により、マイクロプレートのウェル内に含有される試薬の蒸発または分解を防止するか、または、送達過程における他の試薬または溶液による試薬の汚染を防止する。このようなシールは、マイクロプレートのウェルに含有される試薬を遺伝子フラグメントおよび遺伝子の組立過程における適切な反応容器に送達可能となる前に、ピアシング手段によりピアシングまたは穿孔しなければならない。このようなピアシングまたは穿孔の手段は市販されており、本発明の装置に容易に組み込む工程;ができる。好ましくは、ピアシング手段はその時点において必要とされる試薬を含むウェルのみのシールをピアシングまたは穿孔する。別の実施形態においてはマイクロプレートのウェルをシールするために使用されるシール材は、分解、蒸発または汚染が進行する工程;なくウェル内に含有される試薬の再使用を可能とするためにシールピアシング手段によりシールがピアシングまたは穿孔された後に自己シールする。さらにまた、マルチマイクロプレート保存システムおよびマイクロプレート保持装置の温度は、好ましくは中央コンピューターユニットにより制御される温度モニタリング制御ユニット1つ以上により、所望の範囲内にモニタリング制御される。
48400−bpの遺伝子フラグメントの組立は約10アニーリングサイクルを包含する。これ等のサイクルのためのオリゴは10マイクロプレート中において供給してよい。全バッチサイクルは1回で約2日間まで実施されるため、オリゴは多大な蒸発および分解を起こす工程;なく待機状態に保持されなければならない。1つの解決法はマイクロプレート輸送ロボットアームと連結された温度および湿度制御のマルチマイクロプレート保存システムを有する工程;である。このような機材は現在は種々の供給元より入手可能である。
図10Bに示すラインに沿って反応ブロック内に反応容器を配置させる工程;は、その配置がマルチウェルのマイクロ滴定プレート内のウェルの配置と対応している工程;から、特に望ましい。本発明の1つの特徴において、遺伝子または遺伝子フラグメントを製造するために必要な試薬の全ては単一の96穴マイクロプレート内に位置し、そして反応ブロックは8反応器を有する。これにより最大12の独立したセットのウェルが得られ、これより反応体(例えば第1のオリゴ/第1の二本鎖、第2のオリゴ/第2の二本鎖、リガーゼ等)を反応容器に送達してよい。洗浄緩衝液は別のレザバ内に位置し、そして、配管およびポンプの作用により接触可能とされる。
(7.開発方法品質管理プロトコル)
製品または装置により実施される方法を分析するための手段は望ましくは遺伝子フラグメントおよび遺伝子の組立方法内の各々の重要な工程において包含される。このような品質管理プロトコルは当該分野で知られているか、本発明に記載される通りであり、例えば固体支持体結合能力および連結効率に関する試験が挙げられる。最終的に溶出した遺伝子および遺伝子フラグメントは当該分野で知られたゲル電気泳動操作法により確認してよい。さらにまた、このような手段は分光光度計または蛍光プレートリーダーのような装置そのもの内に包含されてよい。このような説明書は当該分野で知られており、所望により装置内に組み込まれる。
(8.自動化合成)
1つの特徴においては、本発明は固相遺伝子法を用いた自動化固相遺伝子組立系に関する。この系は図11に示す通り、幾つかの重要な要素を含んでいる。最も単純な形状においては、固相遺伝子組立ステーションは本明細書に記載した反応ブロック、温度制御ユニット、試薬送達混合ユニット、マイクロプレート保持装置および中央コンピューター制御ユニットを含む。ステーションはまたマルチマイクロプレート保存システムおよびマイクロプレート保持装置に出入りするマイクロプレートの輸送のためのマイクロプレートロボットも含んでよい。ステーションはまた組立の過程においてウェル内に含有される試薬に接触可能とするためのマイクロプレートウェルシールピアシング手段を含んでよい。ステーションはまたバーコードリーダーおよび分析の説明書、例えば分光光度計および蛍光プレートリーダーを組み込んでよい。
反応ブロックは個々の反応容器を保持し、そして各反応サイクルの温度を維持する。マルチマイクロプレート維持系は400bpの遺伝子フラグメントをビルドする際に関与するサイクルの全てに対してオリゴの供給を維持管理する。試薬送達混合ユニットは、組立過程における種々の試薬および溶液を送達するために必要なポンプ、バルブおよび配管を包含し、そしてオリゴおよび緩衝液の添加と除去、並びに組立過程における試薬の混合を制御する。中央コンピューター制御ユニットはプログラム可能であり、予備プログラムされたコマンドを実行する工程;により、ステーションの種々の要素、例えば、温度制御ユニット、マルチマイクロプレート保存システム(マイクロプレートロボットに連結)、試薬送達混合ユニットおよびシールピアシング手段を操作する。
以下の実施例は説明のために示したものであり、限定するものではない。核酸配列をクローニングし、そしてこれ等の核酸の配列を決定するための方法は本発明の分野における当業者がよく知るものである。例示される手法は例えば以下の実験研究マニュアル、即ちSambrook et al.,”Molecular Cloning” (Cold Spring Harbor Press, 3rd Edition,2001)およびAusubel et al.,”Short Protocols in Molecular Biology”(1999)(参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載されており、そして、これ等の参考文献は本明細書に記載した操作法を実施するための詳細をさらに明らかにするために参照してよい。
(実施例1)
(粒状固体支持体上の310塩基対の遺伝子のビルド操作)
(樹脂の酸処理)
アミノメチル化ポリスチレン樹脂(3グラム、粒径〜100ミクロン、Aldrich)をガラスシンチレーションバイアル中で濃塩酸(HCl)4mlおよび水12mlと混合した。樹脂を1.5時間室温で酸性溶液中攪拌した。酸処理樹脂を濾液のpHが5〜6に達するまで水で洗浄した。この操作を、酸処理条件として濃塩酸の代わりに酢酸を、そして水の変わりにジメチルホルムミド(DMF)を用いながら、アミノメチル化ポリスチレン樹脂の第2のバッチに対して反復した。酸処理アミノメチル化ポリスチレン樹脂のバッチを4℃で湿潤固体として保存した。
2種の洗浄した酸処理樹脂は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSA)を用いて表面アミン含有量について定性的に試験した。未処理樹脂は対照実験とするために同様に試験した。結果を表1に示す。樹脂が暗橙色に変化した場合、これは表面上の高いアミン含有量を示している。樹脂が淡黄色に変化した場合、これは表面上の低いアミン含有量を示している。これ等の試験条件下、未処理樹脂は殆ど黄変しなかった。しかしながら、未処理樹脂を40℃でより長時間維持するに従って、黄変は顕著となった。
(表1)
(アミノメチル化ポリスチレン樹脂上の表面アミン含有量)
(樹脂−オリゴ結合)
濃塩酸で処理し、次に水で洗浄したアミノポリスチレン樹脂(上記パートAにおいて製造)を後述する通りリンカーオリゴに共有結合した。リンカーオリゴは17ヌクレオチド塩基を含むオリゴヌクレオチド部分、スペーサー基およびその5’末端に第1アミン基を含有しており、それは以下の構造において説明するとおりであり、式中、mは1〜50の範囲の整数から選択され、nは1〜20の範囲の整数から選択され、そしてpは0および1〜10の範囲の整数から選択される。
本実験において使用されたスペーサーはp=1である場合の上記した構造により示される通り2つのリン酸基によりフランキングされた1ポリエチレングリコール単位であるか、または、p=2である場合の上記した構造により示される通り1つのリン酸基により分離され、そして、2つのリン酸基によりフランキングされた2ポリエチレングリコール単位である。これ等のリンカーオリゴはTrilink Biotechnologies,Inc.(San Diego,Ca,USA;@trilinkbiotech.com)により製造されたものである。リンカーオリゴは後述するように塩化シアヌル化学を用いて樹脂の個々のバッチに結合した。2ポリエチレングリコール単位より多くを有するリンカーオリゴの場合も同様の方法を使用してよい。
選択されたリンカーオリゴは脱イオン水に溶解して1mM溶液を形成した。塩化シアヌル活性化リンカーオリゴを形成するために、リンカーオリゴ溶液20マイクロリットル(20ナノモル)をpH8.4の1Mホウ酸塩50マイクロリットルと混合した。この混合物に、580マイクロリットルのアセトニトリル(Allied Signal)中に30.8mgの塩化シアヌル(Aldrich Chemicals、トルエンから再結晶)を溶解する工程;により製造した新しい塩化シアヌル溶液14マイクロリットルを添加した。反応は40分間室温で実施した。生成物混合物をpH8.4の0.1Mホウ酸塩を用いてSephadexG−50(Sigma)ゲルカラムから溶出する工程;により過剰の塩化シアヌルを除去した。塩化シアヌル活性化リンカーオリゴを凍結乾燥し、次に脱イオン水80マイクロリットルに溶解した。オリゴの回収量は14ナノモルであった。
処理し洗浄したアミノポリスチレン樹脂(固体支持体)への塩化シアヌル活性化リンカーオリゴの結合の前に、固体支持体(充填容量で0.5ml)を5分間pH8.4の0.5Mホウ酸塩1mlで処理し、次にホウ酸塩溶液を濾去した。次に塩化シアヌル活性化リンカーオリゴを固体支持体に添加し、混合物を1時間室温で維持した。この反応時間の後、液体を固体から濾去し、そして固体樹脂を3回pH8.4の0.1Mホウ酸塩2mlで洗浄し、その後後述する通りキャッピング反応を実施した。各洗浄工程は固体支持体に洗浄溶液を接触させる工程;よりなり、そして、混合物を攪拌した後に液体を固体から濾去した。
(キャッピング反応)
アミノメチル化ポリスチレン樹脂上の未反応の−NH2基を1.5時間室温で0.5Mホウ酸塩100マイクロリットル、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP、Aldrich Chemicals)500マイクロリットルおよび無水酢酸(Fisher Scientific)500マイクロリットルと固体支持体を混合する工程;により無水酢酸でキャッピングした。液体を固体から濾去し、次に固体支持体を3回1−メチル−2−ピロリジノン/水(50/50v/v)2mlで、3回1mMEDTA2mlで、3回10mMTris/1mMEDTA/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム溶液2mlで、そして最後に3回10mMTris/2mMEDTA2mlで洗浄した。各洗浄工程は固体支持体に洗浄溶液を接触させる工程;よりなり、そして、混合物を攪拌した後に液体を固体から濾去した。樹脂は4℃で保存した。
(分子ビーコンによる固体支持体上のリンカーオリゴの量の測定)
分子ビーコン技術は溶液相オリゴヌクレオチド(即ち溶液中に溶解されているオリゴヌクレオチド)中の特定のヌクレオチド配列を検出するための感度の高い方法としてよく知られている。現発明によれば、本発明者等は固体支持体上に固定されているリンカーオリゴの量を直接測定するために分子ビーコン技術を良好に適用する工程;ができた。この方法は他の溶液系の測定のために一般的に使用されている試験技術を用いた場合に起こるような固体支持体のリンカーオリゴ含有量の過剰評価を回避する。
本試験に従って使用される分子ビーコン(Trilink製)はリンカーオリゴ内に存在するヌクレオチドの塩基配列に相補的な塩基配列を有する17ヌクレオチドよりなる中央部分を有する。この中央部分の片側にフランキングするものは相互に相補である6ヌクレオチド塩基であり、即ちビーコンの一方の端部上の6塩基はビーコンのもう一方の端部上の6塩基に相補である。その3’末端においてビーコンは蛍光基(特にFAM)に連結しており、そしてその5’末端においてビーコンはクエンチャーDABCYLである。分子ビーコンそれ自体は、即ちビーコンの中央部分に相補的なオリゴヌクレオチドの存在下にない場合は、顕著な蛍光シグナルを生成しない。
試験を実施する前に、リンカーオリゴに結合させた固体支持体15マイクロリットル(充填容量)を1ml2XSSPE緩衝液(0.3MNaCl、0.02Mリン酸1ナトリウム、2mMEDTA、pH7.6)で洗浄した。次に分子ビーコン溶液(10ピコモル/マイクロリットル)5マイクロリットルを固体支持体に添加した。混合物を一夜室温で穏やかに攪拌放置した。次に固体支持体を各回洗浄溶液1ml容量で6回、SDS洗浄溶液(0.05%ドデシル硫酸ナトリウム、0.5MNaCl、5mMTris、1mMEDTA)で洗浄した。
洗浄した固体支持体は170マイクロリットルの32重量%スクロースを添加する工程;により溶液中に懸濁した。糖溶液は10分以上沈殿する工程;無く溶液中に懸濁した固体ポリスチレン球状を維持している。安定な固体球状懸濁液を直接蛍光計に入れた。その蛍光シグナル強度を、同じ量の固体支持体樹脂を含むが分子ビーコンは含有しない対照試料懸濁液と比較した。蛍光シグナルの実質増大は、溶液中の同じリンカーオリゴにアニーリングした分子ビーコンの既知量と標準的な検量線を用いる工程;によりピコモル(pmole)に変換し、即ち、リンカーオリゴを数種の溶液に溶解し、そして種々の既知量の分子ビーコンをこれ等の溶液に添加した。この試験によれば、上記したポリスチレン樹脂は樹脂の充填容量マイクロリットル当たりリンカーオリゴ1〜2pmoleを含有していた。
(オリゴヌクレオチドの設計)
図12Aに示す通り、両方の3’末端にCTTTC配列を有する310塩基対を有する標的ポリヌクレオチド(遺伝子)のヌクレオチド配列を得た。この遺伝子は図12B中に同定される短いオリゴヌクレオチド配列(オリゴ)のファミリーに概念的に分解し、ここで文字A〜Uは特定のオリゴの名称を指し、そして数(例えば30、33、35)は特定のオリゴ中に存在するヌクレオチドの数を指す。図12Bに示す通り、遺伝子内部のオリゴは各々33〜35塩基よりなり、一方、遺伝子末端近傍のオリゴ(オリゴKおよびU)は幾分短鎖であった。オリゴ間の破断は、各内部オリゴが15〜17ヌクレオチドの長さに亘り相補鎖内の2つの部分相補オリゴとオーバーラップするように存在するように設計した。遺伝子の末端を形成するオリゴは15〜16ヌクレオチドの長さに亘りその相補オリゴとオーバーラップするように設計した。これ等のオリゴを設計した後、それらを標準的な固相技術により合成した。
遺伝子の合成を達成するために、2つの「架橋」オリゴを設計し、そして合成した。これ等の架橋オリゴは「架橋オリゴL」(図12C)および「架橋オリゴR」(図12D)と命名した。各架橋オリゴはポリヌクレオチド組立法においてこれ等の領域が実施する機能により定義されるヌクレオチド3領域よりなる。各架橋オリゴはヌクレオチドの「ギャップ配列」と称されるヌクレオチドの隣接セットを含有しており、それはユニバーサルオリゴの第1領域にアニーリングするヌクレオチドの第1の隣接配列と標的ポリヌクレオチド内に組み込まれる第1のオリゴの第1の領域にアニーリングするヌクレオチドの第2の隣接配列との間に位置する。このヌクレオチドのギャップ配列はユニバーサルオリゴの第1の領域および第1オリゴの第1領域の何れともアニーリングしない。実際、ギャップ配列の第1の目的は第1オリゴの第1領域への連結可能な近接部にユニバーサルオリゴの第1の領域が入ってこないようにする工程;である。他方のオリゴに各々部分的にアニーリングした2オリゴは相互への「連結可能な近接部」にそれらが在る場合のみ相互に連結する。本質的には、この工程;は、2つのオリゴが相互に「連結可能な近接部」にあるためには、1つのオリゴに共にアニーリングしている2つのオリゴの間にはギャップは有りえない工程;を意味している。
ギャップ配列は少なくとも1ヌクレオチド長である。好ましくは、ユニバーサルオリゴが標的ポリヌクレオチドの第1オリゴと連結する可能性をさらに低減するためには、ギャップ配列は1ヌクレオチド長より大きい、例えば2、または3、または4、または5、または6、または7、または8ヌクレオチド長以上である。ギャップ配列内に存在する特定のヌクレオチドは、それらのヌクレオチドがユニバーサルオリゴまたは標的ポリヌクレオチドの第1オリゴの何れともアニーリングしない限り、重要ではない。GおよびCヌクレオチドはAおよびTヌクレオチドより強力な水素結合体であるため、1つの特徴において、ギャップ配列は少なくとも優先的にAおよび/またはTヌクレオチドから形成される。図12Cおよび12Dにおいて、ギャップ配列は5つの「A」ヌクレオチドにより表わされる。
この「ギャップ配列」に加えて、固体支持体に固定されているユニバーサルオリゴ中に存在するヌクレオチド塩基(本実施例においてはその内17)に相補であるヌクレオチド配列を含むように各架橋オリゴを設計して合成した。さらにまた、架橋オリゴは標的ポリヌクレオチドの第1オリゴ内のヌクレオチドの隣接配列に相補であるヌクレオチド塩基配列(本実施例においてはその内16)を含有している。図12Cおよび12Dから明らかな通り、5ヌクレオチド「ギャップ配列」はユニバーサルオリゴ由来の3’OHと第1オリゴの5’ホスフェートとの間に連結が起こるのを防止する。
本遺伝子組立法において使用した架橋オリゴを除く全オリゴをホスホリル化した。それらはMetabion Company(Germany)により合成されHPLC精製された。凍結乾燥したオリゴを全て、約100pmole/マイクロリットルの濃度で精製水(Millipore,Bedford,MA,USA;@Millipore.com)中に懸濁した。
(固体支持体上の遺伝子組立)
1セットに付き2または3メンバーとした相補オリゴのセットをあわせ、アニーリングさせて二本鎖ハイブリッドとした。特定のセットは図12Eおよび12Fにおいて用語「0A」、「1A」等により表記し、識別する。アニーリング方法の内容は15分間65℃で1XSSPE緩衝液中該当オリゴを混合する工程;であり、これによりオリゴは相互にアニーリングした。2つの架橋オリゴ「L」および「R」は一本鎖オリゴとして固体支持体にアニーリングするか、または、それぞれその隣接オリゴ二本鎖「3A」および「4A」にアニーリングしてトリプレットとした後に固体支持体に連結できる。遺伝子末端におけるこれ等の短いオリゴについては、二本鎖トリプレットを作成した。図12Eおよび12Fに示す通り、セットには各々識別を容易にするために逐次的番号をつけた。
図12Eおよび12Fにおいて識別されるハイブリッドの溶液を以下の組立方法において使用した。自身に結合させて約100ピコモルのリンカーオリゴを有する固体支持体約75マイクロリットル充填容量を図12Gに示すカートリッジ(Orochem Technologies,Westmont,IL,USA)内に添加した。
保存緩衝液を除去し、支持体を3回2XSSPE緩衝液0.4mlで洗浄した。緩衝液および試薬の送達はピペット先端を用いて行い、そして緩衝液および試薬の除去は使い捨てシリンジを用いて行った。フリットの脱離および固体支持体樹脂の緩みを回避するためにはカートリッジへのシリンジの連結の前にプランジャーを引き出す工程;が重要である。
図12Eにおいて識別されるフラグメントはカートリッジ内に含有される固体支持体に3A、2A、1Aおよび0Aを逐次的にアニーリングする工程;により組立てた。同様に、図12Fにおいて識別されるフラグメントは別のカートリッジにおいて固体支持体に4A、5A、6A、7Aおよび8Aを逐次的にアニーリングする工程;により組立てた。アニーリング方法は、2XSSPE緩衝液50マイクロリットルおよび二本鎖または三重鎖溶液400ピコモルを混合し、2時間室温でカートリッジを穏やかに振とうする工程;よりなるものとした。各アニーリングサイクルの間、5回冷蔵2XSSPE0.4mlで支持体を処理する工程;よりなる洗浄過程を用いて過剰な二本鎖がある場合はこれを除去した。
フラグメント全てを共にアニーリングした後、固体支持体を5回冷蔵2XSSPE0.4mlで、2回冷蔵連結洗浄緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、25μg/mlBSA、pH7.5)0.4mlおよび1回1X連結緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、1mMATP、25μg/mlBSA、pH7.5)100マイクロリットルで洗浄した。連結反応は50マイクロリットルの1X連結緩衝液および800付着末端単位のT4DNAリガーゼ(New England Biolabs,MA,USA;@neb.com)をカートリッジに添加し、3時間室温でカートリッジを穏やかに振とうする工程;により実施した。固体支持体を3回0.4mlの冷蔵2XSSPEで洗浄した。
連結した遺伝子フラグメントは0.4mlの50℃脱イオン水で固体支持体を反復して洗浄する工程;により固体支持体から遊離させた。典型的には、3洗浄サイクルで固体支持体から全DNAを遊離させるのに十分であった。溶出した溶液を合わせ、YM−30MicroCon限外濾過装置(Millipore)中で遠心分離する工程;により25マイクロリットルまで濃縮した。
ゲル分析はDNAフラグメントのサイズを確認するために行った。6%のネイティブのアクリルアミドゲルを1XTBE泳動緩衝液(89mMTris、89mMホウ酸および2mMEDTA、pH7.6)と共に使用した。各フラグメントを含む溶液2.5マイクロリットルをローディング染料(Gesura TypeII 6X)と40%スクロースの混合物(1/1、v/v)2マイクロリットルと混合した。ゲルを150ボルト一定で泳動し、SYBRGold(Molecular Probes,Eugene,OR,USA;@probes.com)で後染色した。結果を図12Hに示す。図12Hにおいて、レーン1および4は20bpのマーカー配列である。レーン2は左フラグメント(174bp)およびレーン3は右フラグメント(196bp)である。ゲルは左および右フラグメントの両方が正しいサイズを有し、主要生成物である工程;を確認するものであった。画像の強度により、両方のフラグメント生成物の推定収率は80〜90ピコモルであった。
左および右のフラグメントの最終的相互接合は溶液中で行った。濃縮した左および右のフラグメントの溶液を5マイクロリットルの10X連結緩衝液および800付着末端単位のT4DNAリガーゼと混合した。連結反応は1時間37℃で行い、その後15分間65℃で加熱した。この過程をさらに2回反復し、各々新しい400単位リガーゼを使用した。生成物の混合物をYM−30MicroCon限外濾過装置に入れ、10mMTris/1mMEDTA緩衝液400マイクロリットルで希釈した。溶液を50マイクロリットル未満に濃縮した。次に脱イオン水400マイクロリットルを添加し、溶液を50マイクロリットル未満となるまで遠心分離した。後者の過程を反復し、最終生成物を50マイクロリットル溶液中に回収した。生成物の一部を5%アクリルアミドゲル上で分析し、その結果は図12Iに示す通りであった。図12Iの画像は4バンドを示しており、レーン1および2は異なるローディング濃度における最終連結生成物である。レーン3は20bpのマーカーであり、そしてレーン4は100bpのマーカーである。レーン1および2は最終遺伝子生成物(310bp)、自身の架橋オリゴを有する未反応の左および右のフラグメント(196bpおよび176bp)およびアニーリングした架橋オリゴ(60bp)を示している。最終生成物をクローニングして配列決定する工程;によりそれが所望の配列を有する工程;を確認した。
(実施例2)
(多孔性ポリエチレン支持体上の240塩基対の遺伝子のビルド操作)
(カルボジイミドによるポリエチレンフリットへのリンカーオリゴの結合)
直径9mm、厚み1.5mm、孔径7および20ミクロンのポリエチレンフリットをOrochem Technologies(Westmont,IL,USA;@orochem.com)より購入した。第1アミン基を4thState,Inc.(Belmont,CA,USA;@4thstate.com)の実施したプラズマ処理によりPEフリット表面上に導入した。フリットの関与するその後の全ての反応および方法は図12Gに示すポリプロピレンカートリッジ(やはりOrochem Technologiesより購入)中で実施した。フリットは容器の壁との摩擦力により定置される。
試薬および緩衝液はカートリッジの上面からフリットに送達し、フリットを通って液体を上昇下降しながら送液するシリンジによりフリットの細孔内で混合し、そして空のシリンジによりフリットから除去する。カートリッジの底部の開口部は反応中は密栓しておく。フリットにリンカーオリゴを結合する前に、フリットを室温で17時間0.1M酢酸ナトリウム(pH4.5)溶液中10%無水コハク酸中に入れる工程;により、フリットをスクシニル化した。スクシニル化したフリットは、室温の水、その後0.1M酢酸ナトリウム(pH6〜7)にて45℃で1回および室温で2回、そして最後に室温の水で3回、洗浄した。
次にスクシニル化ポリエチレンフリットを、第1アミンで終わる自身の5’末端においてポリ(エチレングリコール)(n=12)を含む17ヌクレオチドのリンカーオリゴヌクレオチドに結合させた(Trilink Biotechnologies,Inc.製)。各フリットを3時間室温で、6μMのリンカーオリゴヌクレオチド濃度および0.4Mの塩酸エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)濃度においてpH4.5の0.1Mモルホリノエタンスルホン酸(MES)50μl中に入れた。反応の後、フリットを6回洗浄緩衝液(0.3M塩化ナトリウム、10mMTris、1mMEDTAおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、pH8)で、そして、2回2XSSPE(0.3M塩化ナトリウム、20mMリン酸ナトリウム、2mMEDTA、pH7.6)で洗浄した。フリットは4℃で2XSSPE中に保存した。
(蛍光によるハイブリダイゼーション能試験)
オリゴヌクレオチドにアニーリングするフリットの能力を測定するために、以下の試験を実施した。リンカーオリゴヌクレオチドに結合させたポリエチレンフリットをリンカーオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有する蛍光標識オリゴヌクレオチドの溶液と合わせた。次にフリットを洗浄して過剰な(非ハイブリダイズの)相補オリゴを除去した。次にフリットをハイブリダイズした相補オリゴを溶出させる条件に付し、そして、溶出した溶液からの蛍光シグナルを測定した。
アニーリング反応(相補オリゴヌクレオチドと)は2時間室温で2XSSPE中において実施した。洗浄は2XSSPEで行い、洗浄の完了度は蛍光でモニタリングした。ハイブリダイズした蛍光標識オリゴヌクレオチドを3回1mlの50℃のMillipore水でフリットから溶出させた。蛍光シグナル95%超が第1の溶出液から得られた。標識相補オリゴの既知量の溶液の標準検量線との比較により測定したところ、7umの孔径のフリットのハイブリダイゼーション能は170ピコモル/フリットであり、20umの孔径のフリットのハイブリダイゼーション能は175ピコモル/フリットであった。
(ポリエチレンフリット上の遺伝子組立)
標的遺伝子は図13Aに示す通り、一端に5塩基のオーバーハングおよびもう一端に17塩基のオーバーハングを含む240塩基対を有している。
実施例1に記載した実験の場合と同様、そして、図13Bに示す通り、この標的遺伝子を内部オリゴに33〜35塩基および末端により短い配列を有するオリゴのファミリーに「カット」した。各内部オリゴは15〜17ヌクレオチドの領域に亘って2つの相補オリゴとオーバーラップしており、そして末端オリゴは15〜16ヌクレオチドの領域に亘って1つの相補オリゴにオーバーラップしている。****を付した架橋オリゴは遺伝子の左末端に付加されるように設計した。架橋オリゴは5’末端にホスフェートを有さず、従ってこれは遺伝子の連結に参加しない。架橋オリゴのオーバーハング領域はポリエチレンフリット上のリンカーオリゴを与える17塩基配列を有する。
本遺伝子組立において使用されるオリゴの全ては市販の自動合成装置(ABI)上で知られたホスホアミダイト化学により合成し、そしてキナーゼによりホスホリル化した。オリゴを合成した後それらを15分間65℃で1XSSPE緩衝液中15〜25ピコモル/μlでダブレットまたはトリプレットにアニーリングさせた。この遺伝子に関するダブレットおよびトリプレットの厳密な配置は後に記載する通りである。それらには各々識別を容易にするために逐次的な名称を与えた。ダブレットまたはトリプレットフラグメントを含む溶液を放冷して室温とした。フラグメントは図13C中の1A〜6Aの範囲のコードにより識別される。これ等のフラグメント含有溶液を後の組立過程において使用した。
リンカーオリゴに結合したポリエチレンフリットの1ピースをカートリッジ内に入れた。保存緩衝液を除去し、フリットを3回2XSSPE0.4mlで洗浄した。第1のオリゴ三重鎖1A合計300ピコモルを6XSSPE緩衝液50μlと共にフリットに添加した。溶液をシリンジで送液してフリットを上下させた。アニーリングは1時間30分間実施した。2XSSPE洗浄(0.5ml、5回)をアニーリング工程のあとに行い未ハイブリダイズのオリゴトリプレットを除去した。この過程をオリゴダブレット2A、3A、4A、5Aについて、そして最後にトリプレット6Aについて逐次的に反復した。
遺伝子に関する全オリゴが共にアニーリングした後、フリットを冷蔵連結洗浄緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、25μg/mlBSA、pH7.5)0.4mlで1回、そして1X連結緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、1mMATP、25μg/mlBSA、pH7.5)100マイクロリットルで1回洗浄した。連結反応は50マイクロリットルの1X連結緩衝液および800付着末端単位のT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)をカートリッジに添加し、シリンジを用いて3時間室温で溶液を上下に送液する工程;により反応内容物を混合する工程;により実施した。次にフリットを0.5mlの6XSSPEで3回、そして0.5mlの2XSSPEで3回洗浄した。
0.4mlの50℃のMillipore水で3回フリットを洗浄する工程;により連結した遺伝子をフリットから遊離させた。溶出した溶液を合わせ、YM−30MicroCon限外濾過装置(Millipore)中で遠心分離する工程;により20マイクロリットルまで濃縮した。
ゲル分析はDNAフラグメントのサイズを確認するために行った。5%のプレキャストのネイティブのアクリルアミドゲル(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA,USA;@bio−rad.com)を1XTBE泳動緩衝液(89mMTris、89mMホウ酸および2mMEDTA、pH7.6)と共に使用した。ゲルを160ボルト一定で泳動し、SYBRGold(Molecular Probes)で後染色した。結果(図13D)は正しいサイズを有する予測された遺伝子フラグメントが主要生成物である工程;を確認するものであった。図13D中左レーンの試料は200bpのラダーである。右レーンの試料は組立生成物の混合物である。
(実施例3)
(PEGスペーサー存在下または非存在下の固体支持体上の固相遺伝子組立の比較)
アミノメチル化ポリスチレン樹脂の個別のバッチを2種の異なるリンカーオリゴに結合させた。一方のリンカーオリゴは末端アミン基とオリゴヌクレオチドの間にPEGスペーサー(n=24)を含有していた(17b−オリゴヌクレオチド−PEG(n=24)−NH2)。もう一方のリンカーオリゴはスペーサーを含有せず、そしてカルボン酸末端を有し(17b−オリゴヌクレオチド−COOH)、ここで両オリゴともTrilinkより入手した。PEGスペーサーを有するオリゴを実施例1に記載した結合方法を用いてポリスチレン支持体に結合した。スペーサーを有さないリンカーオリゴは同じポリスチレン支持体の異なるバッチに、そしてポリエチレンフリットにも、後述するカルボジイミド法を用いて結合した。
結合の前にポリスチレン樹脂150ul充填容量を0.1MpH4.5のモルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)1mlで2回洗浄した。結合反応は1.5時間室温で0.1MpH4.5MOPS100μl中カルボキシ官能基含有オリゴ(1ナノモル/μl)3μlおよびEDC溶液(26.6mgEDC、500μlMillipore水中)20μlを用いて実施した。反応後、樹脂を450μlの0.5Mホウ酸塩/0.25M塩化ナトリウムで5回洗浄した。残存したアミンは、1.3時間室温で無水酢酸/N−メチルピロリジノン/0.5Mホウ酸塩(8/2/2v/v/v)の混合物300μlと混合する工程;により無水酢酸でキャッピングした。次に樹脂を(50/50v/v)N−メチルピロリジノン/1mMEDTAを含む混合物で3回、1mMEDTA(pH8)で3回、洗浄緩衝液(0.3M塩化ナトリウム、10mMTris、1mMEDTAおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、pH8)で2回、そして、10mMTris/1mMEDTA(pH8)で5回洗浄した。
両方のポリスチレン樹脂のハイブリダイゼーション能を実施例1に記載した分子ビーコン法により試験した。それらは両方とも約0.7ピコモル/μl充填樹脂であった。ポリスチレンフリットのハイブリダイゼーション能は実施例2に記載の方法により試験した。これはフリット当たり84ピコモルと測定された。
(134塩基対遺伝子の組立)
実施例1に記載した方法と同様にして、標的遺伝子を30〜33ヌクレオチド塩基を各々有するオリゴのシリーズに「カット」した。22塩基のより短い配列を下側鎖の末端に置いた。各内部オリゴは15〜18ヌクレオチド塩基の領域に亘る2つの相補オリゴとオーバーラップしていた。図14Aに示す通り、トップストランドの第1オリゴはその5’末端において蛍光基FAM(◎)で標識する。****を付した架橋オリゴは遺伝子の左末端に付加した。架橋オリゴは5’末端にホスフェートを有さず、従ってこれは遺伝子の連結に参加しない。さらにまた、架橋オリゴはその3’末端において蛍光標識した。
蛍光標識オリゴはTrilink Inc.により合成された。他のオリゴの全ては市販の自動合成装置上で知られたホスホアミダイト化学により合成した。全ての一本鎖オリゴヌクレオチドは15分間65℃で1XSSPE緩衝液中25〜30ピコモル/μlでダブレットまたはトリプレットの何れかにアニーリングした。この遺伝子に関するダブレットおよびトリプレットの厳密な配置は図14Bに記載する通りである。それらには各々識別を容易にするために逐次的な名称を与えた。ハイブリッドを含む溶液を放冷して室温とした。これ等のハイブリッド溶液を後の組立過程において使用した。
各フリット化ポリプロピレンカートリッジ内にリンカーオリゴと結合した充填固体支持体を100〜150μl入れた。ポリエチレンフリットの場合は、未処理(バージン)フリットを用いる代わりにオリゴ結合フリットを直接カートリッジに入れた。保存緩衝液を除去し、そして、支持体を3回2XSSPE緩衝液0.4mlで洗浄した。第1オリゴ三重鎖0A、全量200ピコモルを6XSSPE緩衝液50μlとともに各支持体に添加した。アニーリング混合物を1時間45分間室温で回転混合した。6XSSPE洗浄(0.4ml、5回)、次いでアニーリング反応を行い未ハイブリダイズのオリゴトリプレットを除去した。この過程をオリゴダブレット1A、2Aおよび3Aついて逐次的に反復し、各々の場合アニーリング時間は室温で1時間とした。
遺伝子に関する全オリゴが共にアニーリングした後、カートリッジに含有される固体支持体を冷蔵連結洗浄緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、25μg/mlBSA、pH7.5)0.4mlで2回、そして1X連結緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、1mMATP、25μg/mlBSA、pH7.5)50μlで1回洗浄した。連結反応は50マイクロリットルの1X連結緩衝液および800付着末端単位のT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)をカートリッジに添加し、3時間室温で溶液を上下に送液する工程;により反応内容物を混合する工程;により実施した。次に支持体を2XSSPE0.5mlで5回洗浄した。
0.4mlの50℃のMillipore水で3回支持体を洗浄する工程;により連結した遺伝子を支持体から遊離させた。溶出した溶液を合わせ、YM−30MicroCon限外濾過装置(Millipore)中で遠心分離する工程;により20マイクロリットルまで濃縮した。ゲル分析はDNAフラグメントのサイズを確認するために行った。8%のネイティブのアクリルアミドゲルを1XTBE泳動緩衝液(89mMTris、89mMホウ酸および2mMEDTA、pH7.6)と共に使用した。ゲルを175ボルト一定で泳動し、SYBRGold(Molecular Probes)で染色する前後に画像化した。ゲルの画像は以下の図14Cおよび14Dに示す通りであり、ここでレーンの帰属は、(1)PEGスペーサーを含むリンカーオリゴと結合させたポリスチレン支持体上にビルドした遺伝子、(2)何れのスペーサーも有さないリンカーオリゴと結合させたポリスチレンフリット上にビルドした遺伝子、(3)スペーサーを有さないリンカーオリゴと結合させたポリスチレン支持体上にビルドした遺伝子;(4)20bpのラダー(Gensura)である。図14Cは染色前のゲルを示し、図14Dは染色後のゲルを示す。
染色の前後において、画像は一貫している。スペーサーを有する固体支持体上にビルドした生成物は生成物混合物中最も強度の高いバンドとして現れた(レーン1)。スペーサーを有さない同じ型の支持体上にビルドした生成物は組立方法が成功せず、20および40bpの位置の間のFAM標識架橋オリゴは極めて強度の高いバンドを示した(レーン3)。ポリエチレンフリット(レーン2)上にビルドした遺伝子は全体的強度がかなり低値であった工程;を除き、レーン1のバンドと同様であった。
(実施例4)
(異なるオーバーハングサイズとの比較)
PEG(n=6)スペーサーを含むリンカーオリゴに結合させたポリスチレンの球状固体支持体を本実施例においては使用する。結合方法は実施例1に記載したものと同様である。固体支持体は1ピコモル/μl充填樹脂のハイブリダイゼーション能を有していた。
(オリゴヌクレオチド設計)
134塩基対の標的遺伝子を2種の異なるセットのオリゴヌクレオチドからビルドされるように設計した。一方のセットは15〜18塩基の範囲の長いオーバーハングを有していた(図15A参照)。もう一方のセットは僅か4塩基の短いオーバーハングを有していた(図15B参照)。各々のセットにおいて、第1のトップストランドは5’末端において蛍光基(FAM、◎)を有し、そして架橋オリゴは3’末端にFAM基を有していた。
FAM標識オリゴは全て、Trilink Inc.製であった。長いオーバーハングのセットにおいて使用したオリゴは全て、市販のオリゴヌクレオチド合成器(Beckman)上で合成し、ホスホリル化した。短いオーバーハングのセットにおいて使用したオリゴは全てLife Technologies Inc.により製造され、ホスホリル化された。
(固体支持体上の17塩基オーバーハングオリゴヌクレオチドの遺伝子組立)
トップストランドのオリゴヌクレオチドの各々を15分65℃で1XSSPE中二本鎖を形成するために個別の相補のボトムストランドオリゴヌクレオチドにアニーリングした。架橋オリゴは第1の二本鎖とアニーリングしてトリプレットを形成した。得られたフラグメントは図15Cにおいて識別される。
フラグメントを共に連結するために、自身に結合させて全量約100ピコモルのリンカーオリゴを有する固体支持体約120マイクロリットル充填容量を3回2XSSPE緩衝液1mlで洗浄した。第1のオリゴトリプレット(0A、総量400ピコモル)を100μlの2XSSPE緩衝液と共に支持体に添加した。アニーリング混合物を2時間間室温で回転混合した。2XSSPE洗浄(0.4ml、5回)、次いでアニーリング過程を行い未ハイブリダイズのオリゴトリプレットを除去した。この過程をオリゴダブレット1A、2Aおよび3Aついて逐次的に反復し、各々の場合アニーリング時間は室温で2時間とし、2XSSPE洗浄(0.4ml、5回)とした。
遺伝子に関する全オリゴ二本鎖が共にアニーリングした後、固体支持体を冷蔵連結洗浄緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、25μg/mlBSA、pH7.5)1mlで3回、そして1X連結緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、1mMATP、25μg/mlBSA、pH7.5)90μlで3回洗浄した。連結反応は70μlの1X連結緩衝液および800付着末端単位のT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)をカートリッジに添加し、2時間室温で回転攪拌して反応内容物を混合する工程;により実施した。次に支持体を1mlの洗浄溶液(0.3M塩化ナトリウム、10mMTris、1mMEDTAおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、pH8)で5回洗浄した。0.4mlの50℃のMillipore水で3回支持体を洗浄する工程;により連結した遺伝子を支持体から遊離させた。溶出した溶液を合わせ、YM−30MicroCon限外濾過装置(Millipore)中で遠心分離する工程;により約20マイクロリットルまで濃縮した。
(固体支持体上の4塩基オーバーハングオリゴヌクレオチドの遺伝子組立)
トップストランドのオリゴヌクレオチド全てを15分65℃で1XSSPE緩衝液中二本鎖を形成するために1つの相補のボトムストランドオリゴヌクレオチドにアニーリングした。架橋オリゴは第1のトリプレットとアニーリングしてテトラッドを形成した。得られたフラグメントは図15Dにおいて識別される。
自身に結合させて全量約100ピコモルのリンカーオリゴを有する固体支持体約110マイクロリットル充填容量を3回2XSSPE緩衝液1mlで洗浄した。2XSSPE緩衝液100μl中の架橋オリゴ(350ピコモル)を1時間室温で固体支持体にアニーリングした。次にクアドルプレット0A/1A(総量400ピコモル、31ピコモル/μl)を添加した。アニーリング混合物を1時間40分間室温で回転攪拌した。2XSSPE洗浄(0.4ml、4回)をアニーリング工程の後に行い未ハイブリダイズのオリゴを除去した。アニーリングしたオリゴは2時間室温で1X連結緩衝液100μlの存在下で100付着末端単位のT4DNAリガーゼで連結した。固体支持体上の連結生成物を2XSSPE(0.4ml、5回)で洗浄した。
アニーリングおよび連結の過程はオリゴ二本鎖2A、3Aおよび4Aついて逐次的に反復した。新しい二本鎖のアニーリングと連結を開始する前に、少量の固体支持体を各連結生成物の試料として採取した。最終二本鎖をアニーリングして連結した後、各サイクル後に採取した少量の試料を含む生成物を3回55℃の水400μlで溶出した。溶出した溶液を合わせ、YM−30MicroCon限外濾過装置(Millipore)中で遠心分離する工程;により約50〜60マイクロリットルまで濃縮した。
(ゲル分析)
ゲル分析はDNAフラグメントのサイズを確認するために行った。8%のネイティブのアクリルアミドゲルを1XTBE泳動緩衝液(89mMTris、89mMホウ酸および2mMEDTA、pH7.6)と共に使用した。各フラグメント6〜7マイクロリットルをローディング染料(Gesura TypeII 6X)と40%スクロースの混合物(1/1、v/v)3マイクロリットルと混合した。ゲルを150ボルト一定で泳動し、SYBRGold(Molecular Probes)で後染色した。得られたゲルを図15Eに示す。図15Eにおいて、レーン1および2は17塩基のオーバーハング組立生成物である。レーン3および7は20bpのマーカーである。レーン4〜6は、2Aの連結後(レーン4)、3Aの連結後(レーン5)および4Aの連結後(レーン6)の4塩基のオーバーハング組立生成物を示す。
結果は両方のオリゴセット由来の145bpの正しいサイズの遺伝子の生産を確認するものであった。しかしながら17塩基オーバーハングセットは1種の主要生成物を生成するのみであり、4塩基オーバーハングオリゴセットは全2連結サイクルの生成物を生産していた。
(実施例5)
(ジェネリックリンカーオリゴに結合させた固体支持体の再使用)
一般的に、本発明に記載したジェネリックリンカーオリゴヌクレオチドに結合させた固体支持体は再使用可能である。1つの遺伝子を組み立てて固体支持体から溶出させた後、支持体はMillipore水、次いで2xSSPEで洗浄し、そして精製水中4℃で保存してよい。支持体は別の遺伝子を組立てるために再度使用する工程;ができる。このような過程を複数回反復できる。
実施例1に記載した操作法と同様にして355bpの遺伝子を組立てた。「左」および「右」のフラグメントを2種の異なるポリスチレン樹脂支持体上で個別に組立て、そして次に組み合わせて最終遺伝子とした。組立は新しく製造した支持体および以前に使用/洗浄した支持体を用いて比較した。両方の場合において使用した試薬の量は同じであった。溶出したフラグメントを図16に示す通り6%アクリルアミドゲル上で分析した。図16において、レーン1および6は20bpのラダーであり、レーン3は以前に使用した支持体上で組立てた右フラグメント(長オーバーハング配列を含む169bp)であり、レーン5は新しい支持体上で組立てた右フラグメントであり、レーン2は以前に使用した支持体上で組立て、そして4アニーリングサイクル後に停止した左フラグメント(166bp)であり、そしてレーン4は6アニーリングサイクル後に新しい支持体上で組立てた左フラグメント(230bp)である。ゲルは以前に使用した支持体が新しい支持体と同様のポリヌクレオチドの品質および収率をもたらす工程;ができる工程;を明らかにしている。
(実施例6)
(多孔性ポリエチレン支持体上の425塩基対の遺伝子のビルド操作)
(カルボジイミドによるポリエチレンフリットへのリンカーオリゴの結合)
直径9mm、厚み1.5mm、孔径7および20ミクロンのポリエチレンフリットをOrochem Technologices(Westmont,IL)より購入した。第1アミン基を4thState,Inc.によるプラズマ処理によりPEフリット表面上に導入した。フリットの関与するその後の全ての反応および方法は図12Gに示すポリプロピレンカートリッジ(やはりOrochem Technologiesより購入)中で実施した。試薬および緩衝液はカートリッジの上面からフリットに送達され、液体を上昇下降しながら送液するシリンジによりフリットの細孔内を通って混合され、そして空のシリンジによりフリットから除去される。カートリッジの底部の開口部は反応中は密栓しておく。
オリゴヌクレオチドに結合する前に、フリットを室温で17時間0.1M酢酸ナトリウム(pH4.5)溶液中10%無水コハク酸中でスクシニル化した。スクシニル化したフリットは、室温の水、その後0.1M酢酸ナトリウム(pH6〜7)にて45℃で1回および室温で2回、そして最後に室温の水で3回、洗浄した。次にスクシニル化ポリエチレンフリットを、Trilink Biotechnologies,Inc.の製造した5’ポリ(エチレングリコール)(式(1)中m=12)スペーサーおよび末端第1アミン(式(1)中R1=アミノ)を含む17塩基リンカーオリゴヌクレオチドに結合した。結合は3時間室温で、6μMのリンカーオリゴヌクレオチド濃度および0.4MのEDC濃度においてpH4.5の0.1Mモルホリノエタンスルホン酸(MES)50μl容量/フリットピースにおいて実施した。反応の後、フリットを6回洗浄緩衝液(0.3M塩化ナトリウム、10mMTris、1mMEDTAおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、pH8)で、そして、2回2XSSPE(0.3M塩化ナトリウム、20mMリン酸ナトリウム、2mMEDTA、pH7.6)で洗浄した。フリットは4℃で2XSSPE中に保存した。
(蛍光によるハイブリダイゼーション能の試験)
試験は、実施例1に記載した方法と同様にして、リンカーオリゴヌクレオチドに結合したポリエチレンフリットを蛍光標識相補オリゴヌクレオチドにアニーリングし、フリットを洗浄して過剰の相補オリゴを除去し、ハイブリダイズしたオリゴを溶出し、溶出液の蛍光を測定する工程;により実施した。アニーリングは2XSSPE中1時間室温にて実施した。洗浄は2XSSPEで行い、洗浄の完了度は蛍光でモニタリングした。ハイブリダイズした蛍光標識オリゴヌクレオチドを1mlの50℃のMillipore水を3回用いてフリットから溶出させた。蛍光シグナル95%超が第1の溶出液からであった。標識相補オリゴの既知量の溶液の標準検量線との比較により7μmの孔径のフリットのハイブリダイゼーション能は170ピコモル/フリットであり、20μmの孔径のフリットのハイブリダイゼーション能は175ピコモル/フリットであると測定された。
(ポリエチレンフリット上の遺伝子組立)
標的遺伝子は図17Aに示す通り両方の5’末端に17塩基オーバーハングを含む425塩基対を有する。
実施例1に記載した方法と同様にして、この425bpポリヌクレオチドを図17Bに示す通り33〜35ヌクレオチド塩基の配列長を各々有する24オリゴのセットにカットした。オリゴは前記実施例に記載した16〜17塩基のオーバーラップを有する相補鎖中のオリゴとオーバーラップしていた。遺伝子の左5’オーバーハングおよび固体支持体上のリンカーオリゴの両方に相補であるヌクレオチド配列を有する架橋オリゴ(****を付したもの)を遺伝子組立における使用のために設計した。架橋オリゴはその5’末端にリン酸基を有しておらず、従って何れの連結反応にも関与しない。架橋オリゴは遺伝子と固体支持体の間の除去可能な補助物としてのみ作用する。本遺伝子組立において使用した全オリゴは市販の自動合成装置(ABI)上で知られたホスホアミダイト化学により合成され、そしてキナーゼによりホスホリル化された。
合成方法を開始するために、全ての一本鎖オリゴヌクレオチドを15分間65℃の1XSSPE緩衝液中19ピコモル/μlで二本鎖にアニーリングした。この遺伝子に関するダブレットおよびトリプレットの厳密な配置は図17Cに記載する通りである。それらには各々識別を容易にするために逐次的な名称を与えた。ハイブリッドを含む溶液を放冷して室温とした。これ等のハイブリッド含有溶液は後の組立過程において使用した。
リンカーオリゴに結合したポリエチレンフリットの単一のピースをカートリッジに入れた。保存緩衝液を除去し、フリットを3回2XSSPE緩衝液0.4mlで洗浄した。第1オリゴ(トリプレット1A、総量300ピコモル)を6XSSPE緩衝液50μlと共にフリットに添加した。溶液をシリンジでフリットを通して上下に送液した。アニーリングは1時間30分実施した。2XSSPE洗浄(0.5ml、5回)をアニーリングプロセスの後に行う工程;により未ハイブリダイズのオリゴトリプレットを除去した。この過程は、アニーリング時間を1時間に低減した以外は、オリゴハイブリッド2A〜12Aについても逐次的に反復した。
遺伝子についてオリゴ全てがアニーリングした後、フリットを冷蔵連結洗浄緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、25μg/mlBSA、pH7.5)0.4mlで1回、そして1X連結緩衝液(50mMTris−HCl、10mMMgCl2、10mMジチオスレイトール、1mMATP、25μg/mlBSA、pH7.5)100マイクロリットルで1回洗浄した。連結反応は50マイクロリットルの1X連結緩衝液および1200付着末端単位のT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)をカートリッジに添加し、3時間室温で溶液を上下に送液する工程;により反応内容物を混合する工程;により実施した。次にフリットを0.5mlの6XSSPEで5回、そして0.5mlの2XSSPEで1回洗浄した。
0.4mlの50℃のMillipore水で3回フリットを洗浄する工程;により連結した遺伝子をフリットから遊離させた。溶出した溶液を合わせ、YM−30MicroCon限外濾過装置(Millipore)中で遠心分離する工程;により約20マイクロリットルまで濃縮した。ゲル分析はDNAフラグメントのサイズを確認するために行った。5%のプレキャストのネイティブのアクリルアミドゲル(Bio−Rad)を1XTBE泳動緩衝液(89mMTris、89mMホウ酸および2mMEDTA、pH7.6)と共に使用した。ゲルを130ボルト一定で泳動し、SYBRGold(Molecular Probes)で後染色した。100bpのラダーを用いた図17Dに示す結果は正しいサイズを有する予測された遺伝子フラグメントが主要生成物である工程;を確認するものであった。
プライマーとしてトップストランドオリゴの1番目およびボトムストランドオリゴの最後のものを用いながら、最終遺伝子フラグメントに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCR生成物もまた5%アクリルアミドゲルで分析し、その結果は図17Eに示す通りであった。左レーンは組立遺伝子フラグメントのPCR生成物である。中央のレーンは約520bpのPCR対照試料である。右レーンは100bpマーカーである。425量体のフラグメントがゲル上に明らかに示されている。
(実施例7)
(1KB遺伝子フラグメントの合成)
本発明者等がビルドしたモデル遺伝子は1199bpのE.coliLacリプレッサー遺伝子(Lacl)である。このモデル遺伝子の構築は図8のフローチャートに示す通りである。各々約400bpである3種の中間体遺伝子フラグメントを固体支持体上に製造した。最終的な1.2kbの遺伝子は溶液系の技術を用いて組立てた。オリゴは市販のオリゴ合成器上で本発明者等が合成している。
固体支持体は孔径7〜20ミクロンのポリエチレンフリットであり、反応器ハウジングはポリプロピレンSPEカートリッジとした。フリットおよびカートリッジの両方ともOrochem Inc.(Westmont,IL)より購入した。フリットの表面は4thState,Inc.(Belmont,California)においてプラズマ処理する工程;により誘導体化した。17ヌクレオチドのユニバーサルオリゴをその5’末端においてPEGスペーサーに結合させ、そして第1アミン基で終結させた。このリンカーオリゴは水相のカルボジイミド化学により固体支持体に共有結合させた。固体支持体の結合能は本明細書に記載する蛍光試験により測定した。
各中間体フラグメントコンストラクトはオリゴ12対よりなるものであった。それらは12反復アニーリング洗浄サイクルにより固体支持体上に個別に組立てた。アニーリングしたフラグメントはT4DNAリガーゼにより連結した。遺伝子フラグメントは温水で溶出する工程;により固体支持体から遊離させた。それらのサイズはポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した。手作業により400bpフラグメントを組立てるための全サイクル時間は18時間であった。
中間体フラグメントをPCRで増幅させ、より清浄な生成物を形成し、そして後の過程のための物質の品質を向上させた。最終遺伝子組立は酵母相同組み換え法により溶液相において行った(K.Oldenburg,K.Vo,S.Michaelis and C.Paddon,Nucleic Acid Research, (1997),vol.25,451−452;およびP.Gunyuzlu, G.Hollis and J.Toyn, Biotechniques, (2001),vol.31,1246−1250)。最終組立遺伝子をクローニングし、配列決定した。調べた6種のフルサイズのクローンのうち、各々は補正する工程;ができる4〜5つのランダム1ヌクレオチドエラーを含んでいた。このエラーの比率および型は同様のサイズの溶液相組立遺伝子において観察されるものと同等である(データ示さず)。400bpの中間体フラグメントの1つを配列決定したところ、10クローンから4つの正確な配列が得られた工程;がわかった。エラーはやはりランダムであり、大部分は1ヌクレオチドの置換、欠失または挿入であった。
(実施例8)
(自動化固相遺伝子組立ステーションを用いた1kbの遺伝子フラグメントの合成)
実施例1〜4および6において上記した方法と同様にして、実施例7の標的1kb遺伝子由来の成分遺伝子フラグメントを本発明の自動化固相遺伝子組立ステーション(装置)を用いて組立てた。
標的1kb遺伝子を各々180〜240bp長の6遺伝子フラグメント(Fr1、Fr2、Fr3、Fr4、Fr5およびFr6)に分割した。これ等の6フラグメントを反応ブロック内に含まれる6つの個別の反応容器上で同時に組立てた。
自動化装置上で実行された過程は固体支持体を誘導体化する工程、ユニバーサルリンカーオリゴヌクレオチドを結合する工程、ユニバーサルリンカーオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション能を試験する工程、遺伝子フラグメントを組立てる工程、酵素的な連結および最後に固体支持体から遺伝子フラグメントを除去する工程;を包含する。全過程はコンピューター制御ユニットにより予備プログラミングして操作した。各フラグメントにつき架橋オリゴヌクレオチドおよび逐次的なオリゴヌクレオチド二本鎖をマイクロプレート保持装置上に置いた1枚の96穴マイクロプレート中に入れて密封し、4℃に維持した。反応ブロックは方法の各工程に必要な温度を維持していた。溶出した遺伝子フラグメントを図19に示す通りアクリルアミドゲル電気泳動により可視化した。全フラグメントはラダーと比較した場合に正しいサイズを示している。
本明細書において参照した上記全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公開物は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
本発明の特定の実施形態を説明目的のために本明細書に記載したが、上記より、種々の変更が本発明の精神および範囲を外れる工程;なく行われる工程;を認識すべきである。例えば本発明の方法、化合物および組成物は固相DNA合成および/または自動化された化学DNA合成においても使用してよく、その場合、遺伝子は好ましいDNA分子である。